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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SKELETONWITCH : DEVOURING RADIANT LIGHT】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SCOTT HEDRICK OF SKELETONWITCH !!

“Any Time My Writing Wanders Near The Territory Of “Ambient” Or “Cinematic”, Ryuichi Sakomoto Is Going To Be An Influence.”

DISC REVIEW “DEVOURING RADIANT LIGHT”

ブラックメタル、メロディックデスメタルを獰猛な原衝動、スラッシュメタルに奉呈し、”ブラッケンド-スラッシュ” の峻路を切り拓くオハイオの妖魔 SKELETONWITCH。
バンドの発するクリエイティブな変幻の瘴気は、メタル伏魔殿の魑魅魍魎を遥かな幽境へと誘います。
2004年からエピカルなメロディーと凶猛な響骨を混交し、エクストリームメタルの超克を多様に牽引し続ける変異体は、2014年にキャリアの重大な分岐点を迎えました。
アルコールの乱用を要因とする素行の悪化に堪え兼ねたバンドが、ボーカリスト Chance Garnette を解雇したのです。ギタリスト Nate の兄弟でもある創立メンバーが引き起こした問題は、徐々に存在感を増しつつあった SKELETONWITCH に暗い影を落とすかのようにも思われました。
しかし、元 VEIL OF MAYA、現 WOLVHAMMER のフロントマン Adam Clemans を迎え入れた彼らは、アトモスフェリックなブラックメタル、アンビエント、プログレッシブなどその多様性を一際研ぎ澄まし、地殻変動に端を発するネクストレベルのクリエイティビティーへと到達することになったのです。
バンドのロゴやアートワークの方向性まで変更しリリースした “Devouring Radiant Light” は、実際 “再発明” のレコードです。
アルバムオープナー “Fen of Shadows” は過去へのレクイエムにして未来へのファンファーレ。バンドのトレードマーク、クラッシックメタルのフックやメロデスのメランコリーは確かに耳孔の奥へと沈み行き、一方で幾重にもレイヤーされたポストブラックのギターオーケストラ、中盤の荘厳なるアトモスフィア、そしてプログレッシブなグランドデザインは破天荒な背教者をレコードへと招き入れるのです。
事実、「アルバムには大きく分けて二つのスタイルが存在していると思う。」と Scott は語ります。そして Nate は直線的でスラッシー、Scott は重厚でプログレッシブ。コンポジションの棲み分けを念頭に置けば、”Devouring Radiant Light” は Scott の遺伝子をより多く受け継いだ麒麟児の光明だと言えるでしょう。
切迫するトレモロの嗎とブラストの喧騒でダーク&メロディックなブラックメタルの深淵を探求する “Temple of the Sun”、PALLBEARER や MASTODON のキャッチーなドゥーム/スラッジにも共鳴するエピック “The Vault” と拡大を続ける SKELETONWITCH の魔境。
Kurt Ballou, Fredrik Nordstorm のドリームチーム、さらに JOB FOR A COWBOY, BEHEMOTH との仕事で知られるゲストドラマー Jon Rice の推進力もサウンドの深化に華を添えます。
中でも “最もバンドの進化を示している” と語るタイトルトラック “Devouring Radiant Light” は文字通り熾烈な光彩。NEUROSIS, ULVER, OPETH, さらにはカスカディアンブラックの陰影と実験性までも胸いっぱいに吸い込んだブラッケンド-スラッシュの革新的な波動は、光と闇のダイナミズムを携えながらエモーショナルなダンスを踊るのです。
“Sacred Soil” は作品の終幕、結論に相応しきインテンスの断末魔。エレガントなハーモニーとブルータルなリズムのカコフォニーは魔女の帰還と新たな旅路を祝う地下室の祝祭なのかもしれませんね。
今回弊誌では、ギターチームの片翼 Scott Hedrick にインタビューを行うことが出来ました。「坂本龍一氏はまさに僕の作曲面に多大な影響を与えているんだよ。」どうぞ!!

SKELETONWITCH “DEVOURING RADIANT LIGHT” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【NIGHT VERSES : FROM THE GALLERY OF SLEEP】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH REILLY HERRERA OF NIGHT VERSES !!

