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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CHANGELING : CHANGELING】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TOM “FOUNTAINHEAD” GELDSCHLÄGER OF CHANGELING !!

“Hans Zimmer Famously Said That His Music Is Not Original, But It Is The Sum-total Of All The Music That He’s Consumed In His Life – And That Is Also True For Me.”

DISC REVIEW “CHANGELING”

「Hans Zimmer の有名な言葉に、”自分の音楽はオリジナルなものではなく、人生で消費してきた音楽の総体である” というものがある。そしてその言葉は、僕にとっても真実なんだ。僕は若い頃からオーケストラ音楽に興味があり、10代で初めてレコーディングしたときから、さまざまな種類の楽器を重ねたりオーケストレーションしたりすることで、ロックバンドのサウンドを超えることを試みていた。まだ10代の頃に書いた曲を収録した僕の最初のソロ・アルバムでさえ、オーケストラ・パートや世界中のパーカッション・サウンドがあり、さまざまなジャンルや音楽の伝統から影響を受けている。それが僕の頭の中の音楽の聴こえ方なんだと思う」
“モダン・メタルの歴史上最高傑作のひとつ”。AMOGH SYMPHONY で共闘した Vishal J Singh は、戦友 Tom “Fountainhead” Geldschläger の新たな旅路をこう称賛しました。その言葉は決して大げさなものではありません。長年、艱難辛苦に耐え抜いたフレットレス・モンスターは、これまでの人生と音楽体験をすべて注ぎ込み、モダン=多様を完璧なまでに体現しためくるめくメタル・アートを遂に完成させたのです。
「メディアだけでなくギター業界も、僕のプロとしての全生涯を通じて僕の作品をほとんど無視してきたからね。そしてもちろん、世界各国のアルバム・チャートにランクインした “Akroasis” を通して、ようやく世界中の聴衆に僕の作品を聴いてもらえたというのに、OBSCURA のバンド・リーダーによって、”Tom のパートを再録音した”、”アルバムにはフレットレス・ギターがない”、”Tom はスタジオでギターのチューニングもできない” と嘘の中傷キャンペーンを展開されたときがその最たるものだったね。それだけでなく、僕のビデオはほとんど削除され、僕のソーシャルメディア・ページは何度もハッキングされ、いじめられたり、せっかく僕の活動に興味を持ってくれていたオーディエンスから切り離されたりするケースもたくさんあった。だから、そうした僕の旅路が “Changeling” でやっとメディアの注目を得ただけでね。このアルバムを聴いて、斬新だと思われるのはよくわかるけど、実は僕はもう20年くらいフレットレスでメタルやそれに関連するスタイルを演奏してきたんだ」
Fountainhead が正当な評価を得るのにここまで時間がかかったのは、あまりに遅すぎたとしか言いようがありません。そして皮肉なことに、その評価の妨げとなっていたのは他でもない、彼を世に送り出した OBSCURA の “Akroasis” だったのです。
実際、Fountainhead は OBSCURA の最も野心的な作品となった “Akroasis” の源泉でした。15分の “Weltseele” では東洋の影響と弦楽五重奏を加え、魅惑の実験的スタイルでアルバムを締めくくるなど Fountainhead の貢献、その大きさは誰の目にも明らかであったにもかかわらず、近年よりその人間性が疑問視される OBSCURA の首領 Steffen Kummerer によって彼の存在は抹殺されてしまったのです。しかし豊かな才能は決していつまでも草庵で燻るべきではありません。遂に臥薪嘗胆が報われる日が訪れたのです。まさにメタルの回復力。
「フレットレス・ギターの長所と短所だけど、普通のギターではできないことを実現してくれる。微分音、グリッサンド、ハーモニクスをスライドさせたり、指板を縦よりも横に動けたり…本当にとても楽しいんだ。ただし、コードとなるとできることには限界があって、高音域でのサスティーン、演奏性にも限界がある。また、僕がよく使うメタル・フィンガーボードとブラス・ピックを使っても、ハイエンドを出すには限界があるんだ。だから、”フレットのない普通のギター” ではなく、”ユニークな目的&シチュエーションのためのユニークな楽器” としてアプローチするのが一番効果的なんだよね」
まずこの作品を特別なものにしているのが、Fountainhead のトレードマークであるフレットレス・ギターでしょう。フレットのない耳が頼りの弦楽器は、当然その習熟により大きな労力と鍛錬を必要としますが、あの Bumblefoot に薫陶を受けた Fountainhead にとってこの楽器はむしろ水を得た魚。輝くメタル・フィンガーボードで、この音楽にとって異質な夢幻の世界をフレットレス・ベースと共に紡ぎ上げていきます。
「アルバムのオーケストラ・パートの99%は本物の楽器なんだ。そう、それはとても大変で長いプロセスだった。既存のオーケストラと協力して、大きな部屋ですべてを生録音する手段がなかったからだ。 その代わり、数年かけていろいろな楽器やラインをいろいろな場所で録音した。そのために、さまざまなプレイヤーを起用する必要があったんだ。このアルバムのコンセプトのひとつは、曲ごとにまったく異なる形のオーケストレーションにすることだったから」
とはいえ、フレットレスの異端でさえこの作品にとっては飾りのひとつに過ぎません。ALKALOID, FEAR FACTORY, VIPASSI, DEATH, CYNIC といった強力なメンバーを礎に、混成合唱から、チェロ、フルート、ホーン、ピアノ、チューバ、ヴァイオリン、ヴィオラなど、あらゆる楽器でデザインされたテクニカル・デスメタルの宮殿は、ジャズ・フュージョン、プログレッシブ・ロック、ワールドミュージックを融合してまだ見ぬメタル景色を映し出していきます。アルバムを通して何度も登場し、クライマックスで花開くモチーフの成長も見事。そして、野心という実験音楽における諸刃の剣をしっかりと制御し、地に足のついたメタル・アルバムとして完成させたバランス感覚もまた見事。
今回弊誌では、Tom “Fountainhead” Geldschläger にインタビューを行うことができました。「”Changeling” には日本文化から直接影響を受けた曲が1曲あってね。”Abdication” なんだけどこの曲は、僕が最も影響を受けた音楽家の一人である久石譲の和声言語とオーケストレーション・スタイルを取り入れたものなんだ」これまで何度も弊誌に登場してくれている Morean の声も素晴らしいですね。どうぞ!!

CHANGELING “CHANGELING” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ANCIENT DEATH : EGO DISSOLUTION】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JERRY WITUNSKY OF ANCIENT DEATH !!

“Pink Floyd’s My Biggest Influence. I Picked Up a Guitar When I Was 4 Years Old Because Of David Gilmour From Watching Pink Floyd Live at Pompeii. So My Natural Style Is Just Things I Picked Up From Listening And Watching Him.”

DISC REVIEW “EGO DISSOLUTION”

「ATHEIST, CYNIC, DEATH…ANCIENT DEATH はこれらのバンドなしでは存在しなかっただろう。僕がそうした “グループ” を知ったのは、10歳か11歳の頃だった。当時クールだった “トレンド” の枠を超えて、より傷つきやすく内省的なところから曲を書くことで、個人として、ミュージシャンとして、自分らしくいられることを教えてくれたんだ。その体験は文字通り、僕の世界を変えた。僕は今年28歳になるけど、彼らは今でも当時と同じくらい僕にとって重要な存在だよ」
真の芸術は時の試練をものともせず、時代を超え、そして受け継がれる。メタルコアや Djent 直撃世代の Jerry Witunsky は、そのトレンド以上に探求すべきプログレッシブなデスメタルの審美と人間味に魅了され、情熱を注ぎ、ついには日本で愛するバンド ATHEIST の一員としてライブを行うという夢を叶えようとしています。その夢の実現のために大きな助けとなったのが、彼の世界観を体現した ANCIENT DEATH だったのです。
「”Ancient Death” という名前は僕らにとって実に意味があるんだ。それは、僕らの曲 “Voice Spores” の歌詞にある。ここで基本的に語っているのは、今は否定が否定を生み、それが僕たちを互いに分断しているということ。僕たちの見解では、否定性こそが人と人とのつながりにおける古き良き “古代の死” なんだよね」
憂鬱、悲しみ、心の平和、自己成長といったテーマを探求することで、ANCIENT DEATH は、人々がやがて自分自身にも他人にももっと優しく、寛容となり、共感できることを願っています。SNS では他者を否定し、断罪し、攻撃して溜飲をさげる行為が当たり前となった現代。彼らはそんな時代を古き良き “古代の死” と命名しました。デスメタル世界の “つながり” によって夢を叶えた Jerry は、心と魂のつながりの強さを信じています。つい最近、地球上で最も影響力のある人物が共感は “西洋文明の根本的な弱点” だと言及したばかりですが、だからこそ彼らのデスメタルはそうした合理主義に反旗を翻していきます。
「PINK FLOYD に一番影響を受けたっていうだけなんだ。彼らの “Live at Pompei” を見て、David Gilmour の影響で4歳のときにギターを手にしたんだからね。だから僕の自然なスタイルは、彼の演奏を聴いたり見たりして得たものなんだ。また、サウンドトラックの大ファンで、特に宮崎駿監督の映画は大好きで、1作を除いてすべて久石譲が手掛けているよね。僕にとって音楽とは、解放の場なんだ。誰かに何かを “感じさせて”、違う場所に連れて行く…それこそが美しいことだよ」
ANCIENT DEATH の音楽は、メタルを別次元に誘った80年代後半から90年代前半の、プログレッシブで実験的なデスメタルの鼓動を宿しています。しかし、オールドスクールなデスメタルに正直で真っ直ぐでありながらも、決して過去の焼き直しだけには終わりません。音楽を先に進めることこそ、彼らが先人から受け継ぐ美学。彼らがほんの数秒前まであった場所とは全く違う方向へと聴く者を連れて行くような、豊かなサウンドの雰囲気を作り出した時の驚きは、決してあの BLOOD INCANTATION に負けるとも劣らず。
90年代、DEATH や CYNIC が開拓したデスメタルの実験は、オフキルターなリズム、脈打つベースライン、幻覚的なギターの響きで、さながら THE DOORS や PINK FLOYD が見せる精神的な深みへと移行していきます。時折歌われるクリーンな祈りは、濃い瘴気の中で聴く者に手を差し伸べる静寂の声。
常に移り変わるムード、複雑なドラム・パターン、不可解な拍子記号がジグソーパズルのように組み合わさったアルバムは、それでも “Ego Dissolution” エゴを捨て去りすべてをアートとデスメタルのためにのみ捧げられています。だからこそ彼らは、ゴア描写や反宗教的な歌詞にこだわるのではなく、デスメタルらしい安っぽさや陳腐さを感じさせることもなく、私たちの感情の内面や魂の本質を探る、より深いトピックに踏み込んでいくことができたのです。
今回弊誌では、Jerry Witunsky にインタビューを行うことができました。「Rand Burkey は、僕にとってメタル界で最も影響を受けたギタリストだろう。彼のソロとメロディーは他のギタリストにはないものだった!14歳の頃、寝室で彼のパートをかき鳴らし、まるで自分が書いた曲のように人前で演奏することを夢見ていた僕が、実際にステージに立って彼らとまさに同じ曲を演奏しているなんて!デスメタル世界の心とつながりは、とてもパワフルなものだよね」 どうぞ!!

