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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ELDER : OMENS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH NICK DISALVO OF ELDER !!

“I’d Like To Think That We’re Channeling The Adventurous And Explorative Spirit Of The Prog Scene In The 70’s, But Not Directly The Sound. We Want To Be Our Own Band, But Also Push The Boundaries Of Our Own Creativity.”

DISC REVIEW “OMENS”

「僕は日本の浮世絵を購入したばかりでね。それをきっかけに、日本の文化について読んでいて”浮世”の意味を発見したんだ。読み進めるにつれて、僕がアルバムのために書いている歌詞と本当にシンクロしていて興味をそそられたよ。
住んだことのない場所についてはあまり多くは語れないけど、少なくとも僕の住む西洋世界では、人生に意味をもたらさない過剰な消費に執着し過ぎているように感じるね。必要のないものを買うために働いているように思えるよ。大きな家やファンシーな車を買い、意味のない人生を送り、ゴミ以外何も残さず死んでいく。
このアルバムの楽曲は、僕たちの多くが精神的奴隷として生きていることを悟り、人生を充足させるため自分自身の道を見つけることについて書かれているんだよ。」
前作 “Reflections Of A Floating World” リリース時のインタビューで、Nick DiSalvo はそう語ってくれました。古の日本に学び、物質世界よりも精神世界に重きを置く彼の哲学は、おそらく ALCEST の Neige とも通じています。
そして奇しくも、シンプルなストーナーアクトとしてスタートし、プログ/ヘヴィーサイケの方角へと舵を切った ELDER の音楽性は、ストーリーを喚起するシネマティックな創造と、ジャンルを縦横無尽に横断する精神性という意味でいつしか ALCEST と神話を共有できる数少ない語り部に成長を遂げていたのです。
「今日僕たちは、サウンドとアトモスフィアのスペクトルを広げて探求を続けている。だけど、君が “Omens” について “ブライト” で “アップリフティング” と評したのはとても興味深いね。だってこのアルバムのテーマはさっきも語った通り実にダークなんだから!まあ僕はいつも悲哀と喜びの2つの対照的な感情を描こうとしているんだ。そして両者のムードを全ての楽曲に落とし込もうとしているんだよ。」
前作で “浮世” の浄土を描いた ELDER は、”Omens” で対照的に欲望渦巻く物質世界の限界を鋭く描写することとなりました。さながら対となるレコードにも思える2枚のアルバム。その陰の “裏面” はしかし、映し出した深刻なテーマと反するように陽のイメージを以前とは比較にならないほどブライトに宿しています。
新たな輝きは明らかに、ANATHEMA, ALCEST, CYNIC といったモダンメタル/プログの革命家とも通じるように思えます。前作の時点でクラッシックプログ、クラウトロック、インディーからの影響がシームレスに芽生えるカラフルで多彩な浮世草子を創世していた ELDER ですが、その物語にシューゲイズやポストロックの息吹をふんだんに加えたことは確かでしょう。ただし Nick はその場所よりも、さらに純粋に澄み切ったプログジャイアントへの憧憬を隠そうとはしませんでした。
「彼らに比べて音楽的な才能が欠けているから、僕たちが直接的に YES の系譜に位置するかはわからないけど、彼らが僕たちの大きなインスピレーションと探求の源であることは間違いないね!どちらかと言えば、僕たちは70年代のプログシーンの冒険心と探究心を伝え、チャネリングしていると思う。サウンドを直接伝えているのではなくてね。」
ストーナーへの愛情を湛え、後ろ髪を引かれながらもその音心は確実にかつての恋人から遠ざかっています。実際、”Ember” は現代に突如として現れた “オルタナティブな YES” と表現したいほどに、70年代の宇宙的で英知的な “残り火” を灯しているのですから。
もちろん、”Omens”, “Halcyon” に漂うサイケデリックな営みは PINK FLOYD の遺産でしょう。ただし、”In Procession”, “One Light Retreating” に Nick が施した Steve Howe と Jon Anderson の彫刻、GENTLE GIANT の細工は、他の現代を生きるバンドには決して真似できない匠の孤高。
「“Elder” “長老” は僕にとって古の感覚、篝火に佇む古の賢人を想起させる言葉で、僕たちの歌うテーマにフィットすると思ったんだよ。今でも、この言葉は確かな美しさを持っていると感じるね。」
フェンダーローズ、メロトロン、ムーグ、さらに瑞々しきギターの百花繚乱を携えた長老の紡ぐ古の音楽は、”Omens” の物語と同様に、プログレッシブの新緑が世界中の廃墟から成長し、次世代のサイクルを始める美しき象徴に違いありません。
今回弊誌では、Nick DiSalvo に2度目のインタビューを行うことができました。「僕はこの時間を出来るだけ新たな音楽の作曲に当てて、生産的でいようと心がけているんだ。特にこの春はコンサートをキャンセルせざるを得ないからね。だから僕たちにできる最良のことは、出来るだけ賢くこの時間を使うことなんだよ。」
前回のインタビューでは ANEKDOTEN を挙げて驚かせてくれた Nick ですが、今回はノルウェー気鋭のジャズロック NEEDLEPOINT を2作も挙げている点にも注目です。どうぞ!!

OMENS TRACK BY TRACK BY ELDER

Omens

タイトルトラック “Omens” はレコードの舞台設定だね。その本質は、文明の衰退についてのコンセプトアルバム。悪い兆候のもとにある社会の有り様を描いているんだ。壮大な文明の城は高く聳えるけど、迫り来る変化の暗い雲に覆われているよ。
僕たちのレコードでは大抵、楽曲は書かれた順序で収録されている。実際にこのタイトルトラックはアルバムで最も古い曲なんだ。そのため、おそらく以前のレコードと最もイメージが似ていて、最もリフの多い楽曲になったね。だけど最後の部分は、ほぼシューゲイズとポストロックの領域に浸っているかな。
オープニングのピアノのリードは、もともとは曲のモチーフにしようと考えていたんだけど、レコーディング中はどういうわけか合わなかったんだ。そんな中で、Fabio がムーグでジャミングを開始し、オープニングリフに新たなモチーフを重ねてくれたんだ。こんな風に、スタジオでは瞬く間にひらめきで変更が加えられることがあるね。

In Procession

もともとはアルバムの最初の曲であり、シングルにしようと思っていたんだけど、おそらくこれほど多くの変更が加えられた楽曲はないね。2つの部分に分かれていて、最初の部分はクラッシックな ELDER のリフとサイケデリックなヴァースの間を行ったり来たりして、後半部分はジャムセッションが進展しながら構築され、グルーヴィーでポリリズミカルな終幕へとに至るんだ。
作曲の観点から見ると、”In Procession” は ELDER の基準としては非常にシンプルで、全体的な特徴も、”The Gold & Sliver Sessions” のジャムを基盤とした性質に近いよね。
非常にブライトかつ刺激的な楽曲で、常に前進している世界を説明するエネルギーに満ちた歌詞を伴うよ。これは、この架空の文明が創設された時から常に成長、消費、発展する必要を伝えているんだ。ただし、”In Procession” の “行進” は同時に、軍事的または葬式的なものとしても解釈できるよね。つまり崩壊につながることを示唆してもいるんだ。

Halcyon

このように長い曲だと、ボーカルは比較的少ないんだけど、音楽が代わりに語ってくれる。”Halcyon” はまさに今この時についての楽曲。崩壊の直前、この世界の美しさを理解する最後のチャンス。死を避けられないものとして受け入れてきた文明において、自由の中で生きる一種の陶酔の瞬間。
“Omens” は他のレコードよりも時間をかけ、それほど根を詰めず製作して、有機的に “部品” を開発していったんだ。オープニングの4分間はスタジオで行ったいくつかのライブジャムの1つで、このやり方をよく表しているね。もともとこのジャムは10分を超えてたんだけど。ファンの忍耐力もテストしているわけさ。ライブで何が起こるだろうね!
僕の考えでは Halcyonは、”Lore” に最も近いかもしれないね。レコードの中で最も長くて最も壮大なトラックとして、センターピースの機能を果たしているからね。何度も聴けばギターとキーボードの多重なるレイヤーを紐解き、時には複数のドラムまで明らかにしするよ。最後のリフは、ジョン・カーペンターと GOATSNAKE が出会ったような感じだね。まさにアルバムを代表するリフだよ。