“Diversity Is Definitely Key For Us, And We Don’t Ever Want To Overdo Or Repeat Anything More Than Necessary. “

DISC REVIEW “FROM THE GALLERY OF SLEEP”

プログメタルのサルバドール・ダリが草創せし夢幻画廊。ファンタジーとリアリティー、テクニックとアトモスフィア、モダンとオーガニックのダイナミズムを、”夢” という自由な空想世界で交差させる無言の詩聖はインストゥルメンタルミュージックのドラスティックな再構築を試みています。
例えば Tilian Pearson を失った TIDES OF MAN が、故に音に語らせる創意工夫を磨き上げポストロックの妙手となったように、詩人の喪失は時に音楽それ自体の革新を誘います。そして急遽リードボーカル Douglas Robinson がバンドを離れることとなった NIGHT VERSES も同様に、彼の遺した “スペース” を埋めるチャレンジの中で一際精華な創造の翼を得ることとなったのです。
RED HOT CHILI PEPPERS, TOOL, RAGE AGAINST THE MACHINE、そして近年では INTRONAUT とある種独創性を追求したアートの都 L.A. で、NIGHT VERSES の資質が育まれたのは必然なのかも知れませんね。
実際、ポストロックのソニカルな音景とハイパーテクニカルな Djent の相反をオーガニックに融解し、ダウンテンポのエレクトロニカを織り込む前人未到のドリームスケープは、超現実的なダリのシュルレアリスムにも通じる倒錯と魅惑のアートです。
フルブラストで幕を開ける夢への廻廊 “Copper Wasp” こそ “From the Gallery of Sleep” への強烈なインビテーション。多彩なリムショットやハイハットの魔術で複雑怪奇なポリリズムを支配する Aric のドラム劇場は、Nick の雄弁なギターワークと Reilly のアグレッシブなベースサウンドの独壇場。
ANIMALS AS LEADERS を想起させるファストでメカニカルな衝動から、RUSSIAN CIRCLES の重厚荘厳なグルーヴ、そして TYCHO の瑞々しいアンビエントまで自在に操る弦楽隊のテクニック、創造性はあまりに気高く孤高。
さらにサンプリングやエレクトロサウンドを加えて完成に導いたエクレクティックモンスターは、”夢” という自由な空間に花開いた崇高のアート、対比とダイナミズムのエキサイティングな奇跡に違いありませんね。
フレーズ、モチーフの巧みなリピートで、奇抜なテーマを鮮やかに印象付ける独特の手法は “Trading Shadows”, “Vice Wave” でより際立ちます。実際、「異なる音楽的な要素、アートをミックスして僕たちが伝えたい感情を具現化することこそ最も重要なことなんだ。歌詞というガイドがなくなったからね。」とインタビューで語るように、言葉を失った詩人は試行錯誤を経て、その感情を以前よりもビビッドに雄弁にリスナーのスピリットへと届けているのです。
バンドはそこからさらに多様性の扉を開き探求していきます。
パーカッシブでトライバルな “Vantablonde”、ポストロックの壮麗なサウンドスケープを掘り下げた “Lira”、hip-hop のグルーブに照らされた鮮烈のシュレッド “No Moon”、静謐な美しきアコースティックのレリーフ “Harmonic Sleep Engine”。
そうしてその全ての多様性、創造性はギターペダルの可能性を極限まで追求したプログレッシブで trip-hop なエピック “Phoenix IV: Levitation” へと集束していくのです。
アルバムは、幽玄なる白昼夢 “Infinite Beach” で TYCHO や BONOBO の理想とも深くシンクロしながら、メランコリックにノスタルジックにその幕を閉じました。
今回弊誌では、ベースプレイヤー Reilly Herrera にインタビューを行うことが出来ました。ちなみにドラマー Aric は絶賛売り出し中 THE FEVER 333 のメンバーでもあります。
Instru-Metal の最新形こそ彼ら。「”多様性” は間違いなく僕たちにとって鍵だと言えるね。これまでも同じことをやり過ぎたり、必要以上に繰り返したりすることを望んだりはしなかったからね。」どうぞ!!

NIGHT VERSES “FROM THE GALLERY OF SLEEP” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【MICHAEL ROMEO (SYMPHONY X) : WAR OF THE WORLDS / PT.1】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MICHAEL ROMEO OF SYMPHONY X !!

“I’ll Take a Great Song Over Anything Else. The Technique And All That Stuff Is Fine, But Using It In a Tasteful And Musical Way Is What Is Important. “

DISC REVIEW “WAR OF THE WORLDS / PT.1”

