タグ別アーカイブ: us

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【QUADVIUM : TETRADOM】 STEVE DI GIORGIO SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH STEVE DI GIORGIO OF QUADVIUM & TESTAMENT !!

“You Can Make a Fretless Sound Like Fretted If You Want, But You Can Never Make a Fretted Sound Like a Fretless…The Fretless Bass Is Just So Much More Expressive And Has a Greater Distance From The Guitar.”

DISC REVIEW “Tetradōm”

「異なるサウンドを作るために実験的にエクストリーム・サウンドにフレットレスを持ち込んだんだ。もし望むなら、フレットレスをフレット付きのように鳴らすことはできるけど、フレット付きをフレットレスのように鳴らすことは決してできない……フレットレス・ベースの方が表現力が豊かで、ギターとの距離もとても近いんだ」
メタル世界で “フレットレス”、つまりヴァイオリンのようにフレットのない楽器は今や珍しいものではありません。ベースはもとより、Tom Fountainhead のようにギターにまでその波は広がっています。フレットを取り払った異次元的で滑らかな音色は、どんな楽曲にもえもいわれぬ独特な風味を加え、メタルの幻想と宇宙を深化させてくれるのです。
「DEATH は僕にとってすべてを意味する。Chuckは僕にミュージシャンとして成長するチャンスを与えてくれたし、何より他の人たちが注目できるよう僕をメタルの地図に載せてくれたんだからね。もちろん、”Individuals” の2年前には、僕にとってとても重要なアルバムに参加していたんだけどね… “Human” だよ。CYNIC の才能ある連中と一緒に、あんなに若くしてデスメタルの景色を変えたんだからね。あの作品で新しい方向への扉が開かれ、まったく新しいジャンルが生まれたんだ」
Steve Di Giorgio はそんなフレットレスの魔法をメタルに持ち込んだパイオニアのひとり。今は亡き Chuck Schuldiner が作り上げた DEATH の “Human” は、硬質なメタル世界に “浮遊感” という宇宙を持ち込みました。その新たな景色を描くために Chuck が必要としたのが、ジャズ/フュージョンに精通した CYNIC の面々と Steve のフレットレス・ベースだったのです。
そう、いつだって “壁” を壊すのは “奇抜” にも思える挑戦的なアイデア。以来、エポック・メイキングな “Human” は、テクニカル/プログレッシブ・デスメタルの金字塔となり、フレットレスはメタルの異世界を描く貴重な筆のひとつとなっていったのです。
「僕たちが若く、影響を受けながら成長していた頃、ベースは曲にとって他の何よりも重要だった。だけど、残念ながら90年代にはインスピレーションに溢れたベース演奏が乏しくなり、それは新世紀に入っても続いた。しかし、ここ10~15年の間に、非常に優れた、創造的なスタイルを持つ新しい世代のベーシストが現れ、メタルの中にベースの重要性を取り戻しつつあると思う。ベースが影から出てくると同時に、バンドをサポートし続けることが一般的になってきているんだよ」
始まりの場所 SADUS から、Steve が家と呼ぶ TESTAMENT、ARTENSION や SOEN、果ては MEGADETH まで果てないベースの旅を続ける Steve。そんな彼の挑戦と求道の中でも、QUADVIUM ほど “奇抜な” 試みは初めてでしょう。そう、QUADVIUM にはフレットレス・ベースの達人が Steve 以外にもうひとり、存在するのです。Jeroen Paul Thesseling。OBSCURA や PESTILENCE で名を成したオランダの奇才が加わることで、QUADVIUM はまさに前代未聞の “異質” な物体となりました。
“多弦フレットレス・ベースをさらに進化させたら?” をコンセプトに掲げる QUADVIUM。アルバム “Tetradōm” は、DEATH, CYNIC, ATHEIST, PESTILENCE といった90年代のテクニカル・デスメタルと、現代的なフュージョン・プログ・メタルを基盤とし、楽器の攻撃性と滑らかでジャジーなコード進行、そしてフレットレスの浮遊感、宇宙的景観を巧みに融合させながら、特徴的なダブルベースのサウンドを際立たせていきます。
次から次へとアイデアが飛び交うメタルの迷宮。アストラルな静寂の海、幻想的なハーモニーを切り裂く技巧と激情のインテンション。ふたりのベースの達人は、どちらが主役をはるでもなく、まさに Steve が語る表に出ながらサポートするというこの楽器の理想型を見せつけていきます。
ベースの進化はメタルの進化。「Chuck はよりオープンでメロディアスなギター・リフ・スタイル、”Human” や “Individual” のより創造的なやり方に戻るために僕のベースが必要だと感じていたんだ。でも、僕たちが2作目の CONTROL DENIED の計画を立てている最中に、彼の健康状態が悪化し、完成させることができなくなってしまったんだ。とても、悲しかったよ…それは、その音楽が彼の最も冒険的な楽曲であったからというだけでなく、いや、それ以上に僕たちが出会った1986年、アルバム前のデモの時代からずっと良い友人であったからなんだ。僕はひとりの親友を失い、世界はユニークな先見の明を失った」 TESTAMENT の新作も控えています。Steve Di Giorgio です。どうぞ!!

QUADVIUM “TETRADOM” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【QUADVIUM : TETRADOM】 STEVE DI GIORGIO SPECIAL !!

COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【DREAMWAKE : THE LOST YEARS】


COVER STORY : DREAMWAKE “THE LOST YEARS”

“Wavecore Is Essentially The Mixture Of Synthwave And Metalcore. We Just Took The Two Coolest Sounding Words From Both Of Those And Put Them Together.”

WAVECORE

2025年のヘヴィ・ミュージック・シーン。多くのモダン・メタル・バンドが創造的なことをしているのを目にします。SLEEP TOKEN はメタルに強烈でポップなオーラをもたらし、ELECTRIC CALLBOY はヘヴィ・ミュージックをパーティーに変えていきます。また、ICE NINE KILLS はメタルのスタイルでホラーに命を吹き込んでいます。
そして4年前、シンセ・ウェーブへの強烈な愛と情熱をメタル・コアのスタイルに融合させたバンドは今、そのアイデアを広げただけでなく、サックスを全面的に取り入れ、彼らのブランド “ウェーブ・コア” のアーバンでセクシーなサウンドを開花させました。
メタル・コアにプログレッシブなアプローチを取り入れ、そこにシンセウェイヴやサックスパートを持ち込む野心。コネチカットの DREAMWAKE は2018年以降、そのサウンドと野心を見事にスケール・アップさせてきました。セカンド・アルバム “The Lost Years” では、まさに独自の進化を遂げたメタルの構築に成功。彼らの “ウェーブ・コア”サウンドは、メタル・コアのヘヴィネスとシンセウェイブの温かくノスタルジックなフィーリングをカップリングしたもので、まさに唯一無二の取り合わせ。まず、ウェーブ・コアとはどういったジャンルなのでしょうか?ギタリストの Dave Pazik が答えます。
「ウェーブ・コアとは、基本的にシンセ・ウェーブとメタル・コアのミックスだ。 シンセ・ウェーブとメタル・コアの中で、最もクールな響きを持つ2つの言葉を一緒にしたんだ。それでウェーブ・コアになった。 少しずつ定着し始めているね。シンセ・コアやレトロ・コアを使う人もいるけど、僕らはウェーブ・コアが気に入っている。それがこのバンドの本質なんだ。 僕らは典型的なメタルコア・バンドよりも少し多くのことをやろうとしている。 メタル・コアは僕らが大好きなものだけど、シンセ・ウェーブの要素を加えて、僕らのアートの原動力にしたいんだ」
フロントマンの Bobby Nabors も付け加えます。
「シンセウェーブは僕らの人生の中でとても大きな部分を占めている。 僕らはみんな、2017年にリリースされた “Nocturnal” で THE MIDNIGHT というバンドを知ったんだ。 僕たち全員が初めてそれを聴いて、音楽的にも人間としても変わったんだ。僕らの人生、キャリア、そして目標において、とても重要なポイントだった。 このアルバムは、僕たちがバンドとしての本当のアイデンティティを見つける手助けをしてくれたんだよ。僕たちはまだまだ拡大し、成長し、実験していくような気がするけど、超自然に真摯に僕たちの心と魂を完全に注ぎ込むことができるものを見つけたんだ。とても情熱を持っているよ。シンセ・ウェーブは DREAMWAKE の大きな部分を占めていて、これからもこの要素を加えたいと思っているんだ」

メタル・コアとして始まり、そこにシンセウェーブを加えたのでしょうか?Bobby が答えます。
「僕ら3人は、このバンドを結成する前にも複数のバンドをやっていたんだ。シンセを取り入れたバンドもあったけど、ほとんどはストレートなメタル・コアだった。それからバンドを始めて、EP “Dark Thoughts in Vibrant Minds” をリリースして、自分たちの本当のサウンドというか、少なくとも方向性を見つけることができた。でも、その中の何曲かはただのストレートなメタル・コアだった。 方向性が定まっていなかったんだ。実際にサックスを使って少し実験してみるまではね。サックス奏者 Jesse Molloy は、僕たちのすべてのレコーディングに参加してくれている。確か “Paradise” という曲で実験的に彼に声をかけたんだ。 この曲は春のビーチのようなフィーリングで、僕たちはサックスで一段上のフィーリングにしたかった。うまくいったし、だから僕たちはそれを取り入れて走り出した。Jesse は、それまでメタルはやったことがなかったので、自分とはまったく違うものだと言っていたけどね。こうして DREAMWAKE のサウンドが誕生したんだ。 サックスはかなり大きな存在だけど、シンセ・ウェーブで自分たちのサウンドを見つけたんだ」
つまり、DREAMWAKE にとってはメタル・コアと同じくらい、シンセ・ウェーブとの出会いが衝撃的だったのです。Dave が回想します。
「僕らが初めてシンセ・ウェーブに出会ったときのことを覚えている。とてもクールな瞬間だった。友人の車で音楽を聴いていたとき、彼が初めて THE MIDNIGHT を聴かせてくれたんだ。それまであまり聴いたことのない、本当にクールなスタイルの音楽だった。だから僕たちは、自分たちがすでに知っていて大好きなものを使って、シンセ・ウェーブを自分たちのものにする方法を見つけたかった」

