NEW DISC REVIEW + COVER STORY 【BRING ME THE HORIZON : AMO】


BRING ME THE HORIZON: WHEN LOVE AND HATE COLLIDE – STORY BEHIND “AMO”

WHEN LOVE AND HATE COLLIDE

ファンとの間の愛憎劇は、創造性を追求するアーティストならば誰もが背負う十字架なのかも知れません。とは言え、BRING ME THE HORIZON ほど荊の枷にもがき苦しみ、愛憎の海に溺れながら解脱を果たすミュージシャンは決して多くはないでしょう。
BRING ME THE HORIZON は新たなる宿業 “Amo” でラディカルな変革を遂げ、リスナーを文字通り地平線の向こうへと誘っています。それはロック、ポップ、エレクトロ、トランスにヒップホップをブレンドした野心極まる甘露。
しかし「15年経った現在でも、ヘヴィーじゃないとかブラストビートがないことが問題になる。そういった障害を壊し続けて来たんだけどね。」とフロントマン Oli Sykes が NME のインタビューで語った通り、確かにデスコア時代からのダイハードなメタルヘッドに “Amo” は堪え難い冒険だったのかも知れませんね。
実際、UK Billboard チャートで初の No.1 を獲得したとは言え、フィジカルのセールス自体はまだメタルの範疇にあった前作 “That’s the Spirit” と比較して75%も落ち込んでいます。もちろん、ストリーミングの大きな躍進は考慮するべきでしょうが、それにしても決して無視出来る数字ではありません。

“I think we’ve been ahead of some of the other bands. To Oli’s credit, he’s quite good at that. He has ideas before anyone else.”


とは言えバンドは批判やセールスなどどこ吹く風。全員がこのアクセシブルで自由なレコードを誇りに思っています。さらには、ギタリスト Lee Malia は Music Rader のインタビューで BMTH がシーンに迎合せず、常に他のバンドの先を行っていると語っています。「僕らがコーラスを取り入れれば、1年後くらいにメタルコアシーン全体が真似してやり始めたよね。ストリングスにしたってそうだよ。どういう意味かわかる?つまり僕らはいつも他のバンドの1年くらい先を行ってるんだ。そうして同じ手法を繰り返すこともない。」
そういった斬新なアイデアを思いつくのは大抵 Oli だと Lee は証言しています。ではなぜ Oli はメタルのルーツから離れて “背水の” 進化を続けるのでしょうか。その理由は音楽と感情の繋がりを保つためでした。Music Week のインタビューで明かされています。
「だからこそラッパーはほとんど新たなロックやパンクなんだよ。ロックはソフトになってしまった。悲惨で退屈なね。もうエキサイト出来る部分がほぼないんだよ。それ故に、僕らがクロスオーバーすることが重要なんだ。そうすることで、僕たちは音楽がどれだけヘヴィーかで評価する場所じゃなく、ただ音楽が好きな人のいる場所へと属することが出来るんだからね。」

“Rap is almost the new punk”, arguing that “rock has gone soft, miserable and boring”.

音楽はジャンルやスタイルを守るための枷ではなく、溢れる感情を伝える手段。そしてそのための変革ならば決して恐れるべきではない。キーボーディストでバンドのキーパーソン Jordan Fish も同調します。
「僕が好きなバンドの大半は、キャリアを通して変化し続けている。RADIOHEAD は大好きなバンドなんだけど、みんなが愛する “The Bends” みたいな古いマテリアルよりも、エレクトロニカを大胆に取り入れ出してからの方が気に入っているくらいでね。」
故に、コマーシャルでポップと評される “Amo” においてもエキサイトメントは減退していないと Oli は考えているのです。
「ポップになっているとしても、ラジオでかかっているクソみたいな音楽の100万倍エキサイティングだよ。エモーショナルで深みがあるんだよ。きっと何かしら感じるものがあるはずさ。」


