タグ別アーカイブ: prog-metal

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【THRAILKILL : EVERYTHING THAT IS YOU】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH WES THRAILKILL FROM THRAILKILL !!

“Labeling Can Only Get Us In Trouble. Every Band Or Album We Come In Contact With Should Be Viewed As It’s Own Entity, To Be Digested As Art.”

DISC REVIEW “EVERYTHING THAT IS YOU”

ハリウッドに居を構える楽器演奏者の登竜門 Music Institute。その過酷な虎の穴とも言える通称 MI で結成され、Instru-metal 道を追求していた MAMMOTH が THRAILKILL と名を改めリリースした “Everything That Is You” は、バンドの過去と現在、そして未来全ての作品を繋ぎ、与えられたギフトへと感謝を捧げる人間讃歌です。
自らが考案した “Cream Theater” の異名を追い求めた黎明期から、ストイックなトリオは音楽の旅を続けています。実際、MAMMOTH として最後にリリースした “Deviations” は、ANIMALS AS LEADERS を思わせるコンテンポラリーなヴァイブと、LIQUID TENSION EXPERIMENT にも通じる Tech-metal の王道、そして THE ARISTOCRATS のジャズ精神を巧みにミックスし、プログメタルシーンのリスナーを思考させ唸らせた快作でした。
ただ、HAKEN との有意義なツアーの後、同名バンドの乱立により改名を余儀なくされた彼らは、ギタリストで中心人物 Wes Thrailkill のラストネーム THRAILKILL を看板として掲げることに決めたのです。
「同じようなアルバムは2枚と作りたくない」と語る Wes の言葉を裏付けるかのように、”Everything That Is You” は MAMMOTH からのさらなる深化を封じる作品です。
「最新作はよりプログメタルにフォーカスした作品だよ。過去には各ソロイストを強調したジャズ/フュージョン寄りのアルバムも作ってきたけどね。」 と Wes は語りますが、彼の言うジャズ/フュージョンとはより個としてのソロイストを強調した作風、そしてプログメタルとはより全体のビジョンを統一した絵画のような作風と理解するべきでしょう。
そのコンセプトを考慮に入れて作品と向き合えば、THRAILKILL の目指す場所がより鮮やかに伝わって来るはずです。
Djent の季節を過ぎ、近年インストゥルメタル界隈では、ロックとジャズを融合させた難解とも言えるフュージョンというジャンルをより多様に、ポップに、現代的なサウンドでハイクオリティーにディフォルメする動きが高まりを見せています。
出自は Djent である INTERVALS や PLINI, さらに OWANE や ARCH ECHO といった超新星までそのカラフルなサウンドに込められた共通項は、知的でありながらキャッチーの粋を集めたその煌びやかなデザインでしょう。
実際、彼らは全て超一流のソロイストを揃えていますが、決して複雑怪奇なリードプレイ、それに “0000” を延々と奏でることはありません。ミニマルとさえ言える印象的なメロディーやリフを膨らませながら、R&B、ポストロックやエレクトロニカ、時にヒップホップまで飲み込んでリスナーにフックの洪水を投げかけるのです。
彼らと比較すれば存分にメタリックですが、THRAILKILL も確かにその大渦の中にいます。実際、”Consciously” でゲストプレイヤー Ryan Cho が奏でるヴィオラの響きがシネマティックなアルバムの幕開けを告げると、そこには Instru-metal のディズニーランドが広がって行くのです。
Final Fantasy のスリルをイメージさせる “Aware”、ポストロックの多幸感がヘヴィーフュージョンと溶け合った “Before”、デジタルの響きがエモーションを加速させる “Everything’s”、TRIBAL TECH のファンクを受け継ぐ “Gone”、そしてマスロックの洗礼を大いに浴びたタイトルトラックまで、躍動感を持った楽曲群はシームレスに繋がりそのエンターテインメント性を解き放っていきます。
一方で、もはや “Dream Rush” のニックネームこそ適切に思える奇想天外なオッドタイムの荒波で、しっかりと舵を取るリズム隊の貢献に触れない訳にはいかないでしょう。特に日本人である Yas Nomura の溢れるフレーズアイデアと巧妙な指捌き、ジャズの鼓動は、和製 Jaco Pastorius の形容もきっと過称ではないはずです。(余談ですが彼はギタリストとしても素晴らしい腕前で、Allan Holdsworth を彷彿させるプレイを聴かせます)
もちろん、ARCH ECHO の Adam Bentley がミキシングを手がけたことも偶然ではないでしょう。今回弊誌では Wes Thrailkill にインタビューを行うことが出来ました。「Yas は日本から来たんだよ。最初僕たちが会った時、彼が話すことの出来た英語は “Dream Theater….” だけだったくらいさ。」 どうぞ!!

