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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【MUTOID MAN : WAR MOANS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH STEPHEN BRODSKY OF MUTOID MAN !!

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Converge / Cave In Super Group, Mind-Blowing Behemoth, Mutoid Man Literary Melt Your Mind With Their Newest Record “War Moans” !!

DISC REVIEW “WAR MOANS”

CONVERGE, CAVE IN, ALL PIGS MUST DIE のメンバーが集結した突然変異のスーパーグループ MUTOID MAN が奔放かつ不遜、バッダースな新作 “War Moans” をリリースしました!!キャッチーなロックン・ロールのイメージを獰猛なメタルのアグレッションに投影した、チャーミングかつタイトなレコードはシーンの大いなる期待に応えて余りある一撃となりました。
シリアスで暗色調なアティテュードが枢軸となるコンテンポラリーなメタルシーン。狂気やユーモア、風刺を宿す MUTOID MAN のシアトリカルで本来のメタルらしいコンセプトは、実際異端で新鮮なカウンターとして際立っています。
インタビューにもあるように、”War Moans” は “セクシャリティ”、性行為や性的欲求にフォーカスした作品です。アートワークやタイトルが示すように、性的指向、欲求が日増しに暴走する現代社会を、戦争という極限状態へと投影しある意味戯画化することで、現代の異様さ “倒錯性” “変態性” を浮き彫りにしているのかも知れませんね。実際、バンドは “War Moans” を “Perverted” 変態的なレコードだと断言しています。そしてその柔軟なユーモアはポップセンスに、辛辣な毒気はアグレッションに姿を変えて作品の音楽性に反映されているのです。
文字通りリスナーの心を溶かすアルバムオープナー、”Melt Your Mind” はそういった彼らの意図を十二分に汲み取った楽曲です。キャッチーでスピーディー、ハイパーアクティブなバンドの新たなアンセムは、Brodsky のフックに満ちたギタープレイ、ファジーでラウドな Nick のベース捌き、そして Ben Koller の数学的かつダイナミックなドラミングに牽引されて、空襲にも似た爆発的なエナジーを発します。
加えて、あの VAN HALEN をも想起させるボーカルハーモニー “hoo-ooo” の火力も絶大で、物憂げなメロディーとの相乗効果は無上の中毒性をリスナーへと植え付けて行くのです。
続く”Bone Chain” ではさらにアンニュイなメロディーが中毒性を増し、MOTORHEAD meets QUEENS OF THE STONE AGE とでも形容可能、ドラッグのように危険でオルタナティブなキャッチーネスを創造していますね。
インタビューにもあるように、パンクやハードコアは勿論ですが、特に初期のメタルスピリット、80年代という時代を意識しリスペクトして制作されたアルバムで “Irons in the Fire” からタイトルトラック “War Moans” への流れはまさに作品を象徴しています。
MEGADETH の “Countdown to Extinction” をイメージさせる大仰なイントロ、スラッシュの衝動、テクニカルなシュレッド、インテレクチュアルなリズムワーク、シンガロングを誘うキャッチーなコーラス。”Irons in the Fire” は、かつてメタルが備えていた祝祭的な高揚感を胸いっぱいに浴びつつ、マスマティカルでスペーシーに味付けしたモダンな感覚と共に現代へと叩きつけているのです。
さらに SLAYER の “War Ensemble” に対する極上のオマージュにも思える “War Moans” では、あの時代を象徴するシュレッダー Marty Friedman が、トレードマークのコード感抜群で変拍子を切り裂くリードプレイでバンドの主張を代弁しています。
こういった凶悪な楽曲においても、Brodsky はスクリームや吐き捨てを駆使してあくまでメロディーを追い、勿論あの素晴らしき CAVE IN で確立したスタイルから遠く遊離する訳もありませんが、グロウルは使用していませんね。彼のそのトレードマーク自体も、グロウルが飽和気味な界隈に対する強いアンチテーゼ、風刺となっているように感じました。
とは言え、アルバムは決してオプティミスティックな押しの一辺倒ではありません。ブルージーでスロウ、スラッジーにバンドのシリアスな一面を見せつける “Kiss of Death” はアルバムの裏ハイライトとして作品に妙なる濃淡をもたらし、何よりこのマスターピースを締めくくる衝撃のパワーバラード、ダークな歌姫 Chelsea Wolfe を起用した “Bandages” では、慈愛と憂鬱の相反するエモーションを深々とサウンドに込め、バンドのジャンルスパニングでフレキシブルな才能を絶佳なるコントラストとして見事レコードに落とし込んでいるのです。
作品のプロデューサーでもある CONVERGE の Kurt Ballou が、カオティックに暴走する “Micro Aggression” ではなく、意外にもこの2曲にゲスト参加を果たしていることを付け加えておきましょう。
今回弊誌では、ex-CONVERGE で CAVE IN のマスターマインド Stephen Brodsky にインタビューを行うことが出来ました。マーティーさんによれば、「新しいアルバムはエグい! クッソかっこいい! メタルかロックかパンクか分からないけど、とにかく生々しいヘヴィ・ミュージック! コイツらはホンモノだ、保証付き!!」 だそうですよ。どうぞ!!

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MUTOID MAN “WAR MOANS” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ELDER : REFLECTIONS OF A FLOATING WORLD】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH NICK DISALVO OF ELDER !!

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Massachusetts Based Artistic Heavy Rock Act, Elder Take You An Adventure That Won’t Be Soon Forgotten With Their Progressive & Eclectic New Record “Reflections Of A Floating World” !!

