“This Is The Dream Of My Life And Sincerely I Don’t Care About Money Or Fame. I Am Aware Of Today’s Prog Situation But My Passion For Music And Prog Helps Me a Lot To Overcome The Difficulties.”
“We Are a Black Metal Band, But Worry Not, We Are Anarchists And Antifascists. We Still Want To Be Part Of This Community.”
TO KNOW THE LIGHT
リーズのステーションハウスは、かつて警察署でした。そのため、今でも警察官と話すためにドアをノックする人が後を絶たないほどです。レコーディング・スタジオとして再利用された多くの古い建物と同様に、この場所の特徴は、新しい機能とうまくクロスオーバーしています。The Stationhouse の場合、いくつかの小部屋が、バンドがギターアンプを置いたり、ボーカルを録音したりするためのアイソレーション・ブースになっています。
Fabian Devlin は、「あの部屋は昔の留置場だったんだろうね」と言います。「僕らからするとかつての卑劣な場所でレコーディングして、今はクリエイティブになれる場所、警察を解体するアイデアを探求できる場所になっているというのは、ちょっと不思議な感じだったね」
Fabien と彼のバンド DAWN RAY’D がかつての警察署で録音した曲は、バンドのサードアルバム “To Know The Light” のオープニング・トラック “The Battle Of Sudden Flame” でした。この曲は、 “豚野郎が何もないのに子供を虐待した” 後に子供の父親が炎で反撃する物語。歌詞によると “分断の間違った側に生まれた” 警官の話。この曲は、レコーディングされた場所で行われていた “ビジネス” に対する考えが明確であり、特に「給料をもらっていた警官たちははみんなくたばれ” という宣言に、彼らの思いが込められています。
バンドのシンガー兼バイオリニストの Simon Barr がこの楽曲を微笑みながら紐解きます。
「そこには素敵なメタファーがあると思うんだ」
すでに DAWN RAY’D に目をつけている人たちにとって、こうした過激さは驚きではないでしょう。2015年に “A Thorn, A Blight EP” で登場して以来、リバプールを拠点とするブラックメタル・トリオ Simon、ギターの Fabian、ドラマーの Matthew は今や、政治的な事柄を扱うバンドの代名詞となり、イギリスのメタル・アンダーグラウンドの新星となっているのですから。”To Know The Light” のリリースを控えた彼らは、その音楽の質と発言力の両方において、英国エクストリーム・ミュージック界で最も話題のバンドのひとつとなっています。
DAWN RAY’D は警察が嫌いで、反ファシスト。資本主義はあらゆる戦争と同じくらい破壊的だと考えています。選挙は結局のところ良い方向にはあまり向かわないという思想から、投票参加しません。王室について彼らがどう考えているかは想像がつくでしょう。つまり、DAWN RAY’D は、最も基本的なレベルでの人権、コミュニティ、平等、自分自身と隣人のために周りの世界をより良くすることとそのための努力のみを信じているのです。彼らは、一度や二度ではなく、何度でも、誇りを持ってアナーキズムを実践していきます。
「アナーキズムとはギリシャ語で “指導者のいない人々” を意味する “anarcho” から来ている」と Simon は説明します。「世界で起こっていることを外から見てみると、とにかくすべてが混沌としているよな。資本主義のもとでは、世界は滅びつつある。これほどカオスな世界はないだろう。僕にとってアナーキーとは、矛盾しているようだけど、秩序、協力、組織、そしてもっと全体的な生き方を意味しているんだ」
Fabian が付け加えます。
「他の誰にも悪い影響を与えない限り、誰もが自分にとって正しい生き方をする権利を持っている。そして、それを少し拡大すると、自分が生きたいように生きられるだけでなく、他の人たちが生きたいように生きられるようにベストを尽くすべきなんだよな。人は皆喜びと幸福に満ちた人生を送るべきで、できるだけ多くの苦労を取り除くべきなんだよ」
