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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【OU : Ⅱ: FRAILTY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ANTHONY VANACORE OF OU !!

“Yoko Kanno Is a Prolific Composer In That Area And She Is One Of My Favorite Composers, And Definitely Has an Influence In The Music Of OU.”

DISC REVIEW “Ⅱ: FRAILTY”

「最終曲の “Recall” でジェゴグを使うアイディアがあった。だからそのパートのレコーディングを手伝ってもらえないかと芸能山城組に連絡を取ったんだよ。彼らはとても親切に対応してくれたけど、残念ながら実現はしなかったね。そこで、僕の恩師のひとりであるマイケル・リプシーに連絡を取ったところ、彼がジェゴグの故郷であるインドネシア・バリ島の知り合いに連絡を取ってくれて、そこの偉大なミュージシャン、 Ida Bagus Made Widnyana がそのパートを録音してくれることになったんだ」
デビュー作で世界を驚かせた中国のプログ・メタル・アクト OU から連絡があったのは、彼らがセカンド・アルバムを制作している最中のことでした。あの芸能山城組とコンタクトを取りたい。デビュー作でインタビューを行ってくれた君に何かツテはないだろうか?と。
AKIRA のサウンド・トラックを手がけたビッグネームにツテなどあるはずがありません。しかし、なんとか彼らの期待に応えようと、コンタクト・フォームや電話などでアプローチを試みました。ありがたいことに、芸能山城組からはとても丁寧で親切な返信 (リモートではなく実際に同じ場所で演奏をしたいという哲学) をいただき、残念ながら今回のコラボレートは実現しないことになりました。
「日本のアニメの音楽には以前から興味があったよ。AKIRA の音楽は、これまでに作られたサウンドトラックの中で最も興味深いもののひとつだと思う!菅野よう子はこの分野で多作な作曲家であり、僕の好きな作曲家の一人で、間違いなく OU の音楽に影響を与えているよ」
実現こそしませんでしたがそれでも、私は OU の情熱と包容力と見識の高さに一層魅了されてしまいました。まず、AKIRA や菅野よう子、芸能山城組という日本が誇る革新的な文化に大きく影響を受けている見識の高さ。そして、中国という伝統文化の結晶から、さらにインドネシアのジェゴグ、日本文化にアプローチを試みるその情熱と包容力。まさに、多様性と寛容さが花開く現代のメタル世界、その象徴的存在でしょう。
「音楽全体のテーマとして共通しているのは、”Fragility” 脆さ。そして人間の状態というものが本当にどれほどか弱いものなのか、どれほど簡単に流されてしまうものなのかということを扱っているんだ」
実際、彼らが扱うテーマやその音楽自体も現代のメタルを体現し、今の世界を反映したもの。この暗い世界で私たちは、人間があまりに脆く弱い存在であることを再確認しています。より良き場所へ向かうはずだった世界は、人間の脆さにより挫折し、弱い人間を抑圧し排除するかつての短絡的で “簡単な” 生きづらいレールへと舞い戻ってしまいました。OU は、中国という奇妙にバランスとのれたしかし危うい国から、人間の弱さを見つめ直しています。そして同時に彼らは、かつて強さや勝利に重きを置いていたヘヴィ・メタルの世界線に、弱さや儚さの音の葉を注ぎ込んでメタルの現在地をも更新して見せました。
「STRAPPING YOUNG LAD 時代からずっと、彼の作品はほとんど全部好きだよ。特に彼のアルバムで好きなのは、”Ghost”, “Deconstruction”, Empath”, “Lightwork”, あとはすべてのライブ・アルバムだね。特に “Order of Magnitude” は素晴らしいよ」
そんな儚くも美しい “II:Frailty” において、最後のピースは Devin Townsend のプロデュースとゲスト参加に違いありません。まさにその身を挺してメタルの多様性を切り開いてきた偉人。プログ、パンク、アンビエント、ジャズ、オーケストラにアコースティックとさまざまな切り口でメタルの進化を促した Devin は、”Frailty” にミニマルで繊細な音の織物をマキシムにレイヤーしていきました。ミニマリズムとマキシマイズこそ Devin の真骨頂。爆発的なバンドの力と幽玄絶後なボーカル、そして煌びやかなシンセの海は、まさに狂おしく、夢のように波打ちます。
今回弊誌では、Anthony Vanacore にインタビューを行うことができました。21世紀の “Mandalyon” of THE GATHERING。 二度目の登場。どうぞ!!