THRAILKILL “EVERYTHING THAT IS YOU” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【THRAILKILL : EVERYTHING THAT IS YOU】

THE 40 MOST IMPRESSIVE ALBUMS OF 2018 : MARUNOUCHI MUZIK MAGAZINE


THE 40 MOST IMPRESSIVE ALBUMS OF 2018 : MARUNOUCHI MUZIK MAGAZINE

1: GHOST “PREQUELLE”

昨年 “最も印象的だったアルバム” の記事にも記しましたが、近年、MASTODON, VOLBEAT, Steven Wilson, PALLBEARER, Thundercat、さらに今年も GODSMACK, ALICE IN CHAINS, DISTURBED, SHINEDOWN など様々なジャンルの旗手とも呼べるアーティストが “ポップ” に魅せられ、レガシーの再構築を試みる動きが音楽シーン全体の大きなうねりとして存在するように思えます。当然、邪悪とポップを融合させた稀有なるバンド GHOST もまさしくその潮流の中にいます。
「JUDAS PRIEST はポップミュージックを書いていると思う。彼らはとてもポップな感覚を音楽に与えるのが得意だよね。PINK FLOYD も同様にキャッチー。ちょっと楽曲が長すぎるにしてもね。」
と語るように、Tobias のポップに対する解釈は非常に寛容かつ挑戦的。さらにモダン=多様性とするならば、70年代と80年代にフォーカスした “Prequelle” において、その創造性は皮肉なことに実にモダンだと言えるのかもしれません。実際、アルバムにはメタル、ポップを軸として、ダンスからプログ、ニューウェーブまでオカルトのフィルターを通し醸造されたエクレクティックな音景が広がっています。
もちろん、シンセサイザー、オルガン、キーボードの響きが GHOST を基点としてシーンに復活しつつあることは喜ばしい兆候だと言えますね。同時に、サックス、フルート、ハグストロムギターまで取り入れたプログレッシブの胎動は “Prequelle” 核心の一部。Tobias はプログロックの大ファンで、作曲のほとんどはプログレッシブのインスピレーションが原型となっていることを認めています。伝統的なプログロック、プログメタルの世界が停滞を余儀なくされている世界で、しかしプログレッシブなマインドは地平の外側で確かに引き継がれているのです。
ウルトラキャッチーでフックに満ち溢れたカラフルなレコードは、数多のリスナーに “メタル” の素晴らしさを伝え、さらなる “信者” を獲得するはずです。
ただし、匿名性を暴かれた Tobias の野望はここが終着地ではありません。多くのゲストスターを揃えたサイドプロジェクトもその一つ。すでに、JUDAS PRIEST の Rob Halford がコラボレートの計画を明かしていますし、これからもスウェーデンの影を宿したメタルイノベーターから目を離すことは出来ませんね。何より、全ては彼の壮大な計画の一部に過ぎないのですから。

READ ENTIER REVIEW & STORY HERE !!

2: YOB “OUR RAW HEART”

スラッジ、ドゥーム、ストーナーのプログレッシブで多様な進化はもはや無視できないほどにメタルの世界を侵食しています。中でも、オレゴンの悠久からコズミックなヘヴィネスと瞑想を標榜し、ドゥームメタルを革新へと導くイノベーターこそ YOB。バンドのマスターマインド Mike Scheidt は2017年、自らの終焉 “死” と三度対峙し、克服し、人生観や死生観を根底から覆した勝利の凱歌 “Our Raw Heart” と共に誇り高き帰還を遂げました。
「死に近づいたことで僕の人生はとても深みを帯びたと感じるよ。」と Mike は語ります。実際、”楽しむこと”、創作の喜びを改めて悟り享受する Mike と YOB が遂に辿り着いた真言 “Our Raw Heart” で描写したのは、決して仄暗い苦痛の病床ではなく、生残の希望と喜びを携えた無心の賛歌だったのですから。
事実、ミニマルで獰猛な2014年の前作 “Clearing the Path to Ascend” を鑑みれば、全7曲73分の巡礼 “Our Raw Heart” のクリエイティビティー、アトモスフィアに生々流転のメタモルフォーゼが訪れたことは明らかでしょう。
作品のセンターに位置する16分の過重と慈愛の融合 “Beauty in Falling Leaves” はまさに YOB が曝け出す “Raw Heart” の象徴でした。甘くメランコリックなイントロダクションは、仏教のミステリアスな響きを伴って Mike の迫真に満ちた歌声を導きます。それは嵐の前の静けさ。ディストーションの解放はすなわち感情の解放。ベースとドラムスの躍動が重なると、バンドの心臓ギターリフはオーバートーンのワルツを踊り、濃密なビートは重く揺らぐリバーブの海で脈動していくのです。バンド史上最もエモーショナルでドラマティックなエピックは、死生の悲哀と感傷から不変の光明を見出し、蘇った YOB の作品を横断するスロウバーン、全てを薙ぎ倒す重戦車の嗎は決して怒りに根ざしたものではありませんでした。
結果として YOB は THOU や KHEMMIS と共にドゥームに再度新風を吹き込むこととなりました。例えば CATHEDRAL の闇深き森をイメージさせるオープナー “Ablaze” ではジャンルのトレードマークにアップリフティングでドリーミーなテクスチャーを注入しドゥームの持つ感情の幅を拡大しています。
そうしてアルバムは僅かな寂寞とそして希望に満ちた光のドゥーム “Our Raw Heart” でその幕を閉じます。人生と新たな始まりに当てた14分のラブレターは、バンドに降臨した奇跡のマントラにしてサイケデリックジャーニー。開かれたカーテンから差し込むピュアな太陽。ポストメタルの領域にも接近したシネマティックでトランセンドな燦然のドゥームチューンは、彼らとそしてジャンルの息災、進化を祝う饗宴なのかも知れませんね。

READ ENTIER REVIEW & INTERVIEW HERE !!

