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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【RVNTVH : CONTEMPLATION OF THE VOID】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH RVNTVH !!

“We’re Pretty Much Filling In The Gap Where There Wasn’t Any Indonesian Band That Sounds Like This.”

DISC REVIEW “CONTEMPLATION OF THE VOID”

「インドネシアのメタルシーン自体はまだまだアンダーグラウンドで、人々はメタルシーンを何か奇妙でネガティブなものとして見ているようなんだ。インドネシアでも、メタルヘッズは昔のロックスターの習慣から生まれた、ドラッグを使う酔っぱらいの一団という、本当に間違ったステレオタイプのイメージがあるんだよ」
ヘヴィ・メタル大統領として名を馳せる Joko Widodo の存在、レッチリや RATM にも認められた反抗の少女たち VOICE OF BACEPROT の登場、そしてデスメタルが盛んという伝聞やイメージから、私たちはインドネシアをメタルの楽園だと想像します。しかし、隣の芝は青く見えるもの。彼の地に登場した “インドネシアの OPETH” こと RVNTVH (ルントゥフ) は、Joko Widodo の “売名” を疑い、メタルはここでもアンダーグラウンドだよと嘆きながら、それでもプログレッシブで悲しみを湛えた魂を南方から開花させようと真剣です。
「僕たちは、インドネシアにこういうサウンドのバンドがいなかったからこそ、そのギャップを埋めているようなものなんだ。僕が理解しているかぎりでは、OPETH やそれに類するバンドに熱中している人は、この地域にはあまりいないようだからね。そうしたバンドを知っている人は、ここではほんの一握りなんだ」
あくまでも、大衆的な人気はポップ・ミュージックに集中するジョグジャカルタで、RVNTVH はさながらインドネシアの多島美を体現するかの如く、様々な音楽的嗜好を持つメンバーが様々な地域から集結し、混沌と悲壮のメタルに挑戦しています。
東カリマンタンのバリクパパンに生まれ、東ジャワのバニュワンギに移り住み、IRON MAIDEN に始まり MESHUGGAH, PERIPHERY, さらにノイズやアンビエントまで愛するギター/ボーカル Arif Shuardi。
同じくギター/ボーカルの Rabin Rana は RVNTVH のリーダーで創設メンバー。ジョグジャカルタ出身で、現在はオランダのロッテルダムに住んでおり、70年代のプログレッシブ・ロックをこよなく愛します。そこから、プログレッシブ・デスメタルやアトモスフェリック・ブラックメタルに到達し、この2つの音楽に対する愛情が、RVNTVH を両者の融合の場としたのです。
この二人を核として、中部ジャワに住み RADIOHEAD や MUSE を基盤とする3人目のギタリスト Imam、Tricot, ELEPHANT GYM, COVET に影響を受けたチレゴン出身のベーシスト Denis、さらに民族音楽のスペシャリストで鍵盤、サックス、フルートを操る Rico と才能あふれるメンバーが揃い、RVNTVH は世界に打って出ることになりました。
そうした多様な出自や音楽観は、実に新鮮で驚きを秘めた RVNTVH の音楽へ見事に投影されています。OPETH を原点としながらも、KING CRIMSON, LAMB OF GOD, EMPEROR, DREAM THEATER, PERIPHERY, さらにはインドネシアの民族音楽に日本のアニメの影響まで、時間も場所もジャンルも超越した色鮮やかなナシゴレンがデビュー作にして完成しているのです。
まさに、メタルの生命力、感染力、包容力を証明するような第三世界の台頭。まだ拙い部分もありますが (特にクリーン・ボーカルの音程)、リフの一つ一つ、メロディの一つ一つがとても印象的。フルートやサックスといったノン・メタルの楽器も効果的で、なによりデビュー作から22分の大曲を収録できるのは選ばれたバンドだけ。
今回弊誌では、Arif と Rabin にインタビューを行うことができました。「Arif は “Death’s Preparation” で “真・女神転生” についてのパートを書いていたくらいでね。僕が自分のパートを付け足す前に、知らないうちにね!僕はどちらかというとガンダム派なんだよ。セイラ・マスは俺の嫁!」 どうぞ!!

