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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【LITURGY : ORIGIN OF THE ALIMONIES】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH HUNTER HUNT-HENDRIX OF LITURGY !!

“I Hope That The Metal Scene Learns To Have Less Of The ‘Boys Club’ Aspect And Hold Space For More Alterity. Personally I See That As The Leading Edge Of Originality For Metal”

DISC REVIEW “ORIGIN OF THE ALIMONIES”

「私は、人類の歴史が展開し始める要因となった神の中にはメタフィジカル (人間の理解や物理を超えた) な不均衡があり、その不均衡を回復するためには、解放的な政治や実験的な芸術が重要な役割を果たすと考えているのよ。」
昨年、”H.A.Q.Q.” でブラックメタルの地図に新大陸を記載した LITURGY。日本の雅楽までを飲み込み、実験と理想を両立させた音楽、芸術、哲学が三位一体のレコードは明らかにメタルの境界線を大きく押し広げました。そうして自らを “解放” しさらなる自由を得た首謀者 Hunter Hunt-Hendrix にとって、次なる超越的ブラックメタルのテーマはクラシックとグリッチを織り交ぜたメタルオペラでした。
「メタルシーンには、”ボーイズクラブ” 的な側面を減らして、もっと変幻自在になってほしいと思っているの。個人的には、それがメタルにとってのオリジナリティの最先端だと思っているから。」
LITURGY は、シンガー、ソングライター、作曲家、哲学者、そして先駆者 Hunter Hunt-Hendrixのプロジェクト。”H.A.Q.Q.” の成功の後、Hunter は様々な葛藤を乗り越え自らがトランスジェンダーであることを公表します。
体は男性、心は女性。彼女の作品の哲学的な性質を考えれば、この勇気ある公表がボーカルとアレンジメントの両方を通して、より深く、より生々しい感情的サウンドを喚起することは明らかでした。
「LITURGY の音楽には、いつもたくさんの愛、寛容さ、誠実さがある。だからといって、それがそのまま “女性的” ってことなのかしら? そう定義するのは、あまりにも堅苦しいような気がするわね。でも、私が個人的にそういった感情にアクセスして表現するときは、それは私にとって女性的なものだと感じているんだけどね。」
性別の移行と同時に、インストゥルメンタルだった万物の起源へと誘うオペラはその神話を語る声を得ました。それはすべて、この物語の主人公が SIHEYMN という女性だったから。言葉だけでも、音楽だけでも伝えられない彼女のメタフィジカルな理想は、そうして女性性を色濃くしながら “Origin of the Alimonies” へと昇華されることとなったのです。描かれるはトラウマティックな愛によって引き裂かれた2つの神の原理 OIOION と SIHEYMN の尊き神話。
「私が Messiaen について愛していることの一つは、彼が前衛的な作曲家であると同時に、私と同じようにキリスト教徒であるということなの。この二つの側面は、私が自分の作品の中で定義し、継続しようとしている “The Ark Work” の繋がりにとって重要なものだから。」
グリッチなシンセで幕を開けた “H.A.Q.Q.” とは対照的に、”Origin of the Alimonies” はフルートの孤高が導きの灯火。フランスの現代音楽作曲家でオルガニスト Olivier Messiaen に薫陶を受けたアルバムは、ヴァイオリン、トランペット、ハープを不穏に誘い、バーストビートのラウドな宇宙と結合することで、2020年代のチェンバーメタルオペラを提示することに成功したのです。
もちろん、”Lonely OIOION” を聴けば、圧倒的なバンドパフォーマンスの不変に今も身を委ねることが可能です。それでも、グリッチやオーケストレーションとのセンセーショナルな婚約に始まり、千変万化なトラップやフリージャズのビート、”The Fall of SIHEYMN” に降臨するマイクロトーナルの絶景、Messiaen 由来の現代音楽のリズムと不協和を設計図とする “Apparition of the Eternal Church” の叙事詩まで、37分すべてが明らかにブラックメタルを超えた芸術作品の域までこのオペラを高めています。
Hunter はかつて、このアルバムで自身のリスナーは大きく減るだろうと予言しました。しかし、作品を締めくくる “The Armistice” の美しき混沌に身を委ねれば、彼女の予言がいかに的外れであったか伝わるはずです。
複雑なリズムのクラスター、ポリフォニー、そして不協和音。常識を覆す斬新なアイデアと、原始的な人間の起源を描いたことによる初演の混乱。そうこれは21世紀のストラヴィンスキー、春の祭典なのかもしれませんね。もちろん、バレーのダンサーは半狂乱でしかし軽やかにモッシュピットで踊ります。ゆえに現在制作中という、アルバムを投影した映像作品も楽しみですね。
今回弊誌では、Hunter Hunt-Hendrix にインタビューを行うことができました。「もちろん、男らしさが悪いわけではないし、私はこれからも男らしさが常にメタルを支配していくと確信しているの。それは私にとって別に構わないのよ。」2度目の登場。どうぞ!!