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DISC REVIEW “REFLECTIONS OF A FLOATING WORLD”

マサチューセッツからストーナー/ドゥームの翼を広げるアートロックバンド ELDER が、革命的な新作 “Reflections Of A Floating World” をリリースしました!! 音のキャンバスに描かれる芸術的で想像性豊かな色彩は、リスナーを遥かなるサウンドスケープの旅路へと誘うことでしょう。
ファジーでスロウ。シンプルなストーナーアクトとしてスタートした ELDER は、プログ/ヘヴィーサイケの方角へと舵を切り、今や最もクリエイティブでアーティスティックなヘヴィーロックバンドと称されています。リスナーに豊潤なアドベンチャーやストーリーを喚起するあまりにシネマティックな作品と、ジャンルを縦横無尽に横断する精神性はその確かな証拠となっていますね。
中でも前作 “Lore” は、リフ、メロディー、コンポジションに最上級のデザインと創造性が施され、プログレッシブドゥームの傑作として各所で高い評価を得た作品でした。しかし、バンドは “Reflections Of A Floating World” で自身の最高到達点を易々と更新して見せたのです。
アルバムオープナー、”Sanctuary” の威風堂堂としたリフクラフトはまさに ELDER の真骨頂。揺るぎなきそのファジーな響きはバンドのルーツを主張し、リスナーを “浮世” という聖域へ導く道標と化していますね。
楽曲の中間部では、バンドのフロントマン、ボーカル/ギター Nick DiSalvo が演奏家としての実力を存分に見せつけます。エモーションとテクニック、そしてエピカルな旋律を意のままに操り融和させたロングリードは、仙境なるアルペジオや起伏の激しい山々の如きリズムアプローチをアクセントとして極上のアドベンチャーを紡いで行きます。
実際、これほどまでギターサウンドが的確に、存分に、華麗に設計、レイヤーされたレコードは簡単には見当たりません。それはすなわち、4人目のメンバーとなったセカンドギタリスト Michael Risberg、ペダルスティールのスペシャリスト Michael Samos を不可欠な存在としてアルバムに招聘する理由となったのです。
“The Falling Veil” では、”Lore” から一層上のステージへと移行した Nick のボーカリストとしての魅力も開花します。表現力とレンジが広がり、自信に満ちた彼のサイケデリックな歌唱は Ozzy Osbourne のような中毒性をも携え、決してメジャーとは言えないジャンルのバンドがリーチを拡大するための大きな武器となっていますね。
さらに、”The Falling Veil” はバンドの新たな地平も提示します。PINK FLOYD のムードを存分に浴びてスタートする楽曲は、クラッシックプログ、クラウトロック、インディーなどの影響がシームレスに芽生える、カラフルで多彩な浮世草子と言えるかも知れません。レトロとモダン、ヘヴィネスとアトモスフィア、シンプルとマスマティカルを行き来する楽曲のコントラスト、ダイナミズムはまさに唯一無二。インタビューで語ってくれた通り、「より複雑でプログレッシブ」となったアルバムを象徴する起伏に富んだ楽曲は、「音楽を聴いている時、頭の中にストーリーを描けるようなサウンド」として完成を見たのです。
バンドが誇るコンテンポラリーな多様性はジャンルのみに留まらず、百花斉放なその使用楽器にも及びます。人生を変えたアルバムのトップに ANEKTODEN をリストしていることからも、バンドのプログレッシブロックに対する造詣の深さが伝わりますが、”The Falling Veil” を引き合いに出すまでもなく、メロトロンを彼らほど巧みにヘヴィーロック/メタルへと取り入れた集団は OPETH を除いては存在しないでしょう。
アルバムを聴き進めれば、フェンダーローズが素晴らしき色を添える “Staving Off Truth”、ペダルスティールが主役を務め Miles Daves の遺伝子を宿した “Sonntag”、メロトロンとピアノがヘヴィーなリフストラクチャーと見事な対比を生み出す “Blind” など、Nick が語ってくれたように 「ヘヴィーロックではあまり聴くことの出来ない楽器」でヘヴィーロックを新たな領域に導いていることに気づくはずです。
ジャンルのマスターマインドである MASTODON がキャッチーであることにフォーカスした今、ELDER の切り開く新たなフロンティアはシーンにとって掛け替えのない財産となっているのかも知れませんね。
今回弊誌では Nick DiSalvo にインタビューを行うことが出来ました。日本の “浮世” ともリンクし、マテリアルワールドとスピリチュアルワールドを往来する64分の壮大な叙事詩。6曲全てが10分前後ながら、リッチで瑞々しく、全く冗長さを感じさせない圧倒的な構成力にぜひ酔いしれてみてくださいね。どうぞ!!

ELDER “REFLECTIONS OF A FLOATING WORLD”: 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【IGORRR : SAVAGE SINUSOID】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH GAUTIER SERRE A.K.A. Igorrr !!

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Mastermind Of Modern Metal Revolution, Igorrr Sets A New Standard Across Styles Of Music, With His New Masterpiece “Savage Sinusoid” !!

DISC REVIEW “SAVAGE SINUSOID”