3: SVALBARD “IT’S HARD TO HAVE HOPE”

女性の躍動と、多様性、両極性を旨とする HOLY ROAR RECORDS の台頭は2018年のトピックでした。越流するエモーションをプロテストミュージックへと昇華し、英国ブリストルから咆哮を貫く至宝 SVALBARD はまさにその両者を象徴する存在です。熾烈なメタル/ハードコアにポストロックの叙情と風光、ポストメタルの思索と旅路を織り込みさらなる多様化の波動を導いた新作 “It’s Hard to Have Hope” はシーンの革新であり、同時に閉塞した世界が渇望する変化への希望となりました。
確かに “It’s Hard to Have Hope” は怒れるアルバムで、中絶、性的暴力、リベンジポルノ、インターンシップの無賃雇用など不条理でダークな社会問題をテーマとして扱っています。
さらには、「このアルバムは、ステージに女の子が立つことにネガティブなコメントを寄せる人たちに対する私からの返答よ。”女性をメタルから追い出せ!” と言うような人たち、コンサートで女性にハラスメント行為を行う人たち。これは彼らに対する私からの恐れなき怒りの返答なの。」と語るように、女性フロントマンとして Serena が長年メタルシーンで苦しんできたハラスメント行為の数々も、作品の持つ怒りの温度を “フェミニストのメタルアルバム” の名の下に上昇させていることは明らかです。
とはいえ、この類稀なる感情と表情の結晶が、唯一怒りにのみ根ざすわけではないこともまた事実でしょう。実際、Serena はこの作品の目的が “人々にこういった社会的不公平を伝えるだけではなく、なぜそういった問題が起き続けるのか疑問を投げかけることだった” と語っています。「誰が正しいのか互いに主張し合うのを止めてこう尋ねるの。一緒に前進するために何ができるだろう?より良き変化のためお互い助け合えないだろうか?とね。」とも。
そうして世界のターニングポイントとなるべくして示現した “It’s Hard to Have Hope” に、一筋の光明にも思える尊きアトモスフィア、荘厳なる音の風景がより深く織り込まれていることはむしろ当然の進化だと言えるでしょう。
CULT OF LUNA や MY BLOODY VALENTINE のイメージこそ深化の証。そうしてポストブラックの激しさと光明を背負った彼女は悲痛な叫びを投げかけます。「いったい誰が女性を守ってくれるの?」

READ ENTIER REVIEW & INTERVIEW HERE !!

続きを読む THE 40 MOST IMPRESSIVE ALBUMS OF 2018 : MARUNOUCHI MUZIK MAGAZINE

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【NITA STRAUSS : CONTROLLED CHAOS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH NITA STRAUSS !!

“I Think DEFINITELY The Time Has Come!! When I Was a Young Guitar Player, There Were Very Few Women Playing Guitar, And The Ones That Were Didn’t Really Play “Shred”.”

DISC REVIEW “CONTROLLED CHAOS”

男性が支配するロック/メタルのコミュニティーにおいて、数少ない女性パフォーマーの存在は、拒絶や差別との戦いを強いられた嵐の航海だったと言えるでしょう。
そして、フロントウーマンはもちろん、Orianthi, Yvette Young, Sarah Longfield などギターヒロインまで台頭し浸透した2010年代になっても、性的なコメントや挑発に対処する必要は未だなくなってはいないのです。
オーストリアのクラッシック音楽家ヨハン・シュトラウス2世の血を引くシュレッダー Nita Strauss は、その高い知性と敏腕で轟天と荒波を潜り抜け、シーンにおける女性の地位確立に大きな貢献を果たして来ました。
「”間違いなく” 遂に女性の時代が来たと感じているのよ!!メタルシーンにとって素晴らしい時代になったのよ。」AS BLOOD RUNS BLACK, THE IRON MAIDENS, FEMME FATAL そして Alice Cooper。女性の存在がまだ極少だった時代から、華麗にキャリアを紡いで来た開拓者の精神はそして実にポジティブです。
「有名な哲学者の言葉に、”幸運とは、しっかりと準備する者の上に舞い降りる” というものがあるわ。そして私は心からその言葉を信じているのよ。私は全ての人生を通して、Alice Cooper のようなレジェンドと共にプレイするため準備を続けて来たの。出来るだけ様々なバンドとツアーをしながらね。」Nita はどんなギグであろうと、観客に彼女の名を刻みたいと語っています。そして、そうした努力と前向きな姿勢がショックロックレジェンドの右腕という場所へ彼女を誘ったのでしょう。
さらに Nita のソロアーティストとしての船出には、ヴァーチュオーゾ Steve Vai もその力を貸しています。Steve がエグゼクティブプロデューサーを務めた、ギターヒロインのみから成るコンピレーション “She Rocks, Vol. 1″。ここに収録された “Pandemonium” は、Lita Ford, Jeniffer Batten といった先達の楽曲をも凌ぐインパクトとパワーに満ちていました。
メタルコア、デスコア、Djent といったモダンメタルを抱擁する新鮮なビジョンと、ワーミーペダル、ハーモニクス、ファストなアルペジオをトレードマークとするコンビネーションの妙技。
実際、ルーツである Shrapnel 直系のシュレッドを、クラシカルな出自、コンテンポラリーでダークなアグレッションと結び付けた Nita の野心は、彼女の言葉を借りれば “Leave No Doubt” 疑いようもなく傑出していて、心ないファンの挑発を黙らせるだけの才能と実力を見せつけていますね。
そして何より、アルバムを締めくくる QUEEN のカバー “The Show Must Go On” で提示するストリングスとの甘やかな共闘、ダイナミズムの香り、メロディーを操るセンスには未来への可能性が存分に詰まっているはずです。
今回弊誌では、Nita Strauss にインタビューを行うことが出来ました。「私は学校にもほとんど友人がいなくてね。だから、私は授業の間の休み時間も一人でギターを弾いて過ごしていたのよ。一見不幸にも思えるけど、長い目で見ればそういった境遇によって私はより良いギタープレイヤーになれたの。」リリースは Sumerian Records から。どうぞ!!

