EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH world’s end girlfriend !!
Japanese Post-rock, Electronica, Classical Music Maestro, world’s end girlfriend Has Just Released Shining New Album “LAST WALTZ”!!
DISC REVIEW “LAST WALTZ”
Post-rock, Electronica, Classical といった要素をミックスし、独自の美しき純粋音楽を作り上げる world’s end girlfriend (以下WEG) がフルアルバムとしては実に6年振りとなる新作 “LAST WALTZ” をリリースしました!!
WEG は音楽家、前田勝彦氏のソロプロジェクト。Virgin Babylon Records の主催として、Vampillia, Have a Nice Day!, Matryoshka といった先鋭的かつ研ぎ澄まされた感性を持つアーティストの作品を発表、サポートしつつ、AKB48 ドキュメンタリー映画の音楽を担当するなど、昨今のミュージックシーンでその存在感は確実に際立っています。
前作 “SEVEN IDIOTS” のリリースが2010年。それから日本は3.11を経験しました。現代日本の価値観を根底から覆した災害を前にして、多くのアーティストが希望の歌を奏でたり、悲しみの歌を紡ぐ中、WEG は自然と音楽を比較します。
命を育む母なる海が多くの命を奪っていく現実。何の感情も伴わず、善悪を超えたただ圧倒的な光景は音楽を超えている…その人間を介さない根源的な世界観は WEG の世界と強く通じるものでした。自然への挑戦。”LAST WALTZ”のテーマを自身の名前 “world’s end girlfriend” とした意味もそこにあります。
インタビューを読めば分かるように、WEG ほど純粋に音楽への奉仕を貫くアーティストはいないでしょう。”LAST WALTZ” に存在するのはただ”美しさ”のみ。そこにメッセージ、感情というフィルター、つまり人間はほぼ介在していません。WEG は媒体としてただ音楽が求める先を具現化する。まさにこの表現方法こそが、今回彼が追求しチャレンジした世界なのです。
ジャケット、MV など今回何度も使用された花はそれを象徴しています。何も語らずとも、花はその美しさだけで世界に影響を与えています。WEG の美しき音楽もただ存在するだけでリスナーへ命のありようを伝えます。
地震の揺れをダンスとして捉えた “LAST WALTZ” というタイトルには、同時に「死の舞踏」という意味も込められています。死を前にしても美しく踊る魂でありたい。粛々と生を全うすることの尊さ、命の持つ根源的な強さを表しているのです。直接的な表現では決して生まれないであろう、誠実さ、純粋さがここにはあります。
ぜひ “Flowers of Romance” を聴いていただきたいと思います。13分の美しさを極めた至上のワルツはまさにメメント・モリ。死を前にして悠然と優雅に舞う魂が、音を通して見えるはずです。
ダークシンセ、ストリングス、ソプラノボイス、エレクトロビート、ノイズ。全てが WEG というマエストロの手に集まり具現化されたあまりにも圧倒的な死のダンスは、アートは自然に勝るのかという問に対する無言の回答として、その存在、楽曲という命に大きな意味を生んでいますね。
今回弊誌では、WEG にインタビューを行うことが出来ました。最もクリスマスらしく、実は最もクリスマスらしくないアルバムかもしれませんね。どうぞ!!
world’s end girlfriend “LAST WALTZ” : 10/10
【INTERVIEW WITH world’s end girlfriend】
Q1: フルアルバムとしては6年ぶりとなる新作 “LAST WALTZ” がリリースされました。まずは6年という長いインターバルを経て、このタイミングで world’s end girlfriend のアルバムをリリースすることに決めた理由を教えていただけますか?
【WEG】: 楽曲制作はずっと続けてまして、この6年間にもサントラ2作、配信限定作品、アナログEP、コラボもの等作品自体はたくさん作っていたのですが、なかなかフルアルバムとしてやるべき世界観や深みに達することができなくて時間がかかってしまいました。
それは3.11後ということが大きく、あの津波を見た上での作品になるため、これまでの表現方法を超えた表現が必要でした。
Q2: 仰るように、2010年から今日まで、3.11は日本を文字通り大きく揺さぶりましたし、世界はテロの時代を過ごしてきました。直接的に”生命”の終わり、同時に強さを感じることが増えた時代と言えるかもしれません。
作品のタイトル “LAST WALTZ”、そしてアートワークからも、アルバムが”生命”と向かい合っていることが伝わりますが、前田さんの”生命”観を聞かせていただけますか?
