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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【OCEANS OF SLUMBER : OCEANS OF SLUMBER】


COVER STORY : OCEANS OF SLUMBER

“I FEEL LIKE MY HISTORY IS BROKEN, I FEEL LIKE AMERICA IS BROKEN”

OCEANS OF SLUMBER

女性であること。黒人であること。ヘヴィーメタルには直結しない2つの特徴を持つ Cammie Gilbert は、OCEANS OF SLUMBER へと加入した2015年、自らに一握りの不安を抱えていました。
「メタルの世界に入った時、黒人女性であることや、必ずしもメタルのバックグラウンドばかりを抱えているわけではないことにかなり負い目を感じていたのはたしかね。」
バプテスト派の家庭で育ち、IRON MAIDEN や METALLICA より R&B やヒップホップが鳴り響く街並み。両親は教会の聖歌隊で出会い、プロのミュージシャンである父親が聖歌隊のリーダーを務めていました。”南部出身の黒人女性” としての経験をいかにメタルへと反映させるのか。しかし Cammie は自身のバックグラウンドが、思っていた以上にメタルと調和していることに気づきました。
「私はメタルから歌を教わったわけじゃない。だけど、私が歌を教わったゴスペル、ジャズ、ブルースのヴァイブやエッセンスはプログメタルが存在し成立するまさにその理由の一つなのよ。だから私はメタルが大好きなの。美学やアトモスフィアもそうだけど、エモーションや細部への拘りもね。」

興味深いことに、Cammie の人生に最も早く寄り添ったメタルは、Layne 逝去のあと、黒人ボーカリスト William DuVall と共に前へと進む ALICE IN CHAINS でした。
「初めてロックやオルタナティブを聴き始めた時、ALICE IN CHAINS の “Dirt” が私を揺さぶったの。KORN や SLIPKNOT は激しすぎて家では聴かせてもらえなかったんだけどね。感情が込められているのよ。悲しみや痛み、ヘヴィーな感情を理解するのはあの頃の私にとって未知のことだったのよ。」
Layne Staley や Chris Cornell のソウルフルが彼女のルーツと共鳴したのです。
「当時、私の周りにはロックやメタルにハマっている黒人の子供はあまりいなかった。だから少し孤立していたの。でも、それが私が感じていた音楽だったから。大学まではちょっとした一匹狼だったわ。大人になってライブに行けるようになるまでは、メタルやロックシーンのコミュニティの感覚を得られなかったわね。」

数年後、Cammie は自らロックバンドで歌っていました。彼女が所属していたバンドは、ある日ヒューストンで開催された OCEANS OF SLUMBER のショーのオープニングを務めました。
「私はルーサー・ヴァンドロスを聴いて育ったから、ウォームアップとしてメロディックでビッグな曲を演奏していたの。駐車場で叫んでいたら、Dobber の友達が私を見ていたわ。私はこのショーで唯一の黒人の女の子で、鮮やかなエレクトリックブルーのドレスを着ていたから、かなり目立っていたのよ。私たちがパフォーマンスをしたとき、Dobber たちが真顔で私たちの前に立っていたのを覚えているわ。私は『彼らは私たちを嫌っている』と思ったわ。(笑) でも、そんなことはなかったわね。後日、彼らは私に連絡してきたの。」
バンドは Cammie に何曲か歌ってほしいと頼み、2014年にオリジナル・シンガーの Ronnie が脱退した際、彼女が後任となりました。今では CammieとDobber が OCEANS の舵取りを行い、Dobber が楽曲の「85~90パーセント」を書き、Cammie が作詞を担当しています。そして彼女が加入した後、二人の関係は音楽を超えてロマンチックなものへと発展していきました。


2人を繋ぎ合わせた TYPE O NEGATIVE の “October Rust” も彼女、そしてバンド全体にとって重要なレコードです。
「Peter Steele が大好きなの。私たちは TYPE O NEGATIVE が大好きで、彼らのアルバムは何枚も持っているけど、私にとってはこの作品がメインよ。”Cinnamon Girl”、”Be My Druidess”、そして “Wolf Moon”。Dobber は一度彼らのライブを見たことがあるのよ。うらやましいわ。私は Peter の自伝を読むことで埋め合わせなければならなかったの。バンドに関するメディアならは何でも買っているわ。彼らの曲を聴くのは経験になるのよ。Peter はとても賢い作詞家だから。聴いている音楽の中で一番面白い音楽だと思う。エネルギーを高めてくれるし、幸せな気分にさせてくれるわ。」
ANATHEMA, KATATONIA, SWALLOW THE SUN といった Peaceville 由来のゴシックドゥームな音モスフィアも当然 Cammie の養分です。
「ラブシックな音楽よね。クルーナー的な意味ではなく、切ない憧れとストーリー性を持った、かなりロマンティック。甘くて切なくて、夜にピッタリな音楽だわ。」
EVERGREY のプログレッシブな音の葉は OCEANS OF SLUMBER のスピリットと切っても切り離すことはできません。
「全員 EVERGREY の大ファンなの。”The Storm Within” は私の心を掻き毟り、彼らのエネルギーとボーカル Tom S. Englund が語る経験に引き込まれるわ。彼は信じられないほどソウルフルなのよ。OCEANS は彼らに比較的似ていると感じているの。素晴らしくとてもヘヴィなアルバムよ。」

つまり、メタルは他の何ものにも出来ない方法で人と人を絡み合わせると彼女は信じているのです。
「目を閉じていると、彼らの現実が、経験が伝わるのよ。私はいつも身体の外に出るような体験を探しているから。一瞬、私たちは完全に歌と一体となり、楽曲の書き手と一体となる。」
音楽的にも、プログ、ジャズ、R&B、ドゥームにゴシック、デス、ブラックといくつもの垣根を取り払ったセルフタイトル “Oceans Of Slumber” において、Cammie はそうやって文化や人種の壁も取り払いたいと切に願っています。Dan Swano のミキシングとテキサスヒューストンの組み合わせもその主張を実践していますね。
「ドラマーで私のパートナーでもある Dobber がこのレコードで君のことを語ろうと言ってくれたの。南部に住む黒人女性としての私の気持ちをもっと大きなスケールで OCEANS の音楽に反映させようってね。それってメタルコミュニティにはまだあまり浸透していない視点なの。だから、彼の言葉は、自分の人生の中で感じている怒りやズレ、混乱、葛藤などを、本当に深く掘り下げていくための青信号になったわね。私たちは、明らかにいつも存在し、常に問題となっているものを探求し始めたの。長い間、ある種のカーペットの下に押し込められていた問題をね。」
ジョージフロイド氏が殺害され、Black Lives Matter が世界を揺るがした時、Cammie の発したステイトメントは胸を打ちました。

