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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【TONY MARTIN : THORNS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TONY MARTIN !!

“My Voice Isn’t Same As It Was When I Was In Black Sabbath. It’s Actually Five Notes Down From Where I Was With Black Sabbath. That’s an Age Thing As It Happens The Singers, But What You Have To Do Is Try And Work With a Voice You’ve Got.”

DISC REVIEW “THORNS”

「もし、私のバージョンの “Heaven and Hell” と、Dio のバージョンを並べて演奏して同じように聞こえなかったとしたら、それは2つの異なる声だから当たり前のことだ。だけど、良い方法でそれを表現することならできる。私はそうしようとしたんだ」
伝説的なバンドが象徴的なボーカリストを新たなフロントマンに交代するとき、不安は必ずつきまとうものです。JUDAS PRIEST, IRON MAIDEN, VAN HALEN, ALICE IN CHAINS。様々なバンドが様々な理由でバンドの顔をすげ替えてきました。その結果はもちろん千差万別。ただし、多くの場合、後任の新たな顔は前任者の呪いに苦しむこととなります。
「私の声は BLACK SABBATH にいたときと同じではないんだ。サバスにいたときよりも5音下がっているんだよ。これはどんなシンガーにも起こり得る年齢的なもので、しかたがないことだよ。だけど、シンガーならその今ある声で仕事をこなしていくべきなんだ。どうやら上手くいっているようだし、満足しているよ。自分の声の “キャラクター” を保てているし、それが一番大事なことだから」
BLACK SABBATH に関するフロントマンの議論は、一般的に Ozzy Osbourne と Ronni James Dio に二分されていて、Ian Gillan や Glenn Hughes はもちろん、バンドで二番目に長くフロントを務めた Tony Martin でさえ、その議論の机上にあがることはほとんどありません。Tony の BLACK SABBATH に対する貢献は多くの人に見過ごされ、否定されてきましたが、彼のパフォーマンスや楽曲は必ずしも公正に評価されてきませんでした。神話を語り、ドラマ性を極めた美しき “エピック・サバス” の首謀者であったにもかかわらず。
しかし、例えば TYR のような後続が Tony Martin 時代の素晴らしさを語り、さらには “エピック・サバス” のリイシュー、ボックスセットのリリース決定により潮目は確実に変わりつつあります。そうして、2005年の “Scream” 以来17年ぶりにリリースされた Tony のソロアルバム “Thorns” は、その再評価の兆しを声という “キャラクター” で確かなものへと変える茨の硬綱。
「BLACK SABBATH のことは考えていなかったし、このアルバムはすべて Tony Martin だけのものなんだ。私の頭の中では、それはそれは呪いのような、悪夢のような、様々な種類の音楽が様々な音や楽器で鳴っている。それを具現化するのが私のやるべきことなんだ。だから、これは私が何の制約もなく自分らしくいられるように許された作品なんだよ」
かつて5オクターブを誇ると謳われたその歌唱の輝きはいささかも鈍ることはありません。年齢の影響で5音を失ったとは信じられない表現力とパワー、そして声域が Tony Martin その人の華麗なる帰還を告げます。サバスは関係ないと言うものの、これも呪いでしょうか。アルバムは Cozy Powell や Neil Murray を擁した伝説の “Tyr” と Geezer Butler が復帰して骨太のドラマを聴かせた “Cross Purposes”、その中間にあるようなエピック・メタルを展開していきます。”When Death Call” の雷鳴轟く “As the World Burns” に涙し、”Book of Shadows” の呪術的な荘厳に歓喜するファンは少なくないでしょう。
ただし、”なんの制約もなく” という言葉を裏付けるように、作品は “エピック・サバス” よりも現代的かつ実に多様です。PANTERA を崇拝する Scott McClellan のギタリズムは非常にアグレッシブかつメタリック。62歳になる Tony のエンジンとなり、アルバムのアグレッションを司ります。元 HAMMERFALL のベーシスト Magnus Rosen のテクニカルなボトムエンドは “Black Widow Angel” が象徴するように秀逸で、VENOM の Danny Needham と結合して SABBATH の影を振り払っていきます。
“Crying Wolfe” における叙情とマカロニウエスタン、”Damned By You” におけるカタルシスとヴァイオリン、”Nowhere to Fly” における哀愁とドゥーム、そして “This is Your Dammnation” から “Thorns” に貫かれるアコースティックとブルースとメタルの混沌は、明らかに Iommi の世界ではなく、1971年にプログに人生を変えられた Tony Martin の多様です。
ある意味、これまでずっと重い十字架を背負い続けてきた歌聖。”Cross of Thorns” からその十字架を取り去った “Thorns” は、まさに Tony Martin 本来の情熱と存在感を際立たせるアルバムとなるはずです。「Iommi に、バンドにいるんだから自分が歌いたいようには歌うなよとよく言われていたから、そうしようとしたんだ (笑)。それは上手くいったし、別に嫌じゃなかったよ。とても楽しかった。だからそんなにプレッシャーを感じてたわけじゃないんだ。私は大丈夫だったよ」Tony Martin です。どうぞ!!

TONY MARTIN “THORNS” : 10/10

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