Embers

比較的明るいトーンにもかかわらず、”残り火” というタイトルが示すように、燃え尽きて消えていく世界のシーンを描いた楽曲だよ。おそらく僕たちが今まで書いた中で最もオルタナティブな楽曲で、ストーナーやドゥームよりもオルタナティブロックとの共通点が多く存在するね。つまり、良くも悪くもジャンルにあまり注意を払わないとこうなるという一例なのかもしれないね。前代未聞だよ。
僕たちは未知の海で泳いでいるから、ELDER らしく聴こえるかどうかにはあまり関心がないんだ。だから “Embers” はすぐに完成したよ。最後のリフは “パールジャムリフ” と呼ばれているくらいさ。

One Light Retreating

オープナーとは逆に、”One Light Retreating”は、最後に作業を終えた曲だった。レコードの浮き沈みが激しいから、このようなヘヴィーかつモメンタムなリフで終了するべきだと感じだね。つまり前作から “Omens” へのジャンプを完全に要約する、ひねりを加えたクラシックな ELDER ソングだよ。アルバムのクリーンなプロダクションが、スペーシーなエンディングで輝いているよね。
物語が幕を閉じると、世界の光が1つずつ消え、夜の暗闇に消えていくんだ。だけど僕たちのアルバムすべてと同様に、強い希望も存在する。新しい緑の生命が世界中の廃墟から成長し、また新たなサイクルが始まるんだ。

ELDER “OMENS” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【AUGUST BURNS RED : GUARDIANS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JB BRUBAKER OF AUGUST BURNS RED !!

“What I Don’t Like Is That Metalcore Has Become Almost a Dirty Word. The Genre Got So Oversaturated That It Got Predictable And Boring. It Was Around That Time That We Started To Talk Publicly About Breathing New Life And Originality Back Into Metalcore. We Also Started To Steer Away From The Word And Were Just Calling Ourselves a Metal Band.”

DISC REVIEW “GUARDIANS”

「AUGUST BURNS RED は可能な限り首尾一貫していようとしてきたんだ。自分たちのプレイしている音楽が気に入っているし、ヘヴィーな音楽を書き続けることに誇りを持っている。それこそが僕たちのやりたいことなんだ。」
メタルコア創造主の1人、AUGUST BURNS RED はその獰猛と誇りを失うことなくチャレンジを続けるジャンルの枢要な “ガーディアン” でしょう。
「僕が気に入らないのは、メタルコアという言葉がほとんど “ダーティーワード” “禁句” と化していることなんだ。このジャンルは非常に飽和してしまい、予想可能で退屈なものになってしまった。その状況は2012年から2014年にかけてが顕著だったね。」
複雑怪奇なリフイリュージョン、スポークンワードの冷徹、BETWEEN THE BURIED AND ME 由来の時間軸、クラシカルな旋律やアトモスフィア。フォーミュレイクなリフワークやブレイクダウンが蔓延したメタルコア世界で、プログレッシブな精神を保ち続ける ABR の心臓 JB Brubaker はいつしかその呼称自体を倦厭していきました。そうして自らをただメタルと称しながら、その実メタルコアに新たな生命と独創性を吹き込むことへ全力を投じ、ジャンルのリノベーションを誰よりも強く願ったのです。
「今では、メタルコアシーンの過飽和の多くは解消されたと思う。ジャンルは少し人気を落としているし、メタルコアバブルが弾けてからも続けているバンドは充分音楽を演奏するに値すると感じるからね。」
そうして LOATHE を筆頭にカラフルで技術に優れ才能豊かな若手が台頭した今、守護者が回帰した場所はルーツであるパンク、ハードコア、メタル全ての基盤である重量感でした。
実際、最新作 “Guardians” の作曲過程には、ボーカリスト Jake が重さが足りないと意見を出し、JB をはじめとした作曲陣がそれならば究極にヘヴィーな楽曲を作ってやろうと奮起した背景が存在します。
任務は完璧に遂行されました。眩暈を誘うリフエイジ、血管が決壊するスクリーム、地鳴りのようなブレイクダウン。一方でクラシカルな美旋律やアトモスフィアの荘厳は威力を増して、バンドのメカニカルなイメージを払拭しつつダイナミズムの魔法をよりレコードの深部へと植えつけました。
同時に、オーストラリアの怪物 PARKWAY DRIVE とのツアーも “Guardians” の哲学に影響を及ぼしたでしょうか。メタルコアをアリーナ対応のアンセムへと昇華した彼らのやり方は ABR にとってある種の衝撃でした。
攻撃の単純化、もしくは合理化とも呼べる発想の転換。JB 語るところのバンド史上最も簡素化されたストレートな楽曲 “Defender” には、3つのルーツ全てをもって素手で殴りつけるような露骨でダイレクト、獰猛なる緊張感が漲ります。
さらに、ビッグなコーラスとシンガロングパートを新たな武器として装填した “Bones”, “Paramount”, “Lighthouse” には、ヒロイックでアンセミックな即効性と躍動感が施され、よりアリーナという闘技場が似つかわしいバンドへとスケールアップを遂げています。中でもプログレッシブでシュレッドギターを満載しながら、シンガロングを強烈に誘う “Paramount” の仕上がりは圧倒的でした。
「クリスチャンであろうがなかろうが人には善良な人間になる責任があるはずさ。」
かつてクリスチャンメタルの旗手と謳われた ABR は、もはやその定義には拘っていません。ただし、JB はポジティブで思いやりを備えた人生の一つのテンプレートとして、キリスト教を大事に思っています。救いを求めるものに手を差し伸べる。この困難な時に、きっと “Guardians” は音楽を救いとする多くのメタル教信者にとって福音であり守護者となるはずです。
今回弊誌では、JB Brubaker にインタビューを行うことができました。「残念ながらツアーが中止になったことには失望しているけど、この世界的なパンデミックが音楽や ABR に関連するものよりもはるかに大きく重要であることも理解しているからね。人間の健康と福祉は娯楽よりも優先されるべきだからね。
でも出来るなら、この時間を利用して “Guardians” を聴いて欲しいと思うよ。きっとこの暗い時期を明るく照らしてくれるはずだから。」 どうぞ!!

AUGUST BURNS RED “GUARDIANS” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【THE BLACK DAHLIA MURDER : VERMINOUS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TREVOR STRNAD OF THE BLACK DAHLIA MURDER !!