Bobby がシンセ・ウェーブに見つけたのは、エモーションとノスタルジアでした。
「感情に訴える音楽に関しては、僕らはみんな本当に情熱的だと思う。僕たちは皆、音楽に何かを求めている。 何かを感じさせてくれるような… シンセ・ウェーブや THE MIDNIGHT、そういったバンドに出会って、一気に世界が広がった。シンセ・ウェーブの音楽の多くには、僕たちが書く傾向にあるものと似たテーマがある。人生、内なる葛藤、物事のダークでヘヴィな側面、でも同時にポジティブであること。ほろ苦さという奇妙なエネルギーがある。ノスタルジックで温かみがあると同時に、ちょっと冷たい感じもする。この作品は感情に左右される音楽で、サックスはその素晴らしい一部だと感じている。感情を引き出してくれる。 それこそが、僕らの音楽の正義なんだ。
サックスが入ると、ひとつのレベルからまったく違う領域になるんだ。鳥肌が立つような感じだ。バンドをやりながら自分たちを表現できることが本当に嬉しいね」
とはいえ、今をときめくあのバンドにも影響を受けています。
「SPIRITBOX, PERIPHERY, ERRA, NOVELISTS といったバンドやアーティストからインスピレーションを受けている。加えて、The Midnight, FM-84, Timecop 1983 といったシンセウェーブ・アーティストからも多くのインスピレーションを受け、プログレッシブ・メタルコアとシンセウェーブ・ミュージックの両方から影響を得ることで、現在のサウンドを作り上げることができたんだ」

モダン・メタルの世界では、多くのバンドが同じように外部から様々な影響を取り入れようとしていますが、不誠実で歪なやり方も少なくありません。しかし、DREAMWAKE は実に自然です。Bobby はこの実験をとても気に入っています。
「ありがとう。 サックスを使った実験は、最初は1回限りのものだったんだけど、曲の感情をうまく引き立てているのを聴いて、僕らのサウンドの永久的な一部にする必要があると感じたんだ。 僕らの曲はサックスがとてもよく合っている。
以前は曲を書いてから、入れる場所をサックス奏者に選んでもらっていた。サックスを入れる場所を決めてもらっていたんだ。でも今回のアルバムでは、彼に楽しんでもらうことにしたんだ。 やりすぎたり、無理強いしたりすることなく、サックスの出番を増やすようにした。以前のレコードよりもサックスを散りばめて、そのメッセージを訴えかけるようにしているんだ」
“The Lost Years” は、前作 “Virtual Reality” よりも様々な点で進化を遂げていると Dave は語ります。
「幅を広げたという感じかな。 サックスやシンセ・ウェーブ、軽めのパートもたくさん書いたけど、ヘヴィなパートも間違いなく増えた。 そういう意味でも幅が広がったと思う。今回は DREAMWAKE のダイナミックさがより広がったと思う。まず、僕らは “Virtual Reality” で自分たちのサウンドを見つけたんだ。今回のアルバムでは、自分たちがやっていることを両極端により強烈な形で届けるにはどうしたらいいか、より意図的で計算されたものにしたのさ」

“The Lost Years” から何を感じ取ってほしいのでしょう?Bobby が答えます。
「”The Lost Years” は人生の “ページめくり” のような気がするね。青春時代から、大人としての自分を発見し、人生の目的を見つける。人生の次のステップを踏み出し、自分が進むべき道を進む。制作中の何年かの間に、僕らはちょっとしたアイデンティティの危機に陥っている。
“The Lost Years” の多くは、痛みや感情、人生の良い年や悪い年について書かれている。しかし、トンネルの中には光もある。怖いけれど、楽観的になること。 地平線の先には、必ず良いことが待っている。人生は前進する。もしこのアルバムを聴いてくれる人がいたら、大丈夫だと感じてほしいし、人生がどんなに苦しくても、怖くても、前に進み続ける理由があることを知ってほしいんだ」
Dave が付け加えます。
「さらにいえば、陳腐に聞こえるかもしれないが、”君はひとりじゃない” というメッセージを発信したかった。年齢を重ね、問題や葛藤を抱えていると、かなり孤立してしまうような気がするんだよ。周りのみんなもそうした苦労をしている。時には結局自分しかいないことに気づくこともある。それは良いことでもあるけれど、誰にでもサポートシステムが必要だし、自分が経験している苦難は一時的なもので、解決できるものだと気づかせてくれる人が必要なんだ。僕らの音楽がそのための逃げ道になったり、苦境に立たされているのは自分だけではないということを誰かにわかってもらうためのプラットフォームになったりするのなら、それは素敵なことだ。それが大きな目標であり、僕たちの活動から受け取ってほしいメッセージなんだよ」

DREAMWAKE にとって、歌詞やメッセージはとても大切なものだと、フロントマンは語ります。
「僕は歌詞を書くとき、それが良いものであれ悪いものであれ、特定の感情を感じない限り何も書けないんだ。無理やり書くことを自分に許さない。書けるのは、音楽を通して納得して、解決するに値する何かを感じているときだけだ。だから歌詞を書くときは、誰がどう解釈してもいいように曖昧に書く。 でも、僕は自分自身の個人的な葛藤や自分の人生で経験していることから歌詞を書いているんだよ。
歌詞はある意味セラピーのようなもの。 自分の考えや感情を処理するためのね。誰だってそれを吐き出す方法が必要だ。僕の方法は幸運にも音楽だ。 歌詞には誇りを持っているし、時間をかけている。僕にとってとても大切なものであり、このアルバム全体がとても重要なものなんだ」
シンセ、サックス、そしてプログレッシブなメロディー。 曲を作るプロセスを Dave が説明します。
「どの曲もスタートが違う気がする。 最近はシンセのメロディから始まる曲が多い。というより、リフから書くことだけは避けるようにしている。むしろ、すでにそこにあるメロディにリフをつけるほうがいい。僕たちはいつも演奏を先に仕上げる。Bobby と僕は10代の頃からずっとそうだった。スタジオに行って、歌詞のない曲を書いて、曲を完成させる。 そうすれば、自分たちのサウンドスケープを作ることができる。 ギター・パートやシンセの多くが、まるでボーカルのメロディーのように歌えることに気づくだろう。 ボーカルを入れる前に、そういうものをたくさん入れるようにしているんだ。なぜなら、初めて聴いたときには気づかないような、サブリミナル的なメロディーが背後にあるからだ」

ボーカリストも、バックの演奏には絶大な自信を持っています。
「インストゥルメンタルの面では、ボーカルがいなくても、僕らの曲は大きな声で語りかけてくるような気がする。何が起こっているのか聴き取れる。僕らの音楽と作曲プロセスには、たくさんのレイヤーがある。 集中しないと聞こえないこともある。そのプロセスには、とても多くの思いが込められているんだ。もちろん、ボーカルがあるときは、とてもいいし、音楽に素晴らしい要素を加えているのだけど、インストゥルメンタルだけを聴いていないと聴こえないようなものがたくさん隠されてしまうんだ。だからファンにはインストゥルメンタルも集中して聴いてほしいと思っているんだ。ある意味、曲を別の視点から聴いているようなものだからね。
どのレイヤーも無駄にはなっていない。僕らの音楽には、ひとつひとつに明確な目的がある。 フィラーもナンセンスもない。それぞれのピースがそこになければならないと感じているんだ。 インストゥルメンタルにはプライドがあるんだ。僕らはバンドで全領域をカバーしようとしているんだ。 トラック内のあらゆるものが常にシュレッドしているようにしたいんだ(笑)。 もしそうでないなら、僕たちはそれをさらに加速させる必要がある。 すべての小品が印象的であってほしい。 どの曲にも驚きを与えたいんだ」
DREAMWAKE は音楽と歌詞だけでなく、MVやマーチャンダイズにもノスタルジックでレトロ・フューチャーな雰囲気が醸し出されています。逆にいえば、メタル・バンドが定期的に使うような色彩はあまり見かけません。Bobby が説明します。
「そうすることで、自分たちを最大限に表現することができる。このバンドのピースは、イメージ、マーチャンダイズ、すべてを含めて、僕たちの心の一部みたいなものなんだ。それはまた、僕たちがバンドと迷い、そして今ここにいること、人生の様々な時期に似ているのかもしれない。シンセ・ウェーブ/ヴェイパーウェイブの美学は、僕たち自身を本当によく捉えている。ノスタルジックな子供時代のような、温かくてファジーな感覚を持ちながら、同時に切なくてエモーショナルでもある。
ピンクとブルーを見ると、誰もが自動的に DREAMWAKE 思い浮かべるよね(笑)。それが僕らのカラーなんだ!」

ブルーとピンク。Bobby はそのツートンカラーの色合いを、完璧主義者とそこからの解放のふたつで実践しています。
「少なくとも僕は、ミュージシャンとして毎公演完璧でありたいと思っている。でも毎晩必ず何かがあるわけだから、自分の頭で考えて、ショーの後に自分を責めないことが大切なんだ。多くのミュージシャンは、少なくとも僕が会った人たちはそうだった。完璧でありたい、もっとうまくなりたいと思うのはみんな同じだけど、常に自分が一番の批判者なんだ。以前はステージから降りると、その晩はずっと怒っていて、ツアーや旅を台無しにしていた。今は、ステージに立つこと、そしてそのステージをやり遂げることに喜びを感じられるようになった。何が起ころうとも、起こったことは起こったことだし、自分が一生懸命やった限り、それがすべてなんだ。この前のツアーでは、それを本当に実践したし、精神状態も以前よりずっと良くなった。 ミュージシャンとして、少なくとも僕にとっては、毎晩110%完璧でなくても大丈夫だということが、大きなことだと感じている。 人間である以上、何かは起こるものだから、そこに行って人々のためにやった自分を褒めてあげて、多幸感を感じて次のステージに行くんだ」
DREAMWAKE というバンド名も、そもそも “多幸感” を意識してつけられました。
「DREAMWAKE という名前の由来は、音楽を演奏することで自分たちの感覚を体現できるような名前を見つけようとしたことからきているんだ。僕たちはそれを、夢やフロー状態、ネガティブな考えやアイディアから解放された状態だと考えたい。 音を通して、現実から一時的に逃避し、多幸感に浸るようなね」
シンセ・ウェーブは、ここ10年ほどの間に、音楽だけでなく様々な側面に浸透してきました。バンド全員がその事実に興奮を覚えています。
「本当にクールだと思うよ。 僕らのビデオにも、そういった側面をいくつか使っている。”Night Rider” のビデオでは、ランボルギーニが登場し、背景にはサイバー・パンクのような街並みが映っていた。
シンセ・ウェーブの要はフィーリングに浸れることだ。 だから、純粋でオーセンティックなシンセウェーブを取り入れたものには、何らかの愛着が湧くんだ。 胸に響く感覚を与えてくれる。僕らにとってはとてもありがたいことなんだ。
今、シンセウェーブが注目されているのはとても嬉しいことだよ。みんなが大好きなものだから、あちこちのメディアで目にすることができる。ある意味、僕らのために作られたトレンドのようなものだ。僕らにとっては、子供時代に似ているんだ。90年代に育ったから、80年代後半から90年代がスイートスポットだと感じている。まさにノスタルジーだね。僕たちがこの音楽をやっているのと同じ頃に流行っているというのは神だ。もちろん、情熱的なプロジェクトだから、流行に乗るつもりはないけれど、社会がシンセウェーブで病みつきになっているのは事実だ。僕たちはその利点を享受することができるんだ」

