EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH LARS HORNTVETH OF JAGA JAZZIST !!
“I’ve Listened To Tomita’s Albums For Years And It Felt Really Natural To Combine This Inspirations Of Warm Synth Sounds With The Analogue And Organic Sounds Of The Drums, Guitars, Horns And Vibraphone. We Spent a Lot Of Time Making The Synth Melodies Sound As Personal And Organic As Possible, Like a Horn Player Or a Singer. Tomita Was The Biggest Reference To Do That.”
DISC REVIEW “PYRAMID”
「アルバムの音楽を表現するために、何か象徴的なものが欲しかったんだ。今回の音楽はかなり壮大で、ピラミッドの四方や外壁、そしてその中にある神秘的な部屋を音楽で表現することができたと感じたわけさ。」
人類史において最もミステリアスな古代の巨石建造物ピラミッドは、興味深いことに過去と未来を紡ぐノルウェーのフューチャージャズ集団 JAGA JAZZIST 5年ぶりの帰還に最も相応しいアイコンとなりました。
「Ninja Tune とはスケジュールの問題があったんだ。彼らは今年、非常に多くのリリースを抱えていたから。Brainfeeder への移籍は今のところいい感じだよ。僕たちが大好きなアーティストと同僚になれて誇らしいね。」
ジャズを王の眠る部屋だとするならば、そこから無数に伸びる通路が繋ぐ音の部屋こそ JAGA JAZZIST の真骨頂。エレクトロニカ、ミニマル、クラシカル、ポストロック、プログロックと接続するエクレクティックな内部構造、360度見渡せる “神秘の部屋” の有りようは、奇しくも FLYING LOTUS が主催し Kamasi Washington, Thundercat といったジャズの新たなファラオが鎮座する Brainfeeder の理念や野心と完膚なきまでに符合しました。
「たしかにシンセとそのシンセサイザーでの音の出し方に関して、冨田勲に大きなインスピレーションを受けたね。この “Tomita” という曲だけじゃなく、アルバム全体にも影響を与えているんだよ。」
前作 “Starfire” と比較してまず驚くのが “エッジ” の減退と “オーガニック” の伸長でしょう。”Starfire” に見られたアグレッシブなダブやエレクトロニカのサウンドは影を潜め、一方で70年代のプログやフュージョンに通じる神秘的な暖かさが作品全編を覆っています。ある意味、Miles Davis があの時代に描いたスケッチを、現代の技巧、タッチで復元するような冒険とも言えるでしょうか。
特筆すべきその変化は、JAGA JAZZIST の主催 Lars Horntveth が9回も訪れているという、日本が輩出した偉大な作曲家、シンセサイザーアーティスト冨田勲の影響によって引き起こされました。
「彼の温かみのあるシンセサイザーの音に受けたインスピレーションと、ドラム、ギター、ホーン、ビブラフォンのアナログで有機的なサウンドを組み合わせるのはとても自然なことだと感じたわけさ。シンセのメロディーを、ホーン奏者やシンガーのようにできるだけパーソナルでオーガニックなサウンドにするため多くの時間を費やしたんだよ。その手法において、最も参考になったのが富田だったんだ。」
暖かく有機的なアコースティックな楽器の音色を、シンセサイザーという機械で再現することに人生をかけた冨田勲。ゆえに、彼がアナログシンセで奏でるメロディーの夢幻は唯一無二でした。その理想をユニゾンの魔術師 JAGA JAZZIST が8人がかりで現代に蘇らせるのですから面白くないはずがありませんね。
アンビエントからラテン、さらに Chris Squire を想起させるベースフレーズでプログの世界まで到達する “Tomita”。ボレロとファンク、それに夢見がちなサウンドトラックが合わさり最古のミニマルミュージックをアップデートした “Spiral Era”。Fela Kuti の魂、Miles Davis の遺志と共鳴しながらユニゾンと対位法、ポリリズムのカオスで圧倒する “The Shrine”。ネオンを散りばめたジャズ/フュージョンのダンスフロア “Apex”。そのすべては、壮大で美しく、奇妙で夢のようなピラミッドを形成するレトロな未来なのでしょう。
ロックの視点で見れば、”Kid A” 以降の RADIOHEAD や TAME IMPALA まで因数分解してヒエログリフに刻むその慧眼をただ崇拝するのみ。
今回弊誌では、Lars Horntveth にインタビューを行うことができました。「この楽曲は彼の音楽へのオマージュであるのみならず、偉大な政治家としての Fela Kuti に捧げた音楽なんだ。この曲がタイトルに沿った “聖堂” であることを願っているよ。彼の人生と魂に語りかける楽曲になっているとしたら、それは僕たちにとってボーナスのようなものさ。」どうぞ!!