【WEG】: まず、wegで言ってる「命」というのは「死」に対する「生」というイメージではありません。なのでおっしゃってるような3.11やテロにおける「死」の脅威によって「生」を強く感じる、という意味合いで言ってるわけではありません。
私の言ってる「命」というのは人や花などがただ存在するだけで根源にもってる強い何かです。
その中に「生」も「死」も含まれます。
またタイトルの「LAST WALTZ」は自らの最期の時の見えたときにでも誰かと優雅に自由に踊れる魂、ということです。
Q3: 今回のテーマは “world’s end girlfriend” だそうですね?そもそもこのプロジェクトを始めた時、どういった想いで”WEG”を選んだのでしょうか? そして今回自身のプロジェクト名をテーマとした理由を教えてください。
【WEG】: 最初、名前を決めるとき名前は一生使うものなので、自分がやりたい音楽の世界観を普遍的に表す言葉を探していて、ふと “world’s end girlfriend”と浮かび、その名前が直感で正解だとわかったので決めました。
アルバムのテーマとして “world’s end girlfriend”を選んだのは、アルバム制作開始当初からテーマに決めてたわけではなく、アルバム制作が進み終盤の頃にはどんどん深い領域へ入っていき、自らの核となる部分に達し、自然とテーマは”world’s end girlfriend”にしかあり得ないという感じになりました。
Q4: WEG は常に悠然としていて、何かしらのメッセージを押し付けたり、強く発信するような姿勢はないですよね?アルバムに存在するのは静寂と轟音、生音とプログラミング、そして至上のメロディーとノイズというコントラストが生み出す”美しさ”です。
例えばノイズの使い方にしても、WEG は常に鳴らすわけではなく要所で使用しカタルシスを誘います。そういった対比については常に意識されていますよね?
【WEG】: そうですね。weg の作品に特定のメッセージを入れることはありません。
人が発する「メッセージ」というものも信じていません。
それよりも例えば「花」がただそこに存在するだけで美しく強く在るようにメッセージより「美しさ」の方を信じています。
静寂と轟音、メロディーとノイズ等に関しては、それらを対比として意識することはありません。
それらを対比として描くのは簡単な表現です。対比ではなくそれらはひとつの中の側面であり、その複数面が必要な場合にはそのような表現になります。
またカタルシスのためにやることでもありません。音楽自体が求める方向に進むだけで、私自身は媒体としてあるだけです。まだ未熟なので自我は入ってしまいますが。
ですので静寂のまま終わるべき曲には轟音は入れませんし、ノイズだけであるべきなときにはメロディーは必要とされません。
音楽を作り出すときはあくまで音楽そのものに仕えるという立場です。
Q5: 音楽的に、”LAST WALTZ” で新たに挑戦した部分、特に拘った点を教えていただけますか?また、アルバムには downy の青木裕さん、湯川潮音さん、Piana さん等が参加されています。今回、ゲストを多数起用したのはなぜですか?
【WEG】: 日々作曲の際にはすべて新たな挑戦はしています。小さいことでも一つは毎曲新たなものは入れています。それは音楽を作り始めた頃より自身に課したものです。
その新たな要素はひとつひとつはとても小さいものですが、薄い紙でも何百枚も重なっていくと大きなものになるように知らないうちに変化は起きていきます。なので新たな挑戦は様々なところにいくつもあり、拘ったところもすべてとしか言いようがありません。音もジャケットもデザインもMUSIC VIDEOもすべて私自身が望み、深くかかわり制作してます。
今作で特別にゲストを多数起用したという意識はありませんでした。自分で作り出すことができない音や声が唄が必要だったので参加していただいたというか、毎回多くの演奏家を招いて制作してますので特に変わった意識はありません。
Q6: WEG は勿論、交流のある MONO や LITE, toe など世界的に認められている日本のアーティストはインストゥルメンタル主体、Post-Rock の分野で活躍する方々が多いように思います。そこにはやはり言語の壁も存在するのかも知れませんが、これからさらに日本のアーティストが世界を舞台に活躍するにあたって求められるものは何だと思いますか?
【WEG】: 言葉の壁はありますが、かつてほど壁ではなくなっているとおもいます。
インストは言葉の壁が最初からないので伝わりやすいという面はありますが、それよりもアメリカやヨーロッパなどにはなく日本にしかない表現であることの方が強いとおもいます。
言葉の壁を越えBABYMETALやCorneliusが広く評価されたのも、日本からでしか産まれない表現、音楽であったからだとおもいます。
Q7: 前作 “SEVEN IDIOTS” リリース時に立ち上げたレーベル “Virgin Babylon Records” も6周年を迎えたことになりますね。個人的に「”VBR” からのリリースなら信頼できる。」と感じている音楽ファンは確実に増えてきていると思います。そういった”手応え”のようなものは感じていますか?
【WEG】: はい。Virgin Babylon Recordsからリリースしている作品はそのアーティストでしかできない表現や世界を作り出しています。
そこに意識的にしろ無意識的にしろ気付き反応する人々は増えていると感じます。
Q8: これから “Virgin Babylon Records” が目指すところはどこでしょう?どういったアーティストをプロモートしていきたいですか?
【WEG】: 先ほどの質問の答えと同じ答えになってしまいますが、そのアーティストにしか作り出せない世界、表現ができる人だったら有名、無名、売れる売れない関係なくリリースしていきたいです。
プロモートに関してもVirgin Babylon Recordsは特別なことはしません。
レーベル運営を楽しみ、誠実に音楽を売り、作家に還元できればと考えています。