NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【COVET (YVETTE YOUNG) : CATHARSIS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH YVETTE YOUNG OF COVET !!

“I Would Not Be Alive Today If Not For Guitar!”

DISC REVIEW “CATHARSIS”

「私にとって音楽とは、喜びや悲しみ、怒りなどの感情を吐き出すこと。カタルシスなの」
2010年代にマスロックイーンとして華々しくシーンに登場したイヴェット・ヤングは、CHON, POLYPHIA, PERIPHERY といったバンドとともに時代の寵児として新しいギターの波を起こしました。音楽的な多様性と機材的な野心の革命。そんな中で、まだまだ女性の少ないギター・ワールドにおいて、彼女のずば抜けたテクニックとマルチな才能、そしてキュートな容姿は多くのファンやアーティストを魅了し、さながら”ギタサーの姫”としてシーンを席巻したのです。しかし、どんなお姫様も永遠に夢見る少女じゃいられません。
嵐が巻き起こったのは、2020年のことでした。PERIPHERYのマーク・ホルコムと恋愛関係となったイヴェットは、後に彼が既婚であることを知り正直に事の顛末を話したものの、マークの酷い行いのみならず彼のファンベースからも誹謗中傷を受け、セラピーに通わざるを得ないほどに傷つきます。同時にパンデミックが世界を襲い、ツアーの機会も奪われました。一方で、あのウィル・スミスの娘Willowとコラボレートを果たし、彼女から世界最高のギタリストの一人と称されるといううれしい出来事もありました。しかし様々な”傷”と”歪み”は最終的に、彼女の”ホーム”であるバンドCOVETの瓦解へと繋がってしまいます。
「正直、このアルバムの制作過程はとても困難なものだった。シンプルに言えば、私はCOVETをやめたいと思うようになった。本当に、新たなスタートを切るか、このプロジェクトを完全に破棄するかどちらかだとね。だから、ベースのブランドン・ドーヴ、ドラムのジェシカ・ブルデーとともに”再生”を行うことができるのは、私の人生でとてもポジティブなこと。もう、過去のCOVETのネガティブなことには触れたくないの」
バンドの中で何かがあったのは明らかです。しかし、私たちがそれを知る必要はありません。イヴェットがCOVETに再び前向きになり、灰の中から”Catharsis”という美しい復活の火の鳥を届けてくれた。その事実だけで充分でしょう。そう、これは輝かしいアイドルが成熟したアーティストへと生まれ変わるレコード。そのために必要だったのが、喜びも悲しみも含めた”テクニカラー”な経験で、彼女はそれを今回”カタルシス”として吐き出していったのです。
「このアルバムがあなたを旅に連れ出すことを願うわ。アルバムのテーマはファンタジーへの逃避。音楽は私にとって常にエスケープであり、セラピーの源でもある。この音楽がみんなをどこかに連れて行き、想像力をかき立て、少なくとも何かを感じさせてくれることを私は願っているの」
成熟したアーティストとして、イヴェットが最初にリスナーへと提供したのは、暗い現実、癒えない傷からの逃避場所でした。それは、イヴェット自身、痛みや傷から逃れる手段として、音楽やギターに頼っていた経験があったから。
「ギターがなかったら、今生きていないわ!(笑) 。4歳の時にクラシックピアノ、7歳の時にヴァイオリンを始めたんだけど、プレッシャーが大きくて、体調をひどく崩してしまったの。入院中にギターを独学することにしたんだけど、そのおかげで自尊心が芽生え、自分にはないと思っていた “声” があるように感じさせてくれたの。今でもギターは私にとって神聖なもの。だから、楽器や芸術を通じて、自分の声やアイデンティティ、自己表現を探求することを奨励したいと思っているのよ。私の音楽を聴いたりしてね。そうなれば、多くの命を救うことができるし、人々が世界で孤独や迷いを感じることが少なくなると思うから」
実際、このアルバムを聴いて現在、そして未来においても救われる人は多いでしょう。アートは異世界への扉を開く鍵であり、未来へと続く道。COVET は、独創的なギター、絶妙なアレンジ、予測不可能なリズム、ダイナミックな”音声”によって、臨場感あふれる生き生きとした音世界を作り出していきます。その音色、メロディー、グルーヴは、映画のヒーローやヒロインのように生き生きとしたファンタジックな楽曲のキャラクターを呼び覚ますのです。
「音楽やビデオゲームは逃避のための器にも思えるわ。この世界には多くの問題があるけど、社会問題の解決や地球の修復に力を注ぐ代わりに、テクノロジーを使って代替現実や”より良い世界”を築こうとする傾向があるようね。この曲は、そんなメタファーで、人々がに逃避するための代替現実のようなもの。虚空に飛び込み、幻想的なサウンドスケープの世界へと浸れるようなね」
近年、盟友ともいえるPOLYPHIAのティム・ヘンソンが、その真意は測れないにしろ、ロックやメタル、ギター・ミュージックを時代遅れだと考え、流行とヴァイラルを追う姿勢を少なからず打ち出しています。イヴェットはロックとギターの未来についてどう考えているのでしょうか?
「人気者になることやヴァイラルを得ることは、私の芸術を蝕むと思う。私は自分のために音楽を書き、ギターを弾いているから。それが私の神聖な場所。私の人生を救ってくれた場所。だからもし、人の評価を気にし始めたら、私の書く音楽は本物ではなくなってしまうでしょう。どんなジャンルにも、収まるべき時と場所がある。どんな音楽でも時代遅れだとは思わないし、メタルやロックに見切りをつけるのはフェアではないと思うわ。私はただ、私の音楽で希望が湧いたとか、ギターを手にしたと言ってくれる人がいるととてもうれしいの。不安や痛み、時には抑圧的な現実から逃れるために音楽や芸術に頼ってほしい。そうして、音楽やアートを使って、こんな世界があったらいいなと思うような理想の世界へと旅立つの。音楽はとてもパワフルで、例え歌がなくてもみんなを高揚させ、共感させることができるのだから」

