NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【BELL WITCH & AERIAL RUIN : STYGIAN BOUGH VOL.1】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DYLAN DESMOND OF BELL WITCH & AERIAL RUIN !!

“Playing With a Guitar Was an Interesting Experience Because It Had Been So Long! Often Times I Try To Write Guitar And Bass Parts To Play At The Same Time On The Bass, But Having an Actual Guitar Allowed Room For Harmonies In The Upper Registers.”

DISC REVIEW “STYGIAN BOUGH VOL.1”

「今回は AERIAL RUIN とのスプリットではなく、完全なコラボレーションをしようと決めたんだ。Erik はこれまで僕たちのフルレングスアルバムの全てに参加していて、彼が加わった曲にはほとんどバンドそのものとしての魅力があると感じたからね。彼が最初に歌った曲が土台になっているという考えで、新しいバンドを作ってみてはどうだろうか?と思ったのさ。」
型破りなベース/ドラムスのデュオで、型破りな83分に及ぶ生と死の合わせ鏡 “Mirror Reaper” をリリースした BELL WITCH。沈鬱で思索を伴う葬送のドゥームメタルにおいて、参列者を陶酔の嘆きに誘うその呪われたスケール感は異端の域さえ遥かに超えています。
ただし、ベル家の魔女の重く厳粛なポルターガイストにとって、AERIAL RUIN こと Erik Moggridge がこれまで果たした役割は決して少なくはありませんでした。すべてのレコード、特に “Mirror Reaper” において Erik の仄暗きフォークの灯火は、バンドの神秘に厳かな微睡みをさえもたらしていたのですから。
そうして遂にフューネラルドゥームの極北とダークフォークの異彩が完全に調和する闇の蜜月 “Stygian Bough Vol.1” は世界にその孤影をあらわしました。
「Erik が BELL WITCH にはじめて参加したのは2012年の “Longing” からで、彼は “Rows (of Endless Waves)” の最後のパートを歌っているんだ。そしてあの楽曲のテーマは、世界に現れ破壊しようとしている、海に宿る幽霊や霊のようなものを扱っていたんだよ。Erik はこのテーマを “Stygian Bough” の歌詞でも継続していて、それがアートワークにも反映されているんだ。」
アルバムタイトルの “Stygian Bough” とは、英国の社会人類学者ジェームス・フレイザーの著書 “The Golden Bough” “金枝篇” に端を発しています。
人間の王殺し、権力の移譲を社会的、宗教的、神話的観点から比較研究した長編は、コロナ危機を反映していないとはいえ、現在のアメリカにこれほど問題意識を重ねる Dylan とバンドの深層心理を当然ながら投影しているはずです。語られるのは権力を巡り世界を破壊しかねない、王の亡霊と司祭、そして人類の強欲の物語。
「このアルバムの制作をはじめた時、僕たちは ULVER の “Kveldssanger” を参照して引き合いに出したんだ。あとは ASUNDER の “Clarion Call”、そして CANDLEMASS の “Nightfall” だね。」
ギター/ボーカルの Erik が全面的に加わることで、BELL WITCH の “ノーマルな” 作品群とは明らかにその出発点が変わりました。”The Bastard Wind”, “Heaven Torn Low”, “The Unbodied Air”。20分づつ3つの楽章に分かれたアルバムは、普段の葬送曲よりもテンポは増し、旋律は色彩を帯びて、確実に感傷的でエモーショナルな海風を運びます。
「ギターと演奏するのは久しぶりで、面白い経験だったよ。というのも、僕はギターとベースのパートを書いてそれをベースで同時に演奏しようとすることが多いからね。だけど今回は、実物のギターをバンドに組み込むことで高音域のハーモニーにも余裕が生まれたわけさ。」
ギター、和声との邂逅は、すべての音域を司る Dylan のベースラボラトリーにも変化をもたらしました。6弦から7弦へスイッチし奈落のような低音と深々たる残響を引きずりながら、高音域ではより自由にメロディアスな演奏を許されています。フレットに叩きつける右手と左手のタップダンスは、一層熱を帯びて激しさを増す一方でしょう。
Jesse Shriebman は、スペースが狭まった分だけ普段よりも手数を抑え、リズム楽器本来の役割を忠実に果たしながら、一方で荘厳なピアノとオルガンのアレンジメントに心血を注ぎ、煉獄のテクスチャーに多様性を導きました。そしてもちろん、Erik が紡ぐダークフォークの仄暗き幽玄はアルバムの真理です。
生と死の境界、権力の腐敗、人類による地球支配。光と陰が交差する新たなドゥーム世界は、BELL WITCH と AERIAL RUIN によって描かれます。この寂寞の叙情詩は、PALLBEARER が持つプログレッシブな革新性とはまた異なるベクトルの進化でしょう。
今回弊誌では Dylan Desmond にインタビューを行うことができました。「PRIMITIVE MAN との日本ツアーは素晴らしかったよ!COFFINS とプレイできたこともね。彼らはレジェンドさ!」2度目の登場。どうぞ!!

BELL WITCH & AERIAL RUIN “SATYGIAN BOUGH VOL.1” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【I BUILT THE SKY : THE ZENITH RISE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ROHAN “RO HAN” STEVENSON OF I BUILT THE SKY !!

PHOTO BY Huang Jiale

“To Me It Expresses The Nature Of The Project, Being Free To Create Your Reality I Built The Sky = I Create My World/My Art.”

DISC REVIEW “THE ZENITH RISE”

「僕にとってこの名前は、プロジェクトの本質を表現しているんだ。現実から自由になって、”空を構築する”。つまり、それって自分の世界/芸術を創造するって意味なんだ。
このプロジェクトは、以前僕の考え方だった “努力して作る” よりも、純粋に創造するため始めたものなんだけど、皮肉なことに、今ではフルタイムで取り組んでいるよ。」
“空には限界がないでしょ?” 南半球オーストラリアの天つ空は Rohan “Ro Han” Stevenson の牙城です。そうして大気圏から成層圏、東西南北を所狭しと吹き抜けるギターの風は、流動の旋律を後方へと置き去りにしていきます。
「僕は、空がどれだけ芸術的であるかにもとても惹かれているんだ。様々な色合い、要素、バリエーションがあって、全く同じような空模様になることは2度とない。だからこそ、その一期一会な偶発性を心から楽しんでいるのさ。」
Tosin Abasi, Plini, David Maxim Micic, Misha Mansoor。ある者は衝撃のテクニックを、ある者はリズムの迷宮を、ある者は斬新なトーンを携えて登場したモダンギターの精鋭たちは、弦の誉を別次元へと誘っています。
そんなニッチなインストゥルメンタルワールドにおいて、Ro Han は空という蒼のキャンバスにカラフルな虹音を誰よりも美しく描いていきます。テクニックや複雑性よりもリスナーを惹きつける魔法とは、きっとストーリーを語り景色を投影する能力。彼にはそんな音の詩才や画力が備わっているのです。
「僕は Tosin や Misha と対照的に多くの部分でロックやパンクのヴァイブを保っていると思うんだ。間違いなく、彼らほどギターは上手くないんだけど、それはきっとユニークなセールスポイントだろう。」
BLINK 182, GREENDAY といったポップパンクの遺伝子を色濃く宿したハイテクニックの申し子。”Journey to Aurora” は象徴的ですが、確かに Ro Han の空にはいつだって明快なメロディーが映し出されています。そして、djent のリズミックアクセントを、さながら流れる雲のごとく疾走感へ巧みに結びつけていくのです。
100万回の視聴を記録した “Up Into The Ether” は Ro Han の決意をアップリフティングな旋律に込めた希望の轍。2019年の夏に仕事を辞して I BUILT THE SKY で生きていくと誓った Ro Han。成功しようと失敗しようと後悔を残して生きるよりはましだと訴えます。
一方で、KARNIVOOL, DEAD LETTER CIRCUS を手がけた名プロデューサー、Forrester Savell との共闘、オーストラリアンセンセーションはアルバムによりアトモスフェリックで感傷的な空模様ももたらしました。
ダークで激しい雷鳴のようなタイトルトラック “The Zenith Rise” が晴れ渡ると、レコードはクリーンギターとアコースティックのデリケートでメロウ、時に優しくチャーミングな鮮やかな3つの音風景を残してその幕を閉じます。実際、この偶発性、予想不可能性から生まれるダイナミズムこそ Ro Han の音楽がクラウドコア、天気予報のインストミュージックと例えられる由縁なのでしょう。
今回弊誌では、Rohan “Ro Han” Stevenson にインタビューを行うことができました。「僕は自分でやらなきゃ気が済まないタイプで(コントロールフリークと言う人もいるかもしれないけど)、これが他の人との共同作業から遠ざかっていた原因の一部なんだ。
それはたぶん、僕が強い芸術的なビジョンを持っているからだと思う。自分が何を達成したいのか分かっているような気がするし、外から他の要素を加えても結局最終的な目標から遠ざかるだけだろうから、主に一人で音楽を作っているんだ。」8/5には P-Vine から日本盤もリリース決定!どうぞ!

