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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【MØL : JORD】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH FREDERIK LIPPERT OF MØL !!

Denmark Based Five Piece Blackgaze Outfit, MØL Re-Mixes Agression And Beauty With Their Widscreen Debut Record “Jord” !!

DISC REVIEW “JORD”

興隆するデンマーク黄金世代の鋭鋒。常闇で光芒に焦がれしブラックゲイズの申し蛾 MØL がリリースした透徹のデビュー作 “Jord” は、ジャンルの虫籠を稀有なる羽音で切り裂きます。
前身となる ANTENNAS TO NOWHERE で、SLOWDIVE や MY BLOODY VALENTINE からインスピレーションを得たシューゲイズ/ドリームポップサウンドを追求していた Nicolai Hansen と Ken Klejs が MØL を立ち上げたのは2012年のことでした。
以来、セレスティアルな空気をエクストリームの白刃で裁断し巻き起こすバンドの “嵐” は、DEAFHEAVEN, GHOST BATH, OATHBREAKER, heaven in her arms 等と共にブラックゲイズの地図に新風を吹き込んでいます。
MØL がこの新興サブジャンルでまず傑出している点はコンパクトなバランス感覚から際立つコントラストかもしれませんね。エセリアルなシューゲイズサウンドとブラッケンドのアグレッションが双璧を成すジャンルにおいて、MØL ほどその両翼を巧みに美しく羽ばたかせるバンドはいないでしょう。
どちらか一方にに重心を振り、ともすれば片翼をほとんど犠牲にするバンドも多い中、8曲42分というコンパクトなデザインの中で光と闇を鮮明に浮き上がらせる彼らの手法は際立っています。
ツインピークスと Angelo Badalamenti のメランコリー、サスペンスを受け継ぐイントロダクションが印象的なアルバムオープナー “Storm” はまさにその MØL のシグニチャーウイングを大きく広げた春の嵐。リバーブの霧が晴れるやいなや、ハイピッチのスクリームとブラックメタルのフェロシティーがリスナーの眼前に広がります。
とはいえ、バンドがメロディーを放棄することはありません。鳴り響く雷鳴と騒乱のドラムワークを上昇気流に駆け上る、トレモロのハーモニーはあまりに気高く流麗。そうして対比に根ざしたインテンシティーは、ポストロックのアンビエンスを宿すアウトロへと収束していくのです。
「アルバムのテーマは、青く回転するこの星でいかに限られた時間を過ごすかについてなんだ。死と時間に関する疑問への思考や黙想なんだよ。」とインタビューで語るように、スカンジナビアの厳しくも壮大な自然を通して生と死、時間に焦点を当てたレコードは実際テーマと音楽が見事にシンクロしているように思えます。
“Penumbra” で緩やかに刻まれるミュートを施したギターの音色は、確かに時計の針を示しつつ終着駅へのカウントダウンを隠喩しているのでしょう。
“Vakuum” と “Lambda” に纏わるコントラストはアルバムのハイライトと言えるかもしれませんね。愛する人を失うことについて書かれた “Vakuum” は、ボーカル Kim がパーソナルな領域を追求したが故にデンマーク語で歌われる楽曲。怒りの感情が支配する作品で最もアグレッシブかつファストな真空の牙は、スラッシュやブラックメタルを前面に押し出しながら、ナチュラルに荘厳なる木漏れ日を浸透させていきます。
一方で、”Lambda” は80〜90年代のメロウなシューゲイズサウンドを意図的に狙ったインストゥルメンタルソング。Kevin Shields の理想を嫋やかに楽曲へと落とし込み、儚くも幻想的、エアリーな桃源郷を具現化しているのです。バンドのルーツ、闇と光はこの場所で交差し、極上のダイナミズムを創出し、再び羽搏き飛び立ちます。
「そこからブラックメタルとシューゲイズよりも多くのジャンルを引き出したい。」と Frederik が語るように、”Virga” には GOJIRA のプログレッシブな精神が宿っていますし、アルバムを締めくくるタイトルトラック “Jord” は LAMB OF GOD の息吹を吸い込むモダンメタルとシューゲイズの壮大なる交差点です。多様性まで手に入れたスカンジナビアの夜蛾は、そうしてシーンに煌めく鱗粉を散りばめていくはずです。
今回弊誌では、ギタリスト Frederik Lippert にインタビューを行うことが出来ました。LANTLOS の “.Neon” や DEAFHEAVEN の “Sunbather” との比較は避け難いでしょうが、よりワイドスクリーンなアプローチが魅力的な快作。
ROLO TOMASSI や CONJURER も揃えるレーベル Holy Roar Records にも注目です。「現在デンマークシーンは才能と共に爆発的な進化を遂げているよ。まさにメタルの黄金世代が勃興しているのさ。」どうぞ!!

MØL “JORD” : 9.8/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SUBSIGNAL : LA MUERTA】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MARKUS STEFFEN OF SUBSIGNAL !!

German Progressive Innovator, Subsignal Walk Toward More Melodic Path And Open To New Influences With Their New Record “La Muerta” !!

