EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH BIG|BRAVE !!
“I Believe That Language Choice Of Words And Phrasing, Has a Lot To Do With The Collective Mindset Of The People. Being Singled Out Because Of My Gender Automatically Negates My Worth And Work As a Musician.”
DISC REVIEW “A GAZE AMONG THEM”
「私は時々、BIG|BRAVE はどんなシーンとも全く繋がっていないんじゃないかと思う時があるの。それは、最初から特定のジャンルの音楽を作ろうと望んだことがないからだと思うの。私たちは自らの理論を概念化し、そこから前進していったから。」
ビジュアルアーツの背景から音楽世界に転進した異能の勇士は、定型化されたヘヴィーの概念へと挑戦します。
「私は、Mathieu と真剣に音楽を始めるほんの一年前にギターを手にしたの。公の場所で歌ったこともなかったのよ。実際、このバンドが誕生するまで、私は自分の声をどれだけ “使用” できるのか分からなかったくらいなの。」
バンドの顔である麗しの Robin Wattie は、自らの音楽経験が相当に不足していたことを素直に認めました。故に、BIG|BRAVE の旗揚げには文字通り “大きな勇気” が必要だったとも。
ただしその無垢なる履歴書は、紡がれた歴史の中で同質化が進んだ “ヘヴィネス” が元来有した “様々な姿形” を暴き出すにはむしろ好都合だったとも言えます。既存のあらゆるジャンルへと、従属を拒む選択もまた勇気。
ドゥーム、ドローン、ポストメタル、ポストロック、シューゲイズ。BIG|BRAVE を形容する看板は数あれど、確かにそのどれもがモントリオールの怪物を適正に言い表しているようには思えません。例えば、SUMAC の如くその全てを混交したハイブリッドのキメラならば少しは近づくでしょうが。
「単一のコードパターンを使用する場合、コード進行を考えたり聴いたりする必要はないよ。存在しないんだからね!故にその基盤に重ねる歌のフィーリングと音の階層にフォーカスすることが可能なんだ。そうすることで、リスナーをより容易く恍惚状態へと導ける。実にリズミカルなドローンさ。」
Mathieu は、”ワンコードでどれだけ興味深い音楽が作れるか” をバンドの命題に掲げています。その矛盾したテーマ、制限的なやり方はしかし一方で HEILUNG も言及していた “安定したビートを長時間浴びる時に起こる魔法、トランス状態で我を忘れる経験” をもたらすことが可能でしょう。
ただし、エレガントに難題をクリアする “A Gaze Among Them” を聴けば伝わるように BIG|BRAVE に流れるのは、Tony Conrad や Steve Reich といったミニマリストの柔軟な血脈です。
オープナー “Muted Shifting of Space” はある種象徴的でしょう。動的な和声の流れを拒絶して、様々な色調、音色、サウンドエフェクトがその代役を務めます。躍動するメロディーラインとリズミカルなタッチは、コードの動きを極力封じることで即興の自由、スポンティニュアスなイメージを得られたからこそ生まれました。
SUNN O))) のドローンとは明らかに異なるスロウバーン。野生で呪術的、しかしアクセシブルで感情に訴えかける音の葉の力強さは、Robin の本能、ジャズの背景に依るところが大きいのかも知れませんね。
「その質問をしてくれてありがとう。」セクシズムやミソジニーについて Robin はどうしても自らの言の葉を記しておきたかったようです。
「私は言葉や言い回しの選択って、人々の集団心理に大きく関係していると思うのよ。ただ私の性別だけで選ばれるとしたら、ミュージシャンとしての私の価値と仕事は自動的に無意味なものとなってしまうのよ。」
ダークディーバ、メタルプリンセス。Robin はそういった音楽と無関係な部分を売り物にする気はありません。きっと2020年代は、フィーメールフロンテットとわざわざ記すことを取り払うべき時代でしょう。性別は決して “ジャンル” ではないのですから。
“A Gaze Among Them” はつまり音響的な瞑想により自らをその肉体と切り離し、世界と共感、もしくは阻害を感じる作品かも知れませんね。”Them” 大衆の視線と自らの視線が交わる時、”既存のジャンルや価値観に当てはまる必要” はそれでもきっとないはずです。
今回弊誌では、Robin & Mathieu にインタビューを行うことが出来ました。「言語の選択に気をつけなければ、色とりどりの女性が一生懸命行ったことを評価する以前に、女性に制約を追加してしまうわ。それはほとんどの女性が知らずに持ち歩く内面化されたミソジニーを補強してしまうことにも繋がるの。」
GODSPEED YOU! BLACK EMPEROR の Thierry Amar, LINGUA IGNOTA や THE BODY を手がける Seth Manchester のクレジットも納得。どうぞ!!
BIG|BRAVE “A GAZE AMONG THEM” : 10/10
続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【BIG|BRAVE : A GAZE AMONG THEM】