EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH FREDERICK “ChaotH” FILIATRAULT OF VVON DOGMA I !!
“As For Unexpect We Helped Coin The Term ‘Avant-Garde Metal’ Whatever That Meant.”
DISC REVIEW “THE KVLT OF GLITCH”
「2000年代のメタルやハードコアのシーンは、スタイルがまだ探求され、発展していた時期だった。音楽のサブジャンルがまだ生まれていて、中でもケベックのバンドは本当に何かを持っていたんだよ。CRYPTOPSY の前にはテクデスがなかったように、DESPISED ICON の前にはデスコアがなかったように。さらに ION DISSONANCE のようなバンドはエクストリームなマスコアを前進させた…そして UNEXPECT は、その意味がどうあれ、”アヴァンギャルド・メタル” という言葉を生み出す手助けをしたんだよ」
VOIVOD の偉業を振り返るまでもなく、カナダ、特にケベック周辺はメタルの進化に欠かせない異形を生み続ける特異点です。そして振り返れば、まだモダン・メタル=多様の定義もおぼつかなかった90年代後半から00年代にかけて、UNEXPECT ほど混沌と新鮮をメタル世界にもたらしたバンドは多くはありませんでした。
「UNEXPECT が早すぎるということはなかったと思うよ。僕の考えでは、シーン全体を前進させるためには、新しいアイデアを持って、早すぎるくらいに登場する必要があるんだよ」
もはや伝説となった9弦ベースの使い手 Frédérick “ChaotH” Filiatrault はそう嘯きますが、プログレッシブ、デスメタル、ブラックメタル、ジャズ、クラシック、オペラ、フォーク、エレクトロニカが “予想外の” ダンスを踊る UNEXPECT の音楽は、現在の多弦楽器の流行を見るまでもなく、あまりにも “早すぎて” 理解を得られなかった鬼才で奇祭にちがいありません。そして、UNEXPECT や WALTARI がいなければ、アヴァン・メタルの現在地も、今ほど “攻め” やすい場所ではなかったのかもしれませんね。
「このバンドは、90年代のオルタナティブや Nu-metal、2000年代の実験的なハードコアやメタル、2010年代のエレクトロニックの爆発など、僕がこれまで聴いてきたすべてのジャンルの音楽を調和させようとしたものなんだ。James Blake、Bon Iver, DEFTONES, MESHUGGAH, MARS VOLTA, IGORRR…といったアーティストのありえないブレンドを目指していたからね」
一度は夢を諦めた ChaotH が再びメタル世界に降り立ったのは、自身を形成した偉人たちに感謝を捧げ、そこから新たな “ドグマ” “教義” を生み出すため。さながら蛹が蝶になるように、華麗に変身した ChaotH のドグマは、EDM が脈打つインダストリアル・メタルと、欲望に満ちたプログレッシブ・メタルを、七色に輝くオルタナティブな経歴を反映しつつ融合しようと試みているのです。
つまり、VVON DOGMA I は UNEXPECT ではありません。もちろん、彼らのX線写真を見ると、過去の同僚 Blaise Borboën の乱れ打つヴァイオリンや、ChaotH の異世界ベース・パルスなどおなじみの骨格はありますが、機械の心臓は突然変異的な異なる動力で脈打っています。右心室に CYNIC を、左心室に MESHUGGAH を宿した VVON のサイバーパンクな心臓部は、時にタップを、時にスラップを、時に早駆けをを駆使して変幻自在に躍動する ChaotH の9弦ベースによって切り開かれ、緻密で冒険的で、しかし歪んだ哀愁の風景をリスナーの脳へと出力します。Djenty ながら Djent より有機的で、ヒロイックで、しばしば TOOL とも邂逅するギタリズムも白眉。
何より、悪魔城ドラキュラのメタル世界を想起させる “The Great Maze” から、”Triangles and Crosses” のネオンに染まる KING CRIMSON、そして RADIOHEAD の鋼鉄異教徒によるカバーまで、ここにはヘヴィ・メタルの “If” が存分に詰まっています。ノイズを崇拝し、レザーストラップと砂漠のゴーグルを身につけ、奇抜な乗り物に鎮座した VVON DOGMA I のサイバーな “もしも” の世界観は、AI と現実の狭間でリスナーという信者を魅了していくのです。
今回弊誌では、Frédérick “ChaotH” Filiatrault にインタビューを行うことができました。「クリエイティブな面では、アートワークの制作にAIが参加するのはとても興味深いことだと思ったね。つまり、このレコードの自発的な音楽 “合成” の側面は、アートワークによって強調され、とてもふさわしいものとなった。メタルヘッズの間では、シンセティック (人造、合成) なものを受け入れるというのは、あまりポピュラーなコンセプトではないけど、僕はアナログでなければ “メタル” ではないというエリート意識は、まったくもってデタラメだと思うよ」 傑作。どうぞ!!
VVON DOGMA I “THE KVLT OF GLITCH” : 10/10
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