OU “Ⅱ: FRAILTY” : 10/10

INTERVIEW WITH ANTHONY VANACORE

Q1: First of all, I was surprised that you wanted to collaborate with Geino Yamashiro Gumi, even though it didn’t end up happening. You were also interested in traditional instruments like Jegog?

【ANTHONY】: Originally I had the idea of using Jegog in the final track, “Recall”, so I reached out to them to see if they could help me record the parts. They responded and were very kind, but unfortunately they weren’t able to do it. I reached out to one of my former teachers, Michael Lipsey, and he put me in touch with someone he knows from Bali Indonesia, where the jegog originates from, and a great musician there named Ida Bagus Made Widnyana was able to record the parts for me.

Q1: まず、結果的に実現しなかったとはいえ、芸能山城組とのコラボレーションを希望していたことに驚きました。ジェゴグのような伝統楽器にも興味があったのですか?

【ANTHONY】: 元々、最終曲の “Recall” でジェゴグを使うアイディアがあった。だからそのパートのレコーディングを手伝ってもらえないかと彼らに連絡を取ったんだよ。彼らはとても親切に対応してくれたけど、残念ながら実現はしなかったね。
そこで、僕の恩師のひとりであるマイケル・リプシーに連絡を取ったところ、彼がジェゴグの故郷であるインドネシア・バリ島の知り合いに連絡を取ってくれて、そこの偉大なミュージシャン、 Ida Bagus Made Widnyana がそのパートを録音してくれることになったんだ。

Q2: Geinoh Yamashiro Gumi is also known for its collaboration with Akira. Were you also interested in subcultures such as Japanese anime, video games and music?

【ANTHONY】: Yes, I’ve been interested in music from Japanese anime for quite a while. The music to Akira I think is one of the most interesting soundtracks ever created! Yoko Kanno is a prolific composer in that area and she is one of my favorite composers, and definitely has an influence in the music of OU.

Q2: 芸能山城組は AKIRA の音楽を担当したことでも知られています。日本のアニメやゲーム、音楽などのサブカルチャーにも興味があったんですね?

【ANTHONY】: そうだね。日本のアニメの音楽には以前から興味があったよ。AKIRA の音楽は、これまでに作られたサウンドトラックの中で最も興味深いもののひとつだと思う!菅野よう子はこの分野で多作な作曲家であり、僕の好きな作曲家の一人で、間違いなく OU の音楽に影響を与えているよ。

Q3: Well, now that you’ve done that, “II: Frailty” is a really great album! First of all, could you tell us why you chose this album title?

【ANTHONY】: I guess a common thread found thematically throughout the music is fragility and just how frail the human condition really is, just about how easily it can be swept away.

Q3: それにしても “II:Frailty” は本当に素晴らしいアルバムですね!まず、このアルバム・タイトルを選んだ理由から教えていただけますか?

【ANTHONY】: このアルバム、その音楽全体のテーマとして共通しているのは、”Fragility” 脆さ。そして人間の状態というものが本当にどれほどか弱いものなのか、どれほど簡単に流されてしまうものなのかということを扱っているんだ。

Q4: “Frailty” is a word that means fragility, weakness, and transience, and such elements are often thought of as basically the opposite of metal. However, this album perfectly embodies that fragility in metal! This is truly an album that conveys the breadth of metal and that metal is not only about strength and triumph, would you agree?

【ANTHONY】: I think if you want to interpret it that way, it’s great! I’d rather let people interpret the music in their own way.

Q4: “Frailty” とは、脆さ、弱さ、はかなさなどを意味する言葉で、そうした要素は基本的にメタルとは対極にあると思われがちです。しかし、このアルバムはメタルにおける “脆さ” を完璧に体現していますね。
メタルの幅の広さを伝えるアルバムで、メタルは強さや勝利だけではないことを証明しています。

【ANTHONY】: その解釈は素晴らしいことだと思う!ただ、僕はむしろ、人々が自分なりの方法で音楽を解釈することに任せたいんだよ。

Q5: I felt that there were more traditional Chinese melodies scattered in this piece than in your debut work. Many Chinese melodies are fragile and beautiful, Did you use more Chinese melodies because they were in sync with the theme of this album?

