EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH IER !!
“Dir en grey Is One Of My Main Influences, And Also One Of My Favourite Bands Ever. They Are Really Original And Creative, But Sadly That Kind Of Japanese Bands Don’t Get Much Attention In The West.”
DISC REVIEW “妖怪”
「アルゼンチンでは、僕の世代の多くの子供たちが日本文化に触れて育っているんだ。90年代はアルゼンチンにグローバリゼーションと新自由主義をもたらした。ケーブルテレビではたくさんのアニメが放送され、いくつかの出版社が多くの漫画の権利を取得し国内で商業化を始めたんだ。90年代後半には、スペイン語でアニメを紹介する雑誌まで出版され、アニメやコスプレの大会も開催されるようになってね。」
まさに地球の裏側、アルゼンチンでこれほどまでに日本文化が花開いているなどと誰が想像したでしょうか。IER の首謀者 Ignacio Elías Rosner は、音楽で日本の怪談を紡ぎその流れを牽引する越境の使者に違いありません。
「怪談に関しては、表現しているテーマの多さに魅了されているんだ。日本人は超自然や死後の世界に対する理解が非常に異なっている。西洋の信仰とのコントラストはとても強く、僕たちを魅了し、同時に怖がらせてくれるんだ。個人的には、それらの民話や伝説、伝統が、僕が好きだったアニメや映画の至る所にあったからこそ、自分の子供時代の一部を代表していると言えるんだ。」
ケーブルテレビで目にしたドラゴンボールや聖闘士星矢、エヴァンゲリヲン。プレイステーションでリリースされるサイレント・ヒルやファイナル・ファンタジーの魅力的ソフトの数々。Ignacio はアルゼンチンに放たれたジャパニーズ・サブカルチャーの虜となり、その場所から日本の音楽や伝統文化、哲学へと歩みを進めていきました。
「怪談の復讐、抑圧、永遠の不幸、孤独、憂鬱、怒り、喪失感、失恋などのテーマは、僕が IER で取り組みたいと思っていたものと同じだった。日本文化に立ち返って、同時に比喩で表現する方法を与えてくれたんだよね。登場人物、状況、行為を通して、僕は多くの感情を外に出すことができ、同時に奇妙で不穏な雰囲気を作り出すことに成功したのさ。」
すべてを Ignacio 一人で収録する IER の J-Horror 四部作は完結へと向かっています。”怪談”、”うずまき”、そして95分の狂気 “妖怪” は壮大なコンセプトの第三幕。アルバムや楽曲タイトルを、漢字を含む日本語で表記する時点で Ignacio の本気と知性が伝わりますが、それ以上に伊藤潤二や日本のホラー映画、怪談を読み込み、分析して音に再現するその異能はある意味常軌を逸しています。
「Dir en grey は大きな影響を受けたバンドの一つで、これまでで一番好きなバンドの一つでもある。彼らは本当に独創的で創造的なんだけど、悲しいかな、この手の日本のバンドは欧米ではあまり注目されていないんだよね。例えば、アルゼンチンではほとんどの人が Dir en grey のことを「アニメ音楽」だと言うだろうから。」
西洋で生まれた恐怖と憂鬱の最高峰、ブラックメタルをプログレッシブに奏でながら、日本の音の葉を織り込む手法こそ Ignacio の語り口。原点である凶暴なカオスは、V系の美学、Dir en grey や Sukekiyo の複雑怪奇、邦画やゲームのサンプリング、伝統芸能のしきたりをカウンターとして絶妙なコントラスト、恐怖のジェットコースターを描き出します。
その情緒に、アルゼンチン由来のラテンやアコースティック、フォーク、スペイン語を重ねた唯一無二は、間違いなく西欧の例えば CANNIBAL CORPSE 的ショックホラーや猟奇よりも、不穏で不気味で奇怪に感じられるはずです。中でも、日本語で皿の数を怒号する “皿屋敷” の恐ろしさは白眉。
今回弊誌では、アルゼンチンのメタル法師 Ignacio にインタビューを行うことができました。「”うずまき” の映画化の監督であるヒグチンスキーは、僕が映画からのサンプルを含む “うずまき” アルバムをリリースした後に連絡してきてね。最初は彼が怒るのかと思ったけど…。それどころか、全然違うんだよ。彼は感激してくれて、法的な問題を避けるために、映画の権利を持っていた映画会社に連絡するのを手伝ってくれたんだ。ありがたいことに、僕は著作権侵害をしていなかったし、ヒグチンスキーは自分のSNSでアルバムをシェアしてくれたんだよ!」 どうぞ!!