“We Did Come Up During The Age Of Swedish Influenced Metalcore ala As I Lay Dying, Unearth, etc And Did Get Lumped In With That Genre a Lot But I Don’t Personally Believe We’ve Ever Been That. It’s Always been Death Metal To Me. “

DISC REVIEW “VERMINOUS”

「僕たちが登場したのは AS I LAY DYING とか UNEARTH のようなスウェーデンの影響を受けたメタルコアが勃興した時期だったね。そして確かにメタルコアのジャンルによく分類されてきたよ。
だけど、個人的には僕たちがメタルコアだったことはないと信じているんだ。ただずっとデスメタルであり続けただけなんだ。」
THE BLACK DAHLIA MURDER のおよそ20年のキャリアは、誤解を振りほどくための飽くなき闘争だったのかもしれません。無残な猟奇事件の被害者、ブラックダリアの名を冠するデスメタルバンドにとって、登場した時期、場所、人脈すべてが本質とは少しずつかけ離れ理想と乖離しながら得た名声は、70年前の事件と同様ミステリーだったのかも知れませんね。
ただしバンド、いやもやはメタルシーン全体のご意見番として定着した Trevor Strnad がデスメタルのタグに拘るのは、メタルコアのフォーミュレイクな音楽性云々以前に、アンダーグラウンドメタルへの深い愛情が理由であるはずです。
「だって僕たちはアンダーグラウンドミュージックを愛しているからね。僕たちの音楽はアンダーグラウンドミュージックへのトリビュートさ。僕たちが達成した成功は、自分たち自身の条件に妥協することなく基づいているからね。」
BRING ME THE HORIZON が恐れなきその眼差しでジェネリックポップを抱きしめ自らの理想をメタルの新聖歌へ昇華したのとは対照的に、THE BLACK DAHLIA MURDER はエクストリームであり続けアンダーグラウンドを追求することで自らの理想を鋼鉄の大樹へと刻むのです。
「僕たちのメタル文化は社会の大部分から過小評価されているけど、計り知れない強さを持ち、宗教の束縛なしで自由に生きることができるコミュニティーなんだ。」
Trevor にとって、理想的なメタルヘッズとは今でも主流の対岸に位置し、偏見なく音楽ひいては社会の常識や欺瞞を疑う監視者。つまり、権力や主流派にとっては知識という疫病を運ぶ害虫であるべきなのでしょう。ゆえに、当然 “Verminous” “害虫” の名を冠した最新作は新たな反抗の幕開けです。
「僕はこのバンドが何年もかけてより3次元的なサウンドへ、自然に進化を遂げていったと思っているんだ。だから今ではバンドとしてダイナミズムを出すために何をするべきか完全に理解しているんだよ。まさに多様性の力だね。」
あの運指マシーン Ryan Knight を凌ぐほどに燦然と輝く Brandon Ellis の加入と共に前作 “Nightbringers” で芽生えた創造の羽は、”Verminous” において漆黒の大翼として下水道の闇に君臨します。
皮肉にも、”形式的” “一辺倒” を揶揄するために TBDM を含むかつてのメタルコア一派が称された “任天堂サウンド” は、彼らの臓腑の奥底でゲーム音楽が本来有するダイナミズムと万華鏡の音の葉を強調し始めることになったのです。
「確実に僕の書く歌詞はロールプレイングゲームのファンタジーサイドから影響を受けているよね。任天堂のクラッシックなゲーム音楽はメタルと様々な相似点が存在するし、僕たちが書いている音楽もそこから影響を受けているんだよ。」
ドラマティックでシネマティック、より感情的に喚起される作品が書きたかったと語る Trevor。実際、”Verminous” は切り裂きジャックや吸血鬼が主人公ですが、彼が敬愛するドラゴンクエストやファイナルファンタジーに勝るとも劣らないファンタジックな猟奇譚で、好奇のローラーコースターでしょう。
メロディックデスメタルはもちろん、スラッシュ、プログレッシブ、クラシカル、さらにはドゥームの鼓動まで感じさせるレコードのカラフルでムーディー、カリスマティックなイメージは、洗練と地下水脈をまたにかける THE BLACK DAHLIA MURDER にのみ許された秘伝、調合の魔法に違いありません。同時に、体内の害虫は貪欲にに肌を食い破り、変わらぬ凶暴を見せつけるのです。
今回弊誌では、Trevor Strnad にインタビューを行うことができました。「僕は特にレトロゲームを愛しているんだ。フェイバリットは、ドラゴンクエストとファイナルファンタジーシリーズだね。昔の16bit とか 8bit の時代が大好きなのさ。
ゲーム機ならファミコン、スーパーファミコン、メガドライブ (セガ) が絶対的に好みだね。中でもオリジナルのファミコンが最高さ!」 どうぞ!!

THE BLACK DAHLIA MURDER “VERMINOUS” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【HELMS ALEE : NOCTILUCA】JAPAN TOUR 2020 SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH HOZOJI MATHESON-MARGULLIS OF HELMS ALEE !!

“And These Days, Pretty Much Every Single One Of My Best Female Friends Is An Extremely Talented And Active Musician. Many Of Them Play In Heavy Rock Bands. So The Feeling Of Imbalance Is Shifting To An Equilibrium In My World. I Can Say With Confidence That I Feel Accepted And Valued By The Male Musicians In My Community.”

DISC REVIEW “NOCTILUCA”

「”Noctiluca” とは特定の生物発光藻類のラテン語訳で、一般的に “海の輝き” として知られているの。」
海の輝きが “Noctiluca” ならば、HELMS ALEE はさしずめ重の輝きでしょう。彼らがシアトル特有の、深憂なレンズを通して支配する時間と空間。それはまるで深海のごとく暗闇に囲まれながら、差し込む光線に反射する艶やかな色彩、そして栄養価の高い深層音を備えているのですから。
比較の対象はもっぱら MELVINS, KYLESA, BIG BUSINESS でしょうか。もちろん、スラッジーなリフの猛攻とノイジーな実験のラボラトリーは HELMS ALEE のトレードマークですが、同時にリズムのトリックに重きを置いたセクシーなアプローチを考慮すれば、一方でこの海洋トライアングルこそコンテンポラリーな RUSH と言えるのかも知れませんね。
「このアルバムのために私たちは、これまで以上にボーカルのコラボレートを進めたわ。それに今回のプロデューサー/エンジニア (R.E.M. を手がけた Sam Bell) はとてもボーカルに心血を注ぐ人物だったの。」
3つの異なる声を持つ HELMS ALEE。ベースの Dana James, ドラムスの Hozoji Matheson-Margullis, そして青一点ギターの Ben Verellen が織りなすボーカルの輪舞は、さながらウミウシのごとく柔軟性と色彩を纏った “Noctiluca” において完全に花開き、重の輝きを一際煌びやかに染めました。
「私は海とそこに住んでいる微生物こそが、私たち人間の日常に見られるよりも生命があることを思い出させてくれると思うのよ。人間の行動や日々の政治を観察すると悲しくなりがちだから。」
Hozoji にとって生物発光藻のビーカーこそがランプであり、灯台の光です。マジカルで神秘的で、仄暗い現代社会に光をもたらす微かな希望。そしてそのイメージは確かに “Noctiluca” の音の葉へと反映されているのです。
“Interachnid” のオープニングはさながら海底火山の目覚めでしょうか。ダイナミック極まるマグマのリズムは、RUSSIAN CIRCLES の最新作にも似て圧倒的な命の躍動を伝えます。フレキシブルに、フリーダムに、イカの虹色のごとく刻々とその表情を変える Hozoji と Dana のシンクロニシティーは、まさしく HELMS ALEE の心臓。一方、続く “Beat Up” でわずか半音の違いを駆使してメジャーとマイナーを不思議に行き来する Ben のギターワークは頭脳なのかも知れませんね。
メタルからハードコア、スラッジ、グランジ、プログレッシブの狭間を漂う海月たちは、そうしてバリトンからソプラノまで時に独唱し、時に合唱し、感情の揺らぎを響かせます。”Spider Jar” で聴かせる荘厳のタペストリーは、その輝きに歌心を加えた HELMS ALEE の現在を如実に伝えています。
「私たちの音楽はライブセッティングでこそ最高の印象を与えるようなものなのよ。なぜなら、ライブパフォーマンスにおける多くの感情の力によって、私たちの歌が意図した通りになっていくと信じているからなの。」
4月に始まる日本ツアーの招聘元、Daymare Recordings 濱田氏が放った 「ライヴを観る前と観た後で決定的に印象が変わるバンド」 の言葉を受けて、Hozoji はライブハウスでバンド、そしてオーディエンスから生じ対流する感情の力をキーワードにあげました。そしてその幾層にも重なるエモーションの潮目は、Endon, alley, BB を巻き込んで一つの大きなうねりを創造するはずです。
今回弊誌では、Hozoji Matheson-Margullis にインタビューを行うことができました。「最近では、ほとんどの女性の親友一人一人が非常に才能があり活動的なミュージシャンなの。彼女たちの多くはヘヴィーロックバンドで演奏しているわ。だから、不均衡の感覚は少なくとも私の世界においては均衡へと移行しているの。私は自分のコミュニティの男性ミュージシャンに受け入れられ、評価されていると自信を持って言うことができるから。」
これまでの女性アーティストはまた一味違った視点、経験を持つミュージシャンでしょう。どうぞ!!