【ANTHONY】: There will always be some melodic fragments here and there that subconsciously came from Chinese melodies. Anything that is written is always written because it seems the natural thing to do, or the song just wants it to be that way.

Q5: この作品には、デビュー作よりも中国の伝統的な旋律が散りばめられているように感じました。中国のメロディーは儚く美しいものが多いのですが、このアルバムのテーマとシンクロしていますよね?

【ANTHONY】: 無意識のうちに中国の音楽に由来するメロディーの断片があちこちに必ず出てくるんだよ。僕が書いたものはいつも、そうするのが自然だと思えたからそう書かれている。楽曲もただそうあってほしいと思ったから書かれたものなんだ。

Q6: What surprised me was that Devin Townsend produced the album and even guested on it! How did Devin get involved?

【ANTHONY】: Devin was an idea that came from the head of InsideOut, Thomas Waber. He reached out to him and Devin was down to be a part of it! It was one of the great honors of my life to work with him, he’s a truly incredible human being.

Q6: 驚いたのは、Devin Townsend がアルバムをプロデュースし、ゲスト参加まで果たしていることです!

【ANTHONY】: Devin の参加は、Inside Out の代表であるトーマス・ウェーバーのアイデアから生まれたんだ。彼がアプローチしてくれたんだけど、ぜひこの作品に参加したいと言ってくれた!彼と一緒に仕事ができたことは、僕の人生の中で大きな栄誉のひとつだね。彼は本当に素晴らしい人間だよ。

Q7: Devin is a truly diverse artist who straddles metal, prog, ambient, and acoustic, and has a great affinity for the diverse music of the OU. Which of his works do you particularly like or refer to?

【ANTHONY】: I love almost all of his work, all the way from the Strapping Young Lad days. Some my favorite albums of his include Ghost, Deconstruction, Empath, Lightwork, all the live albums especially Order of Magnitude.

Q7: Devin はメタル、プログ、アンビエント、アコースティックにまたがる実に多様なアーティストで、OU の多様な音楽とも親和性が高いですよね。
彼の作品の中で特に好きなもの、参考にしているものはどれですか?

【ANTHONY】: STRAPPING YOUNG LAD 時代からずっと、彼の作品はほとんど全部好きだよ。特に彼のアルバムで好きなのは、”Ghost”, “Deconstruction”, Empath”, “Lightwork”, あとはすべてのライブ・アルバムだね。特に “Order of Magnitude” は素晴らしいよ。

Q8: Perhaps your music would be described as prog-metal. Many of the prog giants are old and have passed away. Meanwhile, the world is dominated by the instant culture of social networking and clippings, and few young people will bother to take the time and trouble to pursue a epic and complex prog. So, What was it that drove you guys to the prog in such a situation?

【ANTHONY】: It was simply to realize music that was in your heart and do everything you could do to make it a reality. Whether it is accepted or not on a scale commercially that makes it viable to earn money or make a living from, in many ways that is out of your hands. So simply to realize music that you believe in with all your heart, that in itself is the most important to me.

Q8: おそらく OU の音楽はプログ・メタルと表現されるでしょう。プログの巨人の多くは高齢となり、他界した人も少なくありません。
一方で、世の中はSNSやクリッピングのインスタント文化に支配され、わざわざ時間と手間をかけて壮大で複雑なプログを追求する若者は少なくなりました。そんな中、あなたたちをプログに駆り立てるものは何なのでしょうか?

【ANTHONY】: プログに駆り立てるもの。それは単純に、自分の心の中にある音楽を実現し、それを実現するためにできることをすべてやるという決意だね。それが商業的に受け入れられるかどうか、それでお金を稼いだり生計を立てたりできる規模になるかどうかは、いろんな意味で自分たちの手には負えない。だから、自分が心から信じられる音楽を実現すること、それ自体が僕にとって最も重要なことなんだ。

ANTHONY’S PLAYLIST: FIVE ALBUMS !!

