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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【LITURGY : H.A.Q.Q.】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH HUNTER HUNT-HENDRIX OF LITURGY !!

“I Sincerely Think Philosophy Is a Very Important Tool For Having a Thoughtful Political Stance. People Have Such Strong Opinions That Have No Real Grounding, And I Think Even a Little Bit Of Critique Or Effort To Understand The Nature Of Reality And Of History Is Important In Deciding What It Would Mean For The World To Be a Better Place.”

DISC REVIEW “H.A.Q.Q.”

「”The Ark Work” は “欠陥のあるレコード” だったことに同意するよ。それが僕のフェイバリットレコードかもしれないとしてもね。まあ極端でラディカルなアルバムだったね。」
“定められた” 宗教的典礼、礼拝をバンド名に掲げる LITURGY は、皮肉にも自らが属するブラックメタル世界において完全なる異端です。
セオリーとフィロソフィーで超越するブラックメタルを解析したマニフェスト “Transcendental Black Metal” を聖書として創造した前作 “The Ark Work” は、その一線を越えた桁外れの実験性で賛否両論を一身に浴びた怪物でした。それを制約のない野心と褒め称える信者がいる一方で、アイデアの乱雑なコラージュと批判的な目を向けるリスナーも少なくないように思えます。
確かな事象は、哲音者 Hunter Hunt-Hendrix がバンドの、もしかするとブラックメタルそのもののアプローチまで一新してしまったことでしょう。
かつて、狂熱と数学の対比をノイズで装飾したブラックメタルを信条とした LITURGY の音楽は、”The Ark Work” (DECAYED SUN RECORDS の詳細な分析記事) で原理主義者には耐え難いオーケストラアレンジメントとトリップホップの “超越的”、もしくは “合成的” な無機質とも言えるブラックメタルの極北、インディーの彼方へと向かいました。
何しろ、人生を変えたアルバムに 2Pac や APHEX TWIN を挙げる鬼才。歪みを抑えラップに接近したボーカルサウンドもブラックメタルの “パブリックエネミー” と目されるに充分な理由だったはずです。
「”Haelegen” とは思索的な未来都市の名前であり、資本主義を超えたマルクスの新たな生産モードのアイデア、ニーチェのユーバーメンシュ (超人) のアイデア、そしてアブラハム系宗教が持つ天国の王国のビジョンの融合のようなものなんだ。」
音楽的にも哲学的にも自身から切り離すことは出来ないと語りながらも、どこか Hunter Hunt-Hendrix はブラックメタルを自らのイデアルを世界へ発信する乗り物として利用している節があります。
「LITURGY の言語に新たな何かを追加した訳では全くないんだけど、これまで作成した LITURGY サウンドの中でも最高かつ最もハイクオリティーのレンダリング、表現だとは思うんだ。ただ良い作品にしたかっただけなんだよ。優れた作曲、優れたパフォーマンス、優れたレコーディング、特に何か目新しいことを望まないでね。」
故に “The Ark Work” のオーケストラルでグリッチーな実験性を多少なり受け継ぎながら、”Aesthethica” のマスマティカルな複雑性、日本の雅楽まで取り入れる多様性、ハードコアの魂、メタルに回帰した熱情とアグレッション、その全てを抱きしめた壮大なマスターワーク “H.A.Q.Q.” についてもどこか飄々としてそう分析してくれました。
“目新しいことを望まない”。実際、ノイズの実験とポストブラックの鋭き対比を雅楽とオーケストラで包み込む “HAJJ”、KRALLICE の領域にも接近するメランコリックかつ重量感溢れるハープメタル “VIRGINITY”、何より Steve Reich のミニマルワールドさえイメージさせる8分のベヒーモス “GOD OF LOVE” を聴けば LITURGY がファンの元へと帰って来た事は明らかでしょう。
ただしそれは Hunter の戦略かもしれません。あまつさえ、 彼は LITURGY のアルバム以上に熱意をつぎ込み、これからリリースする自身のソロメタルオペラ作品 “Origin of the Alimonies” への単なる入り口として “H.A.Q.Q.” を考えているようにさえ思えます。
「哲学は思慮深い政治的スタンスを持つための非常に重要なツールだと、僕は心から思うんだ。だって今の世の中、特定の強い意見を持つ人にしたって、大抵そこに本当の根拠はないんだからね。」
もしかすると、Hunter Hunt-Hendrix の原動力は全てこの言葉に集約するのかもしれませんね。つまり彼は音楽、芸術、哲学の三原則を新たな三位一体とした、資本主義を超越する新世界の到来を啓蒙も厭わないほどに心から願っているのです。
「音楽コミュニティは一般的に反知的だから、アルバムの表紙に哲学システムを載せることで少なくともリスナーにそれを見てもらい、それが何を意味するのか気にして欲しかったんだ。」
世界を少しでもより良い場所へと導きたい。その想いは、アートワークのダイアグラムから始まり徹頭徹尾、”超越的な神” であり現実世界の活動原理である “H.A.Q.Q.” と、それを理想として生まれ来る未来都市 “Haelegen” の実現へと注がれています。
「ほとんどの人は、意志、想像力、理解の間に根本的な違いがあることには同意するけれど、誰もその理由を知らないんだ。実はこれら3つは音楽、芸術、哲学にそのままマッピングすることができて、この分野を発展させれば歴史的な運命の道筋を作ることが出来るんじゃないかな。」
“H.A.Q.Q.”、いや LITURGY でさえ、Hunter Hunt-Hendrix が標榜するより良い世界 “Haelegen” への道筋でしかありません。今回弊誌では、メタル世界随一の哲学者にインタビューを行うことが出来ました。
「僕は Twitter や YouTube を介して人々との繋がりをますます楽しんでいて、影響力の低下している大手メディアにサービスを提供しようとするのではなく、直接関与してくれる人々や関心を持っているメデイアのために、自主的に音楽を製作することにこそ完全に満足しているよ。」長年バンドを支えたモンスタードラマー Greg Fox の不在を差し引いても圧倒的なアルバムだと感じます。どうぞ!!

LITURGY “H.A.Q.Q.” : 10/10

INTERVIEW WITH HUNTER HUNT-HENDRIX

Q1: First of all, “H.A.Q.Q.” is really surprising release! And what a incredible record! You know, Liturgy is always a surprised band, but what made you release it all at once?