「私はアメリカの黒人女性で、奴隷の曾孫娘。それは写真の中だけの記憶。幼い頃、私は奴隷の生活を想像しようとしたわ。だけど今起こっている現実は、私の子供じみた想像力の裏にある謎を解き明かしてくれたの。南北戦争ドキュメンタリーの古い写真を見ると、彼らの顔が見えるわ。マーティン・ルーサー・キング・ジュニアに触発された行進の映像を見ると、彼らの顔が見える。そして今、ソーシャルメディアにサインインして、催涙ガスをかけられているデモ参加者を見ると、彼らの顔を見ることができる。そして今は私の顔も見えるのよ。
黒人の上院議員、市長、有名人、勇敢な人々がネット上でこの国の欠点に対する不満を共有しているとき、私はもう怒りの涙を抑えられないの。全国放送のテレビで、これまで以上に多くの黒人が泣いているのを見てきたわ。自分の歴史が壊れたような気がするし、この国が壊れたような気がする。ジョージ・フロイドは転機となった。新世代が「もういい加減にしろ」と言うきっかけになった。彼の人生を奪った紛れもない冷酷さを無視することはできなかったの。彼の死がビデオに撮られたことは、感情的にはぐちゃぐちゃになっていて居心地が悪いけれど、それでも幸運だと思っているわ。それはついに世界に、何十年もの間、ネイティブアフリカンのアメリカ人が注意を喚起しようとしてきたことを、自らの目で見る機会を与えてくれたから。物事はまだ壊れている。とても、とても、壊れている。
アメリカの歴史を考えてみると、白人でない者に良いことはほとんどないの。それが真実よ。色々な情報を鵜呑みにすると胸に空洞感が残るのよ。この国は何かを直しているのではなく、何かを手放しているのだと気づくわ。壊れ始めたのは、間違った方法で、間違った土台と間違った考え方で始まったから。始める前に対処することを選んだ。他者への抑圧を維持することで強さを維持することを選んだ。楽な道を選んだその同じ道が常に足かせになることに気づかずに。もはや息を止めたり、憎しみや抑圧のためのスペースを確保したり、安易な道を選んだりすることはできないわ。国家として、私たちは最も脆弱で最も問題を抱えた人々や地域社会に思いやりとケアを示さなければならないの。彼らを奮い立たせれば、私たち全員が奮い立つでしょう。彼らを貶めるものが我々を貶めるのと同じように。コミュニティに属することは意味があることに気づくのが早ければ早いほど、私たちは前に進み、すべての人のために真の変化を起こすための連帯感を見つけることができるのだから。
抗議活動の勢いを持続させ、前進させるためにはどうすればいいのだろうか。これは、すべての人が反省するための時間。自分の信念が自分の人生をより良いものにしてきたのだろうか?私の信念は、私の周りの人々の生活をより良いものにしただろうか?正直に答えて、よく考えて欲しい。私たちの未来は、それにかかっているから。」

音楽的に、アルバムは以前よりもその壮大さを増しています。Cammie の言葉を借りれば「Dobber は存在しない映画のサウンドトラックのように作曲している」。そうしてこれまで OCEANS の旅は、より内省的なものでしたが今回のセルフタイトルでは、より広い社会的なトピックや過去からインスピレーションを受けていることに気がついたのです。さながら、壊れた世界のサウンドトラックの如く。
「1年ほど前に第二次世界大戦の映像をカラー化した『第二次世界大戦 HDカラー』が公開されたんだけど、Dobber は大の歴史好きだから見に行ったんの。カラーで見ると物凄いわ。とても現代的に見えるから、頭の中では違った感覚になるのよね。戦争の原因となったもの、文化の分派、社会学、心理学を学んだわ。ヒトラーの台頭や、彼がいかに上手くやったのかを。パターンが見えてきて、それが今の時事問題とどのように関係しているのかが分かるようになる。新しいことは何もないことに気づくの。私たちは第一次世界大戦からベトナムまで、戦争と国際関係の深い穴に入っていったのよ。
そのあと『どうやってみんなに歴史を伝えればいいのだろう?みんなこの歴史を知っているのだろうか?!』と思ったわ。人々は歴史を知らないし、それが今の状況にどれだけ影響を与えているかも知らないような気がしたのよ。もしあなたが精神疾患を持っていたら、心理学者はあなたがどのように育ったのか、どこから来たのかを尋ねるでしょう?社会として、文化として、自分の歴史を見なければならないのよ。」

例えばブラックメタルがナチスの問題を抱えるように、メタル世界にも取り払うべき差別の壁は存在します。
「メタルコミュニティの中から、私の視点にこんなにも多くの支持が寄せられていることに驚いたわ。身近な友人の輪の中から、波紋が広がって、まさか共有するとは思ってもいなかった人たち(メタル界の白人男性)が、『俺たちはこれを乗り越えたいんだ。俺たちは解決すべき問題を抱えているし、変化が起こるべき正しい側にいたいんだ。』なんて言葉が寄せられるなんてね。明らかに、ここには多様性があるべきなの。すべてのミュージシャンはその生い立ちや文化ではなく、音楽性に基づいてチャンスが与えられるべきなのよ。その外見ではなく、音楽性でチャンスを与えるべき。そうすれば、音楽だけでなく、バンドのメンバーも多様化して、様々な人たちが集まることになるはずなのよ。」
パンデミックからBLM運動まで、これまでの2020年の出来事を考えると、Cammie の歌詞は今の時代にあまりに符合しています。
「今振り返ってみて、何が私たちをこれほどまで時代と関連性のあるアルバムを作らせたのか、その軌跡を見ようとしているの。私は偶然を信じない。実際、他の人たちも同じような軌跡をたどっていたと思う。人々は今、その歴史や、認識や制度がどのように彼らの周りの世界を形成してきたかに注目しているわ。一度真実とすべての情報を知ると、それを見逃すことはできないの。」

