EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ELEPHANT GYM !!
“We Feel Lucky That We Are Holding Instruments Rather Than Guns. We Feel Lucky That We Are Expressing Love Rather Than Hatred. We Feel Even More Lucky That Our Music Is Able To Connect People From Japan, China, USA And Other World”
DISC REVIEW “DREAMS”
「台湾人として、私たちは毎日恐怖の中で生活している。恐怖は私たちの潜在意識に溶け込んでいるんだ。時には、日常生活を送るために、私たちの意識はそうした恐怖を忘れて、否定しなければならないこともあるくらいにね。戦争が起これば、私たちは戦場に行かなければならないんだ。だから、銃ではなく、楽器を持っていることが幸せなんだよ。憎しみではなく、愛を表現していることを幸運に思うんだよ」
2012年に “マスロック” に対する至上の愛を共有し結成された Elephant Gym。2年後にリリースしたファーストアルバム “Angle” で彼らは、”数学のロック” に共通する複雑な拍子記号やテクニカルな演奏によって、幾何学的な音楽のタワーを見事に構築しました。もちろん、10年の時を経た今でもそうした無機的な音の伏魔殿は彼らの一部として存在をしていますが、より柔軟に世界を広げた台湾のトリオは、音楽という方程式に対する解法をいくつも手に入れたようです。憎しみではなく、愛を表現するために。
「”夢” は、Elephant Gym にとって “音楽のインスピレーションはどこから来るのか” という問いに対する答えなの。眠りについた後、脳は今までに経験したすべてのことをバラバラにして、非常に変わった方法で混ぜ合わせ、再編成するの。これは実は、音楽を作るプロセスと非常によく似ていてね。過去に記憶した音を独自の方法で現在に再編成し、一つ一つが特別な夢であるのと同じように、それぞれの特別な曲となっていくから」
Elephant Gym にとって “夢” とは、現実に溶け込む恐怖からの退避場所であり、音楽のインスピレーションの源であり、マスロックという狭い檻から超越するための手段でもあります。冷淡で機械的とも捉えられかねない理系のロックに、夢見がちでエモーショナルなポストロックの文学性を注ぎ込んだ彼らは、ロックの力強さも、ジャズの知性も、クラシックの優美もすべてをパズルのピースとして使用し、最新作 “Dreams” で想像力や表現力の境界を越えたのです。
「Lin Sheng Xiang は、私たちの音楽に対するアティテュードにかんして大きな影響を与えた人なんだ。彼と音楽の仕事をするのは、私たちの目標の一つだった。私たちと Lin の音楽の異なる美学を共存させ、互いのバランスを見つけることは、挑戦的でありながら非常に興味深いことだよ」
狭い場所にとどまらず、柔軟性を保ち、表現の解法を多く探るため、Elephant Gym は様々なアーティストとのコラボレーションを積極的に進めてきました。ブレイク中のネオソウル・アーティスト9m88、客家のフォークシンガー Lin Sheng Xiang、そして日本の若獅子 chilldspot の比喩根。奇しくもアルバムには、北京語、英語、客家語、日本語という台湾の人たちが話す言葉が集結することとなりました。
マスロックのルーツを提示するため、日本の鬼才 Toe の “Two Moons” を “Go Through The Night” にサンプリングする一方で、CHIO-TIAN FOLK DRUMS & ARTS TROUPE 九天民俗技藝團とのコラボレーションでは、”Deities’ Party” の直感的な轟音に到達します。客家との共演もそうですが、伝統的なアジアの音楽には、彼らが演奏するのと同じ奇妙な拍子記号がありながらも、音符では表現不可能な直感的ニュアンスが存在しています。だからこそ、伝統的なサウンドとの共存は、彼らの世界を一度破壊して、夢のように再構築するための最高のスパイスとなったのです。
そうして彼らは、”Dear Humans” のダーウィンや、”Witches” のシェイクスピアで映画やミュージカルの世界まで広く見据えることになりました。すべては、音楽に境界はない、世界に境界はないという想いから。自分と反対側、別世界を受け入れ、尊重することで世界はもっと面白くなるから。多様性は許容し愛することから生まれるから。解へとたどり着く道は、決して一つではないのですから。
今回弊誌では、Elephant Gym の3人にインタビューを行うことができました。「私たち人間の血には暴力が根付いていて、戦争は私たちの集合意識の中にある、劣等感と圧倒的な混乱の結果なんだろうな。でも私たちは、たとえ宣戦布告をした相手であっても、誰も悪者とは見なさないよ。なぜなら、彼らはもっともっと心に痛みを抱えていたはずだから」 どうぞ!!