【HUNTER】: There were a few reasons. I really wanted to get it out quickly, because we were so happy with it, and I also wanted to have it in the air during the live-action debut of my opera Origin of the Alimonies, which took place this month. I think it’s kind of interesting to produce content for very different types of cultural platforms simultaneously, which has a way of forcing different audiences to encounter one another, if that makes sense. The only reason it was a ‘surprise’ was that my manager was fighting really hard against us releasing it this year, and had momentarily convinced me not to, but then I kind of freaked out and fired him and did it anyway – if we’d stuck with the original plan we would have released Pasaqalia as a second single and announced it a few weeks in advance. We released it without a label or any real support from traditional music media, which was perhaps unwise, but I think the world is really changing and it’s not clear that like giving The Wire three months to schedule an article or whatever moves the needle very much. I’m more and more enjoying connecting with people via twitter and youtube, and am perfectly happy to make music autonomously for people who are engaged directly and any press that takes interest, rather than trying to serve a media machine that’s kind of declining anyway.

Q1: “H.A.Q.Q.” はサプライズリリースとなりましたね?

【HUNTER】: それにはいくつか理由がある。まずアルバムに満足していたから早くリリースしたかったというのがあるね。それに今月行われた僕のオペラ “Origin of the Alimonies” ライブデビューの際に、流したかったというのもあるんだ。
非常に異なるタイプの文化的プラットフォームコンテンツを同時に制作することは、興味深いことだと思うんだ。異なるオーディエンスに交流を生むことが出来るからね。
ただ、”サプライズ” となった唯一の理由は、僕のマネージャーが今年 “H.A.Q.Q” をリリースすることに強く反対し、そうしないよう僕を説得していたからなんだ。それで僕もイライラして彼を解雇し、とにかくリリースに漕ぎつけたのさ。当初の計画では、”Pasaqalia” をセカンドシングルとしてリリースし、数週間前にアルバム発売を発表するはずだったんだけど。
結果としてレーベルや権威ある音楽メディアからのサポートなしでリリースすることとなった。それはおそらく賢明ではなかったけど、世界は本当に変化しているから、”The Wire” に3か月を与えて記事を書いてもらわなければ大きな変化を起こせないとも思わないんだ。
僕は Twitter や YouTube を介して人々との繋がりをますます楽しんでいて、影響力の低下している大手メディアにサービスを提供しようとするのではなく、直接関与してくれる人々や関心を持っているメディアのために、自主的に音楽を製作することにこそ完全に満足しているよ。

Q2: Regarding surprise, it seems Hunter-Hunt Hendrix will release the soundtrack to Hunter’s Origin of the Alimonies metal opera soon, right? What kind of record will it be?

【HUNTER】: The compositional style is close to Liturgy, its full of the burst beat and general tremolo and so on, but the overall shape of it is a lot closer to classical music. Lots of silence, rarely a steady meter, huge crescendos that are synced to speech patterns, microtonal improvisation and so on. I worked way, way, harder composing the music to Origin than the music for H.A.Q.Q., and I’m sure the audience will be much, much smaller, because it is a lot less accessible. A big portion of it is an arrangement and interpretation of an organ piece by Olivier Messiaen. I’m not sure if we’ll actually release the music as soon as we said we would, because there’s a film that goes with it and I”m not sure the film is quite ready. The opera tells the story of why the world was born, and its story is meant to be the aesthetic core to the philosophical system that I’ve been developing along with Liturgy. I’ve always wanted this project to have the character of total art, and this year we’re finally starting to deliver on that a little more concretely. Totally happy for anyone to just want to listen to the Liturgy album and enjoy it for the music, but I also want it to potentially be a window into this larger world.

Q2: サプライズと言えば、あなたのメタルオペラ作品 “Origin of the Alimonies” も近々リリースされるそうですね?どういった作品になりそうですか?

【HUNTER】: 作曲スタイルは LITURGY に近いね。”Burst beat” (彼らはブラストビートをより重量感を湛えたバーストビートと表現する) や典型的なトレモロがいっぱいだけど、ただ全体的な形はクラシック音楽にずっと近いんだ。多くの静寂、緩急の妙、セリフのパターンに同期する巨大なクレッシェンド、マイクロトーナルの即興演奏といった部分でね。
僕は “H.A.Q.Q” の音楽よりも、”Origin of the Alimonies” の作曲にとても、とてもハードに取り組んだんだ。その大部分は、オリヴィエ・メシアン (フランスの現代音楽作曲家、オルガニスト) によるオルガン作品のアレンジと解釈だったね。
とは言え僕たちが宣言したように、実際すぐにこのアルバムをリリースするかどうかは分からないんだ。この作品は映画のサウンドトラックで、その映画の準備が完璧に出来ているか分からないからね。
このオペラは世界がなぜ生まれたかを伝え、そのストーリーは僕が LITURGY と共に創造してきた哲学的システムの審美的コアとなることを意図しているんだ。つまり、ただ LITURGY のアルバムを聴いて音楽を楽しんでくれるのもとても嬉しいんだけど、同時に LITURGY のアルバムがこの “Origin of the Alimonies” という大きな世界への窓になってくれれば良いね。

Q3: “H.A.Q.Q.” stand for “Haelegen above Quality and Quantity”, right? You posted “Humanity is just the mask that Haelegen is currently wearing” on twitter before and of course, there was a song “Haelegen” in “The Ark Work”. So, it seems “Haelegen” is one of the big theme of Liturgy. Do you agree that?

【HUNTER】: Yeah I also have a Discord server called Haelegen now. It’s the name of a speculative future city, sort of a fusion Marx’s idea of a new mode of production beyond capitalism, Nietzsche’s idea of the Ubermensch, and the Abrahamic vision of the kingdom of heaven. If the opera Origin of the Alimonies is about the beginning of the world, Haelegen is the end of the world, basically. H.A.Q.Q. isn’t quite the same has Haelegen the city; the latter is an ideal that is modeled on the former, which is basically a transcendent God, an active principle that is generating the world we know and experience. There’s a system of archetypal characters and a theory of history embedded in the opera and in Liturgy albums. Basically the story of the opera is about two divine principles OIOION and SHEYMN that are torn apart by their own traumatizing love for one another, so form and matter appear as barriers to protect them from each other while also providing limited access, more and more over time as the divine principles are more able to handle one another. Haelegen is the moment when, at the end of world, history, OIOION and SHEYMN are able to be united while still differentiated from one another.