煽情的なオープニングと、より激しい音楽的な衝動が示すように、”To Know The Light” は政治的な怒りと同じくらい個人的なテーマを扱ったレコードです。Simon は、人はスローガンに惑わされることなく、最終的なゴールを自身が生きるに値する人生であると認識することだと定めています。それが結局は、すべての人のためになると信じて。
「COVIDでは、アナーコ・ニヒリズムに傾倒したんだ」と Simon は言います。「環境は破壊され、すべてが最悪で、革命も起きないかもしれない。しかし、ただ諦めて人間嫌いや絶望に屈するべきじゃない。酷い現実に対処する方法は、とにかく抵抗すること。抵抗のために抵抗し、尊厳と喜びを見出すことなんだ。それは、この世界が何であるかを見つけ、受け入れ、続けることにつながるからね」
実際、”To Know The Light” は、様々な意味で彼らのこれまでの作品とは一線を画しています。政治的な側面は変わりませんが、以前よりも個人的な傾向を帯びていて、怒りから絶望、そして周囲の闇を根本的に受け入れ、解放と喜びという新たな理解に至るまで、アナーコ・ニヒリズムの旅を辿るような歌詞になっているのです。テーマとなる内容の多くは、怒りと抵抗に根ざしていますが、ポジティブな要素も随所に見受けられます。
DAWN RAY’D はフォーク・ミュージックを、労働者階級の人々の傷や虐待、実生活の物語を記録する方法として定義し、他の方法ではアクセスできないような情報を広める方法と目しています。だからこそ、サウンド面でも彼らは伝統的なフォーク・ミュージックの要素を自分たちの音楽に取り入れていて、特に “Requital” や “Freedom in Retrograde” などの曲ではハーモニーやレイヤーにその傾向が見られます。
アルバムのジャケットは、デモの火の前でシルエットになった人物。”To Know The Light” は、単なる叫びではなく、新しい世界の見方を提示する誠実な作品だと彼らは考えてほしいのです。
「労働者が自分たちの人生を語ることができる方法のひとつがフォーク・ミュージックだ。労働争議、革命家の人生、そして権力者が我々に対して行うあらゆる虐待を記録している。過去と現在の間に隔たりはなく、これは最善の方法で語られる真実の物語なのだ。フォーク・ミュージックは “アコースティック” の代名詞ではなく、僕たちの実際の生活の音楽であり、苦労の結晶なんだ。
女性を残酷に扱い、貧しい人々を苦しめ、有色人種を平気で殺し、虐待する金持ちをかばい、反対意見を押しつぶすような組織を憎むことは議論の余地がなく正しい。警察への反対を正当化する必要はない。それは警察を支持する人たちの責任だ」
最近、英国ではもっぱら、最高権力者の金銭スキャンダル、警察での性的暴行、行方不明の移民の子供たち、不法滞在を許さないと下院で叫ぶ現職議員(Fabian は政治の中心にある “残酷さ” を強調するだけだと言う)、給与と条件についてストライキに入った疲れ切った病院スタッフを非難する政治家など、下水のようなニュースが垂れ流されています。
「絶望の中に身を置くのは簡単だ」と Fabian は言います。「このアルバムのテーマのひとつは、絶望を受け入れ、そこに寄り添い、絶望を通過し、でも絶望感を麻痺してしまわないようにすること。絶望に打ちのめされず、そこから喜びを見いだすべきなんだ。それがアナーキズムなんだよ」
当初、DAWN RAY’D はここまで政治的なことをやるつもりはありませんでした。3人はスクリーモのバンド We Came Out Like Tigers で一緒に演奏し始めましたが、このバンドには政治的な傾向があり、政治活動家が運営するスクワットで、同じような考えのバンドとよく演奏していました。このバンドが終わると、彼らは DAWN RAY’D(19世紀のアナーキスト作家 Voltairine de Cleyre の詩から取った名前)を結成し、Simon の不思議なほど効果的なヴァイオリンをトップに、新しい、ブラックメタルの道を歩み始めたのです。政治的な内容は、ブラックメタルとの関係性により、より顕著になりました。
「ヨーロッパ本土では、ブラックメタルは危険な領域だった。ヨーロッパのスクワットでは、国家社会主義とのつながりのせいで、人々はブラックメタルをチラシに載せないんだ。どのシーンでも同じだよ。極右はとっくの昔に文化利用の重要性に気づいていたんだ。ブラックメタルでも全く同じことが起こった。ノルウェーの数人のティーンエイジャーが、物議をかもすために卍を使い、実際のナチスに食い物にされた。だけど、パンク、スカ、テクノ、民族音楽でそうした連中が処分されたように、このシーンのチンカス連中も追放されるはずさ」と Simon は言います。「だから、俺たちは最初から、”俺たちはブラックメタル・バンドだけど、心配するな、俺たちはアナーキストで反ファシストだ、俺たちはまだこのコミュニティの一員でありたいんだ” とはっきり言わなければならなかったんだ」