LITURGY “ORIGIN OF THE ALIMONIES” : 10/10

INTERVIEW WITH HUNTER HUNT-HENDRIX

Q1: After our previous interview, you came out publicly as transgender. As you say, there was fear of rejection -social rejection, romantic rejection, career rejection, rejection by your family. I admire your courage. How were you still able to come out?

【HHH】: It was a long process. I was finally able to once I found a community that would accept me, which was only very recently. It’s more complicated than at obviously. I’m sad that I wasn’t able to face this sooner but there has been a lot of support and I’ve really appreciated it.

Q1: 前回のインタビューのあと、あなたはトランスジェンダーであることを公表しましたね。あなたの勇気を心から賞賛しますよ。
社会的にも、キャリア的にも、さらには家族からも拒絶される恐怖があったとあの時あなたは語っていましたが、それでも公表を後押ししたのは何だったんですか?

【HHH】: 長いプロセスだったわ。私を受け入れてくれるコミュニティを見つけてようやく公表できたんだけど、それはごく最近のことだったのよ。明らかに以前の方が複雑だったわね。
もっと早く向き合えなかったのは残念だけど、多くのサポートを受けることができて本当に感謝しているの。

Q2: You said “The music and ideas I compose come from a female heart”. That was very interesting to me. I’d like to ask you about femininity in art and music?

【HHH】: It’s somewhat hard to explain. I’ve always considered the burst beat technique to be feminine in some kind of cosmic sense, like fluid, cyclical and anexact unlike ordinary metal drumming, though it gets very difficult to describe what one means by ‘feminine’. Like there’s always been a lot of love, openness and sincerity in Liturgy’s music. Is that ‘feminine’ exactly? Seems like it would be too rigid to define it that way. But when I personally access and express those feelings, it feels feminine to me.

Q2: 公表時のメッセージであなたは、「私の音楽やアイデアは女性の心からきているの」 と仰っていましたね。とても興味深い表現だと思いました。
具体的に、アートや音楽に潜む女性性についてお話ししていただけますか?

【HHH】: 説明するのはなかなか難しいわね。バーストビート (注: 彼女にとってのブラストビート) のテクニックは、普通のメタルドラミングとは違って、流動的で周期的で正確な、ある種宇宙的な意味での女性的なものだと思っていたんだけど、それでも “女性的”とは何を意味するのかを説明するのはとても難しいわね。
LITURGY の音楽には、いつもたくさんの愛、寛容さ、誠実さがある。だからといって、それがそのまま “女性的” ってことなのかしら? そう定義するのは、あまりにも堅苦しいような気がするわね。でも、私が個人的にそういった感情にアクセスして表現するときは、それは私にとって女性的なものだと感じているんだけどね。

Q3: The metal world still emphasizes masculinity, and the boys’ club aspect remains strong. That’s why I’m glad you’re in the metal world. Do you think those false traditions will change?

【HHH】: I think they will, or at least I hope so. There’s nothing wrong with masculinity of course, and I’m sure masculinity will always dominate metal, which is fine by me. But I hope that the metal scene learns to have less of the ‘boys club’ aspect you mention and hold space for more alterity. Personally I see that as the leading edge of originality for metal, like fulfilling its potential, making it more complete and well-rounded, fulfilling its destiny anyway. But that’s just my philosophy – I’m sure other people want different things out of metal from me and that’s fine too.

Q3: メタル世界は今でも男性性を強調したり、ボーイズクラブ的な側面が色濃く残っていますよね。だからこそ、あなたの存在が重要だと感じています。伝統を変えていけると思いますか?