Q3: “H.A.Q.Q.” とは “Haelegen above Quality and Quantity” を意味するそうですね?
“The Ark Work” には “Haelegen” という楽曲が収録されていましたし、あなたの Twitter アカウントでもこの言葉はしばしば見かけます。

【HUNTER】: そうだね、僕は今 “Haelegen” って Discord サーバーを持っているんだ。それは思索的な未来都市の名前であり、資本主義を超えたマルクスの新たな生産モードのアイデア、ニーチェのユーバーメンシュ (超人) のアイデア、そしてアブラハム系宗教が持つ天国の王国のビジョンの融合のようなものなんだ。
オペラ “Origin of the Alimonies” が世界の始まりについてならば、基本的には、”Haelegen” は世界の終わりについてだよ。”H.A.Q.Q.” は 都市 “Haelegen” とまったく同じではないんだ。後者は前者をモデルにした理想。つまり “H.A.Q.Q.” とは基本的には超越的な神であり、僕たちが知り経験しているこの世界を生み出している活動的原理と言えるだろう。
オペラや LITURGY のアルバムには、典型的なキャラクターのシステムと歴史理論が組み込まれているんだ。基本的にオペラの物語は 、トラウマティックな愛によって引き裂かれた2つの神の原理 OIOION と SHEYMN について。そして “Haelegen” は世界の終わりに、OIOION と SHEYMN が互いに異なりながらも一つになる瞬間なんだ。

Q4: Also, the artwork of “H.A.Q.Q.” is also really unique. It looks like kind of an academic book, haha. It seems the artwork relate to your manifest “Transcendental Black Metal” . What does the artwork express?

【HUNTER】: The art is a diagram of my System of Transcendental Qabala, sort of a basic summary. It’s meant to be a philosophical system that has the scope and range of those of Hegel or Deleuze. Obviously I don’t claim to be a great thinker to the degree either of them are, but I am covering all the same topics as any original philosopher, and have a considered opinion on most of them at this point, as well as a way of tying them together. I’ve been developing the system on my arkwork.org website for a few years now. It traces a path of liberation from the consideration of the problem of good and evil (axiology) through a philosophical consideration of the nature of being and time, to a rational vision of the kingdom of heaven (eschatology). I sincerely think philosophy is a very important tool for having a thoughtful political stance. People have such strong opinions that have no real grounding, and I think even a little bit of critique or effort to understand the nature of reality and of history is important in deciding what it would mean for the world to be a better place. Music communities are typically so anti-intellectual, so I wanted to put the philosophy system on the cover of the album to really force people to at least see it and wonder what it is.

Q4: “H.A.Q.Q” のアートワークはまるで学術書のようで実にユニークです。あなたがかつて発表した “Transcendental Black Metal” と関連がありそうですが?

【HUNTER】: このアートは僕の超越的カバラ (ユダヤ教の伝統に基づいた創造論、終末論、メシア論を伴う神秘主義思想) のシステムのベーシックな部分を、要約してダイアグラムにしたものなんだ。それはヘーゲルやドゥルーズの視点とレンジを備えた哲学的システムとなるよう意図されているよ。
明らかに僕は彼らほど偉大な思想家ではないけれど、オリジナルな哲学者2人と同じトピック全てを扱っていて、2人を結ぶ考え抜かれた意見と方法論を持っているよ。僕は数年前から、arkwork.org のWebサイトでそのシステムを進化させて来たんだ。そのシステムは、善と悪の問題の考察(axiology)から存在と時間の性質の哲学的考察を通して、天国の合理的なビジョン(eschatology)までの解放の道を辿るものなんだよ。
哲学は思慮深い政治的スタンスを持つための非常に重要なツールだと、僕は心から思うんだ。だって今の世の中、特定の強い意見を持つ人にしたって、大抵そこに本当の根拠はないんだからね。現実と歴史の性質を理解するための少しの批判や努力も、それが世界がより良い場所になることを意味するかどうかを決めるのに重要だと思う。
音楽コミュニティは一般的に反知的だから、アルバムの表紙に哲学システムを載せることで、少なくともリスナーにそれを見てもらい、それが何を意味するのか気にして欲しかったんだ。

Q5: Perhaps, “The Ark Work” received pros and cons, mixed reviews. After that record, I feel “H.A.Q.Q” comes to have both mathematical complexity of “Aesthethica” and experimental spirit of “The Ark Work”. What’s your perspective about the musical direction of “H.A.Q.Q.”?

【HUNTER】: I agree that The Ark Work was a flawed record, even though it’s possibly my favorite, since it’s also so radical, and it was the one we worked the hardest on by far. I was also learning and developing brand new tools for composition as we were going, like I barely knew how to do digital production really. H.A.Q.Q. in my view doesn’t really add anything new to the Liturgy language, but it’s the best and most high-quality rendering of the Liturgy sound that we’ve produced. I just wanted to make it good. Good compositions, good performances, good recording, without being desperate to do something particularly new. It feels great to have built up this set of tools and skills and to just use them and enjoy that. The musicians playing on this record are so talented and skilled and such a joy to work with, the whole process has had this spirit of joy and fun that has honestly been lacking for every other Liturgy release.

Q5: 前作 “The Ark Work” は賛否両論が存在したレコードだったと思います。
そういった作品の次に位置する “H.A.Q.Q.” は、音楽的には、”The Ark Work” のグリッチーな実験性を多少なり受け継ぎながら、”Aesthethica” のマスマティカルな複雑性、メタルらしさも抱きしめた傑作に仕上がったと感じました。

【HUNTER】: “The Ark Work” は “欠陥のあるレコード” だったことに同意するよ。それが僕のフェイバリットレコードかもしれないとしてもね。まあ極端でラジカルなアルバムだったね。それに、デジタル制作を実際に行う方法をほとんど知らなかったから、そのために全く新しいツールを学び、開発していたこともあったしね。
“H.A.Q.Q.” は、僕の考えでは、LITURGY の言語に新たな何かを追加した訳では全くないんだけど、これまで作成した LITURGY サウンドの中でも最高かつ最もハイクオリティーのレンダリング、表現だとは思うんだ。ただ良い作品にしたかっただけなんだよ。優れた作曲、優れたパフォーマンス、優れたレコーディング、特に何か目新しいことを望まないでね。
そういった LITURGY のツールとスキルを構築し、それを使用してただ楽しめるのは素晴らしいことだよ。このレコードでプレイしたミュージシャンは非常に才能があり、熟練していて、共に働ける喜びもありしね。
逆に言えばこのレコードの全てのプロセスには、他の LITURGY のレコードには正直に欠けていたこの喜びと楽しみの精神がある訳さ。

Q6: As a Japanese, it was really surprised and pleased you mixed “Gagaku” elements in your music. How did you find Japanese “Gagaku” and take hichiriki & ryuteki in your music?

【HUNTER】: Yeah, I love gagaku. Not an expert at all, but a few years back I was introduced to the style and have listened to lots of recordings and performances. Its whole musical logic is so different from most of my influences in metal and classical, but it feels really resonant too because it touches on infinity and eternity in this way that is so emotional and yet so formal, so jarring and yet so calm, which is how people describe Liturgy too, though the materials are totally opposed. I though it would be interesting to try to combine the two, and it was quite difficult. We almost removed the gagaku production from HAJJ because it sounded so strange, but chose to just go with it.

