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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【THE HU : THE GEREG】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH THE HU !!

“Our Message To The World Via Our Music Is Reminding The Importance Of Showing Gratitude To Your Parents, Loving Your Homeland, Protecting The Nature, Loving And Respecting Women, Respecting Your Country History And a’ncestors, And Finally Giving Individuals An Inner Power And Belief For Their Future.”

DISC REVIEW “THE GEREG”

「僕たちの音楽を通して送る世界へのメッセージ。それは両親への感謝、生まれ育った地を愛する心、自然の保護、女性への愛と敬意、母国の歴史や祖先への愛などの重要性を思い起こさせることなんだよ。そうして最終的には、リスナーそれぞれの内なる力を目覚めさせ、未来を信じられるようにしたいんだ。」
モンゴルの大草原に示現したロックの蒼き狼は、遊牧民のプライドと自然に根差す深い愛情、そして西洋文明に挑む冒険心全てを併合する誇り高き現代のハーンです。
80年代後半から90年代にかけて、ソヴィエト連邦の崩壊と共にそのサテライトであったモンゴルにも、西側からの影響が津波のように押し寄せました。そうしてモンゴルの音楽家たちは、伝統を保護しつつ否応無しに新たな波への適応を迫られたのです。
エスニックなプライドと冒険のダンス。社会的、政治的、そしてもちろん音楽的にもモンゴリアンミュージックはその両極を自らの舞踏に組み込み進化を続けて来ました。それは西欧音楽のコピペではなく、ルーツを大樹に影響の枝葉を伸ばすアジアの審美。
「”Hu” という言葉をバンド名に選んだのは、それが包括的には自然を意味するからなんだ。誰も除外することなく、世界中全ての “人間” に僕たちの音楽をシェアしたかったからね。」
まるで英雄チンギスハーンのように、登場から僅かな時間で西洋を飲み込んだ THE HU は間違いなく現代モンゴル音楽の最高傑作と言えるでしょう。
東洋と西洋、伝統と革新の過激なコントラストが世界を惹きつけたのは確かです。一つ “Yuve Yuve Yu” (“What’s Going On?)” のMV は象徴的でしょう。「偉大なモンゴルの祖先の名を抱きながら、長い間無意味に暴飲暴食を貪るだけ。裏切り者よ、跪け!」現代文明とモンゴルの大自然は皮肉と共に相対し、モンゴルの伝統楽器や彼ら自身は意図的にロックの煌びやかなイメージに彩られています。もちろん、かつてのモンゴル帝国がアジアとヨーロッパの大半を支配下に置いていたのはご存知の通り。
そう、THE HU は西洋に端を発するロック/メタルのフォーマットにありながら、ドラムス以外のクラッシックなロックインストゥルメントを極力廃しています。
官能的な西洋のアピアランスを与えられたモリンホールやトップシュールは、ギターの嗎をアグレッシブに、フォーキーに、美麗にモンゴルの流儀で世界に響かせ、さらに伝統的な喉歌ホーミーはハーモニーの恩恵を与えながらメタルのグロウルを代弁してアジアの歴史、底力を伝えるのです。そうして生まれるは異国情緒のダイナミズム。
「ホーミーとは、僕たちが誰なのか、僕たちが何を知っているのか、僕たちがどこから来たのか指し示すものさ。ホーミーは “正直な人間の地” から来ていて、それこそが僕たちにとって心地よく誇れるものなんだ。」
THE HU が提示する “Hunnu Rock” “匈奴ロック” の中で主役にも思えるホーミーは、もしかすると西洋文明に潜む欺瞞や差別を暴く “正直な” メッセージなのかも知れませんね。なぜなら彼らは、”誰も除くことなく世界中全ての人間に” 自らの音楽、モンゴルの魂を届けたいのですから。
デビューアルバムのタイトル “The Gereg” とは、モンゴル帝国のパスポートを意味しています。多くのモンゴル人にとって、ロマンチックに美化された騎馬の遊牧民や自由を謳歌するモンゴル帝国のヒーローは西洋のストーリーテラーによって描かれた征服者のフィクションなのかも知れません。
しかし、ステレオタイプなメタルファンを惹きつけるそのイメージを入り口に、THE HU は “The Gereg” をパスポートとして、モンゴル本来のスピリチュアルで愛と敬意に満ちた美しき文化、景色、音の葉を少しづつでも伝えていきたいと願っているのです。
今回弊誌では THE HU にインタビューを行うことが出来ました。「祖先から受け継がれるホーミーを僕たちは真にリスペクトしていて、このテクニックをマスターする時は光栄な気持ちになるんだよ。」一人ではなく、メンバー全員からの回答と表記して欲しいとのこと。YouTube 動画再生数は3000万を軽くオーバーするモンスター。どうぞ!!