JAGA JAZZIST “PYRAMID” : 10/10
INTERVIEW WITH LARS HORNTVETH
Q1: First of all, it’s really hard time now due to corona virus, especially the musical industry. And recently, BLM movement is spreading from the US. What’s your thoughts on the current global situation?
【LARS】: I think it´s been an extremely tough time since Trump got elected and I´m in shock how far he´s willing to go to keep his position. I really hope for a change both in the states and Europe and that more suited people can govern us all. The COVID-19 situation came on top of all the other madness and here we are. So sad. I hope the BLM movement will change things around the globe and that we can tackle the virus as best as possible in an unpolitical fashion. Crossing my fingers!
I also hope that we can play concerts soon, but for me, it´s not worth risking my life for it. So for now, I´m content with working in my studio and make music. The situation is heartbreaking really. I´m lucky that I live in a small country like Norway where the Corona virus is relatively under control.
Q1: コロナ危機から Black Lives Matter と、世界は激動の時を迎えていますね?
【LARS】: トランプ氏が当選して以来、非常に厳しい時代になったと思う。彼が自分の地位を維持するため行なっていることに、ショックを受けているよ。僕はね、アメリカとヨーロッパの両方で変化が起こり、より適した人々が統治できるようになることを心から願っているんだ。
COVID-19の状況は、結局他のすべての狂気の上に成り立っているんだよ。とても悲しいことだよね。BLM運動が世界中の状況を変えることを願っているよ。そして、僕たちが政治的でない方法で、可能な限りこのウイルスに立ち向かうことができればとね。願いをこめるよ!
僕も早くコンサートができることを願っているけど、ただ僕にとってそれは命を賭けるほどの価値まではないんだ。だから今のところは、自分のスタジオで仕事をして音楽を作ることに満足しているよ。この状況には本当に心を痛めているけどね。
ノルウェーのような小さな国に住んでいて、コロナウイルスが比較的コントロールされていることを幸運に思っているんだ。
Q2: “Pyramid” is the first album after moving to Brainfeeder from Ninja Tune, where you were belonging to for many years. Could you tell us why you changed labels? Was there a part of you that felt sympathy for artists like Flying Lotus, Thundercat?
【LARS】: We had a scheduling issue with Ninjatune, they had too many releases this year basically. Changing label to Brainfeeder has been really good so far and we´re proud to be on their roster among with such great artists that we´re big fans of.
Q2: さて、最新作 “Pyramid” は長年所属した Ninja Tune から Brainfeeder に移籍してはじめての作品となりました。
ある意味、所属アーティストの FLYING LOTUS や THUNDERCAT に共感を覚えた部分があったのでしょうか?
【LARS】: Ninja Tune とはスケジュールの問題があったんだ。彼らは今年、非常に多くのリリースを抱えていたから。
Brainfeeder への移籍は今のところいい感じだよ。僕たちが大好きなアーティストと同僚になれて誇らしいね。
Q3: Interestingly, the title of the album, which consists of four tracks, is a pyramid consisting of four sides. And “Pyramid”‘s artwork is reminiscent of ’70s prog rock. Did you have in mind the mysterious mood of that era?
【LARS】: We wanted something iconic to represent the music. We felt that the music was pretty epic this time and that the music could represent the four sides/surfaces of the pyramid and the mysterious rooms within it. Also, we´re working with our longtime designer Martin Kvamme who´s always coming up with amazing visual ideas. Some of the music is definitely inspired by 70s prog, but that´s just one of many inspirations and references for us.
Q3: “ピラミッド” はもちろん4つの面から成りますが、アルバムも4曲収録ですね。70年代のプログロックを想起させるミステリアスなアートワークも素晴らしく、あの時代のロマンを感じさせます。
【LARS】: アルバムの音楽を表現するために、何か象徴的なものが欲しかったんだ。今回の音楽はかなり壮大で、ピラミッドの四方や外壁、そしてその中にある神秘的な部屋を音楽で表現することができたと感じたわけさ。
また、長年のデザイナーである Martin Kvamme と今回も一緒に仕事をしているんだけど、彼はいつも素晴らしいビジュアルアイデアを出してくれるんだ。
君が言うように、音楽の中には70年代のプログロックにインスパイアされた部分もあるんだけど、それは僕たちにとって多くのインスピレーションのうちの一つに過ぎないんだよ。
Q4: “Tomita” is a song that shows a lot of respect for Isao Tomita. He has a unique sound that’s instantly recognizable as him when he plays warm analog-synthesizers, did those aspects resonate with you guys?