Q6: 日本人として嬉しくもあり、驚きでもあったのが雅楽の導入です。

【HUNTER】: うん、雅楽は大好きだよ。エキスパートって訳では全くないんだけど、何年が前に紹介されて、それから沢山のレコードやパフォーマンスを堪能して来たんだ。
雅楽の音楽的なロジック全体は、これまで僕の影響の大半であるメタルやクラッシックとは非常に異なるんだけど、無限に永遠に感動を誘うという意味では、非常に共鳴しているように感じるね。
雅楽はとても感情的でありながらとてもフォーマルで、とても煩くありながらとても穏やかなんだ。 そういった完全に相対する要素の導入は LITURGY の真骨頂でもあるからね。
雅楽とメタルを組み合わせるのはとても面白いと思うけど、非常に難しくもあるね。実際、僕たちは”HAJJ” から雅楽の要素ををほとんど削除するところだったんだ。とても奇妙に聞こえたからね。だけど結局そのまま使用することにしたよ。

Q7: Musical diversity is of course, also, Liturgy mixes piano, harp, strings, percussion which exists normally outside metal realm. And for me, that’s really “Transcendental Black Metal”. But black metal is still center of your music even now, right? What’s the reason of that?

【HUNTER】: It would probably be a wiser branding choice to get rid of the black metal label, but I find it hard to. Partly it’s because the basic form almost always has the characteristic tremolo guitars, blast beats and high pitched screams as the end of the day. Another is that I find the place of black metal in the history of music to be really interesting and important, because it’s so contradictory – so connected to metal, punk, classical music, liturgical music, violence, spirituality, anti-modernism, philosophy. I feel like black metal has always been asking a question that still has not been answered.

Q7: 雅楽はもちろんですが、ピアノ、ハープ、ストリングス、パーカッションといった “アウトサイド・メタル” な楽器のシームレスな導入も、あなたが提唱するトランセンデンタルブラックメタルを象徴すると感じます。
とはいえ、それでもブラックメタルは LITURGY のコアとしてあり続けていますね?

【HUNTER】: うん、おそらくブラックメタルのラベルを取り除くのは賢明なブランディング戦略だろうけど、僕には難しいね。
その理由の1つは、ほとんどの場合、特徴的なトレモロギター、ブラストビート、高音のスクリームが結局は僕たちの音楽に含まれているから。
もう1つは、音楽の歴史におけるブラックメタルの場所は本当に面白くて重要だと思うからなんだ。なぜならブラックメタルは、メタル、パンク、クラシック、典礼音楽、暴力、スピリチュアリティ、アンチモダニズム、哲学なんかが非常に矛盾しながら繋がっているからなんだよ。
ブラックメタルは常に答えの出ない質問をし続けているように感じるね。

Q8: Art, music, thought. Could you tell us about the relationship between these three?

【HUNTER】: My theory is that music, drama and philosophy are elemental features of reality; they’re more real than the physical universe even, and we don’t yet know what either of them really is. I’m interested in the idea that they can and should be put into a productive relationship, or that doing this could be the generative principle of a new era for civilization. Specifically the idea is that as civilization’s productive force has expanded over the course of history, there have been three ternaries that have successively governed its superstructure, each more abstract than the last. The first was the Great Triad of nature mysticism which is described well by Rene Guenon. The second was the holy trinity of Abrahamic faiths, which began to tear civilization away from nature, pointing towards the scientific revolution. The currently reigning one is the capitalist trinity of industry, science and culture, which is liquidating culture and nature both. We can imagine a future trinity that would solve the problems capital is creating which taking advantage of the forces it is liberating, and this would have as its members music, drama and philosophy, liberated from the aesthetic sphere so as to become organizing principles of society itself. This would be the city Haelegen. All wildly speculative of course, but I think these things are worth thinking about. It’s also worth remembering that no one has a proven theory of history, no one knows why the arts exist. Most people agree there is a primal distinction between will, imagination and understanding, but no one knows why. I think these three can be mapped onto music, art and philosophy, and that the development of these disciplines can be made to trace an historical destiny.

Q8: 最後に、芸術、音楽、哲学のトライアングルについてお話ししていただけますか?

【HUNTER】: 僕の理論では、音楽、ドラマ、哲学は現実的な要素、特徴なんだ。それらは物理的な宇宙でさえよりも現実的であり、実際に何であるかはまだ分かっていないんだよ。
僕は、その3つが生産的な関係を築くこと、またそうすべきであるという考えが文明の新時代の生成原理になり得るという考えに興味があるね。具体的には、文明の生産力が歴史の中で拡大するにつれて、その上部構造を次々と支配する3つの三原則が登場するんだけど、それぞれが前のものよりも抽象的であるという考え方なんだけどね。
最初は、自然神秘主義の偉大なトライアドで、ルネ・ゲノンによってよく説明されているね。 2番目はアブラハム信仰の聖三位一体で、それは文明を自然から引き離し始め、科学革命を指し示したんだ。現在支配しているのは、産業、科学、文化の資本主義三位一体であり、文化と自然の両方を清算しているね。
僕たちは、資本主義が生み出している問題を解決する未来の三位一体を想像することが出来るはずだよ。資本主義が解放する力を利用し、そのメンバーとして音楽、ドラマ、哲学を戴き、社会の組織化の原則となるように美的領域からの解放を目指す。これが都市 “Haelegen” だよ。
もちろん乱暴で推論でしかないけど、考慮する価値はあると思うよ。それに、誰も歴史の実証を成し遂げていないこと、誰も芸術が存在する理由を知らないことも覚えておく価値があるだろうな。
ほとんどの人は、意志、想像力、理解の間に根本的な違いがあることには同意するけれど、誰もその理由を知らないんだ。実はこれら3つは音楽、芸術、哲学にそのままマッピングすることができて、この分野を発展させれば歴史的な運命の道筋を作ることが出来るんじゃないかな。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED HUNTER HUNT-HENDRIX’S LIFE

SMASHING PUNPKINS “SIAMESE DREAM”

2PAC “ALL EYEZ ON ME”

CONVERGE “JANE DOE”

APHEX TWIN “DRUKQS”

EMPEROR “IN THE NIGHTSIDE ECLIPSE”

MESSAGE FOR JAPAN

We’ve never toured in Japan and we’d like to!

日本はツアーしたことがないんだよ。だからぜひ行きたいね!

HUNTER HUNT-HENDRIX

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【LINGUA IGNOTA : CALIGULA】


COVER STORY: LINGUA IGNOTA “CALIGULA”

I’ve had a difficult time finding justice in the world, finding accountability for the people who have done harm to me… The music is my way of holding people accountable and finding justice. My way of finding revenge.

