EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH KNOX COLBY OF ENFORCED !!
“Humans Are Violent By Design. That’s How We’ve Survived.”
DISC REVIEW “WAR REMAINS”
「俺たちは古い伝統に思いを馳せながら、新しいリスナーには新鮮に映るように工夫してやってるんだ」
2010年代後半。スラッシュという容赦のない獣は、爆発的な人気を誇る新進気鋭の POWER TRIP の力によって、ハードコアの衝動を多分に受けた新たなスタイルで世界に再びその威光を轟かせました。2020年、POWER TRIP の象徴的なフロントマン Riley Gale の急逝は明らかにメタル世界の大きな損失でしたが、それでも彼らに続くアメリカのニュー・エクストリーム、その激しい波はとどまることを知りません。いや、むしろ、現代こそが “クロスオーバー・スラッシュ” の黄金時代なのかもしれませんね。
「Arthur は、自分のやっていること、作っていることを正確に理解していて、特定のスタイルやサウンドのバンドがどのように表現されるべきかをしっかりと理解しているんだ」
自らも SUMERLANDS, ETERNAL CHAMPION という温故知新のニュー・エクストリームを率いる Arthur Rizk こそが、この新たなアメリカの波の牽引者です。若い世代にとって、インターネットを通して知る80年代の音楽は、ある意味驚きで、新発見なのでしょう。そうして彼の地のメタル・ナードたちは、好奇心の赴くままに古きを温めすぎて、当時を過ごした実体験組のような知識と思い入れを持つようになりました。そこに現代の文脈を織り込めばどうなるのだろう?そんなタイムトリップのような実験こそが、Arthur の真骨頂。
POWER TRIP, CODE ORANGE, TURNSTILE といった Arthur が手がけたニュー・エクストリームの綺羅星たちは、そうやって様々な “If” の掛け算を具現化していったのです。今回インタビューを行った、東海岸から登場した ENFORCED は “暴力装置” という点で、”Arthur’s Children” の中でも群を抜いた存在でしょう。
「俺は暴力的な人間ではないけど、暴力行為の因果関係や思想や概念としての暴力を理解できるほどには成熟している。俺たちが暴力と完全に縁を切るということは、自分のDNAを無視するってことなんだ」
ENFORCED は、否定したくても否定できない人間の “暴力性” に一貫して焦点を当てています。戦争の時代に戻りつつある現代。ENFORCED の魂 Knox Colby は、机上の平和論者に現実を突きつけます。オマエは暴力の恩恵を受けていないのか?戦争は時代を進めて来たんじゃないのか?人類は本当に暴力と縁を切れるのか? “War Remains”…と。
「SLAYER が成してきたことを、俺たちも実現できると思いたいね」
前作 “Kill Grid” のスラッシュへのグルーヴィかつ多彩なアプローチが “South of Heaven” だとすれば、”War Remains” は彼らの “Reign in Blood” に違いありません。このアルバムが走り出したが最後、33分後には死体確定。跡形もなく踏みつけられたリスナーの骸以外、何も残りません。Knox が Tom Araya のひり付くシャウトとデスメタルの凶悪なうなりの完璧なキメラで血の雨を降らせ、殺伐としたギターの戦車が世界を焦土に変えるのに3分以上の時間は必要ないのです。今回、彼らが所望するのは電撃戦。
ただしバンドは、古いスラッシュのルールブックに基づいて演奏しながら、MORBID ANGEL や OBITUARY の伏魔殿から、”Nation of Fear” のような “ハードコアISH” のグルーヴまで暴力の規範を変幻自在に解釈して、人が背負った “業” を、現実を、リスナーに叩きつけていくのです。私たちはそれでも、”ウルトラ・ヴァイオレンス” な世界を塗り替えることができるのでしょうか?
今回弊誌では Knox Colby にインタビューを行うことができました。「人間はそもそも、暴力的にデザインされているんだ。そうやって俺たちはこれまで生き延びてきたんだよ」 どうぞ!!
ENFORCED “WAR REMAINS” : 10/10
INTERVIEW WITH KNOX COLBY
Q1: First of all, What kind of music were you listening to when you were growing up?
【KNOX】: Whatever was on the radio in the early 90s. Metallica, Grunge, Queen.
Q1: 本誌初登場です!まずは、あなたの音楽的なバックグラウンドからお話ししていただけますか?
【KNOX】: 90年代の初頭、ラジオでかかっていたものは何でも聴いていたよ。METALLICA、グランジに QUEEN とかね。
Q2: How did Enforced come together?