続けて、ブラックメタルとアナーキズムの親和性について語ります。
「たしかに、ブラックメタルは伝統的にアナーキストと考えられているシーンではないと思うけど、革命、野性、自由、権威への憎悪といった考え方は、ブラックメタルの文脈の中ですべて納得がいくものなんだ。かつて、ブラックメタルがアナーキズムと相容れないものであったとしても、今は相容れるということだよ(笑)。
ネオナチはソーシャルメディアのコメント欄で僕たちに文句を言うけど、僕たちは右翼的なものを削除するのがとても上手で、彼らはライブで僕らに何か言う勇気はないんだ。それに、僕たちの発言には信じられないようなサポートがある。演奏するすべてのショーでこうしたアイデアについて話し、大きな募金活動を何度も行い、出来うる限り声を上げる僕らを人々評価してくれているようだから。僕たちが受ける憎しみは、僕たちが得るサポートによって圧倒的に覆い隠されるのだよ」
つまり、ブラックメタルは音楽的にも、哲学的にも、革命の最中にあります。
「PANOPTICON や ISKARA のようなバンドが道を切り開き、アナーキズムがこのジャンルにさらに踏み込んでいけるような新しい波が来ているように感じるね。
それに、時代の流れでもある。僕たちは絶望的な時代に生きていて、恐ろしい未来に直面している。どんな政治家も決して何かを解決することはできず、僕たちが信頼できるのは自分自身と自分たちのコミュニティだけだということが、これほどはっきりしたことはないだろうから。僕は、今、音楽を含む人生のあらゆる部分に革命への飢えがあると思っていてね。
ブラックメタルはアナーキズムにとても適している。僕は教会が嫌いだ。白人のキリスト教の礼節が嫌いだ。カトリック帝国の犯罪が嫌いだ。それらの建物が燃えても涙を流さない。メタルの右翼は、実は白人のキリスト教的価値観を支持している。それは、我々アナーキストよりもブラックメタルから分離しているように感じるね」
彼らの精神的ルーツは、MAYHEM や EMPEROR よりも、CRASS や CHUMBAWAMBA のアナーコパンクに近いと言えるのかもしれません。しかし、かえってその折衷性が、このリバプールのバンドのメッセージと影響力を高めています。
「パンクのショーでは僕らはメタル・バンドで一部の人には重すぎるし、ブラックメタルのショーでは政治的すぎて少し面食らう人もいるけど、それを楽しんでくれる人は必ずいる」と Simon は説明します。「そういうやり方が好きなんだ。僕たちは、本当に様々なフェスに出演してきた。マンチェスターで行われた反ファシストのフェスティバルに出演したんだけど、ヘヴィなバンドは僕らだけで、ラッパーやDJが出演していたよ」
逆に言えば、”真の” ブラックメタルでないことが、DAWN RAY’D のアイデンティティだと Simon は言います。MY DYING BRIDE を手がけた Mark Mynett の起用もその恩恵の一つ。
「僕たちに対する批判は、”真の” ブラックメタル・バンドではないというものが多かった。なぜなら、僕たちは反ファシストでありアナーキストだから。でも、”真の” ブラックメタル・バンドでなければならないというプレッシャーも感じていた。ブラックメタルはこうあるべきという他の人たちの考えに訴えかけようとしていたのかもしれない。このアルバムでは、それに逆らうような形で、自分たちの言葉で本当に演奏したいレコードを作ったんだ。ブラックメタルがどうあるべきかではなく、DAWN RAY’D がどうあるべきかでね。より親しみやすくメロディック。狂気のシンセサイザー、クリーン・ボーカル、ハーモニーを強調したアカペラ・ソング、そして大聖堂のパイプ・オルガン…”グロッシー” とでも言うべきだろうか。今回のアルバムは全く違うんだ。このレコードはとても違っていて、より多くの努力と時間とお金をつぎ込んでいるんだ」
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH IVAN HANSEN OF FROSTBITT !!
“We Have For As Long As We Have Listened To Metal Been Listening To Japanese Rock Bands Like Dir En Grey, Maximum the Hormone, Moi Dix Mois, Babymetal And a Lot Of Anime Openings!”