HELMS ALEE “NOCTILUCA” : 9.9/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【POPPY : I DISAGREE】


COVER STORY: POPPY “I DISAGREE”

ALL PHOTO BY ERIKA ASTRID

“I Think I Just Get Bored Really Easily And Also I View Things In Eras,David Bowie Is a Big Influence And Inspiration To Me, And I Know That He’s Very Famous For His Different Eras And Stages And Evolutions. I Think It’s Kind Of An Artist’s Responsibility To Evolve Constantly.”

EVEN IF GENRE IS DEAD, POPPY IS DANCING ON IT’S GRAVE

「美は痛みであり、痛みはキャラクターを構築する。」 Poppy が毎朝目覚めてまず自分に語りかける言葉です。それこそが Poppy の持つミステリアスな部分でしょう。実際、その日その日に生まれる審美の痛みにより、彼女のルックスや役割、それに音楽性は猫の目のように豹変を続けます。
ポップスター、俳優、監督、アンビエント音楽の作曲家、宗教指導者、DJ、コミックキャラクター、YouTuber、パフォーマンスアーティスト…Poppy の天職はいったいいくつ存在するのでしょうか?
さらに Poppy の YouTube チャンネルは彼女のキャッツアイを見事に伝えています。まるで隣の女の子のように Gwen Stefani の流儀で陽気なポップソングを歌ったかと思えば、Diplo のダンスビートでロボティックなバービーを演じてみせ、さらにはメタルリフのハンマーでリスナーの精神を打ちつける死の天使にさえ変化するのですから。
ほぼ全てのMVが100万視聴を超え、”デジタルラビットホール” の中枢に位置し、”ASMR 人間” とまで称される Poppy。なるほど、音楽を作り始める前にその人気とペルソナをオンラインで確立したという点で彼女はまさに21世紀の “現象” そのものでしょう。

現在20代半ばの Poppy こと Moriah Pereira は、2010年代中盤に Titanic Sinclair 監督がタクトを振るう奇妙な一連のビデオ作品で世界に登場しました。Poppy が “I’m Poppy” と繰り返すだけのクリップや、Charlotte というマネキンにインタビューされ植物にインタビューするシュールな世界観は大きな波をポップカルチャーにもたらす予感を植えつけました。
そうして Sinclair、カナダのヒットメーカー Simon Wilcox との創作を始めると MV の予算は劇的に増加し、オートクチュールのワードローブからおとぎ話の衣装に、日本の “Kawaii” 美少女スタイルまでその音楽性同様色とりどりのファッションで世界を魅了し始めたのです。ただしオンラインのスターダム、そして完璧なポップスターのイメージは彼女が目指す場所ではありませんでした。
「自分自身をポップスターとしてではなく、単なるアーティストやクリエーターだと思っていたの。永遠に同じでいるなんてつまらないわ。私はすぐに退屈してしまうし、物事を時代を通して見てしまうのよ。David Bowie には大きく影響されているし、とてもインスピレーションを受けているわ。何より彼は時代ごとに大きく異なることで有名だし、ステージ共々常に進化を遂げていたわ。常に進化を続けることはアーティストの義務だと思っているの。」

もちろん、David Bowie は1973年に自らの幻想、別人格である Ziggy Stardust をハマースミスオデオンのステージ上で葬りました。メタルへと舵を切った Poppy も、以前のバージョンの Poppy を意図的に葬ったと言えるのでしょうか?
「間違いないわね。Poppy ver.0、Poppy ver.1 は Poppy ver. X によってアップデートされているわ。私が “X” をリリースした時、みんなとても気に入っているように思えたわ。そして始めて私は自分の音楽を聴いて再度インスパイアされたの。」
“Poppy.Computer” と “Am I a Girl?” が日本の “Kawaii” 文化と未来派をクールとする新世代をターゲットに制作されたことは明らかでした。”I Disagree” には一方で悪魔の角が備わっています。時にスラッシー、時にチャギーなリフアタックはキュートでポップな Poppy のイヤーキャンディーとプログレッシブに溶け合います。きっとアメリカの特定の層にとって、今や日本の “Kawaii”, “Otaku” そしてメタルはヒップなカルチャーなのでしょう。

カルトフォークとヘヴィーな音の葉をミックスした “Am I a Girl?” のクローサー “X” によって Poppy がメタルに移行したと決めつけるのは簡単です。ただし、Poppy 自身は自らをメタルアーティストだとは思っていないようです。
「メタルに傾倒しているかって? 答えは #Idisagree よ (笑)。もちろん、間違いなくメタルからの影響は存在するわよ。だってアルバムを作っている時、私たちが聴いていた音楽こそメタルなんだから。ただ、アルバム全体を聴けば、よりプログに傾倒している場所もあるはずよ。当然、未だにポップな部分もあるわ。だけどもう一番の要素じゃないわね。三番目ね。」
法的な闘争や Grimes とのいざこざ、悪質なレコード契約によって溜まった鬱憤を晴らすカタルシスがメタルだったという側面もあるようです。
「全ての怒りを私のアートに注ごうとしたのよ。だけど自然なことよ。”Am I a Girl?” を書いている時、私はスタジオまで運転する車でヘヴィーな音楽ばかり聴いていたのよ。蝶々や虹の曲を書きながらね。全然繋がってないって思ったわ。」

メタルに目覚めたのはごく最近のことなのでしょうか?
「いいえ。私はメタルを聴いて育ったから、またちょうど戻ってきたって感じね。聴く音楽は日によって違うんだけど、NINE INCH NAILS と Gary Numan はずっと好きだったわ。だけど同時に、ダンスのバックグラウンドも持っているし、ポップミュージックも愛しているの。だから当時、自分の音楽でダンスやポップを探求するのは理にかなっていたのよ。逆に今は自分の感情を発信するのにメタルが適してるって感じかな。」
Poppy にとってエクストリームミュージックへの入り口は MARILYN MANSON でした。
「幼い私の目を引いたのは、MARILYN MANSON 全ての衝撃値だったわ。キッズが彼のTシャツを着ていると、道行く人は二度見をしていたわ。最初はそれがとても魅力的だったの。それから音楽にハマっていったの。だけど私は結局、彼の創造した文化こそがマジカルだったと思うの。素晴らしかったわ。そしてある種彼はその魔法を利用していたと思う。」
Poppy が目指すのもまさにその魔法。つまり、カルチャーの想像力を長期的に捉える能力。Trent Reznor もその能力に秀でていると Poppy は考えています。もちろん Beck も。いつか Poppy がコラボレートを果したい偉人たちです。
「自分の成長を通して、リスナーも共に成長してくれることを望んでいるのよ。」

ただし、彼女の路線変更は既存のファンを犠牲にする可能性を孕んだギアチェンジでもあります。実際、”I Disagree” のオープナー “Concrete” には、”快適と不快を行き来する” “よく分からない” “双極性障害の曲” といった批判的なコメントも寄せられてています。
「SLIPKNOT, BABYMETAL, QUEEN, THE BEACH BOYS が一緒に作曲したみたいなんてコメントもあったわね。嫌いじゃないわ。」
Poppy の進化には今のところ、確かにメタルが含まれます。ただしそれ以上に重要なのは、”I Disagree” が彼女が音楽を作り始める以前に YouTube で構築した自身のペルソナから一歩踏み出したことでしょう。
「”I Disagree” は私のファーストアルバムのように感じているの。以前リリースした2枚のアルバムは、私の YouTube チャンネルのストーリーラインに沿っていたから。だから自分の足で立つことが出来たこの新たな音楽はまるで旅立ちね。他のアルバムは YouTube のコンテクストにある Poppy だったのよ。」