ANCIENT DEATH “EGO DISSOLUTION” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DROWN IN SULPHUR : VEANGENCE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DROWN IN SULPHUR!!

“We Would Like To Make Concerns What Happened After Lorna Shore’s Explosion. They Have Created a Trend That Is Followed In a Schematic Way By Many Deathcore Bands And We Find It Quite Monotonous.”

DISC REVIEW “VENGEANCE”

「LORNA SHORE の初期の作品は、少しクラシックなデスコアで、もちろんそれからのシンフォニックな進化も両方高く評価しているんだよ。ただ、彼らの爆発的な人気の後に起こったことに対して唯一コメントしておきたいのは、彼らは、多くのデスコア・バンドが図式的に、システマティックに追随するトレンドを作り出してしまったよね。僕たちはそれが非常に単調だと感じている。それが気がかりなんだ」
シーンに巨大なバンドが出現すると、それに追従する数多のフォロワーが出現する。それは黎明期から続く “ロックの法則” であり、飽和と定型化、そして衰退がひとつのライフ・サイクルとしていくつものジャンルを隆盛させ、また没落させてきました。そして現在、デスコアの巨人といえば LORNA SHORE でしょう。
「僕たちは常にオリジナリティのあるものをファンに提供し、僕らに気づいてくれた人たち、そしてデスコア/メタルコア・シーン全体に対して DROWN IN SULPHUR を認識させ、差別化したいと考えているんだ。そのために、作曲や作曲方法において、より多くのジャンルから影響を受けることを恐れないんだよ」
イタリアの DROWN IN SULPHUR は素直に LORNA SHORE をリスペクトしつつも、決して彼らの足跡を追おうとはしていません。なぜなら、そうした “セルアウトの方程式” がいつしかシーンを衰退に導く諸刃の剣だと知っているから。だからこそ、彼らはオリジナリティあふれる自らのデスコア道を歩んでいきます。
「僕たちは皆、ブラックメタルからクラシック・デスコア、ハードコア、ニュースクール・メタルコア、オールドスクール・デスメタル、そしてプログレまで、全く異なる嗜好を持っているんだ!もちろん、ロックやメタルの偉大な古典を愛する共通項もあるしね」
DROWN IN SULPHUR のデスコアはむしろ WHITECHAPEL の哲学に近い。そんな感想を抱くほど彼らの音楽は多様で、実験的で、それでいて非常に “聴きやすい” キャッチーさを多分に備えています。LORNA SHORE のように荘厳なる痛みをアルバム全体で醸し出すよりも、リッチで目まぐるしい展開を選んだともいえます。
クラシックなデスコアやデスメタルの重量感とテンポ・チェンジ、PANTERA のグルーヴやソロイズム、ハードコアのエナジーや衝動、ブラックメタルの暗がりやスピード、そして時に補充されるシンフォニーや民族音楽の響き、プログレッシブな構成美。特筆すべきは、”Scalet Rain” で見せるような悲痛なクリーン・ボーカルでさえ、”Vengeance” というアルバムにはわずかな違和感さえなく完璧にハマっている点でしょう。
まさにアートとしてのデスコア。憤怒と毒を含んだミケランジェロ。ヘヴィネス、スピード、ブレイクダウン、アトモスフィア、そしてメロディが黄金比で織り込まれたデスコアのダビデ像は、”Vengeance” でジャンルと音楽業界の不条理に中指を立てながら、一方では深い知性と実験性を備えたその美しき構成と展開の妙でジャンルの未来を切り開いていくのです。
今回弊誌では、DROWN IN SULPHUR にインタビューを行うことができました。「シンプルに僕たちは、パワー・メタルのようなジャンルに特に興味を持ったことはないんだ。メタルの真髄は、検閲や圧力なしに多くの創造性を発揮する余地を残したエクストリームなサブジャンルにあると信じているからね」 常軌を逸した演奏の巧さ、ギターソロののドラマ性、そして複雑な構築美。DREAM THEATER を影響元に挙げているのも頷けますね。どうぞ!!

DROWN IN SULPHUR “VEANGENCE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SNOOZE : I KNOW HOW YOU WILL DIE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH LOGAN VOSS OF SNOOZE !!

“The More People Are Inundated With Instant Gratification, The More It Becomes Impactful When Something Comes Around That Was Worked On Really Hard. I Think The Pendulum Is Beginning To Swing The Other Direction.”

DISC REVIEW “I KNOW HOW YOU WILL DIE”

「アートが消費され、”コンテンツとなった芸術” の時代である今、より多くの人々が、よく練られ、愛のこもった作品で、時代に左右されずに存在する音楽、芸術、アイデアを求めているのだと思う。人々が即座に満足できるインスタントなものが溢れれば溢れるほど、情熱をかけて心から一生懸命取り組んだものが世に出たときの衝撃は大きくなる。より多くの人々が、自分の意思をあまり持たずスマホに釘付けになることに不満を感じ、振り子が反対方向に振れ始めているんだと思うよ」
アートが消費される “コンテンツ” となった現代。人々はさながら SNS を一瞬賑わせ、そしてすぐに忘れ去られていく日々のニュースのようにアートを消費し、放流していきます。しかし本来、芸術には “永続性” が備わっているはず。本来のアートは時代を超えて愛されるべきでしょう。そうした意味で、シカゴの “ハッピー・ヘヴィ・マスロック” SNOOZE の音楽はさながらスマホのアラーム、あの “スヌーズ” 機能のように、時が過ぎても何度も何度もリスナーの心を目覚めさせていくはずです。
「ヘヴィな歌詞の内容とヘヴィ・メタルに影響を受けた音楽的要素が、とても楽観的なコード進行の選択と組み合わさって、楽しい認知的不協和を生み出しているように感じるよ」
複雑怪奇な変拍子を操る SNOOZE の最新作 “I Know How You Will Die” が4/4日にリリースされた事実がすでに、彼らのニヒリズムと知性が生み出す二律背反を見事に表現しています。たしかに SNOOZE はハッピーなマスロック・バンドですが、同時にヘヴィなプログレッシブ・メタルでもあります。その怒りと幸福、ヘヴィとキャッチー、実験と正統をまたにかけるダイナミズムの妙こそ、彼らが情熱を注いだアート。
「若いメタルヘッズだった僕たちは、テクニカルさと名人芸に取り憑かれていたような気がする。それからマスロックに出会ったとき、それと同じ波動を感じたような気がしたんだ。だから、それを掘り下げていくと、より多くの非常識なバンドを見つけることができた。 でも最近の僕たちは、可能な限りテクニカルなこと(考えすぎること)を探すのをやめて、意味のある、感情的な音楽に傾倒していると思う。だからよりメロディックな音楽の中に濃密なリズムのアイディアを取り入れる人がいると、いつも嬉しくなるよ」
またにかけるのは光と闇だけではありません。エモ/ポップ・パンクのヴォーカル・センスをヒントに、マスロック、プログレッシヴ・メタル、ポスト・ハードコアをブレンドした、大胆かつ折衷的な旋風こそ彼らの真骨頂。 最も際立っているのは、それぞれのジャンルをシームレスに行き来しながら、独自の色と説得力をもって主張する彼らのアイデンティティでしょう。BETWEEN THE BURIED AND ME が見せるようなボーカル・ハーモニー、その実験的な使い方も、SNOOZE の複雑な楽曲に驚くほどの色彩と感情をもたらしています。彼らの創意工夫を前にして、スマホに齧り付くことはできません。振り子の針は逆側に触れ始めました。
今回弊誌では、ボーカル/ギターの Logan Voss にインタビューを行うことができました。「当時は VEIL OF MAYA をよく聴いていて、ギターを初めて弾いた曲のひとつでなんと “It’s not Safe to Swim Today” を覚えようとしたんだ。YouTube の黎明期には、バイラルになる動画は限られていたので、初期の ANIMALS AS LEADERS のミュージックビデオを見たとき、みんなが度肝を抜かれたのは間違いないよね!」 どうぞ!!

SNOOZE “I KNOW HOW YOU WILL DIE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SLEEP PARALYSIS : SLEEP PARALYSIS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH STEPHEN KNAPP OF SLEEP PARALYSIS !!

“I Really Like Using The Pianos Percussiveness, It Can Add a Lot To The Rhythm Section In Different Ways While Also Providing Harmony And Accents, Plus Slamming Loud Dissonant Chords Sounds Sick As Fuck Over Blast Beats.”