参考文献: DEAD RHETRIC : Dreamwake – Championing Wavecore

KILL THE MUSIC : UNSIGNED SPOTLIGHT DREAMWAKE

100% ROCK MAG: DREAMWAKE Interview

COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【CAR BOMB : TILES WHISPERS DREAMS】


COVER STORY : CAR BOMB “TILES WHISPERS DREAMS”

“At The End Of The Day, The Process Of Making And Playing Music Is The Biggest Reward, So You’d Better Be Making Something That You Love.”

TILES WHISPERS DREAMS

複雑なメロディとリズムの融合は、メタルの誕生以来、常にその主要な要素の一つでした。BLACK SABBATH の楽曲における Bill Ward のジャズ的なドラミングや、LED ZEPPELIN の層を重ねたアレンジ、シンコペーションなど、メタルの激しさはその複雑さと密接に結びついてきました。そして、そのつながりは時と共にさらに強固なものとなっています。
ニューヨークの CAR BOMBは結成されてからほぼ25年間、演奏が困難なほど複雑なメタルを創造する最前線に立ち続けています。そして、6年ぶりとなる巨匠の帰還。ポスト・ハードコア、メタルコア、マスコア、そしてパンクのあらゆる要素を、純粋無垢な激しさでぶつけ合った、野蛮で妥協のない短編アルバム “Tiles Whisper Dreams” の12分はあまりも濃密で予測不能かつ衝撃的です。
そんな CAR BOMB の混沌は、どのように始まったのでしょうか?ギタリストの Greg Kubacki が説明します。
「1990年代後半、Mike と僕は NECK というバンドに所属していて、Elliot と Jon は SPOOGE というグループで一緒に演奏していたんだ。両バンドはロングアイランドのロックビル・センターにある同じリハーサルスペースを共有していて、互いの音楽のファンだったんだ。だから、両バンドが解散してから数年経った後、僕たちは力を合わせ、以前のプロジェクトよりもヘヴィでテクニカルな音楽に挑戦することを決めたんだよ。以来、僕たちは CAR BOMB に全力で取り組んできた。
2000年代初頭に結成後、僕たちは自らのサウンドを探求し、アイデアを書き下ろし録音する方法を学ぶために多くの時間を費やした。最初のアルバム “Centralia” は2007年に Relapse Records からリリースされ、同レーベルの他のバンドと共にツアーを開始した。だけど僕らは昼間の仕事を完全に辞めることを望まなかったから、Relapse と別れ、自分たちのペースで音楽を作り、全てを自分たちで手がける道を選択したんだ。僕たちは3枚のアルバム “w^w^^w^w”, “Meta”, “Mordial” を自らレコーディング・リリースし、Meshuggah, Gojira, Dillinger Escape Plan, Between the Buried and Me, Animals as Leaders といったバンドとのツアーにも参加する幸運に恵まれたんだ」

CAR BOMB の音楽は、時にエイリアン・コアなどと例えられています。
「創造的な活動を言葉で表現するのは難しい。僕らは感覚に依存しているからね。それでも言葉にするならばおそらく、プログレッシブ・デスコア、マスコア、プログレッシブ・メタルに、スペースロックやシューゲイザーの要素を混ぜたものと言えるだろう。まあ、”エクストリーム・メタ” や “エイリアン・コア”、甚至いは “レーザー・コア” と呼ぶ人もいるよ…(笑)。僕たちは多くの実験をするけれと、ジャジーやアバンギャルドな方向へ行き過ぎないように注意しているんだ。ヘヴィでグルーヴィーなサウンドを保つことを重視しているし、それが僕たちの独自のグルーヴの解釈であってもね。
僕たちの音楽に惹かれる人々は、僕たちが好むようなヘヴィなサウンドを求めていると思う。ただし、それは従来のジャンルに囚われないもの。僕たちは常に異なるアイデアや、曲、ドラムビート、コード進行、リフを歪める方法を模索していて、ファンもそのような実験的な要素を好むと考えているよ」
パンク、ハードコア・パンクもメタルと同様、CAR BOMB にとって重要な要素です。
「リフを演奏するときの感覚として、パンクの美学は常に持っていたいと思っている。メロディックなパートであっても、洗練されていないというか、そう表現するのが一番だと思う。 あまりプロダクションを加えたりせず、かなりラフな状態に保ちたいんだ。2017年に GOJIRA とツアーを行い、30日間ぶっ通しで演奏したんだ。 彼らがどのようにエネルギーを使い、それぞれのリフを曲の完璧な部分に落とし込んでいくかを見て、僕たちは本当に感銘を受け、それを目指して努力した。ランダムに長尺の曲を作るのではなく、”オーケー、異なる拍子のランダムなリフがいくつかあるけれど、どうすればもっと多くの断片を曲の後の部分に入れることができるだろう?” とか、”どうすればリフを持ってきて、半分に切ったり反転させたりできるだろう?” と考えてみたんだ」

つまり、GOJIRA から学んだのは混沌をコンパクトに纏めること。
「繰り返しになるけど、GOJIRA との経験に戻らなきゃいけないと思うんだ。観客の反応や、彼らがどれだけ誠実に音楽を作っているかを目の当たりにしたからね。 スタジオが一緒だから、彼らのレコーディングや曲作りを見ることができるんだけど、彼らのやることはすべて100%本心からなんだ。彼らの音楽がより原始的になるにつれて、彼らはいつも SEPULTURA “Roots” 時代や “Chaos A.D.” 時代のグルーヴ・メタルに近いものを追求している。 僕たちはあまりそういうことはしないんだけど、”自分たちの音楽でやっていることをすべてコンパクトにして、より良いストーリーを語るにはどうしたらいいか? どうすれば観客を驚かせることができるだろうか?”… 今回は、それを本当に恐れていない。”ああ、またあの部分が出てきた!”と思うような部分もある。 “w^w^w^w” の時は、ランダムなリフに次ぐランダムなリフの奇妙なピースのようだった」
これだけ複雑な音楽を制作するためには、クラシックや理論の教育が必要なのでしょうか?
「特には必要ないよ。僕たちの中には、クラシックの訓練を受けた人はいない。実際、最も多くのレッスンを受けたのはボーカルの Mike で、彼は狂ったようなクラシックギター奏者だった。ナッソーコミュニティカレッジで3年間ほどクラシックギター音楽を専攻していたからね。
僕たちはフィリップ・グラス、スティーブ・ライヒ、ストラヴィンスキーのような現代の作曲家に影響を受けている。フィリップ・グラスは完璧な例で、彼は常に1つの要素を少しずつ追加していくんだ。7/8拍子から4/4拍子、9/8拍子へと拍子を伸ばしていくのだけど、それは非常に自然で、不快なものではない。それはもはや数えるようなものではなく、リスナーを包み込むような織物のようなパターンになり、それこそが僕たちも目指しているものなんだ。数えられるならいいし、数えられなくてもいい…できれば、頭を使わなくても消化できるようなものを目指しているんだ」

長い音楽生活の中で、現在の CAR BOMB を刺激しているものは何なのでしょう?
「明らかに Meshuggah と Deftones で、彼らの影響は僕たちの音楽の至る所に感じられるよ。個人的には、90年代と00年代にやや主流から外れたミュージシャンが好きで、その時代のフェイバリット・アーティストとしては、Aphex Twin, Autechre, Failure, My Bloody Valentine, Coalesce, Suffocation, Boards of Canada, Mew, Radioheadなどがいるね。IDM…インテリジェント・ダンス・ミュージックとは、ワープ・レーベルに所属していた人たちの呼び名で、Squarepusher など、1990年代前半に大流行した音楽。 僕たちはみんな、1990年代前半にそういうものに夢中になって育ったんだ。 特に最新作では、僕らがどこから影響を受けているのかがよくわかる。 Meshuggah のリフをそのままパクることを恐れているわけじゃない。 僕らはそういうバンドが大好きだから、そうだ、それを入れようって感じなんだ。 そういうバンドは最初から続いているんだ。
CAR BOMB ができる前は、2つの別々のバンドとして一緒にリハーサル・スペースでジャムっていたんだけど、Elliotが “Destroy Erase Improve” が出た時にテープでくれたんだ。 ちなみに、僕は今でもそのコピーを持っている。 それを聴いてすぐに、そして Eliot の演奏を聴いて以来、彼とずっと一緒に演奏したいと思うようになったんだ。
現在、僕は Turnstile や Sanguisugabogg のようなバンドによるハードコアの復活に本当に刺激を受けているんだ。彼らは、現代の音楽に欠如している生のエナジーを再びもたらしているよね」
ラインナップが不変で、共に創造性を高め続けられるのも CAR BOMB の強みでしょう。
「最初から僕らにとって常に新しい音楽を作るという意図のようなものがあった。たぶん、これまでに試したことのないようなもの、あるいは音楽界である意味ユニークだと感じるようなもの。 さっきも言ったように、僕らは他のバンドからたくさんのものを借りているけど、自分たちらしいものを作りたいと思っているんだ。 Mike の歌い方、僕のエフェクトのかけ方、Elliot のドラムの叩き方、そして Jon の怪物的なベース。 でも、僕たちはいつも新しいものを聴いたり、新しい映画や番組を見たり、新しいアート作品を鑑賞したりしている。新しいものを探すことは、僕たちのDNAに組み込まれているようなものだから、それも大いに関係していると思う」