以前の作品と “I Disagree” の違いはそれだけではありません。初期の彼女のリリックは、間違いなく現代を覆う倦怠感を中心に展開されていました。SNS によって引き起こされる不安と、容赦のない情報の攻勢。彼女のペルソナ同様、そのリリックが音楽より先行していた一面は確かにあるはずです。”I Have Ideas” と題された YouTube 動画でかつて彼女はこうマントラを繰り返していました。
「携帯を充電するたび、新たな命を吹き込むわ。そして携帯が私を定義するようになるの。携帯が死ぬ時、私も死ぬわ。」
ダブステップで魂を吸い上げる “Bloodmoney” で宗教的な抑圧を、Madonna と Manson の落とし胤 “Fill the Crown” で個人主義とエンパワーメントをフォーカスした Poppy の旅路は以前よりも確実に多様です。
“Sit / Stay” は90年代の PRODIGY? 緊張と緩和を突き詰めたオペラティックなプログメタルエピック “Don’t Go Outside” での幕引きも完璧。JELLYFISH までふわふわと漂うアルバムにおいて、もちろん、トリップホップと Nu-metal の狭間で「私はあなたに同意しません」と大衆が共有しない予想外の世界を望むタイトルトラック “I Disagree” は進化の象徴。
「歌詞のテーマは間違いなく制作中に感じたことよ。他人や自分に根ざしたフラストレーションによってね。”Nothing I Need” は一番大切な曲よ。初めて、欲しいものは全てここにあるけどそれでも前へ進んで大丈夫だって感じられたの。今が十分幸せでも何かを追求して構わないんだって楽曲なのよ。」

同時に、英国のポップ感覚、Billie Eilish のビート、メタルリフの猛攻に NINE INCH NAILS のダークリアルムを内包するアルバムは近年のチルなポップミュージック、さらに自らのヒットシングル “Lowlife” とも何光年もの隔たりがあるようにも思えます。
「私が愛してきた全てを注ぐことができたわ。完全に自由になって、アルバムが完成するまで他人に意見を述べることを許さなかったから。例え意見を受けたって、実際に考慮したりはしなかったわ。自分にとって幸せで誇りに思うものを作ったばかりだけど、ツアーでアルバムの曲を聴いてみたいともう思っているの。全てが正しいと感じているから。」
クリエイティブパートナー、Titanic Sinclair との別れはまさに破壊からの自己再生。その回復力と新たな自由を享受する Poppy の生命力には目を見張ります。
「私を封じようとする、押さえ込もうとする人たちに対抗する力を再び取り戻したのよ。」

ロボットよりもカウボーイとカントリーミュージック、田舎の仕来たりが未だ根強いナッシュビルで生まれ育った Poppy がアウトサイダーとして見られたことは容易に想像出来るでしょう。ダンサーを目指しながら彼女は幼少期の大半をベッドルームで過ごしています。公立学校に馴染めず、ホームスクールで勉強を続けました。
「意図的に様々なことから距離を置いていたのよ。公立学校に良い思い出はないわね。ほとんど喋らなかったから、からかいの対象になっていたの。痩せっぽっちで静かなヤツだってね。」
故にある程度オンラインの世界で育ったことは Poppy も認めています。
「インターネットが先生だったの。それにファーストアルバム “Poppy.Computer” の中で、”私はあなたのインターネットガール” って歌っているしね。だけど自分の人生全てをオンラインに委ねている若い子たちと比較すれば、私は自分自身をどのように提示して、何をオンラインにするか賢明に選択していたわ。それは幸運だったと思うの。インターネットだって永遠ではないわ。そのことを真剣に受け止めている人が少なすぎると思うのよ。」

実際 Poppy は “I Disagree” でオンライン世界についてよりも、個人的な経験を多く語っています。SNS に費やす時間も過去に比べて大きく減少しているのです。
「前とは違うやり方でやっているわね。基本的に Instagram を使っているの。Twitter は全く使わないから Instagram がファンと交流する場所になっているのよ。だけどファンのコメントを読むのは最初にポストした時だけ。時間をおいて考えすぎた人のコメントを読むのは危険だわ。タフな世界だけど、私はそれを認識して敬意を払うようにしているわ。もちろん、スーパーコンピューターにもね。」
SNS 自体の在り方も変化していると Poppy は考えています。
「SNS も最初は良かったのよ。でも最近では、悪意と怒りとモブと誤情報に溢れている。振り子のようなもので、きっと良い時もあれば悪い時もあるのね。できればその中間で落ち着いて欲しいのだけれど。そうでなければ、新たなインターネットを作るしかないわね。きっと出来るわ。」

かつて AI アンドロイドを気取った彼女の主張にはテクノロジーへの恐れも含まれています。FEVER 333 をフィーチャーした “Scary Mask” は AI についての楽曲。
「もうちょっとみんなに考えて欲しいのよ。だって最終的に AI は人類を凌駕し、きっと滅ぼしてしまうわ。だから毎日 AI に餌をやる前に少し考えてみて欲しいの。そうすれば、そのプロセスを遅らせることは出来るはずよ。」
新たなステージへと到達した Poppy ver. X はジェンダーの観点からも変化を見せ始めています。”Am I a Girl?” で少女でいることを楽しんでいた Poppy の姿はもうそこにはありません。
「作品をシネマティックで美しく、怒っていてエモーショナルにしたかったの。ジェンダーに関係ない方法で力を受け取って欲しいのよ。」
きっと、2020年の “名声” には2つの層が存在しています。1つは、伝統的な俳優、テレビスター、ポップスター。もう1つ、世界が無視出来なくなっている新たな名声こそ、フォロワー数百万を誇る SNS スターや YouTube セレブでしょう。もちろん、これまでと異なる出自の後者の実力には懐柔的な見方も存在するのは確かです。しかし、そのポスターガールと言える Poppy の成長、多様性、アーティストとしてのクリエイティブなビジョンを見れば、20年代さらにインターネットからトップスターが飛び出すことは決定的と言えるでしょう。

参考文献:REVOLVER MAG:POPPY: INSIDE THE SHAPE-SHIFTING, METAL-EMBRACING WORLD OF “YOUR INTERNET GIRL”

NME:The Big Read – Poppy: Human After All

DIY: JUST A GIRL: POPPY

KERRANG!:POPPY: “I’VE NEVER SAID MY MUSIC IS METAL… WE’RE TURNING A NEW PAGE”

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【GATECREEPER : DESERTED】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CHASE MASON OF GATECREEPER !!

PHOTO BY PABLO VIGUERAS

“Gatecreeper Started When I Met Our Drummer, Matt, And Discussed Our Shared Love For Old School Death Metal. We Both Talked About Dismember And Decided To Start a Band. Our Formula Has Always Been The Same Since The Beginning.”