THE HU “THE GEREG” : 9.9/10

INTERVIEW WITH THE HU

Q1: First of all, Actually, Japan and Mongol have some common points like Sumo, instruments. So, we Japanese are really proud that The Hu from Asia has conquered Europe. Download, Graspop…how do you feel playing such a big festival in Western world?

【THE HU】: Thank you so much! We love Japan and Sumo!
After playing in front of so many amazing crowds in Europe and the UK, we feel so much connection, love and support. Our fans chant with us, they sing with us and they mosh with us. After our headline shows we are so exhausted but we still go to the merch booth so we can meet and take pictures with every single fan and supporter of our music because we love them and we want them to know our gratitude. We want them to know that they’re important to us.

Q1: 相撲や伝統楽器など、モンゴルと日本にはいくつか共通点があります。
故に、THE HU がアジアの蒼き狼として Download, Graspop といった欧州のビッグフェスを軒並み制圧したことを嬉しく思いますよ。

【THE HU】: どうもありがとう!僕たちも日本と相撲が大好きだよ!
ヨーロッパや英国で沢山の素晴らしい観衆を前にプレイした後、僕たちは多大な愛情やサポート、そして繋がりを彼らから感じたんだ。僕たちのファンはチャントを送り、共に歌い、共にモッシュをしてくれたね。
ヘッドライナーを務めたライブの後はとても疲れていたんだけど、それでもマーチ販売のブースへと足を運んだんだ。一人一人全てのファン、僕たちの音楽のサポーターと会って写真を撮ったね。
なぜなら、僕たちは彼らを愛しているし、どうしても感謝を伝えたかったからなんだけどね。僕たちにとって、ファンが重要な存在であると知っていて欲しかったんだ。

Q2: So, it seems “Hu” is the Mongolian root word for human beings, right? What made you choose it for your band name?

【THE HU】: We chose the HU because of the inclusive nature of the word. We want to share our music to every human being in the world without any exclusion.

Q2: バンド名 “Hu” は、モンゴル語で大義では “人間” の意ですよね?

【THE HU】: “Hu” という言葉をバンド名に選んだのは、それが包括的には自然を意味するからなんだ。誰も除外することなく、世界中全ての “人間” に僕たちの音楽をシェアしたかったからね。

Q3: It’s incredible your great mixing metal/rock and Mongolian folk music. I think it’s one of the reason you get big attention from world. What made you start your unique blend of “Hunnu rock”?

【THE HU】: It started with our producer Dashka. 8 years ago, he travelled back to his parent’s birthplace in the mountains and got this idea of combining traditional Mongolian music with rock music. In 2016, the four band members together with Dashka started working on the first few songs. Creating and arranging these songs helped us find the sound we were looking for.

Q3: あなた達が世界中から注目を集めるのは、メタル/ロックとモンゴルの伝統音楽を独自のやり方でミックスしているからだと思います。その “Hunnu Rock” の起源を教えていただけますか?

【THE HU】: 僕たちのプロデューサー Dashka から始まったんだ。8年前、彼は旅行で両親の生まれ故郷である山脈を訪ね、モンゴルの伝統音楽とロックを融合するアイデアを得たんだよ。
2016年にバンドメンバー4人と Dashka とで最初の何曲かを作り始めたんだ。そうやって楽曲を創造し、アレンジする中で、僕たちが探し求めるサウンドを見つけたのさ。

Q4: When you were growing up, what kind of music were you listening to? Were there Mongolian instruments on your side?

【THE HU】: We grew up listening to Mongolian traditional music, Pink Floyd, Led Zeppelin, Metallica, Slipknot, Lamb of God and etc. We all studied Mongolian traditional instruments growing up. Gala and Temka were classmates at Mongolian State Music and Dance Conservatory since they were 12 years old. In the past years Gala, Enkush and I were in a Mongolian folk band Altain Orgil and toured together. As being folk musicians in Mongolian music scene, we’ve known each other for over a decade.

Q4: あなた達の音楽的なバックグラウンドはどの様なものですか?身近にモンゴルの伝統楽器はありましたか?