 

生死を問わず、共演してみたいアーティストは?
「うーん、難しい質問だけど、今ならグスタフ・ホルストを選ぶだろう。彼は1920年代に “ザ・プラネッツ” を作曲したイギリスの作曲家で、今回、一連の曲の作曲に大きな影響を与えてくれたんだ。彼の頭の中をのぞき、シンプルなモチーフを感情豊かな音楽に展開する方法を学べたら、僕にとって非常に興味深く興奮する経験になるだろうね」
“Tiles Whisper Dreams” には、バンドの進化、6年の歳月が反映されています。
「2019年に前作のアルバム “Mordial” をリリースし、その直後から音楽の制作を開始し、以来ずっと試行錯誤を続けてきたんだ。数多くの異なる試みを重ね、最終的にそれらのアイデアは数曲に凝縮されていったんだ。そのうちの3曲が今回の新EPを構成しているよ。過去20年間で学んだ全てを、最もインパクトのある曲に凝縮しようと努めたんだ。
ギター的にはそれぞれが独自の難しさがあるね。”Paroxysm” は右手の腕を酷使する曲、”Tiles Whisper Dreams” は左手のリフの連打が特徴的で、”Blindsides” はエフェクトの切り替えが頻繁。 3曲ともライブで圧倒的な迫力を出すように設計されているので、大きなフェスティバルのPAスピーカーでどう響くか楽しみだよ。昔の曲だと、”Secret Within” をライブでやるのはいつも楽しいね」
これからの目標はどこに置いているのでしょう?
「現在の目標は、作曲と音楽のリリースを続けること。音楽の作曲とレコーディングは僕の最大の情熱で、今までにないほど、それに集中したいという強い衝動を感じているんだ。CAR BOMB は現在、来年リリース予定のLP用に8曲の制作を進めている。また、Xytechra(私のエレクトロニック・ミュージック・プロジェクト)、Thrush(ギターを軸にした新規プロジェクト)、Ben Frost とのコラボレーション作品も複数あり、今年後半にリリース予定だよ」

25年の経験を踏まえて、若いアーティストに贈るアドバイスとは?
「まず、最も共鳴する音楽やアートを追求すべきだね。結局のところ、音楽の制作や演奏できること自体が最大の報酬なんだから、あとは愛するものを創り続けるべきだよ。次に、諦めずに続けること。バンド Bent Knee の友人 Courtney Swain が “成功するバンドの秘訣は解散しないことだ” と教えてくれたね。言うは易く行うは難しだけど、続けるほどに芸術表現のスキルが向上し、新たな機会が拓けていくよ。
僕たちが成功を収めている大きな理由は、バンド内のトラブルや人生の責任、様々な障害にもかかわらず、常に友人として結束し、諦めずに努力し続けたことだと確信しているんだ。つまり、3曲リリースするのに6年かかったけどね(2年に1曲…笑)。過酷なプロセスで、時にはこれが終わることはないと感じることもあった。でも諦めず続け、今ようやく音楽が世に出る楽しい段階にたどり着けたんだ」
演奏できること自体が最大の報酬。そう、CAR BOMB はライブを愛しています。
「僕が最も好きなのは、ステージ上で全員が完全に調和し、非常に緊密に演奏している瞬間なんだ。その瞬間は、自分が何を演奏しているか考えず、音楽が独自の生命を帯びていくのを感じるよ。体は自動操縦状態にあるような至福の状態で、同時にPAから響く巨大な歓声と、観客の熱気を感じている。その感覚を言葉で表現するのは難しいけど、その感覚に浸ることは中毒性があるね…落ち着きとエネルギーが同時に感じられるんだ。
キャリアのハイライトとしてショーを選ぶなら、Hellfest のメインステージは本当に壮観だった…人波の前で演奏する経験は、まさに現実離れしたものだったから。でも、おそらく最大の節目と言えるのは、2014年に Meshuggah とツアーをしたことだね。ヒーローたちの前座を務めることは、信じられないほどの栄誉で、僕たちに “このバンドをどこまで連れていけるのか” と考えさせてくれたから」
しかし、CAR BOMB ももはやその Meshuggah と遜色のない伝説の位置にいます。
「Meshuggah のレコードはいつでも聴き返せる。Radiohead のレコードも、My Bloody Valentine のレコードも、Aphex Twin のレコードも。 恥ずかしながら、僕のリスニング時間の50%は Aphex なんだ。”OK Computer” や “Selected Ambient Works Vol.2” などを聴いたときのような感覚を味わえるような、1年に1回聴き返せるような、カタログの定番として僕らを聴きたいと思ってくれる人がいたら、それだけでいいなと思っているんだ」

参考文献: Amplify:Interview with GREG KUBACKI from CAR BOMB

decibelmagazine: car-bomb-interview

INVISIBLE ORANGE: Car Bomb

COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【SLEEP THEORY : AFTERGLOW】


COVER STORY : SLEEP THEORY “AFTERGLOW”

“Nowadays, Heavy Bands Have Flipped The Script, Making Music For Everyone’s Ears. You Might Be The Sort Of Listener Who Considers Themselves a Pop Fan, But You Could Turn On a Sleep Token Song And Enjoy It.”

AFTERGLOW

「僕たちはアートを作るためにここにいる。 みんなと同じでは何も始まらないからね」
SLEEP THEORY のフロントマン、Cullen Moore の最初の記憶は、リビングのソファーで父とボビー・ブラウンの反抗的なアンセム “My Prerogative” を一緒に歌ったことでした。”誰の許可も必要ない 自分で決断をする それが自分の特権だ”。
このマインドセットは、メタルの境界を破る SLEEP THEORY に結実しました。そのポップな滑らかさとR&B の野性味は前例のない共鳴、共感を呼んだのです。彼らはラジオを支配し続け、今後の大規模なフェスティバル出演が成功を確固たるものにしています。
「ガソリン・スタンドで止まった時、父が “SLEEP THEORY がこんなに大きくなるなんて考えたことある?” と聞いてきた。僕はただうん、と答えて父に “それは僕が決して小さくさせなかったからだよ” と伝えたんだ。僕は僕が関わるものに対しては、競争心が強く、決して自分の水準を下回ることを許さない。そのアティテュードがどこから来たのかは分からない。ただ、ずっとそうだっただけだ。それは他の人より “優れている” ことではない。誰かが何かを成し遂げるのを見て、自分がどれだけできるか試したいという意欲なんだ。SLEEP THEORY が既に到達したレベルに達していなくても、それが実現するまで努力を続けるだけだ」
Cullen のその自信には、作られた要素は一切ありません。 テネシー州とミシシッピ州の州境の南側で音楽に囲まれて育った彼は、その場所を親しみを込めて “メンフィシッピ” と呼びます。その背景が、彼の自信の大きな要因となっているのです。ブルースの発祥地であるビールストリート、メンフィス・ラップの誕生地である粗野な街、そしてエルヴィスのグレースランドの豪華絢爛な世界など、アメリカを象徴する多くのサウンドは、彼の家の玄関から車で 30 分圏内で生まれました。
「みんなは、僕がいつ歌えるようになったのか尋ねてくるけど、正直覚えていない。ただずっと歌っているだけなんだだ。それが唯一、僕ずっとできてきたことだから。父はいつも歌っていた。祖母も。叔父も。もう一人の叔父も。叔母も。大叔母も。僕たちは皆歌手だった。そして皆自然にやっている。人生で経験した多くのことにおいて、音楽が関与していた。そして、それは僕の人格の核心的な部分となった。歌が人生であることを疑ったことは一度もないんだ」

粒子の粗いVHSで父親の音楽ビデオを見たことが、Cullen が歌を職業として実現可能だと確信するきっかけになりました。両親は息子に良い育ちと彼が得るべき機会を与えるために努力しました。時には、勉学を優先して音楽を “プランB” にすべきだと奨励しましたが、それは決して彼の道ではなかったのです。
「12歳から音楽をやっている。そして14歳からスタジオにいる」
まずは、創造的な道を模索することが第一でした。Cullen にとってヒップ・ホップに手を出すことは魅力的ではなく、父親から受け継がれた純粋なR&Bのバトンを継ぐこともありませんでした。そうして彼は、人生のコントロールを握るという別の目標から父親の足跡をたどり、アメリカ軍に入隊しました。ミシシッピ州コリントを拠点とする警備隊での3年間、それは自己肯定感の向上と現実の厳しさを同時に感じた経験だったのです。
「あの瞬間を鮮明に覚えている。軍隊では、自分を正す必要があると感じるから入隊する人もいる。僕はバランスの取れた家庭で育った。悪い子供ではなかった。だけど、大学を中退し、自分がどこへ行きたいのか、何をしたかったのか分からない状態だったんだ。数歳年下の友人と将来の計画について話していた時、彼は軍隊に行くと言った。僕は人生で何をしたいのか分からなかったから、同じように入隊を決意したんだ。父には話さなかった。父が軍に行かせたがっていたことは知っていたけど、もしそれが気に入らないものになったら、彼のせいにするのではなく自分で決めたことだと言いたかったから」
軍での経験は強さを養い、Cullen は自信を磨きました。同時に、日本のアニメは “良い人間” になる手助けをしてくれたと語り、”Naruto” のタトゥーを腕に刻みました。
「僕は常に非常に意志の固い人間だった。非常に頑固で、自然に自分自身に自信を持っていた。しかし、軍隊を経験したことで、すでに制御不能な炎のように感じていたものがさらに強まったんだ。軍隊は僕に冷静な判断力を与え、本当に僕のパーソナリティを1000倍に強化してくれた。そして、忍耐とチームワークを教えてくれたんだ。もし時間を遡れるなら、再び入隊するだろうか?一瞬の迷いもなく、イエスだね!」