DISC REVIEW “DESERTED”

「GATECREEPER は僕がドラマーの Matt と出会って始まったんだ。僕たちのオールドスクールデスメタルに対する愛をシェアしようぜってね。あの時僕たちは DISMEMBER について熱く語って、それでバンドを始めようって決めたんだよ。」
アリゾナに生を受けたメタリックハードコアの牽引者 GATECREEPER は、その溢れるデスメタル愛でエクストリームミュージックを遂に巨大なスタジアムへと導きます。
「僕たちは “スタジアムデスメタル” という言葉を世界へもたらし、それが取り上げられるようになった。要は、しっかりとエクストリームでありながらキャッチーなデスメタルを作ることが出来るということなんだ。狂気のサウンドでありながら、記憶に残るデスメタルは存在し得るんだ。DEICIDE の “Once Upon A Cross” のようにね。」
今回インタビューに答えてくれた ボーカリスト Chase Mason は Revolver のインタビューでそう怪気炎を上げ、スタジアムでプレイする自らの姿を夢想します。
実際、Chase の前人未到なその野心は決して夢物語ではないのかも知れませんね。
「フロリダデスメタルとスウェディッシュデスメタル。間違いなくその2つは僕たちのサウンドにおいて欠かせない重要な要素だよね。ただ、僕たちはそういったバンドたちの大好きな要素を抽出して、ユニークな僕等のサウンドとなるよう形成していくだけなんだ。」
HORRENDOUS, TOMB MOLD, BLOOD INCANTATION 等と共に OSDM 復興の波を牽引する GATECREEPER。中でも彼らは米国の凶凶と欧州の叙情を繋ぐ大胆な架け橋となり、初期の DEATH や OBITUARY と ENTOMBED, DISMEMBER が完璧なバランスで交わる “スイートスポット” の発見を誰よりも得意としています。
もちろんそこには、BOLT THROWER を頂点とする UK デスメタルの鼓動、さらには Kurt Ballou のサウンドメイクが象徴するように VEIN や CODE ORANGE のメタリックなハードコアとも共鳴する先鋭性も存分に垣間見ることが出来るでしょう。
ただし、”ポストヒューマン” な人類滅亡の世界を描いたアリゾナの “Deserted” で最も目を惹くエイリアンは、ポップである種単純化とまで言えそうなストラクチャーに宿された究極のキャッチーさでしょう。サバスの時代に巻き戻ったかのような凶悪でしかしシンプルなリフワークは、複雑化を極めた現代メタルに対するアンチテーゼの如く鮮烈に脳裏へと刻まれます。
その真の意味での “オールドスクール” の利点は、GATECREEPER ではベースを担当する Nate Garrett がマイクに持ち替え、Chase がベースをプレイ、さらに Eric Wagner もギターを兼任する SPIRIT ADRIFT にもシェアされています。GATECREEPER と SPIRIT ADRIFT、メンバー3名が重複し古を敬う2つのバンドの作品が、海外主要紙2019年のベストに多く選されている事実は複雑化の終焉と単純化への兆しを意味しているのかも知れませんね。
ただし、残念ながら GATECREEPER & SPIRIT ADRIFT の古式ゆかしくしかし斬新な共闘は終わりを迎えるようです。
「僕はもう SPIRIT ADRIFT ではプレイしないし、Nate も GATECREEPER でプレイすることはもうないよ。そうすることで、(同じマネージメントの) 2つのバンドが円滑に、互いに争わずやっていくことができるんだよ。」
Post Malone がアリゾナのショウで GATECREEPER のTシャツを着用したシーンは、今のところ彼らが最もメインストリームへと接近した瞬間だったのかも知れません。ただし、あのメタルを愛するポップアイコンに見初められた音の葉は、いつかスタジアムへと到達するに違いありません。
今回弊誌では、Chase Mason にインタビューを行うことが出来ました。「僕は COFFINS が大好きだし、他にも FRAMTID, DISCLOSE, GAUZE, BASTARD といった日本のハードコアやパンクバンドも気に入っているんだ。」日本盤は DAYMARE RECORDINGS から。どうぞ!!

GATECREEPER “DESERTED” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【OBSEQUIAE : THE PALMS OF SORROWED KINGS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TANNER ANDERSON OF OBSEQUIAE !!

“For Example, Satyricon’s “Dark Medieval Times” Does Not Have Medieval Riffs. And That’s The Point. Metal Often Alludes To These Themes Without Actually Using Them. I Want To Use Them. And That’s The Difference.”

DISC REVIEW “THE PALMS OF SORROWED KINGS”

「SATYRICON の “Dark Medieval Time” には中世のリフなんて含まれていないよ。そこが重要なんだ。メタルはしばしば、中世の音楽を使用することなく、そのテーマを仄めかして来た訳さ。僕は実際に中世の音楽を使用したい。そこが違いさ。」
黒死病の蔓延、階級社会、厳格なキリスト教倫理、貧困、多産多死。”Near-Death Times”、死の香りや足音があまりに身近であった暗美な中世ヨーロッパを現代へと映し出す “古城メタル” OBSEQUIAE は、メタルお得意のメディーバルな世界観、ドラゴンのファンタジーをよりリアルに先へと進めます。
「多くのメタルバンドが中世のイメージやテーマを扱っている。だけど、ほとんどの人はリアルな中世の音楽がどんなサウンドなのか知らないよね。例えばそれはケルティック音楽でも、多くの映画で流れるファンファーレでもないんだよ。音量がとても小さくなる危険を孕んでいるけど、もっと複雑でやり甲斐のある音楽なんだ。」
“歌う宗教” とも例えられるキリスト教を基盤とし、1000年の悠久をへて単旋律から複旋律へと進化を遂げた中世西欧音楽は、現代の音楽家にとって未だ探索の余地に満ちた白黒写真だと OBSEQUIAE のマスター Tanner Anderson は語ります。故にアーティストは自らのイマジネーションやインスピレーションを色彩に描きあげることが可能だとも。
「あの時代の音楽にはまだまだ発見すべき余地が沢山残されているからね。今日僕たちが音楽を記すように記されていた訳じゃないし、拍子だってなかったんだからとても “自由” だよね。」
リュートやハープ、ダルシマーを画筆として中世の音景に命を吹き込む “The Palms of Sorrowed Kings” で OBSEQUIAE はリスナーの “不思議” をより鮮明に掻き立てました。
「実のところ、僕は OBSEQUIAE をブラックメタルだなんて全く考えたこともないんだよ。僕の影響元は、SOLSTICE (UK), WARLORD (US), FALL OF THE LEAFE, EUCHARIST, OPHTHALAMIA みたいなバンドだからね。」
メロディックブラックメタル、メディーバルブラックメタルと称される OBSEQUIAE の音楽ですが、城主の思惑は異なります。
「トラディショナルなメタルに自らのインスピレーションを加えるようなアーティストは尊敬するよ。」
DARK TRANQUILLITY や IN FLAMES といった “最初期の” メロディックデスメタルに薫陶を受けた Tanner は、トレモロやアトモスフィアといったブラックメタルのイメージを抱きながらも、むしろ兄弟と呼ぶ CRYPT SERMON, VISIGOTH と共にトラディショナルメタルのリノベーション、”メタルレコンキスタ” の中心にいます。
「僕はギターのレイヤーとテクスチャーに重量感をもたらしたいんだ。そして、多くの場合、メロディーのフレージングは “声” として聴こえてくるんだよ。」
“In The Garden of Hyasinths” を聴けば、輝きに満ちたギターのタペストリーが十字軍の領土回復にキリストの奇跡をもたらしていることを感じるはずです。その福音は “伴奏、即興、編曲、演奏のテクニック、モードの変曲、リズムなどに関しても多くの考え方が存在する” 中世音楽の独自性を基に構築され、そうして咲き乱れる在りし日のヒヤシンスの庭を蘇らせるのです。
前作 “Aria of Vernal Tombs” に収録されていた4曲のメディーバルインタルードの中でも、”Ay Que Por Muy Gran Fermousa” のミステリアスな美麗は群を抜いていましたが、5曲と増えた今作のインタルードでもメディーバルハーピスト Vicente La Camera Mariño の描き出す耽美絵巻は浮世の定めを拭い去り、リスナーを中世の風車たなびく丘陵へと連れ去るのです。
クリーンボーカルの詠唱がクライマックスを運ぶタイトルトラックや “Morrigan”で、新たに加わったドラムス Matthew Della Cagna の Neil Part を想わせるプログレッシブなスティック捌きが楽曲にさらなるダイナミズムをもたらしていることも付け加えておきましょう。
今回弊誌では、Tanner Anderson にインタビューを行うことが出来ました。「情報も音楽も全てが利用可能なんだから、当時の “アンダーグラウンド” な感覚は感じることが出来ないよ。僕の成長期には、こういった音楽を作っている人について知ることは全く出来なかったからね。時には名前や写真さえないほどに。」 どうぞ!!