【THE HU】: もちろん、モンゴルの伝統音楽は聴いて育ったよ。それに PINK FLOYD, LED ZEPPELIN, METALLICA, SLIPKNOT, LAMB OF GOD 他にも沢山ね。全員がモンゴルの伝統楽器も学びながら育ったんだ。Gala と Temka モンゴルの音楽/舞踊学校で12歳の頃からクラスメイトだったしね。
過去数年、Gala, Enkush, そして僕はモンゴリアンフォークバンド ALTAIN ORGIL で共にツアーを行なっていたんだ。モンゴル伝統音楽のシーンでフォークミュージシャンをやっていたから、お互いに出会うことが出来たんだよ。

Q5: OK, let’s talk about your amazing debut-full “The Gereg”. When I had an interview with Nature G. of Tengger Cavalry (R.I.P), he said his songs are “It’s all about (Mongolian) Shaman, history, nature, horse and warrior spirit.”. How about you? Is there any concept or lyrical themes on this record?

【THE HU】: The inspiration behind our lyrics are from our Mongolian history and culture. Some of our songs contain old Mongolian rock inscription and war cries. Our message to the world via our music is reminding the importance of showing gratitude to your parents, loving your homeland, protecting the nature, loving and respecting women, respecting your country history and ancestors, and finally giving individuals an inner power and belief for their future.

Q5: では素晴らしきデビューフル “The Gereg” について話しましょう。
残念ながら亡くなってしまった TENGGER CAVARLY の Nature G. に以前インタビューを行ったのですが、彼は「僕たちの楽曲は、全てがシャーマン、自然、馬、そしてウォーリアースピリットについてなんだからね。」 と語っていました。

【THE HU】: 僕たちの歌詞は、モンゴルの歴史と文化にインスピレーションを受けているんだ。古いモンゴルの岩に刻まれた碑文や鬨の声を使用している楽曲もあるくらいでね。
僕たちの音楽を通して送る世界へのメッセージ。それは両親への感謝、生まれ育った地を愛する心、自然の保護、女性への愛と敬意、母国の歴史や祖先への愛などの重要性を思い起こさせることなんだよ。そうして最終的には、リスナーそれぞれの内なる力を目覚めさせ、未来を信じられるようにしたいんだ。

Q6: We know some Mongolian folk instruments close to Japanese traditional instruments. Actually, what kind of traditional instruments did you use in “The Gereg”?

【THE HU】: We use Morin Khuur, Tovshuur, Tumur Khuur, Tsuur, and Khengreg. They all have their own unique sounds and they’re all crucial to our genre.

Q6: モンゴル伝統楽器のいくつかは、日本の伝統楽器と似ていますよね? 今回使用した伝統楽器を教えていただけますか?

【THE HU】: モリンホール (馬頭琴)、トップシュール (モンゴル版リュート)、口琴、Tsuur (モンゴル版フルート) 、Khengreg だよ。全てがユニークなサウンドを持っていて、僕たちのジャンルには欠かせないものだ。

Q7: So, we didn’t know how emotional it becomes when Хөөмий (Khöömii) meets/metal world. But in the Western music industry, It seems singing in Mongolian and using Throat-singing is big challenge I think. Was it natural for you?

【THE HU】: Throat singing has been a Mongol technique for generations. Our grandfathers, fathers, mentors always did it. We genuinely respected that it came from our ancestors and wanted to respect and honor them while attempting to master the technique. We practiced this style for years since we were kids to be able to control it, apply it and now we’re infusing it into our songs because it feels natural to us. It’s who we are, it’s what we know, it’s where we come from. It comes from an honest human place that we’re proud of and comfortable with.

Q7: ロックとホーミーが交わった時、これほどエモーショナルなサウンドを創造するとは驚きです。
西洋が発祥であるロックの中で、モンゴル語で歌い、ホーミーを使用するのは実に大きなチャレンジですよね?

【THE HU】: モンゴルでホーミーとは世代から世代へ受け継がれるテクニックなんだよ。祖父、父、良き先人たちは全員が通ってきた道なんだ。祖先から受け継がれるホーミーを僕たちは真にリスペクトしていて、このテクニックをマスターする時は光栄な気持ちになるんだよ。
このスタイルは、子供の頃から何年もコントロール出来るよう練習して来ている。だから今ホーミーを僕たちの楽曲に融合させるのはとても自然に感じられるんだよ。
ホーミーとは、僕たちが誰なのか、僕たちが何を知っているのか、僕たちがどこから来たのか指し示すものさ。ホーミーは “正直な人間の地” から来ていて、それこそが僕たちにとって心地よく誇れるものなんだ。

Q8: Regarding traditional music, in Europe, there are great folk metal bands such as Finntroll, Turisas and Korpiklaani who draw on their own culture and mythology through their music. Do you think you are influenced by their spirit somehow?