Elephant Gym 『Dreams』
Release Date:2022.05.11 (Wed.)
Label:WORDS Recordings
Tracklist:
1. Anima
2. Go Through The Night
3. Shadow feat. hiyune from chilldspot
4. Witches
5. Dreamlike
6. Wings feat. Kaohsiung City Wind Orchestra
7. Happy but Sad
8. Shadow feat. 9m88
9. Deities’ Party feat. Chio Tian Folk Drums And Art Troupe
10. Dear Humans -Japanese ver.-
11. Gaze At Blue -Album ver.-
12. Fable
13. Dream of You feat. Lin Sheng Xiang
ELEPHANT GYM “DREAMS” : 10/10
INTERVIEW WITH ELEPHANT GYM
Q1: First of all, congratulations on your upcoming appearance at Fuji Rock! Could you tell us how you are feeling right now? Also, Of course, you’ve played in Japan many times before, but are there any artists you are looking forward to meeting there?
【TU】: Getting on the stage of Fuji Rock has been one of our dreams. I heard from my friends and saw the YouTube videos about how amazing the festival is. There are a lot of other bands which we have played with will join the festival as well, like SPECIAL OTHERS, toconoma, and LITE. It’s really exciting to get together with these old friends once again at such a remarkable place. We hope to bring everyone a great show at Fuji Rock.
Q1: フジロック’22 出演決定おめでとうございます!まずは、今のお気持ちから聞かせていただけますか? もちろん、あなたたちはこれまで何度も来日を果たしていますが、現地で会ってみたい人はいますか?
【TU】: フジロックのステージに立つことは、ずっと私たちの夢の一つだった。友達から聞いたり、YouTube の動画でフジロックのすごさを知っていたからね。
SPECIAL OTHERS、toconoma、LITE など、私たちが一緒に演奏したことのあるバンドがたくさん参加する予定なのも楽しみだよね。こうした素晴らしい場所で、古い友人たちと再び集まれるのは本当にエキサイティングだよ。フジロックでみんなにいいライブを見せたいね。
Q2: There was a buzz the other day about a video of KT throwing down her headphones and folding in with tremendous technique. You guys are a band that combines emotion and technique, a rare combination in this day and age! What kind of musicians did you guys grow up idolizing?
【TELL】: We are inspired by a lot of Japanese bands, such as toe, 東京事変, LITE, Envy and etc. Most of our music heroes use both their emotion and unique technique to express themselves. Maybe that is the reason why Elephant Gym grew up like this.
Q2: 先日、KT がヘッドフォンを投げ捨てて抜群のテクニックを披露する動画がバズっていましたね。
あなたたちは、今日では珍しい、テクニックとエモーションのバランスが素晴らしいバンドだと思います。どういったアーティストをアイドルとしてきたのでしょう?
【TELL】: たくさんの日本のバンドにインスパイアされているよ。toe, 東京事変, LITE, Envy みたいなバンドたちにね。そうした私たちのヒーローの多くは、自己表現のためにエモーションとユニークなテクニックを合わせて使っているからね。だからこそ、Elephant Gym はこういう風に育ったんじゃないかな。
Q3: The name of the band, “Elephant Gym,” suggests that you guys have a lot of imagination, haha! How did you come up with this name?
【KT】: The name of “Elephant Gym” is related to the instruments and the style of our music. The word “elephant” symbolizes our bass-driven melodies, like a walking elephant (although KT usually plays on the higher frets but it’s still mid and low frequency) and “gym” refers to the agile and irregular rhythms. Elephant Gym says that our music can be very light and soulful even though it is full of low frequency.
Q3: その Elephant Gym というバンド名を聴くだけで、あなたたちが想像力豊かなことが伝わってきますよ。なぜこの名前を選んだのでしょう?
【KT】: “Elephant Gym” という名前は、私たちの楽器と音楽のスタイルに関連しているの。”Elephant” は歩く象のような低音主体のメロディーを象徴し(私は通常高いフレットで演奏するけど、それでも中低域)、”Gym” は機敏で不規則なリズムを意味しているわ。
つまり Elephant Gym という名前は、私たちの音楽が重低音に満ちているにもかかわらず、それでもとても軽快でソウルフルでいられることを表しているの。
Q4: Kaohsiung has a very nostalgic, dreamy and magical atmosphere, and I love the ferry, and I can feel the atmosphere of that city from your music. No wonder you are from Kaohsiung and not Taipei, haha. Would you agree?