【HHH】: そうなると思うし、少なくとも私はそう願っているわ。もちろん、男らしさが悪いわけではないし、私はこれからも男らしさが常にメタルを支配していくと確信しているの。それは私にとって別に構わないのよ。
でも、メタルシーンには、あなたが言うような “ボーイズクラブ” 的な側面を減らして、もっと変幻自在になってほしいと思っているの。個人的には、それがメタルにとってのオリジナリティの最先端だと思っているから。つまり、メタルの潜在能力を満たして、より完成度の高いものにして、とにかくその運命を成就させるようなものね。
でも、それは私の哲学に過ぎないから。他の人も私とは違うものをメタルに求めていると思うし、それはそれでいいと思うのよ。

Q4: In our previous interview, you said “I worked way, way, harder composing the music to Origin than the music for H.A.Q.Q.”. Isn’t it just the right piece for the right time you were finally broken free from some kind of compromise?

【HHH】: Yes, it really is. I made a point of not using any pronouns at all for the press stuff around H.A.Q.Q. because I had the sense that I would come out soon but wasn’t ready yet. But Origin of the Alimonies is really a culmination of who I am in a way, and the process of making it – especially the video aspect that most people havent seen yet – was a big part of what gradually put me in contact with my womanhood. For a long time I thought that the album had to be instrumental. We recorded the music before I came out (during the same session as H.A.Q.Q.), but once I began my transition I felt able to put vocals on it after all, which I did only a month before it was released, in September of 2020. That felt very meaningful to me.

Q4: 前回のインタビューであなたは、「”Origin of the Alimonies” は “H.A.Q.Q.” の何倍もハードに作曲に取り組んだ」と語っていましたね。自らを解放したあと、最初のアルバムとしてこれほど完璧な作品もないですよね?

【HHH】: そうね、本当にそう思うわ。”H.A.Q.Q.” を予告をせずサプライズリリースにしたのは、もうすぐ出るけどまだ準備ができていないという感覚があったからなの。でも、”Origin of the Alimonies” は、ある意味で自分自身の集大成で、その制作過程、特にまだほとんどの人が見ていない映像の部分は、自分の女らしさに少しずつ触れさせてくれた大きな作品だったの。
長い間、このアルバムはインストゥルメンタルでなければならないと思っていたの。私がカミングアウトする前に(”H.A.Q.Q.” と同じセッション中に)レコーディングしたんだけど、性を変え始めると、結局ヴォーカルを入れることができると感じるようになった。主人公が女性だったから。リリースのわずか1ヶ月前、2020年の9月にボーカルを入れたのよ。それは私にとってとても意味のあることだったの。

Q5: Also, you said “I’m sure the audience will be much, much smaller, because it is a lot less accessible.”. Indeed, it is their most overly lofty challenge to yourself and listeners yet. As well as the new elements of classical instrumentation that most closely correlate your sound to 19th Century Romanticism, you also reunite the sounds of black metal, trap music, gabber, electronica, noise, glitch, hip-hop production effects and much, much more. Definitely, this is the 21st century’s opera, would you agree?

【HHH】: Yeah I see it as an opera, even to the point of primarily belonging in the context of contemporary opera even more so than the context of metal, or at least equally. Like, it isn’t an ordinary opera obviously, but I really do engage deeply with that tradition here, ‘opera’ isn’t just a word pasted onto the album in order to make clear that the music is telling a story.

Q5: この作品についてあなたはこうも言っていましたね。「あまりにキャッチーさに欠けるから、リスナーは大きく減るだろう」 と。
ただ、19世紀のロマン主義が現代のブラックメタル、トラップ、ノイズ、グリッチ、ヒップホップと融合するあなたのやり方は、まさに当時のオペラの精神を投影していると感じましたよ。

【HHH】: そうね、私はこの作品をオペラだと思っていて、メタルというよりも現代オペラの文脈に属していると思っているの。少なくともメタルと同じくらいオペラよ。明らかに普通のオペラではないんだけど、その伝統に深く関わっていると感じているわ。
オペラとはアルバムに貼り付けられた言葉というだけじゃなく、音楽が物語を語っていることを明確にするためのものだったの。

Q6: How did Olivier Messiaen’s music influence this work?

【HHH】: One thing I love about Messiaen is that he is both an avant-garde composer and a Christian, just like me. Those two aspects are important to the tradition of The Ark Work that I seek to define and continue in my work (though other forms of spirituality besides Christianity are ok too). One of the tracks here is literally an arrangement of a piece of his. I see it as sort of an invocation or re-incarnation of his spirit, so as to carry the torch he was carrying. To me the way he combines different rhythms in simulaneity also influences the whole album.

Q6: Olivier Messiaen の音楽はこの作品にどう影響を及ぼしましたか?