OBSEQUIAE “THE PALMS OF SORROWED KINGS” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【BLOOD INCANTATION : HIDDEN HISTORY OF THE HUMAN RACE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ISAAC FAULK OF BLOOD INCANTATION !!

“I Believe That Questioning Mainstream Archaeology, Even If The End Goal Isn’t Proving The Existence Of Aliens, Is a Great First Step To Questioning Everything We Have Been Taught About Our Own Society.”

DISC REVIEW “HIDDEN HISTORY OF THE HUMAN RACE”

「僕たちの音楽、アートワーク、歌詞の主な目標は、人々に先入観を疑わせることなんだ。音楽的にだけじゃなく、概念的にも限界を押し広げることが重要なんだよ。そのため、エイリアンや次元を股にかける存在だけじゃなく、何かにインスパイアされて自分自身の内なる世界を拡大することもまた重要なテーマなんだ。」
宇宙、異次元、エイリアンをビッグテーマに “アストラルデスメタル” の称号を得る BLOOD INCANTATION は、しかし自らの存在や哲学を “サイエンスフィクション” の世界に留め置くことはありません。SF を隠喩や象徴として扱う “デス・スター” 真の目的は、現実世界のリスナーに森羅万象あらゆる “常識” に対して疑問を抱かせることでした。
「主流の考古学に疑問を呈することは、例え最終的にエイリアンの存在を証明出来なかったとしても、僕たち自身の社会について教えられてきた全てに疑問を投げかける素晴らしい第一歩だと思うんだよ。」
BLOOD INCANTATION の叡智を司るドラマー Isaac にとって、ギョペグリ・テペやギザのピラミッド、ナスカの地上絵が宇宙人の創造物であろうがなかろうが、究極的にはどちらでも構わないのかも知れませんね。なぜなら、彼の最終目標は宇宙よりも未知である人の心、暗く危険な内部空間の探索にあるからです。
Isaac は現在の人間社会、政治システムを完全なる実験の失敗だと捉えています。故に、この文明社会こそ人類の最高到達点で良好な進歩を遂げているという固有概念に疑問符をもたらすため、寓話的に SF を使用しているにすぎないのです。
「僕たちの新しいレコードは、人類という種が記憶を失っていて、その過去はまだ明らかにされていないという概念に焦点を当てているんだ。」
“Hidden History of the Human Race” で描くのは忘却の彼方に追いやられた人類の隠された歴史。大胆不敵な宇宙旅行者が作成する、失われた古代の歩みを取り戻すアストラルレコードの使命は、そうしてデスメタルとプログレッシブのロマンを取り戻す旅ともリンクしていきます。
「僕はね、”プログレッシブデスメタル” ってタグはあまり気に入っていないんだよ。だってそこに分類されるバンドの大半が、僕がプログレッシブロックがもともと志していたと考える音楽をプレイしていないんだからね。」
プログレッシブの名を冠しながら、モダンなテクニックの博覧会を志向する昨今のバンドとは一線を画す BLOOD INCANTATION のロマンチシズム。それは YES, PINK FLOYD, RUSH, KING CRIMSON といった神代の巨人への憧憬を根源としています。
“Echoes”, “Close to the Edge”, “The Gates of Delirium” といったプログエピックを指標した18分の異次元探索 “Awakening from the Dream of Existence to the Multidimensional Nature of our Reality (Mirror of the Soul)” を聴けば、そこに古の技術やイデアを元にした音のペイガニズムが存在することに気がつくはずです。
同時に、テクニカルデスメタル、ブルータルデスメタル、デスコア等の台頭により次元の狭間に埋もれた “OSDM” オールドスクールデスメタルの “レコンキスタ” を司る十字軍の役割も忘れるわけにはいきません。
HORRENDOUS, TOMB MOLD, GATECREEPER を従え津波となった OSDM リバイバルの中でも、BLOOD INCANTATION の映し出す混沌と荘厳のコントラスト、プログの知性やドゥームの神秘まで内包する多様性は傑出しています。その理由は、GORGUTS を筆頭に、DEATH, CYNIC, DEMILICH といったデスメタルに異世界を持ち込んだ異形の “血の呪文” を受け継いでいるからに相違ありません。
逆説的に言えば、ブラックメタルやドゥームメタルほど神秘や謎、アトモスフィアを宿していないデスメタルの領域でその世界の “DEAFHEAVEN” を演じる事は簡単ではないはずです。しかし、”Inner Paths (to Outer Space)” に内包された爆発的なエネルギー、リフノイズの海に鳴り響く美麗邪悪なアコースティックギター、複雑怪奇なフレットレスベースの胎動、アナログアンビエントな音の葉を浴びれば、彼らの野心が文字通りコズミックに拡大を続ける宇宙であることに気づくでしょう。
今回弊誌では、Isaac Faulk にインタビューを行うことが出来ました。「プログレッシブロックとは、様々なジャンルを過去のスタイルから生まれ出るテクニックと融合させ、異なる方向へと導くような音楽だよ。」 音楽にしても、時に “メインストリーム” に疑念を抱くことはきっと必要でしょう。どうぞ!!

BLOOD INCANTATION “HIDDEN HISTORY OF THE HUMAN RACE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【LITURGY : H.A.Q.Q.】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH HUNTER HUNT-HENDRIX OF LITURGY !!

“I Sincerely Think Philosophy Is a Very Important Tool For Having a Thoughtful Political Stance. People Have Such Strong Opinions That Have No Real Grounding, And I Think Even a Little Bit Of Critique Or Effort To Understand The Nature Of Reality And Of History Is Important In Deciding What It Would Mean For The World To Be a Better Place.”

DISC REVIEW “H.A.Q.Q.”