Plini “Mirage”

Tigran Hamasyan “The Kingdom”

The Gathering “If_then_else”

Sejin Bae “Direction”

Joe Henderson “In ’n Out”

MESSAGE FOR JAPAN

We hope to visit Japan in the near future!! One of my beloved drum teachers, Gene Jackson, lives in Tokyo, if you want to see one of the greatest drummers of all time I recommend you to check out his gigs!!! ありがとうございます!!!

近い将来、日本を訪れたいと思っているよ!僕の大好きなドラムの先生の一人、Gene Jackson が東京に住んでいるからね!歴史上最高のドラマーの一人だから、ぜひライブを見てほしいね。ありがとうございます!!!

ANTHONY VANACORE

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【虚极 (BLISS-ILLUSION) : 森羅万象】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DRYAD OF 虚极 (BLISS-ILLUSION) !!

“I Personally Believe That Black Metal Is a Very Special Form Of Music, With Themes Given To It By People. I Don’t Care About These Things, I Love Black Metal Very Much, But I Won’t Be Limited To My Love For It.”

DISC REVIEW “森羅万象”

「僕たちの音楽テーマは “雰囲気” という多くの概念を統合したもので、言葉で表現するのは難しいんだ。個人的には、ロマンティックで神秘的な色彩にとても敏感だよ。僕たちの音楽作品に対する理解が固定化されないことを、ただ願っているだけだよ」
中国名の虚极とは古代の書物 “道德经”(TaoTeChing)に出てくる言葉で、この言葉は非現実と現実の間に似た状態を表しています。中国・北京出身の虚极(Bliss-Illusion)は、文字通り、現実と非現実の間にあるメタルを奏でているようです。彼らの現実であるアトモスフェリックなポスト・ブラックのサウンドは、エモーショナルで瞑想的、そして純粋に美しいアートです。しかし、それ以上に際立っているのは、彼らの非現実、スピリチュアルなテーマでしょう。仏教的な歌詞の内容、中華的なイメージ、そしてそれらを具現化した音のパレットは暗黒の烙印を押されがちなこのジャンルにおいて、独特の新鮮な風を吹き込んでいます。
「僕は個人的に、ブラックメタルは人によって異なる与えられたテーマを持つ、とても特別な音楽形態だと信じている。つまり、悪魔崇拝とかそんなことはどうでもよくて、僕はブラックメタルをとても愛しているんだよ。でも、その愛に縛られるつもりはないんだ」
原始的なブラックメタルがそのイメージやリリシズムに至るまで、悪魔崇拝を根底に置いていることは否定できない事実でしょう。そして、その背景は Bliss-Illusion のスピリチュアルなアイデンティティとは対極にあるようにも思えます。しかし、彼らはブラックメタルを近年の流れと同調しながら、より自由に、より多様にその神秘性を追求する器として使用しています。
ただし、ブラックメタルと仏教には共通項も存在します。両者には天国と地獄があり、神秘的な生け贄の儀式も存在します。さらに仏教にはサタンに似た “悪魔” 波旬(ボー・シュン)が存在しますがこれは、六道の魔王、六波羅蜜の主、天魔の主、あるいは自己変容の主として様々な苦悩をもたらすもの。こうした共通の概念は、Bliss-Illusion の仏教ブラックメタルにに無限の可能性を与えているのです。つまり、白と黒の表現が違うだけで、核心は不変。
「僕自身は、仏教は宗教ではなく、普遍的な法則であり、非常に賢明な哲学だと信じているんだ。音楽は人が創り出すもので、それは無限なんだ。宇宙よりも広いのは、僕たちの想像力、それだけだからね」
Bliss-Illusion の宇宙には、仏教だけでなく、道教や儒教の哲学も含まれています。ゆえに、ここに伝統的な意味でのブラックメタルは存在しません。しかし、伝統的な中国人の意識に沿った宗教哲学をブラックメタルで表現したいという彼らの熱意、挑戦心こそ、本来ブラックメタルに備わっていた反骨でしょう。そしてその長江の流れのように瞑想的で、悠久で、オリエンタルな彼らの音楽は、まずは欧州から世界へと羽ばたこうとしています。
今回弊誌では、仏教に改宗したボーカリスト Dryad にインタビューを行うことができました。「僕はゲーム機を集める筋金入りのハードコア・プレイヤーなんだ。ブックオフ、ゲオ、スーパーポテトによく行くよ。4歳からゲームをしていて、たくさんのゲーム機を集めているんだ!アタリ、ゲームウォッチ、GB、FC、SFC、N64、NGC、MD、ドリームキャスト、SS、NDS、3DS、PSP、PSV、ワンダースワン、ゲームギア、WiiU、PSなどなどだね!」 どうぞ!!