【HHH】: 私が Messiaen について愛していることの一つは、彼が前衛的な作曲家であると同時に、私と同じようにキリスト教徒であるということなの。この二つの側面は、私が自分の作品の中で定義し、継続しようとしている “The Ark Work” の繋がりにとって重要なものだから(キリスト教以外の精神性の形でも良いけれど)。
このアルバムに収録されている曲の一つは、文字通り彼の曲をアレンジしたものよ。私はそれを、彼が背負っていた聖火を受け継ぐための、彼の精神を呼び出す生まれ変わりのようなものだと思っているの。
もっとミクロな視点で言うと、彼が様々なリズムを同時に組み合わせる方法は、このアルバム全体に影響を与えていると思うわ。

Q7: Did Pandemic affect this work in any way? You mentioned last time that this was the soundtrack to the film – it must have been difficult to make a film in Lockdown, right?

【HHH】: Well, the new version of the film I’m working I’m actually making in my living room, which I suppose is an effect of the pandemic yes.

Q7: 先程映像作品の話が出ましたが、このパンデミックで撮影もなかなか難しかったのではないですか?

【HHH】: 今取り組んでいる映画の新バージョンは、実は私のリビングルームで作っているのよ。だからそれもパンデミックの影響だと思うわ…そうね。

Q8: It seems this opera tells the story of why the world was born, and its story is meant to be the aesthetic core of Liturgy. Could you please explain this in a way that is easy for our listeners to understand when they first get to know you here?

【HHH】: I believe that there is a metaphysical imbalance within God that caused human history to begin to unfold, and that emancipatory politics and experimental art have an important role to play in restoring the balance, but that each new generation has to define what that means.

Q8: このオペラを私は世界の始まりの物語と捉えているのですが。

【HHH】: 私は、人類の歴史が展開し始める要因となった神の中にはメタフィジカル (人間の理解や物理を超えた) な不均衡があり、その不均衡を回復するためには、解放的な政治や実験的な芸術が重要な役割を果たすと考えているのよ。それが何を意味するのかは、それぞれの新しい世代が定義しなければならないと思けどね。

HUNTER’S FAVORITE ALBUMS OF 2020

VICTORY OVER THE SUN “A TESSITURA OF TRANSFIGURATION”

UBOA “THE FLESH OF THE WORLD”

MESSAGE FOR JAPAN

I hope we tour in Japan soon! We were supposed to be there in November of 2020 but had to postpone due to the pandemic, but hopefully 2021 or 2022!

日本をすぐにツアーできたらいいのに!もともとは2020年の11月に来日する予定だったんだけど、パンデミックのおかげで延期を余儀なくされたの。でもきっと今年か来年にはね!

HUNTER HUNT-HENDRIX

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【LITURGY : H.A.Q.Q.】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH HUNTER HUNT-HENDRIX OF LITURGY !!

“I Sincerely Think Philosophy Is a Very Important Tool For Having a Thoughtful Political Stance. People Have Such Strong Opinions That Have No Real Grounding, And I Think Even a Little Bit Of Critique Or Effort To Understand The Nature Of Reality And Of History Is Important In Deciding What It Would Mean For The World To Be a Better Place.”

DISC REVIEW “H.A.Q.Q.”