NITA STRAUSS “CONTROLLED CHAOS” : 9.8/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【NITA STRAUSS : CONTROLLED CHAOS】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【AZUSA : HEAVY YOKE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CHRISTER ESPEVOLL & DAVID HUSVIK OF AZUSA !!

“I Think The Whole Metal Genre Needs An Alteration, And The Domination Of Male Energies Comes With Certain Limitations And Lacks Dynamics. In General, We Need More Females Involved.”

DISC REVIEW “HEAVY YOKE”

Kate Bush がフロントウーマンの SLAYER。Chelsea Wolfe 擁する THE DILLINGER ESCAPE PLAN。もしくは Joni Mitchell と CYNIC の邂逅。
ネイティブアメリカンの透明な少女、ヒーラーの名を冠する AZUSA は、様々な “If” を浄化と知恵、調和と変化のダイナミズムで実現しながら、飛躍するフィーメールフロンテッドの潮流を一層確かなものとします。
多国籍のスーパーバンド AZUSA の始まりは、THE DILLINGER ESCAPE PLAN の Liam Wilson が EXTOL に送った一通のメールでした。昨年終焉を迎えたカオティックハードコアの首謀者を牽引したベースマンは、明らかにノルウェープログメタルの至宝に激しく惹かれていました。
一方はヴィーガンでヨガを嗜む探求者。一方はキリスト教の中でも特に精霊の加護を掲げる一派で育った、クリスチャンメタルの求道者。もしかすると、両者の間には “スピリチュアル” という共通項が存在したのかも知れませんね。
そして David が「男性のエナジーがシーンを支配することで、リミットやダイナミクスの欠如が生まれていると思う。だから一般的に、僕たちはもっと女性を取り込んで行く必要があるんだよ。」と語る通り、AZUSA の更なる独自性は女性ボーカル Eleni Zafiriadou の加入で決定的なものとなりました。
ハードコアを経由し、現在はインディーポップデュオ SEA + AIR で魅惑の歌声を響かせる Eleni の、ブルータルからドリーミー、そしてポップを行き来する万華鏡のアプローチは、それでも未だ男性が大半を占めるエクストリームの声に鮮やかな新風を吹き込んでいます。
もう一つの重要なトピックは、EXTOL から袂を別ったギタリスト Christer Espevoll がドラマー David Husvik と再度邂逅を果たしたことでしょう。
CYNIC や DEATH の知性と神秘のアグレッションを、北欧からキリスト世界のイメージと共に発信していた EXTOL の異能。ボーカル Peter の兄弟で、そのデザインを支えていた Christer が従兄弟である一族の David と再び創作を始めたことは、バンドやシーンにとって実に歓迎すべき出来事であるはずです。
実際、アルバムオープナー “Interstellar Islands” で2人のケミストリーは、瞬く間にかつての輝きを取り戻します。メロディックにリズミカルに、思慮深く構築される Christer の幾何学的ギターワークは、15年の時を超え David の放つ正確無比なグルーヴと見事に交差し調和していきます。もちろん、複雑に連なるオッドタイムの基幹となるは Liam のベースノート。
「特に Liam と Eleni が AZUSA に加わってから僕たちは全く異なる場所にいると言えるだろうね。実際、”Heavy Yoke” の作曲とレコーディングのプロセスは、思いもしなかった場所に僕たちを誘ったんだ。僕たち2人が始めた時は想像もつかなかったような場所にね。」 と Christer が語る言葉は真実です。
スラッシュの凶暴からサイケデリックワルツ、そして甘やかなポップをシームレスに接続し、刻々とタイムワープを繰り返すスリリングな楽曲で、Eleni の魔法は冴え渡ります。
そうしてそのエクレクティックな才能は、入り組んだ迷宮のような “Heavy Yoke”、一方でよりストレートなハードコア賛歌 “Heart of Stone”、そして初期 CYNIC のアトモスフィアを纏った “Spellbinder” までリアルタイムで適応し、バンドの目的地である美しき不協和、メタルホライゾンの向こう側を煌々と照らすのです。
相互に織り成す人間関係のより暗い側面、現実に蔓延る感情的な重さへと焦点を当てたアルバムで、Eleni は 「私の夢を一瞬で踏みにじる準備は出来た?」 と唄います。シーンは彼女の叫びにどう反応するのでしょうか?
今回弊誌では、元 EXTOL の Christer と現 EXTOL の David にインタビューを行うことが出来ました。「僕たち2人がハードロックやメタルを聴き始めたのは12, 13歳のころだったね。僕等の両親はその行為にとても懐柔的だったんだけど、ただしクリスチャンロック、クリスチャンメタルのバンドはキリスト教の教えを歌詞に盛り込んでいるから許されていたんだよ。」 どうぞ!!

AZUSA “HEAVY YOKE” : 9.9/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【AZUSA : HEAVY YOKE】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SARAH LONGFIELD : DISPARITY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SARAH LONGFIELD !!