RVNTVH “CONTEMPLATION OF THE VOID” : 9.8/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【VOICE OF BACEPROT : THE OTHER SIDE OF METALISM】


COVER STORY : VOICE OF BACEPROT “THE OTHER SIDE OF METALISM”

“To Slander Is Easier Than To Create, Which Is Why It Is Not Surprising To See Many Choosing To Sneer And Mock Instead”

METALISM FIGHTS TO THE STEREOTYPE

2014年、インドネシアの田舎の教室で、3人の女子学生がメタルと恋に落ちました。当時14歳だった彼女たちは、西ジャワ州ガルートにある学校の課外芸術プログラムの中で、学校のガイダンス・カウンセラー Ahba Erza にメタルを “習い” ます。
すぐに3人は、SYSTEM OF A DOWN のユニークで美しいリリシズムや、RAGE AGAINST THE MACHINE, LAMB OF GOD の “反骨精神” に惹かれていきました。やがて、3人は VOICE OF BACEPROT を結成し(”Baceprot” はスンダ語で “うるさい” という意味)、独自の扇情的な騒動を巻き起こしています。
「うるさい声ってバンド名が象徴するように、私たちは独立した人間であることの重要性を叫び続けるわ」
7月下旬、VOICE OF BACEPROT の3人は、2004年にリリースされた SLIPKNOT の名曲 “Before I Forget” をライブでカバーしました。このバンドの熱のこもった、気負いのない演奏を見ていると、かつてこの若い女性たちが定期的に殺害の脅迫を受けていたことを想像するのは難しいかもしれません。

VOICE OF BACEPROT は、シンガー・ギタリストのFirdda Marsya Kurnia、ベーシストの Widi Rahmawati、ドラマーの Euis Siti Aisyah の3人で構成されていて、荒波の中を台風のように台頭し勢力を増しています。イスラム教の信仰に基づいてヒジャブを着用して演奏する彼女たちは、2017年に RAGE AGAINST THE MACHINE, SLIPKNOT, PEAPL JAM のカバーをネット上で公開して話題になりました。しかし、ニューヨーク・タイムズ紙の記事では、音楽の話よりもまず、彼女たちのヒジャブと柔和な表情が最初に紹介されています。そのため、彼女たちは頻繁に暴力的な嫌がらせの対象となっていました。ある夜には、スタジオから車で帰る途中、悪口を書いた石を投げつけられたり、殺害の脅迫を受けたり、バンドの解散を迫る電話を受けたり。しかし、Kurnia、Rahmawati、Aisyah の3人は、自分たちのその知名度に臆するのではなく利用して、勇気を持って活動しています。
「中傷は結局、SNS 上のコメントにしか過ぎないのよ。最初は少し怖かったけれど、自分たちの音楽に集中したわ。最も困難だったのは、私たちのような女性(特にヒジャブをかぶった女性)は音楽をするべきではないという偏見との戦いだった。彼らは私たちのことを、学校で勉強して高い点数を取ることに集中すべき子供だと思っているの。呪いの言葉や、演奏をやめるべきだという言葉をたくさん受け取った。彼らは私たちに音楽をやめさせようとしているの。ほとんどの場合、私たちが女性だからそういうことを言われるのだと思うけど、私たちは自分の心の中にあるものを言うことを恐れない。多くの人はそれも好まないのよね。もし私たちが男性だったら、こんなに苦労しなかったかもしれないわね。でも音楽は私たちに大きな喜びを与えてくれるから、演奏し続けたいと思っているわ。音楽に集中しているから、他のことはどうでもいいの!」