MY SWEET REVENGE…THE STORY BEHIND “CALIGULA”

「世界に正義を見出すこと、私を傷つけた人間に責任を見出すことにずっと苦労してきたの。だから音楽は奴らに責任を負わせ、正義を見つける私のやり方なの。私なりの復讐なのよ。」
家庭内暴力、虐待の生還者 Kristin Hayter のパワフルな言葉です。そして彼女の受けた恐ろしき痛みと攻撃性は、オペラからノイズ、インダストリアル、フォークに教会音楽、スピリチュアル、そしてメタルまで全てを渾淆した婀娜めきのプロジェクト LINGUA IGNOTA に注がれています。
「何か違うことがやりたかったの。新鮮で私のビジョンのみを投影したようなね。どんなジャンルやカテゴリーにも繋がりたくはなかったのよ。ルールや限界を設けることになるから。真正で正直な音楽を作りたかったのよ。」

LINGUA IGNOTA の新作 “Caligula” は確かに正直であり、そして同時に残酷なアルバムです。8分を超える楽曲3曲を含む11曲の連なりがリスナーに与えるのは罰にも思える疲労困憊の聴体験。
「もともとアルバムは、90分を超えていたの。さすがに音楽を詰め込みすぎだと思ってそれを75分にしたのよ。さらにそこから66,6分まで短縮したの (笑)。そんなちょっとしたジョークに溢れたアルバムでもあるのよ。リスナーをアルバムの “サイクル” へ誘うことで私は罰を受けなければならないの。だって彼らに示すのは家庭内暴力のサイクルなんだから。」
2017年の LP “All Bitches Die” に比べれば幾分かはアクセシブルかも知れません。ただし、それでも”アウトサイダーのオペラ” として生を受けた “Caligula” を咀嚼するには何度も何度もアルバムを噛みしめる必要がありそうです。
「言いようのないものに声を出したいし、本質的に表現が難しいものを人々に理解してもらいたいの。」と Kristin は説明します。 「それに、みんなが私についてあれこれ言うことを自虐ネタにもしているのよ。炎上商法とか、悪いフェミニストだとか。その反応を音楽にも取り入れているの。」

ただし、LINGUA IGNOTA は音楽プロジェクトとして始まった訳ではありませんでした。クラッシックのピアノと声楽を学び、シカゴでインターディシプリナリー (複数の学問の) クリエイティブアートを研究した後、実は Kristin の Brown 大学卒業論文こそが LINGUA IGNOTA の子宮でした。10,000ページに及ぶ論文のタイトルは “全てを燃やせ、誰も信じるな、自殺しろ”。THE MEAT SHITS のようなポルノグラインドバンドの性暴力的な歌詞を調べ、彼女自身の経験に照らして文脈化を果たします。
やがて彼女は自身の作品をロードアイランド州プロビデンスのDIYノイズ/メタルシーンへと持ち込み、自らと対立的な側面を実験し始め、2枚のレコードをリリースし、THE BODY とツアーを始めたのです。
「THE BODY にシーンを紹介してもらえたのがとてもラッキーだったわね。だって彼らは基本的に良い人間だけを周りに置いていて、奴らとは関わらない方がいい、クソだからってアドバイスをくれたから。」


そうして生まれた LINGUA IGNOTA に対する明確なビジョン、溢れる自信にもかかわらず、Kristin は彼女のアートをどこか客観的で距離を置いて見ている節があります。
「全ては私の中から生まれたものよ。だけどこの名前でパフォーマンスを行うことに何かしら距離を置いている部分もあるのよ。」
ライブにおいても、群衆の中に立ちライトで焦点をぼかし影に隠れて歌い紡ぐ Kristin。何より “未知の言語” を意味するラテン語の LINGUA IGNOTA という名前自体、中世ドイツのベネディクト会系女子修道院長であり神秘家、作曲家ヒルデガルト・フォン・ビンゲンが占いや神秘主義を目的に開発した言語 “リングア・イグノタ” を基にしているのですから。
そうした “ペンネーム” や “影のパフォーマンス” のみならず、歌詞の面でも Kristin は時に自身とアートの距離を考慮します。
「もちろん、個人的に経験したことをベースにしているけど、権力や暴力を乱用する男の言葉を引用することもあるわ。私に起こったことじゃなくても、(家庭内暴力の経験がある私なら)、その言葉に “重み” をもたらすことができるんだから。」

では “トランセンデンタル” とも形容され Chelsea Wolfe にも通づる音闇の聖堂の鍵はどこにあるのでしょう?
「リバーブね!ボーカルやピアノにリバーブをかけまくってウエットなサウンドにしているのよ。そうしてダークでありながら鮮明なサウンドスケープを創造しているの。」
カトリックと密接に思える LINGUA IGNOTA のアートですが、実は Kristin 自身は現在無神論者。
「教会で育ったけど、13で無神論者になったの。それ以来信じたり信じなかったりを続けているわ。今は…おそらく信じていない。だけどカトリックのイメージとか聖書の言語とは密接な繋がりを持っているの。カトリックに限らず、崇拝行為として構築された音楽やアートは実に美しく純粋な意図があるの。一方で、教会自体の不純な意図、腐敗に抑圧、虐待も存在するけどね。」
最近は DAUGHTERS の “You Won’t Get What You Want” がお気に入りです。
「他にもコーラルミュージックやドローンを良く聴くわ。サルディーニャやジョージアのポリフォニーも大好きよ。そういった音楽と Tim Hecker, Meredith Monk, それにハードコアやパンクをミックスしているのよ。」

血の滲むようなリリックとジャンルの枠を超えた音のマニフェスト “Caligula” のタイトルは、世の中全てを憎み全員を殺害しようとしたローマ皇帝のに因んで名付けられました。
「虐待の力、狂気、堕落、ナルシシズム…政治的なコミュニティーの世界で私は全てを見てきたわ…そしてそのトラウマの結果として自分自身にも狂気を宿すこととなったの。だからこそ、”Caligula” というタイトルが崩壊しかけて崖の淵にある現在の社会を例証していると感じたのよ。」
しかし、LINGUA IGNOTA の音楽は、差し迫った社会の衰退、崩壊と戦うための神器となるのでしょうか?
「時々、私の音楽が何かを助けているのか、それともノイズを追加しているだけなのかって自問自答するわ。私がを起こそうとしている変化をみんなが聞いてくれたらと望むわ。そして、私の音楽が弱く不可視とされている人々が虐待と戦うための力となることもね。」
権力を利用して他人を虐待する愚かな行為は政治の世界のみならず、ロックミュージックのコミュニティーを含む社会のあらゆる側面に存在します。ただ近年では、以前より多くの被害者が前に出て公の場で声を上げられるように改善が進んでいるようにも思えます。当然、やるべきことはまだまだありますが。
「エクストリームミュージックのコミュニティーは大部分がまだまだとても酷い状況よ。愚かな考えをもとにした醜い振る舞いや、ミソジニーが横行しているわ。実際、私を虐待した男の1人は有名なノイズミュージシャンだった。それに以前より保守的で右よりの政治性を欲しているようにも思えるわね。
ただ、だからと言ってコミュニティーやシーンを “取り締まって” 正すことが答えだとは思わないの。誰かを排除するコールアウトカルチャーは結局有毒でコミュニティーの助けにはならないわ。教育こそが正しい道だと思うの。複雑だけど、誰かを追放し排除するより考え方を変えたいのよ。」