“I’m Just So Happy To See It Getting Normalized. I Remember Starting Out There Were No Women On YouTube Or The Guitar Community, Which Was Always Disheartening.”

DISC REVIEW “DISPARITY”

Fender が行った調査によると、近年新たにギターを始める人の半数が女性であるそうです。その傾向を裏付けるように、Yvette Young, Nita Strauss, Orianthi Panagaris などテクニカルなロックやメタルの世界においてもギターヒロインの存在感、輝きは増す一方だと言えるでしょう。
Sarah Longfield。仄暗く凍える湖と森を抱くアメリカ中西部の最北、ウィスコンシンから登場した25歳の美姫は、さながらギターシーンのジャンヌダルクなのかも知れませんね。
2016年、Guitar World 誌による “世界最高の7弦、8弦ギタープレイヤー15人” の中に選された革新のハイテクニックビューティーは、驚くべきことにチャンネル登録者数20万を超える人気 YouTuber でもあるのです。(Rob Scallon とのコラボレートの数々は秀逸)
「マルチなプラットフォームを築き、ミュージックコミュニティーの様々な側面で名前が売れることは、素晴らしいプロモーションにもなって来たのよ。」と Sarah が語るように、ソロ活動、バンド THE FINE CONSTANT、そして YouTube と新世代らしく現代的なプラットフォームを意欲的に活用することで、彼女は Season of Mist との契約を手にすることになりました。
インタビューで、「私はまずピアノを8歳の時に始めて、それからヴァイオリンを10歳の時に始めたの。遂にギターを手にしたのは12歳の時だったわね。」と語るようにその音楽的素養は実に深くそして多様。弊誌に何度か登場している Yvette Young が似たようなバックグラウンドを持つことも興味深いシンクロニシティーではないでしょうか。
魔女か英雄か。さらにはチェロ、パーカッションまで嗜む才女のエクレクティックな素養とオープンマインドは、メタルの様式、伝統、アグレッションを地図にない未踏の領域へと導くのです。
「最新作は実際、前作とは全く異なるアルバムになったわね。焦点がよりオーガニックなマテリアルにシフトされ、私の持つ様々な影響を探求することが出来るようになったのよ。」 と語る Sarah。つまり、不均衡や差異を意味するタイトルを冠した最新作 “Disparity” は、遂に彼女本来の魅力を余す事なく伝えるマイルストーンに仕上がったと言えるはずです。
人生で初めて手にしたピアノの響きをイントロダクションに、幽玄荘厳、夢見がちでアトモスフェリックな独特の世界はその幕を開けます。”Embracing Solace”。慰めを抱擁する。プログレッシブなデザインからエレクトロニカの実験にジャズの恍惚まで、全てをシームレスに、壮麗優美に、そして時に幽冥に奏でるサウンドスケープは実にユニークかつ濃密。
Kate Bush を想起させる嫋やかな Sarah 自身のボーカルとエモーションを増したギター捌きの相性も極上。自らの音楽旅行を通して経験した光と影はこうして楽曲、作品へと見事に投影されて行きます。
ANIMALS AS LEADERS のショウを見た翌日に書かれたという、ヘヴィーでマスマティカルなデジタルのルーツを探求する “Cataclysm” が Tech-metal、ギターナードの心を激しく打つ一方で、”Departure” のオリエンタルな情緒や “Citrine” のオーガニックなポストロックの音景、”Miro” のアヴァンギャルドなジャズ精神は、二胡やハープ、サクスフォンの導入も相俟って、リスナーをカラフルで刺激的な非日常の絶景へと誘うのです。
今回弊誌では、Sarah Longfield にインタビューを行うことが出来ました。「私は女の子がギターをプレイすることがいたって普通な世の中になってただ本当に嬉しいのよ。」ウィスコンシンの乙女は果たして高潔か異端か。それは歴史が語るでしょう。どうぞ!!

SARAH LONGFIELD “DISPARITY” : 9.9/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SARAH LONGFIELD : DISPARITY】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【COLD NIGHT FOR ALLIGATORS : FERVOR】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH NIKOLAJ SLOTH LAUSZUS OF COLD NIGHT FOR ALLIGATORS !!

“You Can Have The Most Unique Mix Of Influences And Gimmicks In The World, But If You Can’t Write a Catchy Or Captivating Piece Of Music, Nobody’s Going To Care.”

DISC REVIEW “FERVOR”