DISC REVIEW “SLEEP PARALYSIS”

「ピアノのパーカッシブさを使うのがとても好きなんだ。ハーモニーやアクセントを提供しながら、リズム・セクションにさまざまな形で多くのものを加えることができるし、ブラスト・ビートの上で大音量の不協和音を叩きつけると、最高に気持ち悪いサウンドになる。 ピアノは曲の緊張感を高めるのにとても効果的だし、クラスターコードはサウンドに違う色を加えるのに遊んでいていつも楽しい」
メタルにおいてピアノの響きは過去のものになりかけています。キーボードにしても場所をとりますし、ギターの可能性が広がるのと比例して、ピアノの出番はどんどん少なくなっていきました。しかし、本当にメタルからピアノは消え去るのでしょうか?ピアノの打楽器的な力強さ、一方で両の手で組み立てる繊細さと旋律の妙はやはり唯一無二のものでしょう。SLEEP PARALYSIS をひとりでとりしきる Stephen Knapp はそんなピアノの可能性をブラックメタルで再度呼び起こします。
「MIDIですべてを書き込んで、どんな音がするかすぐに調整できる汎用性が気に入っている。それに、自分の思い通りのサウンドにするために、必要に応じてダイナミクスを調整できるのも魅力だ。メタル・コミュニティでは、楽器をプログラミングすること(特にドラム)は簡単な方法だという汚名があるように思う。とはいえ、実際にドラムやピアノを演奏してレコーディングするのと同じくらい難しいとは言わない。最終的には、自分のビジョンを完全に実現し、目指すヴァイブを達成するためのツールでしかないからね」
面白いことに、Stephen はピアノが弾けるにもかかわらず弾いていません。すべてをプログラミングで入力しています。なぜなら、彼には思い描いた音楽の確固たるビジョンが存在するから。NEURAL GLITCH もそうですが、若い世代のアーティストにとってはプログラミングもまた楽器のひとつ。自らの理想を実現するためには、むしろ “入力” という正確な手段の方が彼らにとっては必要だったのです。
「大学時代、睡眠時間がめちゃくちゃで、慢性的な睡眠不足に陥っていたとき、よく金縛りになったんだ。 このアルバムのために最初に書いた “Sleep Paralysis” という曲は、僕が初めて金縛りになったときのことを音楽的に解釈したもので、どこにでもいるような金縛りの影鬼が僕の上に乗っていた」
そんな Stephen がブラック・ピアノ・メタルの実験場に選んだテーマが “金縛り” でした。実際、この悪夢のようなオデッセイの上演にこの主題は完璧でしょう。陰湿に渦巻く不協和音。恐ろしいほどスリリングな混沌。聖歌隊に狂気のラグタイム、ホラー映画、任天堂の怪奇ゲームに重なるドゥビッシーやラベル、ショパンのファンタズマゴリア。不吉で威圧的で猛烈に突き進むこの悪夢の錯乱状態に、ピアノのアタックやサスティナーはあまりにも完璧にフィットしています。
そう、このアルバムはリスナーを恐怖と不安で冷や汗の渦に引き入れ、PTSD ストックホルム症候群の湧き上がる疑念が押し寄せる中、それでももう一度アルバムの再生ボタンを押させる日本の怪談のような不気味な中毒性を宿すのです。
今回弊誌では Stephen Knapp にインタビューを行うことができました。「ピアノは、メロディー、ハーモニー、リズム、テクスチャーなど、通常のメタルでは見られないようなものを加えることができるので、超万能なんだ。WRECHE のファンになってしばらく経つし、DEATHSPELL OMEGA の曲のピアノ・カバーをいくつか見ていたから、ピアノ中心のブラックメタルがうまくいくことはわかっていた」 どうぞ!!

SLEEP PARALYSIS “S.T.” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CKRAFT : UNCOMMON GROUNDS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CHARLES KIENY OF CKRAFT !!

“I Might Be Wrong, But I Don’t Think There’s Another Metal Band Fronted By This Accordion And Saxophone Section.”

DISC REVIEW “UNCOMMON GROUNDS”

「バンド名の CKRAFT は、”Craft” と “Kraft” という2つの単語を意図的に組み合わせたもので、僕たちの音楽哲学の核心を表している。英語の “Craft” は、僕たちが深く大切にしている “クラフトマン・シップ”、つまり作曲、レコーディング、演奏、そしてサウンドをゼロから構築していく実践的な作業を意味している。サンプルもプログラミングもなく、すべては楽器の演奏から生まれることをね。一方、ドイツ語で “Kraft” は “強さ” や “力” と訳され、ヘヴィでクラッシングなサウンドを意味するんだ!」
テクノロジーの進歩は、メタル世界にも様々な恩恵をもたらしています。アナログ時代には想像も出来なかったサウンド、正確性、利便性。その一方で、アナログ時代に確かに存在した “クラフトマン・シップ”、職人芸や鍛錬を重ねることでたどり着く創造性が失われたと感じるリスナーも少なくないでしょう。芸術の都パリを拠点とする CKRAFT は、伝統と革新の融合で失われつつある音楽の “クラフトマン・シップ” を再度提示します。
「僕の最大の情熱のひとつは、音楽(そして芸術全般)がいかに永続的で普遍的なものであるかを探求することで、このような古代のサウンドがいかに現代の文脈の中でも共鳴しうるかということが、それをよく表していると思う。それは、一見異質な世界の間に “共通点” を見出すことなのだ」
CKRAFT がすべて人の手から生まれる “クラフトマン・シップ” にこだわるのは、音楽の、芸術の永続性を探求するため。最新のテクノロジーどころか、電気もなかった時代。そんな時代の音楽でも、今の世に響く素晴らしさ。そこに CKRAFT は感動を覚えました。そうして、CKRAFT は、現代で感動を覚える MESHUGGAH や GOJIRA のヘヴィ・グルーヴと古代の音楽が共鳴することを発見します。彼らが特に感化されたのが、グレゴリオ聖歌。その壮大で神聖なクオリティは、まさに CKRAFT が愛するジャズとメタル、そして古代と現代のギャップを埋める重要な “糸” だったのです。
「アコーディオンやサックスはおそらく、僕たちを知ったときに最初に目にするもののひとつで、CKRAFT を際立たせている。間違っているかもしれないけど、このアコーディオンとサックス・セクションを前面に出したメタル・バンドは他にないと思う。僕にとっては、破砕的なリフに対する深い愛と、僕が大切にしているアコースティック楽器を融合させ、それを力強く機能させる方法を見出したかったということに尽きる」
CKRAFT のそんな野望、野心に応える楽器がアコーディオンでした。17世紀に誕生した美しき蛇腹の楽器は現在まで、時の試練に耐えその麗しき音色を奏で続けています。まさに時代をつなぐアーティファクト。だからこそ、聖歌、クラシック、ジャズ、メタルの架け橋として、彼らにとっては完璧な楽器でした。もちろん、そのままの音量ではメタルの喧騒に埋もれてしまいます。アコーディオン奏者で今回のインタビューイ Charles Kieny はそこに現代のテクノロジーを注ぎ込みました。シンセ・アコーディオン。ラウドに生まれ変わった古来の楽器は、そうしてモダン・メタルと多様な融合を果たすことになりました。
そうして “クラフトマン・シップ” の申し子たちは、メタルのヘヴィネス、ジャズの自由、グレゴリオの不滅の旋律を借りた、精巧でパワフルなサウンドの職人として完成しました。テナー・サックスとアコーディオンの熱狂的なブラストは決して声にも劣りません。真に才能のあるインストゥルメンタル・アーティストは、言葉を一切使わずに最も壮大なイメージを呼び起こすことができるのです。
今回弊誌では、Charles Kieny にインタビューを行うことができました。「MESHUGGAH はメタルにおける複雑さと精密さの頂点を表していると思う。彼らには独自のグルーヴがあり、そのリフはこの地球上の誰も生み出したことのないものだ」 どうぞ!!

CKRAFT “UNCOMMON GROUND” : 10/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【DEAFHEAVEN : LONELY PEOPLE WITH POWER】


COVER STORY : DEAFHEAVEN “LONELY PEOPLE WITH POWER”

“If Power Is Influence, We Have a Responsibility To Be As Understanding, Empathetic And Knowledgeable As Possible”

LONELY PEOPLE WITH POWER

第二次世界大戦の冷酷と殺戮の後、アメリカの心理学者グスタフ・ギルバートは悪の本質について何年も考え続けました。そして1947年に出版された “ニュルンベルク日記” の中で、生き残ったナチスの指導者たちとのインタビューについて書いた彼は、悪の本質を見つけたと信じていました。 悪、すなわち戦犯たちを結びつける一つの特徴は、弱者や少数派の苦境に関わることができない、あるいは関わろうとしないことであると。悪とはつまり、共感の欠如であったのです。
「国民が戦争したがるように仕向けるのは簡単。国の危機を宣伝し、平和主義者を非難すればいいだけ。これはどんな体制でも同じ」
80年後、グスタフの教訓は忘れ去られようとしています。世界中のポピュリスト政治家たちが、再び人間の自己中心性を食い物にしているから。 弱者蔑視と外国人憎悪を武器に足場を固め、富裕で影響力のあるオリガルヒに屈服し、自分たちの今でも計り知れない富がさらに膨れ上がるのであれば、喜んで工作に協力する。
「西洋文明の根本的な弱点は共感であり、共感搾取である」と、世界一の大富豪イーロン・マスクは最近CNNで説き、非正規移民に基本的な医療を提供することが、公的資金配分の誤りだと主張しました。 マスクは弱者や少数派への共感を西洋文明の “バグ” だとして、そこから犠牲を強いられる “集団” を救うとさながら英雄のように強弁したのです。非常に怖い話です。
George Clarke は、DEAFHEAVEN の素晴らしき6枚目のアルバム “Lonely People With Power” で、西洋社会の右傾化について特に語っているわけではありません。 実際、常に冷静で知的なこのフロントマンは、アルバムに込められたアイデアを解き明かす際、政治的な対立をむしろ避けようとしています。しかし、マクロ的なレベルでは、個人的な出世や富のために共同体を捨てるというコンセプトは、まさにこの暗い現代に対するアンチテーゼといえるでしょう。
「私は万能で慈悲深い世界の創造主など信じていない。このレコードに関連して “力” について語るとき、私は本当に影響力について話しているんだ。 視点を形作る力、世界観を形作る力、それに伴う責任についてだ。 彼らのような富と影響力を手に入れるためには、周囲のものを手放すことが必要なんだよ。彼らは孤独な目的を追い求めている。それは、隣の人の幸福など気にも留めないほど圧倒的なシニシズムと虚無感がなければ達成できないものだから。”孤独” は時に無知やナルシシズムや精神の空虚さの代用品となる。そうやって、共感を捨てて得た冨や影響力は、逆に精神的な空虚さを表している」