Cammie の作詞へのアプローチは思慮深く、創造的です。”Pray For Fire” では、再生と破壊両方のための火の対照的な機能を探求しています。つまり人々と土地を守るため、国有林での制御された燃焼と、戦闘での火炎放射器の使用。
ファーストシングル “A Return To The Earth Below” では、自身の鬱病との闘いを、より幅広い社会のパターンとともに考察しています。「私は自分自身を助けるために、集中して前を向いて努力し続けなければならないと感じているの。誰にでも対処することや克服しなければならないことがあるわ。それをもう一度紐解いてみると、社会がいかに悪いパターンに陥っているかがわかるのよ。物事がうまくいっているように見えても、ヒトラー・ユーゲントのように、ゆっくりと、誰も気づかないうちに追い越されてしまうこともあるんだから。」
Cammie の文章には遊び心もあります。クローザー “The Red Flower” は女性としての葛藤と矛盾についての曲で、TYPE O NEGATIVE の “Wolf Moon” カヴァーが続きます。
「”The Red Flower” は女性らしさを歌った曲で、Peter Steele の超ロマンティックなラブソングが続くのよ。(笑) 彼は愛に溢れた男で、彼女のストレスを少しでも和らげたいと思っているのよ!あの曲を女性としてカバーするのはちょっと生意気だと思ったけどね。」

Cammie は将来、特に次世代に希望を持っています。
「子供たちは私たちが生きてきた頃よりも多くの情報を目にするようになってきていて、それが良い意味で彼らを形作っていくのは間違いないと思う。これからの世代は、情報に精通し、賢く、感情的に賢い世代。私は彼らが行動を起こして、過ちのいくつかを元に戻すと信じているわ。私は長い目で見て希望を持っているの。」
アメリカの会場が安全に再オープンし、OCEANS OF SLUMBER のツアーが許可されれば、Cammie は、旅を通して経験するすべての景色、匂い、味の感覚をまた満喫したいと語ります。
「会場に到着して、荷物を降ろして、街に繰り出す瞬間が恋しいわ。まだ開場していないし、皆が荷物を積み込んで、サウンドチェックをして、そして会場のドアから飛び出して外に出て、日の光に目を慣らしながら外に立ち、どこの街でも、どこの国でも、賑やかな通りを見て、すべてを受け入れるの。そして、オープン前の小さな探検の時間を過ごすのよ。地元のおやつ屋さんを見つけたり、コーヒーや食べ物を買いに行ったり。それが一番懐かしいわ。戻ってくるかどうかもわからない何かを待っている気分よ。例えば、飼い猫が逃げてしまった時のように。内向的な自分が思っていた以上にステージが必要なの。人が必要なの …ほとんど誰にも会わなかったこの期間で、思っていた以上に人や観客、ビジネスを失ったことは間違いない。ステージに立って、自分の歌を熱心に聴いてくれている人たちが受け止めてくれていることほど素晴らしいことはないの。それこそが繋がりよ。もう二度とそれを経験できないという考えは、心の中の何かを破壊してしまうのよ。」

参考文献: KERRANG!:OCEANS OF SLUMBER’S CAMMIE GILBERT: “I FEEL LIKE MY HISTORY IS BROKEN, I FEEL LIKE AMERICA IS BROKEN”

KERRANG!: OCEANS OF SLUMBER ARE THE SOUNDTRACK TO A BROKEN WORLD

HOLLYWOOD LIFE: OCEANS OF SLUMBER’S CAMMIE GILBERT

LOUDERSOUND : 10 ALBUMS THAT CHANGED CAMMIE’S LIFE

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PARADISE LOST : OBSIDIAN】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH AARON AEDY OF PARADISE LOST !!

“You Have To Follow Your Heart And Soul Or Else You Can Sound a Little Dishonest With Your Craft. I Think If We Had The Mentality Of “Draconian Times Did Well, Let’s Make Another One!”, We Would Have Probably Split Up With The Following Years As It Would Have Felt Empty And Void Of Soul.”

DISC REVIEW “OBSIDIAN”

「僕たちは自分自身のサウンドを完璧なまでに見つけていて、過去32年間でバラエティーに富んだスタイルを実現してきたんだ。つまり、悲惨のタペストリーを幅広く描いてきたわけだよ。」
抑圧と絶望渦巻くコロナ禍の2020年に求められるのは、希望と解放を宿した慈光の音楽でしょうか?少なくともメタル世界では、負を帯電したダークな響きに慰めとカタルシスを求める殉教者が決して少なくないようにも思えます。ただネガティブな感情を瓶に詰め覆い隠すだけでは、きっと自己破壊的な暴発が待っているだけでしょう。
「PARADISE LOST の精神はいつだって何よりも、まず自分たち自身の喜びのために音楽を作ることだからね。心と魂に従う必要があるんだよ。そうしなければ自らの創作物が少し不正直に見られ聞かれるかもしれないからね。 「”Draconian Times” は上手くいったから、もう1つ似たようなものを作ろう!」ってメンタリティーを持っていたとしたら、空虚な気持ちになって魂の欠如を感じ、おそらく次の年には解散していただろうな。」
つまり、PARADISE LOST が描くゴシックドゥームの “悲惨なタペストリー” こそが、暗澹たる黒雲を払い、導きの光となる可能性を秘めていると言っても過言ではないはずです。何しろ、30年以上のキャリアで16枚の歴史を刻む失楽園のメタルには、Aaron の言葉通り他のどの音楽より内なる絶望と憂鬱の真なる創造性が潜んでいるのですから。
色彩豊かな不朽の傑作 “Draconian Times” から25年。新たなマスターピース “Obsidian” でヨークシャーの仄暗き伝説は、デスドゥームの凶暴な起源を再創造しながら、貪欲にゴシックメタルの領域をも拡大していきます。
寂寞暗然を認める唯一無二のシンガー Nick Holmes はここ数年、1992年の “Shades of God” 以来四半世紀ぶりにデスボイスを解禁し、ライオンを再び檻から解き放っています。”The Plague Within” でエクストリームメタルのインテンスを、”Medusa” でドゥームの重苦しいメランコリーを現代に蘇らせた PARADISE LOST は、そうして “Obsidian” で獰猛と陰鬱を完璧なまでに黒の多様でマリアージュさせてみせたのです。
特筆すべきは、悲惨のパレットにキャッチーな音の葉を注いだ “Ghosts” や “Fosaken” の耽美な耳馴染みの良さでしょうか。それは “Host” のシンセポップでも、”Believe in Nothing” のオルタナティブでもなく、SIOUXSIE SIOUX や SISTER OF MERCY と同種のゴシックなダークポップに思えます。
もちろん、Nick の豊かな表現力と Gregor Mackintosh の鍵盤まで含めた扇情力がドラマを紡ぐ “The Devil Embraced” や “Serenity” には “Draconian Times” のゴシックな遺産で満たされていますし、”Fall From Grace” の絡みつくドゥーミーな重量感と慟哭の旋律は改めてバンドの出自を示し、一方で “Ravenghast” では “Gothic” に通じる物哀しきエレジーを紡いでいきます。
ヨークシャーローズに幸運のタリスマンやシンボルを集めたアートワーク、死へ向かう運命、人生の旅路を綴るテーマも完璧。
今回弊誌では、誇り高きリズムマン Aaron Aedy にインタビューを行うことができました。「単純に、僕たちのゴスとメタル両方への愛情が理由だよ。当時、僕らの地元であるイングランド北部には巨大なゴシックシーンが存在してね。そしてもちろん、僕たちはメタルファンとしても育った訳だよ。だから理にかなっているよね。
両方のダークな面は美しく合わさったし、僕らの仲間たちと少し違うことをするという意味でも良いやり方だったね。」 どうぞ!!