YVETTE YOUNG 弊誌インタビュー 2020

COVET “CATHARSIS” ライナーノーツ4000字完全版は4/21に  P-VINE からリリースされる日本盤をぜひ!!

COVET “CATHARSIS” : 10/10

INTERVIEW WITH YVETTE YOUNG

Q1: The last time I spoke with you was in 2020. Since then, the pandemic has made touring even more difficult and there has even been a war in Ukrine. How have you been spending the last three years?

【YVETTE】: I honestly learned how to record and it changed my life! It’s hard to learn a new skill when you are busy all the time but I all of a sudden got a break and decided to try to do something new. I wrote the whole new record during this time!

Q1: 前回のインタビューが2020年で、それからパンデミックや戦争など世界は大きな変化を経験しました。あなたはこの3年間をどう過ごしていましたか?

【YVETTE】: 正直、レコーディングの方法を学んで、人生が変わったのよ!ずっと忙しくしていると、新しい技術を身につけるのは難しいのだけど、突然休みが取れたから、なにか新しいことをやってみようと思ったの。この時期に新譜の全曲を書き上げることもできたわ!

Q2: Why did you name your new Covet album “Catharsis”?

【YVETTE】: for me music is about an expelling of emotion- joy or sadness or anger. A lot happened during this time and it was a mix of emotions and I view this record as getting all the emotions out and starting over fresh and healthy! The whole record is a bit like a story that I want to tell.

Q2: その新作を “カタルシス” と名付けたのはなぜだったんですか?

【YVETTE】: 私にとって音楽とは、喜びや悲しみ、怒りなど、感情を吐き出すためのもの。カタルシスなの。この3年の間、いろいろなことが起こり、さまざまな感情が混在していたんだけど、このアルバムはその感情をすべて吐き出し、新鮮で健全な状態で再出発するためのものだと考えているわ!このアルバム全体が、私が語りたい物語のようなものなのよ。

Q3: Your artwork is so distinctive and beautiful that it is instantly recognizable as yours. It’s another great piece of artwork! The “Firebird” that supports you in the sky plays an important role in this work, doesn’t it?

【YVETTE】: Thank you so much! I am always excited to try to visually translate my sonic ideas and birds have always meant a lot to me growing up. Also, my mom’s first car when she moved to America was a Pontiac Firebird and I wanted to celebrate the feeling of being in a new country with the feeling of new opportunities and a new life. I hope the abstract painting can capture that feeing of excitement!

Q3: あなたの描くアートワークは、いつも美しく、またすぐにあなたのものと分かる個性を備えています。今回は、”火の鳥” が重要な役割を果たしているようですね?