I BUILT THE SKY “THE ZENITH RISE” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【STATIC-X : PROJECT REGENERATION VOL.1】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH Xer0 OF STATIC-X !!

“I Don’t Want My Face To Be The Face Of Static-X. That Seems Very Wrong. I Don’t Want My Name To Be At The Center. Xer0 Is a Figure, a Character, An Entity. I Believe That This Serves Static-X The Best. My Goal Has Always Been To Do What Is Best For Static-X.”

DISC REVIEW “PROJECT REGENERATION VOL.1”

「このアルバムが実際に出るまで、誰も STATIC-X を2020年に蘇らせることが可能だなんて思ってもいなかったよね。だけど実際、その不可能が実現したんだよ。」
悲劇の灰から立ち昇る再生の紫煙。予期せぬ喪失に吹き込まれる新たな生命。インダストリアルメタルに革命をもたらした20年の後、STATIC-X は Wayne Static の悲劇的な死とともに、永遠の沈黙に包まれる運命だと誰もが思っていました。
しかし、傑作 “Wisconsin Death Trip” を創成したオリジナルメンバーの団結、Wayne Static の遺した遺産、そして Xer0 という Wayne の魂を宿す亡霊によって、STATIC-X は Nu-metal/インダストリアルメタルの象徴に恥じない新たな一歩を踏み出したのです。
「僕の顔が STATIC-X の顔になるのは嫌だったからね。それは途方もなく間違ったことに思えたよ。自分の名前を中心にしたくないんだ。Xer0 は姿であり、キャラクターであり、存在である。 それが一番 STATIC-X のためになると思っているんだよ。僕の目標は常に STATIC-X にベストなことをすることなんだ。」
この世から姿を消したにもかかわらず、STATIC-X は今でも Wayne Static のプロジェクトであることは明らかです。それほどまでに、彼のビッグロックボイスとインダストリアルエナジー、そして重力に逆らったヘアスタイルのカリスマ性は際立っていました。
実際、SLIPKNOT, SYSTEM OF A DOWN, KORN, COAL CHAMBER といったメタルの新たな波が台頭し花開いた90年代後半、インダストリアルを基調にヘヴィーなディスコトリップを展開する STATIC-X の “Evil Disco” は完膚なきまでにあの時流へ符号していました。
そして、個性際立つ Nu-metal サーカスの中でも、フレディー・クルーガーの出で立ちで逆重力ヘアを纏い、映画と漫画のキャラクターを行き来しながら、共産主義から薬物乱用まで吐き綴る Wayne の存在感は遂に “Wisconsin Death Trip” のセールスをミリオンにまで導いたのです。
ゆえに、プロデューサー、パフォーマー、そして伝説の声を補う存在としてバンドに加わった Xer0 は文字通り、自らの存在感をゼロとして Wayne のマスクを被り STATIC-X の一部分に成りきりました。
「1999年の、STATIC-X お馴染みのビジュアル的な存在感を表現したかったんだよ。だからこそ毎晩スパイクヘアにしたんだ。ファンには、1999年に戻ったかのような、邪悪で斬新なタイムワープをしているような気分になってもらいたかったんだよ。そのためには、僕の “顔がない” ことがどうしても必要だったんだ。」
傑作の20周年を祝う旅路を終えた後、STATIC-X は “Project Regeneration Vol.1” と名付けられたプロジェクトに着手し、万難を排して新たなアルバムを世界へと放ちました。それはまさしく “再生” の道程。
Wayne の遺したデモテープを発掘し、Xer0 の声と手術でボーカルラインを繋ぎ、Tony, Ken, Koichi の偉大なトライアングラーは新たにレコーディングを行い楽曲に命を吹き込みます。完成したレコードは、当然ながらパッチワークの域を超えたノスタルジーとエナジーのダイナミックな泉でした。
チャンキーでメソジカルなビート、不気味なダウンチューンに近年再評価を受けつつあるアグロテック。MINISTRY の Al Jourgensen まで巻き込んで、これほどダンスとヘッドバンキングを両立させる音世界は彼らにしか作り得ない魔窟でしょう。Nu-Metal のダークサイドを投影した邪悪で斬新なディスコの復活です。
「多くの人が知っていると思っていると思うけど、実際には誰も何も「知っている」人はいないんだよ。憶測はたくさんあるけど、僕はそのどれにも興味は無いよ。もし僕が自分の正体を明かすことに決めたら、自分のやり方でそうするだろうね。自分がその権利を得たと信じているから。」
今回弊誌では、Xer0 にインタビューを行うことができました。一部では DOPE の鬼才 Edsel Dope ではないかとも囁かれていますが、どうなんでしょう。「Wayne は僕の友人だった。そして何より、アーティストとして、僕が信じられないほどのリスペクトを捧げている人物さ。」 どうぞ!!

STATIC-X “PROJECT REGENERATION VOL.1”: 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ULTHAR : PROVIDENCE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SHELBY LERMO OF ULTHAR !!

“None Of Our Lyrics Are Actually About H.P. Lovecraft, To Call The Album That Too. I Think There’s a Little Bit Of Lovecraft Influence In The Patterns Of Our Lyrics, But At This Point, I Think People Kind Of Assume We Are This “Lovecraft Band”, When Really, We Don’t Have That Much Attachment.”

DISC REVIEW “PROVIDENCE”

「ある意味面白いよね。だって僕たちの歌詞は、アルバムにしたって Lovecraft についてのものはないんだから。歌詞のパターンに少し Lovecraft の影響があるかもしれないけど、みんなが僕らを “ラブクラフトバンド” と確信しているのは驚きだよ。」
名状し難きアートワーク、著作 “The Cats of Ulthar”, 出身地 “Providence”。点と点を結び合せ、誰もが “ラヴクラフトメタル” の新境地と心躍らせた ULTHAR。しかし、ギタリスト Shelby Lermo はバンドとラヴクラフトの密接な繋がりを否定してみせました。それは、文豪が心に秘めた真なるホラー、人間の偏見や差別こそが狂気の最高峰という想いに奇しくもシンクロした結果なのかもしれません。
MASTERY, VASTUM, MUTILATION RITES。カルトでカオスなブラック/デスメタルの異能が集結した ULTHAR が、シーンの注目を集めたのはある種の必然と言えました。何より、2018年のデビュー作 “Cosmovore” には、野生的で生々しく、しかしメロディックかつテクニカルな “ブラッケンドデスメタル” の魅力が存分に注入されていましたから。
特筆すべきは、伝統と実験性の巧みなバランスが彼らの異端を現実という鏡に映し出している点でしょう。複雑怪奇を極めながら耳に馴染む絶佳の宇宙。さながら百鬼夜行のような 20 Back Spin レーベルにおいても、ULTHAR の奇妙は現実に根ざしていて、じわじわと冷や汗が吹き出すようなサイコホラーを演出しています。
「審美的に、僕たちの音楽にとてもマッチしているのは確かだよ。グロテスクで、煩雑で、複雑で、奇妙だよね。」
そうしてカオスとアトモスフィアをより深く探求し、ホラー映画のメタルを突き詰めた進化の一枚こそ最新作 “Providence” でしょう。一切妥協を許さない成功緻密な凶美のカバーアートは、アルバムの音の葉を厳かに暗示しています。
ULTHAR の三者がシンセやエフェクト、エレクトロニックなアプローチに障壁を築かなかったことも、メタルのホラー映画をよりシネマティックでドラマティックな狂気へと近づけました。不吉極まるアンビエンスとエイリアンの蠢きに端を発する “Through Downward Dynasties” を聴けば、ANAAL NATHRAKH のクロスオーバーな遺伝子を着実に受け継いだ地獄の蜃気楼を目にするはずです。
“Undying Spear” はより鮮明にラブクラフトの情景を宿します。得体の知れないグロテスクな毒ほど人の心を惹きつけます。仏教的な諸行無常の響きを忍ばせたアルバムで、中央アジアの喉歌をイントロに抱く楽曲は、神秘と怪奇を壮大なエピックとして描き出していきます。
テクニカルかつプログレッシブなアコースティックの死の舞踏、おどろおどろしいファンファーレ、ブラッケンドデスメタルの猛攻、ドゥームの奈落。あまりに絶対的な不死の武具は、絶え間なくその姿を変えながらただリスナーの胸を貫いて不吉な場所に制止し続けるのです。
GORGUTS から DEATH へと病巣が移り行くリフマッドネスの中、シアトリカルなボーカルの奔放で狂った天啓を導く “Providence”、CELTIC FROST と MAYHEM の凶暴なキメラ “Furnace Hibernation” と、混沌や残虐、変拍子に不協和音さえ魂を揺さぶり記憶に残る ULTHAR の台本はすでに “真なるホラー” の領域に達しているはずです。
今回弊誌では、Shelby Lermo にインタビューを行うことが出来ました。「明らかにブラックメタルやデスメタルのサウンドは多いから、それが関連しているんだろうな。でも、他にもたくさんの要素があるんだ。 全体として、僕らは ULTHAR のように聞こえるだけだと思うんだけど、人々はラベルを付ける必要があるし、”ブラッケンドデスメタル “というのは一定の効果があると思うよ。」 どうぞ!!