DISC REVIEW “MACHINE DESTROY”
「Mana 様の作品はどれも好きだけど、特に Moi Dix Mois で作られた音楽は最高だよね!Dir En Grey は、僕たちの大のお気に入り。”Yokan / 予感” や “Cage” のようなファンキーでアーバンなものから、”Obscure” のような Nu-metal、そして後のデスコアやジャンル・ブレンドのヘヴィなものまで、彼らの全てのスタイルが大好きだよ!特に特定の曲のライブ・バージョンが大好きで、より生々しくエモーショナルに聴こえるんだ。”濤声” のライブ・バージョンのようにね。あれは僕にとって完璧だ!NARUTO は特に130話までが僕にとって特別な場所。Asian Kang-Fu Generation の “カナタハルカ” は、生々しい叫びのようなボーカルで、僕に大きなインスピレーションを与えてくれた!」
日本の音楽は世界では通用しない。そんなしたり顔の文言が通用したのも遥か昔。アニメやゲームのヴァイラル化とともに、日本の音楽は今や海外のナードたちにとって探求すべき黄金の迷宮です。とはいえ、ノルウェーのノイズテロリスト FROSTBITT ほど地下深くまで潜り込み、山ほどの財宝を掘り当てたバンドはいないでしょう。
「特にボーカルとベース・サウンドは、KORN から大きなインスピレーションを受けているよ。”Solbrent” “Frostbitt” では、Johnathan Davis とChino Moreno のヴァイブに深く入り込んでいるんだ。ただ、そのせいで少し非難されたし、一時期ちょっとやりすぎたという事実にも同意しているよ。でも、この新しいレコードでは、彼らのインスピレーションはそのままに、他の多くのものも取り入れて、より味わい深いものになったという気がするね。自分たちを取り戻したような感じさ」
未だ Djent が新しく、勢いのあった10年代初頭に頭角を現した FROSTBITT は、近隣の MESHUGGAH や MNEMIC (素晴らしい!) に薫陶を受け、ローチューンのリズミック・マッドネスに心酔しながらも、同時に Nu-metal, 特に KORN や DEFTONES の陰鬱や酩酊をその身に宿す稀有な存在としてシーンに爪痕を残します。ただし、インタビューに答えてくれた Ivan Hansen の歌唱があまりにも Jonathan Davis に似すぎていたため、あらぬ批判を受けることもあったのです。まさに “Life is Djenty”。
しかし、FROSTBITT の時間旅行は “Machine Destroy” で空も海も飛び越える3Dの冒険へと進化しました。”Machine Destroy” というアルバム・タイトルが示すように、FROSTBITT の目的は常識や次元、時間、既存のメカニズムの破壊。CAR BOMB とのツアーは、FROSTBITT にとってノイズと獰猛さを探求するきっかけとなり、あの英国の破壊王 FRONTIERER をも想起させるアクロバティックなエフェクト・ノイズの数々は、”Frost-Riff” というユニーク・スキルとしてリスナーの脳裏に深く刻まれます。これはもう、ギミックの域を超越したテクニックの領域。
さらに、ここには日本からの影響も伝播しました。”Masked Ghost Host” のシアトリカルで狂気じみた呪文のような言霊の連打からの絶叫は、明らかに Dir en Grey の京をイメージさせますし、作品のテーマは攻殻機動隊。何より、”曲をリフ・サラダではなく、構造や繰り返しのある実際の歌らしい歌にしたい” という彼らの理想は非常に日本的な作曲法ではないでしょうか。タイトル・トラック “Machine Destroy” の致死的な電気の渦の中でも埋もれない、メロディの輝きは日本イズムの何よりの証拠。今作ではさらに、時に RADIOHEAD の知性までも感じさせてくれます。
デスメタルの単調とブラックメタルの飽和が囁かれるこの世界では、新しいアイデアを持ったバンドが必要とされているようです。1996年に片足を突っ込み、もう片足をThallの迷宮に突っ込んで、両腕を遠い東の島国に向けて突き上げる FROSTBITT の3Dな音楽センスは、明らかに前代未聞唯一無二で尊ばれるべき才能でしょう。
今回弊誌では、Ivan Hansen にインタビューを行うことができました。「ノルウェーは、暖かい夏と厳しい寒さの冬と雪の両方がある美しい場所。国土が広く、人々は国土全体に散らばっているから、ノルウェーを旅行するときはかなり遠くまで行くことが多いよね。それに、多くの家庭が森の中に山小屋を持っているから、歩く文化や山越えの文化も盛んなんだ。少なくとも、ブラックメタル・バンドからはそんな雰囲気が伝わってくるし、僕自身も同じようなことを実感しているんだよ」 どうぞ!!