多様性をランドマークとするモダンメタルシーンの最前線に立ち続ける、フランスの鬼才 Igorrr が待望の最新作 “Savage Sinusoid” をリリースします!!メガレーベル Metal Blade Records と契約を果たし、自身の最高峰を更新する傑作を完成させた Igorrr の世界制覇は目前です。
Igorrr とは誇り高きフランスのコンポーザー/マルチプレイヤー Gautier Serre のソロプロジェクト。ブレイクコア、グリッチホップ、トリップホップ、バロック、クラシカル、ワールドミュージック、サイバーグラインド、デスメタル、ブラックメタルなど百花斉放、極彩色のインスピレーションを濃縮し、時代もジャンルも超越したそのサウンドスケープは即ち規格外のモンスターだと言えるかもしれませんね。そして、インタビューにもあるように Gautier は、その至高の怪物を各ジャンルのスペシャリストを招集することで制御し、自らの意のままに操っているのです。”Savage Sinusoid” のアートワークに描かれた結合のスフィアは、まさにそのシンボルだった訳ですね。
アルバムオープナー、”Viande” は Igorrr の野蛮な “Savage” サイドを象徴する楽曲です。エクストリームメタルの新たなエイリアン、奇妙な咆哮を宿した2分弱のエレクトロブラッケンドデスメタルは、息を呑むほどに野蛮で斬新。邪悪で過重な質量を纏うギターリフと、鋭利なグリッチサウンドが交差し、リズムの主導権を奪い合う様はまさしく圧巻の一言で、同時に呪詛のごときシアトリカルなスクリームは地球上で最も多様な Igorrr 劇場の開幕を告げています。
Igorrr の多様性、 “Sinusoid” サイドを体現する “ieuD”, “Houmous” の流れがシーンに与えるインパクトは絶大でしょう。ハープシコードとエレクトロビート、バロック音楽とエレクトロニカ。400年の時を超えて邂逅した、17世紀と21世紀を象徴するサウンドとジャンルは、4世紀のギャップなど存在しないかのように “ieuD” で魅惑の融合を果たしています。
中盤、荘厳なる美の結晶、狂気すら入り交じる Laure Le Prunenec のオペラティックな歌唱をコアとして、ブラストビートとブレイクビーツが入り乱れる魔展開は確かにカオティックですが、テクニカルで深層まで注意深くデザインされたそのコントラスト、タペストリーサウンドは、奔放、野性味というよりはコントロールされたカオスといった印象を与えていますね。つまり、彼のエクレクティックなチャレンジは、決して客寄せのサーカスではなく、自身の創造性、シネマティックな絵画を完成させるための絵の具や技法であるとも言えるでしょう。
“Houmous” で Igorrr のサウンドはさらにその世界を広げて行きます。”ieuD” で時空を超えた彼の音楽は軽々と地平をも飛び越えて進化を続けます。バルカン半島へとたどり着いた彼のイマジネーションは、バルカン音楽とエレクトロニカ、そしてブラストビートを結びつけ異形のエモーションを創出します。
音楽も多様なら舞台に上がる楽器の種類も実に多様。アコーディオンにサックス、フルート、そして楽曲の後半にはニンテンドーの実機を使用したチップチューン8bitサウンドまで登場するのですから、インタビューで “No Limits, No Boundaries” と断言するのも頷けますね。何より、今回の作品では全ての楽器が、サンプルではなく実際にプレイされており、その繊細かつオーガニックなサウンドはアルバムのリアリティーを飛躍的に高めていると同時に、作品のディレクションさえ以前よりソリッドにフォーカス成し得ていると感じました。アコースティック楽器とエレクトロニカサウンドのシュールなコントラストはアルバムの特筆すべき場面の一つでしょうね。
ムーブメントとしての djent が終焉を迎えシーンに定着した中で、Igorrr の”Savage” と “Sinusoid” を融合させる時代も空間も超越したユーフォリアは EDM や hip-hop が席巻する現在の音楽シーンだからこそ、新たなトレンドとしてモダンメタルをさらに前進させる可能性を多分に孕んでいます。インタビューでも語ってくれた通り、少なくともこのジャンルは未だに進化を続けているのですから。最後に、CATTLE DECAPITATION の Travis Ryan が3曲で無慈悲なグロウルを披露し、作品の “Savage” をより際立たせていることを付け加えておきましょう。
今回弊誌では、Gautier Serre にインタビューを行うことが出来ました。ほとんど多様性とコントラストについてしか言及しない Marunouchi Muzik Magazine ですから当然この作品こそ2017年上半期の最重要アルバムだと断言いたします。どうぞ!!

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Igorrr “SAVAGE SINUSOID” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【tricot : 3】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH tricot !!

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The Best Girls Trio On Earth, tricot Makes Math-Rock Great Again With Their New Milestone “3” !!

DISC REVIEW “3”

日本のマスロック/ポストロックのランドマークとなった歴史文化都市、京都から世界へと進出し快進撃を続けるガールズトリオ tricot が時代を切り拓く一撃 “3” をリリースしました!!ポップ、パンク、そしてプログまで取り込んだ前人未到の方程式は世界を驚かせるに充分なインパクトを纏っています。
日英米同時リリースとなった最新作 “3” は、インタビューにもあるようにバンドが最も自由を謳歌した「何でもアリ」な作品に仕上がりました。ドラムス komaki♂ 脱退後リリースされた “A N D”, “KABUKU EP” は共に数名のサポートドラマーたちと共に制作されましたが、今作ではライブのサポートも務める吉田雄介氏がほぼ全ての楽曲でプレイ。フレキシブルにトリオの意思に反響するセンシブルなドラムスを得て、バンドはその野性味と知性を最高の形で開花させたと言えるかも知れませんね。
勿論、変幻自在なリズム、マスマティカル(数学的)な変拍子の洪水がシンボルとなり、特に海外では “マスロック” “Math-rock” と称される tricot の音楽ですが、多彩を極めるのはリズムだけではありません。”3″ で確かに実現したカラフルで鮮やかな楽曲群、世界観はしなやかにバンドの成熟、進化を伝えています。
また、tricot のその自由な実験精神は CD のパッケージングにも表層化しています。ブックレットもアートワークもなく、透明のケースにただ “3” と書かれただけのミニマルパッケージ盤(1500円)と同時に、クリエイター・チョーヒカルとのコラボレーションによるアートボックス、999枚限定デラックス盤(4500円)を用意。「今通常盤として世に出されている形が果たして今もみんなにとって通常であるのか」。拡散するリスナーの要望と改革の進まぬ音楽産業の落差に疑念を抱き、一石を投じるバンドのチャレンジは実に潔く、大いに賞賛されるべきでしょう。
アルバムオープナー、園子温監督のオリジナルドラマに使用された “TOKYO VAMPIRE HOTEL” を聴けば、tricot がロックの持つ原衝動とインテリジェンス、そしてポピュラリティーをナチュラルに凝縮させていることに気づくはずです。楽曲の持つインテンシティー、パンキッシュな衝動、コンテンポラリーな展開は AT THE DRIVE-IN をも想起させ、その凄みはポストハードコアの領域へと達していますね。
進化の証である、ファストでアグレッシブな2分30秒が過ぎ去ると、バンドは別の顔を見せ始めます。メロディックでキュートな “WABI-SABI” はバンドの真骨頂であり、”TOKYO VAMPIRE HOTEL” の素晴らしきカウンターとして存在しています。tricot らしいポップなヴァースに色を添える楽器隊のコーラス、ハーモニーは楽曲に極上のアトモスフィアをもたらし、同時に生々しいサウンドプロダクションとリズムアプローチの妙は “マスポップ” のパイオニアであることを高らかに宣言しているのです。
実際、椎名林檎のリリカルなムードを内包する “節約家” にも言えますが、2人のギタープレイヤーが創造するインテンスは峻烈で、その意外性に満ちた休符の配置、スタッカートの切れ味、テンションノートの煌めきは作品のコアとして揺るがぬ存在感を放っています。
ダンサブルな “よそいき”、ジャズの息吹を吸い込んだ “DeDeDe”、ボーカルエフェクトや中国語まで活用した “ポークジンジャー” と実にバラエティーに富み色とりどりの作品において、トリッキーなバンドの魅力は “18, 19″ で最高潮に達します。
インタビューで語ってくれた通り、「やりたいこと詰め込んで全部やってやろう」という意気込みで制作されたチャレンジングな楽曲は、実に複雑怪奇。異なるイントロとコーラスのリズムに加え、突然のストップ&ゴーが多発する変則リズムの氾濫は、tricot のクリエイティビティとテクニックを完膚無きまでに見せつけています。特にアクティブでダイナミックなベースラインは群を抜いていますね。
さらにイントロのリズムを注意深く数えれば、”9・9・10・9″ と進行していることに気づくはずです。つまり、”18, 19” とは楽曲の拍子を表しており、タイトルや歌詞、そしてその淡いメロディーから不安定な青春時代の恋愛を想像するリスナーを見事煙にまいているのです。平然と宿された衝撃の”ダブルミーニング”。tricot の虜となる音楽ファンが後を絶たないのも納得ですね。
アルバムは、シンプルにスタートし徐々にコーラスやセブンスコードが重ねられて行く不思議で魅力的なポップチューン “メロンソーダ” でその幕を閉じます。人生を変えたアルバムを見れば分かる通り、貫かれるポップセンスは3人にとって不可欠で、そしてあまりに当然のものとして常に存在しているのでしょう。
今回弊誌では tricot の3人にインタビューを行うことが出来ました。4月には日本が誇るポストロック/ハードコアの祝祭 “After Hours” でプレイし、さらに8月には UK ポストロック/ハードコアの祭典 ArcTanGent への出演も決定しています。
余談ですが、「世に出回ってる tricot の楽譜はだいたい間違っている」そうなので、こちらも画期的な試み “目コピ動画” を公式ショップから購入してみるのも一興です。どうぞ!!