【YVETTE】: 本当にありがとう!私はいつも、自分の音のアイデアを視覚的に翻訳しようとすることに熱中しているし、鳥は私にとって成長する上で常に多くの意味をもっているの。
それに、私の母がアメリカに移住したときの最初の車がポンティアック・ファイヤーバードだったから、新しい国に来たときの新しいチャンスや新しい人生への気持ちをファイヤーバードで表現したいと思ったの。この抽象画が、その興奮の感覚を表現できていればと思うわ!

Q4: “Smolder”, “Vanquish”, “Merlin”, “Coronal”, “Bronco”, and many other song titles are very enigmatic, right?

【YVETTE】: Yes! I wanted them all to be related to a fantasy world. Smolder sounds like the sun burning up with all the fuzz effect, vanquish is about a person riding a horse on a mission to save their village, merlin is a about a mysterious wizard in the forest casting spells, coronal is about escaping into a dark fantasy realm, and bronco is supposed to sound like a crazy cowboy rodeo.

Q4: “Smolder”, “Vanquish”, “Merlin”, “Coronal”, “Bronco” など、あなたの曲名はいつも謎に満ちています。

【YVETTE】: そうなのよ!どれもファンタジーの世界に関連したものにしたかったの。スモルダーは太陽が燃えているような音で、ファズエフェクトがかかっている。ヴァンキッシュは馬に乗って村を救うというミッションで、マーリンは森の中で呪文を唱える謎の魔法使い、コロナルはダークファンタジーな領域に逃避すること、ブロンコは狂ったカウボーイのロデオみたいな音にしようと思ったの。

Q5: Still, a great album! What is very striking this time around is that the jazz/fusion or dance/disco hits approach of the 70s and 80s is more prominent than ever. However, you don’t just follow such music, melody, saxphone, but also season it with various techniques such as post-metal, post-rock, and math-rock, would you agree?

【YVETTE】: I definitely was very inspired by the 80s tones this record and some of the grunge shoe gaze tones of the 90s and wanted to sprinkle those tones all over the record. I think when I write music, I just want to combine every genre I love into one sound that does’t really follow many rules. Ultimately I wanted the record to feel a little nostalgic at times.

Q5: それにしても、素晴らしいアルバムですね!今回は、70/80年代のジャズ/フュージョン、それにダンス/ディスコのアプローチを前面に押し出しながら、しっかりとポスト・ロック、ポスト・メタル、そしてマスロックという自らの土俵に引き入れていますね?

【YVETTE】: このアルバムでは、80年代のトーンや90年代のグランジ・シューゲイザーにとてもインスパイアされたから、そうしたサウンドをレコード全体に散りばめたかったの。
私は音楽を作るとき、自分が好きなあらゆるジャンルを、あまりルールにとらわれずにひとつのサウンドにまとめたいと考えているわ。最終的には、ちょっとノスタルジックな雰囲気のあるレコードにしたかったの。

Q6: Some of the songs, like “Coronal,” have mysterious vocals, while others, like “Interlude,” are beautiful on piano. It’s an album that showcases all of your talents, isn’t it?

【YVETTE】: Thank you so much! I wish I had more room for vocals but I think some of the music just should be left instrumental to tell the story!

Q6: “Coronal” のような曲ではあなたの歌声が聴けますし、”Interlude” では得意のピアノも披露しています。あなたの才能を総動員していますね?

【YVETTE】: 本当にありがとう!まあ、もっとボーカルを入れる余裕があればいいのだけど、ストーリーを伝えるためにインストゥルメンタルにした方がいい音楽もあると思っているからね!

Q7: The 2020s are currently shrouded in dark clouds. In such a world, your gentle and beautiful music and guitar can be a healing and therapy for many different people. This is the kind of album that gives me such hope. On the other hand, have you ever been saved by music or guitar?

【YVETTE】: I would not be alive today if not for guitar! I started classical piano when I was 4 and violin when I was 7 but it was a lot of pressure and it made me very sick. It was when I was in the hospital that I decided to teach myself guitar and it was so special because it gave me self esteem and made me feel like I had a voice when I didn’t really feel like I had one. To this day, guitar is sacred to me and it means a lot when people say that my music fills them with hope or that my music makes them want to be creative and pick up guitar. These sorts of creative outlets can save lives and I’m always wanting to encourage people to explore their own voices and identities and self-expression through an instrument or art form. I think it can save many lives and help people feel less alone and lost in the world!