Michael Romeo は自己超克を命題に刻む、ストイックなギターウィザードです。一定のスタイルを確立した後、そのクオリティーを安住の地とするプレイヤーが多い中、SYMPHONY X のマスターマインドはイノベーションを続けます。
90年代初頭、Yngwie Malmsteen と John Petrucci のハイブリッドとしてシーンに登壇した Michael は、プログメタル第ニの波にシンクロした SYMPHONY X 共々着実にその地位を築いて行きました。
PANTERA の獰猛かつ理知的なリフエージを自らのファンタジーへと取り込んだ “The Divine Wings of Tragedy” は序章にしてエレガントなマイルストーン。”ユリシーズ” をテーマにシンフォニックな24分の大曲をリリカルに演じる “The Odyssey”、そして TOOL や DISTURBED のコンテンポラリーで数学的なリフロマンスが冴え渡る “Paradise Lost”。
「僕にとっては、異なることに挑戦したり、新しく興味深い何かを創造したりといったことの方が大きな意味があるんだよ。」と語る通り、Michael は SYMPHONY X を通してその豊潤なビジョンと、アップデートを重ねた先鋭なる時代性を表現して来たのです。
94年に、今は亡きゼロ・コーポレーションからリリースしたクラシカルな “The Dark Chapter” をノーカウントとしてソロデビュー作の肩書きを得た “War of the Worlds/Pt.1” は、まさにそのビビッドな開拓的スピリットを体現した作品だと言えるでしょう。
インタビューで、「僕はこのアルバムでメタルに映画音楽の要素をミックスしたかったんだ。」 と語ったように、実際 “War of the Worlds/Pt.1” こそが、チャレンジングかつ前人未到のオーケストラルなシネマティックメタルであることは明らかです。
もちろん、RHAPSODY のようにクラッシックや民族音楽を、オーケストラルにメタルファンタジーへと落とし込む手法はこれまでもありました。しかし、Bernard Hermann や John Williams, Hans Zimmer といった、コンテンポラリーなシネマミュージックの息吹を濃厚に抱きしめる Michael の手法と慧眼は、近年の多様でカラフルなモダンメタルレボリューションの中でも際立っていますね。
アルバムを通して奏でられる印象的なテーマ、モチーフを内包した、ダークで荘厳な “Introduction” はスターウォーズメタルのファンファーレ。アルバムのテーマは “Conflict” “紛争”。”彼ら” と “私たち”、立場、人種、種族、生い立ち、様々な違いにより争いを余儀なくされる無慈悲なドラマはそうしてオーケストラルにその幕を上げます。
刹那、プログメタルのカタルシスを満載した “Fear of the Unknown” が鳴り響くと、リスナーは慣れ親しんだ “X のシンフォニー” に酔いしれるでしょう。ただし、Russell Allen に比べてよりデリケートでメロディックな Rick Castellano のボーカルアプローチは喝采と共に新鮮に映るはずです。
よりシリアスで陰鬱な領域を探求する “Black” はスターウォーズメタルの象徴かもしれませんね。壮大なオーケストレーションとギターの共闘で迫り来る闇を表現したイントロから、ファストにイマジネーティブに畳み掛けるメタルの牙はあまりにスリリング。
さらに、EDM/dubstep を大胆にそのメタルオーケストラへと導入した “Fucking Robots” は創造性と享楽の両面からアルバムのハイライトと言えるかも知れません。プログメタル、オーケストラ、EDM が三位一体となり、ビッグでキャッチーなコーラスを伴いながら畳み掛けるそのインパクトはまさに圧巻のトライデント。
シンフォニックなインタルードでシームレスに繋がり映画の体をしたアルバムは、オリエンタルトライバルな “Djinn”、胸を打つ壮大なパワーバラード “Believe”、TOOL のメソッドをメロディックメタルに封入した”Oblivion” と、いくつかのモチーフを音楽的に拡大し、オーケストラとメタルのシンクロ度をさらに高めながらエピックな世界を創り上げて行くのです。
そうしてアルバムは、”Constellations” で二者を完璧なまでに融合し、その幕を閉じました。
ARK, Yngwie との仕事で知られる達人 John Macaluso, 実は同じ学校に通っていたというBLSの John JD DeServio のオールスターキャストもファンにはたまりませんね。今回弊誌では、マエストロ Michael Romeo にインタビューを行うことが出来ました。「テクニックとか、ギターに纏わる様々な事柄も良いけど、それを絶妙に、音楽的な方法で使用することこそ重要なんだ。」どうぞ!!

MICHAEL ROMEO “WAR OF THE WORLDS / PT.1” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【FRONTIERER : UNLOVED】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH PEDRAM VALIANI OF FRONTIERER !!

“I Find Reviewers, Fans And Critics Are Often Guilty Of Wanting To Consume a Record On a Commute. That Attitude Of Convenience Doesn’t Resonate With Me And I Listen To My Records The Way I’d Like To Listen To a Record As a Fan.”

DISC REVIEW “UNLOVED”