PARADISE LOST “OBSIDIAN” : 10/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【MY DYING BRIDE : THE GHOST OF ORION】


COVER STORY : MY DYING BRIDE “THE GHOST OF THE ORION”

“Tired Of Tears Was Exactly How I Felt. They Had Been Flowing Freely From Me For Months And I Was a Shadow Of My Former Self. It Is Sad That This Will Continue For Many Others. Innocent People. So Very Tired Of Tears.”

HOW GOTHIC DOOM LEGEND TURNS DARKNESS INTO LIGHT

PARADISE LOST の “Gothic” こそがゴシックメタルの幕開けを告げたレコードであることに異論の余地はないでしょう。
以来、ミルトンの失楽園に啓示を受けた荘厳耽美の象徴は、”Icon”, “Draconian Times” とメランコリーの金字塔を重ねることとなりました。そうして、90年代というメタルの実験室は多種多様なゴシックの重音楽を創造することになるのです。
ゴシックメタルの総本山 Peaceville Records は、その PARADISE LOST, ANATHEMA, そして MY DYING BRIDE の通称 “Peaceville Three” を世紀末の世界へと送り出しました。さらにデスメタルから分岐した SENTENCED や TIAMAT、しめやかな女声をメインに据えた THEATER OF TRAGEDY, THE GATHERING と漆黒に広がる色彩の中でも、ヴァイオリンとクラシカルに沈む暗海 MY DYING BRIDE のゴシックメタルは飛び抜けてドゥーミーな陰鬱だったと言えるでしょう。

30年のキャリアで12枚の仄暗くしかし豊潤な旅路を歩んできた死にゆく花嫁が、自らの音の葉を超える悲劇に見舞われたのは、”Feel the Misery” リリース後2017年のことでした。中心人物 Aaron Stainthorpe の5歳の娘が癌と診断されたのです。Aaron は愛娘を襲った病を 「神の最も残酷な、愛のない創造物の1つ」 と断じ嘆きました。
「2017年9月、5歳になった美しい娘が癌と診断された。心配と混乱のブラックホールが目の前に広がったよ。この恐ろしい病気を取り巻く恐怖は、現実的で残忍で容赦ないものだった。化学療法と二度の手術をくぐり抜け、幸運にも娘は癌を克服した。それでも彼女は、残りの人生を再発と潜在的合併症の恐怖と戦いながら過ごさなければならない。だから私はただ自分が墓に向かう時、彼女が強く率直な女性として生きていて欲しいとそればかり願っているよ。」
娘の罹患は Aaron の人生観、そして未来を大きく変えました。
「彼女が病気になる前は単純で愚かなことにイライラしていたけど、本当に深刻な何かに対処しているとそれが非常に取るに足らないものに思える。例えば昔ならプリンターが上手く働かなければばらばらに叩き壊しただろう。だけど今の私はただ、新しいのを買おうと言うだけさ。私を苦しめ、ストレスを与えるだろう愚かな些細なことは、もはや存在しない。人生に変化があったんだよ。私は変わった。もっとリラックスして落ち着いた人になったのさ。」

創立メンバーで出戻りの Calvin Robertshaw とドラマー Shaun Taylor-Steels がレコーディングの直前にバンドを離れました。
「もっと重要なこと、娘の治療に気を取られていたから、メンバーの離脱を気にかけている暇はなかったね。だから Andrew が Calvin がまた辞めたと言ってきても正直どうでも良かったんだ。幸運にも早めに出て行ってくれたから “The Ghost of Orion” のための彼の素材はそんなに残っていなかったんだけど、後からお金を請求されても嫌だから Andrew が全て書き直したよ。ギタリストなら自分のリフが全て採用されるほうが幸せってもんだ。前のアルバム “Feel the Misery” も Hamish Glencross がレコーディング前に辞めたから同じ状況だった。あのアルバムのレビューはこれまでよりポジティブだったから、Andrew が素晴らしいソングライターであることはすでに証明されているからね。
Shawn の場合、エンジニアの Mark が ex-PARADISE LOST の Jeff Singer を知っていて、僅か2週間で全てを覚えて素晴らしいドラミングを披露してくれたんだ。
もちろん、過去にメンバーが去った時は少しイラついたかもしれない。だけど今回私は別の次元にいたからね。ある意味 MY DYING BRIDE との繋がり自体、少し希少になっていたから Andrew はストレスが溜まっただろうな。メンバーが去ったと慌てても、私は肩をすくめて知らないよと言うだけだったから。」