そうした “良い” ゲームから学んだこともあります。
「可能な限り包括的で寛容で多様でありたいと思っている。僕は FLUMMOX というバンドの大ファンなんだ。そのバンドの僕らの親友 Max Moberry は、OTHERS BY NO ONE という別のバンドにも参加しているんだけど、彼らは…間違ったラベルを付けたくはないんだけど、そのコミュニティの一員なんだ。そして Max は僕らのアルバムにもフィーチャーされているんだ。”Moonlighter” の一番最後にね。
だから、僕たちはどんな生き方も歓迎するし、誰も排除したくはないんだ。むしろ、少数派の人たちにスポットライトを当てたい。OTHERS BY NO ONE は昨年 “Book II: Where Stories Come From” という素晴らしいアルバムを出していて、FLUMMOX は最近たくさんのライブをやっているよ。この2つのバンドとは Max のおかげでつながることができた」
トレカの収集にも余念がありません。
「”ハースストーン” は大学までずっとプレイしていたよ。物を集めるのは好きなんだけど、実際に物を買って集めるお金がなかったから、無料でゲームができるのは痒いところに手が届くというかそんな感じでね。2021年にBlizzard(Entertainment)が何かと物議を醸し、今のままでは応援できないと思い、その年の夏からプレイをやめたんだ。ちょうどその頃、同僚の多くが仕事帰りや昼休みに定期的に “マジック:ザ・ギャザリング” をプレイしていることを知り、僕も飛びついたんだ。
トレカにハマったのは、同年代のみんなと同じで、ポケモンカードが最初だよ。幼少期は絶対的なアイテムだったな。買いものに行くたびに親にカードをせがんだよ。これもみんなと同じように、実際のゲームの遊び方を知らなかったから、友達に見せびらかしたり、弟に自慢したりするためだけに、カードのお金をせびっていたんだ。それがきっかけで収集癖がついたというかね。その後、”遊戯王”、”マジック・ザ・ギャザリング” へと進んだんだ」
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SARAH PENDLETON OF THE OTOLITH !!
“It Is Worrisome And Frightening How Easily We Seem To Slip Back Into The Grave Mistakes Of The Past And Allow Ugliness And Hatred And Aggression To Poison Us. Vigilance And Memory Are Vital. Love Is Vital”
DISC REVIEW “FOLIUM LIMINA”
「”Bone Dust” はウクライナ侵攻の前に書かれたものだけど、自分の家を守るための歌。私たちは簡単に過去の重大な過ちに戻り、醜さと憎しみと侵略に毒されることを許してしまうようね。心配だし恐ろしいわ。警戒心と記憶力は不可欠だと思う。何よりも、愛は不可欠よ」
世界は多くの場所、様々な理由で燃えているように思えます。だからこそ、”過去” という灰の中から生まれた THE OTOLITH の “Bone Dust” は2022年に必要なアンセムにも感じられるのです。見事にサンプリングされた “独裁者” におけるチャップリンの演説と同様に、この楽曲は徐々に強度と熱を増し、燃え盛る世界の醜さ、憎しみ、不条理に対して教訓という愛を注いでいきます。
THE OTOLITH 63分のデビュー作 “Folium Limina” は、”Sing no Coda “に聞こえる遠い教会の鐘から、TOOL のような陶酔感の “Andromeda’s Wing”, ISIS を思わせるドラマティックなクローザー “Dispirit” の最後の音までリスナーは絶句し、静寂と轟音、美麗と醜悪の狭間で人間の業を知り、それでも希望という名の光を胸に秘めて生を見つめます。