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【HOUKAGO GRIND TIME / RIPPED TO SHREDS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ANDREW LEE OF HOUKAGO GRIND TIME / RIPPED TO SHREDS !!

“I Want To Express My Love For Anime Through Music, And I Think Educated Listeners Can See That I Have Equal Love For Both Moe Anime And Goregrind.”

DISC REVIEW “HOUKAGO GRIND TIME2 / 劇變(JUBIAN)”

「僕は、自分が感情移入できないもので芸術を作るのは好きではないんだよ。だから、音楽を作るときは、特に作詞作曲や映像のデザインをする場合はいつでも、自分が情熱を傾けられるような題材でなければならないんだ。僕は音楽を通してアニメへの愛を表現したいし、教養のあるリスナーには僕が萌えアニメとゴア・グラインドを等しく愛していることが分かると思う」
愛するものを、自らのアイデンティティを、自然に自由にアートへと昇華する。言うは易く行うは難し。特に、音楽が金銭と直結しにくくなった現代において、理想のハードルは以前よりも高くそびえ立っています。
しかし結局は、案ずるより産むが易し。台湾からアメリカに移住したアジア系アメリカ人の Andrew Lee は、HOUKAGO GRIND TIME ではアニメに対する愛と情熱を、RIPPED TO SHREDS では自らの出自である中国/台湾のアイデンティティで “自らの声” を織り込み、二足のわらじで “嘘のない” アートを実現しています。
「エンターテイメントとは、そのエンターテイメントが市場の需要に応えるという意味で、それを生み出す社会の反映なんだ。エンターテイメントが社会から排除された人たちにオアシスを提供するのは良いことだけど、だからそのエンターテイメント自身が資本主義によって作られた “製品” に過ぎないように感じることがよくあるんだよね」
もしアニメ “けいおん!” の放課後ティータイムがグラインド・コアをやっていたら…そんな荒唐無稽を想像させるような夢のある地獄のグラインドコアが HOUKAGO GRIND TIME。グラインドコアもアニメの世界の一角も、荒唐無稽で大げさでそこそこに不真面目であるべきで、だからこそ、その両者を併せ持った HOUKAGO GRIND TIME の音には説得力が二倍となって宿ります。
さらに言えば、メタルもアニメも社会から時に抑圧され、時に無視される “オタク” にとっての拠り所、逃避場所、心のオアシスで、その両者を併せ持つ HOUKAGO GRIND TIME の寛容さももちろん二倍。重要なのは、Andrew の精神や目的が資本主義の欺瞞から最も遠く離れた場所にあることでしょう。ゆえに、ここには逃げられる、心を許せる、心底楽しめる。
「僕は、他のアジア系アメリカ人が “自分たちの” デスメタルバンドを結成し、自分たちにとって重要なテーマについて歌うようになればいいと思っているんだよ。多くのアジアのバンドは、特にアンダーグラウンドでは、プレゼンテーションやテーマの面で西洋の同世代のバンドを真似してきたからね。SABBAT, IMPIETY, ABIGAIL みたいなバンドは、ビール、パーティー、サタン/キリスト、その他西洋のテーマについて歌っているから」
デスメタルを追求する Andrew もう一つの翼、RIPPED TO SHREDS でも彼の正直さ、純粋で無欲な姿勢は一向に変わりません。Relapse 期待の一作 “劇變”(Jubian)” は、スウェーデンの古を召喚した地獄のようなデスメタルでありながら、スラッシュ譲りの獰猛さとメロディアスなギターワークを備えます。
中国語を多用した歌詞やタイトル、項羽と劉邦や三国志をイメージさせるアートワーク、そしてあの HORRHENDOUS にも例えられるプログレッシブで鋭い技巧の刃は明らかにステレオタイプのメタルをなぎ倒す怒涛のモメンタム。このわずか33分で RIPPED TO SHREDS は歴史、アイデンティティ、そして中国/台湾とアメリカとの関係について深く考察し、自分の頭で考え、自分の音楽を、自分にとって重要なテーマで語っているのです。
RIPPED TO SHREDS の目標の一つは、アジア系アメリカ人のメタルに対する認知度を高めること。Andrew は、歴史の陰惨な側面に立ち向かいながら、キャッチーなリフとエモーショナルかつ奇抜なソロの洪水よって、この目標を実現に近づけていきます。”アメリカのマイノリティであることは本質的に政治的” “アメリカの文脈の中で中国のアートを作るという行為こそが破壊的な問題提起” だと Andrew は指摘しますが、”劇變(Jubian)” はまず細部に至るまで豊かで濃密なヘヴィ・メタルです。
特に “獨孤九劍月神教第三節(In Solitude – Sun Moon Holy Cult Pt 3)” にはコントロールされたカオスが大量に盛り込まれていて、この10分の作品は、疾走感から壮大なメロデスの慟哭、ドゥーミーな中間部までエピックのスイを尽くしてリスナーを民話に根ざした物語に惹きこんでいきます。秦の時代、豊満な戦士が宦官に変装して宮中に忍び込み、皇太后を誘惑するというおかしくも恐ろしいエピソードから、アメリカの原爆投下、中国の重層的な政治的歴史まで、RIPPED TO SHREDS が扱うテーマには必ず Andrew のアイデンティティが下敷きにあって、彼はヘッドバンキングの風圧でそこに火を注ぎ、見事に燃焼させていくのです。
今回弊誌では、Andrew Lee にインタビューを行うことができました。「世の中にはアニメ・ゴア/BDMバンドが少なくないけど、彼らはグロ・ロリ・バイオレンスを “ショック・バリュー” “衝撃度” として使っているだけで、本当にそのテーマに興味を持っているバンドは皆無だよね。アイツらは、自分らのポルノの題材で一瞬たりともシコってないんだよ。ヤツらはただ “hentai violence” でググって、任意の過激な画像をアルバムに載せているだけ。まさに、怠惰なビジュアル、怠惰なテーマ、怠惰なアート、怠惰な音楽」 どうぞ!!