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tricot “3” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【FULL OF HELL : TRUMPETING ECSTASY】JAPAN TOUR SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SPENCER & DYLAN OF FULL OF HELL !!

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Maryland / Pennsylvania Quartet, Full OF Hell Has Just Released The Newest Album “Trumpeting Ecstasy”!! Diverse, But More Into Extreme Metal Realms!

DISC REVIEW “TRUMPETING ECSTASY”

メリーランド、ペンシルベニアのカルテット、破壊者 FULL OF HELL がフルアルバムとしては2013年の “Rudiments of Mutilation” 以来となる新作 “Trumpeting Ecstasy” をリリースしました!!日本が誇るノイズゴッド MERZBOW, アヴァンギャルドノイズデュオ THE BODY とのコラボレート、さらには NAILS, PSYWARFARE とのスプリットを血肉としてリリースした作品は、要となる自身のルーツを軸としつつ、同時にエクストリームミュージックの領域を一際押し広げる重要なレコードとなりました。
CODE ORANGE, 日本の ENDON と並んで FULL OF HELL はハードコアとノイズ要素を融合させるアプローチの先端に立つアーティスト。もはやハードコアの大家となった感のある CONVERGE の Kurt Ballou が斬新なその三者全ての新作を手がけることとなったのも偶然ではないでしょう。
実験的な作風にシフトするかとも思われた “Trumpeting Ecstasy” は、意外にもストレートな楽曲が軸となり押し寄せる暗く激しい11曲23分となりました。インタビューにもあるように、サウンド、リフワークなど、確かにバンドはよりメタルの領域に接近したようにも思えますし、楽曲が”密着”していると語るのも頷けます。
しかし、勿論彼らの野心が一所に留まるはずもなく、レコードは同時にパワーバイオレンス、ノイズ、スラッジ、インダストリアルといった多様なアイデアを見事に昇華しコンテンポラリーなブルータリティーを散りばめたハイブリッドなエクストリームミュージックとして仕上がったのです。
“木々も鳥たちも悲しみに満ちている。彼らは歌っているんじゃない。ただ悲鳴をあげているんだ。” ニュージャーマンシネマの巨匠 Werner Herzog の言葉で幕を開けるアルバムオープナー “Deluminate” は文字通り世界の悲惨さ、絶望感の象徴です。不協和音をスクラッチする悪夢のデスメタルライクなリフワークと、疾走する巧みで手数の多い狂気のドラミングは無慈悲にもリスナーに地獄絵図を投下して行きます。”人間は地球の顔に出来た膿だ” と喉が張り裂けるほどシャウトする Dylan の苦痛を伴う憤怒は即ちハードコアのリアルで、聴く者に畏敬の念さえ感じさせますね。
禍々しい何かを引き摺るようにスローダウンする、スラッジーな “Gnawed Flesh” はまさに FULL OF HELL の真骨頂。脱退したベーシスト Brandon Brown のデモニックなガテラルは、Dylan の鋭いスクリームと凶悪なインタープレイを繰り広げバンドの顔となっていましたが、新たに加わった Sam DiGristine もしっかりとその伝統を引き継ぎ、自身のハラワタに宿した魑魅魍魎を地の底でスラッジパートに全てぶつけています。
さらに “Crawling Back to God” には ex-ISIS の Aaron Turner が、”At the Cauldron’s Bottom” には CONVERGE の Nate Newton がそれぞれボーカルでゲスト参加し、様々な声を得た作品は実に多様な色を加えているのです。
GRIMES のレーベルに所属するカナダのアーティスト Nicole Dollanganger の声を得たタイトルトラック “Trumpeting Ecstasy” はバンドが経てきたコラボレートの旅が結実した成果だと言えるでしょう。THE BODY の Lee Buford が生み出すビートと Nicole の天上の歌声は、不穏なノイズを宿した惨忍なバンドの暴虐と溶け合うこともなく、奇妙な二分法のまま冷やかなまでに無機質に進行して行きます。
インタビューで Dylan は、”Trumpeting Ecstacy” というタイトルが「他人の不幸は蜜の味」といった意味を持つと語ってくれましたが、この純美と非業、”喜び”と”悲しみ”の奇妙な共存はそのまま彼の語る人間の心の最も醜く陰湿な場所を映し出しているように感じました。
今回弊誌では、フロントマン Dylan とギタリスト Spencer にインタビューを行うことが出来ました!8月には THE BODY, FRIENDSHIP と回る日本ツアーも決定しています。どうぞ!!