【EG】: Kaohsiung is our hometown. Compared to Taipei, life here is slower and quieter. However,we used to study at universities in Taipei and Elephant Gym was formed in Taipei. Actually it was a benefit for the band. Because it was easier to meet other band band musicians. As a beginner, having someone to look up to is very important.
After graduation, we moved back to Kaohsiung because we valued family life a lot. Living around our family is a big mental support. Besides, the cost in Taipei is much more expensive hahahaha..
Q4: Elephant Gym の出身地、高雄はノスタルジックでドリーミーな、魔法のような街ですよね。私はあのフェリーが大好きですよ。
あなたたちの音楽からは、大都市の台北ではなく、あの街の雰囲気が伝わって来るような気がします。
【EG】: そう、高雄は私たちのふるさとだよ。あの街には、台北に比べればのんびりとした静かな生活がある。でも、私たちは台北の大学で勉強していたし、Elephant Gym も台北で結成されたんだよね。実は、それはバンドにとってメリットだったんだよ。というのも、他のバンドやミュージシャンに会いやすかったから。初心者のうちは、近くに尊敬できる人がいるということはとても大切だからね。
卒業後、高雄に戻ったのは、家族との生活をとても大切にしていたからなんだ。家族のそばで生活することは、精神的に大きな支えになる。それに、台北の方が物価が高いからね…..ハハハ。
Q5: Speaking of Dreamy, the artwork and music of “Dreams” are very surrealistic and dreamlike. Why did you choose the theme of dreams?
【KT】: Dreams are the answer to the question “Where does the inspiration for music come from?” for Elephant Gym. When we were asked how the music was produced, in fact, it’s hard to answer. When we read books related to dreams,like ‘The Interpretation of Dreams’ from Floyd, we find that the elements of dreams are all the information received by the brain and what the eyes see when people are awake.
After falling asleep, the brain takes apart everything you have experienced in your life and mixes and reorganizes it in a very unusual way. This is actually very similar to the process of making music. We reorganize the sounds we remember from the past to the present in a unique way to become each special song, just like each special dream.
Q5: “ドリーミー” といえば、”Dreams” のアートワークや音楽はとてもシュールで夢見がちですよね?なぜ今回、”夢” というテーマを選んだのでしょう?
【KT】: “夢” は、Elephant Gym にとって「音楽のインスピレーションはどこから来るのか」という問いに対する答えなの。私たちはその質問をされると、実は答えに窮するものよ。
フロイドの “夢の解釈” など、夢に関する本を読むと、夢の要素は、人が起きているときに脳が受け取った情報と目が見たものがすべてであることがわかる。眠りについた後、脳は今までに経験したすべてのことをバラバラにして、非常に変わった方法で混ぜ合わせ、再編成するの。これは実は、音楽を作るプロセスと非常によく似ていてね。過去に記憶した音を独自の方法で現在に再編成し、一つ一つが特別な夢であるのと同じように、それぞれの特別な曲となっていくから。
Q6: I have been to Beipu Old Street and it is a wonderful place. You collaborated with Hakka singer Lin Sheng Xiang, used ethnic instruments, and fully incorporated Taiwanese tradition and culture into your work, would you agree?
【EG】: Lin Sheng Xiang has influenced us a lot on our attitude towards music. It’s been one of our goals to work with him. Emerging different aesthetics of our music and finding the balance are challenging yet very interesting. We enjoyed the music we created together greatly. It’s been a pleasure for us.
Q6: 私は客家の暮らす三坑老街にも行きましたが、素敵な場所ですね。今回、客家のシンガー Lin Sheng Xiang とコラボレートしたり、民族楽器を取り入れたのも、台湾の伝統や文化を重んじているからでしょうか?
【EG】: Lin Sheng Xiang は、私たちの音楽に対するアティテュードにかんして大きな影響を与えた人なんだ。彼と音楽の仕事をするのは、私たちの目標の一つだった。
私たちと Lin の音楽の異なる美学を共存させ、互いのバランスを見つけることは、挑戦的でありながら非常に興味深いことだよ。私たちは一緒に作った音楽をとても楽しんでいる。それは私たちにとって喜びだったから。
Q7: Hiyune san of chilldspot is a guest on the Japanese version. They are a very young band, but what did you like about them that made you ask them to join? Also, have you been listening to Japanese music for a long time?
【EG】: Although chilldspot is a young band, their music is mature and have been featured other Taiwan artist. When we listened to their music, they wrote “Shadow” in one of their songs. “What a coincidence!” we thought at that time. Therefore, our Japanese Manager, Sho, sent them an invitation Email and they accepted the invitation. We were so lucky!