【LARS】: When it comes to synths and how to play these sounds on the synthesizer, Isao Tomita was a huge inspiration. Not only on the song Tomita, but one the album as a whole. I´ve listened to his albums for years and it felt really natural to combine this inspirations of warm synth sounds with the analogue and organic sounds of the drums, guitars, horns and vibraphone. We spent a lot of time making the synth melodies sound as personal and organic as possible, like a horn player or a singer. Tomita was the biggest reference to do that.
Q4: “Tomita” は冨田勲に大きなリスペクトを捧げた楽曲ですよね? アナログシンセをプレイすると、すぐに彼だと分かる温かなサウンドを奏でていた音楽家です。
【LARS】: たしかにシンセとそのシンセサイザーでの音の出し方に関して、冨田勲に大きなインスピレーションを受けたね。この “Tomita” という曲だけじゃなく、アルバム全体にも影響を与えているんだよ。
僕は彼のアルバムを何年も聴いてきた。だから、彼の温かみのあるシンセサイザーの音に受けたインスピレーションと、ドラム、ギター、ホーン、ビブラフォンのアナログで有機的なサウンドを組み合わせるのはとても自然なことだと感じたわけさ。
シンセのメロディーを、ホーン奏者やシンガーのようにできるだけパーソナルでオーガニックなサウンドにするため多くの時間を費やしたんだよ。その手法において、最も参考になったのが富田だったんだ。
Q5: There has been a song called “Shinkansen” before, and you seem to be drawn to Japanese culture, right? Speaking of Japan, we produce a lot of great video game music, but do you ever listen to it?
【LARS】: I´ve been to Japan nine times and always spend a week or two when I´m there. I just love it. A very different culture to anything else I know.
I haven´t listened that much to the video games music, but I will now!
Q5: 以前にも “Shinkansen” という楽曲がありましたし、あなたは日本の文化に深く傾倒しているようですね?
【LARS】: 何しろ、これまで日本には9回も足を運んでいるからね。そしてどの訪日も、少なくとも1,2週間は滞在しているんだ。ただ大好きなんだよ。僕の知るなによりも、とても異なる文化だからね。
これまで、ビデオゲームの音楽はあまり聴いてこなかったんだけど、これから聴いてみるよ!
Q6: “The Shrine” refers to Fela Kuti’s African Shrine, right? It’s a song that speaks to his life and soul, not only to mention Afrobeat, would you agree?
【LARS】: It´s an hommage to his music for sure and he was a great political figure. I hope the song lives up to the title! If the song speaks to his life and soul, that´s a bonus for us, hehe.
Q6: “The Shrine” は Fela Kuti が設立したアフリカ・シュラインと関連していますよね。アフロビートだけでなく、彼の人生や魂にもコネクトしたような楽曲です。
【LARS】: そう、この楽曲は彼の音楽へのオマージュであるのみならず、偉大な政治家としての Fela Kuti に捧げた音楽なんだ。この曲がタイトルに沿った “聖堂” であることを願っているよ。
彼の人生と魂に語りかける楽曲になっているとしたら、それは僕たちにとってボーナスのようなものさ。
Q7: “Spiral Era” was inspired by the Rabel’s bolero, right? In a sense, I think it’s the first minimalist music of mankind, did you feel empathy for it in that sense?
【LARS】: Yes, the song was definitely inspired by Bolero´s form. An easy melody repeated and ornamented over endless repetitions. Of course it´s very different, but it´s our modern take on the bolero as a song structure in general.
Q7: “Spiral Era” はラベルのボレロにインスパイアされた楽曲だそうですね?
ある意味、あの楽曲は人類初のミニマルミュージックだと感じるのですが、そういった点で親近感を覚えた部分はありますか?
【LARS】: そうだね、この曲は間違いなくボレロの形式にインスパイアされている。簡素なメロディが延々と繰り返され、徐々に装飾されていく。
もちろん、非常に異なるものではあるけど、曲の構造としてのボレロを現代風にアレンジしたものなんだ。
Q8: Regarding jazz bands, I feel you and Snarky Puppy bring jazz new territory. What’s your perspective about Snarky Puppy’s music?
【LARS】: To be honest I haven´t checked them out much. But I take that as a great compliment!
Q8: ジャズバンドという括りで言えば、あなたたちと SNARKY PUPPY がジャズの新たな扉を開く二大勢力だと思います。
彼らについてはどう感じていますか?
【LARS】: 正直言って、SNARKY PUPPY はあまり聴いたことがないんだよね。でも素晴らしい賛辞と受け取るよ!