ULTHAR “PROVIDENCE” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PYRRHON : ABSCESS TIME】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DOUG MOORE OF PYRRHON !!

“A Good First Step In Driving Bad Actors Out Of Metal Would Be To Foster a Stronger Appreciation Of Lyrics. It’s Still Very Common To See Metal Fans With Broadly Progressive Values Accepting Truly Vile Ideologies From Bands They Like Because “You Can’t Understand The Lyrics Anyway” And “The Riffs Are Sick, So Who Cares,” And So Forth. Perhaps It’s Worth Paying More Attention To What Your Favorite Band Is Screaming At You.”

PYRRHON “ABSCESS TIME”

「NYC のバンドに透徹する哲学は、ジャンルをミックスしたり、音楽的な分野を融合させたりすることに意欲的であること。 この特徴は、ニューヨークが “メルティングポット” “坩堝” としての地位を築いてきたことの賜物で、様々なバックグラウンドを持つ人々やアイデアが混ざり合っているからね。」
分裂と流動の時代極まるエクストリームメタル。革命的なアイデア、脳髄を溶かすサウンド、野生的な実験の黄金三角形は、ニューヨークが震源地です。IMPERIAL TRIUMPHANT, LITURGY, ANCION, DYSRHYTHMIA。ジャンルを開拓再定義するような異能が蠢く中で、ブラックメタルの冒険を牽引する KRALLICE の平行線に位置する、大胆不敵なデスメタルの探窟家こそ PYRRHON でしょう。
「古いバンドのサウンドを真似するだけでは時間の無駄だと思えるね。デスメタルをプレイするのは難しいんだ。そんな難しい音楽をプレイするのに、なぜ自己表現をしないんだい? 」
OSDM リバイバルで活況を見せている昨今のデスメタルシーン。しかし、PYRRHON はその動きから一定の距離を置いています。もちろん、MORBID ANGEL や GORGUTS, CYNIC といった巨人の実験精神、創造性とたしかにチャネリングしながら、エクストリームミュージックの自己実現にむけてただ真摯に邪悪と哲学を磨きあげていくのです。
「デスメタルは、限界まで自分を追い込みたい、今までにないことに挑戦したいと思っているミュージシャンを惹きつける特別な音楽の形だと思うからね。」
TODAY IS THE DAY のアヴァンギャルドノイズ、CAR BOMB のマスコアミューテーション、GORGUTS のプログレッシブアグレッシブ。たしかに、PYRRHON の音風景をジクソーパズルのように分解して掘り下げることも可能でしょう。ただし、彼らの真髄は決してモザイクタイルを貼り合わせて創り上げる、高尚で機械的な壁画のアートにはありません。
なぜなら、時に不自然で突拍子もないように思える異端のピースが、PYRRHON の音楽をむしろ自然で有機的な太古の海へと誘っているからです。ゆえに、人工的で機械化されたテックメタルの不協和も、彼らの手にかかれば狂骨から溶け出す原始のスープへとその姿を変えていきます。
ある意味、PYRRHON が醸し出す奇妙の原点はジャズのインプロビゼーションなのかもしれませんね。言ってみれば、物理学の実験のために複雑な数学の方程式を解くことが一般的なプログレッシブデスメタルの常識だとすれば、彼らはそれをアシッドトリップの最中にやり遂げることを本懐としているのです。
「現在アメリカを飲み込んでいるこの複雑な危機は、約10年前から避けられないように僕には見えていたんだよ。それは単純に、皮膚の下で化膿している病気がいつ表に出てくるかという問題だったのさ。それがアルバムタイトルの由来だよ。」
最新作 “Abscess Time” “化膿の時” に反映されたのは、システムが朽ち果て国の程さえなさなくなった今のアメリカひいては世界です。インタビューに答えてくれたボーカリスト Doug Moore は、そんな潜伏していた膿を反映した偏見渦巻くメタル世界だからこそ、歌詞を深く理解して自分の頭で考えてほしいと訴えます。
もはや、リフがよければ別にとか、どうせ何叫んでるかわかんねーしで許される時代は過ぎ去ったとも言えるでしょう。それはある意味、誰がなっても同じと選挙権を放棄する行動に似ているのかもしれません。結局は因果応報、すべては自身に返ってくるのですから。
そうして完成した最高傑作は、Doug の言葉を借りれば “忍耐と反復” のカオス。スピーカーから不気味な膿が溢れ出すようなミニマルな混乱の中で、獰猛さと重圧を保ちながらしかし構成の妙を一層極めたアルバムは、過去の3作と比較してより直線的なリスニング体験を可能としています。
我々はただ、作曲と即興、残虐と窒息、可解と不可解、混沌と解放、血液と膿の境もわからず立ち尽くすのみ。KRALLICE の鬼才 Colin Marston がプロデュースを行ったことも、決して偶然ではないでしょう。
ピュロンとは古代ギリシャ初の懐疑論者。すべてを吟味しあらゆる独断を排除する者。今回弊誌では、エクストリームシーンきっての語り部 Doug Moore にインタビューを行うことができました。「僕の考えだけど、”悪い役者” をメタルから追い出すためのより良い第一歩は、歌詞への理解を深めることだと思うんだ。幅広く進歩的な価値観を持つメタルファンでも、好きなバンドの本当に下劣なイデオロギーを “どうせ歌詞なんて何叫んでるかわかんねーから” とか “リフが最高なら気にしない” などと受け入れてしまうのは、今でもよく見かける光景だよね。自分の好きなバンドが何を叫んでいるのか、もっと注意を払う必要や価値があるのかもしれないよ。」 どうぞ!!

PYRRHON “ABSCESS TIME” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【NILI BROSH : SPECTRUM】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH NILI BROSH !!

“There Are So Many More Professional Women Guitarists Kicking Ass Out There. I’d Rather Think Of It As “Everyone’s Era”, Where Gender, Race, Ethnicity (Or Genre!) Doesn’t Matter…I Hope The Era I Live In Is The One Where The Music Is What Matters.”

DISC REVIEW “SPECTRUM”

「プロフェッショナルの女性ギタリストがどんどん増えてきているわよね。だけどむしろ私は、性別、人種、民族、そしてジャンルでさえ関係ない “みんなの時代” だと思っているのよ…私の生きている時代は、音楽が大事な時代であってほしいわね。」
ある時は Tony MacAlpine の頼れる相棒、ある時は Ethan Brosh の美しき妹、ある時はシルクドソレイユのファイヤーギター、ある時は DETHKLOK の怪物、ある時は IRON MAIDENS のマーレイポジション。
多様性が特別ではなくなった “みんなの時代” において、イスラエルの血をひくギタープリマ Nili Brosh は培った音の百面相をソロキャリアへと集約し、性別、人種、民族、そしてジャンルの壁さえ取り払うのです。
「アルバムのジャンルに関係なく、それが音楽であるならば一つになって機能することを証明したかったのよ。だから文字通りスペクトラム (あいまいな境界を持ちながら連続している現象) というタイトルにしたの。私たちがまったくかけ離れていると思っている音楽でも、実際はいつも何かしら繋がっているのよ。」
地中海のバージンビーチからセーヌの流れ、日本の寺社仏閣、そしてマンハッタンの夜景を1日で堪能することは不可能でしょうが、Nili の “Spectrum” は時間も空間も歪ませてそのすべてを44分に凝縮した音の旅行記です。プログレッシブな音の葉はもちろん、R&B にジャズ、ワールドミュージックにエレクトロニカなダンスまで描き出す Nili のスペクトラムは万華鏡の色彩と超次元を纏います。
特筆すべきは、テクニックのためのインストアルバムが横行する中、”Spectrum” が音楽のためのインストアルバムを貫いている点でしょう。オープナー “Cartagena” から大きな驚きを伴って眼前に広がる南欧のエスニックな風景も、Nili にしてみればキャンパスを完成へ導くための美しき当然の手法。幼少時にクラッシックギターを習得した彼女が奏でれば、鳴り響くスパニッシュギターの情熱も感傷も一層際立ちますね。
“Andalusian Fantasy” では Al Di Meora のファンタジアに匹敵する南欧の熱き風を運んでくれますし、さらにそこからアコーディオン、ジプシーヴァイオリンでたたみ掛けるエスノダンスは Nili にしか作り得ないドラマティック極まる幻想に違いありません。
Larry Carlton のブルージーな表現力とエレクトロニカを抱きしめた “Solace” はアルバムの分岐点。日本音階をスリリングなハードフュージョンに組み込んだ “Retractable Intent”, プログとダンスビートのシネマティックなワルツ “Djentrification” とレコードは、彼女の出自である中東のオリエンタルな響きを織り込みながら幾重にもそのスペクトラムを拡大していきます。
EDM や ヒップホップといったギターミュージックから遠いと思われる場所でさえ、Nili は平等に優しく抱擁します。ただ、その無限に広がる地平は音楽であるという一点でのみ強固に優雅に繋がっているのです。それにしても彼女のシーケンシャルな音の階段には夢がありますね。鬼才 Alex Argento のプログラミングも見事。
今回弊誌では、Nili Brosh にインタビューを行うことができました。「音楽は音楽自身で語るべきだと信じてきたから、私にできることはお手本になって最善の努力をすることだけなの。もし私が女性だからという理由で私と私の音楽を尊重してくれない人がいるとしたら、それはその人の責任よ。」 どうぞ!!