2023年初頭、SLEEP THEORY はまだ無名でした。 彼らのラインナップが固まったのはつい最近のことで、名前が決まったのはそのほんの数ヶ月前のことでした。新曲 “Another Way” の17秒のプレビューを気まぐれにTikTokに投稿したときは、ほとんど期待もしていませんでした。しかし、36時間以内に再生回数は50万回を記録し、新たなファンの軍団が続々と押し寄せてきたのです。
その瞬間が SLEEP THEORY の物語から切り離せないのはたしかですが、Cullen は彼らが “一夜の成功” と受け止められることには皮肉を感じています。なぜなら、2018年に軍を退役した彼は、それからずっと地元のプロデューサー、David Cowell と二人三脚で歩んできたからです。
「メタルのブルーノ・マーズになりたいと David に言ったんだ。僕は次に何をするのか全くわからないような、そういう明確なアイデンティティを持ったアーティストになりたかったんだ。 David はその時点でメンフィスで最高のプロデューサーだったと思うけど、まだ注目されていなかった。そして今、彼はプロデューサーとして、そして SLEEP THEORY はバンドとしてブレイクを果たした。彼の天才ぶりが注目されるのはいいことだ!」
最初の数年間はスタジオ・プロジェクトでしたが、2021年にベーシストの Paolo Vergara を迎え入れ、本格的に活動を開始しました。Paolo の紹介でドラマーの Ben Puritt が参加するようになり、素晴らしいシュレッダー/スクリーマーである Ben の弟 Daniel が加わったことで、すべてがかみ合いました。
「俳優、プロデューサー、撮影監督がいる映画を作るとしたら、僕は監督みたいなものかな。 ギターを弾くことはできないけど、物事を見て、物事を聞いて、すべてがどこに向かうべきかを理解することはできる。 また、他の人たちに仕事を任せるために、自分のやり方から離れるべきときも学んできた。 最初のころは、まだ物事を理解しようとしていたけれど、今は、よりよく動くマシーンになったよ」

Cullen にとって、自身の作品にラベルを付けるプロセスは難しいものでした。他のバンド名として “Monolith”(暗すぎる)と “Wavelength”(ポップすぎる)を却下し、オンラインで科学用語を閲覧していた際に、”Sleep Theory” に決めました。
「これが正しいと感じる。口に馴染む。重すぎず、軽すぎず」
2023年にEpitaphからリリースされた “Paper Hearts” はEPでしたが、その6曲に費やされた時間と努力は、それ以上のものを感じさせる作品でした。そうして、David のSupernova Soundスタジオ(メンフィス北東部)と往復しながら “Afterglow” のレコーディングを行った Cullen は、これがそのEP以上の決定的な声明である必要があると悟ったのです。
「”Afterglow” は “Paper Hearts” の続きから始まる。情熱的だが最終的に抽象的な感情の枠組みで、僕たちがこれまで語ってきたストーリーに終止符を打つものだ。愛する誰かと共に多くのことを経験したにもかかわらず、まだ “私とあなた” の間で迷っている感覚を捉えているんだよ。その余韻—アフターグロウ—は僕をまだ悩ませているんだよ。そこには個人的な経験が含まれているけど、それは僕だけに限定されたものではない。このバンドのどのメンバーからも、または僕たちのプロデューサーからも来得るもの。もちろん、スタジオに入って “さあ、愛について話そう!” と言ったわけではないけど、アルバムの曲は共感できるものにしたいと思っていた。誰もが失恋を経験するので、意識的か無意識かに関わらず、そのことを書いたんだよ」
ヒップホップのビートとエレクトロのアトモスフィア、メタルコアの咆哮とR&Bの官能性が融合し、刺激的な作品を構成。緊張感あふれるアドレナリンの爆発、脆い切なさ、魂を揺さぶるカタルシスの瞬間を織り交ぜるアルバムは実にユニークです。例えば “Hourglass” は、A Day To Remember の全盛期を思わせるポップ・パンクとメタルコアの融合。”Stuck In My Head” は、失恋の物語に巨大なフックを埋め込んで煮詰めた共感の一曲。EPからの継続曲 “Numb” はアンセムで、”壊れた夢の目を覗き込む / 縫い目が裂けた新たな計画” と挑発的に歌っていきます。

しかし、最も心に響くトラックは、新曲 “III”(「スリーズ」と発音)でしょう。バンドから奪われた何かが “想像し得る最悪の形で汚された” というストーリー。その耳に残るフックと楽曲の成功は、彼らにとって最も満足のいく復讐となるでしょう。
「人生に酸っぱいレモンを与えられたら、そこからレモネードを作ればいい。そんな悪い経験をしても、それをヒット曲に変えればいいんだ!」
正直さと純粋なビジョンが全て。たとえそれが、彼らの成功が SNS の “バズ” から始まったとしても。
「僕は “TikTokアプローチ” をただ受け入れるつもりはない。トレンドには興味がないんだ。一時的なバズのためにここにいるわけじゃない。みんながやっているなら、僕はやりたくない。TikTokダンスをしたり、他所でよく見かけるような目立つためのクリップを作ったりする人間にはならない。それではただ、大衆に迎合するだけだ。
「”Another Way” の最初のティーザーでも、それは “夏のTikTokソング” を目指すことではなく、僕たちが目指すよりプロフェッショナルなイメージを確立するためだった。僕はTikTokの基準に妥協しない。僕たちはコメディアンになるためにここにいるのではない。アートを作るためにここにいる。それは他の人と同じ場所から始まるものではない」

Cullen には説教臭さも不自然な派手さもありません。急速に成功を収めたアーティストとしては、驚くべきほど傲慢さがないのです。そうして論理、問題解決能力、そして抗いがたい自然な好奇心が存在します。彼は、SLEEP THEORY の急激な上昇だけでなく、より広範な盛り上がるオルタナティブ・シーン全体、そして SPIRITBOX から SLEEP TOKEN まで新たなリーダーたちにも焦点を当て、変化の潮流を見据えています。
「昔の Bring Me The Horizon は、好きか嫌いかの二者択一だった。しかし、最近の新しい Bring Me The Horizon には、多くの異なる要素が絡み合っていて、多くの人々がその中から気に入るものを見つけることができる。歴史は繰り返す。2009年ごろ、ヒップ・ホップとポップが真のブームを迎えていて、ロックはその波についていけなかった。ほとんどのアーティストは、この音楽を幅広い層に受け入れられるようにする努力をしていなかった。もしそうしていたなら、彼らは Thirty Seconds To Mars や Imagine Dragons のようなカテゴリー(ポップサウンドを直接取り入れた)か、Kings Of Leon のようなバンド(ポップな曲作りを重視した本格的なバンド)に分かれてったはずだ。適切なバンドがとてもポップな感覚を学んでね。でも、実際はヘヴィなメタルコアやスクリーモのジャンルに入ると、それははるかに “好みが分かれるもの” だった。
でも現在、ヘヴィなバンドは方針を転換し、誰もが楽しめる音楽を作っている。ポップ・ファンを自認する聴き手でも、SLEEP TOKEN の曲を聴いて楽しむことができる。感情の幅も広くなっている。悲しみや暗いテーマばかりではなく、より共感できる内容で、古いバンドが扱っていた感情の幅を捉えているんだ」

“Stuck in My Head “の野外アコースティック・パフォーマンスにも彼らのポップ・センスが現れています。
「アコースティックで曲を歌うのが大好きなんだ。 このプロジェクトの背景にあるアイデアは、ヘヴィなギターをすべて取り除けば、ポップな曲になるということなんだ。 どんなメタルやロックの曲でも、アコースティック・ヴァージョンを作れば歌えるんだ。
この曲のライティングやメロディが、ポップ・ソングとして問題なく成立させているんだと思う。 もしカントリー・アーティストが “Stuck in My Head” をカヴァーしたら、間違いなく完璧に歌いこなせるだろう」
あの BACKSTREET BOYS でさえ、彼らの栄養となっています。
「”Static”のビデオ撮影で “I Want It That Way” を4人で歌った。バンの中でみんなで歌ってるけど、まあリハーサルするようなことじゃないよ。 ただ歌い始めるだけ! ミュージックビデオの撮影で、僕が “You are my fire/The one desire” と歌い始めたら、他のみんなも歌い始めた。 だからインスタグラム用にちょっと作ったんだ」
あの伝説的なバンドも彼らの一部となっています。
「どのバンド・メンバーも、演奏や作曲に関して最も影響を受けたアーティストがいる。だけど SLEEP THEORY のサウンドに関して言えば、LINKIN PARK は僕らの音楽を形成する上で重要な役割を果たした。サウンドだけでなく、曲作りへのアプローチやオーディエンスとのつながり方にも影響を与えている。 多様性を受け入れること、純粋な感情を表現すること、サウンドで実験すること、そして自分独自の芸術的な声に忠実であること…それはロックとオルタナティヴ・ミュージックの世界に忘れがたい足跡を残したバンドの影響を反映しているんだ」