Q7: 2020年代は現在、暗雲に包まれています。そんな世の中で、あなたの優しく美しい音楽とギターが、様々な人の癒しやセラピーになる…そんな希望を与えてくれるようなアルバムです。逆に、あなたは音楽やギターに救われたことがあるのでしょうか?

【YVETTE】: ギターがなかったら今頃は生きていなかったかもしれないくらいよ!私は4歳のときにクラシックピアノを、7歳のときにヴァイオリンを始めたんだけど、プレッシャーが大きくて、大きく体調を崩してしまったの。それで、入院中にギターを独学することにしたんだけど、おかげで自尊心が芽生え、自分にはないと思っていた声があるように感じられたのは、とても特別なことだったのよ。
今でもギターは私にとって神聖なもので、だからこそ、私の音楽で希望が湧いたとか、私の音楽でクリエイティブになりたくなったとか、ギターを手にしたくなったとか言ってくれる人がいるのは、とても嬉しいことなのよ。私はいつも、楽器や芸術を通じて、自分の声やアイデンティティ、自己表現を探求することを奨励したいと思っている。そうすることで、多くの人の命を救うことができるし、世の中で孤独や迷いを感じることも少なくなると思うからね!

Q8: Recently, Polyphia’s Tim has been paving the way for the future of guitar music and instrumentals with challenging statements, for example, that metal and guitar are obsolete.But definitely, he is certainly grasping at viral. I think instrumental music is harder to get buzz than singing, but do you think writing instrumental songs and capturing viral coexist for you?

【YVETTE】: I don’t think much about being popular or going viral because I think it starts to poison my art. I write music and play guitar for myself and that is important because It is my sacred outlet and it saved my life. If I started to worry too much about what people think of me, the music I wrote would not be authentic anymore and I don’t think I could have longevity doing something that I didn’t really believe in or was doing only for other people’s validation. I think there is a time and place for every genre. I don’t think anything is obsolete and I don’t think it is fair to give up on metal or rock- you just have to have good taste and be creative and know where to channel it . I think all music also can be cyclical and there are things that are trends- but you know what? I believe a good melody and good tone and catchy songwriting is timeless. I think that’s what I aspire for always- no trends, just something that can withstand the test of time.

Q8: 最近、POLYPHIA の Tim Henson は、メタルやギターは時代遅れなど、挑発的な発言でギター音楽やインストの未来を切り開いています。ヴァイラルを得ているのは確かなんですよね。インストゥルメンタルは歌に比べるとバズりにくいと思うのですが、インスト曲を作ることとヴァイラルを得ることは、共存可能だと思いますか?

【YVETTE】: 人気者になることやヴァイラルを得ることは、私の芸術を蝕むと思う。私は自分のために音楽を書き、ギターを弾いているから。それが私の神聖な場所。私の人生を救ってくれた場所。だこらもし、人の評価を気にし始めたら、私の書く音楽は本物ではなくなってしまうでしょう。どんなジャンルにも、収まるべき時と場所がある。どんな音楽でも時代遅れだとは思わないし、メタルやロックに見切りをつけるのはフェアではないと思うわ。私はただ、私の音楽で希望が湧いたとか、ギターを手にしたと言ってくれる人がいるととてもうれしいの。
センスがあって、クリエイティブであれば、きっと認めてくれる人はいる。すべての音楽は循環するものだと思うし、トレンドとなるものもある。でもね。でも、良いメロディ、良いトーン、キャッチーなソングライティングは、時代を超えて愛されるものだと思うのよ。だからこそ、私は流行に左右されず、時の試練に耐えられる音楽に焦がれるの。

YVETTE’S PLAYLIST !!

altopalo “frenemy”

Jean Dawson “Chaos Now”

brothertiger “New Life”

How it Ends “Toledo”

Bent “Seer Believer”

MESSAGE FOR JAPAN

I will see you soon in the fall! I miss being in Japan so much and have so much love for everyone there. Take care and be safe!!

秋になったらすぐに会えるよ!日本がとても恋しく、日本のみんなにたくさんの愛情を注いでいるわ。元気でいてね。

YVETTE YOUNG

COVET 来日決定!! Creativeman

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