DISC REVIEW “LA MUERTA”

ジャーマンプログメタルの唱道者、SIEGES EVEN の血を受け継ぐ嫋やかなる残映。SUBSIGNAL がリリースした最新作 “La Muerta” は、サンタ・ムエルテの名の下にプログシーンの信仰を集め新たな拠り所、守護者となるはずです。
「当時起こったことはとても単純で、個人的な相違だったんだ。最終的にバンドは、Arno と僕、Oliver と Alex の二つに割れてしまったんだよ。」と Markus がインタビューで語った通り、80年代から活動を続ける巨星 SIEGES EVEN が長年の内なる闘争の末2008年に解散の道を選んだニュースは、プログメタルシーンに衝撃をもたらしました。
名手 Wolfgang Zenk がフュージョンに特化した支流 7for4 へと移行し、オリジナルメンバーの Markus が復帰。Andre Matos や Jens Johansson との実験場 Looking-Glass-Self の果てに邂逅したバンド史上最高のボーカリスト Arno Menses を得た 00年代のSIEGES EVEN。
そうして2005年にリリースした8つの楽章から成る “The Art of Navigating by the Stars” が、SIEGES EVEN 独特の世界観に研ぎ澄まされたメロディーが初めて重なり、FATES WARNING の “A Pleasant Shade of Gray” にも比肩し得る壮大なマイルストーンとなった事を鑑みれば、尚更バンドの消滅がシーンにとってどれ程の損失であったか推し量れるはずです。
しかし、Arno と Markus のメロディーとプログレッシブが奏でるケミストリーの二重奏はしっかりと SUBSIGNAL の音に刻まれています。
アルバムが相応に異なる風合いを醸し出していたように、SIEGES EVEN のスピリットはまさに実験と挑戦の中にありました。故に、二人が描く新たな冒険 SUBSIGNAL のサウンドが、プログレッシブワールドのトラディショナルな壁を突き破ることは自明の理だったのかも知れませんね。
キーワードはアクセシブルとエクレクティックでしょう。実際、「Arno と僕は他の異なるジャンルにも興味を持っていてね。」「僕にとって最も重要なのはメロディーなんだ。」と Markus が語るように、遂に本格化した SUBSIGNAL の最新作 “La Muerta” には近年のモダンプログレッシブが放つ波動とシンクロする瑞々しき血潮が注ぎ込まれているのです。
バンドのデビュー作 “Beautiful & Monstrous” 収録の “The Sea” が指針となったように、SUBSIGNAL は知性の額縁とプログレッシブなキャンパスはそのままに、よりソフィスティケートされた筆を携えドラマとエモーション、時にメランコリーをカラフルな多様性と共に一つの絵画、アートとして纏め上げて来ました。
ダンサブルなイントロダクション “271 Days” に導かれ示現するアルバムオープナー “La Muerta” は、バンドのトレードマークを保ちつつ、よりアクセシブルなメインストリームの領域へと舵を切る野心のステートメントです。
Steven Wilson の “To The Bone” を核として、HAKEN, FROST*, TesseracT, iamthemorning といったコンテンポラリーなプログレッシブロースターは恐れる事なくポップを知性や複雑性、多様性と結びつけモダンプログレッシブの潮流を決定的なものとしています。タイトルトラック “La Muerta” で示されたビジョンはまさにそのうねりの中にありますね。
Markus のシグニチャーサウンドであるコード感を伴うシーケンスフレーズは RUSH や THE POLICE のレガシー。現代的な電子音とマスマティカルなリフワークの中で舞い踊る Arno のメロディーは、眠れる John Wetton の魂を呼び覚ましたかのようにポップで優美。コーラスに華開く幾重にも重なるメランコリーは、暗闇から聖人へと向けられた全ての切実な祈り、請われた赦しなのかも知れませんね。
トライバルでシンフォニックな “Every Able Hand”、Markus の主専攻クラッシックギターから広がる雄大な音景 “The Approaches”、一転ブルースやカントリーの郷愁を帯びた “When All The Trains Are Sleeping” など Markus が語る通り実にエクレクティックなレコードで、全ては “Even Though the Stars Don’t Shine” へと収束していきます。
奇しくも Wilson の最新作とリンクするニューウェーブ、シンセポップの胎動、TEARS FOR FEARS や DEPECHE MODE の息吹を胸いっぱいに吸い込んだ楽曲は、同時にリズムのトリックやシーケンシャルなフレーズが際立つプログポップの極み。アルバムに貫かれるは旋律の躍動。
そうして “La Muerta” は iamthemorning の Marjana を起用し、荘厳なる Arno とのデュエット “Some Kind of Drowning” で平等に赦しを与えその幕を閉じました。
一片の無駄もなく、ただ日によってお気に入りの楽曲が変化する、そんな作品だと思います。ピアノからシンセ、エレクトロニカまで自由自在な Markus Maichel の鍵盤捌き、Dirk Brand の繊細極まるドラムワーク、そして RPWL の手によるクリアーなサウウンドプロダクションが作品をさらに一段上のステージへと引き上げていることも記しておきましょう。
今回弊誌では、ジャーマンプログメタルの開祖 Markus Steffen にインタビューを行うことが出来ました。「80年代に SIEGES EVEN を立ち上げたんだ。おそらくドイツではじめてのプログメタルアクトだったと思うよ。」どうぞ!!

SUBSIGNAL “LA MUERTA” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ALKALOID : LIQUID ANATOMY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ALKALOID !!

German Extreme Metal Super Group Alkaloid Shows Amazing Musicianship And Creativity With Their Newest Record “Liquid Anatomy” !! Can You Imagine Yes & Rush Mixed With Modern Metal Aggression?

DISC REVIEW “LIQUID ANATOMY”