実際、シングル “God Allow Me (Please) to Play Music” は、彼女たちを罪深い異端者とする批評家たちへの直接的な反撃です。”神様、私に音楽を演奏させてください” というタイトルのこの曲は、いまだに女性を男性と同等に見ようとしない人々と直接対決する強い意志。その意志を込めて書き歌う必要が彼女たちにはありました。タイトルの “祈り” が文字通りの意味であるかどうか、バンドがロックを演奏するために神に許可を求める必要があるかどうかについては、3人は言及していません。しかしメンバーは皆、敬虔でありながら進歩的な考えを持っており、信仰のために誤った判断をされたり、嘲笑されたりすることは許されないと明言しています。そしてこの曲は “女性の抑圧” と “私たちが共通して物や二流の人間として扱われていること” に対するプロテスト・ソングだと Kurnia は語ります。
「もし、私たちが女性でなかったら、自由に音楽を演奏することを神に許可してもらう曲を書く必要性を感じなかったかもしれないわ。もし私たちが女性でなかったら、ここでは悪魔崇拝の音楽祭とみなされる巨大なメタル・フェスティバルに出演することになったからといって、私たちが自分たちの宗教にとって恥ずかしい存在だと言われることはないでしょう。 私たちは、芸術作品が性別によって分類される可能性があることを知って、少し悲しくなったのよ。だからメッセージはシンプルよ。私たちは犯罪者じゃない。ただ自由に音楽を作りたいだけだし、神様もきっと私たちをお許しになるわ。というよりも、メタルがむしろ私たちを神様に近づけてくれているの。」
ただし、彼女たちは3人のイスラム教徒の女性がヒジャブをかぶり、メタルを演奏することで、自分たちが強い話題を提供できることを知っています。それでも、彼女たちは自らの音楽と社会意識の高い歌詞で自分たちを証明しようとしています。そうして VOICE OF BACEPROT は、女性イスラム教徒でメタル教徒というアイデンティティーを取り戻し、その過程で、NIRVANA, RAGE AGAINST THE MACHINE, RED HOT CHILI PEPPERS の新旧メンバーを含む世界中のファンを獲得し、刺激を与えています。
そういった彼女たちのメンターは、技術的なスキルやステージ上での存在感をトリオに教えるだけでなく、特に SNS で自分たちを宣伝する方法も教えています。もちろん、バンドが最初に有名になったのもソーシャル・メディアでした。初期の頃、彼らのライブ・パフォーマンスのビデオは、Twitter, Facebook, Instagram などで広く拡散され、国外に広まっていきました。昨年、Tom Mollero は、彼女たちが RATM の “Guerrilla Radio” を演奏している動画を “ROCKING” とリツイートし、熱狂的な支持者である Flea は、”VOICE OF BACEPROT に賛同する” とツイートしています。
「私たちの音楽が地元の人々だけでなく、海外の人々にも聴いてもらえる大きなチャンスを与えられたわ。いつか彼らとのコラボレーションも実現したいと思っているの」

新しいEP “The Other Side of Metalism (Live Session)” で VOICE OF BACEPROT は、カバーとオリジナル曲を織り交ぜながら、自分たちに影響を与えたグループに対する敬意を表しています。RATMの “Testify”、SYSTEM OF A DOWN の “I-E-A-I-A-I-O”、ONE MINUTE SILENCE の “I Wear My Skin”、そして前述の “Before I Forget” という5曲のカバーを選んだのは、「過去7年間の音楽の旅を通して、大きなインパクトを与えてくれた曲だから」そう Kurnia は語ります。Rahmawati は、「メタルは、私たちが自分たちを表現するのに最適のジャンルなの。とてもパワフルで、私たちに自由を与えてくれるの。最近は AUDIOSLAVE, GOJIRA, JINJER をよく聴いているわ」と続けます。
VOICE OF BACEPROT の初期のオリジナル曲に影響を与えた激情的な Nu-metal、SLIPKNOT に対する彼女たちの愛は、アイオワ出身の覆面バンドが持つ願望にも通じていました。彼女たちは、”Before I Forget” のカバーを発表した際、「私たちは、 SLIPKNOT がこんなに人気があるのに、どうして顔を隠して音楽を作り続けているのか不思議に思っていたの」と述べています。ヒジャブを纏う VOICE OF BACEPROT にとって、個人的な外見を超えることは明らかに重要なテーマなのです。
「私たちは何よりも音楽性を重視して前進し続けたいの。外見にこだわらず、自分たちのアイデンティティーを捨てずにね」
さらに、VOICE OF BACEPROT は RATM や SOAD といったヒーローたちのように、臆することなく政治的なアジェンダを持ち、次の世代の危機のために戦っています。オリジナルの “The Enemy of Earth Is You” は、若いバンドにとって特に関心の高いテーマである気候変動に対する激しいリアクションでした。地下水の違法な枯渇、雨季の短縮、海面の上昇など、彼女たちの故郷であるインドネシアでこの問題は特に深刻です。Kurnia が地元である西ジャワ州ガルートを例に挙げて説明します。
「私たちは、環境意識の欠如がもたらす影響を、すでに感じ始めているわ。村ではきれいな水を手に入れるのがとても難しいの。環境への配慮は、今だけではなく、将来のためにも必要なことだと思う」