BEARTOOTH と共に大規模な会場でライブを敢行し、WAGE WAR から NOTHING MORE, HOLLYWOOD UNDEAD まで、あらゆるバンドとステージを共有してきた SLEEP THEORY は、現在のヘヴィ・メタル界のトップクラスと肩を並べる能力を証明してきました。それでも、Cullen は青春時代聴いていたバンドを参考に、自身の道を模索しています。3つのフェイバリットを挙げるよう促されると、彼はさらに多くのバンドを挙げていきました。
「LINKIN PARK, FALL OUT BOY, PARAMORE と言えるかもしれない。でも DISTURBED, THREE DAYS GRACE, SAOSINとも言える。または WOE IS ME, DANCE GAVIN DANCE とも言える。僕にとって、一つに絞るには変数が多すぎる。難しいよ」
まず第一に、Cullen は音楽のファンであり、バンドのファンなのです。だからこそ、自分のバンドに対して他人が感じるファン心を、彼は最も誇りに思っています。たしかにストリーミング指標やチケットの売上は SLEEP THEORY の成功の一端を示すかもしれませんが、人間同士のつながりの電気のような力は、名声や富よりも価値があると信じています。
「”大きなバンド” になることは、人々の心を動かすことだ。それはほんの少しかもしれないけど、人々の生活を変えることだ。SLEEP THEORY の変化に気づいたのは、あるコンサートでのことだった。僕よりずっと年上の男性が写真撮影を求めて近づいてきた。彼が震えているのに気づき、大丈夫ですかと尋ねた。彼は “ヒーローに会うから緊張している” って。音楽が人々に影響を与えていることは知っていたけど、その瞬間、本当に実感したんだ。理解するのが難しかったよ。僕は人生のほとんどを、僕より年上の人々を尊敬してきたけど今や、僕より長く生き、多くの経験を積んだ人々が、僕を尊敬していると言っているんだからね!」
結局、最も重要なのは自分自身を満足させることです。様々な影響の中でも、Cullen はアトランタのメタルコアの先駆者 ISSUES、特に2019年のランドマーク作 “Beautiful Oblivion” を、最も模倣したいテンプレートとして挙げています。彼にとってこれは完璧なアルバムであり、自身のキャリアの終着点として無駄な曲の影も残さないことを理想としています。
「僕はマイケル・ジャクソンのようなアーティストを聴きながら育った。だから、これで十分だと言うような人間にはならない。平均的な曲は欲しくない。ただやり過ごすための曲も欲しくない。人々が僕のカタログを見て “素晴らしいけど、あの曲はもっと良くなれたはず…” と言うような曲も欲しくない。そして、ファンが聴きたいものを作りたいとは思っているけど、自分が作りたくないものは絶対に作らない。
人々はアーティストが聴き手に合わせるという考えに慣れすぎている。僕は誰にも合わせないよ。自分のやりたいことをやる。自分自身に忠実なだけだ。それに共感するかどうかはリスナー次第。僕は決して他人の気まぐれに屈しない。合わせることができない。それが本当に僕の本質だから」


参考文献: KERRANG!:Sleep Theory: “We’re here to make art. That does not begin with being the same as everybody else”

REVOLVER:TORNADOS, TIKTOK AND THE TRUTH: SLEEP THEORY TALK HIGHLY ANTICIPATED DEBUT ALBUM ‘AFTERGLOW’

LOUDWIRE: SLEEP THEORY INTERVIEW

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【LUX TERMINUS : CINDER】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH VIKRAM SHANKAR OF LUX TERMINUS !!

“Trying To Make Heavy Music With No Guitars Is a Creative Challenge That Requires Creative Solutions, Which Is a Lot Of Fun.”

DISC REVIEW “CINDER”

「芸術的に言えば、ギターがないという制約があることはとても充実したことだと思う。実は僕はギターの音が絶対的に好きだし、好きなミュージシャンの多くはギタリストだ。それでも、ギターを排除することで、キーボードが “音の混沌” に埋もれてしまうことがなく、繊細さや美味しさを堪能する余地が生まれる」
LUX TERMINUS とは、ラテン語で “終わりの先の光” を意味します。そう、このバンドは過去のプログのトンネルの先にある光に違いありません。バンドの中心人物は Vikram Shankar。そう、2010年代後半、シーンに彗星のごとく現れた若き鍵盤の魔法使いこそプログ世界の希望。
あの歌聖 Tom Englund との美しすぎるデュオ SILENT SKIES でネットから現実へと飛び出した Vikram は、すぐにその優れたテクニック、音楽教育を存分に受けた知性、研ぎ澄まされたメロディの感覚、音楽を俯瞰して見る眼差しが認められ、REDEMPTION や PAIN OF SALVATION といったこの世界の鬼才にして重鎮にとってなくてはならない存在となりました。
彼がプログ世界の希望である理由。それは彼の音楽に対する優れた才能、真摯な態度だけではなく、鍵盤をその武器に選んでいるから。かつて、プログやメタル世界の華のひとつだったキーボード・ヒーローは今や絶滅寸前。しかし、その繊細さや多彩な色彩は決して滅びてはならない天然記念物。Vikram はこの LUX TERMINUS で、PLINI, INTERVALS, David Maxim Micic といった愛するギターヒーローの哲学をキーボードで再現して独自に進化させ、ギター全盛のシーンに選択肢を増やそうとしているのです。
「ギターがない状態でヘヴィな音楽を作ろうとするのは、創造的な解決策を必要とするクリエイティブな挑戦であり、それはとても楽しいことなんだ。LUX TERMINUS は、おそらく SILENT SKIES と最も共通点があると思う。主に、シネマティックな色合いという意味でね。僕たちは、サウンド・デザインを織り上げていくようなアプローチや、深く思慮深い雰囲気を作り出すための音の実験が大好きだからね」
ギターレスのDjent。LUX TERMINUS の原点はそこにあります。重量感マシマシ、ギターありきのDjentにキーボードで切り込むその心意気こそプログレッシブ。Vikram はアルバム “Cinder” の中で、そのミスマッチに様々な創造的ソリューションで挑んでいきます。
もちろん、ARCH ECHO のようなキラキラの Fu-Djent も一つの解決法でしょう。幾重にも重なった光のキーボードと複雑重厚なリズムが織りなすディズニー・ランドは完璧なエンターテイメントとなり得ます。SLEEP TOKEN のポップな電子メタルも、DIRTY LOOPS のファンキーなリズムも彼らは飲み込み咀嚼します。しかし Vikram の企みはそこだけにとどまりません。
「特に久石譲のジブリ映画の音楽には大きな影響を受けているよ!また、僕は尺八を持っていて、レベルの高い尺八の演奏に心から魅了されているんだ。そうした名人たちには遠く及ばないけど、それでも “Neon Rain” (三味線や箏の演奏もある)のバックで尺八を僕が吹いているんだ。他にも、驚くべきソースがあってね。ポケモン・アルセウスのサウンドトラックに収録されている、特にジュビレシティーのテーマとかね。僕は日本の “音楽言語” がとても好きなんだ!」
Vikram の生み出す音楽はよりコズミックで、映画的で、未来的。Espera という優れたボーカル集団と紡ぐ “Jupitor” 三部作で私たちはインターステラーやスターフィールドといった壮大な映画やゲームの世界へと旅立ち、かの Ross Jennings と Jorgen Munkby を起用した “Catalyst” では CHICAGO や THE POLILE が映画やドラマの主題歌に使われていたあのアーバンでポップな80年代を再訪します。
そして何より Vikram がこのアルバムで大切にしたのが日本とのつながりでした。PAIN OF SALVATION の来日公演で愛する日本を訪れ、様々な都市を訪問した彼はこの国の人や風景の優美に感銘を受けます。尺八や三味線、琴を使用した “Neon Rain” はまさにその感銘が投影された楽曲。そうしてアルバムを締めくくる “Natsukasii” で Vikram はジブリの世界観とメタルを見事に融合させていきます。ノスタルジーと情景、壮観。彼が LUX TERMINUS で目指したものは、素晴らしくここに投影され、確かに鍵盤でなければ実現できない未曾有の景色で、未来へのプログレッシブな窓でした。
今回弊誌では、Vikram Shankar にインタビューを行うことができました。「最近のプログレッシブ・ミュージックには、メタルだけでなくフュージョンやジャズの文脈で活躍する優れたキーボーディストがたくさんいると思うけどね。とはいえ、キーボードの “旗手” のような存在になって、キーボードでどれだけ多彩で奥深い表現が可能かをアピールするできるとしたら、それはとてもやりがいのあることだと思うよ」 どうぞ!!

LUX TERMINUS “CINDER” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【LUX TERMINUS : CINDER】

COVER STORY + INTERVIEW 【MORBID SAINT : SPECTRUM OF DEATH】JAPAN TOUR 25′


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JIM FERGADES OF MORBID SAINT !!

“We Are Humbled By The Fact That a Little Album We Wrote So Long Ago Has Been Embraced By So Many From So Far. We Thank You And Look Forward To Seeing You All!”

DISC REVIEW “SPECTRUM OF DEATH”

「自分たちや他のバンドが成功したかしなかったかについて、失望したりうらやんだりすることはなかったよ。僕たちはただ自分たちのやりたいことをやり、バンドが終わったら終わったものは仕方がないって感じだった。バンドを始めたときはとても若かったし、年齢を重ねるにつれて私生活も変わっていった。家族を養うためにお金を稼ぐことが、音楽を作ることよりも重要になる時が来るんだよな」
人はいつまで夢を追えるのでしょうか?人生とは無情なもので、夢を叶えられる人はごく僅かです。私たちは必ず歳を重ね、人生のステージが進むと共に夢と同じくらい大切なものもまた増えていきます。誰もが一度は、”諦める” という選択肢や決断と向かい合う時がきます。とはいえ、人生は一度きり。せっかく大きな夢を持ったなら、それを実現したいと願うのもまた人の性でしょう。
ウィスコンシン州シボイガンで青春時代を過ごした MORBID SAINT もまた、夢と生活を秤にかけ、一度は “諦める” という選択肢を選んだバンドでした。80年代後半から90年代前半にかけて、ヘヴィ・メタルの世界には “アルバム一枚だけ” をリリースしてフェイド・アウトするバンドが実に多く存在したのです。メタルの日差しが翳る中で、自然と淘汰されていくのもまた運命。むしろ、アルバムを一枚だけでもリリースできて、歴史に名を刻めた幸運を噛み締めるべきなのかもしれませんね。とはいえ、MORBID SAINT のように長い月日を経て復活する稀有な例もあります。
「2010年ごろから、オンライン上で “Spectrum of Death” がかなりの支持を集めていることがわかり始めたと思う。そしてそれは、僕らにとって本当に驚きだったんだ!このアルバムは、最初にリリースしたときはあまりうまくいかなかったんだけど、今のように成長した姿を見るのはとてもエキサイティングなことなんだ」
MORBID SAINT の数奇な運命が動き始めたのは、SNS が普及し日常となった2010年頃でした。大手メディアの注目など集めたこともなかった “死んだ” バンドの話題がポロポロとメタル・コミュニティの中で語られるようになったのです。SNS の使用には一長一短がありますが、光の当たらない才能を発掘できるのは確実にこの場所の強み。
そして実際、アグレッション、スピード、テクニックを兼ね備え、スラッシュとデスメタルの架け橋と謳われる MORBID SAINT の才能は SNS の “共感” によって日の目を見ることとなったのです。そうして彼らは復活を決めました。SNS によってつながった、メタル・コミュニティの共感力によって。
「初の来日公演にとても興奮しているよ!ようやく東アジアのファンのために演奏し、会えることができて光栄だね。 東アジアのファンのために、”Spectrum of death” の完全再現と “Destruction System”, “Swallowed by Hell” からの曲を演奏することを楽しみにしているよ。 ずいぶん前に作った小さなアルバムが、遠く日本のこんなに多くの人に受け入れられているという事実に、僕たちは身が引き締まる思いだよ」
そうして、ウィスコンシンの小さなバンドが生み出した小さなアルバムは、いつしか多くの場所、多くの人のかけがえのない大きな宝物となり、ずいぶんと遠回りになりましたが MORBID SAINT は夢を叶えました。”諦めなければ夢は叶う” などとよく言われますが、人生はきっともっと複雑で無慈悲。しかし、一度は諦めたとしても全力を注いだ何かがあれば、きっといつかはこうした幸運が舞い込むものなのかもしれませんね。
今回弊誌では、ギタリスト Jim Fergades にインタビューを行うことができました。「DEATH とは確か3公演しか一緒にやらなかったけど、一緒にやったときに Chuck と一緒に過ごすチャンスはあった。彼はとても実直で、純粋にいい人だった。 彼とバックステージで音楽の話ができたことを光栄に思うよ」 どうぞ!!