ウィリアム・ランドルフ・ハーストは1951年8月14日に亡くなりました。DEAFHEAVEN の本拠地サンフランシスコで生まれたこの新聞王は、米国のセンセーショナルなタブロイド紙の先頭に立ち、1900年代を通じてニューヨーク州知事選、ニューヨーク市長選、合衆国大統領選に出馬して落選しました。当初は進歩的な政治を支持していたハーストでしたが、20世紀に入ると保守的で孤立主義的な政策を採用。1930年代には、ナチス・ドイツを声高に支持した人物です。
多くの点で、ウィリアム・ランドルフ・ハーストは George の語る典型的な孤独な権力者だといえました。
「ハーストのメディアの巨人としての時代は、今日私たちが目にしている多くのことの先駆けのように感じられる。ああした人たちは常に熾烈で、嘘をつくことも誇張することも厭わず、道徳的な境界線というものをまったく理解していない。ハーストの人間関係は、刹那的で執着的な傾向があったにもかかわらず、決して人間的ではなかった。ハーストは、人間や、世界が動くより大きなメカニズムにまったく関心がなく、非常に利己的だった。それは奇妙な二律背反だった。支配欲を満たすためには、寛大さもヒューマニズムもなく、他人を蹴落とし周囲の世界から皮肉なまでに切り離される必要があるんだよ。
コミュニティーの欠如、自己孤立、自己保存、利己的な動機はすべて、人が支配力を集め、権力を獲得するために必要なもので、単にその権力が他よりも価値があると見なすために必要なものだ。 政治や産業界ではよく見られることだ」
サイコパスと呼ばれようが、ソシオパスと呼ばれようが支配欲が満たされれば関係ないのでしょう。
「最も多くの富を蓄え、最も多くの人々を支配するためには、反コミュニティである必要がある。普通の人なら困惑するだろう。10億ドルを与えられて、それで何をしたいかと聞かれても、僕にはわからない。率直に言って、そのような目標を追い求めるなら、仲間とつながる時間はなくなってしまう。だから莫大な物質的なものを追い求めることに、共感する余地はないんだ」

ソーシャルメディアは、ハーストの新聞全盛期以来、金と影響力の最も明白な混同を生み出しました。DEAFHEAVEN でさえ、その引力から逃れることはできません。彼らは1月27日のアルバム発表から3月28日のリリースまでの間に、ミュート・ウィドウズが監督した各曲の一連のショート・クリップを公開。それは最終的に包括的な物語に結びついていて、アルバムの前後の素晴らしさをより明確に描き出しています。
芸術的な深みを加えながらリスナーに届くという点でその手法は優れていて、フェイスブックやインスタグラム、XやTikTokの否定的な側面とは対極にあるようにも思えます。George は、SNS の隆盛で名声と富を求めるキッズたちのゴールポストが変わったと見ています。
「セレブ文化は常に存在し、華やかさはその性質上魅力的だ。しかし、以前は成功しないかもしれないと思いながら多くの犠牲を払わなければならなかったもの、今はコメントや “いいね!”、そしてマネタイズによって “成功” の度合いが小さくなっている。かつては一部の人にとっての大きな夢であったことが、ビジネスになってしまったんだ」
しかし、陰湿なアルゴリズム、ねじ曲がったデジタル・リアリティ、死んだような目をしたSNSのオーナーたちは、結局はかつての新聞王以上にその支配力を際限なく拡大させています。
「前例のない瞬間を生きていると思うか?と聞かれることがある。私はそうは思わない。メディアが存在する限り、人々はそれを形作ることに憧れてきた。しかし、テクノロジーがそれを変えたのは確かだ。ソーシャルメディアには即効性があり、中毒性がある。即効性があり、すべてを飲み込むように感じられ、負の感情を強調しようとする勢力がある。常に恐怖を煽り、悪いニュースの嵐だ。人々はリラックスすることを許されない」
そうして、テクノロジー業界の億万長者たちが、アメリカ大統領就任式で選挙で選ばれた人たちが座るはずの最前列の席を占拠しているのです。
「私は歴史家ではない。でも、ちょっと馬鹿にされているような気がしないでもない。これって、製薬会社のCEOが薬物中毒のジャンキーたちの部屋に入り込むようなものだと思っている。この時点で、彼らは笑っているだけだ。まあ終わったことは終わったことだ。彼らの影響力はあまりに強く、人々はその中で迷い込んでしまう」

デビューから15年、DEAFHEAVEN は “Sunbather” のように再び自分たちを定義できるようなアルバムを作る必要性を感じていました。そうして伝説的なメタル・レーベル、ロードランナーとのレコード契約を受け、新たなスタートを切ったのです。KNOCKED LOOSE や INTERPOL など様々なアーティストと共演し、自分たちを証明してくれる潜在的な新しいファンの川は深く流れていました。
「”Infinite Granite” が楽しくて必要なアルバムであり、私たちがあのアルバムを誇りに思っているのと同じくらい、私たちのヘヴィ・ミュージックへの愛に再び火をつけたのは、あの作品の曲をツアーする過程だった。 長い間、あのメロウな音楽を演奏していたから、もっとヘヴィな曲を演奏したかったんだ。 それに、”Sunbather” のアニバーサリー・ライヴをやる機会もあったし、KNOCKED LOOSE とのツアーも楽しかった。 速くてハードな演奏をするという精神が復活したんだ。 特に Kerry にとっては、これが自分の好きな音楽なんだという個人的な気づきにつながった。 彼は、このレコードがまだ DEAFHEAVEN らしいものであるという条件付きで、スピードと重厚さを取り戻すという真のビジョンを持っていた。 一つの方向には向かっていないんだ」
“Lonley People With Power” の野心的なアプローチについて、George はこう説明しています。
「DEAFHEAVEN はバンドとして十分な年月が経っているので、自分たちが以前に何をしてきたかを参考にすることができる。今までのアルバムや一緒に経験したことを通して、このバンドが一体何なのかを消化し始めることができる。それを抽出しようと試みることさえできる… このバンドのDNAには、ちょっとした貧乏根性が埋め込まれていると思う。 私たちは2人とも、一生懸命やっても誰も気に留めないようなバンドに何年も在籍していた。 だからこのバンドのDNAに深く刻み込まれているのは、オーバーワークなんだ。すべてが完璧だと感じられない限り、十分な働きはできない。私たちは泡銭、家のお金で遊んでいるようなもので、本当はここにいるべきでないようなもの。だから、それを最大限に活用しないのは、宇宙に対して失礼なことだと思う」

かつてポーザーと呼ばれていたのが馬鹿らしいほど、彼らはもはやメタルを代表する存在となりました。
「何年もの間、みんなが DEAFHEAVEN を “ポーザー “と呼びたがっていたのに、今ではその話題もなくなってしまった。我々のバンドを支持する人も嫌いな人も、それが退屈な会話だということに同意して握手していると思う。 DEAFHEAVEN のことを嫌っている人たちでさえ、”ああ、クールだ、新譜が出たんだ” と思えるくらい、私たちは長く活動してきた。
メタルがここ数年、大きな盛り上がりを見せていることが救いだ。 多くの素晴らしいバンドが誰でも簡単にアクセスでき、ツアーを行い、常に素晴らしいショーを行っている。 私たちは皆、その方がいいと思う」
NINE INCH NAILS, St. Vincent, THE MARS VOLTAといったアーティストを手がけるベテラン・プロデューサー、ジャスティン・メルダル=ジョンセンは、”Infinite Granite” に参加して、そのアルバムのソフトなエッジに驚かされました。そして今回、彼は期待をさらに上回る驚きを “Lonely People With Power” に感じました。
「初めて彼に “Revelator” を聴かせたときのことを覚えているよ。彼は、”ワオ、これは私が期待していたヘヴィネスを満たしているだけでなく、それをはるかに超えている… “という感じだった。
それは、私たちが以前やっていたやり方を引き継いだものだ。 そう、”Magnolia” は音楽的にかなり攻撃的だ。そして、このアルバム全体を通して、似たようなサウンドの部分がある。 確かに “Lonely People With Power” には獰猛さがあるが、DEAFHEAVEN は常にエモーショナルな核を維持し、物事を特異なレンズを通して見ないことを目指してきた。 その意味で、このアルバムの多くは、赦すこと、あるいは自分自身を含む権力の力学を認識することをテーマにしている。 そう、怒りがある。 しかし、決意、許し、認識もある。 そして、それらは均整のとれた音のパレットで表現されている」

激烈な “Magnolia” の後、セカンド・シングル “Heathen” は、彼らのアヴァンギャルドでポスト・メタル的な傾向を再び紹介するための意識的な努力のように感じられます。
同時に、事実上のオープニング曲 “Doberman”, 前述の “Revelator”、そして変幻自在の叙事詩 “Winona” で、George が2013年の名作 “Sunbather” の流れを汲む痛快なブラストビート・ブラックメタルに回帰していることも否定できないでしょう。
実際、”Sunbather” のジャケットであえてピンク色を使い、メタル全体に衝撃を与えたことから、前作 “Infinite Granite” ではメタルをほぼ完全に排除したことまで、あらゆる決断がバンドをこの瞬間へと導いたように感じらます。 ブラックメタルはその本質的な暗さにもかかわらず、多くの新しいリスナーを輝かせるチャンスがあることを証明する大作に仕上がりました。
「今は獰猛さにインスパイアされるんだ。もっと獰猛になりたくなる。自分たちのサウンドを抽出したいという欲求があったのと同じように、歌詞のテーマも抽出したいという衝動に駆られた。家族、アルコールと中毒の個人的な経験、自殺願望、友人との関係、女性との関係は、バンドにとって常に試金石だった。自分たちらしさを最大限に発揮しようとすることが、自分にとって何を意味するのかを考えた。それは、そうした考えやテーマに対してより直接的であることを意味する。これまではかなり抽象的だった。でもこのアルバムでは、私は自分の足で歩いている」
実際、George はこのレコードを作るにあたって、ヘヴィな世界を再発見していました。
「WOE の大きな世界を再発見した瞬間があった。僕らの新曲を聴いて SPEATRAL WOUND のことを言う人もいて、それは間違ってはいないんだけど、彼らが好きなバンドは我々も好きなんだ。DARKTHRONE, EMPEROR の鍵盤とベル、IMMORTAL も少し。
それに影響を受けたバンドが宇宙みたいにたくさんいる。 ウォー・メタルもあった。”Revelator” を聴いてみると、リフの背後にあるのは、DEAD CONGREGATION をもっと PORTISHEAD のコードに置き換えたらどうなるだろう、というような試みだった」