「SUBROSA の終焉は、私たちにとって胸が張り裂けるような出来事だったわ。予期せぬ出来事で、私たちは何ヶ月も悲しみと混乱と嘆きに包まれていたの。でもね、グループのメンバーの一人がその一員であることを望まなくなったとき、最終的にはそれを受け入れて前に進まなければならないの」
THE OTOLITH は、ソルトレイク・シティで愛された SUBROSA の灰の中から生まれたバンド。元 SUBROSA のメンバー Sarah Pendleton、Kim Cordray、Andy Patterson、Levi Hanna と、VISIGOTH のベーシスト Matt Brotherton で新たな生を受けました。THE OTOLITH は不死鳥のように蘇るのか。それとも、イカロスのように燃え尽きるのか。求めよ、さらば与えられん。5人のデビュー作 “Folium Limina” は明らかに SUBROSA の遺品をさえ凌ぐフェニックスに違いありません。
「”Otolith” とは、ギリシャ語で “耳の石” を意味する言葉。内耳にある小さな水晶の構造物なのよ。バランス、動きの検出、音の検出を助けるの。アルバム・タイトルのフォリアとは、脳の中にある葉っぱのような構造物で、電気や電磁波のエネルギーを伝導させる働きをする。木の枝のように見えるわ。そして、リミナという言葉は、覚醒と夢想の間、シラフと陶酔の間、生と死の間などの心の辺境状態に由来している」
耳の石の名を冠した THE OTOLITH は、SUBROSA の残したものをある程度は受け継いでいると言って良いでしょう。巨大でアヴァンギャルドなドゥームを得意とし、情景を映し出すモノリシックなメランコリーが彼らの命題。氷河のようなリフがドゥーミーな海に突き刺さり、幽霊のようなヴァイオリンがその表面を悲しみの色に染め上げます。
美と破滅の間に境界線を引かず、幽玄なストリングスとダイナミックなベース、ギター、パーカッションを織り込んだ闇のタペストリー。現実と夢想、生と死の狭間で輝くのは Sarah と仲間の千変万化な歌唱。深く掠れた咆哮、礼拝的な詠唱、合唱のような澄んだ歌声は、SUBROSA の影をなぎ払い、キャッチーで、ダイレクトで、ドラマティックな THE OTOLITH の現在地を内耳の水晶へと刻みます。
「誠実さ、純粋な感情こそが、音楽を作る上で最も重要なピースだと信じているわ。だから、私たちにとって、それは今も変わっていない。その感情がネガティブなものであろうとポジティブなものであろうと、誠実である限り、すべての楽曲に含まれるべき唯一の要素なのよ」
誠実、純粋、愛。THE OTOLITH のスロウ・バーンはそうした感情の大切さと共に、過去の過ちから学ぶべき知恵の輝きを再確認させてくれます。残虐で冷酷な悲壮から切ない美しさまで、音のスペクトラムを横断する6曲は、近年稀に見る “アルバム” 志向の作品。つまり、これはタペストリーであり、美しく説得力のあるしかし欠点に満ちた人生の教科書なのでしょう。メタルを通して生命を吹き込まれた人間の経験は、暗く、美しく、思慮深く、超越的なものとなるはずですから。
今回弊誌では、Sarah Pendleton にインタビューを行うことができました。「ヘヴィ・メタルはバラエティに富んだ多元的な世界なの。木星サイズの抽象画のように、より多様になり、渦を巻き続けているのよ。私たちは、どんなサブジャンルに分類されようが、そこからこぼれ落ちようが、その世界の一部であることに恍惚としているの」 どうぞ!!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DANIEL DROSTE OF AHAB !!
“Listening To The Repetitive And Gloomy Atmosphere Of Funeral Doom Immediately Created Pictures In My Mind.”