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【OU : ONE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ANTHONY VANACORE OF OU !!

“I Am The Only Non-Chinese In The Band, But We Are a Chinese Band Through And Through. So For There To Be Chinese Lyrics And Some Chinese Sensibilities In The Music Is Just Natural.”

DISC REVIEW “ONE”

「中国、特に北京の音楽シーンは豊かで多様性に富み、活気に満ちているよ。だけど OU は政治には関与しないんだ」
北京のジャズ・シーンで育まれた OU(オー)は、定型化した現代のプログ世界、その停滞したエネルギーに真っ向から歯向かうデビュー作 “One” でメタル異世界のルール無用を叩きつけました。
「中国に来て10年になる。私に言えることは、(このバンドの3人のメンバーも含めて)私にはここに心から愛する友人がたくさんいて、彼らは私にとってまさに家族のような存在だということなんだ」
作曲家で偉大なジャズ・ドラマーでもあるニューヨーク出身の Anthony Vanacore は、大規模な中国ツアーをきっかけに、彼の地の文化や言語に惚れ込み移住を決断します。杭州に移り、”客” ではなくその場所の人間として暮らすうち、彼は外国からみれば統制や不自由の中で暮らす人々の本来備わった人間味や優しさに触れていきました。文化が違えど、人は、個人個人はそんなには違わない。それは音楽も同じです。
「O はバンドの4人の血液型がO型だからで、その後 OU に変えたんだ。ピンイン(中国語のローマ字表記)では O と同じ発音で、”謳” という漢字が対応していて、それには “唱える” という意味があるから、このバンドにはとても合っているんだよ」
中国の “人” と触れ合いはじめた Anthony は北京音楽シーンの素晴らしさにも気づきます。そうして、クラブや本職の音楽教師から仲間を募り、数年の歳月を経て、それぞれのメンバーが特別な調味料を加える複雑な音の中華料理 OU が完成します。
目まぐるしくも自由自在のリズムから幽玄なアルペジオの残響、そして催眠術のように正直で率直なヴォーカル・パフォーマンスまで、この驚くべき料理 “One” にはプログとアンビエント、そしてメタルの旨味が詰まっています。もしかしたら、三国志を終焉に導いたのは彼らなのでしょうか。陽気さ、静謐さ、獰猛さを見事 “一つ” に調和させた OU は、さながら蒸してもよし、焼いてもよし、揚げてもよしの餃子を3000年の歴史から進化させる抜きん出た料音人だと言えるでしょう。
「私はバンド内で唯一の非中国人だけど、それでも私たちは根っからの中国のバンドなんだよね。だから、中国語の歌詞や中国的な感性が音楽に入っているのは、ごく自然なことなんだよ」
OU は、現代的なプログレッシブ・アクトへの強い愛情を示しながらも、彼ら独自のサウンドを切り開いてきました。ハイパー・ポップな HAKEN のように、OU は “Farewell 夔” や “Prejudice 豸” の重く複雑怪奇なグルーヴに、常に嫋やかで優雅なシンセの絹地を織り込んでいきます。まさに張飛、針に糸を通す。この泰山と長江のような美しくも悠久の対比は Devin Townsend や THE GATHERING のキネティックな作品にも匹敵し、さらに貂蝉のように美しく舞うしなやかな Lynn Wu の呪文はこの静謐でしかし刺激的なアートにえもいわれぬ独自性を加えています。