女性イスラム教徒という抑圧の出自に対するバンドの挫折感は、オリジナル曲 “School Revolution” にも表れています。2018年にシングルとして発表されたこの曲は、彼らが10代の頃に感じた保守的なマドラス(地元のイスラム教の学校)での判断を痛烈に批判したもので、校長でさえ彼らの音楽を “ハラム”(宗教上の法律で禁止されていること)と呼んだことがありました。英語と彼らの母国語であるスンダ語を織り交ぜて歌われた “School Revolution” の絶望と反抗のメッセージは、強烈に心に響きます。学校での制限された勉強に囚われて、自分の情熱を表現できないことを歌った情熱の楽曲。学校を “牢獄” と比喩し、英語の詩では Kurnia がこう叫びます。「私の魂は空っぽで、私の夢は死にかかっていて、私の魂はダークサイドに落ちて、私は自分の人生を失う」。
ドラマチックなリリックですが、「より身近なテーマを前面に押し出してみたの」と Kurnia は言います。「厳格な校則を守るために、生徒たちが自分の希望や夢から遠ざかり、自分を見失っているとしたら、私たちはそれが単なる従属の一形態であると思うわ。これは、私たち自身が感じたこと、Abah と話したこと、そして多くの本で読んだことに基づいているの。当時、私たちの生活の中で、学校は大きな役割を果たしていた。多くのティーンエイジャーが思春期を過ごす場所でもあるしね。学校は、生徒の希望や夢を受け入れることができる、公正で公平な空間であるべきだと思うのよ」
この曲は、Flea や Krist Novoselic の推薦を得て、グループの画期的なヒット曲となりました。
さらに VOICE OF BACEPROT は、現地のインドネシア音楽シーンのメンバーからも支持を集めます。”School Revolution” を制作したのは、メタル・バンド MUSIKIMIA で活動するギタリスト、Stephen Santoso。後にガルートからジャカルタに移った3人は、テクニカル・デスメタルのヒーロー、DEATHSQUAD のギタリスト、Stevie Item や、全米で有名なジャズ・ベース奏者でプロデューサーでもある Barry Likumahuwa と知り合うことになります。タイミングも良かったのでしょう。3人が一緒に暮らすことで、パンデミックが発生しても練習を続けることができるようになりました。
そういった様々な支援者の指導のもとで、VOICE OF BACEPROT はその才能を磨いてきました。3人とも音楽の専門教育を受けていない状態でのスタートでしたが、驚異的な器用さと完璧なリズム感が先天的に備わっていました。Kurnia が語ります。
「私たちはまず独学で学んだの。それから、基本的な技術や理論は師匠たちからたくさん学んだわ。彼らは私たちの基本的なスキルを完璧にして、音楽理論を教えてくれたの」