テクニカルデスメタルの牙城、ドイツに惹起する維新の兆し。千軍万馬の猛者が締盟したプログレッシブの絆 ALKALOID は、最新作 “Liquid Anatomy” で天壌の宇宙から中毒性のマイクロウエーブを発します。
ALKALOID ほどスーパーバンドの表現が相応しい音楽集団はそう多くはないでしょう。これまでメンバー5人がかかわってきたバンドは、DARK FORTRESS, NONEUCLID, SPAWN OF POSSESSION, OBSCURA, NECROPHAGIST, ABORTED, GOD DETHRONED, BLOTTED SCIENCE と文武両道の精鋭ばかり。
中でも、「僕たちが NECROPHAGIST と OBSCURA で始めたことを今では無数のバンドがやっているんだ。」と語る通り、局所性ジストニアによる中指の不遇をも覆す不屈のギターマエストロ Christian Muenzner、新たに HATE ETERNAL にも加入したギターとピアノを操るドラムユーティリティ Hannes Grossmann のかつての音楽的なアイデアが、現在の包括的な Tech-metal への崇高なるインスピレーションとなっていることは明らかですね。
とはいえ、「僕たちは新たなバンド、プロジェクト、アルバムの度に自分たちを”再発明”するようにしているんだよ。特定のスタイルに執着してしまわないようにね。」と Christian が語るように、 ALKALOID は定型化したテクデスの様式、さらには傑出したデビュー作さえ過去の時空へと置き去りにしながら、RIVERS OF NIHIL, IHSAHN, HAKEN, GHOST ともシンクロするクラッシックなプログのスピリットを昇華した新たなメタルの潮流に身を委ねているのです。
アルバムオープナー “Kernel Panic” こそ進化の象徴。ヴィンテージのシンセサウンドに導かれ、滔々と湧出するシーケンシャルなギターフレーズはまさに YES や RUSH の遺伝子を色濃く宿す鮮やかな落胤。DARK FORTRESS 等で残虐な威厳を浴びせる Morean は、驚くことにその歌唱を Jon Anderson のチャンネルへと接続し、神秘的でキャッチーなロックの崇高美を具現化していくのです。
イーヴィルなディストーションサウンドは変調の証。ナチュラルに獰猛なモダンメタルの領域へとシフトする、一体化したバンドの猛攻は衝撃的ですらありますね。一転、再びプログの多幸感が再臨し、時に相反する二つの次元が融解。TOOL と CYNIC、一方で YES と VAN HALEN が楽曲の中で流動し躍動する “In Turmoil’s Swirling Reaches” にも言えますが、ALKALOID の振るう奇想天外なタクト、コントラストの魔法は実際群を抜いています。
そして先述したバンドと同様に、クラッシックとコンテンポラリー、荘厳と嗜虐、ポップと知性の狭間を自由自在に行き来するこのシームレスなアイデアは、確かに多様なモダンプログレッシブの根幹を成しているはずです。ただし、ALKALOID のプログレッシブには特に “90125” や “Signals” など80年代の風を受けた独特の色香も存在しますが。
MORBID ANGEL と MESHUGGAH が同乗する重戦車 “As Decreed by Laws Unwritten”、トライバルで複雑なリズムに呪術と叙情のボーカルが映え GOJIRA の理念ともシンクロする “Azagthoth” でブラックホールの物理現象を追求した後、バンドはタイトルトラック “Liquid Anatomy” でさらに新たな表情を披露します。
実際、これほど感動的で心を揺さぶるバラードと、エクストリームメタルのレコードで出会えるとは僥倖以外何者でもないでしょう。GENESIS や PORCUPINE TREE の叙情、クラッシックや教会音楽のスピリットをダークに消化した荘厳の極みは、感情の波間を悲哀で染め抜きます。
アルバムを通して言えますが、特にこの楽曲で聴くことの出来る Christian のエモーションとテクニック全てを楽曲のためだけに捧げた神々しきソロワークは、最後の “ギターヒーロー” を誇示して余りある激情とスリルに満ちていますね。
アルバムを締めくくるは20分のラブクラフトモンスター、6つの楽章から成るエピック “Rise of the Cephalopods” は ALKALOID 版 “2112” もしくは “Cygnus X-1 Book II: Hemispheres” なのかも知れませんね。プログロックの構成美、モダンメタルの複雑なグルーヴ、モダンプログの多様性にアトモスフィア。全てがここには存在します。現存の南極大陸を葬り、頭足類が進化を遂げる “If” の SF ストーリーは、実はシーンと自らの立ち位置を密かに反映しているのかも知れませんね。
今回弊誌では、Morean, Hannes, Christian の3名にインタビューを行うことが出来ました。 NECROPHAGIST や OBSCURA についても重要な証言が飛び出したと思います。「Hannes がアルバムのいくつかの瞬間で “90125” の時代を超越したサウンドに近づいたという事実は、彼がそれを意図しているのかいないのかに関わらず、エンジニア、プロデューサーとしてのスキルに対する大きな賛辞だよ。 1983年に彼らが成し遂げたサウンドを超えるものは、今日でもほとんどないからね。」どうぞ!!

ALKALOID “LIQUID ANATOMY” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【RIOT V : ARMOR OF LIGHT】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH NICK LEE OF RIOT V !!

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The Pride of NYC, Legend of Metal History, Riot V is Still Alive And Kickin’!! “Armor Of Light” Unites Their Early Hard Rock Sounds With The Magic Of Power Metal ! Shine on!

DISC REVIEW “ARMOR OF LIGHT”