「アジアの伝統音楽には、欧米ではあまり知られていない、未開発の感情や質感がたくさん備わっていると思うんだ。アジアの伝統音楽が、アジア以外の国の音楽にもどんどん浸透していくのは時間の問題だと思っているよ」
実際、中国らしい Lynn の抑揚とゆらぎのある音は、OU を Inside Out のようなメジャーに引っ張る原動力となったはずです。聳え立つ “Mountain 山” では、Lynn の声をマルチトラックで聴かせながら、トラックごとに感情をエスカレートさせる絶妙なマルチバース空間を創造。一方で、”Ghost 灵” “Light 光” の幽玄なセクションで彼女のノイズは言葉ですらなく、最小限の伴奏として存在し、ビョークのような実験的アーティストの手法に似た推進力として扱われています。
他にも例えば、OU を聴いて、Enya, LEPROUS, LTE, RADIOHEAD, PORTISHHEAD, MASSIVE ATTACK といったバンドの姿が目に浮かぶのは自然な感性でしょうが、それだけでは十分ではありません。ここには東洋的な無調や不協和が西洋のモダンなポリリズムと織りなす、シルクロードのタイムマシンが洋々と乗り入れています。
もちろん、熟練したジャズ・ミュージシャンである、Anthony とベーシスト Chris Cui によるリズムのバックボーンは、タイトで整然としながらも混沌としたロックの側面を自在に謳歌。ギタリスト Jin Chan の神秘的な舞踏は二人のタクトで華麗に舞い上がります。まさに指揮者を失った兵ほどみじめなものはない。
老齢化したプログの巨人たちがいつまでも黄忠でいられる保証はありません。OU は国際的な聴衆から切り離されがちな中国にありながら、いやむしろあったからこそ、復権を願うプログ世界の、そしてアジアの希望となりました。中国では食事を少し残すのが礼儀とされていますが、”One” の音楽を一欠片でも残すことは大食漢のプログマニアには実に難しいミッションとなるでしょう。
今回弊誌では、Anthony Vanacore にインタビューを行うことができました。「私はニューヨークのフラッシングに住んでいたんだけど、この街にはかなり大きな中国人コミュニティがあってね。ツアーから戻るとその場所と交わりながら、自分の生活環境に新たな視点が生まれ、中国の文化や言語にますます魅了されるようになっていったんだ」 どうぞ!!

OU “ONE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【TENGGER CAVALRY : NORTHERN MEMORY, VOL.1】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH NATURE G. OF TENGGER CAVALRY !!

“The Whole World Know About The Mongol Invasion To Asia. But They Don’t Know That Long Before Mongolia, Countless Nomads Has Been Doing That, Meaning Invading And Immigrating To Northern China for Centuries. We Would Like To Bring Some Light To This Forgotten History To People.”