続きを読む COVER STORY + INTERVIEW 【MORBID SAINT : SPECTRUM OF DEATH】JAPAN TOUR 25′

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SIGN OF THE WOLF : SIGN OF THE WOLF】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TONY CAREY OF SIGN OF THE WOLF !!

“In The Original Era, 60s, 70s, and 80s, The Music Was New And The Style Was Being Invented. It’s Now 50 Years Later For Me – I Joined Rainbow In 1975 – And The Bands I Hear Today Aren’t Inventing Anything. That’s The Difference.”

DISC REVIEW “SIGN OF THE WOLF”

「Ronnie の声?まさに最高の一人だよ。人として?彼は僕より14歳年上で、叔父さんのような存在だった。Ronnie も Wendy Dio も素晴らしい人たちだったし、彼は僕と同じアメリカ人だったからね。僕はイギリス人ミュージシャンと仕事をしたことがなかったから、バンドにもう一人アメリカ人がいたことは大きな助けになったんだよ」
70年代/80年代を象徴するハードロックについて語るとき、RAINBOW の “Rising”、BLACK SABBATH の “Heaven And Hell”、DIO の “Holy Diver” が挙がることは間違いないでしょう。共通項はもちろん、伝説のボーカリスト Ronnie James Dio の存在。彼の歌声、彼の魔法、彼のファンタジーが失われて久しい2025年の暗闇に虹をかけるような傑作が、Ronnie を愛する人々の手によって生まれました。SIGN OF THE WOLF。彼の掲げるメロイック・サインに集いし者たち。
「オリジナルの時代…60年代、70年代、80年代は、音楽が新しく、スタイルが発明がどんどん発明されていった。僕は1975年に RAINBOW に加入したんだ。それから50年が経って…今僕が耳にする新しいバンドは何も発明していない。それが違いだと思うよ」
この美しいプロジェクトは、Firework Mag の Bruce Mee の発案で始まりました。”Tarot Woman” のイントロ、Tony Carey の幽玄神秘なキーボードが彼をハードロックに引き込み、Ronnie の圧倒的な歌声に忠誠を誓いました。そうして長年音楽業界に身を置く中で、今回のインタビューイ Tony Carey と同く、現代のハードロックにどこか物足りなさを感じるようになったのです。かつての、個性的で、音楽の発明が各所に散りばめられた壮大なるメロディの園を甦らせたい。そうして彼は Tony Carey をはじめ、温故知新で才能豊かなアーティストを集めることに決めたのです。
「このプロジェクトにはたくさんの才能があるし、僕はとにかく、Doug Aldrich と Vinnie Appice と一緒にやってみたかったんだ」
ドラム・キットの後ろには、”Mob Rules” や “Holy Diver” など数多のマイルストーンでエンジンとなった Vinnie Appice が鎮座し、Chuck Wright や Mark Boals といった名手とタッグを組みます。リード・ギターは Doug Aldrich。ご承知の通り、WHITESNAKE に再び魂を込め、DIO を復活に導いたカリスマにして、真のギターヒーロー。
もちろん、Ronnie James Dio の歌声は誰にも代えられませんが、ここでは全曲に Andrew Freeman が参加。Vivian Campbell が DIO を受け継ぐ LAST IN LINE (“Ⅱ” の素晴らしさは筆舌に尽くしがたい) でボーカルを務める Andrew の実力は本物。良い意味で “ジェネリック・ディオ” ともいえる彼のキャッチーな力強さは、SIGN OF THE WOLF の音楽に真のフックと重厚さを与えています。そこに、Doug や Vinnie と演奏をしてみたかったと語る RAINBOW のレジェンド Tony Carey が合流。絶対的なハードロックの金字塔がここに誕生しました。
「”Rising” がこんなに長く愛されていることに驚いているよ。たいていのレコードは2~3年で忘れ去られてしまうものだからね。”Rising” はほとんど50年も人々の記憶に残っているんだから」
実際、Tony の参加した “The Last Unicorn” や “Rage of Angels” では、まさに “Tarot Woman” や “Stargazer” が放っていた神秘的で荘厳なロックの魔法が降臨しています。まだ鍵盤がロックの中心にいた虹色の時代。ただし、アルバムは RAINBOW のみならず、”Arbeit Machat Frei” では THIN LIZZY を (まるで Doug の BAD MOON RISING の3rd のようでもある)、”Silent Killer” では DIO を、そして壮大なタイトル・トラックではあの名曲 “Heaven and Hell” をも探訪して、ロックやメタル、その革命の炎を今でもあかあかと燃やせることを証明するのです。Steve Mann や Steve Morris, Mark Mangold の美学が炸裂するメロディックな楽曲もまた素晴らしい。
今回弊誌では、Tony Carey にインタビューを行うことができました。「実は、RAINBOW のライブは、スタジオでの RAINBOW とはまったく違っていたんだ。コンサートではハモンドをたくさん弾いたけど、レコードではほとんど弾かなかった。”Rising” と “Long Live Rock and Roll” のレコードは、ハモンドの代わりにギターのオーバーダブがほとんどだったんだ。だから僕たちのライブ・サウンドはスタジオとはとても違っていて、そのライブ・サウンドこそが僕にとっての RAINBOW だったんだ」本物にしか作りえない本物のハードロック・アルバム…Dio といえば “Dehumanizer” の再評価も進んで欲しいと祈りながら…どうぞ!!

SIGN OF THE WOLF “S.T.” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SIGN OF THE WOLF : SIGN OF THE WOLF】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ANCIENT DEATH : EGO DISSOLUTION】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JERRY WITUNSKY OF ANCIENT DEATH !!

“Pink Floyd’s My Biggest Influence. I Picked Up a Guitar When I Was 4 Years Old Because Of David Gilmour From Watching Pink Floyd Live at Pompeii. So My Natural Style Is Just Things I Picked Up From Listening And Watching Him.”

DISC REVIEW “EGO DISSOLUTION”

「ATHEIST, CYNIC, DEATH…ANCIENT DEATH はこれらのバンドなしでは存在しなかっただろう。僕がそうした “グループ” を知ったのは、10歳か11歳の頃だった。当時クールだった “トレンド” の枠を超えて、より傷つきやすく内省的なところから曲を書くことで、個人として、ミュージシャンとして、自分らしくいられることを教えてくれたんだ。その体験は文字通り、僕の世界を変えた。僕は今年28歳になるけど、彼らは今でも当時と同じくらい僕にとって重要な存在だよ」
真の芸術は時の試練をものともせず、時代を超え、そして受け継がれる。メタルコアや Djent 直撃世代の Jerry Witunsky は、そのトレンド以上に探求すべきプログレッシブなデスメタルの審美と人間味に魅了され、情熱を注ぎ、ついには日本で愛するバンド ATHEIST の一員としてライブを行うという夢を叶えようとしています。その夢の実現のために大きな助けとなったのが、彼の世界観を体現した ANCIENT DEATH だったのです。
「”Ancient Death” という名前は僕らにとって実に意味があるんだ。それは、僕らの曲 “Voice Spores” の歌詞にある。ここで基本的に語っているのは、今は否定が否定を生み、それが僕たちを互いに分断しているということ。僕たちの見解では、否定性こそが人と人とのつながりにおける古き良き “古代の死” なんだよね」
憂鬱、悲しみ、心の平和、自己成長といったテーマを探求することで、ANCIENT DEATH は、人々がやがて自分自身にも他人にももっと優しく、寛容となり、共感できることを願っています。SNS では他者を否定し、断罪し、攻撃して溜飲をさげる行為が当たり前となった現代。彼らはそんな時代を古き良き “古代の死” と命名しました。デスメタル世界の “つながり” によって夢を叶えた Jerry は、心と魂のつながりの強さを信じています。つい最近、地球上で最も影響力のある人物が共感は “西洋文明の根本的な弱点” だと言及したばかりですが、だからこそ彼らのデスメタルはそうした合理主義に反旗を翻していきます。
「PINK FLOYD に一番影響を受けたっていうだけなんだ。彼らの “Live at Pompei” を見て、David Gilmour の影響で4歳のときにギターを手にしたんだからね。だから僕の自然なスタイルは、彼の演奏を聴いたり見たりして得たものなんだ。また、サウンドトラックの大ファンで、特に宮崎駿監督の映画は大好きで、1作を除いてすべて久石譲が手掛けているよね。僕にとって音楽とは、解放の場なんだ。誰かに何かを “感じさせて”、違う場所に連れて行く…それこそが美しいことだよ」
ANCIENT DEATH の音楽は、メタルを別次元に誘った80年代後半から90年代前半の、プログレッシブで実験的なデスメタルの鼓動を宿しています。しかし、オールドスクールなデスメタルに正直で真っ直ぐでありながらも、決して過去の焼き直しだけには終わりません。音楽を先に進めることこそ、彼らが先人から受け継ぐ美学。彼らがほんの数秒前まであった場所とは全く違う方向へと聴く者を連れて行くような、豊かなサウンドの雰囲気を作り出した時の驚きは、決してあの BLOOD INCANTATION に負けるとも劣らず。
90年代、DEATH や CYNIC が開拓したデスメタルの実験は、オフキルターなリズム、脈打つベースライン、幻覚的なギターの響きで、さながら THE DOORS や PINK FLOYD が見せる精神的な深みへと移行していきます。時折歌われるクリーンな祈りは、濃い瘴気の中で聴く者に手を差し伸べる静寂の声。
常に移り変わるムード、複雑なドラム・パターン、不可解な拍子記号がジグソーパズルのように組み合わさったアルバムは、それでも “Ego Dissolution” エゴを捨て去りすべてをアートとデスメタルのためにのみ捧げられています。だからこそ彼らは、ゴア描写や反宗教的な歌詞にこだわるのではなく、デスメタルらしい安っぽさや陳腐さを感じさせることもなく、私たちの感情の内面や魂の本質を探る、より深いトピックに踏み込んでいくことができたのです。
今回弊誌では、Jerry Witunsky にインタビューを行うことができました。「Rand Burkey は、僕にとってメタル界で最も影響を受けたギタリストだろう。彼のソロとメロディーは他のギタリストにはないものだった!14歳の頃、寝室で彼のパートをかき鳴らし、まるで自分が書いた曲のように人前で演奏することを夢見ていた僕が、実際にステージに立って彼らとまさに同じ曲を演奏しているなんて!デスメタル世界の心とつながりは、とてもパワフルなものだよね」 どうぞ!!