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FULL OF HELL “TRUMPETING ECSTASY” : 9.8/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DRAGONFORCE : REACHING INTO INFINITY】JAPAN TOUR SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH FRÉDÉRIC LECLERCQ OF DRAGONFORCE !!

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UK Based Power Metal Speed Star, Dragonforce Reaches Into New Horizon With Their Newest Album “Reaching Into Infinity”!! Still Fast But Mature!

DISC REVIEW “REACHING INTO INFINITY”

英国が誇るパワーメタルスピードスター、DRAGONFORCE が7枚目のフルアルバムとなる “Reaching into Infinity” をリリースしました!!”無限大”の力と可能性を秘めたその魅力的な音時空は、素晴らしきカタルシスを伴って世界に光明と救いをもたらすことでしょう。
DRAGONFORCE は勿論、その計測不能なまでに狂速な bpm と、レトロゲームの影響を消化したチップチューンメタルのコンボで名を上げたバンドです。確かに、時に激しいギターデュエルを交えながら突き進む、その目まぐるしくも華麗で勇壮なスタイルは実にエキサイティング。バンドは暗雲漂うパワーメタルシーンの救世主として着実にその地位を築き上げて来たと言えるでしょう。
しかし、DRAGONFORCE は現在、そのパワーメタルという “檻” からゆっくりと着実にその領域を拡大させつつあります。
実際、ギタリスト Sam Totman という大黒柱がコンポジションの中心に座っていた “The Power Within” 以前のパワーメタル然とした作品と、マルチな才能を持つベーシスト Frédéric Leclercq が大々的に関わるようになり Sam との二頭体制を築いた後の作品には大きな差異が存在するようにも思えます。
二頭体制の幕開けとなった前作 “Maximum Overload” はバンド史上最高に芳醇な音楽性を誇る作品でした。インタビューにもあるように全てを2人で共作したというアルバムは、Frédéric が持ち込んだデス、スラッシュ、プログといった新たで多様な感覚と、奇跡の 235 bpm を実現した “The Game” が象徴するバンドのアイデンティティー “スピード” を共存させた完璧なる傑作だったと言えますね。勿論、Jens Bogren の類希なるセンスがバンドをまだ見ぬ高みへと導いたことも否定は出来ないでしょう。
ただ何より、Frédéric が日本のゲーム “悪魔城ドラキュラ” へのトリビュートとして制作した “Symphony of the Night” の妖艶なる美の調べは、以前のバンドには存在し得ない新たな至宝に違いありません。前世は日本人だったとまで語る Frédéric のメロディーには、コード進行をより意識することで生まれる日本的な “艶” が確かに備わっているのです。
二頭体制を引き継ぎながらも2人が別々に作曲を行い、結果として Frédéric が大半の楽曲を手がけることとなった新作 “Reaching into Infinity” は、”Maximum Overload” でのチャレンジをさらに1歩押し進めた作品に仕上がりました。
期待感を煽る荘厳なイントロダクションに導かれ幕開ける、アルバムオープナー “Ashes of the Dawn” はまさに歌劇”スピードメタル”。オペラティックな Marc Hudson の歌唱は、ファストでシンフォニックな舞台に映え、昇龍の如く天高く舞い上がります。自らのトレードマークをしっかりとアピールしながら、よりシアトリカルで洗練されたメロディーを提示する現在の DRAGONFORCE に死角はありませんね。
トランス的なイントロから HELLOWEEN を想起させるメジャーなコーラスを経てプログレッシブな展開を見せる新鮮な “Judgment Day”、新ドラマー Gee Anzalone の派手やかなお披露目から Frédéric の壮絶なベースソロまでリズム隊の活躍が顕著な “Astral Empire” と疾走するキラーチューンを畳み掛けたバンドは、徐々にその成熟を遂げたドラゴンの巨体を顕にして行きます。
“悪魔城ドラキュラ” トリビュートの続編、ディミニッシュの魔法が冴える “Curse of Darkness”、切なくも壮大なバラード “Silence”、そして ANTHRAX のエナジーを宿したスラッシュチューン “War!” と実に多彩なアルバムの中でもハイライトは11分の大曲 “The Edge of the World” でしょう。
IRON MAIDEN の長尺曲をも想起させる楽曲は、プログレッシブな展開美が白眉で実にエピカルかつドラマティック。ボーカル、ギターソロ、バッキングをよりオーガニックに誂え、しかし時にデスメタルの要素までも散りばめた世界の果ての景観は、静と動のコントラストが鮮やかに浮き彫りとなった新たな光景だったのです。それは様々なジャンルのバンドで経験を積んだフランス人の才能が、バンドのカラーと遂に溶け合った瞬間と言えるのかもしれませんね。
今回弊誌では、作品のキーパーソン Frédéric Leclercq にインタビューを行うことが出来ました!充分にファストですが、以前の良くも悪くもピーキーな DRAGONFORCE とは趣を異にする円熟の一作。同時に、今回も Jens Bogren は素晴らしい仕事を果たしたようですね。どうぞ!!

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DRAGONFORCE “REACHING INTO INFINITY” : 9.7/10

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SITHU AYE SENPAI EXPLAINS IT ALL !! 【SENPAI EP Ⅱ: THE NOTICING】


So fast forward 1 year and 7 months and I have released “Senpai EP II: The Noticing”, the follow up to the first EP. It continues to follow the story of these three girls in the style of a slice of life anime. 

“Senpai EP” から1年7ヵ月ぶりに “Senpai EP Ⅱ: The Noticing” をリリースしたよ!!この作品でも、女の子3人の物語を日常系アニメのスタイルで追っているんだ。

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(There’s a new girl in there – we’ll get to her later! Artwork by me)

RECAP OF “SENPAI EP”

To start with, a little bit of a recap of the first Senpai EP and an introduction to the characters. Senpai EP follows the adventures of 3 girls who love to play progressive metal music and is heavily influenced by slice of life anime, especially K-On!. The main character is Megumi Uehara (上原めぐみ) who is nicknamed Prog-chan (プログちゃん), a 17 year old 2nd year in high school who loves to play the guitar. All Prog-chan wants to do is to have fun and to play music with her friends. Her childhood friend (幼馴染) Hanako Todoroki (轟花子) is also 17 and in her 2nd year of high school and plays bass. She is also her class rep and top student in her year. Finally, we have Mari Matsumoto (松本まり) who is 16 and in her 1st year of high school. She idolises Megumi as her guitar playing Senpai. The first Senpai EP followed the idea of slice of life anime, where it followed a day in the life of the girls. It starts with Megumi being late for school (Oh Shit, I’m Late For School! (やだ、遅刻しちゃう!)), Mari trying to get Megumi-senpai to notice her (Senpai, Please Notice Me! (先輩、私に気付いて下さい!)) and a dream Megumi has while asleep in class where she and her friends are magical girls (魔法少女) trying to battle evil guitar frets (The Power of Love and Friendship! (愛と友情のパワー! )). I hoped to parody anime tropes, yet also convey the feeling you get while listening to anime music with this EP. It also established these three as characters that would appear again in Senpai EP II.