不撓不屈の不沈獣、終天のメタルウォーリアー RIOT V が、ハードロックの血潮とパワーメタルの魔法を等しく装填した光の英雄譚 “Armor of Light” をリリースしました!!メタルの教科書 “Thundersteel” 30周年に刻む新たな闘志の刻印は、40年のキャリアで通過した嵐、凪、そして帰天まで全ての逆境を力に変える躍動と眩耀に満ちています。
ブラックビューティ、黒のレスポールを抱えて独特の艶美な憂いと異国の薫りを奏でた Mark Reale はまさにバンドの心臓でした。2012年、Mark の逝去を受けて RIOT の存続を信じたファンは決して多くはなかったはずです。しかし絶佳なる遺言 “Immortal Soul” “不滅の魂” に Mark が刻んだ通り、バンドが立ち止まることは決してありませんでした。
70年代に生を受け、英国ハードロックにアメリカンな風を吹き込んだ RIOT のターニングポイントは徹頭徹尾パワーメタルへと変貌を遂げた “Thundersteel” だったと言えます。そして類稀なる鋼鉄の “道標” リリース時のベーシスト Don Van Stavern と、89年に加入して以降、Mark と共に流麗なツインリードでクラシカルオリエンタルのカタルシスを提供し続けたトリッキーなギターの名手 Mike Frintz は英雄抜きでバンドの存続を決断します。
MOON TOOTH でモダンなヘヴィープログレッシブを追求する Nick Lee、Tony Moore をフレキシブルに進化させた Todd Michael Hall、VIRGIN STEEL のダイナモ Frank Gilchriest を加えて2014年に日本以外では RIOT V の名でリリースされた復活作 “Unleash the Fire” には確かに Mark の魂が深く宿った鎮魂の焔でした。そして完全に RIOT V 名義でリリースされた “Armor of Light” は亡きギタリストと共に歩む新たなる歴史の幕開けです。
IRON MAIDEN の “Trooper” をイメージさせるエナジーに満ちた勝利のギャロップ “Victory”、ボーカル/ギターハーモニーが正しい場所に正しく配置されたウルトラキャッチャーで由緒正しき哀愁の”リアリズム” “End of the World”、”Thundersteel” のスピードデーモンに真っ向から立ち向かう “Messiah”。オープニングの三連撃はまさにアザラシ無双。KORN の最新作等でエンジニアを務めた Chris “The Wizard” Collier を得て SABATON にも匹敵する現代的なメタルプロダクションを纏った RIOT V は、目まぐるしくもダイナミックなパワーメタルの大斧で作品の冒頭を切り裂きます。
一方で、「Mike と Donnie は Mark の遺産を称えながら素晴らしい仕事を果たしていると思うな。楽曲やリフ、メロディーの中に初期 RIOT のハードロックサウンドと、後期のパワーメタルサウンドをミックスしながらね。」と Nick が語るように、新生 RIOT V の肝は初期と後期の融合。右手にパワーメタルの斧を握りしめ、左手にハードロックのシールドを携えたジョニーの勇姿はさながら無敵の獣神。
奇しくも今年は JUDAS PRIEST の “Firepower”、SAXON の “Thunderbolt”、そして RIOT V の “Armor of Light” と長年メタルを支え続けたベテランが、初期のキャッチーなハードロックテイストをナチュラルに復刻し復活の狼煙を上げています。
実際、後期 RAINBOW を彷彿とさせるロマンティックな “Burn the Daylight”、THIN LIZZY の美学を受け継ぐ神秘的な “Set the World Alight”、初期の RIOT らしいブルーズな響きとホーンセクションが溶け合った “Caught in the Witches Eye” など作品にはオーガニックでユーティリティーな色彩が調和し魅惑のコントラストが渦巻いているのですから。
それにしても、威風堂々の新たなアンセム “Angel’s Thunder, Devil’s Reign” や “Heart of Lion” を聴けば、ツインリードとボーカルハーモニーに加えて、リズムを捻ったクールなキメフレーズの数々がバンドのトレードマークであることを改めて再確認できますね。
後期 RIOT のアイデンティティーともなった、フォークトラッド、クラシカル、ケルトの響きを堪能できるドラマティックな “San Antonio” や “Ready to Shine” も出色の出来。そうしてアルバムは瑞々しい “Thundersteel” の再創生で大円団を迎えます。
まさに珠玉の逸品。今回弊誌では、バンドのレガシーを受け継ぐギタリスト Nick Lee にインタビューを行うことが出来ました。意外にも Sargent House の作品が並ぶプレイリストにも注目です。「アザラシのパワーを感じるんだ!」弊誌2度目の登場。どうぞ!!

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RIOT V “ARMOR OF LIGHT” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【RIVERS OF NIHIL : WHERE OWLS KNOW MY NAME】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ADAM BIGGS FROM RIVERS OF NIHIL !!

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Pennsylvania Based Progressive Death Metal Quinted, Rivers Of Nihil Contribute To Re-branding Death Metal Into A Eclectic, Expressive Art-form With Incredible New Record “Where Owls Know My Name” !!

DISC REVIEW “WHERE OWLS KNOW MY NAME”