深みと言えば、アルバムタイトル “Amo” がポルトガル語で “I Love” を意味することで、一見作品は離婚を経た Oli がブラジル人の現妻へ愛を囁くある種インスタントなテーマにも思えます。しかし、”Amo” には一方で “弾薬” “支配者” 等の意味も存在し、そこに多元的な陰影を秘めさせているのです。そしてその陰影は、確かに Oli の波乱万丈な愛憎人生を反映しています。
MySpace の申し子として名を広め、”出来る限りヘヴィーでブルータル” に制作されたデビュー作 “Count Your Blessings” でデスコアシーンの “ポスターボーイ” を務めることとなった Oli。ただし、クールなルックスと生意気で好戦的なイメージは、ネット上ではパンチラインとして揶揄されプレスからはスタイル重視と批判を集めることにも繋がりました。

“YOU DON’T KNOW ME !!”


ただし、デビュー作のアートワークが物語るように、彼らが “異質” なバンドであることは明らかでした。時を経て、アルバムを重ねるごとに、デスコア/メタルコアのルーツから離れエレクトロニカやシンフォニックな要素を徐々に抱擁したバンドの野心、実験性は、デスコアに執心するファンには当然不評でしたが、皮肉なことに手のひらを返したメディアには “メタルの救世主” 的存在に奉られる結果ともなったのです。
“You Don’t Know Me!” Kerrang! 誌の表紙を飾った Oli の言葉が当時の状況を表します。「確かに事実じゃないことを書かれてイラついたのもある。けど同時に救世主とか偶像視されるような良い人間じゃないって思いも強かったんだ。」そうして Oli はケタミンへと逃避し、中毒からの治療に時間を費やすこととなりました。

“I went through a divorce a couple of years ago and I really didn’t want to talk about,” Sykes admitted. “I don’t want it to seem like I care, and I didn’t want to dredge up the past. I didn’t want to give the person the ‘glory’ of writing stuff about them and shit like that. After it while it just became apparent that I needed to.”

人間万事塞翁が馬。ケタミン中毒そのリハビリをインスピレーションとした2013年の “Sempiternal” は、皮肉にも Oli を追い詰めた閉鎖的なメタル空間からの旅立ちを告げる作品に仕上がりました。BFMV と BMTH の違いさえ分からない畑違いの、しかし素晴らしきパートナー Jordan Fish の参加は何より僥倖でした。
そうして Oli は作品直接のインスピレーションである離婚と再婚を経験します。
「離婚について語りたくなんてなかったよ。過去を引きずってるみたいだし、記者を喜ばせたくもないしね。だけどどうしても語る必要があると感じるようになったんだ。抱え込んだものを放出する必要がね。やっぱりこういった経験は感情を蓄積させるんだ。実際、僕は人をより信じられなくなったりね。創作活動はセラピーだよ。そして幸運にも僕は歌うことで感情を吐き出すことが出来る。」Oli は NME のインタビューでそう語っています。そして “Amo” には様々な愛の形、愛が与える影響が込められ、ラブとトラウマがアルバムを形成していることも。
それはすなはち、どの楽曲も全く異なり、安全圏を飛び出した多様で実験的なレコードのコンセプトへとピッタリ合致しています。

トレードマークのヘヴィーなリフエイジをふんだんに散りばめ、離婚についての想いをブチまけたファーストシングル “Mantra” が “That’s the Spirit” と “Amo” を繋ぐ音楽的なミッシングリンクであることは明らかでしょう。Dani Filth がゲスト参加し、俺が死のうが生きようが誰も気にしないと離婚の光りと影を叫ぶ Nu-metal アンセム “Wonderful Life” も同様です。
一方で、Grimes をフィーチャーした、メタルのダイナミズムとユーロポップ、そして EDM の皮肉な邂逅 “Nihilist Blues” は Oli 語るところの “多様” で “風変わり”、そして “自由” な “Amo” の性質を如実に描写したシンボルです。Jordan Fish が Grimes の大ファンであることは多くが知るところでしょう。

“Our last record we set out to make a record we could see ourselves playing in bigger venues – I like to call it a big-budget rock album – and every song could have been a single, I always looked up to Linkin Park’s Hybrid Theory where every song could be a single. I know some people don’t think that’s so cool, but I used to think that was amazing.”