“Senpai EP Ⅱ” の解説を始めるにあたって、まず少しだけ “Senpai EP” のおさらいと、キャラクター紹介をしておこう。
“Senpai EP” はプログメタルをプレイするのが大好きな3人の少女が繰り広げるアドベンチャーで、日常系アニメ、特に “けいおん!” に強く影響を受けていたんだ。
メインキャラクターは上原めぐみ、17歳の高校2年生。プログちゃんと呼ばれているようにギターが大好きな女の子さ。楽しく友達と音楽をプレイしたいと望んでいるんだ。
めぐみの幼馴染み、轟花子も17歳の高校2年生で、ベースをプレイするよ。花子はめぐみと同じクラスで学期委員長。学年でもトップの成績を誇るんだよ。
そして3人目が松本まり。16歳の高校1年生。めぐみのことをギターが上手い先輩としてアイドル視しているんだ。
“Senpai EP” の1作目は、日常系のアニメにアイデアを得て、彼女たちの日常を追ったものだったんだ。EP はめぐみが学校に遅刻しそうな場面から始まるよ (Oh Shit, I’m Late For School! (やだ、遅刻しちゃう!) )。
まりはめぐみ先輩に気づいてもらおうとしていてね (Senpai, Please Notice Me! (先輩、私に気付いて下さい!))。
めぐみが授業中に居眠りしていて見た夢は、彼女と友達が魔法少女となり悪のギターフレットとバトルするものだったんだ (The Power of Love and Friendship! (愛と友情のパワー! ))。
つまり僕は、この作品でアニメのトロープスをパロディーすることで、アニソンを聴いている時の感覚を伝えることが出来ればと思ったんだよ。”Senpai EP Ⅱ” にも登場する3人のキャラクターを確立することも出来たしね。

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(The three girls, from left to right: Mari (まり), Megumi (めぐみ) and Hanako (花子). Artwork by Ulrich)

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【川口千里 / SENRI KAWAGUCHI : CIDER ~Hard & Sweet~】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SENRI KAWAGUCHI !!

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20 Years Old Drum Maestro, Sernri Kawaguchi From Japan Has Just Released Hard & Sweet Fusion Record, “Cider” !!

DISC REVIEW “CIDER ~Hard & Sweet~”

“手数姫” こと女子大生スーパードラマー、川口千里が遂にメジャーデビュー作 “CIDER ~Hard & Sweet~” をリリースしました!!二十歳の節目にメンバーを固定して望んだ成長著しい快作は、まさに茫々と広がる世界への確かな切符となるでしょう。
インタビューにもあるように、5歳でドラムと運命的な出会いを果たし、8歳であの “手数王” 菅沼孝三氏に師事を始めたという彼女の物語は、さながら現代のお伽噺のごとく素敵な奇跡と共に幕を開けました。12歳で挑んだプレイスルー動画の総再生回数は4000万回に迫り、世界的なドラム関連サイト “ドラマーワールド” では世界のトップドラマー500に撰されるなど、もはやその存在はワールドワイドに熱い視線を浴びていると言えますね。
すでにインディーズで2枚のソロ作品をリリースしている川口千里。しかしその活躍は自身のリーダー作のみに留まりません。E-girls, Guthrie Govan のライブをサポートし、Lee Ritenour とも共演。さらには 映画 “さらばあぶない刑事” のサウンドトラック、ももいろクローバーZのアルバム “AMARANTHU” にも参加するなどその素晴らしくジャンルを股に掛けた活躍により、彼女はしっかりと自身の軌跡を刻んで行っているのです。
「20歳を記念するアルバムなので、大人をイメージしつつ爽やかな若さもあるタイトル」「私のドラミングの “Hard” な部分も “Sweet” な部分も両方感じてほしい」 という理由から名付けられた3作目のリーダー作 “CIDER ~Hard & Sweet~”。アニバーサリーの冒険で彼女がキーパーソンに指名し絶大な信頼を置いたのが、Philippe Saisse でした。THE ROLLING STONES, David Bowie から David Sanborn, Al Di Meora まで数多の巨人と共演しそのアレンジを手がけて来た、フランスの偉大なキーボーディストにしてコンポーザー、プロデューサーは自身のグループ PSP の “S” を Simon Phillips から Senri Kawaguchi に翻しその力を貸すことにも吝かではありませんでした。
アルバムオープナー “FLUX CAPACITOR” は “バックトゥザフューチャー”、時代を行き来する作品の予告編でしょうか?フュージョンがスムーズジャズと呼ばれる以前のクロスオーバーなエキサイトメントとフリーダムを掲げつつ、同時に Philippe のポップなセンスを活かすクリアーなプロダクションとモダンなテクニックを内包する楽曲は瑞々しさに満ちています。ゴーストノートやハイハットの細かな刻みまで隈なく見渡せるサウンドの透明度は本当に群を抜いていますね。
Philippe のビンテージな機材から繰り出されるキャッチーなテーマは、川口千里の刻々と拍子を移すダイナミックなリズムワークに牽引され、万華鏡のように鮮やかな広がりを見せて行きます。Pino Palladino の代役として参加したカメルーン生まれのテクニシャン Armand Sabal-Lecco は、低音域から高音域までフレキシブルなベース捌きを披露し、Philippe の Jan Hammer を想起させるスリリングなソロワークと相まってギターの不在を感じさせませんね。トリオのタイトなグルーヴがダブルタイムへ移行すると、そのカタルシスはさらに加速しロックの衝動をさえ孕みながら音のユーフォリアを創造していくのです。
マリンバを使用し野性的な雰囲気を演出する “Wupatki”、彼女自身が作曲を行ったロマンチックなバラード “Longing Skyline” を挟んで訪れる “Do Do Ré Mi” はアルバムのハイライトと言えるかもしれませんね。ジャズスタンダードの古典ようにスタイリッシュに幕を開ける楽曲は、突如その舞台を現代的なフュージョンへと移します。アルバムに収録するのが初めてとは思えないほど堂にいった4ビートから6/8拍子へと切り替わるその魔法の瞬間はリスナーに音楽の “楽しさ” を運ぶはずです。”間”を大切にしたという彼女の言葉通り、スティック一閃、バンドがピタリと完全に音を止める瞬間はあまりにクールで川口千里というコンダクターの実力を存分に見せつけています。
さらに 「現場での化学反応が想像以上に凄かった」 と語るように、楽曲終盤のサンバをベースとした、ドラムスがリード楽器に思えるほど壮絶なインタープレイは、”Ginza Blues~intro~” や “Senri and Armand Groove” と並んで “手数姫” の面目躍如であり、同時にメンバーの個性、そしてトリオのケミストリーが結実した得難き刹那だと感じました。
インタビューでフュージョンを音楽の “交差点” と位置づけた千里さんの想いを乗せたアルバムは、奇しくも個性的な三者の道が交差した証である “In Three Ways” でカラフルに幕を閉じました。「単なるスムーズジャズじゃない」という言葉に込められたプライドをしっかりと実現した充実の51分。
今回弊誌では、川口千里さんにインタビューを行うことが出来ました!世界を見据えつつ、同時に現役女子大生らしいかわいらしい部分も垣間見えると思いますよ。どうぞ!!