遂に食物連鎖の頂点へと躍り出たペンシルベニアの梟神 RIVERS OF NIHIL が、深遠かつエクレクティックなプログレッシブデスメタルへとドラスティックな変貌を果たす傑作 “Where Owls Know My Name” をリリースしました!!生と死、そして知性を司る伝承の神明は、猛禽の鋭さと神々しきアトモスフィアでシーンの潮流を支配します。
テクニカル、メロディック、デスコア、ブルータル。雨後の筍のごとく現れるデスメタルアクトの大半は、エモーションのスペクトルを怒りに起因する狭い領域へとフォーカスし、ある意味では檻の中で固定観念と共に囚われているようにも思えます。
「この作品では、僕たちが期待されているようなサウンドを放棄した。」と Adam が語るように、RIVERS OF NIHIL が “Where Owls Know My Name” で達成した偉業は、真にユニークな感性で鋼鉄の慣習から羽ばたいたその勇気にあると言えるでしょう。
多様で創造性に満ち、複雑でしかし凄艶な星の一生を目撃するサイエンスフィクションは、数年前に FALLUJAH がアトモスフィアと共に導入したジャンルのパラダイムシフトをも超越し、さらに時空を行き来するタイムマシンなのかも知れませんね。
アルバムオープナー “Cancer / Moonspeak” は来たるべき運命、旅路のムードを決定づけます。まるで CYNIC のような浮遊するアンビエントは、アコースティックの響き、レトロなシンセ、ムードに満ちたクリーンボイスを伴ってリスナーを深遠なるストーリーへと誘います。
刹那、雷鳴のように鋭利なギターリフが轟くと雰囲気は一変。革命的な “The Silent Life” がスタートします。揺るぎのない無慈悲なアグレッションとインテンスは、徐々に理知的なギターと官能のサクスフォンが支配するスロウなジャズブレイクへと転換していきます。その変化は驚くほどにナチュラルでオーガニック。そうして静と動、混沌と平穏のコントラストは終盤に向けて奇跡の融解を遂げるのです。まるで人生本来の姿を描くかのように。
CANNIBAL CORPSE と KING CRIMSON が果たした未知との遭遇。例えることは容易いですが、実際、獰猛な猟奇性と神々しき英知を寸分も失うことなく一つのサウンドクラフトに収めることがどれほど困難かは想像に難くありません。何より彼らのデザインはあまりに自然で、神々の創造物のように生き生きとした姿を晒しているのですから。
厳かなクリーンボーカルを導入し、モダンなメロディックデスメタルにサイケデリックな夢幻のアトモスフィアを付与した “A Home”、激烈なアサルトに一片の叙情を込めて老衰の無常を伝える “Old Nothing” を経て辿り着く “Subtle Change (Including the Forest of Transition and Dissatisfaction Dance)” はアルバムのハイライトだと言えるでしょう。
“Epitaph” を思わせる悲壮なアコースティックをイントロダクションに据えた8分30秒のエピックは 「KING CRIMSON は僕のオールタイムフェイバリットバンドなんだよ。」と Adam が語る通りクラッシックなプログロックの息吹を全身に宿した濃密な叙情のスロウダンス。ソフトでエレガントな繊麗と、野蛮で蒼然としたアグレッションは、ギターやサクスフォン、オルガンのトラディショナルで大胆ななソロワーク、プログロックのダイナミックな変拍子やシーケンスを抱きしめながら、詩情と偉観そして奇妙なカタルシスを伴って文明の移り変わりを描く壮大なマグナムオパスを形成するのです。
一方でこの大曲には、djenty なリフワークやシンフォブラックの狂騒などコンテンポラリーな一面も散りばめられており、幽玄なクリーンボイスが創出する崇高美とも相俟って、もしかすると NE OBLIVISCARIS が纏う神秘ともシンクロしているのかも知れませんね。
続くインストゥルメンタル “Terrestria III: Wither” では、情景を切り取るポストロックのデザインを導入し、コンテンポラリーなエレクトロニカやアンビエント、インダストリアルノイズのキャンパスに冷徹かつ耽美な絵巻物を描いてみせるのですから、バンドのエクレクティックな感性、タイムラインの混沌には驚かされるばかりです。
アルバムは、バンドの審美を全て詰め込んだタイトルトラックで再度サクスフォン、ヴィンテージシンセ、クリーンボイスの温もりを呼び起こし作品のコアを認識させた後、ダークなギターがメロトロンの海を切り裂く “Capricorn / Agoratopia” で荘厳にリリカルに、一握りの寂寞を胸に秘め星の死を見届けながらその幕を閉じました。
今回弊誌では、ベース/クリーンボーカルを担当する Adam Biggs にインタビューを行うことが出来ました。まさにメタルとプログのタイムラインに交差する異形のランドマーク。モダン=多様性とするならばこの作品ほど “モダン” なスピリットを抱いた奇跡は存在しないでしょう。ex-THE FACELESS の Justin McKinney、BLACK CROWN INITIATE の Andy Thomas もゲストとして素晴らしい仕事を果たしています。どうぞ!!

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RIVERS OF NIHIL “WHERE OWLS KNOW MY NAME” : 10/10

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EXCLUSIVE INTERVIEW 【CONCEPTION : ROY KHAN】2018 REUNION SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ROY KHAN OF CONCEPTION !!

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The Voice Of Prog-metal, Former Kamelot Singer Roy Khan Is Back With Reunited Norwegian Legend Conception !!

CONCEPTION IS BACK !!

時代に咲いた鮮やかな徒花、ノルウェーが産んだプログメタルレジェンド CONCEPTION が遂に帰ってきます!!長すぎた沈黙を破る伝説の帰還は、不世出のシンガー Roy Khan の復活を伴いシーンに歓喜の渦を巻き起こしています。
KAMELOT の金看板として、その艶やかで煽情的な歌唱を披露していたスーパースター Roy Khan がバンドからの脱退を表明したのは 2011年春の事でした。音楽大学でオペラと声楽を学んだ Roy の歌唱技術、歌に込めるエモーション、ファルセットの魔法は別格。「もし僕があの時 KAMELOT を辞めていなかったとしたら、今日僕はここにいないだろう。」とインタビューで語った通り、不可避な “燃え尽き症候群” の治療が要因とはいえ、作曲にも大いに貢献を果たしていたマエストロ突然の離脱はあまりにショッキングな出来事でした。
「僕は本当に音楽に関係する全ての人に対して、全てのコミュニケーションをシャットダウンしたんだからね。」音楽から離れていた7年間、Roy は教会の職員や教師として働いていたようです。その生活も悪くはなかったと話すシンガーは、しかし遂に自身の才能を再び世界に解放する準備が整ったと溢れる自信を漲らせます。
「実際に僕たちが解散したことはないんだよ。何と言うか、棚上げしていたって感じだったね。」 という言葉が裏付けるように、友人として連絡を取り続けていた CONCEPTION が Roy 復帰の舞台となったのは自然で最良の選択に思えます。実際に、バンドは2005年にライブ限定で一時的なリユニオンを果たしていますし、”ここ何年かは何度も、いつかある時点で何かやりたいねと話して” いた訳ですから。
神秘的で崇高、ある種哲学的とも言える CONCEPTION の “プログレッシブ” は、登壇が少し早すぎたのかもしれませんね。スパニッシュギターが夕日に映えるデビュー作 “The Last Sunset”、キャッチーでドラマティック、稀代のバラード “Silent Crying” を擁する “Parallel Minds”、複雑かつ荘厳な楽器の宗儀 “In Your Multitude”、そして冷徹でダークな歌の涅槃 “Flow”。
「僕たちはいつも、自分たちをリニューアルしようと心掛けて来たんだよ。それまでに作った楽曲のようなサウンドを持つ新曲を作らないというのが、バンドのポリシーだったんだ。」と語る通り、これまで CONCEPTION が残した4枚の作品は確かに全て合わせた焦点が異なります。
しかしそれでもその勇敢なる多様性、DREAM THEATER の “Awake” を推し進めたかのような独特の内省的なアトモスフィア、近年の FATES WARNING にも通じるインテリジェンスの糸を巡らすダークなインテンシティー、そして SEVENTH WONDER にも受け継がれた洗練のデザインは全ての作品に浸透しており、まだまだ与し易いスピード&パワーが全盛だった当時よりも、エクレクティックなモダンメタルのスピリットが透徹した現在こそ正当な評価が得られるはずです。
すでに先を見据えるバンドの復活EPは秋にリリースが予定されています。「僕たちの全ての歴史、要素がミックスされるわけさ。」と語る Roy ですが、その歴史にはもちろん自身が経験した KAMELOT での荘厳な旅路や、フラメンコの情熱をその身に宿すギターマイスター Tore Østby が ARK で育んだプログレッシブな冒険も含まれているはずです。期待に背くことはないでしょう。そして願わくば、失った20年を取り戻すコンスタントな活動を望みたいところですね。
今回弊誌では、ボイス・オブ・プログメタル Roy Khan にインタビューを行うことが出来ました!Welcome Back Roy, and CONCEPTION! Here We Go!!