DISC REVIEW “NORTHERN MEMORY, VOL.1”

2017年の12月。遊牧民のメタルを世界に誇示する TENGGER CAVALRY の “ハン” Nature G. は、ニューヨークにそびえ立つ摩天楼の屋上に佇んでいました。
「実は元所属していたレーベルから法的な脅しのメールを受け取っていたんだ。まるで独裁者のような態度で、僕たちの10枚のアルバムの権利全てを彼らのものにしようとしてね。クソッタレさ。」
酒に酔い、惨めな気持ちでスマートフォンを眺めていた Nature G. は、自然に溢れ慣れ親しんだ内モンゴルから、現代的で雑然としたニューヨークへと居を移した憂鬱、そしてレーベルの過度な要求によるストレスが重なり自殺を試みようとしたのです。
現れた警官たちは、真摯に彼を心配していました。少しだけ救われたような気持ちで自殺を思い直した Nature G. は、そうして SNS に事の顛末をポストしたのです。
その投稿は大きな反響を呼びました。何より、Nature G. 宛に送られた300通を超えるメッセージは、その全てが同様に自殺を考えたり試みた経験のある友人やファンからだったのですから。
当時のインタビューで Nature G. は大きなショックを受けたことを明かしています。「みんな表面上は口にしないんだよ。完璧な人間であるかのように振舞ってね。だけど実際は、誰もが苦しんでいる。」
変化の必要性を痛感した Nature G. は決断を下します。現所属の老舗レーベル Napalm Records の助力とアドバイスを得て、問題を引きずっていたバンドを一旦解散すると、彼はオースティンへと旅立ちます。オースティンの優しいムードは Nature G. を惹き付け、風薫る草原は故郷モンゴルを思い起こさせました。そうして彼は里帰りの旅を決意するのです。
故郷で出会った力強い馬と人との営みは、Nature G. が TENGGER CAVALRY を結成した原点を見つめ直し、創造性の復活に大きな役割を果たしました。
「結局、馬を中心とした文化にインスパイアされているんだ。それがルーツなんだよ。動物と自然を愛する人達のための音楽さ。それが僕が音楽を書いている理由なんだからね。」
故に復活を遂げた TENGGER CAVALRY にとって、モンゴルへの報恩は当然、最優先事項となりました。実際、Nature G. はヴァイキングメタルの英雄たちが、祖国の遺産を誇りを持ってメタルと融合させていることにインスピレーションを受け、そのメンタリティーに賛辞を惜しみません。
「全世界が、モンゴル帝国のアジアへの侵攻を知っているよね。だけど、それ以前のモンゴルについてはよく知られていない訳だよ。無数の遊牧民族が何世紀にも渡って跋扈し、侵略し、中国北部に移住していったんだ。だから僕たちは、この忘れられた歴史に光を当て、みんなに知ってもらいたかったんだよ。」 そうして届けられた最新作 “Northern Memory, Vol.1” は、誇り高き遊牧民のレガシーを現代へと伝える高潔な絵巻物。
モンゴル帝国かつての栄華を誇示するように、繰り広げられるエピックはバンドのトレードマークであるモンゴル、中国の伝統音楽のみならず、中央アジアのフォークミュージックまでをも抱きしめています。
“砂漠のサウンド” と Nature G. が語るように、これまでのフォーキーなメロデスサウンドにマシナリーで無慈悲なイメージを加えた新生 TENGGER CAVALRY のサウンドスケープは、まさしく、広大なアジアが湛える荒涼と哀愁の一面まで素晴らしくカバーしているのです。
それは RAMMSTEIN の復活にも呼応する、伝統音楽とメタル、アジアと欧米、優雅と獰猛、自然と科学技術、古と現代、そして人の心、魂を巡る旅。時おり耳を捉える、ホーミーの響きも胸を抉ります。
今回弊誌では、Nature G. にインタビューを行うことが出来ました。「僕たちはいつも、ヘヴィーメタルと僕たちの文化を融合させたいと思っていたんだ。北京と内モンゴルは深く成熟した文化と遊牧民の歴史をシェアしているからね。」 どうぞ!!

TENGGER CAVALRY “NORTHERN MEMORY, VOL.1” : 9.7/10

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