皮肉なことに VOICE OF BACEPROT が直面したハードルとは対照的に、インドネシアにはアジアで最も活気のあるメタル・シーンがあり、同国の大統領 Joko Widodo でさえメタル・ヘッドを公言しています。ただ、彼女たちはインドネシアで唯一の女性メタル・グループではありますが、地元のメタル・シーンに参加する女性の数が増えていることに励まされているようです。自分たちの性別が成功の障害になっていないかと聞かれると、Kurnia はこう答えました。
「いいえ、そうじゃないの。なぜ不利なの? 私たちには、否定的な意見から力を得るという不思議な力があるのよ。否定的な意見は私たちの精神を高め、私たちをより強くしているの」
批判者からパワーを得て、熱狂的なファンからもパワーを得て、VOICE OF BACEPROT のスター性は間違いなく高まっています。最近、Tom Morello が3人の RATM のカバーを賞賛し、オリジナル曲も増え、海外ツアーにも目を向けています。「私たちはコーチェラに出演したいの」とAisyah は熱弁を振るいます。
31年前に始まったドイツの大規模な音楽祭、Wacken Open Air のステージに立ったインドネシアのバンドは、これまでにたった5組。しかし、来年9月には、VOICE OF BACEPROT がそこに加わり、その数はさらに増えることになります。
多くのインドネシアのメタル・ヘッズにとって、これは間違いなく誇らしいことであり、自国ではまだ有名になっていないに3人とっては夢のような出来事でしょう。しかし、この発表は、2014年の結成以来、ヒジャブを被ったイスラム教徒の女性がロックを演奏するのはふさわしくないとバンドに否定的な意見を投げかけてきた評論家たちの勢いを加速させました。彼女たちの技術やステージでの経験が不足しているために、世界的な WACKEN のステージに立つ資格がないと指摘する人もいれば、バンドが裏で取引をして、お金を払ってフェスティバルに出演しているとほのめかす人もいます。
探偵ではなくても、このような嘲笑や憶測には、昔ながらの性差別や保守主義、ロックは男の子(しかも悪魔崇拝者)だけの遊び場だという古臭い考えが染み付いていると推察することができるでしょう。
VOICE OF BACEPROT がフェスティバルで演奏するためにお金を払ったという噂については、Wacken Open Air が声明の中でしっかりと否定しています。
「ブッキング・チームのメンバーがテレビで彼女たちを見てヨーロッパのエージェントと知り合いになり、私たちのフェスティバルにおけるスロットを提供することにした。もちろん、W:O:A 2022での彼女たちのショーをとても楽しみにしているよ!」

VOICE OF BACEPROT が Wacken のステージに立つまでには、まだ1年以上の時間があります。それまでの間、トリオは技術を磨き、性差別主義者や保守的な嫌われ者に対する怒りを音楽にぶつけていきます。
「この問題には性差別がしっかりと根付いているわ。なぜなら、このような中傷者のほとんどは無知であるか、自分の発言がいかに性差別的であるかを知らないからね。でも、私たちはリラックスして、彼らを気にせず、音楽を作り続けることにしたのよ」
インドネシアには女性のロッカーは少なからず存在しますが、現在メインストリームで活躍している人はほとんどいません。当然、宗教的なスカーフをかぶってヘッドバンキングをするような人も。VOICE OF BACEPROT は、このような状況の中で “避雷針” となり、あらゆることの矢面に立ってきました。
Kurnia は、「中傷することは創造することよりも簡単で、だからこそ、多くの人が創造の代わりに嘲笑することを選ぶの。驚くことじゃないわ」と語ります。
ただし、幸いなことに彼女たちの本気度を目の当たりにした両親たちは、西ジャワ各地の音楽フェスティバルにブッキングされた後、やっと3人をサポートするようになりました。
「最初の演奏は学校のイベントで、お別れコンサートだったんだけど、両親が私たちの演奏を初めて見たの。私たちが通っていた学校は、かなり宗教色の強いイスラム教の学校で、みんなかなりショックを受けていたわね。それまで両親は、私たちがメタルをやることを明確に支持したり、禁止したりしなかったの。心の中では、私たちのことを誇りに思ってくれていると思っていたわ。少し心配だったかもしれないけど。でも、最初のライブの後、両親は私たちがメタルを演奏することを禁止したの。でも私たちは続けたし、あまり深く考えなかったわね。一年秘密に練習していたわ。辞めようとか、一歩退こうとか、そんなことは考えなかった。時が経つにつれ、両親やコミュニティからのサポートがないことが、むしろ私たちの精神的な強さや、悪影響を与えないことを証明するための決意を固めるのに、大きな役割を果たしていることに気づいたのよ」
彼女たちの限りない情熱は、歌詞やインタビューで語られる人生哲学の自然な延長線上にあるのかもしれません。Kurnia は、意欲的な女性メタル・ミュージシャンへのアドバイスを求められると、「勇気を持って、強くなること」と淡々と答えます。Aisyah は、田舎の小学生から世界的なメタル・アーティストになるまでの7年間の道のりを表す言葉として、「大きな夢を持つことを恐れないで」と目を輝かせました。
「私たちの音楽のメッセージは、自由について。女性としての自立、人間としての自立、そして人間の価値観や人間性についても多く書いているわ。私たちがやろうとしているのは、伝統を継承し、自分の意見を述べ、自分たちの音楽を他の人々と共有することなの」