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PORTICO QUARTET : ART IN THE AGE OF AUTOMATION, UNTITLED (AITAOA #2)】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JACK WYLLIE OF PORTICO QUARTET !!

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With The Dreamy, Hypnotic Sound Of The Hang, Portico Quartet Creates Incredible Art In The Age Of UK New Jazz !!

DISC REVIEW “ART IN THE AGE OF AUTOMATION” “UNTITLED (AITAOA #2)”

エレクトロニカとバンドサウンドをシームレスに連結する UK ジャズ新世代 PORTICO QUARTET が、オートメーションの時代に贈る流麗なる記念碑 “Art in the Age of Automation” “Untitled (AITAOA #2)” をリリースしました!!2018年、人と機械の創造性が織り成す距離感は想像以上に接近しています。
エレクトロニカをベースとしつつ、全てにおいて細部までオーガニックであることに拘った GOGO PENGUIN の最新作 “A Humdrum Star” はリスナーの記憶に新しいところでしょう。
”Outer” をデジタルな世界、“Inner” をエモーショナルなヒューマンの領域に位置づけた作品は、例えるならば PC で精密にデザインされた建築物を、匠の手作業で一つ一つ忠実に再現して行くようなプロセスでした。
そして興味深いことに、同じ UK ジャズの新たな潮流から台頭した PORTICO QUARTET の最新作も相似的アイデアを提示して、人と機械が潮解した最先端のサウンドを立証しているのです。
「このアルバムはある種の解決策を提示しているんだよ。オートメーションと人間らしさという2つの異なる物事についてのね。」Jack がインタビューで語った通り、”Art in the Age of Automation” そして “AITAOA #2” がモダンミュージックが宿す苦悩にある種の解決策をもたらすことは明らかです。
“エモーション= 人間” “精密 = デジタル” という刷り込み。言い換えればその苦悩は固定観念という人の持つカルマ。そしてそのカルマに真っ向から挑んだ作品こそ “Art in the Age of Automation” だと言えるでしょう。
Jack は PORTICO QUARTET の音楽性をこう表現しています。「僕たちのサウンドには様々な音楽の側面が落とし込まれているよ。ジャズ、エレクトロニカ、アンビエント。時にはミニマリズムだって垣間見える。」Ninja Tune へ移籍しジャズとの距離を取り PORTICO の名の下でリリースしたポップな異色作 “Living Fields” を経ることで、ある種 “回帰” にも思える “Art in the Age of Automation” はデビュー以来最も深みを増しています。
アルバムオープナー “Endless” はその回帰と深みの象徴かも知れませんね。残響を帯びた電子音、嫋やかなブレイクビート、エセリアルなエレクトロニカの流れは、バンドのトレードマークであるハングドラムの風雅な響きを呼び込みます。”Portico” (前廊)を経由して辿り着くは神聖なるサクスフォンの嘶き。
ヒューマンとデジタルの境目が不可解な、カルマを凌駕した UK らしいダークな情緒はポストロックの雄大さを伴ってリスナーにエンドレスなサウンドスケープを届けるのです。
一方で、タイトルトラック “Art in the Age of Automation” を聴けば、独特の倍音を備えた音階をもつ打楽器ハングドラムが、ジャズとミニマリズムの蜜月を育み幻想的な電子の世界を映し出していることに気づくはずです。20世紀最後にして最大のアコースティック楽器発明、スティールパンのアップデートバージョンは、コンテンポラリーなデジタルの海にも良く映えます。
実際、アルバムを聴き進めるにしたがって、オーガニックな演奏とデジタルなマニュピレーションの境界は、英国の霧で覆われたかのように混迷を深めていきます。”A Luminas Beam” や “KGB” で見せる、生々しい楽器の音色と電子音の融合が育む浮遊感やダイナミズムは、変則拍子を身に纏いジャズとロックの境界さえ霞ませるその深き “霧” のたまものだといえるでしょう。
“Current History” でクラシカルとミニマルテクノの真髄を披露した後、辿り着く “Lines Glow” はまさに音のユーフォリア。神々しきハングの音色はトライバルな感覚をも伴って、カラフルなシンセサイザーの海へと溶け込みます。そうして育まれたサウンドスケープの種は “Undercurrent” で静謐と叙情の波を全身に浴びて終幕に相応しくヒプノティックに開花するのです。
壮麗なストリングスを含むアコースティックな楽器、オーガニックな演奏がモダンなプロダクション、テクニック、テクノロジーと融和した時、そこには鮮やかな PORTICO QUARTET の色彩が生まれます。PORTICO QUARTET の固定観念を解放するチャレンジは、”デジタルなエモーション”、”精密な演奏技術” を幾重にもレイヤーして最新作 “Untitled (AITAOA #2)” へと引き継がれているのです。
今回弊誌では、サクスフォン /キーボードプレイヤーの Jack Wyllie にインタビューを行うことが出来ました。PORTICO QUARTET、GOGO PENGUIN 両者共に、UK ジャズの特異性、革新性についても非常に近い切り口で回答していますね。注目です。どうぞ!!