NILI BROSH “SPECTRUM” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CRYPTIC SHIFT : VISITATIONS FROM ENCELADUS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH RYAN SHEPERSON OF CRYPTIC SHIFT !!

“We Love Voivod, Especially The Records “Killing Technology” And “Dimension Hatross”. Those Records, Along Side Nocturnus “Thresholds” Really Showed Us How It Was Possible To Write a Massive Sci-Fi Tale Within a Metal Record.”

DISC REVIEW “VISITATIONS FROM ENCELADUS”

「僕たちは VOIVOD を愛していて、特に “Killing Technology” と “Dimension Hatross” がお気に入りなんだ。NOCTURNUS の “Thresholds”と並んで、この2枚はメタルレコードの中に大規模なSFの物語を書くことが可能であることを教えてくれたんだ。」
英国で最も奇妙かつ革新的な “フェノメナルテクノロジカルアストロデスアーティスト” CRYPTIC SHIFT。VOIVOD や VEKTOR のコズミックな SF スラッシュメタルと、MORBID ANGEL や GORGUTS のおどろおどろしい猟奇的デスメタルを完膚なきまでに融合させる彼らのやり方は、メタルの仄暗いファンタジーをさらにまた一歩推し進めます。
「CRYPTIC SHIFT はスラッシュ/デスメタルの境界を押し広げることを目指している一方で、広義のメタルシーンにおけるソングライティングと創造的なコンセプトのストーリーライティングの境界線をも押し広げることも目指していると言えるだろうな。2020年にスラッシュとデスメタルを推進している素晴らしいバンドはたくさんあるけど、プログレッシヴでテクニカルなSFソングライティングを推し進めているバンドはそれほど多くはないからね。」
BLOOD INCANTATION, TOMB MOLD が昨年放った2枚のレコードは、20年代のメタルが向かう先をある種予見するような作品でした。オールドスクールデスメタルの遺伝子を濃密に受け継ぎながら、奇々怪界なサイエンスフィクションをテーマに仰ぎ、サイケデリックにストーナー、プログレッシブと多様な音の葉を纏う異次元の世界線。
CRYPTIC SHIFT のデビュー作 “Visitations from Enceladus” は彼らの異形とシンクロしながら、スラッシュメタルのメカニカルな衝動と長編の空想宇宙小説を衝突させ、メタルの核融合を誘発しているのです。
「”Moonbelt Immolator” は歌詞の中にストーリーがあるから長い曲になることはわかっていたんだけど、トラックをまとめるうちに、どんどん長くなっていったんだ。ただそれを恐れてはいなかったよ。」
その華々しき化学反応の証明こそ、26分の宇宙譚、オープナー “Moonbelt Immolator” でしょう。Away の正当後継者 Ryan の言葉通り、恐れを知らない SF メタルの開拓者は、26分を6つの独立した楽章に分割してスリリングで摩訶不思議な空の物語を描き切ってみせました。そのオペラ的な手法は、ただメタルのエピックというよりも、RUSH の “2112” や “Hemispheres” と同等の性質を持つ叙事詩という方が適切なのかもしれませんね。
重要なのは、CRYPTIC SHIFT がプログレッシブなデスメタルやテクニカルなスラッシュメタルが切望する音符の密度、激しいダンスを少しも損なうことなく、全体をホログラフィックに見渡せる抜きん出た俯瞰の構成力を身につけている点でしょう。
ゆえに、デス/スラッシュの単純な枠を超え、ドゥーム、ジャズ、ノイズ、アンビエントのタトゥーが音肌の上に絶え間なく露出を続ける不浄のオベリスクでありながら、決して彼らの宇宙譚は量子力学レベルの理解不能な方程式に収まってはいないのです。
つまり、宇宙的な和音、歪んだAI言語、洗練と粗野のバランスが絶妙なd-beatとブラスト、多面的なキャラクターを宿すデスボイス、不協和を恐れないギターに絡みつく蛇のようなフレットレスベース、その全てがメタル世界の大衆を観客に迎えた舞台 “エンセラドゥスからの来訪者” を彩る小道具にすぎないと言えるのかもしれませんね。
逆にいえば、耳障りになりかねない不協和音、ノイズ、グロウルにブラストビートも、CRYPTIC SHIFT の手にかかれば生命力に満ち溢れたキャッチーな舞台装置へと変化を遂げるのです。
ある意味、エレクトロニカを大胆に咀嚼した NOCTURNUS を VOIVOD と並んで崇拝する理由もそこにあるのかもしれません。ATHEIST, PESTILENCE, MARTYR に SADUS。全ての奇妙は物語のために。
今回弊誌では、ドラムス Ryan Sheperson にインタビューを行うことができました。「僕とXanderは信じられないほどのスター・ウォーズの大ファンで、その全てが大好きなんだよ。 おそらく夕食を食べた回数よりも多く、スター・ウォーズの最初の6作品を観ているだろうな。好きな順番をつけるなら、I、VI、V、IV、III、IIかな。 “ファントム・メナス” が一番好きだと嫌われるかもしれないけど、それはきっと世代の問題だろう。」 どうぞ。

CRYPTIC SHIFT “VISITATIONS FROM ENCELADUS” : 10/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【LAMB OF GOD : LAMB OF GOD】


COVER STORY : LAMB OF GOD “LAMB OF GOD”

“How Did We Get To This Point Where You Think This Asshole Is The Paradigm We Should Aspire To As The Leader Of Our Country? I Think This Shift Started Around The Beginning Of The Anthropocene When Humans Really Started Affecting The Environment In Big Ways.”

LAMB OF GOD

80年代後半から90年代にかけてまずスカンジナビアから勃興した新たなメタルの波。MESHUGGAH, AMORPHIS, OPETH, IN FLAMES, EMPEROR といった傑物を輩出し、WALTARI の Kärtsy Hatakka が “ポストファーストメタルタイム” と呼んだそのムーブメントは、メタルの転換期にして、モダンメタルと現在のメタルシーンにとって架け替えのない重要なピリオドとなりました。
「スカンジナビアのバンドたちは、より幅広いスペクトルの音楽を聴くことで、メタルに “クレイジーさ” を加えていったんだ。」
Kärtsy が語るように、ある者は複雑なリズムアプローチを、ある者はグルーヴを、ある者はプログレッシブロックを、ある者はデスメタルを、ある者はエクストリームな残虐性を、ある者はフォルクローレを “ベーシック” なメタルに加えることで、彼らはモダンメタルの礎となる多様性を築き上げていったのです。
もちろん、ベーシックメタルからモダンメタルへの進化に寄与したのはヨーロッパのバンドだけではありません。特にテキサス州ダラス出身の PANTERA がメタル世界に与えた衝撃、グルーヴメタルの誕生は一つのビッグバンでした。特徴的すぎるギタートーンやドラムサウンドを差し引いても、獰猛さと重さ、そして独創性を更新した彼らの俗悪に悩殺する鎌首はあまりに異端でした。その “グルーヴ” の源は BLACK SABBATH でしょうか?ハードコアでしょうか?それ以上にむしろ、”南部” という出自が大きく影響を及ぼしているようにも思えます。

実際、Phil が特別敬愛し、インスピレーションを得ていた隣州ニューオリンズが誇る EXHORDER の Kyle は弊誌のインタビューで、「俺たちみたいに、THE METERS, Dr. John, THE NEVILLE BROTHERS, Allen Toussaint みたいなクラッシックなニューオリンズのバンドを聴いて育てば、血や魂までその色に染まることになる。ニューオリンズには偽りなき本物のスウィングとグルーヴが存在するんだ。とは言えそれは沢山のバンドによって真似されているんだけど。そうやってルイジアナ南東部のリラックスしたアティテュードに浸れば、君も南部の男になれるさ。」と語っています。
そして PANTERA の遺志を引き継ぎ、南部の音魂を現代へと繋げるバンド LAMB OF GOD がバージニア州リッチモンドから登場します。かつてアメリカ連合国の首都が置かれた歴史の街は、ブルーグラス、カントリー、オールドタイムストリング、ブルース、ジャズとまさに音魂の坩堝です。そして明らかに、LAMB OF GOD の音の葉はより鮮明にその南部の風とグルーヴにそよいでいるのです。