We grewed up with a lot of animation and Manga and we started to listen to Japanese music from animation. Later on, YouTube came out and opened a new world for us. We found toe on YouTube. So… Thank you YouTube!
Q7: chilldspot の比喩根氏が、日本盤にのみゲスト参加していますね。あなたたちは本当に、日本の音楽にアンテナを立て続けているようですね。彼らはとても若いバンドですが、どの辺りが共鳴したのですか?
【EG】: chilldspot は若いバンドだけど、その音楽は成熟していて、ある曲では他の台湾のアーティストもフィーチャリングしているんだ。彼らの曲を聴いたとき、曲の中に “Shadow” という言葉を見つけてね。その時、私たちは「なんという偶然!」と思ったね。そこで、日本人のマネージャー Sho が招待のメールを送ると、彼らは引き受けてくれたんだ。私たちは本当にラッキーだったよ。
もともと私たちは、アニメやマンガをたくさん見て育ったんだ。アニメから日本の音楽を聴くようになったんだよ。その後、YouTube が登場し、私たちに新しい世界を開いてくれた。YouTube で toe を見つけたんだ。だから…ありがとう、YouTube!
Q8: Finally, we live in a world of pandemics, wars, and a divided world, where we would like to escape into our “dreams.” Taiwan in particular has some difficult political, diplomatic issues, how are you dealing with those political and social issues?
【EG】: As a Taiwanese, we live in fear every day and the fear melts into our subconscious. Sometimes, our consciousness has to deny fear so that we can live our daily life.
Most of the male citizens have to serve the army for a period of time. So do we. If the war happens we have to be on the battlefield. Therefore, we feel lucky that we are holding instruments rather than guns. We feel lucky that we are expressing love rather than hatred. We feel even more lucky that our music is able to connect people from Japan, China, USA and other world.
As humans, violence is rooted in our blood and war is the result of inferiority and overwhelming confusion in our collective consciousness. We will not consider anyone as evil, even the one who declared war. Because they must have suffered much more pain in their heart.
However, the only way that we can do as individuals, is to bring balance and peace within oneself. When we feel anger and depression, stop blaming ourselves or others. There are ups and downs in our lives. Accept all the dark side of yourself and keep the dark side company. Be the best friend of your dark side. Don’t try to push them away or deny them. They are precious and lovable, just like the bright side.
If we can be the best friend and mentor for ourselves, we might stop hurting others to express our inferiority, anger and depression.
Q8: 私たちは今、パンデミック、戦争、分断といった暗い時代、暗い世界を生きています。それこそ、”夢” の中に逃れてしまいたいくらいに。
台湾は、政治的、外交的にとても難しい問題をかかえていますが、あなたたちはそれにどう向かい合っていますか?
【EG】: 台湾人として、私たちは毎日恐怖の中で生活している。恐怖は私たちの潜在意識に溶け込んでいるんだ。時には、日常生活を送るために、私たちの意識はそうした恐怖を忘れて、否定しなければならないこともあるくらいにね。
男性の国民の多くは、一定期間、軍隊に従軍しなければならない。私たちもそう。戦争が起これば、私たちは戦場に行かなければならないんだ。だから、銃ではなく、楽器を持っていることが幸せなんだよ。憎しみではなく、愛を表現していることを幸運に思うんだよ。私たちの音楽が、日本、中国、アメリカ、そして世界中の人々をつなぐことができるのは、さらに幸運なことだと思っているんだ。
私たち人間の血には暴力が根付いていて、戦争は私たちの集合意識の中にある、劣等感と圧倒的な混乱の結果なんだろうな。でも私たちは、たとえ宣戦布告をした相手であっても、誰も悪者とは見なさないよ。なぜなら、彼らはもっともっと心に痛みを抱えていたはずだから。
だけど、私たち個人にできることは、自分自身の中にバランスと平和をもたらすこと。怒りや鬱を感じたら、まず自分や他人を責めるのをやめよう。人生には浮き沈みがある。自分の中のダークサイドをすべて受け入れ、そのダークサイドとうまく付き合っていくんだ。自分のダークサイドの親友になるとでもいうのかな。追い払おうとしたり、否定したりしないでね。明るい部分と同じように、暗い部分も大切で愛すべき存在なのだから。
もし、私たちが自分にとって最高の友人、指導者になることができれば、劣等感や怒りや鬱を表現するため他人を傷つけることを、やめることができるかもしれないからね。