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PORTICO QUARTET “ART IN THE AGE OF AUTOMATION” “UNTITLED (AITAOA #2) : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ichika : she waits patiently, he never fades】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ichika !!

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Japan’s Up And Coming Guitar Artist ichika Has Been Making Waves With His Trilogy EPs “forn”, “she waits patiently” and “he never fades”. Definitely, We Should Keep An Eye On This Young Virtuoso!!

DISC REVIEW “she waits patiently”, “he never fades”

光耀を増した夢幻のクリスタル。琴線の造形師 ichika がギターとベースで奏でるダブルファンタジー “she waits patiently” “he never fades” は、音聖のプロローグを透徹した美意識で彩ります。
マエストロの周辺はデビュー EP “forn” のリリース以降俄に騒がしくなりました。コンテンポラリーでメロディアスなテクニックのイヤーキャンディー AMONG THE SLEEP で gen との麗しき邂逅を果たした後、ichika がスポットライトを浴びたのは東京コレクションのランウェイでした。モデルとしても需要はありそうですがもちろんモデルとしてではなく、スーパーグループ ichikoro のメンバーとしてサプライズで演奏を行ったのです。
Think (川谷絵音), Holy (休日課長), M (ちゃんMari), Vista (奏), Sugar (佐藤栄太郎) から成る異能の音楽集団を率いるリーダーは ichika。そして ichikoro のサウンドはその奔放なラインナップとシンクロするかのように自由を謳歌しています。
「正直音楽の作られていくスピードが異常です。」実際、ゲスの極み乙女や indigo La End の頭領、百戦錬磨の川谷絵音を筆頭とするトリプルギター軍団のクリエイティビティーは斬新かつ鮮烈です。ファンクにポルカ、サンバ、ジャズ、そしてオルタナティブなロックの衝動まで内包する “Wager” はまさにグループの象徴。倍速で演じる紙芝居の如く、コロコロと表情を移す猫の目のイマジネーションはリスナーの大脳皮質を休むことなく刺激し続けます。
課長の派手なスラップを出囃子に、各メンバーの個性も際立つエキサイティングなインストゥルメンタルチューンにおいても、ichika の清澄なるクリーントーンは際立ちます。一聴してそれとわかる眩耀のトーンと水晶のフレットワークは、キラキラと瞬きながら若きヴァーチュオーゾの確かな才気を主張していますね。
無論、ichika のそのトレードマークを最も堪能出来るのがソロ作品であることは言うまでもないでしょう。「”forn” を作るときに話の全体の大きな流れを作り、それを “forn” と “she waits patiently”、”he never fades” の3つに分けました。」と語るように、冒険の序章はトリロジーとして制作されています。”forn” と “she waits patiently” は女性視点で、”he never fades” は男性視点で描かれたストーリー。そして ichika はギターを女声に、ベースを男声に見立てその物語を紡いでいるのです。
「僕は普段曲を作る前にまず物語を作り、それを音楽で書き換えようとしています。聴き手に音楽をストーリーとして追体験させることで、より複雑な感情に誘導することが出来るのではないかなと思っているからです。」という ichika の言葉は彼の作品やセンスを理解する上で重要なヒントとなっています。
彼の楽曲に同じパートが繰り返して現れることはほとんどありません。もちろん、テーマを拡げる手法は時折みられるものの、単純に同じパッセージを再現する場面は皆無です。つまり、映画や小説が基本的には同じ場面を描かず展開を積み重ねてイマジネーションを掻き立てるのと同様に、ichika の楽曲も次々と新たな展開を繰り広げるストーリーテリングの要素を多分に備えているのです。小説のページを捲るのにも似て、リスナーは当然その目眩く世界へと惹き込まれて行くはずです。
加えて、”forn” から ichika がさらに一歩踏み出した場所こそが “感情” であったのは明らかです。「この音を聴けばこういう感情が生まれる」エモーションの引出しを増やすに連れて、彼が直面したのは “ソロギター” という手法そのものだったのかも知れませんね。
ソロギター作品と言えばそのほとんどがアコースティックで奏でられていますが、ichika はエレクトリックギター/ベースを使用しプラグインエフェクトで極限まで拘り抜いた天上のトーンを創出しています。ピアノやアコースティックギターで表現するインストゥルメンタルの楽曲は、確かに美しい反面、平面的な情景描写に終わってしまうことも少なくないでしょう。
しかし、儚さや美しさと同等の激しさや苦しさを宿す “he never fades” や “illusory sense” は明らかにその殻を破った楽曲です。プレイリストを見れば分かるように、そこには、ジャズやアンビエント、ミニマルや電子音楽の領域と並行してデスコアや djent、フュージョンといったロックの衝動を通過した ichika の独創性、強みが存在するのです。
エレクトリックギター/ベースを選択することで、彼は唯一無二の自身のトーンと共に、ハイノートの自由を手に入れています。時に煌き躍動する、アコースティックギターでは再現不可能なハイフレットでのフレキシブルでファストなプレイ、右手を使用したタッピングの絵巻物はモダンなイメージを伴ってロックのエモーションをガラス細工のように繊細な音流へと吹き込みます。
そしてより “ギター” “ベース” という弦楽器の特徴を活かしたスライドやヴィブラート、トレモロ、ガットストローク、さらには休符、弦の擦れる音やミュートノイズまでをも突き詰めて、ichika は感情という総花を物語へと落とし込んでいるのです。揺らぐ感情の波間に注がれる荘厳なる崇高美。
“彼女” は辛抱強く待ちました。”彼” も辛抱強く待ちました。きっと世界には、絶望の後には救いが、別れの後にはユーフォリアが等しく用意されているのです。ichika の素晴らしき序章、未曾有のトリロジーは静かにその幕を閉じました。ISSUES の Tyler Carter と作曲を行っているという情報もあります。次の冒険もきっと目が離せないものになるでしょう。Have a nice dream, ichika です。どうぞ!!