Kristin は彼女の “音楽教育” がどの様な影響を与えたのか、虐待の被害者のみならず、加害者からも話を聞き前へと進む手助けになっていることを知り多少なりとも心の平安を得ます。
虐待というタブーに挑むのは、LINGUA IGNOTA だけではありません。SVALBARD はリベンジポルノを糾弾し、VENOM PRISON は代理出産やレイプについて叫びます。さらにそういった “正義の” バンドは増えるのでしょうか?
「家庭内暴力や性的暴力の経験はありふれたものよ。だからそういったテーマのプロジェクトは今後増えていくと思うの。ありふれていてリアルだからこそ、自らの経験やトラウマを扱うのは当たり前になっていくはずよ。」
そう、”リアル” こそが LINGUA IGNOTA を魅力的な妖魔としているのです。 ドラマのために作られたフィクションではなく、究極に恐ろしくしかし正直な場所に端を発するノンフィクションは、故に近寄りがたい音の葉を纏っていますが、奈落の底でヘヴィーなリスナーと深く深く繋がっています。
「どれだけの人が女性を嫌っているか、どれだけ世界が女性を嫌っているか知れば知るほど、”サバイバー” として他の女性への責任を感じるの。これからどこに行くのでしょうね?だけど最も重要なことは、リアルであり続けること。だから音楽を作ったり、暴力について語る必要がなくなればそうするわ。永遠に虐待の被害者になりたくはないからね。」

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ENDON / SWARRRM : 歪神論 -EVIL LITTLE THINGS-】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TAICHI NAGURA OF ENDON & KAPO OF SWARRRM !!

“To Me, Extreme Music In Japan Seems To Have a Spirit Kind Of “Fuck While Being Fucked” And Yeah…I Can Hear It. The Situation Is Often Forgotton Unconsciously.” By Taichi Nagura

“I’m Not Sure What The Punk / Hardcore Spirit Specifically Refers To. The Spirit Should Be Different For Each Individual.” By Kapo

DISC REVIEW “歪神論 – EVIL LITTLE THINGS –

「日本でバンドをやるということが常に既に”Made in Occupied Japan” であるという事実をわざとらしくモチーフとしました。反体制とかアナーキズムについては特には意識していませんね。”Made in Occupied Japan”が表すのはアメリカにファックされているという事実です。」
日本のエクストリームミュージックは “やりながらやられている”。ENDON の那倉太一氏が語るのは、白人が生み出したロック、もしかすると文明そのものへと過度に依存する日本の歪。大多数の日本人が “アメリカにファックされている” 事実を黙過する中、ENDON と SWARRRM、国産グラインドの二巨星は全てを直視し、共鳴し、未だ “更新の余地” があるべきロックの地平を開拓し続けます。
少なくともロックの教科書には、グラインドコアの源流とされるパンクロックについて、反体制的でアナーキーなアティテュードだと記されています。では、彼らの放ったスプリット “歪神論 -Evil Little Things-” とは、未だ白人に対するコンプレックスを抱き続ける日本の愚かしき権力に贖う音楽の形をした何かなのでしょうか?
那倉氏は「だいたい現政権や差別主義者を否定するのにわざわざ他人のスピリットなんて必要でしょうか。」と応じます。
さらに SWARRRM Kapo氏の言葉は象徴的です。「パンク/ハードコアのスピリットが具体的に何を指すのか不明ですが。大体、個でスピリットは違うはず。パンク/ハードコアのスピリット=左寄りと限定することがパンク全体主義であると考えます。一人一人が違う意見であるという事を当然のように理解される環境こそが必要なのでは。」
天上天下 唯我独尊 三界皆苦 吾当安此。”全宇宙のなかで、私たちは皆がたった一つの尊い存在。苦しみに溢れる世界で、私はその苦しみを気にかけるために生まれてきたのだ”。ENDON と SWARRRM、両者に流れる血潮にはきっとこの釈迦の言葉が刻まれています。それは啓蒙や扇動からは程遠いしかし世界にとって枢要な境地。
さらに Kapo 氏は “唯我独尊” のイデアこそが互いを惹きつけると語ります。「いつの時期にもそれぞれの時期のイケてると言われる価値観を共有する集団はいます。シーンというのかもしれません。そういう価値観に影響される事を拒否できるバンドの一つではないかと判断して仲良くさせてもらってます。SWARRRMはご存知かもしれませんが、良くも悪くもそういう事とは常に無縁の活動を長年続けてます。」
なるほど、歪神論で提示された両者の音の葉はそうして確かにシンクロしています。
「グラインドのシンボルであるブラストビートが炸裂する瞬間は、機関銃による戦闘の開始場面のようであり、多分に射精的な快楽を表象しています。」
インテンスの極みであるブラストとDビートは、ロックらしいギターのコードやリフワークと相対し確かに融解します。その位置から、カヴァー曲も含めてノイズの地獄や歌謡の宴といったそれぞれの蟻地獄へと引き摺り込む唯我の方法論も見事。
加速する混沌に逆行するロックのギタリズム。その二律背反にも思えるエナジーはしかし確かに白人のロックに魅せられ奪われた後、踏み倒し、疾風迅雷のうねりをあげる極東のモンスターに違いありません。ハードコアの脱領土化はここにその一歩を踏み出しました。
今回弊誌では、那倉、Kapo 両氏にインタビューを行うことが出来ました。「私自身ロックと政治の関係性に特別な物を求めていません。主張や左右の風向きは時代時代で変化あってしかるべきと考えます。過去の主張や精神が現代に有効とは考えませんし、過去の物事を全く美化して捉えてないし、美化されたロマンチックなロックの教科書も信じません。」どうぞ!!

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DAUGHTERS : YOU WON’T GET WHAT YOU WANT】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ALEXIS MARSHALL OF DAUGHTERS !!