DISC REVIEW “THE CORAL TOMBS”
「ジュール・ヴェルヌの “ノーチラス号” の小説は、”白鯨” に次いで、航海小説の中で最も人気のある物語。僕は60年代のディズニー映画で初めてこの物語に触れ、子供の頃本当に大好きだったんだ」
ドイツが生んだフューネラル・ドゥームの巨神 AHAB は常に深海に魅せられてきました。ハーマン・メルヴィルの “白鯨” に登場する狂気の船長を名乗る彼らの作品は、未知の世界への航海と、未知に隠された恐怖という名のカタルシスをいつも表現しているのです。
さながら IRON MAIDEN の大作 “Rime Of The Ancient Mariner” を深く暗い海底へと沈めるかのように、深海のフューネラル・ドゥーム集団は2006年の “The Call Of The Wretched Sea” で白鯨を語り、そこから2009年の “The Divinity of Oceans” でマッコウクジラによるエセックス捕鯨船沈没を舞台とした海の脚本を演じ続けました。
さらに、エドガー・アラン・ポーの “ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語”(2012年 “The Giant”)や、ウィリアム・H・ホジソンの “The Boats Of The Glen Carrig”(2015年の同名アルバム)においても、深海の神秘性とアトモスフィア、そして “自由” を、その深みを持った重くて広がりのある葬送曲で見事に表現してきたのです。
「強硬派に言わせれば、ドゥーム・メタルがドゥーム・メタルであるためには特定の様式美が必要だと主張するだろうが、ここには自由がある。これまで AHAB のために作曲している間、限界を感じたことは一度もないからね。ドゥーム・メタルというと、まずそのスロー・テンポや独特のハーモニーを思い浮かべるだろうけど、それ以外にも、ほとんどすべてのジャンルの要素を取り入れることができる自由があるんだ」
なぜ AHAB がこれほどまでに深海へと魅了されるのか。それはきっと、ドゥームと同様に海の底にも “不自由の中の自由” が存在するから。たしかに、光の届かない高圧の海底と同様に、ドゥームには重くて遅い反復の美学という確固とした不文律が存在します。しかし AHAB は、その不自由という音の檻を神秘性やエニグマという魅力へと変えながら、ドゥーム・メタルの長所を引き立てていきます。
つまり、”フューネラル・ドゥームのダークなムードとモノトーンな雰囲気においては、メロディやリズムのシンプルな変化で大きなインパクトを与えることができる” という Daniel の言葉通り、AHAB は屍が降り積もる真っ暗な海底でなお、音楽的な実験と冒険を繰り広げているのです。
「小説という雛形にとって、その物語の解釈に間違いや正解はない。目的ははアートであり、制限やルールは存在しないはずだからね。そして、それこそが僕が作曲をする上で好きな部分なんだ」
深海の語り部が “The Coral Tombs” で挑んだのは、ジュール・ヴェルヌの名著 “海底二万里”。オープニングから、物語のため彼らがはるか海面下に降りていくのが伝わります。”Prof. Arronax’ Descent Into The Vast Oceans” は、不協和音の予期せぬ爆発で始まり、ブラストビートと悲鳴で真っ暗な海道へと突入。スロウでドゥーミーなものを想像していた人には衝撃的な導入部。
一方、”The Sea as a Desert” は、海の砂漠が漂う即興的でサイケデリアを帯びた楽曲。そして、このアルバムの美しくミニマルな瞬間は、主にポストロックに由来していることが明らかとなっていきます。そう、AHAB の新たな冒険は、明らかに以前よりも多様化し、語り口が増幅されているのです。
特筆すべきは Daniel の歌声で、スクリームは魂の奥底まで浸透し、彼のクリーンな歌声は今までのどのアルバムよりも力強くエモーショナル。新たな武器を得た船長は、テンポ、テンション、メロディ、楽器編成をダイナミックに変化させ、レイヤーを緩やかに行いながら、重厚なメランコリーで彼らが熟練の船乗りであることを証明していきます。穏やかなアンビエンスから死のドゥームまで巧みに変容する音楽は、未曾有の音楽体験だと言えます。
それでも、”The Coral Tombs” の大半がドゥームであることに間違いはありません。外部からの影響はこれまで以上に大きいかもしれませんが、AHAB サウンド骨子となる、噛み応えのあるリード、引きずるようなリフワーク、そして沈むようなリズムの波は、未だに海の神秘を尊さまで備えながらリスナーの鼓膜をさながら海底地震のごとく揺らすのです。
今回弊誌では、Daniel Droste にインタビューを行うことができました。「AMORPHIS の “Tales From The Thousand Lakes” と HYPOCRISY の “The Fourth Dimension” を見つけたとき、10代の僕は本当に感動したんだ。アグレッシブな音楽は聴いていたけど、アグレッシブな音楽とダークなアトモスフィア、そして AMORPHIS の曲で使われているオリエンタルなメロディーの組み合わせは、僕を強く惹きつけるものがあったんだ」 どうぞ!!