仮にここ日本において、LAMB OF GOD が PANTERA ほどのネームバリューを得られていないとするならば、おそらくそれは Dimebag のような凄まじいアイコニックなシュレッダーが存在しないからかも知れませんね。とはいえ、それは Mark Morton と Willie Adler の技量が少しでも劣ることを意味しません。いやむしろ、彼ら2人こそがモダンメタルのリフワークを決定づけたと言えるのではないでしょうか。
パワーコードや開放弦のダウンピックが主体であったベーシックメタルのリフはある意味演奏が単調で、シュレッドに比べれば易しいものが多かったと言えるでしょう。彼らはそのギターリフを、ギターソロ並みに難解かつ複雑しかしエキサイティングかつインタレスティングな領域へと昇華した最初のバンドの一つでした。
BETWEEN THE BURIED AND ME, PROTEST THE HERO, MASTODON, PERIPHERY。今でこそ、当たり前となったリズムとシュレッドを複雑に突き詰めた千変万化変幻自在な現代的リフワーク。もちろん、北欧のメロディックデスメタルも遠縁の一つでしょう。ただし、より創造的な雛形は EXTREME の “Cupid’s Dead” だったのかも知れません。Nuno Bettencourt がファンカデリックにしかしプログレッシブにテクニカル極まるリフをつなぎ合わせ、ギターソロと同等もしくはそれ以上のカタルシスを生み出した楽曲は間違いなく多くの後続に影響を及ぼしました。そして次にその試みをより現実的に体現したのが Mark と Willie だったのです。

LAMB OF GOD といえば、Randy Blythe の張り裂けんばかりの咆哮を想起するのは当然ですが、仮にそれがなくても彼らの楽曲は充分に機能します。実際に演奏してみればわかりますが、彼らのリフワークはギタリストにとって手癖のような運指が極力排除されていて、熟練者でも何度かトレースしないと馴染まないような構成になっています。リズムやグルーヴも刻々と変化するなかで、プリングのオンオフや三連符が組み込まれ、さらにダブルギターの魔法を宿しながらモチーフやパターンをいくつも用意して単調さを一分も感じさせないよう非常に計算されて作り込まれているのです。
特筆すべきは高音弦やハイフレットをリフに組み込んで低音とのコントラスト、さらにはメロディーまでも補完している点でしょう。そうして、リズム隊との完璧なコンビネーションでグルーヴという総合芸術を製作していくのです。
さらに言えば、Randy Blythe は “Omerta” のスロウでマスマティカルなグルーヴこそが最もリッチモンドらしい音魂だと語っています。
「リッチモンドは、少なくとも80年代後半から90年代前半にかけては、マスロックと呼ばれていたものの拠点だった。今のマスロックとはだいぶ異なって、それはリッチモンドのハードコア・シーンにまで遡るんだ。 HONOR ROLE というバンドがあって、奇妙な変拍子を得意としていたね。特に伝説のギタリスト、Pen Rollings は BUTTERGLOVE というバンドに転向してヘヴィになったんだ。 その後、彼らは BREADWINNER というインストゥルメンタルバンドになった。スティーヴ・アルビニは彼らのEPをいくつかプロデュースしているんだけど、インストゥルメンタルでありながら、俺も含めて、全員に大きな影響を与えているんだよ。」
LAMB OF GOD の硬質で数学的なインテリジェンスは、古のマスロックが起源でした。そこに先述のブルースやジャズ、ブルーグラスにカントリーといった多様な南部の魂が透けて見えるのですから、LAMB OF GOD こそがモダンメタルの帝王、グルーヴメタルマスターと称されるのも当然でしょう。

Mark Morton に言わせれば、「まず自分たちを驚かせなきゃ。結局、何度も何度も何度も何度も演奏するのは自分たちなんだから、俺らがワクワクしなきゃ。」
つまり、予測可能なことを回避することで LAMB OF GOD はその地位を築き上げてきたのです。NWOAHM などと下らない場所に括られていた時でさえ、彼らはスラッシュとハードコアのルーツを強調していましたし、スクリームとグロウルが武器だと思われていた Randy にしても、徐々にムーディーなクリーンヴォーカルを取り入れていくようになりました。
実際、”Memento Mori” の冒頭には SISTERS OF MERCY の Andrew を彷彿とさせるメランコリックなボーカルと不気味なギターの回廊が刻まれていますし、”Bloodshoot Eyes” にはゴシックと狂気の狭間でさらなる高みを目指す Randy の姿が映し出されています。
「エクストリームメタルの世界で最も滑稽なのは、クリーンボーカルが聴こえた瞬間、誰かが突然家に入ってきて高価な絨毯を台無しにしたかのように気が狂うような人がいることだよ。でも俺は歌えと言われれば歌うんだ。」 Randy の言葉には皮肉が宿ります。

新たなアンセム “Checkmate” の一方で、スタンディング・ロック保留地における石油パイプライン建設に抗議するため TESTAMENT の Chuck Billy を起用し、ネイティブアメリカンの血を汲むそのリアルこそ彼らのやり方。同時に、サイケデリックなベースラインと推進力を宿すギターワークの不思議なダンスが魅力的な “Reality Bath” も、心を揺さぶるレコードのハイライトです。8歳の少女が銃乱射の犯人が闊歩するビルに取り残された描写は息を呑みます。
「高校時代、俺のバージニア州の田舎じゃ子供たちは森の中で狩りをしていたから、そのまま学校に来ていたよ。時には鹿の死体をピックアップトラックの荷台にぶら下げて、銃とガンラックを持って学校に来ることもあったくらいさ。大したことじゃない。誰もがそう考えていた。だけどそんな古き良き少年の一人が銃を持って学校に入り生徒を吹き飛ばし始めるんだ。それが現実だよ。」
LAMB OF GOD とは神の子羊、転じてキリストを指す言葉でもあります。そのバンド名を冠したセルフタイトル “Lamb of God” は文字通り、全てが破綻した欺瞞と分断、そして試練の2020年に様々な意味で福音をもたらすレコードに違いありません。

RANDY BLYTHE

「俺らはみんな死ぬんだ!」COVID-19ウイルスが蔓延し、死者数が増加し続けるアメリカで、人々の日常生活は深刻な混乱に陥っています。LAMB OF GOD の大統領 Randy Blythe はその加熱する報道、恐怖から真実を読み解こうとしています。
「俺らは今コロナウイルスを経験しているけど、数年前はエボラだった。たしかに今はクレイジーだけど、世界には常にそんな理不尽が存在してきたんだ。ただ、現代に生きる俺らはスマホやPCを持っていて、この終わりのない残虐性と恐怖のサイクルを24時間常に受け取り続けることになる。」
新たなグルーヴメタルの金字塔 “Lamb of God” で Randy は、大量殺人、外国人恐怖症、オピオイドの流行から、空虚な消費文化、差し迫った生態系の破壊まで、現代社会を悩ませている様々な問題を掘り下げていきます。
オープナー “Memento Mori” は、コロナに端を発する真偽不明な情報の飽和をテーマとしています。彼自身、ニュースフィードを監視することに夢中になりすぎ、そこから適度な情報の断捨離が精神的、肉体的な健康に不可欠であると気付いたことから生まれた楽曲。
「メディアの中では生きていけないんだ。”Memento Mori” は、目を覚ますことをテーマにしている。目覚めろ!目覚めろ!目覚めろ!と、自分に言い聞かせているんだよ。人に説教しているわけじゃない。Randy に話してるんだ 。気が狂いそうだったからね。」

時事問題に取り組み、人間の本性の暗部に立ち向かうことは、LAMB OF GOD にとって決して新しいことではありません。2000年のデビュー作 “New American Gospel” からずっと、リッチモンドの刃は、その獰猛で技術的にも衝撃的なメタルと、社会的政治的な問題、歪みに対する痛烈な意思表示、そして深い内省を組み合わせてきたのです。
警官による暴力 (“D.H.G.A.B.F.E “) やイラク戦争(”Ashes of the Wake”)、音楽業界のエゴ(”Redneck”)、そして Randy 自身が2012年にプラハで過失致死罪で投獄、裁判、無罪判決を受けた試練(”512″)に至るまで、テーマは多岐に渡ります。そうして彼らの社会を鋭く切り取るナイフは、モダンメタルの先頭に立ちながらグラミー賞へのノミネート、ゴールドディスクの獲得という結果に繋がったのです。
遂にセルフタイトルを冠した新作において、バンドは初の出来事をいくつか経験することになりました。最も重大な出来事は、創設ドラマーの Chris Adler の脱退でしょう。Chris は過去7作すべてで演奏していて、バンドの前身 BURN THE PRIEST としても2枚のアルバム(1999年のセルフタイトル盤と2018年のカバーアルバム “Legion: XX”)を残しています。
2018年、LAMB OF GOD はオートバイ事故で負った怪我のリハビリを続ける Chris のライブにおける代打として、Art Cruz(WINDS OF PLAGUE)をスカウトしました。そして翌年の7月、Randy, ギタリストの Mark Morton と Willie Adler (Chris の弟), ベーシスト John Campbell は声明を発表し、Art が Chris のパーマネントな後任となることを発表したのです。Chris の脱退をめぐる状況については、関係者全員が沈黙を守っています。唯一 Chris が残したのは、「俺はライフワークである音楽を辞めるという決断をしたわけではない。真実は、独創性に欠ける塗り絵を描きたくないだけなんだ。」という言葉でした。