そうやって焦点を絞ることで、”Lonely People With Power” のよりパーソナルな側面が明らかになります。George は常に、両親や教師のような影響力を持つ人々からの影響について考えてきました。 アルバム “Sunbather” は、”私は父の息子/私は誰でもない/愛することはできない/それは私の血の中にある…” という嘆きで幕を閉じました。”Magnolia” にも同じような慰めの感覚が内包されています。タイトルは、 George の父の実家があるミシシッピ州の州花にちなんだもので、そこは叔父の葬儀に参列した場所でもあります。歌詞は、George の父と共通の特徴である、叔父のアルコール中毒とうつ病を問い、共有された遺伝と、新たな発見と温かさと受容とともに受け継がれた教訓を受け止めています。”私の愛は果てしない/あなたのすべてが私/一歩一歩が墓場へ向かう/私たちが与えられたのは肉と血だけだったのだろうか?”
“孤独” は “無知” の代名詞でもあると George は考えています。
「両親のような人々について話すとき、彼らのほとんどは自分が何をすべきかわかっていないように感じる。 このアルバムには、両親や教師が自分の人生において欠点やハンディキャップを抱えているにもかかわらず、それでも最善を尽くしていることが多いということを認識するんだよ。寛容の要素が含まれているんだ」
アートワークは、車の助手席の子供を挟んで話す両親と見ることもできますが、あまり健全でないことで道行く女性に寄っていく父親と見ることもできます。
「それは人々が自分で決めることだ。 運転する大人、窓際の女性、助手席の子供。 それをどう思うかは人それぞれだ。 しかし、人々は常に答えを得るよりも多くの疑問を見出すものだ。 私たちにとって、それは重要なことだよ」
切迫して脈打つような “Body Behaviour” では、年上の男性が、若い男の子にポルノグラフィーを見せて絆を深めるという “伝統” を描いています。そこに悪意はないと George は考えています。不気味でもない。ただ、知識を共有するための奇妙な試みなのだと。ある世代から次の世代へと受け継がれる、歪んだ通過儀礼のひとつなのかもしれません。そう歪んだ…
「正直なところ、私が知っている男たちは皆、父親や叔父、年上のいとこ、あるいは誰であろうと、そのような話を何バージョンか持っている。これは現代社会の “症状” であり、現在の男同士の関係の基準なんだ…」

このような話題は気まずく不快なものですが、それに立ち向かう姿勢は DEAFHEAVEN に信念を貫く勇気があることの証でしょう。ポピュリズムとインフルエンサー・カルチャーが有害な行動を強化し、有意義な人間関係を腐食させている世界において、男らしさ、”男はこうあるべき” という古い固定観念についての力強い議論とオープンな自己検証は、言うべき意味があります。
「どんな理由であれ、メタル・ミュージックでは “男らしさ” をアップデートするようなトピックは今でもタブーとされることが多い。それはとても奇妙なことだと思う。異なる視点を提供し、状況を打破し、”若い頃、こんなことがあったんだ。それは奇妙なことだった。そして、それがその後の人生にどう影響したかを知ることができる…” それが、感情的に健康な人間になるために必要なことなんだ。同時に、私は、周囲の世界からの逃避の方法として、空想的な主題に満ちた音楽を演奏するバンドを批判したくないと思っている。私も含め、多くのリスナーはそのような手の込んだストーリーテリングに惹かれるものだから」
ソーシャル・メディアの一角に身を置くと、多くの若者にとって不穏なロールモデルを見つけることができるでしょう。パトリック・ベイトマン。ブレット・イーストン・エリスが1980年代のヤッピー・アメリカのナルシシズムを風刺するために生み出したキャラクター、このアメリカン・サイコそのものが、一匹狼の “シグマ・メール” (アルファ・メール(勝ち組男性) と同程度の成功を収めているイケメン男性だけど、群れない人。頭もよく、見た目もよく、お金もあるけど、一匹狼) の憧れの的として再利用されています。裕福。怒りっぽい。周囲の人々から完全に切り離されている…2000年に映画化されたメアリー・ハロンの名作からのクリップをシェアしている人たちの中には、このジョークに乗っかっている人もいるでしょう。しかし、パトリック・ベイトマン自身が執着する対象であるドナルド・トランプがホワイトハウスに座っている現実では、出世のために喜んで絆を断ち切ろうとする人が現実に多く出現しているのです。
George は、ステージ上でベイトマンになりきっていたかもしれない初期のツアーを思い起こしながら、あの冷淡な離人感にはいつも魅了されてきたと過去の自分を振り返ります。
「あのキャラクターが好きなのは、自分自身の中にそれを見たからでもある。それは、パフォーマンスを魅力的なものにする大きな要素だ。少し深く掘り下げ、自分の中にあるものを見つけ、それを見世物のために裏返すのだ。
友人に聞けば、僕らの関係はより “リアル “になったと言うだろうね。若いうちは、受け入れられようとするあまり、見栄を張ってしまう。AからBに行くために、きれいごとやパフォーマンス的な習慣を身につける。仮面をはがすこと、本当のつながりに必要な弱さを見せることは、かつての私にとって難しいことだった。年を重ねるにつれて、正直でいることができるようになった。でも、それは目的地ではなく、むしろ旅路なんだ」

同様に、DEAFHEAVEN 自体も、彼の血管の中にある氷の単なるはけ口から、それを処理するための重要なツールへと変貌を遂げました。
「初期のころは、これが他の方法ではできない自己表現の方法だと感じていた。今は、セラピーのようなものだ。ツアーから離れることで、外に出ることがどれだけ自分の幸せにとって重要かがわかる。旅行や演奏だけでなく、新しい人々に会い、新しい文化を体験し、自分のバンドをよりよく知り、自分を違った形で知ることができるんだ!」
DEAFHEAVEN のオーラの中で、ブラック・メタルらしい危険や脅威はいまだに大きな役割を果たしています。それを今も維持し続けるのは難しいことなのでしょうか?
「ステージにいると、大きなパワーを感じる。エゴの塊だよ。ある程度の誇大妄想もある。私は今でもその極悪非道なキャラクターに傾倒するのが好きなんだ。大観衆の前での瞬間が、日常生活といかに違うかを目の当たりにし、私は自分の分身を掘り続けることを選ぶ。今の自分をどう見ているかの違いは、自己認識が深まったことと、そのキャラクターがとても優しく、共同的で人間的な瞬間のために、今の自分を壊すことを許されるようになったことだ。観客の中に入って誰かを抱きしめたり、バリアの上で泣いているファンに寄り添ったり。私の音楽は、私が最も傷つきやすいときのもの。パフォーマンスは、私が最もパワフルな時のものだ。キャラクターが壊れるとき、私は最も自分らしくなる。もし人々が本当に DEAFHEAVEN のシンガーと瞬間を共有し、歌詞を歌い、あるいは歌詞にしがみついているとしたら、それは Georgeと瞬間を共有していることになる…」

創作、パフォーマンス、個人的な経験の相互関係を分析することで、どのアーティストも、少なくともある程度は、力を持つ孤独な人間であるという気づきを George は得ました。
「パワーが影響力であるならば、私たちは皆、ある程度のパワーを持っている。インタビューはその典型的な例だ。誰かが私の発言を読み、それが彼らの意見を形成するかもしれない。だから私たちには、できるだけ理解し、共感し、知識を持つ責任がある。どうすれば誰かの教師になれるのか、と自問自答する。でも、それは常に進化する謎なんだ」
“Lonely People With Power” の最も難しい教訓は、まさにその最後に訪れる。ジャン・ウジェーヌ・ロベール=ウーダンの悪名高い19世紀の複雑な錯視にちなんで名づけられた “The Marvelous Orange Tree” “驚異のオレンジの木” は、自殺について歌った厳しくも美しい曲。”この病気と一緒に生きて/震える肌を見せながら/あなたと一緒に、私の終わりのない病気で/私の終わりのない病気で/暗闇の中を歩いていく” という表向きは絶望的なセリフで締めくくられています。しかしこれは、奈落の底へ転落するのではなく、常に足元に気をつけるようにという戒めなのです。
「物事には終わりがある。自分の中の悪魔を見極めているとき、”もう心配ない!” とか “もう終わったことだ!” と言うのは難しい。ドアは常に開いていると認識することが重要だ。それは、負けるとか屈するという意味ではない。ただ、本は決して閉じられていないということを知ることだ。
人は何かを打ち負かしたと思ったり、無視することを選んだりすると、思いもよらない形で再び忍び寄ることがある。この曲は、そのような負の感情がいつもまだ存在し、これからも存在し続けるということを認めている曲なんだ。死にたくなったことを話したくなったら、話すべきだし、そうしている。それを放棄することで起こりうる驚きに直面したくない。結局のところ、このアルバムは共感と許しが中心となっている。他人の欠点に対しても、自分自身の欠点に対しても。それはすべて、認識と理解に関係している。”Amethyst” の歌詞で歌ったように、ここには非難するようなものは何もない….」


参考文献: KERRAMG! :Deafheaven: “If power is influence, we have a responsibility to be as understanding, empathetic and knowledgeable as possible”

KERRANG! :https://www.kerrang.com/deafheaven-new-album-lonely-people-with-power-george-clarke-interview

LOUDWIRE

NEW NOISE MAG

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【TC.KYLIE : RE:BIRTH よみがえり】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TC. KYLIE !!