レコードで最も荘厳にエモーショナルに織り上げられた “Tired Of Tears” は文字通り娘の罹患に枯れ果てた涙の結晶。
「この楽曲は僕の人生で、最も恐ろしくストレスが溜まった時期を扱っている。唯一の子供が死に近づいたんだから。これまでも落ち込んだことはあったけど、これほどではなかったよ。真の暗闇でどう対処して良いのか全くわからなかった。それでも全力を尽くして戦おうと決めたんだ。涙が枯れ果てたとはまさに私が感じていた気持ちだ。何ヶ月も涙が自然と溢れ続けたんだ。」
結局、MY DYING BRIDE のあまりに長く、思索を誘う悲嘆のセレナーデは現実という葬儀の行進を彩る葬送曲です。Andrew によると、「悲惨な楽曲は現実の生活に対処するための準備でありカモフラージュ」なのですから。
MY DYING BRIDE は Peaceville Records と最も長く契約したバンドでしたが、”The Ghost of Orion” で袂を分かち Nuclear Blast と新たに絆を結びました。
「Peaceville を離れたのは時間が理由だったと思う。彼らは私たちのために出来得る限り全てをしてくれたし、完全なる芸術的自由を与えてくれたね。だけど私たちはもっと多くのものを提供したかったし、コミュニティーにおける存在感もさらに高められると感じていたんだ。Peaceville はその渇望を満たすことが出来なかった。Nuclear Blast ほどの巨大なレーベルなら実現が可能だからね。
新たなレーベルと契約し、新たなメンバーを加えて、私は MY DYING BRIDE が蘇ったように感じているんだ。新鮮な空気を吸い込みセカンドチャンスが与えられたようにね。”The Ghost of Orion” は最高傑作に仕上がったと思うし、再びエネルギーを充填して、より大きく、より素晴らしい音楽を生み出すバンドを目指していくんだよ。」

“The Ghost of Orion” は MY DYING BRIDE 史上最もキャッチーでアクセシブルだとメンバー、リスナー、評論家全てが評しています。その変化は存在感を高めるため?それともレーベルの影響?もしくは娘の回復が理由でしょうか?
「全ては意図的に行われた変化だよ。Peaceville 時代の後期からすでによりレイドバックした “イージーリスニング” なアプローチは検討されていたんだ。過去の私たちがそうであったように、若いころは強い印象を与えようとするからね。私たちも4回リフを繰り返して自然に他のパートへ移行する代わりに、ただ驚かせるためだけに同じリフを7回半ひたすらプレイしたりしていた。技術的に優れていることも証明したかったんだと思う。だけど、それはもう過去にやったことだ。今は何も証明する必要もない。
だからこのアルバムにはギターとボーカルのハーモニーがたっぷり含まれているんだ。ダブル、トリプル、時には4重にも重ねてね。さらにコーラスも存分に取り入れて聖歌隊の雰囲気を与えたよ。
ただ、あくまで MY DYING BRIDE 流のコマーシャルさ。だってシングル曲 “The Old Earth” にしたって10分あるんだからね。一般的なコマーシャルとはかけ離れている。それでも、耳に優しいのは確かなようだ。メタルに詳しくない友人が “Your Broken Shore” を褒めてくれたのは嬉しかったよ。つまり新たなファンを獲得しているってことさ。
もちろん、リッチなコーラスに不満を言うファンはいるだろう。でも私たちは新たなチャレンジを楽しみ、前へと進んでいるんだからね。」

新たな挑戦と言えば、チェロ奏者 Jo Quail と WARDRUNA の女性ボーカル Lindy-Fay Hella がゲスト参加しています。チェロはバンド史上初、女声も “34.788%…Complete” 以来初の試みです。
「アルバムを制作していくうち、特別な作品へ発展していることに気づいたんだ。それで私たちだけで仕上げるよりも、他の質の高いミュージシャンを加えて最高のアルバムに仕上げるべきだと思ったのさ。真に際立った2人の女性が、その才能で素晴らしいパートを加えてくれたんだよ。」
今や様々な分野のアーティストに影響を与える立場となった MY DYING BRIDE。では Aaron Stainthorpe その人はどういった芸術家からインスピレーションを受けているのでしょうか? CANDLEMASS と CELTIC FROST は彼にとっての二大メタルバンドです。
「”Nightfall” の暗闇は私の中で生き続けるだろうね!実に巧みに設計されていて、最初から最後まで過失のないレコードだよ。特にボーカルがね。CELTIC FROST なら “Into The Pandemonium” だよ。このバンドが支配するアンビエンスと真の狂気は私にとって純粋に詩的なんだよ。アートワークも素晴らしいよね。」
同時に DEPECHE MODE と DEAD CAN DANCE も当然彼の一部です。
「DEPECHE MODE を愛するメタルヘッドは決して少なくないよ。だって終わりのない落胆と陰鬱が存在するからね。私はアルバムだけじゃなく、12インチ7インチを出来る限り購入していたね。ファンクラブのメンバーにも入っていたくらいだから。
DEAD CAN DANCE で私が最初に聴いた CD は “The Serpents Egg” で、これは長年にわたって個人的なお気に入りなんだ。新しい歌詞や詩を書きたい時に聴きたくなるね。 モダンで厳格な心持ちから、望んでいる温かく創造的な雰囲気に変化させてくれる。このLPは、そうして “言葉の食欲” が落ち着くまで繰り返されるわけさ。」
さらには SWANS まで。「Michael Gira の心は複雑で、その創造的な成果は特に SWANSに現れている。Michael の提供する複雑なリリックと楽曲は、時に不快だけど喜びで価値があるものだ。何が起こっているのかわからないけど、魅力的で戸惑うほど美しい。」

そうした Aaron の才能はいつか小説や映画を生み出すのかもしれません。
「いつか映画を撮るかもしれないね。大きな映画館じゃ上映されないような作品さ。2020年のベストフィルムは “The Lighthouse” だよ。4K やフルカラーで撮影されなければ映画じゃないように思われているかもしれないけど、実際はそうじゃない。」
今年はバンドにとって3枚目のアルバム、マイルストーン “The Angel and The Dark River” の25周年です。興味深いことに、名曲 “The Cry of Mankind” は僅か2時間半で全てが完成した楽曲です。
「Calvin が適当にギターを触っていて、残りのメンバーは無駄話をしていた。でも彼のフレーズの何かが私たちの耳を捉えたんだ。そこから全員で一気呵成に仕上げていったね。こうやって自然と出てくる曲はそれほど多くはないよ。通常は誰かが「私に3つのリフがある。さあここから他の楽器で装飾し楽曲を作ろう」って感じだから、何もないところから作られて絶対的なリスナーのお気に入りになったのは最高だよ。ファンがその曲を愛しているんだから、すべてのギグで演奏しなければならないと思う。」
Aaron と Andrew は唯一のオリジナルメンバーで、その付き合いは30年を超えています。
「私たちは老夫婦のようなものさ。 両方とも同じものを望んでいる。それに私だけがオリジナルメンバーではないのが嬉しいんだよ。親愛なる人生のために、他の誰かがまだそこに留まっているのは素晴らしいことだからね。 もし Andrew が辞めたら、私もタオルを投げるだろうな。彼も同様のことを言っているがね。なぜなら私たちは自分からは辞めると言いたくないんだよ。だから長く続くかもしれないね!私はまだもう10年は続けられると思う。」

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DEVIL MASTER : SATAN SPITS ON CHILDREN OF LIGHT】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH HADES APPARITION OF DEVIL MASTER !!