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SENRI KAWAGUCHI “CIDER ~Hard & Sweet~” : 9.7/10

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NEW DISC REVIEW【JASON RICHARDSON : I】INTERVIEW WITH LUKE HOLLAND, JAPAN TOUR SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH LUKE HOLLAND !!

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Jason Richardson & Luke Holland, One Of The Most Talented Young Guns Will Come To Japan With Game Changing Debut Record “I” !!

DISC REVIEW “I”

24歳と23歳。瑞々しくハイセンスなモダンメタルフロンティアが輩出した俊英2人、Jason Richardson と Luke Holland がタッグを組んだ宿命の別世界 “I” のリリースは、至大のインパクトと共にユニットを遥かなる日いづる国、日本へと導くことになりました。
若干20代前半にして、2人の履歴書はすでに驚くほど充実しています。バークリー入学を蹴って ALL SHALL PERISH でツアーを経験し、BORN OF OSIRIS, CHELSEA GRIN では名作のキーパーソンとなったギタープレイヤー Jason Richardson。最先端の10指が紡ぐ印象的でコズミックなフレーズの数々は、まさに Djent/デスコアミュニティーの発展に欠かすことの出来ないフラッグシップであると言えますね。
一方のドラマー Luke Holland は、インタビューにもあるように、16歳で YouTube チャンネルを開設しセルフプロモートを開始します。今日までに総計で5500万ビューという驚くべき数字を叩き出した彼のプレイスルーカバー集は、Djent, メタルからプログ、エモ、パンク、ポップに EDM までまさに百花繚乱な世界観を独自のアレンジメントと精緻なテクニックで華麗に彩り、今では自らの価値を証明する Luke の貴重な名刺がわりとなっているのです。
実際、動画を見た TEXAS IN JULY から代役を頼まれ、ついには2013年に THE WORD ALIVE の正式メンバーに任命されたのですから、例えば日本の川口千里さんにも言えますが、プレイスルー動画の持つ力、インパクトは音楽シーンのあり方を変えて来ているのかも知れませんね。
“究極的には毎晩ソールドアウトのスタジアムでプレイしたい” と語る Luke が次なるチャレンジとして選んだ “I” は、同時に Jason Richardson がただギターマイスターであるだけでなく、コンポーザーとしても多様かつ至妙であることを証明した一級品に仕上がりました。Luke の言葉からは寧ろ、コンポーザーとしても優れていることが、参加を決意させたようにも読み取れますね。
ダークでシンフォニックな世界観を携え、難解なリズムアプローチと美麗なリードプレイがアトモスフィアの波を掻き分ける “Omni” でアルバムは幕を開けます。不安を煽るようなオーケストレーション、ギターとシンセサイザーの一糸乱れぬ華麗なダンス、そして見事にコントロールされたチャグワークは確かに BORN OF OSIRIS の設計図をイメージさせ、まさに楽曲が Jason Richardson を象徴する”I”であることを宣言していますね。
勿論、現在2人だけでツアーを行っていることからも分かるように Jason と Luke のコンビネーションも抜群。ギターの細かなフレーズまでユニゾンしてしまう Luke の繊細でアイデア豊富なドラムワークはアルバムを確実に一段上の領域へと誘っています。Luke の THE 1975 や THE CHAINSMOKERS をメタルと同列で愛してしまう軽快さこそ彼を際立たせているのです。
粒立ち群を抜いているピッキングの驚異的な正確性、選択する音や音符の意外性、タッピングとオルタネイト、スイープを巧みに使い分けるアルペジオの豊かなバリエーション、そしてストーリーを持った構成美。ソロワークに目を移せば、すでに Jason が世界のトップであると誰もが確信するはずです。メカニカルなシュレッダーのイメージが強いかも知れませんが、”Omni” 中間部の静謐なパートで炸裂するベンド、ビブラートのエモーションは実に扇情的で崇高とさえ表現したくなりますね。全く非の打ち所がありません。
PERIPHERY の Spencer Sotelo がゲストボーカルで参加した “Retrograde” からさらに “I” の世界は広がっていきます。これまでスクリームとのコンビネーションがほとんどだった Jason のギターですが、クリーンボーカルとの相性も決して悪くはありません。Spencer の突き抜けるように爽快でキャッチーなトレードマークは Jason のポップセンスをも見事に開花させ、VEIL OF MAYA の Lukas Magyar, PERIPHERY の Mark Halcomb というオールスターキャストで贈る名曲 “Fragments” にその成果を結実させています。
ポストロックやクラシカル、ブルースにサーフロックの感覚すら包み込んだ “Hos Down” の多様性から生じる魔法はまさに別格です。現代の Guthrie Govan と形容したくなるほどマジカルでエクレクティックな奇跡のコンポジションは、Jason の未来、 “Next Stage” にも多大な期待をいだかせてくれますね。
Nick Johnston, Rick Graham など様々なゲストを迎え、才能が時に融合し、時に火花を散らしたアルバムは、巨匠 Jeff Loomis とのクラシカルな乱舞 “Chapter Ⅱ” でまさに “Ⅱ” の存在を予感させつつ幕を閉じました。
今回弊誌では、7月に来日が決定した Luke Holland にインタビューを行うことが出来ました。POLYPHIA, さらには先日インタビューを掲載した12歳の天才美少女ギタリスト Li-sa-X も出演しますよ。どうぞ!!