「”The Ark Work” は “欠陥のあるレコード” だったことに同意するよ。それが僕のフェイバリットレコードかもしれないとしてもね。まあ極端でラディカルなアルバムだったね。」
“定められた” 宗教的典礼、礼拝をバンド名に掲げる LITURGY は、皮肉にも自らが属するブラックメタル世界において完全なる異端です。
セオリーとフィロソフィーで超越するブラックメタルを解析したマニフェスト “Transcendental Black Metal” を聖書として創造した前作 “The Ark Work” は、その一線を越えた桁外れの実験性で賛否両論を一身に浴びた怪物でした。それを制約のない野心と褒め称える信者がいる一方で、アイデアの乱雑なコラージュと批判的な目を向けるリスナーも少なくないように思えます。
確かな事象は、哲音者 Hunter Hunt-Hendrix がバンドの、もしかするとブラックメタルそのもののアプローチまで一新してしまったことでしょう。
かつて、狂熱と数学の対比をノイズで装飾したブラックメタルを信条とした LITURGY の音楽は、”The Ark Work” (DECAYED SUN RECORDS の詳細な分析記事) で原理主義者には耐え難いオーケストラアレンジメントとトリップホップの “超越的”、もしくは “合成的” な無機質とも言えるブラックメタルの極北、インディーの彼方へと向かいました。
何しろ、人生を変えたアルバムに 2Pac や APHEX TWIN を挙げる鬼才。歪みを抑えラップに接近したボーカルサウンドもブラックメタルの “パブリックエネミー” と目されるに充分な理由だったはずです。
「”Haelegen” とは思索的な未来都市の名前であり、資本主義を超えたマルクスの新たな生産モードのアイデア、ニーチェのユーバーメンシュ (超人) のアイデア、そしてアブラハム系宗教が持つ天国の王国のビジョンの融合のようなものなんだ。」
音楽的にも哲学的にも自身から切り離すことは出来ないと語りながらも、どこか Hunter Hunt-Hendrix はブラックメタルを自らのイデアルを世界へ発信する乗り物として利用している節があります。
「LITURGY の言語に新たな何かを追加した訳では全くないんだけど、これまで作成した LITURGY サウンドの中でも最高かつ最もハイクオリティーのレンダリング、表現だとは思うんだ。ただ良い作品にしたかっただけなんだよ。優れた作曲、優れたパフォーマンス、優れたレコーディング、特に何か目新しいことを望まないでね。」
故に “The Ark Work” のオーケストラルでグリッチーな実験性を多少なり受け継ぎながら、”Aesthethica” のマスマティカルな複雑性、日本の雅楽まで取り入れる多様性、ハードコアの魂、メタルに回帰した熱情とアグレッション、その全てを抱きしめた壮大なマスターワーク “H.A.Q.Q.” についてもどこか飄々としてそう分析してくれました。
“目新しいことを望まない”。実際、ノイズの実験とポストブラックの鋭き対比を雅楽とオーケストラで包み込む “HAJJ”、KRALLICE の領域にも接近するメランコリックかつ重量感溢れるハープメタル “VIRGINITY”、何より Steve Reich のミニマルワールドさえイメージさせる8分のベヒーモス “GOD OF LOVE” を聴けば LITURGY がファンの元へと帰って来た事は明らかでしょう。
ただしそれは Hunter の戦略かもしれません。あまつさえ、 彼は LITURGY のアルバム以上に熱意をつぎ込み、これからリリースする自身のソロメタルオペラ作品 “Origin of the Alimonies” への単なる入り口として “H.A.Q.Q.” を考えているようにさえ思えます。
「哲学は思慮深い政治的スタンスを持つための非常に重要なツールだと、僕は心から思うんだ。だって今の世の中、特定の強い意見を持つ人にしたって、大抵そこに本当の根拠はないんだからね。」
もしかすると、Hunter Hunt-Hendrix の原動力は全てこの言葉に集約するのかもしれませんね。つまり彼は音楽、芸術、哲学の三原則を新たな三位一体とした、資本主義を超越する新世界の到来を啓蒙も厭わないほどに心から願っているのです。
「音楽コミュニティは一般的に反知的だから、アルバムの表紙に哲学システムを載せることで少なくともリスナーにそれを見てもらい、それが何を意味するのか気にして欲しかったんだ。」
世界を少しでもより良い場所へと導きたい。その想いは、アートワークのダイアグラムから始まり徹頭徹尾、”超越的な神” であり現実世界の活動原理である “H.A.Q.Q.” と、それを理想として生まれ来る未来都市 “Haelegen” の実現へと注がれています。
「ほとんどの人は、意志、想像力、理解の間に根本的な違いがあることには同意するけれど、誰もその理由を知らないんだ。実はこれら3つは音楽、芸術、哲学にそのままマッピングすることができて、この分野を発展させれば歴史的な運命の道筋を作ることが出来るんじゃないかな。」
“H.A.Q.Q.”、いや LITURGY でさえ、Hunter Hunt-Hendrix が標榜するより良い世界 “Haelegen” への道筋でしかありません。今回弊誌では、メタル世界随一の哲学者にインタビューを行うことが出来ました。
「僕は Twitter や YouTube を介して人々との繋がりをますます楽しんでいて、影響力の低下している大手メディアにサービスを提供しようとするのではなく、直接関与してくれる人々や関心を持っているメデイアのために、自主的に音楽を製作することにこそ完全に満足しているよ。」長年バンドを支えたモンスタードラマー Greg Fox の不在を差し引いても圧倒的なアルバムだと感じます。どうぞ!!

LITURGY “H.A.Q.Q.” : 10/10

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