“I Think The Desire To Find The Most Chaotic And Moribund Sound Is What Drew Us To Japan’s Underground Music Scene. It Has Had a Huge Impact On Us Musically And Aesthetically.”

DISC REVIEW “SATAN SPITS ON CHILDREN OF LIGHT”

「僕たちのライティングプロセスにおいて、禁止されていることは何もないし、創造的なプロセスを阻害するいかなる意図も働かないよ。」
エクストリームミュージックの世界において、ジャンルの “純血” を守るためのみに存在する特有の “ルール” はもはや過去のものへとなりつつあります。ヴァンパイアの血を引く “漆黒のプリンス” を盟主に仰ぎ、フィラデルフィアから示現したオカルト集団 DEVIL MASTER は、天衣無縫な怪異の妖気でメタル、ハードコア、ゴス、ポストパンクといったジャンルのボーダーラインをドロドロに溶かしていきます。
「 G.I.S.M., ZOUO, MOBS, GHOUL, GASTUNK…間違いなく彼らの影響は、僕たちが成そうとしていることの基礎となっているね。最も混沌とした、瀕死のサウンドを見つけたいという願望が、日本のアンダーグラウンドミュージックシーンに僕たちを引き寄せたんだと思うよ。」
ブラックメタルの歪みと混沌、スラッシュの突進力、衝動的なハードコアのD-beat、ゴシックロックの濃密なメランコリー、揺らぐポストパンクのリバーブ、そしてクラッシックメタルの高揚感。モダンメタルの多様性を究極に体現する DEVIL MASTER の音の饗宴。その骨子となったのは驚くことに、ここ日本で80年代に吹き荒れたハードコアパンクの凶悪な嵐、いわゆるジャパコアでした。
確かに、ZOUO のサタニックなイメージをはじめとして、パンクらしからぬ高度な演奏テクニック、ノイジーでメタリックなサウンドメイクなど、良い意味でガラパゴス化した当時のジャパコアシーンの異端なカオスは、DEVIL MASTER の原点としてあまりに符号します。
そして皮肉なことに、DEVIL MASTER が極東の前世紀アンダーグラウンドを起点として、多彩な阿鼻叫喚を創造したのは、今現在 「大半のモダンメタルが陥っている一種の停滞から自身をしっかり識別、認識させたいという願望」 にありました。
「サタニズムに纏わる事柄は、間違いなく僕たちの音楽に内包されているね。だけど、僕たちのアプローチは確実に典型的な意味では用いられていないんだ。」
ギターの片翼 Hades Apparition も固執する “典型” を嫌うマスターの哲学。さらにマスターマインド Darkest Prince は、「サタンは世界を前進させる力だと思う。神にも似て…いや神なんてものはいない。それは”フォース”の名称であるだけさ。邪悪だって存在しない。ただ、”道義心” が社会を形作っているだけなんだよ。」 と語ります。
つまり、彼らのサタンは “生を肯定” する存在。サタニズムを邪悪や悲惨のネガティブな一元論で語るバンドが多い中、”Devil Is Your Master” に示された通り DEVIL MASTER は、”マスター” という “フォース” の栄光を讃えることで、サタニズム由来のメランコリズムと高揚誘う勝利のサウンドを見事に両立しているのです。
EP のコンピレーションを経て Relapse からリリースとなったデビューフル “Satan Spits on Children of Light”。ピアノに始まりピアノに終わるレコードは、”Skeleton Hand” でハイテンションのホラーパンクを、”Desperate Shadow” で MERCYFUL FATE の劇場感を、”Dance of Fullmoon Specter” では古の日本の伝承を探求し、70年代のオカルト映画に通じる退廃的な邪悪をシアトリカルに体現するスペクタクルとなりました。それは聴覚とそして視覚からリスナーを地獄の底へと誘う旅。
CODE ORANGE, POWER TRIP を手がけた Arthur Rizk のプロデュースはまさしくクロスオーバー最先端の証でしょうし、もちろん、GHOST の手法を想起するリスナーも多いでしょう。
今回弊誌では、Hades Apparition にインタビューを行うことが出来ました。「一つの旗の下に音楽を創作するという典型的な “近視” の状態ではなく、僕たちの全ての影響を出したいと願うよ。そうすることで、僕たちの音楽に住む混沌とした性質をさらに加速させることが出来ると思うんだ。」 どうぞ!!

DEVIL MASTER “SATAN SPITS ON CHILDREN OF LIGHT” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SWALLOW THE SUN : WHEN A SHADOW IS FORCED INTO THE LIGHT】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MATTI HONKONEN OF SWALLOW THE SUN !!