2015年、”世界で最も醜悪なマス-プロブレム” の異名と共にデビューフル  “Orange Mathematics” で来臨したスコットランドとセントルイスの混成軍 FRONTIERER は、即座にシーンのセンセーションとなりました。
「愚かなほどにヘヴィーな音楽を創造する。」ただそれだけの目的と欲望のために生を受けた騒音の開拓者が切り開くフロンティアは、まごう事なきネクストレベルの Tech-metal です。
難解な数式を深々と組み込んだ変拍子の渦、ブレイクビーツとジャングルテクノの鋭き破片、ブラッケンドの無慈悲なアグレッション。Pedram 言うところの “コントロールされたランダム”、予測不能の方程式は THE DILLINGER ESCAPE PLAN 亡き後のマスコアワールドを支配する威厳と光輝に満ちています。
SECTIONED のギタリスト Pedram Valiani と A DARK ORBIT のスクリーマー Chad Kapper がサイドプロジェクトとして開始した FRONTIERER は、そうして活性化する活動を背景にフルバンドとなった今、最新作 “Unloved” で不穏で剣呑な進軍を再開するのです。
橙から赤へと危険指数を増したアートワークそのままに、オープナー “Tumoric” からバンドは一気呵成にカオスの洪水を叩きつけます。Chad の切迫したスクリームを狼煙に、狂気を宿したエレクトリックギターのワーミーなサイレンは、不規則な規則性を持つアグレッションの海で一触即発、物騒なダンスを踊ります。
実際、途切れる事なく襲いかかるアルバムの序盤は脅威でしかありません。パンチドランカーの如くその痛みに酔いしれたリスナーは、電子ノイズを塗した”Flourescent Nights”, “Designer Chemtrails” と聴き進めるうちに、Pedram のペダル、EarthQuaker Devices のハーモナイザーこそ怪物で、暴力と知性、エナジーとデジタルの狭間で快楽の拷問を享受しているようにも感じるかも知れませんね。
一方で、Pedram が 「僕は最後にピークを迎えるレコードを書くのではなく、実験の大半が中央に配されたレコードを書きたいと思っているんだ。」と語るように、 “Heartless 101” を分岐とした中盤の鮮烈な実験性は FRONTIERER のパレットに挿された色彩の拡がりを証明します。
実際、ノイズマスター CAR BOMB の Michael Daffener, Greg Kubacki とのコラボレートから誕生した “Heartless 101” はあまりに異彩を放つマスコアの新天地です。近年の CONVERGEをも想起させるメロウで憂鬱、ドゥーミーなムードから一変、Chad の咆哮 “Die Slowly” で世界はノイズの混沌、黙示録へとその色を変えます。
その名状しがたき不確かなデジタルハードコアの萌芽は、”Unloved & Oxidized” で光のアトモスフィアさえ放出しながらグロテスクに前時代の腐敗を促し、”Electric Gag” に投影されたバンド史上最もスロウなグルーヴとグリッチーなエレクトロニカの霞は、遂に使い古されたマスコアのクリシェへ望み通りの緩やかな死を与えるのです。事実、普遍的なブレイクダウンさえ、彼らの手にかかれば瑞々しき未踏のスロウバーンへとその姿を変えています。
マスコア、ノイズ、スラッジにグリッチなエレクトロニカを調合し、飲み干せばスリルが口一杯に広がる予測不能の危険なカクテル。「大きな変化への一歩が作品をほとんど消化不能にすることだと思うんだ。」と語るように、少なくとも “コンビニエンス” に作品を消費するリスナーがこのグラスで酩酊することはないでしょう。
今回弊誌では、ギタリストで首謀者 Pedram Valiani にインタビューを行うことが出来ました。
「僕は、レビュワー、ファン、評論家が時に通勤、通学でレコードを消費する罪を犯していることに気づいたんだ。そういった “コンビニエンス” なアティテュードは少なくとも僕には響かないよ。」どうぞ!!

FRONTIERER “UNLOVED” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【3.2 : THE RULES HAVE CHANGED】TRIBUTE TO KEITH EMERSON


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ROBERT BERRY OF 3.2 !!

“I Could Not Get Keith To Overcome The Fan Criticism. He Was Done With It For The Next 28 Years.”