「前作 “That’s the Spirit” は大きなアリーナでプレイすることを想定したアルバムだったね。僕たちは “高予算のロックレコード” と呼んでいたんだけど。つまり全ての楽曲がシングルに成り得た訳だよ。僕は LINKIN PARK の “Hybrid Theory” をリスペクトしているんだ。全ての楽曲がシングル候補だからね。それを快く思わない人もいるけど、僕は常々素晴らしいと思って来たんだよ。
“Amo” は少し異なっているね。もちろん、ラジオでかかるような楽曲もあるよ。僕たちはそういった曲を書くが好きだし、チャレンジでもあるからね。だけど、そういったことを考慮に入れていない楽曲もあるね。どう編集してもシングルにならないようなものさ。僕たちが以前全く書いたことのないような音楽だよ。」 Louder Soundのインタビューで Oli が語った通り、コマーシャルと一括りにするよりも、ポップや実験性が入り乱れるフリーダム、多様性こそアルバムの真髄でしょう。
さらに、”In the Dark” や “Why You Gotta Kick Me When I’m Down” では多感な少年時代にインスピレーションを受けた *NSYNC, BACKSTREET BOYS といった90’sボーイズバンドへの憧憬をも最先端のトラップを組み込みながら昇華しています。
トロピカルにチルアウトする “Sugar Honey Ice & Tea” (頭文字を合わせれば SHIT)、ドラムンベースやダブの近未来感が眩しい “Ouch” など、それにしてもアルバムは類を見ない程に拡散しています。ではいったい BRING ME THE HORIZON は今いったいメタルとそのシーンに対してどのような想いを抱えているのでしょうか。

“And I keep picking petals
I’m afraid you don’t love me anymore
‘Cause a kid on the ‘gram in a Black Dahlia tank
Says it ain’t heavy metal
(And that’s alright,That’s alright)”

その答えは “Heavy Metal” に垣間見ることが出来るはずです。「だから俺は、君に愛されているかどうかを試すために花びらを一枚づつちぎって占いを続けるんだ。好き、嫌い、好き、嫌いってね。もう愛されていないような気がして怖いんだよ。ブラダリのタンクトップを着たキッズがインスタで、こんなのはメタルじゃないと言ってたからね。そうだよ…その通りだよ。」Oli の叫び、楽曲の歌詞が “メタル側” へと向けられたことは明らかです。そしてそこには、一時救世主へと祭り上げられた元メタルキッズのやはり愛憎、そして後ろ髪引かれる仄かな切なさが存在しているようにも思えます。
実際 “Medicine” は象徴的ですが、音楽シーン全体の最前線をフォローしながら、同時にほぼ全ての楽曲にロックやメタルのダイナミズム、フィジカル感、そしてクリエイティビティーを織り込む彼らのやり方は斬新で双方向から新たな発見を促してくれます。
とは言え、Oli はシェフィールドの曇天をイメージさせる英国人特有の皮肉も忘れません。「最後のメタルアイコンは METALLICA と BLACK SABBATH だよ。ヘッドライナーは20年前のバンドばかり。つまり、ロックやメタルは何十年も、他のジャンルには存在するレジェンドを生み出せていないんだ。」
もはやメタルを背負わず、気負わずただ自由に地平線の向こうを目指す BRING ME THE HORIZON。しかし、結局メタルとの婚姻は人生の婚姻よりも解消が困難なのかもしれませんね。ただ、きっと彼らが見せる天真爛漫の絶景は、保守的なメタルワールドにとって世界へ飛び出す絶好の招待状となるはずです。

SUMMER SONIC 2019
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