参考文献: NME: Voice of Baceprot: Indonesian metal trio forge ahead to Wacken Open Air in defiance of sexist mudslinging

LOUDERSOUND: VoP Are The Metal Band That World Need Right Now

REVOLVER: How Indonesian Muslim Trio Found

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【KEKAL : QUANTUM RESOLUTION】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JEFF ARWADI OF KEKAL !!

“We Don’t Consider Record Labels To Be “Above The Band” Who Can Micro-Manage The Band Down To Artistic Choices, But Also On The Other Hand We Don’t Want To Put The Band’s Needs “Above The Record Labels” And Dictate Them How To Operate, Because They Already Operate The Way They Are.”

DISC REVIEW “QUANTUM RESOLUTION”

「インドネシアにはメタルやエクストリームな音楽に特化した多くのファンがいて、特に最近はメタルをやっているバンドが非常に多いんだよ。中には地元ではとても人気があるバンドもいて、メタル系の音楽を演奏するだけで “セレブ” の域に達しているバンドさえあるんだから。」
インドネシアの音楽に対する探究心はアジアでもトップクラスでしょう。MoonJune レーベルが提供するジャズやプログレッシブのレコードは須らく知性と冒険心に富んでいますし、ヘヴィーメタル大統領 Joko Widodo が象徴するメタルワールドも当然多彩で実力派を揃えています。デスメタルはもちろん、ブラックメタルに着目しても PURE WRATH のような奇跡を生み出す場所ですから、もはやメタルの第三世界と呼ぶには些か無理があるはずです。
KEKAL はインドネシアにおけるブラックメタルの先駆者ですが、もはやブラックメタルの一言でかたずけることは完全に不可能な、多様なモダンメタルの怪物へと進化しています。
エレクトロニカ、ポップス、ジャズ、トリップホップ、インダストリアル、アンビエント、サイケデリック。仮にエクストリームメタルをジャワ島だとすれば、APHEX TWIN, Miles Davis, PORTISHEAD, THE PRODIGY, MASSIVE ATTACK, ULVER といった島々で多文化多島美を形成するインドネシアのミニチュアこそ KEKAL の真の姿ではないでしょうか。特に、フィールドレコーディングまで敢行する電子音とノイズの実験は、フランスの IGORRR と並んでメタル世界の最先端に位置するはずです。
「2009年に全員がバンドを脱退しKEKAL は正式にインドネシアのバンドとして残ることになったんだ。つまり、僕たちは “メンバーレスバンド “という道を選ぶことにしたんだよ。その後、僕たちは “KEKAL として “ではなく、”KEKAL のために” 活動している。コントリビューターとして完全にボランティアベースで、スケジュールも締め切りもなく、いくつかのアルバムでは他のミュージシャンが参加するようなやり方でね。自由なアソシエーションを採用して、完全にアナーキストになったんだ。」
驚くべきことに、KEKAL にはオフィシャルメンバーが存在しません。レコーディングにおいても、より良い音楽のため楽器も歌も最も適した人物がこなすという徹底ぶり。バンドではなく自由結社と呼ぶべきでしょうか。その特殊極まる背景は、彼らの土台であり源泉であるアナキズムに起因しています。
「僕たちはレコード会社を “バンドの上に立つもの” だとは思っていないし、バンドの芸術的な選択まで細かく管理できるとは思っていないけど、一方でバンドのニーズも “レコード会社の上に立つもの” だとは思っていないし、バンドの運営方法をレコード会社に指示もしたくない。」
KEKAL の指標するアナキズムとは決して無責任であることではありません。非階層、反権威こそ彼らの魂。支配者のいない世界を実現するため、すべてにおいて責任を束ねる自己管理、自己統治のアプローチを研ぎ澄まし、突き詰めていくのです。
「それは2015年に僕が “スピリチュアルな目覚め “と呼ばれるものを体験し始めた時から始まったんだ。詳しく説明するのは難しんだけど、食生活、睡眠パターン、感情、他人に対する見方や感じ方、世界観などの劇的な変化があったんだ。何らかの形で僕自身、僕たちが住んでいる世界、宇宙に関する新しい知識を受信することで “導き” の奇妙な啓示を受けてきたんだ。 これは、人々が一般的にグノーシスや “明かされた知識” と呼ぶものだね。」
さらに、結社の首謀者 Jeff Arwadi は自らが受けた掲示、スピリチュアルな目覚めをレコードのコンセプトやリリックに反映することを新たな生き甲斐として見出しました。つまり、最新作 “Quantum Resolution” は Jeff の伝道師としての役割が花開いた作品でもあるのです。
ハモンドのプログメタルと軽快なダブステップ、そしてブラックメタルのメイルストロームが入り乱れる “Quite Eye” は “Schizo-metal” への入り口として完璧でしょう。インダストリアルな瞑想と JOY DIVISION の複合体 “Inward Journey” では、天使の声が鳴り響き内なる旅路を導きます。
アナーキーの申し子たる自由結社は、両極に振れることさえも絶対的に自由。”The Sleep System” で RUSH や KING CRIMSON への敬意をメロディーの彼方に見出せば、ダブとヒップホップで踊り狂うブラックメタルの THE PRODIGY “Testimony” ですぐさま混沌を呼び寄せます。
極め付けはタイトルトラック “Quantum Resolution” でしょう。グノーシス主義に傾倒した Jeff から生まれくるに相応しい量子の黙示録。DURAN DURAN とブラックメタルの許されざる婚姻を祝福する厳かな教会の聖歌。これはきっと伝道師が奏でる異端者の讃美歌です。
今回弊誌では、Jeff Arwadi にインタビューを行うことができました。「KEKAL はインドネシア出身のバンドとしてヨーロッパと北米で同時にアルバムを出した最初のバンドで、ヨーロッパツアーを行った最初のバンドでもある。そういう意味では、地元や母国だけでアピールしようとしない若いバンドのお手本にはなるかもしれないね。」 どうぞ!!