A LABOR OF LOVE

Robert Berry は数奇なる運命と共に音楽カルチャーを漂流した有能なるバガボンドなのかもしれません。シンガーソングライターにして、マルチ奏者、そしてプロデューサー。
サンジョゼに居を構える Soundtek Studios のオーナーとして Robert は、数多のアーティストとイマジネーションを共有し、同時にミュージシャンとしてもベイエリアのレジェンドとしてプログ&AORの脈流に深くその存在を刻み続けています。
Geffen の A&R John Kalodner、JOURNEY のマネージャー Herbie Herbert との出会いが Robert の翼を80年代の空へさらに羽ばたかせるきっかけとなりました。Steve Howe & Steve Hackett のコンビで成功を収めた GTR への参加、Sammy Hagger, Joe Lynn Turner との仕事など、2人の口利きは Robert の世界を広げてマルチな才能の飛翔を可能にしたのです。
キャリアのハイライトは1988年だったのかも知れませんね。Geffen とのコネクションは、彼を Keith Emerson, Carl Palmer 2人のプログレジェンドと引き合わせ、新プロジェクト 3 の結成へと導きました。ELP リユニオンの頓挫、商業的成功への渇望。舞台の裏側には確かに様々な “大人の事情” が絡んでいたのかも知れません。しかし、リリースされたバンド唯一の作品 “To The Power of Three” には現在まで語り継がれるプログポップの萌芽が確かに息づいていたのです。
Keith の繊細かつ複雑な鍵盤捌き、Carl の芸術肌に、Robert のモダンでアクセシブルなソングライティングが噛み合った作品は、振り返ってみれば瑞々しくも確固とした音楽的なアドベンチャーだったと言えるでしょう。しかし、”Talkin’ Bout” のヒット、好調なツアーにもかかわらず、バンドは僅か2年でその活動に終止符を打ってしまうのです。
その背景には、Emerson, Lake and Palmer を崇拝するルナティックからの激しい批判がありました。インタビューで Robert が 「問題は、ELP のファンはただ長尺の楽曲と Greg Lake のボーカルが聴きたかっただけだという点だったね。」と語るように、メインストリームへと接近した 3 のサウンドは、残念ながらプログロックの狂信者にとって耐えられないものだったのかも知れません。そしてその負の重圧には Keith も耐えることが出来なかったのです。華麗なプログエピック “Desde la Vida” もすっかり焼け石に水でした。
以降も途絶えることなく連絡を取り続けた2人。故に、「僕は Keith をファンの批判から守り、克服させることが出来なかったんだ。彼はそこから28年間もその批判を我慢し続けることとなったんだからね。」という Robert の言葉には想像を絶する重みがあります。
2016年に Keith が自ら命を絶った後、Robert は2人で再度着手していた 3 のセカンドアルバムを諦めようとも考えたと明かしてくれました。当然でしょう。しかし、「Keith の遺産を届けたい。」その想い、一念が 3.2 の名の下に際立ったプログポップの快作 “The Rules Have Changed” を完成へと導いたのです。
Keith がコンポジションに20%関与したアルバムで、マルチプレイヤー Robert はまさに Carl, そして亡き Keith が彼の身体に憑依したかのような演奏を披露しています。ここには確かに、30年の月日を経た 3 の新たな物語が生き生きと映し出されているのです。
リスナーは、Robert の持ち味である類稀なるポップセンスが、プログレッシブな波動、クラッシック、ケルト、ジャズ、フォークと見事なまでに融合し、多様なアートロックとしての威厳までをも仄めかす絶佳のトリビュートに歓喜するはずです。
オールドスクールのプログロックとは一線を画すキャッチーでコンパクト、知的でいながらコマーシャルなアルバム。それはまさに 3 のレガシーにして失われた聖杯。
もちろん、Keith が抱えることとなった闇の部分をダークに描写するタイトルトラックなど、全てが耳馴染みの良いレコードではないかも知れません。しかし、だからこそ、この作品には真実の愛、語りかける力があります。
日本盤ボーナストラックにして美しきアルバムクローサー “Sailors Horn Pipe” にはきっと Keith が降臨しています。しかし、残念ながら彼がこの世界に降り立つのはこれが最後の機会となってしまいました。SNS等が普及しよりダイレクトに様々な “声” が届くようになった今、音楽を “受け取る” 側の私たちも、再度アーティストとの接し方、心の持ちようを考えるべきなのかも知れませんね。
今回弊誌では、Robert Berry にインタビューを行うことが出来ました。作品で最も希望に満ちた “Powerful Man” は父親賛歌。「偉大な、最も才能に秀でた友人を失ってしまった訳だからね。もちろん、世界的な損失でもあったよね…」12歳の孫の Ethan は驚くほどに Keith の才を受け継いでいるそうです。弊誌が必ず行わなければならなかった取材。どうぞ!!

3.2 “THE RULES HAVE CHANGED” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【RIOT V : ARMOR OF LIGHT】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH NICK LEE OF RIOT V !!

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The Pride of NYC, Legend of Metal History, Riot V is Still Alive And Kickin’!! “Armor Of Light” Unites Their Early Hard Rock Sounds With The Magic Of Power Metal ! Shine on!

DISC REVIEW “ARMOR OF LIGHT”