“The Title Definitely Serves As a Disclaimer. A Reminder To Everyone, Ourselves Included, Expectations Tend To Be More Of a Hindrance Than Aide. “

DISC REVIEW “YOU WON’T GET WHAT YOU WANT”

“欲しいものは手に入らないよ”。音楽に限って言えば “叶わぬ望み”、それは決して悲観すべき状況とのみは言い切れないのかも知れませんね。
ロードアイランドの州都プロビデンスで、最も不遜にして刺激的な音圧を刻み続ける実験のエクストリームアクト DAUGHTERS は、リスナーの期待に易々と添うことを良しとせず、臆す事なくジャンルの壁を粉砕し、サディスティックにそのクリエイティブなビジョンと牙を研ぎ澄ましています。
実際、8年振りのご褒美 “You Won’t Get What You Want” のタイトルは、かつての姿を望む全てのファンに向けた警告であり、放棄の証とも言えるのです。「このタイトルはディスクレーマーさ。期待は時に助けよりも妨げになるという事実を、みんなに思い起こしてもらうためのね。僕たち自身も含めてね。」 Alexis Marshall がそう語る通り、バンドは常に変化の中から内なるモンスターを覚醒させていくのです。
事実、躁の一極へと振り切った初期のマスコアイズム、グラインドコアのアドベンチャーは、時と共に成熟を遂げバンドのアグレッションをより狂気の方角へと導いていきました。
そうして、2010年にリリースされた前作 “Daughters” は培ったノイズロックの息吹を全面に開花させ、アンチメロディーからアクセシブルの地平へと舵を切ったマイルストーンへと仕上がったのです。
しかし、高まる人気、注目の一方でバンドは疲弊していました。「多くのことが一度に起こりすぎて、充分に内省、考慮することが出来なかったんだろうな。何年もずっとツアーを続け、些細なことでも深刻な問題となってしまったね。だから時間を置いて離れる必要があったのさ。」 と語るようにバンドは活動の休止を余儀なくされます。中でもバンドの要であるボーカル Alexis とギタリスト Nicholas Sadler の対立は深刻で、傑作リリースの裏舞台では Alexis、そしてベーシスト Samuel Walker までもが一時バンドを離れる事態にまで発展していたのです。
2013年、故郷のローズアイランドで再集結を果たした DAUGHTERS。プロビデンスの黒ダイヤをこのまま眠らせて置く訳にはいかないと、Robotic Empire レーベルの Andy Low が一肌脱ぎ実現したシークレットライブで、バンドは初めてサードアルバム “Daughters” の楽曲をオーディエンスに向けてプレイすることとなりました。そこでファンの変わらぬ熱狂を浴びた2人にとって、過去のいざこざはもはや取るに足らない小事となっていたのです。
Hydra Head から Ipecac への移籍、産みの苦しみを経て、”You Won’t Get What You Want” は遂に陽の目を見ることとなりました。リスナーが手に入れたのはもちろん、初期の凶暴な源衝動でもなければ前作の受け入れ易い躍動するアグレッションでもありません。
ロウテンポからミッドテンポの真中を蠢くノイズの海に、グラインドとミニマル成分を注入したムーディーな戦慄。この切迫した焦燥感、アトモスフィアはさながら Stephen King の映画のように、リスナーの神経をジリジリと蝕んでいきます。
ミニマルに、ノイジーに、スラッジーにインテンスを導く “City Song” で予兆を与えた後、”Long Road, No Turns”, “Satan in the Wait” の流れはバンドの禍々しきメタモルフォーゼを完膚なきまでに具現化します。
オリエンタルに、トライバルに、ゴシカルに、耳を惹くフックを盛り込みながら、不協和音のエッジ、無慈悲なマスビート、ハーモニーの崩壊を究極まで突き詰め全てを漆黒に塗り潰すバンドの方法論、アートロックのセレモニーはあまりに異形。
もちろん、同郷の THE BODY は比較対象の一つでしょう。しかし、Nick Cave のダークアメリカーナや Trent Reznor の内省的な実験を想起させる “Less Sex”、シンセとエフェクト、そしてファナティックなビートによってホラー映画の悪夢が再現される “The Flammable Man”、コンテンポラリーなパンクロックにも思える “The Reason They Hate Me” など作品に育まれた多様なコントラストとダイナミズムはやはり唯一無二。そしてその潮流は、きっと此の地日本の ENDON や、Sargent House のロースターとも密に繋がって行くはずです。
全てを聴き終えた後、とめどない疲労感と共に、まるで何かの呪詛をかけられたかのようにも感じる実に強烈なレコード。今回弊誌では Alexis Marshall にインタビューを行うことが出来ました。「ただ言えるのは、僕が従来の、慣習的なメロディーには興味がないってこと。僕たちはただ自分たちにとって良いと思えるサウンドにフォーカスしているだけなんだ。」 どうぞ!!

DAUGHTERS “YOU WON’T GET WHAT YOU WANT” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ENDON : THROUGH THE MIRROR】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TAICHI NAGURA OF ENDON !!

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“Catastrophic Noise-metal” Outfit ENDON Has Largely Eluded The Attention Of The Broader Western Underground Music Scene With New Extreme Masterpiece “Through The Mirror” !!

DISC REVIEW “THROUGH THE MIRROR”