“Just As Dream Theater Layers Contrasting Musical Ideas To Build Tension And Release, I Often Blend Jazz Fusion With Cinematic Storytelling, As Seen In My Reinterpretation Of Merry-Go-Round of Life.”

DISC REVIEW “RE:BIRTH よみがえり”

「今日のジャズは、伝統と革新の両方を取り入れた、境界を押し広げ、進化し続ける芸術なの。 チェット・ベイカーやオスカー・ピーターソンのようなクラシック・ジャズの伝説がその基礎を築いた一方で、モダン・ジャズはニュージャズ、ジャズトロニカ、フュージョンにまたがり、ヒップホップ、エレクトロニック、ファンクといったジャンルを融合させている。 ミュージシャンたちは現在、それぞれの文化的遺産をジャズに注入し、ユニークなサブジャンルを生み出している。 例えば、日本のアシッド・ジャズは、Jabberloop, Toconoma といったバンドに見られるように、複雑なグルーヴ、映画のようなハーモニー、躍動的なブラス・アレンジを披露する。Fox Capture Plan のようなバンドは、ストリングス・アンサンブルやオーケストラを加えることも得意としているよね」
モダン・メタルは今や多様性とローカルな文化の融合を謳歌する一大ムーブメントとなっていますが、ジャズの世界にもそうした伝統と多様性の蜜月が訪れているようです。TC.KYLIE は、香港、日本、イギリスの文化を融合させたデビュー・アルバムでまさに最先端の音楽的哲学と共鳴して、ダイナミックなジャズ・フュージョンを生み出しました。日本のジャズ・ロックを象徴するキーボードとシンセ・キーターで、カントンポップとUKジャズの息吹を纏い、ダイナミックにステージをリードする TC. KYLIE には、それができるだけの人間的深みがあります。
「ロンドンに移り住んだことは、私の人生における新たな一歩で、人生の自由、創造的な自由、そして芸術的な探求を意味する。香港はかつてイギリスの植民地だったから、この2つの都市の歴史的なつながりは私にとって深い意味を持つのよ。私はフルタイムで音楽を追求する前は、香港でニュース・ドキュメンタリー・ジャーナリストとして働き、複雑な政治的風景の中で人間の物語を紡ぐことを専門としていたの。この経験は、ストーリー・テリングと文化的アイデンティティに対する私の深い認識を形成し、現在、私の作曲とアレンジに浸透している要素ともなっているの」
TC. KYLIE が生まれ育った香港からロンドンへと旅だったのは自由を手にするためでした。それは、人生の自由であり、創造的な自由でもあります。ジャーナリストとして働いていた香港時代、彼女は生まれ育った故郷の複雑な政治的背景を思うように綴れない状況に悩みます。そして、彼の地に住む人々が、香港の魂であるカントンポップと故郷の悲喜交々を関連付けて生き抜いていることにも気づかされます。自分の愛するジャズだって文化を綴るハーモニーだ。ならば、ジャズでもカントンポップのように地元と密着したストーリー・テリングができるのでは?
「音楽の旅が進むにつれ、私は日本のアシッド・ジャズに傾倒し、そのハイエナジーなグルーヴ、シンコペーションのリズム、躍動的なブラス・アレンジに魅了されたのよ。Fox Capture Plan, Jabberloop, Toconoma, Jizue, Bohemianvoodoo といったバンドの熱心なフォロワーとなり、それぞれがこのジャンルにユニークな個性をもたらしていることを知ったの」
そんな TC. KYLIE の背中を押したのが日本と日本の文化でした。彼女は2020年、パンデミックでジャーナリストの仕事を諦め、自身の健康と情熱を大切にするため、無期限の休養を取ることを決意します。そして青森の十和田湖にあるジャズ喫茶とホステルに滞在。ジャズ愛好家だったホステルのオーナーに勧められ、TC. KYLIE はピアノの前に座り、政治・社会部記者時代に耐えてきたことを表現するために、思索し、散らばった音を弾き紡ぎました。何年も音楽から遠ざかっていた彼女はそうして、再び生活の中に音楽を取り入れることに喜びを感じるようになります。ジブリの名曲 “人生のメリーゴーランド” をカバーしたのはきっとそんな日本での出来事が、彼女のメリーゴーランドを回すきっかけになったから。それだけではなく、toe のようなポスト/マスロック、Fox Capture Plan のようなジャズ、そしてソニックのようなゲーム音楽まで、彼女の再生 “Rebirth 重生” の多くは日本の文化が根っことなって支えているのです。
今回弊誌では、TC. KYLIE にインタビューを行うことができました。「DREAM THEATER の “The Count of Tuscany” や “Illumination Theory” などのオーケストラ・アレンジは、私の作品に壮大なストリングスやホーン・セクションを取り入れるきっかけになったね。ジャズのハーモニーを映画のようなテクスチャーと融合させ、没入感のある感情豊かなサウンドスケープを創り出すのが好きなんだ」 どうぞ!!

TC.KYLIE “RE:BIRTH よみがえり” : 10/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【BLOODYWOOD : NU DELHI】 JAPAN TOUR 25′


COVER STORY : BLOODYWOOD “NU DELHI”

“It’s True For Babymetal As Well. Like Wasabi, It’s an Acquired Taste. Once You Understand It, You Cannot Get Enough!”

NU DELHI

「BLOODYWOOD はメタルなんだけど、たくさんのスパイスが効いていて、五感を圧倒するんだ。 誰もがヘドバンして、最後は僕らと一緒に踊ることになるよ」
これは、メタル界で最も独創的なバンドのひとつである BLOODYWOOD のミッション・ステートメントです。 2016年に結成された BLOODYWOOD は、伝統的なインド楽器を用いてメタルの常識を覆しました。彼らの曲にはクランチング・リフと同じくらいのバーンスリーやドールがフィーチャーされています。 ステージでは6人編成になる彼らは、オリジナル曲を作る前にYouTubeでポップ・ソングやオルタナティブ・ヒットをカバーし、バイラル・センセーションを巻き起こしました。そこから彼らの人気に火がつきました。
最初のギグは、2019年のドイツのメタル・フェスティバル、ヴァッケン・オープン・エア。その4年後、彼らはイギリスのダウンロード・フェスティバルで、日曜日の早い時間にメイン・ステージにおいて大勢の観客を集めました。 フジロックでの好演も記憶に新しいところ。
2022年のデビュー・アルバム “Rakshak” がUKロック&メタル・チャートとUSデジタル・チャートでトップ10入りを果たしたとき、国際的な好意は確信に変わりました。さらに、彼らの楽曲 “Dana Dan” がアクション超大作 “Monkey Man” のワンシーンのサウンドトラックに採用されると、その人気はさらに高まっていきました。BLOODYWOOD はインド史上最大のメタル輸出品となったのです。
「インドのメタル・シーンなんて誰も気にしてなかったんだ。そこで僕らが考えたのは、インターネットで自分たちを全世界に発信することだった。 その土地の言葉でヒップホップやポップスをやっていれば、その土地のアーティストになれる。 でも、メタルでそれをやっても、少なくともインドでは通用しなかった。だから世界を目指したんだ」

ローカルをすっ飛ばして世界へ。BLOODYWOOD は当初インドのシーンではなく、FacebookやYouTubeにカバー曲を投稿してファンを増やしていきました。バイラルを叩き出すために、インドのサウンドスケープが欠かせないもの。彼らの曲は、8弦ギターのリフで鼓膜をへし折るかのような、脈打つような Nu-metal を核にしていますが、ヒンディー語の歌詞を英語に混ぜ、ドールのような民族楽器も使っています。
「ヤギの皮でできていて、どの種類の木かもわからないんだ」
しかし、彼らはただアイデアと遊び心のある奇抜な人気者というわけではありません。ギタリストの Karan Katiyar はソーシャルメディア上で 「ここ2、3年はこれまで以上に多くのいじめや憎悪を目にする。 また、その多くがエスニシティに向けられたものであり、だからこそ自分たちのストーリーを伝えることがより重要になった」と語っています。
ボーカリストの Jayant Bhadula は年上のいとこを通じてヘヴィ・メタルに出会い、ヴァイキング・メタル AMON AMARTH の音楽を教示され、SLIPKNOT から SYSTEM OF A DOWN までモダン・クラシックの詰まったCDを焼いてもらいました。その両者からの影響は、まさに BLOODYWOOD の音楽に滲み出ています。「誰かが僕をモッシュピットに放り込んでくれて、人生で最高の時間を過ごしたよ」
ただ、最初から順風満帆だった訳ではありません。
「最初にレコーディングしたのは、本当のスタジオではなかったんだ。 狭くて、夜はとても寒かった。 毛布がなかったから、カーテンを下ろして代わりに使っていた。 貧乏だったわけじゃない。両親には自分の活動を隠すのが一番だと考えていたからね。
インドでは、親が認める職業は3つしかない。医者、弁護士、役人だ。 当時なら親はきっと賛成してくれなかっただろうけど、今は賛成してくれて嬉しいよ」