不撓不屈の不沈獣、終天のメタルウォーリアー RIOT V が、ハードロックの血潮とパワーメタルの魔法を等しく装填した光の英雄譚 “Armor of Light” をリリースしました!!メタルの教科書 “Thundersteel” 30周年に刻む新たな闘志の刻印は、40年のキャリアで通過した嵐、凪、そして帰天まで全ての逆境を力に変える躍動と眩耀に満ちています。
ブラックビューティ、黒のレスポールを抱えて独特の艶美な憂いと異国の薫りを奏でた Mark Reale はまさにバンドの心臓でした。2012年、Mark の逝去を受けて RIOT の存続を信じたファンは決して多くはなかったはずです。しかし絶佳なる遺言 “Immortal Soul” “不滅の魂” に Mark が刻んだ通り、バンドが立ち止まることは決してありませんでした。
70年代に生を受け、英国ハードロックにアメリカンな風を吹き込んだ RIOT のターニングポイントは徹頭徹尾パワーメタルへと変貌を遂げた “Thundersteel” だったと言えます。そして類稀なる鋼鉄の “道標” リリース時のベーシスト Don Van Stavern と、89年に加入して以降、Mark と共に流麗なツインリードでクラシカルオリエンタルのカタルシスを提供し続けたトリッキーなギターの名手 Mike Frintz は英雄抜きでバンドの存続を決断します。
MOON TOOTH でモダンなヘヴィープログレッシブを追求する Nick Lee、Tony Moore をフレキシブルに進化させた Todd Michael Hall、VIRGIN STEEL のダイナモ Frank Gilchriest を加えて2014年に日本以外では RIOT V の名でリリースされた復活作 “Unleash the Fire” には確かに Mark の魂が深く宿った鎮魂の焔でした。そして完全に RIOT V 名義でリリースされた “Armor of Light” は亡きギタリストと共に歩む新たなる歴史の幕開けです。
IRON MAIDEN の “Trooper” をイメージさせるエナジーに満ちた勝利のギャロップ “Victory”、ボーカル/ギターハーモニーが正しい場所に正しく配置されたウルトラキャッチャーで由緒正しき哀愁の”リアリズム” “End of the World”、”Thundersteel” のスピードデーモンに真っ向から立ち向かう “Messiah”。オープニングの三連撃はまさにアザラシ無双。KORN の最新作等でエンジニアを務めた Chris “The Wizard” Collier を得て SABATON にも匹敵する現代的なメタルプロダクションを纏った RIOT V は、目まぐるしくもダイナミックなパワーメタルの大斧で作品の冒頭を切り裂きます。
一方で、「Mike と Donnie は Mark の遺産を称えながら素晴らしい仕事を果たしていると思うな。楽曲やリフ、メロディーの中に初期 RIOT のハードロックサウンドと、後期のパワーメタルサウンドをミックスしながらね。」と Nick が語るように、新生 RIOT V の肝は初期と後期の融合。右手にパワーメタルの斧を握りしめ、左手にハードロックのシールドを携えたジョニーの勇姿はさながら無敵の獣神。
奇しくも今年は JUDAS PRIEST の “Firepower”、SAXON の “Thunderbolt”、そして RIOT V の “Armor of Light” と長年メタルを支え続けたベテランが、初期のキャッチーなハードロックテイストをナチュラルに復刻し復活の狼煙を上げています。
実際、後期 RAINBOW を彷彿とさせるロマンティックな “Burn the Daylight”、THIN LIZZY の美学を受け継ぐ神秘的な “Set the World Alight”、初期の RIOT らしいブルーズな響きとホーンセクションが溶け合った “Caught in the Witches Eye” など作品にはオーガニックでユーティリティーな色彩が調和し魅惑のコントラストが渦巻いているのですから。
それにしても、威風堂々の新たなアンセム “Angel’s Thunder, Devil’s Reign” や “Heart of Lion” を聴けば、ツインリードとボーカルハーモニーに加えて、リズムを捻ったクールなキメフレーズの数々がバンドのトレードマークであることを改めて再確認できますね。
後期 RIOT のアイデンティティーともなった、フォークトラッド、クラシカル、ケルトの響きを堪能できるドラマティックな “San Antonio” や “Ready to Shine” も出色の出来。そうしてアルバムは瑞々しい “Thundersteel” の再創生で大円団を迎えます。
まさに珠玉の逸品。今回弊誌では、バンドのレガシーを受け継ぐギタリスト Nick Lee にインタビューを行うことが出来ました。意外にも Sargent House の作品が並ぶプレイリストにも注目です。「アザラシのパワーを感じるんだ!」弊誌2度目の登場。どうぞ!!

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RIOT V “ARMOR OF LIGHT” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【W.E.T. : EARTHRAGE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ROBERT SÄLL OF W.E.T. !!

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Melodic Hard Super-Stars, W.E.T. Has Just Released Definitely One Of The Best Record In The Genre “Earthrage” !! Are You Ready For “Burn” And “Watch Their Fire” ?

DISC REVIEW “EARTHRAGE”