【THE HU】: Sure, we love and respect every genre of the bands and musicians because we know that what it takes to be successful musicians.

Q8: 伝統音楽とメタルという意味では、欧州にも FINNTROLL, TURISAS, KORPIKLAANI といった自らの文化や神話と音楽を融合させているフォーキーなバンドがいますよね?

【THE HU】: もちろん、彼らからも影響を受けているよ。というよりも、全てのジャンルのバンドとミュージシャンを愛しリスペクトしているんだ。なぜならミュージシャンとして成功するのがどれだけ大変か、僕たちは知っているからね。

THE HU’S TRACK BY TRACK GUIDE OF “THE GEREG”

The Gereg

祖先が作った世界で初めてのパスポートだよ。13世紀、Gereg を持つものは沢山の国を妨げられたり傷つけられたりすることなく旅ができたんだ。アルバムを “The Gereg” と名付けたのは、僕たちが世界の国々を自由に旅し、音楽をみんなにシェア出来るからなんだ。つまり僕たちのアルバムこそが世界へのパスポートなんだよ。

Wolf Totem

僕たちは人は皆それぞれの戦士を内に秘めていると信じているんだ。”Wolf Totem” を通して、みんなのその内なる戦士を目覚めさせたかったのさ。恐怖に向かい合い打ち勝てるようにね。敵と向かい合い受け入れ、勝者として生まれ変わる楽曲さ。

The Great Chinggis Khaan

世界に僕たちサイドの物語を伝えたかった。チンギスハンは郵便、パスポート、交易など様々に良いものを世界にもたらしたんだ。マイナス30度、今年の2月極寒の中、チンギスハン生誕の地でMVを撮ったんだ。世界は戦士、征服者としてチンギスハンを見ているけど、この MVではモンゴル文化の発明家、建国の父の側面をよりシェアしているよ。

The Legend of Mother Swan

子供に注ぐ母の愛情の力の物語。モンゴル文化では母を深くリスペクトしているんだ。だって彼女たちがいるから僕たちが地球に居るんだからね。母白鳥が命を犠牲にして子供たちを守る物語だよ。現代世界に生きる全ての人にシェアされるべきメッセージだと感じている。

Shoog Shoog

シャーマンが祖先の魂と繋がり、モンゴルの神テングリを呼ぶ呪文なんだ。聖なる場所を崇め、僕たちの運命をテングリに委ねる楽曲なんだ。アップビートなテンポで、リスナーにエナジーを与えたかったんだ。

The Same

Tsogt Taij が1624年に岩に刻んだ詩を元にしている。真実は世界のどこにおいても同じ。天国で王様になろうが、地上で王様になろうが、下される善悪の判断はいつも変わらないというメッセージだよ。

Yuve Yuve Yu

祖先を敬い、自然保護を訴える楽曲。僕たちの世代に問いを投げかけているんだ。「なんで僕たちはこんな感じなの?」ってね。
このMVを撮るため、僕たちは西モンゴルのオフロードを14日で5,000キロも移動したんだ。何度も高山で凍え、砂漠では汗をかいたね。そうやって世界にモンゴルの美しい自然を見せたかったのさ。

Shireg Shireg

戦士が両親に別れを告げる曲。かつてモンゴルの戦士は戦いに向かう時、両親は知識を分け与え無事に帰還することを祈ったんだ。馬の蹄の音が聞こえるだろう?戦士が家を後に馬と戦いに向かっていたからなんだ。

The Song Of Women

僕たちの文化では、女性に対するリスペクトは最も重要なことの一つ。世界中で同様の扱いを受けるべきなのにね。全ての女性はそれぞれ美しい。この曲を通して、女性を賛美したかったし、自由に夢を追えるよう勇気づけたかったんだ。

参考文献: The Hu’s track-by-track guide to debut album The Gereg

FIVE ALBUMS THAT CHANGED THE HU’S LIFE

PINK FLOYD “THE WALL”

METALLICA “MASTER OF PUPPETS”

PANTERA “COWBOYS FROM HELL”

SEPULTURA “ROOTS”

THE HU “THE GEREG”

MESSAGE FOR JAPAN

Thank you for all of your support! We will see you soon!

サポートをありがとう!すぐに会おう!

THE HU

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【TENGGER CAVALRY : NORTHERN MEMORY, VOL.1】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH NATURE G. OF TENGGER CAVALRY !!