Katiyar の最初のギターは “Givson” でした。
「インドの偽ギター業界を紹介するよ!最初のギターは、”Givson” というブランドのエレクトロアコースティックだった。そのアンプのひとつにオーバードライブのセッティングがあって、もちろんノブなんだけど、ノブをゼロから0.01でも何でもいいから少し回した瞬間に、信号が完全に歪んでしまうんだ (笑)」
ラップを担当する Raoul Kerr に出会った時のことを、Katiyar は今でも覚えています。善のための力になろうというバンドの意欲をアピールする Kerr は、強いメッセージで性的暴力を非難しています。 今日、彼はほとんどいつも “No Flag” の文字が入ったマッスルベストを着て、BLOODYWOOD が分断ではなく団結を望んでいることを一貫して証明しているのです。
「彼に会った瞬間から、僕たちが同じビジョンを共有していることは明らかだった。最初はレスラーのようだと思ったけどね! 彼のライムとフロウは、まさに僕たちがまだ探していたピースだった。 僕たちは何を探しているのか正確には知らなかったが、とにかくそれを見つけたんだ」
ラッパー Kerr にとっての神様は、多面的でした。
「Mike Shinoda が僕の最初のインスピレーションで、Nu-metal 的な要素もあった。LINKIN PARK は僕の最初の音楽的な神だ。 昔は他の人と同じように、ラジオから流れている音楽は何でも聴いていた。でも、LINKIN PARK は初めて好きになったバンドで、積極的に追いかけた。その後、ヒップホップの入り口が開かれ、Eminem に入ったんだ。彼は、一世代前のラッパーたちにとって誰もが認めるインスピレーションの源だから、多くの人が彼を1位にする。 彼について好きになれるものはたくさんある。 嫌いなところもたくさんある。でも、ひとつだけ反論できないのは、彼が正直で、自分をさらけ出しているということだ。 彼のテクニックは手がつけられないほどだけど、正直なところ、テクニックとかよりも、彼は正直なんだ。 だから僕はこう言いたい。Mike, Eminem, RAGE AGAINST THE MACHINE は、僕が大人になってからの神だった。 彼らが音楽と政治の融合で社会変革の境界線をどこまで押し広げ、社会的インパクトを与えることができたかという点で、影響は大きいね」

Bhadula によれば、彼らの出身地であるデリーでは音楽教育が盛んで、ギターやドラムのクラスがあるところがたくさんあるといいます。
「学校では音楽を演奏している人の中でも、いつもメタルを演奏している人がみんなの度肝を抜いていた」
と Katiyar は回顧します。 しかし、そうした状況がインドのメタル・シーンに広く浸透しているとはまだいえません。
「インドはとても大きな国だから、メタルのリスナーが少ないという事実をつきつけられるのは不思議なことだよ」
インドのメタルはライブだけでなく、音楽のプロモーションというインフラも欠けていると Bhadula はいいます。
「インドでは、音楽の仕事といえば基本的にボリウッドで働くことであり、メタルは仕事になるわけじゃない」
つまり、BLOODYWOOD は多くのローカルなアンダーグラウンドのバンドを背負って、世界でほぼ一人でインドの旗を振っているのです。
「自分たちの音楽で国や文化を表現するのが大好きなんだ」と Katiyar はいいます。 「プレッシャーは全くないけれど、時々頭を悩ませるのは、インドという国全体を代表することが難しいということだ。 文化も言語もたくさんあるし、楽器の数も数えきれない。それでも、可能な限り、みんなを代表したいんだ」

BLOODYWOOD が2023年のダウンロードのメインステージのオープニングを飾ったとき、6月の日差しを浴びる観客の多さは、このインドのメタル・アクトが本物であることを証明していました。デビュー・アルバム “Rakshak” をリリースしたばかりの彼らは、ドールやタブラといったインドの伝統楽器と怪物的なリフを融合させ、インド・メタルを世界地図にしっかりと刻み込んだのです。
「大盛況だった! 僕たちは決して期待しないで臨む。なぜなら、期待値を低く抑えれば、いつもそれを上回ることができるからね。 でも、あれは子供の頃に夢見た瞬間のひとつだった。ヨーロッパの人々が僕たちのところにやってきて、僕たちの曲が彼らにとってどれほど重要かを話してくれたとき、自分たちが到達したレベルを理解し始めた。 僕たちの曲のいくつかは、世界中で困難な時期を乗り越える人々を助けてきた。 天職を見つけたという意味での “made it “だね」
2019年のドキュメンタリーを “Raj Against the Machine” と命名し、ナン色のレコードを販売するなど自分たちの文化に遊び心を加えて紹介する一方で、彼らはシングル “Gaddaar” で憎悪に満ちたレトリックを使って分断を図ろうとする政治家たちに反撃し、レイプ・カルチャーに反対するために音楽を使ってステイトメント、連帯の意思表示を発してきました。「これは世界的な問題であり、僕たちが強く主張ていることだよ」と Katiyar は言います。 「愛する人のために立ち上がること以上にメタルなことはあまりないと思う」
彼らのニューアルバム “Nu Delhi” は、2022年のデビュー作 “Rakshak” に比べて政治色が抑えられています。Katiyar は、ロシアがウクライナに侵攻したのと同じ週に “Rakshak” がリリースされ、それ以来、世界は絶え間なく毒のような敵意に渦巻いていると指摘します。
「人々はどちらか一方を選び、もう一方と戦うことに熱心だ」

だからこそバンドは、自分たちの祖国と歴史の物語を祝うことで、毒性、ステレオタイプ、いじめに対抗することを選んだのです。 「音楽を通して、世界を生きやすい場所にしようとしているんだ。音楽のポジティブな面をできるだけ多くの人に届けたいんだよ」
BLOODYWOOD のニュー・アルバムのタイトルは “Nu Delhi” ニュー・メタルとインドの影響を融合させたダジャレのようなもの。しかしその歌詞は、音楽と同様に彼らの国の文化への敬意に満ちています。タイトル曲は、人口3,400万人の大都市、インドの首都の過密な通りへとリスナーを引きずり込みます。
「ここでは誰もが試されている。聖人も罪人もいる、街ではなくチェスのゲームだ」
彼らにとっての目標は、より広い世界に、正真正銘のインド観を提供すること。同時に英語とヒンディー語の両方で精神疾患に光を当て、性的虐待を告発し、愛と喪失の両方を探求することが彼らのヘヴィ・メタル。そう Bhadula は主張します。
「僕たちはいつも、自分たちの身近にあるものをテーマにしようとしているんだ。”Nu Delhi” では、インドにはメタルだけでなく、世界に匹敵するような盛んな音楽シーンがあることを知らせたかったんだ。ファースト・シングルの “Nu Delhi” そのものが、僕たちからこの街へのラブレターなんだ」
“Tadka” ではインド料理に対する不滅の愛を表現しました。
「”Tadka” の正確な意味は、”スパイスや調味料のエッセンスを引き出し、料理を爆発的な味に変える技術” なんだ。料理の味を引き立てるために使うんだよ。”Tadka” を使うと赤唐辛子、マスタードオイル、マスタードシードなど、その料理の味がまるで別物のようになる。南インドから北インドまで、東インドから西インドまで、同じ食材でも使い方は人それぞれだ。味の大爆発なんだ!」
料理について熱く語ったメタルはそうそうないでしょう。
「僕たちが書くトピックはすべて、僕たちの心に近いものなんだ。ツアー中、僕らはヨーロッパ料理を食べていて、それは数日間はいいんだけど、最終的にはインド料理が食べたくなった。じゃあインド料理の素晴らしさについて書けばいいじゃないか。インド料理は芸術なんだ。スパイスのバランスを保たなければならないからね。
Karan がインストゥルメンタル・パートを考えてくれたんだけど、サビに入るリフが何か言っているような感じがしたんだ。”Tadka” は素晴らしい言葉だし、それが雪だるま式に広がっていった。料理だけに使われる言葉ではないから、人生に味をつける、人生にスパイスを加えるという比喩として使うことができる。とはいえ、僕たちは皆、本当に食べ物に対する情熱を持っているんだ」

“Bekhauf” では、BABYMETAL とアジアン・メタルの新たな歴史を作りました。
「以前から BABYMETAL のファンだったんだ。彼女たちを知ったのは “ギミチョコ!!” で、”メギツネ” も聴いたんだけど、あれはアレンジの点で、今まで聴いた中で最高のメタル・トラックのひとつだよ。”ド・キ・ド・キ⭐︎モーニング” がとても好きだし、”KARATE” も大好きだ。 実は BABYMETAL の曲も何曲かカバーしてみたんだけど、歌詞がめちゃくちゃでね(笑)。
最初は興味本位でビデオを見ていたんだけど、甲高いボーカルで歌い始めて、その間にバンドが全力疾走しているんだ。 最初は不思議だと思ったんだけど、一緒に聴くとすごくいいんだ。わさびと同じで、後天的な味覚だ。 一度理解したら、それなしでは満足できない。
ある時、BABYMETALのプロデューサーである KOBAMETALがライブに来てくれたんだ。それからずっと後になって、Karan が “Bekhauf” のためにインストゥルメンタルを作っていたんだけど、偶然にも同じ頃にKOBAから “一緒に何かやろう”というメッセージを受け取ったんだ。
僕たちはすでに BABYMETAL のためにパートを書いていて、それを気に入れば先に進めようということになっていた。僕たちは音節をどのようにヒットさせたいかというアイディアを持っていて、3人はそれを実現してくれた。すべてが相乗効果でうまくいったね」
BLOODYWOOD はバンドとして、日本の文化にゾッコンです。
「日本のマーケットはメタルを本当に受け入れているんだ。 僕はずっとアニメを見てきた。 例えば、”Death Note” の主題歌、MAXIMUM THE HORMONE の “What’s Up People?!!!” はとてもヘヴィだ。 こういう曲が日本のテレビで放送されていることにいつも衝撃を受ける。 インドでは、生まれてこのかた、テレビでメタルの曲を見たのは1曲だけだよ。メタルファンは100%素晴らしいコミュニティだ。 世界中のメタルヘッズは、どこの出身であろうと共通の特徴を持っているからね」