WORK OF ART, ECLIPSE, TALISMAN。メロディックハードの幾星霜に足跡を刻んだ三雄を頭文字に戴くスーパーグループ W.E.T. が、捲土重来を期すジャンルの王政復古 “Earthrage” をリリースしました!!瑞々しいアリーナロックの雄々しき鼓動は、地平の年輪に印されしかつての栄光を確かに呼び覚まします。
WORK OF ART と ECLIPSE。2000年代以降、メロディックハード希望の星は明らかにこの両雄でした。片や洗練の極みを尽くす AOR、片や情熱と澄明のハードロック。
しかしインタビューで語ったように、スウェーデンの同じ学校から輩出された2つの綺羅星 “W” の象徴 Robert Säll と “E” の象徴 Erik Mårtensson は、至上のメロディーを宿すシンクロニティー、宿命の双子星だったのです。実際、2人の邂逅は、AOR とハードロックの清新なる渾融を導き、ジャンルのレジェンド Jeff Scott Soto の熱情を伴って唯一無二の W.E.T. カラーを抽出することとなりました。
故に Robert の 「最初の2枚では、僕と Erik がかなりコラボレートして楽曲を書いていたんだ。だけど、今回の作品のソングライティングに僕は全く関わらなかったんだよ。」という発言はある意味大きな驚きでした。
それは何より、”Earthrage” が疑いようもなくバンドの最高傑作となり得たのは、前作 “Rise Up” で顕著であった硬質なサウンド、メタルへの接近をリセットし、Robert の得意とする80年代初頭のオーガニックなメロディックロックを指標したからに他ならないと感じていたからです。
つまり、「”Earthrage” を制作する際に Erik と話し合ってあのオーガニックなスタイルを取り戻すべきだと感じた訳さ。」と語るように、もちろん Robert から方向性についてのサジェスチョンはあったにせよ、”Earthrage” における奇跡にも思える有機的な旋律の蒸留、ハーモニーの醸造、ダイナミズムの精錬には改めて責任を一手に負った Erik Mårtensson というコンポーザーの開花と成熟を感じざるを得ませんね。
予兆は充分にありました。ECLIPSE のみならず、NORDIC UNION, AMMUNITION 等、歴戦の猛者達との凌ぎ合いは、明らかに Erik の持つ作曲術の幅を押し広げ、効果的で印象に残るコーラスパートの建築法を実戦の中で磨き上げて行ったのですから。
アルバムオープナー、”Watch The Fire” はまさに Erik とバンドが到達した新たな高みの炎。冒頭に炸裂する生の質感を帯びた強固なリズムと、期待感に満ちたギターリフはまさしく ECLIPSE 人脈から Magnus Henriksson & Robban Bäck 参加の功名。凛として行軍するヴァースでは Jeff と Erik がボーカルを分け合い、さながら DEEP PUPLE の如き伝統のインテンスを見せつけます。
コーラスパートは巨大なフックを宿す獣。トップフォームの Jeff は、久方振りに発揮する本領で徹頭徹尾リスナーのシンガロングを誘うのです。そしてパズルのラストピースは、Desmond Child 譲りのアンセミックなチャントでした。
BOSTON の奥深き音響に Robert のキーボードが映える “Kings on Thunder Road”、MR. BIG の “Nothing But Love” を彷彿とさせるストリングスの魔法 “Elegantly Wasted” を経て辿り着く “Urgent” はアルバムを象徴する楽曲かも知れませんね。
同タイトルのヒットソングを持つ FOREIGNER の哀愁とメジャー感を、コンテンポラリーなサウンドと切れ味で現代へと昇華した楽曲は、あまりに扇情的。
畳み掛けるように SURVIVOR の理想と美学を胸いっぱいに吸い込んだ “Dangerous” で、リスナーの感情は須らく解放され絶対的なカタルシスへと到達するはずです。
そうして一部の隙も無駄もないメロディックハードの殿堂は、”決して終わらない、引き返せない” 夢の続き “The Never-Ending Retraceable Dream” でその幕を閉じました。楽曲のムードが Jeff にとって “引き返せない” 夢である JOURNEY を想起させるのは偶然でしょうか、意図的でしょうか?
今回弊誌では、WORK OF ART でも活躍する稀代のコンポーザー Robert Säll にインタビューを行うことが出来ました。想像以上に明け透けな発言は、しかしだからこそ興味深い取材となっているはずです。「メロディックハードロックがまたチャートの頂点に戻れるとは思えないね。そして僕はそれで構わないと思っているんだよ。」どうぞ!!

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W.E.T. “EARTRAGE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DUKES OF THE ORIENT : DUKES OF THE ORIENT】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ERIK NORLANDER FROM DUKES OF THE ORIENT !!

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John Payne & Erik Norlander, A Journey That Started With The Supergroup Asia Gives You The Next Chapter Of Legacy, With Dukes Of The Orient !!

DISC REVIEW “DUKES OF THE ORIENT”