鋭利な牙鰐には冷たい夜を。無機質なテクニックには色彩豊かな旋律を。瑞々しきプログメタルの都コペンハーゲンに郡居する奔放なアリゲーター、COLD NIGHT FOR ALLIGATORS は甘美なるフックとインテンスを同時に捕食しモダンプログの水面を貪欲に揺らします。
「僕たちの音楽はエモーショナルかつ実験的だと紹介したいね。グルーヴィーで風変わりなメタルを楽しむ人にはピッタリさ。テクニカルな要素もありながら、リスナーを惹きつけるフックとメロディーにもフォーカスしているんだよ。」 Nikolaj が語るように COLD NIGHT FOR ALLIGATORS の音楽は実際、肉食獣の貪欲さに満ちています。
ダウンチューンのチャグリズム、エレクトロニカの華麗なダンス、洗練のハイテクニックにシルクのプロダクションは、VEIL OF MAYA や BORN OF OSIRIS が育んだモダンメタルコアの Djenty なニュアンスを漂わせ、一方で感情の泉に湧き出でるエセリアルなメロディーラインと多様なポストモダニズムはバンドの確固たるオリジナリティーをまざまざと見せつけるのです。最新作のタイトル “Fervor” はまさに情熱と創造性の証。
アルバムのムード、デザインを濃縮した “Violent Design” で光と闇の劇場はその幕を開けます。新世代らしい不協和のグルーヴで始まる Tech-metal の獰猛は、しかし神々しきギターラインとクリーンボーカルでその姿を瞬時に変化させました。
緊張と緩和をシームレスに繋ぐ虹色のメロディーは天国への階段でしょうか? THE CONTORTIONIST にも通じる夢幻の回廊は、いつしかアートロックとポップに祝福を受けながら、アップリフトなコードワークとエモーショナルなコーラスワークでリスナーを至上のカタルシスへと誘うのです。
「リスナーをフックやメロディー、楽曲構成に浸れる機会を作りたいんだよ。その上で、リスナーの注意を引く方法の一つとしてテクニカルな要素を散りばめていると言う訳さ。アルバムを通してテクニックにフォーカスするんじゃなくね。」ポストハードコア、プログレッシブ、そして R&B まで織り込まれたフックの魔境 “Canaille” は、”ノン・メタル” な素材を存分に発揮してその言葉を実証するアルバムのメインディッシュだと言えるでしょう。
実際、ヘンドリックスが憑依するブルースの哀愁がミニマルな電子音、マスマティカルなデザイン、現代的なアグレッションと溶け合う楽曲は、モダンプログレッシブの理念をあまりに的確に、しかしドラマティックに描き出しているのです。
隠し味としてアルバムを彩る R&B のフレイバーは ISSUES に、キャッチーな旋律の煌めきは VOLA にもシンクロし、さらに “Nocturnal” では TesseracT のアトモスフィアを、”Get Rid of the Wall” ではジャズのモーションをもその血肉として消化する雑食の王。そこに “テクニカルであるためのテクニック” は一欠片も存在してはいません。
今回弊誌では、ドラマー Nikolaj Sloth Lauszus にインタビューを行うことが出来ました。Euroblast, Tech-Fest などで鍛え上げた実力は本物。さらにマスタリングは Jens Bogren が手がけます。「世界で最もユニークな要素やギミックをミックスしたとしても、キャッチーで魅力的な音楽を書かなければ誰も注目しないんだよ。」どうぞ!!

COLD NIGHT FOR ALLIGATORS “FERVOR” : 9.9/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【COLD NIGHT FOR ALLIGATORS : FERVOR】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【VOIVOD : THE WAKE】JAPAN TOUR 2019 SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DANIEL “CHEWY” MONGRAIN OF VOIVOD !!

“I Don’t Use My Guitar Before I Have An Idea Of What The Melody Could Be. Music Is Not Inside The Instrument, It Is In My Mind, In My Heart. “

DISC REVIEW “THE WAKE”

プログレッシブとスラッシュの狭間でSFのスリルを享受するケベックの神怪 VOIVOD。5年ぶりとなるフルアルバム “The Wake” の異形と暴威は、バンドの結成35周年を祝賀する来日公演で Voivodian を狂気の渦へと導誘します。
衝動の “Rrröööaaarrr” から、サイバーな中毒性極まる “Dimension Hatross”、そしてアートメタルの極地 “The Outer Limits” まで、逸脱者 VOIVOD の奇々怪界はメタルシーンにおいて畏怖と畏敬を一身に浴び続けて来ました。
スラッシー、時にパンキッシュなアップテンポの猛威とプログレッシブな展開を、サスペンスと不協和に満ちたジャズ由来のテンションコードで賛美する異端の婚姻。そしてその倒錯的なシグニチャーサウンドは、ギターの革命家 Piggy の逝去、豪放磊落なベースマン Blacky の脱退にも、些かも揺らぐことはありませんでした。
バンドにとって何より僥倖だったのは、テクニカルデスのカルトヒーロー MARTYR で雄名を馳せた Chewy こと Daniel Mongrain を迎えたことでしょう。
インタビューで、「僕は11歳の時から VOIVOD のファンで、それこそ狂ったように聴いて来たんだから、もう僕の音楽的な DNA の一部、最も大きな影響の一つだと言えるだろうね。」と語るように、”Target Earth” でバンドに加わって以降、Chewy はあの不協和音とテンションの魔術師 Piggy の遺伝子をしっかりと受け継ぎながら、さらに VOIVOD の意外性、多様性を逞しく拡大しているのです。
バンド史上最も “シネマティック” で “キャッチー” なコンセプトアルバム “The Wake” はその進化を如実に証明するマイルストーン。アートワークにもあるように、Voivodian の象徴、4体の Korgull が見下ろす先は死に行く星。作品に描かれた気候変動、大災害に起因する混乱とカオスは当然我々の住む地球の姿に重なります。
しかし同時に滅びを誘う巨大災害や外敵の来襲は、人類に新たな真理、宇宙において孤高でもなければ唯一種でもないという、ある種の “目覚め” をもたらすのです。
アルバムオープナー “Obsolete Beings” で早くもバンドは Voivodian の心に洗脳のメカニズムを植え付けます。パンキッシュにドライブするリズムセクション、不協和のパラノイア、刻々と変化を続ける万華鏡のテンポとリズム。誇らしげにトレードマークをはためかせながら、一方で Snake の紡ぐボーカルライン、Chewy の奏でるギタートーンはこれまでよりも格段に甘くメロウ。印象的な中間部のブレイクでは、アトモスフェリックな顔さえ覗かせます。
水面下から現れたエイリアンの襲来と、唯一残った人類の贖いを描いた “The End Of Dormancy” は、アンセミックにテクニカルにストーリーを体現する VOIVOD シネマの完成形なのかもしれませんね。
「お前は知りすぎてしまったんだ…。」厄災来たりて笛を吹く。クリムゾンとフロイドの不可解な共演。時に凶暴を、時に畏怖を、時に孤独を、時に勇壮を、時に不屈を伝える千変万化、Chewy のリフデザインは常にストーリーへと寄り添い、Snake は幾つものキャラクターを一人で演じ劇場の支配者として君臨します。
初期 MEGADETH を想起させるハイパーインテレクチュアルなスラッシュアタックと、神々しきオーケストレーションがせめぎ合い、そして底知れぬダイナミズムを奉ずる “Iconspiracy”、サイケデリックに浮遊するキャッチーな幻想宇宙 “Always Moving”。そうしてアルバムは12分のエピック “Sonic Mycelium” で幕を閉じます。
「”The Wake” では全てが “チームスピリット” の下に制作されたんだ。」 その言葉は真実です。張り巡らされたディソナンスとテンションの菌糸をぬって、重層のコーラスさえ従えた煌めきのメロディーは新生 VOIVOD の野心を再び主張し、ポストロックの多幸感さえ仄めかせながらストリングスの絨毯へとあまりにコレクティブなプログレッシブの息吹を着地させるのです。
今回弊誌では、Chewy さんにインタビューを行うことが出来ました。「ソロをプレイする時は、吹き込むパートを何度も何度も聴き込むんだ。そうするとメロディーが頭の中で鳴り始めるんだよ。そうして僕はギターを手に取り、そのメロディーを紡ぐんだ。僕はメロディーが降りてくるまでギターを触りすらしないからね。音楽は楽器の中にあるんじゃない、僕の心、ハートの中にあるんだよ。」二度目の登場。天国の Piggy もきっと満面の笑みでこの作品を賞賛するでしょう。
余談ですが、ブックレットには Away がそれぞれの楽曲をイメージして綴ったアートの数々が描かれています。どうぞ!!