【KNOX】: We were all friends and they had written a demo and wanted me to do vocals for it. Simple really. That’s the 2017 Demo and we’ve been going ever since.
Q2: ENFORCED 結成の経緯を教えていただけますか?
【KNOX】: 僕たちはみんな友達だった。メンバーたちがデモを作っていて、僕にボーカルをやってほしいということだったんだ。本当にシンプルにね。それが2017年のデモで、それ以来ずっとバンドが続いているんだ。
Q3: Your last album, “Kill Grid,” was an intense fusion of hardcore and thrash that reminded many people of Power Trip. Were you aware of them?
【KNOX】: YES!
Q3: 前作の “Kill Grid” は強烈なハードコアとスラッシュの融合で、POWER TRIP を想起させました。彼らのことは意識していたんでしょうか?
【KNOX】: うん、もちろん!
Q4:You seem to have a much better relationship with Arthur Rizk, who is now leading the new wave of American metal? What is the reason why you continue to work with him?
【KNOX】: Arthur knows exactly what he’s doing/creating and has a firm understanding with how bands of certain styles and sounds should be presented.
Q4: 今、アメリカのエクストリーム・ミュージックを牽引するプロデューサー Arthur Rizk とも良い関係を築いていますね?
【KNOX】: Arthur は、自分のやっていること、作っていることを正確に理解していて、特定のスタイルやサウンドのバンドがどのように表現されるべきかをしっかりと理解しているんだ。
Q5: I think the word “hybrid” is the common denominator for Arthur Rizk’s bands Power Trip, Code Orange, Primitive Man, Turnstile, and you guys. Is there a common consciousness among young American metalheads these days to break out of the old norms?
【KNOX】: To harken back to the old traditions while still keeping it new and fresh for new listeners.
Q5: その Arthur が手がけた POWER TRIP, CODE ORANGE, PRIMITIVE MAN, TURNSTILE, そしてあなたたちには、過去と現代の “ハイブリッド” という共通点がありますよね。音楽オタクというか、様々な時代の音楽を吸収しているというか。
【KNOX】: そうだな、俺たちは古い伝統に思いを馳せながら、新しいリスナーには新鮮に映るように工夫してやってるんだ。
Q6: The title of this album is “War Remains”. Of course, there is a big war going on in Ukraine right now, but there are also many other conflicts going on all the time in the world. Was this title inspired by the karma of humanity?
【KNOX】: Humans are violent by design. That’s how we’ve survived. War pushes technological progress and all the commodities that people who strive for peace enjoy. Take away war, take away the progress, and we’d still be living in the 1800s.
Q6: 昨年、ロシアによるウクライナへの侵略戦争が勃発しましたが、もちろんそれだけではなく、世界には数多の紛争が渦巻いています。タイトルの “War Remains” はそうした人間の業からインスピレーションを受けたのでしょうか?
【KNOX】: 人間はそもそも、暴力的にデザインされているんだ。そうやって俺たちはこれまで生き延びてきたんだよ。戦争は技術の進歩を促し、平和を希求する人々がニコニコと知らぬ間に享受するあらゆる物資を生み出す。もし戦争をなくし、進歩をなくせば、俺たちはまだ1800年代に生きているだろうな。
Q7: People often say that heavy metal is violent music, but many people who actually play it are against violent acts, would you agree?
【KNOX】: I’m not a violent person but I’m mature enough to understand the cause and effect of violent acts and violence as an idea or concept. To disown it completely is to ignore your own DNA.
Q7: メタルの外の人たちはよく、メタルは暴力的な音楽だと言いますが、実際にメタルをプレイする人たちの多くは、暴力に反対しています。
【KNOX】: 俺は暴力的な人間ではないけど、暴力行為の因果関係や思想や概念としての暴力を理解できるほどには成熟している。俺たちが暴力と完全に縁を切るということは、自分のDNAを無視するってことなんだ。
Q8: The world is now without Slayer, and you are no longer the only ones who can make a 32-minute, all-out violent album.” And “Ultra-Violence” is exactly that commitment, isn’t it?
【KNOX】: That’s a huge compliment, thank you. I’d like to think we could accomplish what Slayer was able to.
Q8: それにしても、SLAYER のいない世界で、徹頭徹尾暴力的な32分を生み出せるバンドは ENFORCED だけではないですか?
【KNOX】: それは大きな賛辞だね、どうもありがとう!SLAYER が成してきたことを、俺たちも実現できると思いたいね。