誇り高きプログレッシブの遺産と、陰りを帯びた伝統のメロディーを受け継ぐ稀代のミッシングリンク John Payne & Erik Norlander。両雄の鼓動と哲学が交差する DUKES OF THE ORIENT は、凛とした王の血脈を真率に後の世へと伝えます。
巨星 John Wetton の逝去こそが DUKES OF THE ORIENT 生誕のきっかけでした。長らく Wetton の後任として ASIA を牽引し孤軍奮闘を重ねた勇夫 John Payne は、厳しく比較され続けたマエストロの死を機縁に ASIA の金看板を降ろす決断を下します。それは遂に訪れた、彼に巣食う潜在的重圧からの解放だったのかも知れません。
ご存知の通り、ASIA は Payne がフロントを務めた “Paysia” の不遇もあり2006年にオリジナルメンバーでのリユニオンを果たしています。マザーシップから突如として下船を余儀なくされた Payne は、Geoff Downes を除く後期 “Paysia” のメンバー Guthrie Govan, Jay Schellen を伴い、日本が誇る鍵盤の大家、奥本亮氏をリクルートし新たなプロジェクト GPS を立ち上げ唯一のアルバム “Window to the Soul” をリリースしたのです。
“Paysia” の作品となるはずだった “Architect of Time” から楽曲を流用した “Window to the Soul” はメンバーの卓越した技量を反映した充実作でしたが、結局は Payne が ASIA の呪縛から解き放たれることはなく、GPS はオリジナル ASIA の了承を経て ASIA の楽曲をプレイする ASIA Featuring John Payne へと形を変えて存続することになったのです。
ASIA Featuring John Payne で John と運命の邂逅を果たしたのがキーボードウィザード Erik Norlander でした。妻 Lana Lane の作品をはじめ、自身のバンド ROCKET SCIENTISTS, DIO の落胤 LAST IN LINE 等でスマートかつロマンティックな鍵盤捌きを披露するツボを十二分に心得た名コンポーザーとの出会いは、10年という遥かなる時を超え ASIA の名と別れを告げた素晴らしき DUKES OF THE ORIENT の音楽へと繋がることとなりました。(但し、ASIA Featuring John Payne もライブアクトとしては存続するそう。)
異論は多々あるでしょうが、Payne をフロントに据えた ASIA は、少なくとも音楽的には充実したスティントでした。Downes/Payne のコラボレーションは、90年代から00年代初頭というメロディック/プログロック不毛の時代に、確かに命を繫ぐ質実なる実りをもたらしました。ただ、ASIA らしいロマンチシズムから意図的に距離を置き、Payne の野性味溢れる声質をハード&キャッチーに活かす選択は、忠実なファンやレーベルからのサポートをも遠ざける結果になりました。プログレッシブポップが花開く近年を鑑みれば或いは時期尚早だったのかも知れませんね。
ASIA の名を返還した DUKES OF THE ORIENT で John Payne は自由でした。John Wetton との差異を殊更強調する必要もなく、自らの内なる ASIA 全てを表現することが出来たのかも知れませんね。
実際、”血の絆” を響かせるオープナー “Brother In Arms” はオリジナル ASIA と “Paysia” がナチュラルに融合したバンドのマイルストーンだと言えるでしょう。ハードでダイナミックなアレンジや Payne のトレードマークとも言える重厚なコーラスワークは “Aria” の頃の “Paysia” を、溢れ出る哀愁に叙情、ロマンチシズムはオリジナル ASIA をそれぞれ喚起させ双方の美点を5分間のドラマへと昇華します。
同様に “True Colors” の劇的なメロディーを宿す “Strange Days” では、繊細なアレンジメント、アンセミックなキーボード、Guthrie Govan の傑出したギターワークで “Aura” で示した “Paysia” の可能性をも明確に示唆します。
勿論、オリジナル ASIA のコードセクエンスや “ダウンズサウンド” を惜しみなく披露する “Time Waits For No One” “Fourth of July” 等はやり過ぎの感もありますが、同時に荘厳にして華麗、好き者には堪らない胸踊る完成度であることも事実。
加えて、Erik が 「僕は ELP, YES, KING CRIMSON, JETHRO TULL, PROCOL HARUM といった偉大なバンドたち、70年代のブリティッシュプログと共に育ったんだ。それこそが僕の音楽的なルーツだよ。同じようなルーツを ASIA も持っているんだ。」 と語るように、”Fourth of July” のドラマティックな後半部分では、ASIA よりも “プログレッシブ” な先人達の遺産を巧みに消化し、8分間のエピックに相応しき構成と展開を築き上げているのですから感服の一言です。
“A Sorrow’s Crown”, “Give Another Reason” で魅せるチャーチオルガンやスパニッシュギターの躍動感も DUKES OF THE ORIENT の存在感を一際掻き立て、Jay Schellen のコンテンポラリーかつ安定感のあるドラミング、Rodney Matthews の美しきアートワークと共に UK プログレッシブの伝統と血の繋がりを強く主張しています。
少なくとも、90年代からシーンを見守って来たファンであれば、Payne & Norlander 2人の才能や存在自体があまりにも過小評価されていることは憂慮しているはずです。”Dukes of the Orient” にはその評価を覆すだけの稀有なる魔法が存在するのでしょうか?”Only Time Will Tell”。時が来ればその答えは出るはずです。きっと良い方向に。
今回弊誌では、Erik Norlander にインタビューを行うことが出来ました。奥様からもメッセージをいただけましたので、Lana Lane ファンも必読です。どうぞ!!

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DUKES OF THE ORIENT “DUKES OF THE ORIENT : 9.8/10

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