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JASON RICHARDSON “I” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ART OF ANARCHY : THE MADNESS】BUMBLEFOOT SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH RON “BUMBLEFOOT” THAL !!

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Mega-Super Group, Art Of Anarchy Seek To Reinvent Themselves From 90’s Glory, With New Masterpiece “The Madness” !!

DISC REVIEW “THE MADNESS”

90’s~00’s にかけて人気を博した “オルタナティブメタル” の空気をリフレッシュし、見事現代へと再誕させる US スーパーグループ ART OF ANARCHY が、傑出した2ndアルバム “The Madness” をリリースしました!!極上のコンポジションに5人の個性が溶け合った揺るぎなきロックのメタモルフォーゼは、極限まで多様化したシーンに王道の何たるかを見せつけています。
ART OF ANARCHY は、ギターとドラムスをプレイする双子の Votta 兄弟と、GUNS N’ ROSES で気を吐いていたマエストロ Ron “Bumblefoot” Thal が意気投合し始まったバンドです。そこに、STONE TEMPLE PILOTS や VELVET REVOLVER で活躍した天賦のシンガー Scott Weiland, DISTURBED の切れ味鋭いベースマン John Moyer が加わることで、大きな注目と期待を集めるメガアクトが誕生したのです。バンド全員のレコードセールス(当時)は1億5000万枚と言うのですから、数字の面からも彼らの凄みは伝わるでしょう。
セルフタイトルのデビュー作をリリース後、Weiland はバンドを脱退。アルバムをプロモートするツアーを拒否した彼は結局、人生を通じて苦しんできた薬物との戦いに敗北し、命を落としてしまいました。
バンドは Weiland の後任に CREED の Scott Stapp を指名します。実は2014年には Stapp も薬物問題、さらには路上生活にまで転落するなど負の話題で世間を騒がせましたが、彼は挑戦し困難に打ち勝ちました。そして Weiland と同様、まさに時代の寵児として活躍した Stapp の加入は再度バンドのエンジンに屈強なエナジーを注ぐ結果となったのです。
“The Madness” には、ただスーパーグループという事実以上のケミストリー、そしてメッセージ性が間違いなく存在します。Ron がインタビューで語ってくれた通り、Votta 兄弟のアリーナロック、DISTURBED の鋭利でマスマティカルなリフワーク、CREED の瑞々しく雄大なメロディー、そして Bumblefoot、もしくは “Chinese Democracy” の型破りで独創的なアイデア全ては淀みなく渾融し、濃密なマグマとなって作品を流動します。
オルタナティブが王道へと以降した21世紀初頭のソリッドな空気を DNA に深く刻んだ5人の古兵たちは、しかし同時に時代の推移により”オルタナティブであること” から遂に解放され、その雄弁なコンポジション、華麗なテクニック、そして唯一無二のタレント性を制限なくここに開花させているのです。
また、アルバムタイトル “The Madness” が表象するように、作品にはまさに Stapp が苦しんできた”狂気”がそのまま描かれています。新たなアンセム “1,000 Dgrees” では「僕自身が最悪の敵だ。僕は呪われている。」と当時の地獄を独白し、至上のバラード “Changed Man” では「もう一度チャンスをくれないか?僕は変わったんだ。家に帰る時が来たんだよ。」と最愛の妻に過去の自分との決別を告げます。果たして妻は “With Arms Wide Open” で待っていてくれたのでしょうか?
とにかく、”僕たちはこのアルバムを Scott、そして同じチャレンジに直面する人たちの成功に捧げることとしたんだ” と Ron が語るように、作品はアメリカが抱える大きく暗い闇に対する贖いとして生を受けました。自身の魂を声と詩に宿した Stapp の歌唱には深みとリアルが込められ、その美しく、切なく、雄々しく、そして芳醇なメロディーは懺悔であり赦しであり、希望の灯火でもあるように聞こえます。
アルバムの主役は間違いなく Stapp ですが、Ron のトリッキーでカラフルなギターワークが作品にクリエイティブで類まれなる神通力のようなフックをもたらし続けていることは記して置かなければなりませんね。
指ぬき、フレットレス、ロングスケールなど様々な武器を持つ “Bumblefoot” ですが、インタビューでも語ってくれたように彼は決して楽曲の破壊者ではありません。ソロプロジェクト、ガンズ時代を通して歌ものに強い拘りを持ち、エモーショナルで耳に残りリピートを誘うギターフレーズを追い求めてきた彼の真価は “Somber” のアメジストのように燐光を発するソロパートに集約されているのかもしれませんね。
王道とは何か。彼らの”王道”の先には必ず唯一、アリーナでシンガロングし、拳を振り上げるファンの姿が透けて見えます。彼らにはもはやトレンドを意識する必要などありません。ただ、キャッチーでフックと起伏に満ちたアルバムは、エゴを廃し全てが楽曲とストーリーに捧げられ、世代を超えて愛される魔法を備えた新たな栄光への幕開けであると信じます。
今回弊誌では、Ron “Bumblefoot” Thal にインタビューを行うことが出来ました。余談ですが、再発が決定した彼の2ndアルバム “Hermit” もぜひ併せて聴いていただきたいと思います。変態としてのみ語られがちな彼ですが、FAITH NO MORE や RAGE AGAINST THE MACHINE のインテンスと独特のポップセンス、そしてユニークなギターファンタジーをミックスした極上のコンポジションが炸裂した名作。どうぞ!!

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ART OF ANARCHY “THE MADNESS” : 9.8/10

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