VOIVOD “THE WAKE” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【VOIVOD : THE WAKE】JAPAN TOUR 2019 SPECIAL !!

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SEVENTH WONDER : TIARA】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH STEFAN NORGREN OF SEVENTH WONDER !!

“We All Supported Tommy Karevik 100%! Off Course, We All Realized That They’d Come First And That This Would Inevitably Set Us Back Time Wise. But There Was No Way Any Of Us Would Get In The Way Of Such a Great Career Move For Him.”

DISC REVIEW “TIARA”

スウェーデンで毎年行われる “一番大切な冬の行事”、聖ルシア祭。貧しい人々に財産全てを提供した純粋の象徴、光の聖人聖ルチアの姿は、そのスウェーデンに居を置くプログメタルの至心 SEVENTH WONDER と不思議に重なるのかも知れません。
“Waiting in the Wings” でその鵬翼を広げたバンドは、“Mercy Falls” で悲劇的なサスペンスを描き切り、“The Great Escape” では30分のエピックと共に喪失、失楽からの大いなる逃避による微かな希望の灯火を見出して来ました。
「難解なセクションも音楽的に実りがなければ僕にとっては的外れなんだ。だからこそ、メロディーとアトモスフィアが必要なんだけどね。」新加入のドラマーにして現在はバンドのスポークスマン的な役割を務める Stefan Norgren の言葉は真実です。
何より、しばしば DREAM THEATER が引き合いに出されるほどのハイテクニックと緻密なデザインの二重奏を奏でながら、SEVENTH WONDER はスカンジナビアの澄み切った眺望を旋律のクリスタルに封じ込めて来たのですから。そうしてそのパノラマは常に映画のように壮大なストーリーを纏ってリスナーの感情を激しく喚起するのです。
8年という長い月日を経てリリースされた最新作 “Tiara” のストーリーは、もしかするとバンド自体の影法師と言えるのかも知れませんね。滅ぶべき運命にある地球が救いを求め “The Everones” に差し出す純粋無垢の象徴、少女 “Tiara”。そのあらすじに、不世出のボーカル Tommy Karevik の KAMELOT 加入を重ねたファンも多いでしょう。
もちろん、Stefan はインタビューで Tommy の “ダブルワーク” がある程度 Win-Win な状況であることを強調しています。ただし、今でも Roy Khan の亡霊を宿し歌唱をシンフォニックに限定される KAMELOT での活動に、彼本来の姿を知るリスナーの多くが歯痒い思いをしていることも事実です。
実際、”Tiara” での Tommy は不要の責任から解放され自由を謳歌しているようにも思えます。自らに宿る全てのレンジでオクターブの山脈を超え、感情のリミットを解放しながら様々なキャラクターを演じ分けるその絶対的なパフォーマンスはまさに水を得た魚。
よりゴージャスでロックオペラの佇まいを擁する “Tiara”。中でも “Tiara” が別れを告げる “Farewell” 三部作はマスタークラスのバンドと Tommy の開眼が最高レベルでシンクロを果たした絶景と言えるでしょう。
シンセの煌めき、理知的な変拍子、メタルらしいエッジとユニゾンの醍醐味、静と動のダイナミズム、躍動するアコースティック楽器にヴァイオリン、暖かいコーラスの絨毯、Tommy と妹 Jenny との甘やかなデュエット、そして何よりエモーション極まる極上のメロディー。少なくとも、ピュアなプログメタルに求めるものは全てがここに存在します。
同時に、”Arrival” でシンフォニックに幕を開けるアルバムは、”The Everones” のスリリングなボコーダー、”Truth” で見せるベースの妙義とフォルクローレの熱情、“By the Light of the Funeral Pyres” はロックマンの8-bitでしょうか、そしてジェットコースターのエピック “Exhale” までバラエティーに富み、新機軸とチャレンジに満ち溢れています。
「さてその結末は?それはアルバムを聴いて、歌詞を読んで自らで決めて欲しいね…。」では、Tommy と SEVENTH WONDER の物語はどのような結末を迎えるのでしょうか。少なくとも、”Tiara” が DREAM THEATER や SYMPHONY X、そして SHADOW GALLERY を愛し続けて来たここ日本で歓迎されるべき作品であることは確かです。
今回弊誌では、Stefan Norgren にインタビューを行うことが出来ました。「テクニック、メロディー、アトモスフィア…それは僕たちのような音楽を生み出す時、心に留めている素晴らしいキーワードなんだよ。」全てのメタルファンに送る素晴らしき SF 叙事詩。どうぞ!!