ただし Randy は、Art Cruz を含むバンドの現在の状態がいかに素晴らしいか語ります。
「5人全員が部屋にいる時の共同作業はとても良い雰囲気になっていたよ。俺もこのアルバムでリフを一つか二つ提供したんだ。演奏したんじゃなく、Mark にハミングして聞かせたんだよ。そんな風にお互いの素材を盗むことがたくさんあった。Willie の曲を Mark がハイジャックし、時には Mark がその逆をするんだ。そうやって過去最高の LAMB OF GOD の楽曲たちが生まれたのさ。」
新加入Art について、Randy はどう感じているのでしょう。
「新人だから、やっぱり最初は少し腰が引けていたと思う。しばらく一緒にツアーをしていたけど、俺らは成功していて、高校時代に彼のお気に入りのバンドだったんだ…だから、最初は少し緊張していたと思うけど、すぐに発言するようになったんだよ。それが俺たちが望んでいることだよ。イエスマンは要らないから。その時点でドラムをプログラムした方がいいかもしれないね。でも俺らは彼にChris Adler になって欲しくなかったんだ…彼は Chris とは違うドラマーだから、彼自身の味を出して欲しかったんだ。実際、違うことをたくさんやっている…ドラムオタクは彼はこんなことをやってる…彼は “クリス・アドラー” じゃないと言うだろうけどね。」
とはいえ、Randy はレコードの製作があまり好きではないと告白します。
「俺たちは SLAYER と18ヶ月もツアーをしていたんだ…その合間にMark と Willie はプロデューサーとライティングセッションを重ねていた。それから何ヶ月も休んでいたよ。 戻ってきて、ある程度の距離ができて、それはいいことだと思うんだけど…俺はレコードを作るのが好きじゃないんだ。頭の中が混乱して、消耗してしまうんだ。レコーディングに行くと、体力が消耗して、喉が張り裂けそうになる。歌詞を書くのは楽しいけどね … だから、”Lamb of God” の製作が楽しかったとは絶対に言わないと思うけど、作曲セッションの時の雰囲気は、おそらくバンドの中で最高のものだったと言うことにするよ。」

“Lamb of God” は、Randy が曲を書く前に歌詞の全体的なコンセプトをチャート化した初めての作品でもあります。Randy は政治的な発言をしたいと思っていましたが、特定の個人や政権に自分の歌詞をフォーカスしたくはなかったのです。そこで彼は、友人である 世界的に有名なアルペンクライマーであり、パンクロックマニアでもある Mark Twight の助けを借りて、社会悪の原因や歪みの状況を深く掘り下げていきました。
そうして、”New Colossal Hate “では所得の不平等と差別を、”On the Hook “では大手製薬会社が大衆に中毒性のある薬を飲ませていることを取り上げ、”Poison Dream “では環境を汚染する企業に立ち向かっていきました。
「ドナルド・トランプはもっと大きな問題に巣食う一つの症状に過ぎない。友人の Mark Twight と話していて、『現政権についてのセンセーショナルなレコードは書きたくない』と思ったんだ。彼は王様のように振舞っているから、やることなすこと毎日非難を続けるなんてバカげてる。それよりも俺は、なぜこうなってしまったのか、なぜあんなアホをリーダーに求める国になってしまったのか、こうなることを許した俺たちの意識、現在の環境について掘り下げたかった。」
リードシングル “Checkmate” も強烈ですが個人を対象としたプロテストソングではありませんでした。
「このアルバムには、個人をテーマにした曲は一つもないんだ。 2004年のアルバム “Ashes Of The Wake” の時代、ジョージ・W・ブッシュがいた時は、イラク戦争や大量破壊兵器の神話があったから、彼のことを具体的に書くのは簡単だったけどね。全ては表裏一体なんだ。今人々は政党を政策のためではなく、スポーツチームのように支持しているから。歌詞にはそれが反映されているよ。こんなシステムはまさに詐欺だ。ドナルド・トランプをバッシングするようなレコードを書くのは、むしろ無駄なことだと思うんだ。だから “Checkmate” は共和党のことではないんだよ。むしろ今の両政党がいかに表裏一体の関係にあるかを描いているのさ。」

Randy の中に、歌詞を通して人々を啓蒙したいという思いはあるのでしょうか?
「というよりも、自分で考えてもらいたいんだよ。今、アメリカや他の国でも大きな問題になっているのは、政治的分裂が世界的に広がっていること。誰も個人単位で話をしていないだろ?今の政治の世界には群集心理が強く存在して、それはインターネットにも波及しているんだ。リベラル派は「お前らはネオナチで保守的すぎる」 保守派は「お前らはリベターだ」。俺には小学3年生のように思えるね。大人がオープンな会話をしているようには聞こえない。俺はあんな感じの大規模な集団思考のアイデンティティーが苦手なんだ。でもそれが国民の精神を支配している。」
一つの意見、一つの思想だけでその人物の全て、人格まで憎んでしまう世の中です。
「親しい友人にもトランプに投票したやつがいるけど、彼らはナチスでも人種差別主義者でもない。だから今でも親しいままさ。だけど、グループ思考、群集心理で人を一つのグループにまとめまるから、自分たちが他のグループを非難できるかのように感じてしまう。それが今、大規模に起こっているんだ。意見の合わない人とコミュニケーションをとるのは難しいよ。コンピュータの画面の後ろから、お互いに叫ぶ方が簡単じゃないか?勇気を持って直接会って話をする方がよっぽど心がこもっている。 そうしないと死んじゃうよ…」
誰に向けて歌詞を書いているのでしょう?
「自分のために歌詞を書いているんだ。これは俺の表現で、ファンが好むかどうかは考えていない。ファンを喜ばせるために書き始めたり、ファンが望むことをし始めたら、ボーイズバンドになってしまう。ハリウッドからプロデューサーがきて、適当に受けるソングライターを雇ってね。そうなってしまったら、音楽は偽りになってしまう。」

Randy は “リアリティTV” プレジデントと消費者主義の賛美から、産業革命とその環境への影響までの線を辿り始めました。そのエクセサイズとして、Randy は”社会で問題となっている様々なこと、そして人々がそれらのことに対して声を上げる様々な方法” を取り上げた約17曲の楽曲トピックのリストを作り上げたのです。
ではトランプから産業革命まで遡る、その思考の鍵はどこにあったのでしょう?
「俺は他の皆と同じように、現代文化の中に罪悪感を持っている。なぜならアメリカに住んでいるからだよ。ここには消費文化があり、物質的な所有物、富と名声がある種の満足感と内なる幸福感をもたらすことになるという考えがある。そこへの盲目的な固執だよね。それが今の問題だと思うんだ。普通に考えて、金持ちで金のトイレを持ってるからと言ってクソ野朗が大統領になるべきではないだろう?
なぜこんなクソ野郎がリーダーに望まれる世の中になった?シフトしはじめたのは、人類が環境に大きな影響を与え始めた産業革命の頃からだと思う。人類は大量生産を始め、消費者階級が生まれた。大量販売の広告も発明された。だから、俺は産業革命から振り返る必要があると思う。消費文化のアイデアが生まれ計画された場所からね。」