エクストリームミュージックの光彩にして特異点。東京から世界を見据えるノイズの狂信者 ENDON が、シーンに “救い” という名の不可逆性をもたらすマスターピース 『THROUGH THE MIRROR』をリリースしました!!
「ENDON はメタルという言葉でイメージする音楽の領域を拡大する役目の一端を担っていると思います。言い換えれば私にはメタルの延命措置に関わっているという認識があります。」 と語る彼らの欲望は、残酷なまでに率直です。
ボーカル、ギター、ドラム、そして2名のノイズマニュピレーターを擁する ENDON。ノイズをその多様なソングストラクチャーへ大胆不敵に織り込む彼らの方法論は、エクストリームミュージックの最先端にあると言えます。
罪深きノイズの濁流 CODE ORANGE, ハードコア/グラインドのハイブリッドエクストリーム FULL OF HELL、そして ENDON。奇しくも等しくその最新作を CONVERGE の巨匠 Kurt Ballou に委ね、ノイズというキーワードで繋がる三傑は、創造性という核心において他の追従を許してはいませんね。
中でも ENDON が特異点であるべきは、インタビューにもあるように、彼らがノイズを “主人公” として扱っている部分だと言えるでしょう。勿論、エクスペリメンタルな極北たるデビューフル 、ノイズを中心に据えた “母盤”『MAMA』はその具象にして直接的な証です。しかし、ノイズを楽器の一つとして扱い楽曲を “構築” することで、よりロック/メタルのフォーマットへと接近した “父盤” 『THROUGH THE MIRROR』においてもその信念は揺らぐことすらありませんでした。
ENDON にとってノイズとは “有機性” の象徴なのかも知れません。つまり、音符や調に囚われないノイズは自由な胎動、母性。逆に緻密な楽曲の構築、音楽的な束縛は父性。二性の融合によりフォーカスした『THROUGH THE MIRROR』は、ENDON という稀代のバンドが産み落とした寵児だと言えるのではないでしょうか。
こうした変化、父性の強調をセルアウトと断じることは無意味です。那倉氏が 「私は「悟り」という言葉もあまり好きではありません。私は「悟り」を「去勢」と言い換えます。」 と語ったように、バンドは “去勢” とは対極に位置するマスアピールを欲しているのですから。
アルバムオープナー、6分間のノイズの弾幕、ブラストの洪水、地獄の責め苦 “Nerve Rain” をある種の踏み絵としたレコードは、実際アグレッションとカオス、エモーションとキャッチーさが奇跡のバランスで均衡を保つインテンスの塊です。
“Your Ghost is Dead” “Born in Limbo” を聴けば今回、特に彼らの獰猛さの一端をブラックメタルやハードコアのテクスチャーが支えていることに気づくはずです。歌詞を持たないボーカリスト、那倉太一の阿鼻叫喚は言語をも凌駕し、ギターやリズムと対等にレイヤーされたノイズのグラデーションは有機的にその残虐性を高めていますね。
殊更、 起伏が増し、繊細なる “オアシス” が存在感を放つ終盤の24分間は圧巻です。”Perversion ‘Till Death” における全てを破壊するかの如き非業の質量、修羅なる重量感は、狂気の狭間に挿入される仄暗くも耽美なるクリーンギターを伴って、スラッジーというワードのみで形容するにはあまりに背徳的で異端な世界観を作り上げています。
プリミティブなパンクのエナジーで疾駆するタイトルトラック “Through the Mirror” がメジャーキーで解決した刹那、世界はその色を変えます。”Torch Your House” で開花するエセリアルなムード、ノイズの宇宙、多幸感とさえ表現可能なサウンドスケープは、ポストロックやポストパンクの美麗なるイメージ、アンビエンス、崇高さを伴って作品に稀有なるコントラストをもたらし物語を締め括るのです。
アルバムを通してギタープレイヤー、宮部氏のルーズでクールなブルーステイストが、作品に更なる彩り、魅力を加えていることも付け加えておきましょう。
今回弊誌では、那倉太一氏にインタビューを行うことが出来ました。8/23からは FULL OF HELL, THE BODY, FRIENDSHIP の日本ツアーが始まりますが、ENDON も8/27に出演が決定しています。インタビューで、「小説が歌詞を補完しているという関係ではありません。」 と明言していますが、太一氏の弟、悦生氏が全ての楽曲タイトルに対応する小説を著しています。実に興味深い内容なので併せてぜひ。どうぞ!!

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ENDON “THROUGH THE MIRROR” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【FULL OF HELL : TRUMPETING ECSTASY】JAPAN TOUR SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SPENCER & DYLAN OF FULL OF HELL !!

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Maryland / Pennsylvania Quartet, Full OF Hell Has Just Released The Newest Album “Trumpeting Ecstasy”!! Diverse, But More Into Extreme Metal Realms!

DISC REVIEW “TRUMPETING ECSTASY”

メリーランド、ペンシルベニアのカルテット、破壊者 FULL OF HELL がフルアルバムとしては2013年の “Rudiments of Mutilation” 以来となる新作 “Trumpeting Ecstasy” をリリースしました!!日本が誇るノイズゴッド MERZBOW, アヴァンギャルドノイズデュオ THE BODY とのコラボレート、さらには NAILS, PSYWARFARE とのスプリットを血肉としてリリースした作品は、要となる自身のルーツを軸としつつ、同時にエクストリームミュージックの領域を一際押し広げる重要なレコードとなりました。
CODE ORANGE, 日本の ENDON と並んで FULL OF HELL はハードコアとノイズ要素を融合させるアプローチの先端に立つアーティスト。もはやハードコアの大家となった感のある CONVERGE の Kurt Ballou が斬新なその三者全ての新作を手がけることとなったのも偶然ではないでしょう。
実験的な作風にシフトするかとも思われた “Trumpeting Ecstasy” は、意外にもストレートな楽曲が軸となり押し寄せる暗く激しい11曲23分となりました。インタビューにもあるように、サウンド、リフワークなど、確かにバンドはよりメタルの領域に接近したようにも思えますし、楽曲が”密着”していると語るのも頷けます。
しかし、勿論彼らの野心が一所に留まるはずもなく、レコードは同時にパワーバイオレンス、ノイズ、スラッジ、インダストリアルといった多様なアイデアを見事に昇華しコンテンポラリーなブルータリティーを散りばめたハイブリッドなエクストリームミュージックとして仕上がったのです。
“木々も鳥たちも悲しみに満ちている。彼らは歌っているんじゃない。ただ悲鳴をあげているんだ。” ニュージャーマンシネマの巨匠 Werner Herzog の言葉で幕を開けるアルバムオープナー “Deluminate” は文字通り世界の悲惨さ、絶望感の象徴です。不協和音をスクラッチする悪夢のデスメタルライクなリフワークと、疾走する巧みで手数の多い狂気のドラミングは無慈悲にもリスナーに地獄絵図を投下して行きます。”人間は地球の顔に出来た膿だ” と喉が張り裂けるほどシャウトする Dylan の苦痛を伴う憤怒は即ちハードコアのリアルで、聴く者に畏敬の念さえ感じさせますね。
禍々しい何かを引き摺るようにスローダウンする、スラッジーな “Gnawed Flesh” はまさに FULL OF HELL の真骨頂。脱退したベーシスト Brandon Brown のデモニックなガテラルは、Dylan の鋭いスクリームと凶悪なインタープレイを繰り広げバンドの顔となっていましたが、新たに加わった Sam DiGristine もしっかりとその伝統を引き継ぎ、自身のハラワタに宿した魑魅魍魎を地の底でスラッジパートに全てぶつけています。
さらに “Crawling Back to God” には ex-ISIS の Aaron Turner が、”At the Cauldron’s Bottom” には CONVERGE の Nate Newton がそれぞれボーカルでゲスト参加し、様々な声を得た作品は実に多様な色を加えているのです。
GRIMES のレーベルに所属するカナダのアーティスト Nicole Dollanganger の声を得たタイトルトラック “Trumpeting Ecstasy” はバンドが経てきたコラボレートの旅が結実した成果だと言えるでしょう。THE BODY の Lee Buford が生み出すビートと Nicole の天上の歌声は、不穏なノイズを宿した惨忍なバンドの暴虐と溶け合うこともなく、奇妙な二分法のまま冷やかなまでに無機質に進行して行きます。
インタビューで Dylan は、”Trumpeting Ecstacy” というタイトルが「他人の不幸は蜜の味」といった意味を持つと語ってくれましたが、この純美と非業、”喜び”と”悲しみ”の奇妙な共存はそのまま彼の語る人間の心の最も醜く陰湿な場所を映し出しているように感じました。
今回弊誌では、フロントマン Dylan とギタリスト Spencer にインタビューを行うことが出来ました!8月には THE BODY, FRIENDSHIP と回る日本ツアーも決定しています。どうぞ!!

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FULL OF HELL “TRUMPETING ECSTASY” : 9.8/10

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