SLEEP TOKEN の成功は、何年もかけて作られたもの。2016/17年にプログレッシブ・メタル/Djent のとポップやR&Bといった多様な影響を融合させたモダン・メタルで初めて登場し、”Fields Of Elation” や “Nazareth” は耳の早いリスナーたちの注目を集め始めます。しかし、このユニークで謎に満ちた集団が本当に軌道に乗り始めたのは、バンドがデビュー・フル・アルバムからの新曲を垂れ流し始めた2019年になってからでした。
SLEEP TOKEN を “ミステリー・バンド” “エニグマティック” と呼ぶのは、彼らに関する情報があまり出回っていないから。メンバーは儀式的な仮面をつけ、服装も隠しているため、その素性は明らかにされてはいません。わかっているのは、バンドのリーダーが Vessel という名前で活動していることと、 “Sundowning”(2019), “This Place Will Become Your Tomb”(2021)という2枚のフルアルバムがあることだけで、後者は、様々な媒体で2021年のベスト・アルバム・リストに選出されています。
SLEEP TOKEN のアイデンティティ、その神秘性と、複数の異なるスタイルの音楽を融合させた非効率性と異常性の両方を利用したことは、成功の助けとなりました。なぜなら、そうして複数の市場からの注目を集めることは、新人バンドにとって名声を得るための最も手っ取り早い方法のひとつであり、匿名性はファンによる “詮索” というアミューズメントを生み出します。
デジタル時代には匿名性の美しさがあります。私たちの多くは、知り合いが1~4つの SNS で常につながっていて、恐ろしいほどの勢いで切り替えながら憧れのセレブリティや、架空のヒーローについてあらゆることを学びます。私たちは、消費するために情報をノンストップで消費し、自分の行動を疑うことはありません。
SLEEP TOKEN の信奉者たちは、その手がかりを探し求めています。コヴェントリー在住のファン Chris が立ち上げた Discord サーバーで、彼らはバンドの歌詞、アートワーク、MV、グッズを丹念に調べ、ダ・ヴィンチ・コードのメタル版といった風態で隠れた意味を読み解こうと試みているのです。
「ウェブサイトで Vessel のインタビューを読んで、もっと知りたくなったんだ。Reddit でバンドのコミュニティがないか見てみたんだけど、当時はなかったから作ることにしたんだよ」
現在、そのメンバーは900人を超え、バンドが残した暗号を読み解くことに必死です。Tシャツのデザインに描かれた数字列が、鯨の死骸が海底に落ち、生態系全体の栄養源となる “鯨落ち” の座標であることを発見しました。
「バンドが提示する隠されたアイデンティティと世界観が好きだ。音楽だけでなく、全体的な体験ができるんだ」
アルバム “This Place Will Become Your Tomb” は、腐敗した鯨とそれを餌とする動物たちのヘヴィなイメージを象徴としています。死の中の生、つまり Vessel が頻繁にリリックで取り上げるトピックと永遠の繰り返しを表現しています。
Discord は、バンドがその芸術を通して何を探求しているのか、あるいはしていないのか、魅力的な洞察を与え続けています。
「何事も永遠には続かない。それまで我々は崇拝するのだ」と Chris は淡々と語ります。
インターネットと様々なソーシャルメディアの力によって、無名のバンドが一夜にして一般大衆に浸透する時代になったことは間違いないでしょう。SLEEP TOKEN を新しいバンドだと思い込んでいるメディアもあるかもしれません。しかし重要なのは、多くのバンドやミュージシャンがそうであるように、この新たな成功は何年もかけて作られたものなのです。結局、時代がどう変わろうと、バンドをどのように発見するかはあまり重要ではないのかもしれませんね。昔からのファンであろうと、SLEEP TOKEN の活動を初めて知った人であろうと、バンドが成功を収めることは常にクールであり、新しくてユニークな体験とサウンドを提供するバンドであれば、なおさら嬉しいことですから。
バンドへの期待値は、今後も上昇傾向にありそうです。Genius によると、具体的なリリース日は明らかにされていないものの、”Take Me Back to Eden” というタイトルのアルバムが進行中とのこと。
Spinefarm Records のウェブサイトでは、”Chokehold” と “The Summoning” について、「次に何が来るかは時間だけが教えてくれるが、確かなのは、それが慣習に縛られることはないだろう」と書かれています。
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH STU NICHOLSON OF GALAHAD !!
“I Think We Moved On From What You Would Call ‘Neo-Prog’ In Terms Of The ‘Sound’ Many Years Ago. I Think That These Days We Have Found Our Own ‘Sound’ Which Is Far More Diverse And Varied Than In The Early Days.”