KEKAL “QUANTUM RESOLUTION” : 10/10

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まずはこの写真をご覧頂きたい。どう見てもNAPALM DEATH創成期からバンドとシーンに人生を捧げてきた本物のメタルヘッド(独身)です。実際彼はMETALLICALAMB OF GODを愛するツルーメタルヘッドなのですが驚く事なかれ、同時に大統領でもあるのです。

【METAL HEAD PRESIDENT Joko “Jokowi” Widodo】

“Incredibly, ladies & gentlemen, the new President of Indonesia is a metalhead AND a Lamb of God fan. No, this is not a joke, yes the photos are real, yes he digs Napalm Death, Metallica, Megadeth, & lamb of god amongst others- holy crap! THE WORLD’S FIRST HEAVY METAL PRESIDENT! “

”信じられないだろうがインドネシアの新しい大統領はメタルヘッドでLamb of Godのファンだ。これはジョークじゃない。写真は本物だ。そう彼はNapalm Death,Metallica,MegadethそしてLOGといった最高のバンドを愛しているんだ!世界初のメタルヘッド大統領が誕生したんだ!!

LOGのボーカルRandy Brythからのお祝いコメントです。貧民街に生まれ家具のサラリーマンから大統領にまで登り詰めた立志伝中の人物だそう。

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これにはポコポコヘッド大統領も大興奮ですね。

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ちなみにこちらはMETALLICAが昨年インドネシア公演を成功させた折にロバートから貰ったベースだそう。ただベースに書かれた”Giving back!”が贈収賄の可能性ありと当局に押収されたという・・・取り戻せたかしら。

良い機会なので我々もインドネシアの音楽について勉強して行きましょう。新世代のアーティストを集めました。

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