SEVENTH WONDER “TIARA” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SEVENTH WONDER : TIARA】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【VOLA : APPLAUSE OF A DISTANT CROWD】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ADAM JANZI OF VOLA !!

“I Would Describe The Band As An Adventurous Rockband With Tendencies Towards Metal And Electronica. We’re Very Keen On Experimenting And Not Being Bound To One Label Or Genre.”

DISC REVIEW “APPLAUSE OF A DISTANT CROWD”

モダンプログレッシブのフロントランナー VOLA は、ジャンルのアイデンティティーを保ちながら進化を遂げる荊棘を成し遂げるユトランドの至宝。
Djent 由来の重厚なグルーヴ、シンコペーションの創造性をメロウでヴィンテージなイヤーキャンディーで包み込み、シンセウェーブのフィヨルドへと注ぎ込む彼らのやり方は、まさしくデンマーク発祥のトレンド、”ヒュッゲ” “甘美な時” をリスナーへと運びます。
レトロ&フューチャーが交差する衝撃のデビューフル “Inmazes” から4年。世界一幸福と言われるデンマークに降臨した “時をかけるバンド” が次なるテーマに選んだのは、皮肉にもテクノロジーや SNS が人類にもたらす栄華と暗部、幸せの価値。
「タイトルの “Applause of a Distant Crowd” “遠方の観客から届く拍手喝采” とは、僕たちが SNS を通してコンスタントに賞賛や承認を求めていることを表しているんだよ。だけど、そうやって喝采をくれる人たちは遠く離れていて、そこでの関係性が何か実りをもたらすことなんてないだろうはずなのに。」と新たなドラムマイスター Adam Janzi が語るように、インターネット& SNS の発展は利便性の向上と同時に、承認欲求、嫉妬、欺瞞、憤怒といった人に巣食う闇の部分をこれまで以上に助長させ、世界は生きづらさが増しているようにも思えます。
“We Are Thin Air”、アルバムの幕開けは、そうした息苦しさを “空気が薄い” と表現する究極のメッセージ。THE ALAN PERSONS PROJECT を彷彿とさせる暖和で壮大なメロディーの洪水は、コーラスの魔法と浮遊感を伴って、あたかも水中で暮らしているかのようなイメージを摩訶不思議に演出し描写します。
同時に、80年代の甘くキラキラした、しかしどこか切ないデジタルの波はコンテンポラリーなディストーションサウンドと融け合い、その波動は “Ghost” のエセリアルなセンチメント、感傷の波へと集約していくのです。
レトロとフューチャーを自在に操る時間魔法師の煌きはすなわち “ビタースイート”。そしてよりオーガニックに、オルタナティブの領域へと接近した新たな旅路は、MEW や MUSE のインテリジェントな方法論とも入念にシンクロしていると言えるでしょう。
一方で、「それでも僕たちは、今でもプログやメタルを愛しているよ。それは変わらないね。」と語るように、MESHUGGAH や DECAPITATED の凶暴なポリリズムが一際そのサウンドスケープを拡大させていることは明らかです。
“Smartfriend”, “Alien Shivers” におけるシンコペーションアグレッションはまさしくプログメタルの系譜を引く証ですし、その場所に VOLA 特有のポップセンス、アトモスフィアが流入した響きには、”Post-djent” を導くヒントが隠されているのかも知れませんね。
さらに、”Vertigo”, “Green Screen Mother” で見せるダークでスロウな一面は、バンドと作品の二面性を際立たせ、モダンプログの骨子である多様性とダイナミズムを一際浮かび上がらせることとなりました。そして、当然そこには、Adam が人生を変えたアルバムで挙げている Chelsea Wolfe, Nick Cave からの仄暗く、ノワールな影響が存在するはずです。
今回弊誌では、その Adam Janzi にインタビューを行うことが出来ました。「もしこのバンドを一言で表すなら、アドベンチャーロックバンドかな。メタルとエレクトロニカの要素を持ったね。」 さて、この作品を耳にして Steven Wilson は何をおもうのでしょうか。どうぞ!!

VOLA “APPLAUSE OF A DISTANT CROWD” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【VOLA : APPLAUSE OF A DISTANT CROWD】