“The Whole Album Is Personal And Very Special For Juha Raivio And For Us Also As a Band. All I Want To Say Is That I Believe There Is Hope Also Involved On The Album. A Light At The End Of The Tunnel. “

DISC REVIEW “WHEN A SHADOW IS FORCED INTO THE LIGHT”

2016年、ギタリストでメインコンポーザー Juha Raivio が長年のパートナーでコラボレーターでもあった Aleah Stanbridge を癌で失って以来、フィンランドの哀哭 SWALLOW THE SUN はまさに涙淵へと深く沈んでいました。
ツアースケジュールの延期に隠遁生活。そうして2年の服喪の後、最終的に Juha が自らの沈鬱と寂寞を吐き出し、Aleah との想い出を追憶する手段に選んだのはやはり音楽でした。
Aleah の闘病中に制作された前作、”Songs From the North I, II and III” はメタル史においても前代未聞、3枚組2時間半の大エピックとしてリリースされました。「僕たちのスローガンを明瞭に示したんだ。憂鬱、美麗、そして絶望。僕たちが音楽に封じている三原則だよ。同時に、Juha Raivio にとってはとてもパーソナルなアルバムにもなったんだ。彼が当時、人生で経験したことを封じているからね。」Matt Honkonen が語るように、Juha の尽き果てる希望を憂鬱、美麗、絶望というバンドの三原則で封じたレコードは、同時にアルバム単位から楽曲単位へと評価の基準が移り行くインスタントミュージックの機運に一石を投じる壮大なアンチテーゼでもあったのです。
「ああいったエピック、トリプルアルバムをリリースした後だったから、僕たちは何か別のとても特別なものを創出したかったんだと思うんだ。」Matt の言葉通り、喪が開けて Aleah への追悼と Juha の深痛を宿す最新作は、”Lumina Aurea” と “When a Shadow is Forced Into the Light”、EP & フルアルバムというイレギュラーなリリースとなったのです。
13分半のタイトルトラックとそのインストバージョンで構成された EP “Lumina Aurea” の音楽は、これまでの SWALLOW THE SUN スタイルとは大きく異なっていました。
ネオフォークの大家 WARDRUNA の Einar Selvik と、イタリアンドゥームの傑物 THE FORESHADOWING の Marcus I の助力を得て完成させた楽曲は、完全にジャンルレス。ネオフォーク、ドゥーム、スポークンワードにオーケストレーションとグレゴリアンスタイルを加味した “Lumina Aurea” は、ただ純粋に Juha の慟哭と闇を音楽の姿に写した鬼哭啾々の異形でした。
一方で、「僕はこのアルバムに関しても希望は存在すると信じているし、トンネルの出口には光が待っているんだ。」 と Matt が語る通り、フルアルバム “When a Shadow is Forced Into the Light” はタイトルにもある “影”、そしてその影を照らす “光” をも垣間見られる感情豊かな作品に仕上がったのです。
デスメタルとドゥーム、そしてゴシックが出会うメランコリーとアトモスフィアに満ちたレコードは、まさにバンドが掲げる三原則、”憂鬱、美麗、絶望” の交差点です。
恍惚のオーケストレーション、アコースティック、ダイナミックなドゥームグルーヴ、胸を抉るボーカルハーモニーにグロウル。リッチなテクスチャーで深々と折り重なる重層のエモーションを創出するタイトルトラックは、SWALLOW THE SUN のレガシーを素晴らしく投影する至高。
“Lumina Aurea” の深海から浮上し、暗闇に光を掲げる “Firelight” のメランコリーはバンドの長い歴史に置いても最もエモーショナルな瞬間でしょう。死は人生よりも強靭ですが、きっと愛はその死をも凌駕するのです。
もちろん、”Clouds On Your Side” を聴けば、ストリングスがバンドのメロウなアンビエンスと痛切なヘヴィネスを繋ぐ触媒であることに気づくでしょう。そうしてアルバムは、ダークでしかし不思議と暖かな “Never Left” でその幕を閉じます。
“When a Shadow is Forced Into the Light” を聴き終え、Juha と Aleah の落胤 TREES OF ETERNITY の作品を想起するファンも多いでしょう。リリースにあたって、全てのインタビューを拒絶した Juha ですが、1つのステートメントを残しています。
「このアルバムは Aleah を失ってからの僕の戦いの記録だ。”影が光に押しやられる時” このタイトルは Aleah の言葉で、まさに僕たちが今必要としていること。2年半森で隠棲して人生全てをこの作品へと注ぎ、影を払おうと努力したんだ。言葉で語るのは難しいよ。全てはアルバムの音楽と歌詞が語ってくれるはずさ。」 バンドに18年在籍する代弁者、ベーシスト Matti Honkonen のインタビューです。どうぞ!!

SWALLOW THE SUN “WHEN A SHADOW IS FORCED INTO THE LIGHT” : 10/10

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INTERVIEW WITH VILLE LAIHIALA 【S-TOOL, SENTENCED, POISONBLACK】JAPAN TOUR 2018 SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH VILLE LAIHIALA OF S-TOOL !!

S-TOOL Photography: Loma Graphics/ Jani Mahkonem Retouch: Loma Graphics/ Jani Mahkonen
S-TOOL
Photography: Loma Graphics/ Jani Mahkonem
Retouch: Loma Graphics/ Jani Mahkonen

One Of The Best Singer In Finland, Ville Laihiala Talks About His New Band S-Tool, Upcoming Japan Tour, And Legendary Sentenced & Poisonblack !!