アニメとメタルは世界をつなぐ架け橋だと彼らは考えています。
「バンド全員が “ドラゴンボールZ” と “進撃の巨人” のアニメシリーズを見ていて、大好きなんだ。音楽だけでなく、キャラクターやストーリーも楽しめる。”ドラゴンボールZ” の界王拳を引用した “Aaj” という曲は、自分の限界に挑戦し、より良い自分になることを歌った曲なので、ぴったりだったよね。
曲を書いているときに、この言葉を使えると思ったんだ。 簡単なディスカッションをして、たとえみんながその言葉を知らなくても、耳にはとてもいい響きに聞こえると判断したんだ。 驚いたのは、僕たちの支持基盤の多くが即座にその言葉を理解したことだ!
僕たちのファンの多くがアニメも見ていることに気づいたよ。だから今、僕らはソーシャルメディア上でアニメの推薦を受け入れるようになり、最新の情報を得るようになった。 最近、映画 “呪術廻戦0” を観に行ったんだ。友達は誰もアニメを観ないから、ひとりで。 リクライニング・チェアがあり、ポップコーンがあり、幸せだった! 」
そうして世界中とコラボしてツアーすることで、ニューデリーの良さを再認識できたと Bhadula は考えています。
「このアルバムは、ニューデリーが “やあ、僕らもメタル世界にちゃんと入ったよ” と言っているんだ。もちろん、ニューデリーにいるときはもっと好感が持てる。家にいて、周りに友達がいて、ある種の安心感がある。でもツアーに出ているときも、故郷のように感じるよ。だってヒンドゥー語を知らない人たちが、一緒に歌っているのを見ることができるからね。グラスポップ・メタル・ミーティングでは、ヨーロッパに住むパキスタン人(インド国旗を掲げていた)がいて、 “君たちのおかげでメタル世界の一員になれた気がする” と言っていた。この感謝の気持ちが、ホームシックなんて吹き飛ばしてくれるんだ…料理は別としてね!」
最近のドキュメンタリー “Expect A Riot” で彼らは、このアルバムで “インドに対する認識を変えたい” と語っていました。
「どのようなソーシャルメディア上でも、あるレベルのインド嫌いが蔓延している。”BABYMETALよ、なぜこんなP******とコラボしたんだ?” みたいなね。僕たちは常に平和な場所にいるわけではない。それは SNS 上で取り組まなければならないことで、僕たちのためだけでなく、世界中のすべての人のためでもある。僕たちができる最初の一歩は、そうした人たちの偏見、インドに対する認識を変えることだ。
僕たちは、世界で最も古い文明のひとつから生まれた。インドの文化は非常に多様で、一生かけてもインド全土を巡り、そのすべてを理解することはできないだろうね。そして伝統や文化だけでなく、科学にも多くのものを提供してきた国なんだ。他の誰かを攻撃することで、この認識を変えることはできない。このアルバムは、僕たちの一部分と、僕たちの出身地であるこの街への愛を分かち合うものだ。願わくば、人々が理解し、巷にはびこるインド人嫌いのフィルターを越えて見てくれることを願っているよ」

インドに対する偏見は、TikTok の影響だとも。
「インドに対する人々の印象は、実際とはかなり違っていて、その多くはTikTokに関係している。TikTokでは、インドの偏ったバージョンが常に描かれているんだ。汚い食べ物、汚い道路、汚い人々。 でも、実際にはそういうもは、探さなければ見つからない。 もしインドに来て、まずい店を探すなら、まずい街のまずいところに行くしかない。 この国はそういう国じゃないんだ。もしそうだとしたら、美味しい物が好きな僕たちみんな死んでるよ (笑)」
“Bekhauf” でのシンセサイザーの多用は、より純粋なフォーク・メタル・スタイルからの逸脱を予言しているのでしょうか?
「危険な要素もあるんだ。僕らのフィルターを通さない意見からだけでなく、このアルバムで実験した方法からもね。実験のひとつは “Bekhauf” で、次のアルバムで何をすべきかについて、誰もがそれぞれの意見を持っていた。でも、僕たちは最初からそうしてきたように、最も正直な気持ちを吐き出し、それを聴いてもらうことで、好きか嫌いかを決めてもらうことにしたんだ」
歌詞をすべて追えなくても、彼らの曲がいかに心からのものであるか、その情熱が伝わるはずです。そしてこの “Nu Delhi” は政治色よりもアットホームな要素を全面に押し出しました。例えば、”Halla Bol” では歴史的に重要な事件を扱い、”Hutt” では自己承認や否定的な雑音に立ち向かうという考え、あるいは “Tadka” ではインド料理の楽しさなど、ポジティブな意思を発信しています。
「音楽が世界に与える影響の限界を押し広げようとしているんだ。それが内なる戦いであれ、より良い世界のための戦いであれ、僕らのサウンドはみんなをひとつにして勝利に導くためのものなんだ」
常に “謙虚” だからこそ、BLOODYWOOD のメッセージは多くの人の心に届きます。
「実は…この成功は夢のようなものなんだ。インドでは、海外に出て、世界最大の舞台で国際的な観客のためにプレーする人はあまりいないんだ。つまり、50%は夢のようなもので、現実であるには素晴らしすぎる。 でも、あとの50%はとても信じられる。 なぜなら、インドだけでなく、世界中には、24時間365日、音楽が好きで働いているミュージシャンのように、懸命に努力している人たちがたくさんいることを知っているから。どんなに才能があっても、運という要素は必要だ。僕たちはそれを手に入れた。 でも同時に、自分たちの仕事を必死でやっていたから、幸運が訪れた。だから、このバンドはみんな謙虚でいられるんだと思う」


参考文献: JAPAN FORWARD :INTERVIEW | India’s Bloodywood Are Babymetal Fans and Out to Inspire Change in the World

KERRANG! :Bloodywood: “This album is New Delhi saying, ‘Hi, we’ve entered the metal world chat’”

THE GUARDIAN :Indian rock sensations Bloodywood: ‘What’s more metal than standing up for people you love?

GUITAR.COM :https://guitar.com/features/interviews/bloodywood-interview-karan-katiyar-nu-delhi/

来日公演の詳細はこちら。SMASH JAPAN

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CYBER BAND : THROUGH THE PASSAGES OF TIME】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ANDREW PATUASIC OF CYBER BAND !!

“My Dad Advised Us To Learn Tom Sawyer And YYZ by Rush If We Wanted To Win. And Through Learning Both Of The Songs Made Us Love Prog Rock And Opened Our Eyes To a New World Of Music.”

DISC REVIEW “THROUGH THE PASSAGES OF TIME”

「僕たちがまだ初心者だった頃、アマチュアのバンド・バトルに参加しては負け続けていたんだよ。父は、コンテストに勝ちたければ RUSH の “Tom Sawyer” と “YYZ” を覚えろとアドバイスしてくれた。この2曲を覚えたことで、僕たちはプログが大好きになり、新しい音楽の世界に目を向けるようになったんだ」
DREAM THEATER や GOJIRA のグラミー獲得。Steven Wilson の全英チャート1位。もしかすると、インスタントな文化、音楽に対する反動として、プログレッシブ・ミュージックの復権、その狼煙があがったように見える昨今。とはいえ、結局そうした怪気炎も音楽に対価を支払い、アルバム単位で鑑賞する過去の風習が染み付いた40代以上の踏ん張りに支えられているようにも思えます。
実際、シーンを牽引し、ムーブメントを起こすのは若い力。そうした意味で、20代前半からなるフィリピンの至宝 CYBER BAND が注目を集め始めていることに、プログの民はどれほど勇気づけられることでしょう。彼らの “情熱” は、勝利と喜びの味を教えてくれた RUSH とプログに対する恩返し。だからこそ、信頼できるのです。しかも彼らが現れたのはプログ未開の地、フィリピン。メタル同様、第三世界から登場する才能の芽は、シーンの未来を明るく照らします。
「僕らはプログの神様、EMERSON LAKE & PALMER, RUSH, YES, KING CRIMSON, GENESIS から影響を受けている。”Through The Passages of Time” は、壮大なプログ・ロック・ソングへの愛から生まれたもので、自分たちで作ろうと決め、自分たちの限界に挑戦したんだ。テクノロジーの台頭によって、より多くのミュージシャンが革新的で新しいものを生み出すようになると思う。プログの神々が当時そうであったように、もっと多くのアーティストが自分たちの限界に挑戦するようになれば、21世紀のプログレッシブ・ロック・ミュージックはもっと新しい音楽的次元へと進化していくだろうな」
事実、23分のオープナー “Through the Passages of Time” は、音楽の喜びを教えてくれたプログの神々に対する愛情にあふれています。さながら目前でライブを見ているかのような生々しいプロダクションはまさに70年代の偉大なプログやクラウトロックを彷彿とさせます。当時、レコーディングは生のまま、ある意味不完全なものが多くありましたが、だからこそバンドの演奏の楽しさとアイデアの豊かさが際立った側面はあるはずです。このアルバムのサウンドも同じで、パワフルでありながら扇情的で、レトロでありながらモダン。彼らのスピリットを余すことなく伝えていきます。
レトロとモダンの鍔迫り合いは音楽やアイデアにも飛び火します。CYBER BANDは、ドラム、ギター、ベース、ボーカルというクラシックなラインナップを基本としながらも、ストリングス、ピアノ、管楽器、エレクトロニック・エレメントがサウンドを豊かにし、多彩な音のビッグバンを作り出すことでプログ宇宙を拡張していきます。ジャズからクラシックまで、あの頃の巨人と同様に音楽の冒険を楽しみながら、シームレスに調和を取りながら、自らの歩みを進めるのです。
“Epitaph” や “Red Barchetta” を想わせる名演が繰り広げられるアルバムの中で、CYBER BAND をさらに特別な存在へと押し上げるのが、インタビューイ Andrew Patuasic の素晴らしい歌声でしょう。Wetton, Lake, Mercury といった伝説が帰還したかのようにエモーショナルで心を揺さぶる伸びやかな Andrew の歌唱はロックの本質、感情の昂りをリスナーに思い起こさせてくれます。それにしても、Arnel Pineda といい、フィリピンの人は本当に歌心がありますね。
今回弊誌では、Andrew Patuasic にインタビューを行うことができました。「アニメが大好きなんだ!”坂道のアポロン” というアニメが大好きで、日本がいろいろな音楽にオープンであることも大好きなんだ。”賭ケグルイ”のサウンドトラックを聴いて衝撃を受け、日本がいかにあらゆる音楽を愛しているかということを思い知らされたよ」 鍵盤とベースを同時に操る眼鏡クィッの彼も秀逸。どうぞ!!

CYBER BAND “THROUGH THE PASSAGES OF TIME” : 10/10

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