このアルバムにおけるテーマの核となっているのは、アンセム的な”Memento Mori” で、Randy は恐怖を煽るようなニュースに対抗し、希望、力強さ、そして昔ながらのカルペディエムの精神をメッセージとしています。
「メメント・モリとは、僧侶たちがかつてお互いに言いあっていた言葉なんだ。君はいつかは死ぬよってね。俺の知る限り人生は一度きり。たとえ複数の人生があったとしても、この一度の人生を最大限に活かしたいと思わないかい?」
ここ数年、Randy に注目してきた人なら誰でも知っていることですが、この言葉は抽象的な概念や空虚な決まり文句ではありません。なぜなら彼は明らかに地上での限られた時間を有効に使っているからです。
LAMB OF GOD での音楽活動はもちろん、GOJIRA, BODY COUNT, BAD BRAINS, PIGFACE といったアーティストとのコラボレーション、自伝 “Dark Days” や TESTAMENT の Alex との共著 “Unbuilt” の出版 、サーフィン、写真、草の根の活動の支援と休む暇もありません。
「ファンからもらった最高の贈り物は?って聞かれたんだけど、”あなたの音楽は人生で本当につらい時期を救ってくれた” って言葉だね。最高に気持ちがいい。”ゴールドディスクを手に入れた!”よりも全然いい気分だ。ゴールドディスクなんてどうでもいい。2枚持ってたけど、慈善事業のためにオークションに出したよ。乳がんのチャリティなんかにに小切手を送ると、すごく興奮するんだ。自分勝手な感情かもしれないけど “あなたはいい人だ “って思えるね。気分が良くなるから。」
いつか世界は滅びるかもしれないし、みんなが死に絶えるかもしれません。しかし Randy の中では、まだ全てが燃えるのを見届ける準備はできていません。
「100パーセントが皮肉のレコードじゃない。希望の瞬間もあるよ。俺はただ立ち止まって、全てがクソだなんて言っていたくはないからね。我々にあるのは今この瞬間だけだ。今までの人生は こうした瞬間の連続だった… だから、この一瞬を最高のものにしたいんだ。」

参考文献: REVOLVER: LAMB OF GOD: RANDY BLYTHE ON UNITED NEW LINEUP, BITING NEW ALBUM, STRANGE NEW WORLD

LOUDWIRE:Lamb of God’s Randy Blythe: You’re a Boy Band If You Write Music to Appease Others Read More: Blythe: You’re a ‘Boy Band’ If You Write Music to Appease Others

SPIN:Q&A: Randy Blythe on Lamb of God’s New LP, Punk, Politics and CBGB’s Legendary ‘Throne’

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COVER STORY + INTERVIEW 【KING DIAMOND : MASQUERADE OF MADNESS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ANDY LAROCQUE OF KING DIAMOND !!

“I Think The Difference Between King Diamond And Mercyful Fate Is, Mercyful Fate Gotta Little More Maybe 70’s, Roots In It’s Music Style. In My Opinion, While Kind Diamond Has Always Been Little More Murderer.”

MASQUERADE OF MADNESS

GHOST が存在する遥か以前から KING DIAMOND の劇場的オカルトはメタル世界を侵食していました。コペンハーゲン郊外に生を受けた Kim Bendix Petersen は、サタニックメタルの始祖 MERCYFUL FATE で King Diamond への羽化を完全に果たします。
MERCYFUL FATE が80年代初期に残した二枚のアルバム “Melissa”, “Don’t Break the Oath” は実際、メタルの歴史を変えました。コープスペイントで頭蓋骨を仰ぎ、足の骨でマイクスタンドを拵える真性の異端児。地獄の底から絞り出すような唸り声から、悪魔が囁くファルセットまで、奇々怪界を紡ぐため死の世界から舞い戻った幽鬼。そんな King のオカルティックな詩篇とシアトリカルな美学は METALLICA, SLAYER から後の北欧ブラックメタルシーンにも多大な影響を及ぼしたのです。
では、King の特徴的なファルセットやシアトリカルな仮装はどこから来ているのでしょうか?
「あのファルセットは、BLACK ROSE 時代にファンからもっとファルセットを使えと言われたのが始まりなんだ。おかげで歌唱のテクニックや空気のコントロールなど多くのアイデアを得ることができたんだ。シアトリカルな仮装は Peter Gabriel と Alice Cooper だね。GENESIS のライブを見て、音楽に合わせた “演劇” の重要性を悟ったんだ。」
象徴的な “Melissa” の頭蓋骨はどこで手に入れたのでしょう?
「兄から貰ったんだ。マイクスタンドにしていたクロスボーンもね。彼の友人の父が医者をしていて、提供された死体を使って学生に授業をしていたんだ。授業が終わると、皮膚を剥ぎ取って骨を樽に入れていた。それで手に入れることができたんだ。だけど彼女はショウで盗まれてしまったんだよ。」
METALLICA との邂逅は印象的でした。
「84年に MOTORHEAD が USツアーに連れていってくれたんだ。その時誰かが METALLICA を教えてくれたんだけど、ドラマーがデンマーク人だという。よくよく調べると Lars の父親は有名なテニスプレイヤーだったんだ。だからアンコールでステージに上げたんだよ。そうして、”Ride the Lightning” をコペンハーゲンで録音することになったのさ。あの時彼らが泊まっていた私のアパートはお化け屋敷だったんだけど (笑)」
MERCYFUL FATE が “音楽的方向性の違い” により分裂した後、Kind は自らの名を冠した新たな魑魅魍魎 KING DIAMOND を結成し、これまで以上にエピカルでシアトリカルな道を辿ります。1987年にリリースした “Abigail”は、霊と家族の暗い秘密をコンセプトに認めて今でもメタルのオールタイムクラッシックとして名を馳せ続けています。
「ファーストアルバム “Fatal Portrait” には、MERCYFUL FATE のために書かれた楽曲もあったけど、5曲のミニストーリーも存在したんだ。それがとてもしっくりきて、ホラーコンセプトアルバムを作りたいと思ったわけだよ。音楽もそれに伴い進化して、より演劇的になっていったね。BLACK SABBATH はたしかにダークサイドを音にし掘り下げていたけど、私たちはフェンスの向こう側に立って別の視点から見ていたんだよ。」
長年の相棒、ギタリストの Andy LaRocque は弊誌独占インタビューで MERCYFUL FATE と KING DIAMOND の違いについてこう語ります。
「MERCYFUL FATE はより70年代的で、ルーツを探るような音楽スタイルだよ。一方で、KING DIAMOND は僕の考えではいつだってより猟奇的なんだ。」
後のブラックメタルサークルが起こした一連の事件に対して King はどのような感情を抱いていたのでしょうか?
「ちょっと大げさだったよね。だって暴力や放火に関わっていたのはほんの一部でしょ。ほとんどのバンドは関わっていなかった。もちろん、殺人や暴力を肯定しているわけじゃないよ。私は蜘蛛も殺せないんだ。捕まえて逃すだけさ。」
以後、King は時に復活した MERCYFUL FATE と二足のわらじを履きながらその怪奇譚、悪夢の物語を綴り続けました。創作が暗礁に乗り上げたのは、2010年。心臓発作に苛まれた King は、3度の心臓バイパス手術を受け、死の淵を彷徨います。回復の過程で、長く音源のリリースから遠ざかりましたが遂に今年、KING DIAMOND として完璧な新曲 “Masquerade of Madness” を発表。MERCYFUL FATE も再度の復活を宣言し、古の悪魔の不死を証明しています。
「あれ以来、タバコも一本も吸っていない。健康的な食事と運動も欠かさないよ。全てが良い方向に向かっている。2度目のチャンスを得たんだからね。」
間違いなく復活のマスカレード “Masquerade of Madness” には失った時を取り戻す魔法がかけられています。Andy はこう力強く語りました。
「80年代の僕たちと “Masquerade of Madness” にはたしかに多くの共通点があるね。
実は、僕たちはファーストアルバムを振り返って、最初の最初に実際何をやっていたのかチェックしてみたんだ。この曲のライティングやレコーディングを行なっている時、これはあの曲のあの部分ぽくしようなんて思ったわけじゃないんだけど、それでもあの振り返りのおかげで間違いなくこの曲にはオールドアルバムのヴァイブがあるよね。」