ANCIENT DEATH “EGO DISSOLUTION” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ANCIENT DEATH : EGO DISSOLUTION】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SNOOZE : I KNOW HOW YOU WILL DIE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH LOGAN VOSS OF SNOOZE !!

“The More People Are Inundated With Instant Gratification, The More It Becomes Impactful When Something Comes Around That Was Worked On Really Hard. I Think The Pendulum Is Beginning To Swing The Other Direction.”

DISC REVIEW “I KNOW HOW YOU WILL DIE”

「アートが消費され、”コンテンツとなった芸術” の時代である今、より多くの人々が、よく練られ、愛のこもった作品で、時代に左右されずに存在する音楽、芸術、アイデアを求めているのだと思う。人々が即座に満足できるインスタントなものが溢れれば溢れるほど、情熱をかけて心から一生懸命取り組んだものが世に出たときの衝撃は大きくなる。より多くの人々が、自分の意思をあまり持たずスマホに釘付けになることに不満を感じ、振り子が反対方向に振れ始めているんだと思うよ」
アートが消費される “コンテンツ” となった現代。人々はさながら SNS を一瞬賑わせ、そしてすぐに忘れ去られていく日々のニュースのようにアートを消費し、放流していきます。しかし本来、芸術には “永続性” が備わっているはず。本来のアートは時代を超えて愛されるべきでしょう。そうした意味で、シカゴの “ハッピー・ヘヴィ・マスロック” SNOOZE の音楽はさながらスマホのアラーム、あの “スヌーズ” 機能のように、時が過ぎても何度も何度もリスナーの心を目覚めさせていくはずです。
「ヘヴィな歌詞の内容とヘヴィ・メタルに影響を受けた音楽的要素が、とても楽観的なコード進行の選択と組み合わさって、楽しい認知的不協和を生み出しているように感じるよ」
複雑怪奇な変拍子を操る SNOOZE の最新作 “I Know How You Will Die” が4/4日にリリースされた事実がすでに、彼らのニヒリズムと知性が生み出す二律背反を見事に表現しています。たしかに SNOOZE はハッピーなマスロック・バンドですが、同時にヘヴィなプログレッシブ・メタルでもあります。その怒りと幸福、ヘヴィとキャッチー、実験と正統をまたにかけるダイナミズムの妙こそ、彼らが情熱を注いだアート。
「若いメタルヘッズだった僕たちは、テクニカルさと名人芸に取り憑かれていたような気がする。それからマスロックに出会ったとき、それと同じ波動を感じたような気がしたんだ。だから、それを掘り下げていくと、より多くの非常識なバンドを見つけることができた。 でも最近の僕たちは、可能な限りテクニカルなこと(考えすぎること)を探すのをやめて、意味のある、感情的な音楽に傾倒していると思う。だからよりメロディックな音楽の中に濃密なリズムのアイディアを取り入れる人がいると、いつも嬉しくなるよ」
またにかけるのは光と闇だけではありません。エモ/ポップ・パンクのヴォーカル・センスをヒントに、マスロック、プログレッシヴ・メタル、ポスト・ハードコアをブレンドした、大胆かつ折衷的な旋風こそ彼らの真骨頂。 最も際立っているのは、それぞれのジャンルをシームレスに行き来しながら、独自の色と説得力をもって主張する彼らのアイデンティティでしょう。BETWEEN THE BURIED AND ME が見せるようなボーカル・ハーモニー、その実験的な使い方も、SNOOZE の複雑な楽曲に驚くほどの色彩と感情をもたらしています。彼らの創意工夫を前にして、スマホに齧り付くことはできません。振り子の針は逆側に触れ始めました。
今回弊誌では、ボーカル/ギターの Logan Voss にインタビューを行うことができました。「当時は VEIL OF MAYA をよく聴いていて、ギターを初めて弾いた曲のひとつでなんと “It’s not Safe to Swim Today” を覚えようとしたんだ。YouTube の黎明期には、バイラルになる動画は限られていたので、初期の ANIMALS AS LEADERS のミュージックビデオを見たとき、みんなが度肝を抜かれたのは間違いないよね!」 どうぞ!!

SNOOZE “I KNOW HOW YOU WILL DIE” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SNOOZE : I KNOW HOW YOU WILL DIE】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SLEEP PARALYSIS : SLEEP PARALYSIS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH STEPHEN KNAPP OF SLEEP PARALYSIS !!

“I Really Like Using The Pianos Percussiveness, It Can Add a Lot To The Rhythm Section In Different Ways While Also Providing Harmony And Accents, Plus Slamming Loud Dissonant Chords Sounds Sick As Fuck Over Blast Beats.”

DISC REVIEW “SLEEP PARALYSIS”

「ピアノのパーカッシブさを使うのがとても好きなんだ。ハーモニーやアクセントを提供しながら、リズム・セクションにさまざまな形で多くのものを加えることができるし、ブラスト・ビートの上で大音量の不協和音を叩きつけると、最高に気持ち悪いサウンドになる。 ピアノは曲の緊張感を高めるのにとても効果的だし、クラスターコードはサウンドに違う色を加えるのに遊んでいていつも楽しい」
メタルにおいてピアノの響きは過去のものになりかけています。キーボードにしても場所をとりますし、ギターの可能性が広がるのと比例して、ピアノの出番はどんどん少なくなっていきました。しかし、本当にメタルからピアノは消え去るのでしょうか?ピアノの打楽器的な力強さ、一方で両の手で組み立てる繊細さと旋律の妙はやはり唯一無二のものでしょう。SLEEP PARALYSIS をひとりでとりしきる Stephen Knapp はそんなピアノの可能性をブラックメタルで再度呼び起こします。
「MIDIですべてを書き込んで、どんな音がするかすぐに調整できる汎用性が気に入っている。それに、自分の思い通りのサウンドにするために、必要に応じてダイナミクスを調整できるのも魅力だ。メタル・コミュニティでは、楽器をプログラミングすること(特にドラム)は簡単な方法だという汚名があるように思う。とはいえ、実際にドラムやピアノを演奏してレコーディングするのと同じくらい難しいとは言わない。最終的には、自分のビジョンを完全に実現し、目指すヴァイブを達成するためのツールでしかないからね」
面白いことに、Stephen はピアノが弾けるにもかかわらず弾いていません。すべてをプログラミングで入力しています。なぜなら、彼には思い描いた音楽の確固たるビジョンが存在するから。NEURAL GLITCH もそうですが、若い世代のアーティストにとってはプログラミングもまた楽器のひとつ。自らの理想を実現するためには、むしろ “入力” という正確な手段の方が彼らにとっては必要だったのです。
「大学時代、睡眠時間がめちゃくちゃで、慢性的な睡眠不足に陥っていたとき、よく金縛りになったんだ。 このアルバムのために最初に書いた “Sleep Paralysis” という曲は、僕が初めて金縛りになったときのことを音楽的に解釈したもので、どこにでもいるような金縛りの影鬼が僕の上に乗っていた」
そんな Stephen がブラック・ピアノ・メタルの実験場に選んだテーマが “金縛り” でした。実際、この悪夢のようなオデッセイの上演にこの主題は完璧でしょう。陰湿に渦巻く不協和音。恐ろしいほどスリリングな混沌。聖歌隊に狂気のラグタイム、ホラー映画、任天堂の怪奇ゲームに重なるドゥビッシーやラベル、ショパンのファンタズマゴリア。不吉で威圧的で猛烈に突き進むこの悪夢の錯乱状態に、ピアノのアタックやサスティナーはあまりにも完璧にフィットしています。
そう、このアルバムはリスナーを恐怖と不安で冷や汗の渦に引き入れ、PTSD ストックホルム症候群の湧き上がる疑念が押し寄せる中、それでももう一度アルバムの再生ボタンを押させる日本の怪談のような不気味な中毒性を宿すのです。
今回弊誌では Stephen Knapp にインタビューを行うことができました。「ピアノは、メロディー、ハーモニー、リズム、テクスチャーなど、通常のメタルでは見られないようなものを加えることができるので、超万能なんだ。WRECHE のファンになってしばらく経つし、DEATHSPELL OMEGA の曲のピアノ・カバーをいくつか見ていたから、ピアノ中心のブラックメタルがうまくいくことはわかっていた」 どうぞ!!

SLEEP PARALYSIS “S.T.” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SLEEP PARALYSIS : SLEEP PARALYSIS】