「”The Ark Work” は “欠陥のあるレコード” だったことに同意するよ。それが僕のフェイバリットレコードかもしれないとしてもね。まあ極端でラディカルなアルバムだったね。」
“定められた” 宗教的典礼、礼拝をバンド名に掲げる LITURGY は、皮肉にも自らが属するブラックメタル世界において完全なる異端です。
セオリーとフィロソフィーで超越するブラックメタルを解析したマニフェスト “Transcendental Black Metal” を聖書として創造した前作 “The Ark Work” は、その一線を越えた桁外れの実験性で賛否両論を一身に浴びた怪物でした。それを制約のない野心と褒め称える信者がいる一方で、アイデアの乱雑なコラージュと批判的な目を向けるリスナーも少なくないように思えます。
確かな事象は、哲音者 Hunter Hunt-Hendrix がバンドの、もしかするとブラックメタルそのもののアプローチまで一新してしまったことでしょう。
かつて、狂熱と数学の対比をノイズで装飾したブラックメタルを信条とした LITURGY の音楽は、”The Ark Work” (DECAYED SUN RECORDS の詳細な分析記事) で原理主義者には耐え難いオーケストラアレンジメントとトリップホップの “超越的”、もしくは “合成的” な無機質とも言えるブラックメタルの極北、インディーの彼方へと向かいました。
何しろ、人生を変えたアルバムに 2Pac や APHEX TWIN を挙げる鬼才。歪みを抑えラップに接近したボーカルサウンドもブラックメタルの “パブリックエネミー” と目されるに充分な理由だったはずです。
「”Haelegen” とは思索的な未来都市の名前であり、資本主義を超えたマルクスの新たな生産モードのアイデア、ニーチェのユーバーメンシュ (超人) のアイデア、そしてアブラハム系宗教が持つ天国の王国のビジョンの融合のようなものなんだ。」
音楽的にも哲学的にも自身から切り離すことは出来ないと語りながらも、どこか Hunter Hunt-Hendrix はブラックメタルを自らのイデアルを世界へ発信する乗り物として利用している節があります。
「LITURGY の言語に新たな何かを追加した訳では全くないんだけど、これまで作成した LITURGY サウンドの中でも最高かつ最もハイクオリティーのレンダリング、表現だとは思うんだ。ただ良い作品にしたかっただけなんだよ。優れた作曲、優れたパフォーマンス、優れたレコーディング、特に何か目新しいことを望まないでね。」
故に “The Ark Work” のオーケストラルでグリッチーな実験性を多少なり受け継ぎながら、”Aesthethica” のマスマティカルな複雑性、日本の雅楽まで取り入れる多様性、ハードコアの魂、メタルに回帰した熱情とアグレッション、その全てを抱きしめた壮大なマスターワーク “H.A.Q.Q.” についてもどこか飄々としてそう分析してくれました。
“目新しいことを望まない”。実際、ノイズの実験とポストブラックの鋭き対比を雅楽とオーケストラで包み込む “HAJJ”、KRALLICE の領域にも接近するメランコリックかつ重量感溢れるハープメタル “VIRGINITY”、何より Steve Reich のミニマルワールドさえイメージさせる8分のベヒーモス “GOD OF LOVE” を聴けば LITURGY がファンの元へと帰って来た事は明らかでしょう。
ただしそれは Hunter の戦略かもしれません。あまつさえ、 彼は LITURGY のアルバム以上に熱意をつぎ込み、これからリリースする自身のソロメタルオペラ作品 “Origin of the Alimonies” への単なる入り口として “H.A.Q.Q.” を考えているようにさえ思えます。
「哲学は思慮深い政治的スタンスを持つための非常に重要なツールだと、僕は心から思うんだ。だって今の世の中、特定の強い意見を持つ人にしたって、大抵そこに本当の根拠はないんだからね。」
もしかすると、Hunter Hunt-Hendrix の原動力は全てこの言葉に集約するのかもしれませんね。つまり彼は音楽、芸術、哲学の三原則を新たな三位一体とした、資本主義を超越する新世界の到来を啓蒙も厭わないほどに心から願っているのです。
「音楽コミュニティは一般的に反知的だから、アルバムの表紙に哲学システムを載せることで少なくともリスナーにそれを見てもらい、それが何を意味するのか気にして欲しかったんだ。」
世界を少しでもより良い場所へと導きたい。その想いは、アートワークのダイアグラムから始まり徹頭徹尾、”超越的な神” であり現実世界の活動原理である “H.A.Q.Q.” と、それを理想として生まれ来る未来都市 “Haelegen” の実現へと注がれています。
「ほとんどの人は、意志、想像力、理解の間に根本的な違いがあることには同意するけれど、誰もその理由を知らないんだ。実はこれら3つは音楽、芸術、哲学にそのままマッピングすることができて、この分野を発展させれば歴史的な運命の道筋を作ることが出来るんじゃないかな。」
“H.A.Q.Q.”、いや LITURGY でさえ、Hunter Hunt-Hendrix が標榜するより良い世界 “Haelegen” への道筋でしかありません。今回弊誌では、メタル世界随一の哲学者にインタビューを行うことが出来ました。
「僕は Twitter や YouTube を介して人々との繋がりをますます楽しんでいて、影響力の低下している大手メディアにサービスを提供しようとするのではなく、直接関与してくれる人々や関心を持っているメデイアのために、自主的に音楽を製作することにこそ完全に満足しているよ。」長年バンドを支えたモンスタードラマー Greg Fox の不在を差し引いても圧倒的なアルバムだと感じます。どうぞ!!

LITURGY “H.A.Q.Q.” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【XOTH : INTERDIMENSIONAL INVOCATIONS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH XOTH !!

“We All Were Highly Influenced By Video Game Soundtracks Growing Up. Those Are Some Of The Best Compositions Ever Created In My Opinion.”

DISC REVIEW “INTERDIMENSIONAL INVOCATIONS”

「全ての偉大なメタルのサブジャンルは明らかだけど、それ以外にもプログ、映画やゲームのサウンドトラック、古き良きロックンロールにパンク、ジャズフュージョン、カントリーのチキンピッキングでさえね!ただ愛する、様々な音楽をミックスしているんだよ。」
HORRENDOUS, TOMB MOLD, GATECREEPER を中心とする OSDM、オールドスクールデスメタル復興の波。REVOCATION, RIVERS OF NIHIL, VEKTOR が牽引するモダンな Tech-death の潮流。
デスメタルの世界は現在、2つの新興勢力が切磋琢磨を重ねつつネクストステージへとジャンルを誘っています。彼らに共通する理念は、偉大な過去の遺産へユニークな独自のフレイバーを注ぎ込み、創造性のレコンキスタを果たしている点でしょう。
そういった観点からシアトルの新鋭 XOTH を眺めれば、彼らが両軍の長所を御旗に掲げる勇敢な十字軍にも見えてきます。
「DEATH は間違いなく、僕たちに多大な影響をもたらしているね。彼らは耳と精神を等しく惹きつけるバンドの素晴らしい例だと思うんだ。」
オープナー “Casting the Sigil” が示すように、XOTH の最新作 “Interdimensional Invocations” には、知性とテクニック、そしてイヤーキャンディーに残虐性を併せ持った DEATH のレガシーが確かに眠っています。
ウルトラメロディックで、ジャズの波動を享受するエクストリームメタル。同時に VOIVOD や CYNIC にも滞留する “耳と精神を惹きつける” 飽くなき SF への挑戦、音楽のフラスコにしても間違いなく XOTH の血肉であるはずです。
「僕の意見だけど、ゲーム音楽の中には、これまでの音楽でも最高のコンポジションを誇るものがあるよ。全員気に入っているのは、オールドスクールなゲームのサントラさ。例えば、魂斗羅、悪魔城ドラキュラ、ロックマン、忍者龍剣伝、ソニック、マザー、スーパードンキーコング、ゼルダの伝説なんかだね。」
とは言え、XOTH の中にも他の新興勢力と同様に際立ったユニークスキルが備わっています。ゲーム/映画音楽のサウンドトラックからのインスピレーションはその筆頭格でしょう。
“Mountain Machines” のファストでファンタジックな未来志向のギターハーモニーは、”F-Zero metal” と称される XOTH の真骨頂。”Plague Revival 20XX” のディストピアな世界観ももちろん、忍者龍剣伝や魂斗羅のイメージとも繋がります。
同時に、”シュレッド” をバンドの心臓に据えた理由にも思えるミュージシャンシップの最高峰 “Back to the Jungle”、VOIVOD のカオスとメロデスのパトスを抱きしめる宇宙誘拐譚 “Unsenn Abductor”、THIN LIZZY のデスメタル “Haruspex”、トレモロやブラストを引き連れた “The Ghost Hand of God” のブラッケンドなアグレッション、そして7分のプログエピック “Melted Face of the Soul” まで、メタル/ノンメタル入り乱れた配合の妙に構築されるコズミックかつミステリアス、マルチディメンショナルで時をかける SF ワールドは XOTH をデスメタルのニューフロンティアへ導くに充分のインパクトを備えているのです。
SUFFOCATION, OBITUARY から THE BLACK DAHLIA MURDER まで手がける Joe Cincotta のスタジオも、過去と未来を繋ぐデスメタルのタイムリープに相応しき地の利となりました。
今回弊誌では、XOTH のメンバー全員にインタビューを行うことが出来ました。「特定のスタイルにきちんと収まらないバンドは最初、リスナーを見つけるのが難しいんだ。だけどね、その時期を超えれば、ユニークな方法論を創造し多くのリスナーを獲得するチャンスが巡ってくるんだよ。」 この曲者感。次の MASTODON を狙える逸材に違いありません。どうぞ!!

XOTH “INTERDIMENSIONAL INVOCATIONS” : 9.9/10

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