NIGHTMARE

2014年、KING DIAMOND のキャリアを総括するコンピレーションとしてリリースされた “Dreams of Horror”。そのタイトルはまさにバンドと King の全てを体現していました。
デンマークから現れた怪異は、黒のトップハットにコープスペイントを施し、悲鳴のようなファルセットで瞬く間にメタル世界の台風の目へと躍り出ました。その KING DIAMOND が抱える不気味と不吉の元凶は、King が長い間悩まされてきた夜の恐怖に端を発しているのです。
「散々悪夢を見てきたよ。目が覚めたら誰かを殺してしまったと思うこともあった。それから15分くらい、どうやってその殺人を隠蔽しようか考えていたりね。」
とはいえ、King Diamond ほどの知名度で捜査の手から逃れることは難しいでしょう。オカルトメタルのパイオニア MERCYFUL FATE のフロントマンにして、Church of Satan のメンバー、”Abigail” や “Them” といったコンセプチュアルホラーの創立者は、メタル史において最も認知されている “声” の1人に違いありませんから。
事実、METALLICA の秀逸なカバーは語るまでもありませんし、Phil Anselmo からの敬愛、さらに Kerry King は SLAYER の “Hell Awaits” が MERCYFUL FATE の子供であることを認めています。
King を突き動かすのは彼の鮮明な悪夢。「目が覚めた時はホッとしていることが多いね。人が死ぬ、ペットが死ぬ、奇妙なことが起こる、車が粉砕されたり、争いに巻き込まれたり。大抵は非現実的な夢だよ。飛び立ったあと急に落下して、地面に墜落する直前に目が覚めたりね。起きた時に叫んだり、汗びっしょりだったりするよ。片腕は痺れていて、今のは何だったんだ?って思うんだ。」
それでも、自らの地獄のような夢の世界を探求することは、King にとって生涯の使命であり、創造性の源とも言えます。
「悪夢を見るとその原因を考える。時には同じシナリオの悪夢を連続してみることもあるよ。それで本当にその悪夢が現実になるんじゃないかとか思ったりしてね。眠りに落ちて、また同じ夢に吸い込まれ、あんな悲しい思いはしたくないって思うよ。だけどたまには、あの場所に戻って解決できるかみてみたいと思うこともあるんだ。」
昨年、およそ20年ぶりの再結集を発表した MERCYFUL FATE。バンドの金字塔である1984年の “Don’t Break The Oath” に収録された “Nightmare” も King の悪夢に根ざしていました。
「子供のころの夢さ。兄が隣のベッドで寝ていてね。そしたらフードを着た男が突然部屋に入ってきて、オマエの運命は尽きかけている!と私を指さすんだ。私は恐ろしくて兄を起こそうと叫ぶんだけど、声は出なかった。」
King は現在、2007年 “Give Me Your Soul…Please” 以来となる新作の制作に熱を上げています。2010年、生死の境を彷徨った心臓のバイパス手術から蘇る不死の王。
「とても特別な方法で書かれたアルバムになるよ。1枚で全てを語ることはできないから、2枚組になるだろうな。これまでで最悪の悪夢だよ。あの心臓手術から目覚めて、私は窒息しそうな気がしてパニックになった。口から人工呼吸器のチューブを抜こうとしたんだよ。妻リヴィアがすぐに走ってきて、ようやく私は医師たちが命を助けようとしていると悟ったんだけど、ベットに縛り付けられていた。まるで METALLICA の “One” の世界観だよ。」
故に、人工呼吸器の音を新譜のイントロやライブのエフェクトに使用しても不思議ではありません。
「地獄がどんなものかはわからないけど、あのゆっくりとしかし確実にいつも首を絞められているような感覚よりはマシだろうな。私はあの人工呼吸器の音を聞くだけで悪夢を見てしまうだろうな。」
ただし、そのライブに纏わる悪夢も King を悩ませてきました。
「私はショウの前に衣装やメイクで長い時間が必要なんだが、目覚ましが鳴らなくてスッピンで出る羽目になるってシナリオもあったな。ギタリストの Andy が普通のロックンロールをプレイし始めて、シアトリカルなメタルを期待しているファンから物を投げられたりする悪夢もあったよ。私はステージ裏に身を潜めていたが、コープスペイントの女性に見つかりマイクスタンドで応戦したりね。フルメイクで逃げ惑って一線を超えたファンを振り払いながらバスに乗り込んだんだ。」
定期的に見るのは戦争の夢。1987年に亡くなった父が、第二次世界大戦中、デンマークのレジスタンスに参加していた時の話を King はよく聞かされていました。
「ナチスに追われる夢を見るんだ。ドイツ軍に占領されていた5年間、ここでも多くの粛正が行われた。父は連合軍のコペンハーゲン奪還を手伝ったんだよ。子供のころは、父に誰かを殺したことがある?ってよく尋ねていた。彼は決して答えなかったけどね。」
夢が現実になることもあります。20年以上前に King は “From the Other Side” という楽曲を仕上げ、”The Spider’s Lullabye” のオープニングに収録しました。
「あの曲を聴くとまるで手術台の上にいるような気分になる。そして突然体から離脱して、自分のために戦っている医師たちを天井から見下ろすんだ。自分はセカンドチャンスを得られるのか、得られないのか。後に心臓の手術を受けた時、下を見下ろすと悪魔が魂を奪い去ろうとしていた。だから悪魔と戦わなければならなかったのさ。最初は夢だったんだが、私は後にそのシナリオを経験したのさ。」
いつか正夢になって欲しい夢もあるのでしょうか?
「宝くじに当たるとか?時々はそんな夢も見るよ(笑)」

参考文献: REVOLVER:KING DIAMOND: THE DARK VISION, BAD DREAMS AND NEAR-DEATH OF AN OCCULT-METAL ICON

KERRANG!: KING DIAMOND: “IF THERE IS A HELL AND I GO THERE WHO CARES? I’VE ALREADY FACED IT”

続きを読む COVER STORY + INTERVIEW 【KING DIAMOND : MASQUERADE OF MADNESS】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【THE HIRSCH EFFEKT : KOLLAPS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ILJA JOHN LAPPIN OF THE HIRSCH EFFEKT !!

“Plain, Aggressive Music With Odd Time Signatures Would Probably Be Boring For Us In The End, If We’d Only Stick To That Kind Of Music. Allowing Different Moods And Genres To Come In Has Kept Such Music Interesting And Exciting”

DISC REVIEW “KOLLAPS”

「結局、奇妙な拍子記号があるだけのプレーンでアグレッシブな音楽は、そこに固執するのであればおそらく僕たちにとって退屈だろうな。異なるアトモスフィアやジャンルを取り入れることは、そんなテクニカルな音楽を面白く刺激的なものにしてくれたんだ。」
自らを “Indielectropostpunkmetalmathcore” と称するハノーファーの異分子トリオ THE HIRSCH EFFEKT は、目眩くジャンルの島々を巡りメタルの多音美を実現する挑戦的な吟遊詩人です。
「このレコードの大半は、フライデーフォーフューチャーと世界の気候変動問題について扱っているんだ。よりドキュメンタリータッチで、客観的にね。グレタ・トゥーンベリに触発され、彼女のスピーチからいくらか派生した楽曲もあり、引用として使用している部分もあるよ。だからスウェーデン語のタイトルなんだ。」
THE DILLINGER ESCAPE PLAN から LEPROUS, 果てはストラヴィンスキーまで、無限にも思える音のパレットを備えた THE HIRSCH EFFEKT にとって、その言語的な多様性も彼らの絵音を彩る重要な筆に違いありません。
自らのバンド名が象徴するように、母国語であるドイツ語の響きでユニークな異国情緒を奏でながら、最新作 “Kollaps” において、楽曲にスウェーデン語のタイトルを冠することで若き環境活動家の蒼を観察者としての視点から紡いで見せるのですから。
「典型的な3ピースとしての、ベース、ギター、ドラムのバンドサウンドの退屈さを感じた時、僕たちはひらめいたんだ。バンドのサウンドから遠ざかり、ストリングスセクション、合唱、ホーンなどのクラシック音楽の要素を組み込んだり、モチーフやバリエーションのメソッドを拝借したら、もっとエキサイティングな楽曲になるんじゃないか?ってね。」
興味深いことに、メンバー3人のうちギター/ボーカルの Nils とインタビューに答えてくれたベーシスト Ilja は、ドイツの音楽大学で幅広い教育を受けています。ゆえに、典型的なロックサウンドに飽き足らず、クラッシックやエレクトロニカ、ノイズにジャズと、その好奇と冒険の翼を果敢に難解に広げることはある意味必然でした。
ゆえに、THE DILLINGER ESCAPE PLAN や BETWEEN THE BURIED AND ME との比較は避けがたい運命とも言えるでしょう。実際、”Noja” を聴けば彼らのアグレッシブでカオティックな奇数拍子の猛攻が、OPETH の知性とブラックメタルの咆哮を介しながらも、TDEP のスタイルをある程度基盤としていることに気がつくはずです。そこに絡み合う異質なアルペジオと英語のスポークンワードが重なることで、世界は不可思議な胎動を始めるのです。
ただし、THE HIRSCH EFFEKT はただリズミックにのみ実った果実ではなく、ハーモニックにも芳醇な甘い実をつけました。MESHUGGAH と SikTh の重音異端が流麗に花開く “Declaration”、LEPROUS の狂気を煮詰めた “Domstol”、NINE INCH NAILS の内省的シネマを投影した “Bilen”。さらにアルバムを締めくくる “Agera” には、Steven Wilson にも通じるメロディーの哲学と感情の絵画が広がります。
これほどの多様性、色彩を備えながら一つのアートとして完成したアルバムは、まさに Ilja が語る通り、”美術館のアートギャラリーを歩くような” 芸術的広がりを有しているのです。
今回弊誌では、Ilja John Lappin にインタビューを行うことができました。「”The Fragile” は実は僕のフェイバリットレコードの1つで、作詞作曲のみならず、プロダクション、サウンド、ジャンルの多様性に関するオルタナティブロックやメタルの重要かつ広く認識されたランドマークだよね。 」どうぞ!!

THE HIRSCH EFFEKT “KOLLAPS” : 10/10

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