“The Whole World Know About The Mongol Invasion To Asia. But They Don’t Know That Long Before Mongolia, Countless Nomads Has Been Doing That, Meaning Invading And Immigrating To Northern China for Centuries. We Would Like To Bring Some Light To This Forgotten History To People.”

DISC REVIEW “NORTHERN MEMORY, VOL.1”

2017年の12月。遊牧民のメタルを世界に誇示する TENGGER CAVALRY の “ハン” Nature G. は、ニューヨークにそびえ立つ摩天楼の屋上に佇んでいました。
「実は元所属していたレーベルから法的な脅しのメールを受け取っていたんだ。まるで独裁者のような態度で、僕たちの10枚のアルバムの権利全てを彼らのものにしようとしてね。クソッタレさ。」
酒に酔い、惨めな気持ちでスマートフォンを眺めていた Nature G. は、自然に溢れ慣れ親しんだ内モンゴルから、現代的で雑然としたニューヨークへと居を移した憂鬱、そしてレーベルの過度な要求によるストレスが重なり自殺を試みようとしたのです。
現れた警官たちは、真摯に彼を心配していました。少しだけ救われたような気持ちで自殺を思い直した Nature G. は、そうして SNS に事の顛末をポストしたのです。
その投稿は大きな反響を呼びました。何より、Nature G. 宛に送られた300通を超えるメッセージは、その全てが同様に自殺を考えたり試みた経験のある友人やファンからだったのですから。
当時のインタビューで Nature G. は大きなショックを受けたことを明かしています。「みんな表面上は口にしないんだよ。完璧な人間であるかのように振舞ってね。だけど実際は、誰もが苦しんでいる。」
変化の必要性を痛感した Nature G. は決断を下します。現所属の老舗レーベル Napalm Records の助力とアドバイスを得て、問題を引きずっていたバンドを一旦解散すると、彼はオースティンへと旅立ちます。オースティンの優しいムードは Nature G. を惹き付け、風薫る草原は故郷モンゴルを思い起こさせました。そうして彼は里帰りの旅を決意するのです。
故郷で出会った力強い馬と人との営みは、Nature G. が TENGGER CAVALRY を結成した原点を見つめ直し、創造性の復活に大きな役割を果たしました。
「結局、馬を中心とした文化にインスパイアされているんだ。それがルーツなんだよ。動物と自然を愛する人達のための音楽さ。それが僕が音楽を書いている理由なんだからね。」
故に復活を遂げた TENGGER CAVALRY にとって、モンゴルへの報恩は当然、最優先事項となりました。実際、Nature G. はヴァイキングメタルの英雄たちが、祖国の遺産を誇りを持ってメタルと融合させていることにインスピレーションを受け、そのメンタリティーに賛辞を惜しみません。
「全世界が、モンゴル帝国のアジアへの侵攻を知っているよね。だけど、それ以前のモンゴルについてはよく知られていない訳だよ。無数の遊牧民族が何世紀にも渡って跋扈し、侵略し、中国北部に移住していったんだ。だから僕たちは、この忘れられた歴史に光を当て、みんなに知ってもらいたかったんだよ。」 そうして届けられた最新作 “Northern Memory, Vol.1” は、誇り高き遊牧民のレガシーを現代へと伝える高潔な絵巻物。
モンゴル帝国かつての栄華を誇示するように、繰り広げられるエピックはバンドのトレードマークであるモンゴル、中国の伝統音楽のみならず、中央アジアのフォークミュージックまでをも抱きしめています。
“砂漠のサウンド” と Nature G. が語るように、これまでのフォーキーなメロデスサウンドにマシナリーで無慈悲なイメージを加えた新生 TENGGER CAVALRY のサウンドスケープは、まさしく、広大なアジアが湛える荒涼と哀愁の一面まで素晴らしくカバーしているのです。
それは RAMMSTEIN の復活にも呼応する、伝統音楽とメタル、アジアと欧米、優雅と獰猛、自然と科学技術、古と現代、そして人の心、魂を巡る旅。時おり耳を捉える、ホーミーの響きも胸を抉ります。
今回弊誌では、Nature G. にインタビューを行うことが出来ました。「僕たちはいつも、ヘヴィーメタルと僕たちの文化を融合させたいと思っていたんだ。北京と内モンゴルは深く成熟した文化と遊牧民の歴史をシェアしているからね。」 どうぞ!!

TENGGER CAVALRY “NORTHERN MEMORY, VOL.1” : 9.7/10

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