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Artwork by Karamushi

ichika “she waits patiently”, “he never fades” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【W.E.T. : EARTHRAGE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ROBERT SÄLL OF W.E.T. !!

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Melodic Hard Super-Stars, W.E.T. Has Just Released Definitely One Of The Best Record In The Genre “Earthrage” !! Are You Ready For “Burn” And “Watch Their Fire” ?

DISC REVIEW “EARTHRAGE”

WORK OF ART, ECLIPSE, TALISMAN。メロディックハードの幾星霜に足跡を刻んだ三雄を頭文字に戴くスーパーグループ W.E.T. が、捲土重来を期すジャンルの王政復古 “Earthrage” をリリースしました!!瑞々しいアリーナロックの雄々しき鼓動は、地平の年輪に印されしかつての栄光を確かに呼び覚まします。
WORK OF ART と ECLIPSE。2000年代以降、メロディックハード希望の星は明らかにこの両雄でした。片や洗練の極みを尽くす AOR、片や情熱と澄明のハードロック。
しかしインタビューで語ったように、スウェーデンの同じ学校から輩出された2つの綺羅星 “W” の象徴 Robert Säll と “E” の象徴 Erik Mårtensson は、至上のメロディーを宿すシンクロニティー、宿命の双子星だったのです。実際、2人の邂逅は、AOR とハードロックの清新なる渾融を導き、ジャンルのレジェンド Jeff Scott Soto の熱情を伴って唯一無二の W.E.T. カラーを抽出することとなりました。
故に Robert の 「最初の2枚では、僕と Erik がかなりコラボレートして楽曲を書いていたんだ。だけど、今回の作品のソングライティングに僕は全く関わらなかったんだよ。」という発言はある意味大きな驚きでした。
それは何より、”Earthrage” が疑いようもなくバンドの最高傑作となり得たのは、前作 “Rise Up” で顕著であった硬質なサウンド、メタルへの接近をリセットし、Robert の得意とする80年代初頭のオーガニックなメロディックロックを指標したからに他ならないと感じていたからです。
つまり、「”Earthrage” を制作する際に Erik と話し合ってあのオーガニックなスタイルを取り戻すべきだと感じた訳さ。」と語るように、もちろん Robert から方向性についてのサジェスチョンはあったにせよ、”Earthrage” における奇跡にも思える有機的な旋律の蒸留、ハーモニーの醸造、ダイナミズムの精錬には改めて責任を一手に負った Erik Mårtensson というコンポーザーの開花と成熟を感じざるを得ませんね。
予兆は充分にありました。ECLIPSE のみならず、NORDIC UNION, AMMUNITION 等、歴戦の猛者達との凌ぎ合いは、明らかに Erik の持つ作曲術の幅を押し広げ、効果的で印象に残るコーラスパートの建築法を実戦の中で磨き上げて行ったのですから。
アルバムオープナー、”Watch The Fire” はまさに Erik とバンドが到達した新たな高みの炎。冒頭に炸裂する生の質感を帯びた強固なリズムと、期待感に満ちたギターリフはまさしく ECLIPSE 人脈から Magnus Henriksson & Robban Bäck 参加の功名。凛として行軍するヴァースでは Jeff と Erik がボーカルを分け合い、さながら DEEP PUPLE の如き伝統のインテンスを見せつけます。
コーラスパートは巨大なフックを宿す獣。トップフォームの Jeff は、久方振りに発揮する本領で徹頭徹尾リスナーのシンガロングを誘うのです。そしてパズルのラストピースは、Desmond Child 譲りのアンセミックなチャントでした。
BOSTON の奥深き音響に Robert のキーボードが映える “Kings on Thunder Road”、MR. BIG の “Nothing But Love” を彷彿とさせるストリングスの魔法 “Elegantly Wasted” を経て辿り着く “Urgent” はアルバムを象徴する楽曲かも知れませんね。
同タイトルのヒットソングを持つ FOREIGNER の哀愁とメジャー感を、コンテンポラリーなサウンドと切れ味で現代へと昇華した楽曲は、あまりに扇情的。
畳み掛けるように SURVIVOR の理想と美学を胸いっぱいに吸い込んだ “Dangerous” で、リスナーの感情は須らく解放され絶対的なカタルシスへと到達するはずです。
そうして一部の隙も無駄もないメロディックハードの殿堂は、”決して終わらない、引き返せない” 夢の続き “The Never-Ending Retraceable Dream” でその幕を閉じました。楽曲のムードが Jeff にとって “引き返せない” 夢である JOURNEY を想起させるのは偶然でしょうか、意図的でしょうか?
今回弊誌では、WORK OF ART でも活躍する稀代のコンポーザー Robert Säll にインタビューを行うことが出来ました。想像以上に明け透けな発言は、しかしだからこそ興味深い取材となっているはずです。「メロディックハードロックがまたチャートの頂点に戻れるとは思えないね。そして僕はそれで構わないと思っているんだよ。」どうぞ!!

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W.E.T. “EARTRAGE” : 10/10

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