ABOUT VILLE LAIHIALA

SENTENCED で慟哭のノーザンメランコリックメタルを創成し、POISONBLACK でもより幅広い枠組みの中でその叙情を追求し続けて来た不世出のシンガー Ville Laihiala が、新たな旅路 S-TOOL で遂に日本へと帰還を果たします!POISONBLACK 以来8年振りとなるレジェンドの降臨は、かつてより硬質なエキサイトメントを誘うはずです。
変革は突然でした。1995年、IN FLAMES の “The Jester Race”、DARK TRANQUILLITY の “The Gallery”、AT THE GATES の “Slaughter of the Soul” と時を同じくして名盤 “Amok” を世に送り出し、メロディックデスメタルの骨格を形成した SENTENCED。しかし彼らがその領域へと留まったのはほんの僅かな期間のみでした。
EP “Love & Death” で変化の予兆を示したバンドは、デスボイスを廃し、新たに独特のダーティーボイスで悲壮を歌い紡ぐ Ville Laihiala を迎え入れる決断を下します。
振り返ってみれば、メインコンポーザー Miika Tenkula の音楽的ビジョンは “Amok” の時点から他のメロデスレジェンドに比べて一際洗練され拡散していたようにも思えます。そしてその天賦の才は Ville という漆黒の翼を得て、フィンランドの凍てつく空寂を縦横無尽に飛び翔ることとなりました。
1998年にリリースされた “Frozen” はバンドの全てが噛み合い理想が形象化したはじめての作品と言えるのかも知れませんね。
“The Suicider” が象徴するように、時にニヒルに、時にストレートに死や自殺をテーマとして扱う SENTENCED。シンプルでしかし印象深いギターメロディーに融和する悲嘆と失意の絶唱は、あまりに直情的に極寒の空気を切り裂きます。
ゴシックなイメージでアグレッシブに突き進む彼らの手法は恐らく HIM や NEGATIVE といった後続にも大きなインスピレーションを与えています。つまり SENTENCED はメロデスと並び二つのジャンルで先駆者の地位にある稀有な存在だと言えるでしょう。
同時に、勿論これはメタルですが Miika のメタルらしいリフワークから距離を置いたそのギターフィロソフィーには、確かにパンクやグランジの奔放なアティテュードも滲んでいますね。
赤盤 “Crimson” の “Killing Me Killing You” で図らずも耽美と絶望があまりに紙一重であることを証明して見せた後、SENTENCED は完璧なる傑作、メランコリーの洪水青盤 “The Cold White Light” を完成させます。やはりこのバンドが生み出すメロディーは衝撃的なまでに胸を抉ります。まさに絶頂期。しかしバンドの終焉も突然でした。
“暗闇で手を差し出すけど誰もいないんだ。なぜただ人生を生きるだけでこんなにも辛いんだろう。僕は絶望に駆られてそれでも必死で手を差し出すんだ。” (No One There)
永眠した SENTENCED についてはあまり触れたがらなかった Ville ですが、「僕はいつだって自分自身を表現したいと思っているし、その必要も感じているよ。自らの “ノイズ” と言葉でね。だから確かに時にはモチベーションを保つのに苦労することはあったんだよ。」 と語ってくれました。
解散後に立ち上げた POISONBLACK では、ギタリスト、コンポーザーとしてもその魅力を存分に発揮した Ville。恐らくは、クリエイティビティーを制限される SENTENCED での活動に限界を感じたのかも知れませんね。
とは言えバンドの墓標、自らを葬る “The Funeral Album” で回帰したラフ&メタリックな音像は “May Today Become The Day” や “Vengence Is Mine” が証明するように、充分に魅力的なものでした。そしてその悲哀を帯びた硬性は、近年の METALLICA や DISTURBED ともシンクロしながら確かに S-TOOL のデビュー作 “Tolerance 0″ にも引き継がれているのです。
今回弊誌では、Ville Laihiala にインタビューを行うことが出来ました。”No Reunion!!” 悲しいことに我々は病で Miika を失いました。当然です。どうぞ!!

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【NOVEMBRE : URSA】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CARMELO ORLANDO OF NOVEMBRE !!

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Giant awakes!! Italian Prog-Goth/Doom maestro, Novembre are back with fantastic Post-Peaceville record “URSA” for the first time in nine years !!

DISC REVIEW: “URSA”

イタリアの Prog-Goth Giant、NOVEMBRE が9年の長いハイエイタスの後、待望の新作 “URSA” をリリースしました!!
90年代初頭、ANATHEMA, PARADISE LOST, MY DYING BRIDE といったバンドが構築した美麗な Gothic Death Metal サウンドは、彼らが契約していたレーベルの名を取り “Peaceville Sound” と表現されています。00年代に、ほとんど話題にも登らなくなったそのサウンドは、2010年代に入り、ANATHEMA, KATATONIA のような Post-Prog サウンドへの深化、もしくは昨年の PARADISE LOST, DRACONIAN のような強烈でモダンな原点回帰により、シーンのトレンドへと戻って来ているように思えます。
そういった状況の中、遂にイタリアの巨人 NOVEMBRE も動き出しました。叙情と怒り、プログ/ドゥーム/デス/ゴシックを見事に共存させた前作 “The Blue” は間違いなく、彼らの長いキャリアにおいて集大成と呼べるような傑作であったにも関わらず、時代は味方することなくバンドは長い沈黙に入ってしまいます。その間に、残念ながらメンバーこそ Carmelo Orlando、Massimiliano Pagliuso の2名となってしまいましたが、機は熟しましたね。
“Peaceville Sound” が復活を遂げた今、彼らの新作 “URSA” は奇しくも NOVEMBRE 初期の名作 “Wish I Could Dream It Again”, “Classica” 時代のサウンドに少しばかり原点回帰を果たしたようにも感じられます。あの時代を深く知るプロデューサー Dan Swano の起用もその要因の1つかも知れません。同時に、作品には ALCEST 以降の Post-Black サウンド、現代的なアトモスフィアも持ち込まれており、結果として “URSA” は、過去と現在の憂鬱で美麗なメタルサウンドを味わえる傑出した作品に仕上がっています。
9年の沈黙を破るかのような雄弁なアルバムオープナー “Australis” は幽玄で美しく、ダイナミックかつアトモスフェリック。まさに “Post-Peaceville Sound” とでも表現出来るような世界観を誇ります。
“The Rose” がロシア由来のメランコリックなメロディーで彼らの帰還を告げれば、前作のファンを狂喜させるようなプログメタル要素の強い佳曲 “Umana” でリスナーは完全に “URSA” の虜となるでしょう。”Umana” は8年前に書かれた楽曲だそうですが、熟成期間を経て Post-Black 化した OPETH のようなサウンドに仕上がったのは実に興味深いですね。
タイトルトラック “Ursa” はヨーロピアンフォークのヴァイブを強く取り入れています。これは作品のタイトルが、ジョージ・オーウェルの “Animal Farm” を引用したことと関連していて、つまり、あの時代のヨーロッパを音楽的に再現することで、現代のアニマリズムを風刺し批判しているのです。
KATATONIA の Anders がゲスト参加しシングルカットされた “Annoluce” は身をよじるようなメロディーが秀逸な典型的 “Peaceville Tune”。そして続く9分にも渡るインストゥルメンタルチューン “Agathae” はまさに初期の彼らと今を繋げるミッシングリンク。20年前、”Wish I Could Dream It Again” 当時に書かれたという楽曲は何年もの間、ギタートラックを重ね続けてようやくここに日の目を見たのです。彼らの楽曲に対する拘りが強く感じられるエピソードですね。
70年代の香りを感じさせる、Dan Swano 印の宝石のような “Fin” で60分の11月劇場は幕を閉じます。
今回弊誌では、ギター/ボーカルを担当する Carmelo Orlando にインタビューを行うことが出来ました。今作は時代も必ずや味方すると思います。どうぞ!!

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NOVEMBRE “URSA” : 9.6 / 10

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