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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【KIBERSPASSK : SEE BEAR】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH KIBERSPASSK OF BABA YAGA !!

“See Bear” Is a Song About My Homeland, My Native Land. A Song About The Pristine Beauty And Greatness Of Siberia. I Am Very Inspired By The Pure Siberian Nature, Endless Expanses And a Huge Blue Sky.”

DISC REVIEW “SEE BEAR”

「”See Bear” (シベリアとかけている) は、私の祖国、生まれ育った土地についての歌よ。シベリアの原始的な美しさと偉大さを歌った曲。私は、純粋なシベリアの自然、果てしなく広がる大地、大きな青い空にとても刺激を受けているの。愛するシベリアをありのまま見せたかったの」
生い茂る針葉樹林、見渡す限りの永久凍土、そして果てのない空。シベリアのタイガに訪れる長い夜を、KIBERSPASSK はハードなダーク・エレクトロで語り、音とし、世界へと発信します。凍てつく寒さと闇の帳には、ひりつくようなインダストリアルとロシアの厳粛なフォークロアを組み合わせたユニークな音化粧がよく似合います。
「私は NYTT LAND という、世界的にもかなり有名なバンドをもう一つやっていて、そこではシャーマニックなダークフォークを作り、古代楽器を演奏し、シベリアのタイガにおけるシャーマンの歌を歌っているのよ。だから、KIBERSPASSK は、私の別人格なの」
冬にはマイナス30℃を超える極寒の地。カザフスタンから100キロ、アルタイ山脈の麓にひろがる西シベリアの草原がバンドの故郷です。そんな場所で Baba Yaga こと Natalya Pahalenko と夫の Anthony はカンテレやタルハルパという古の楽器を操り、北欧神話やシベリア先住民のシャーマンから薫陶を受けた “シャーマニック・ダークフォーク” を奏で世界的な成功を納めます。KIBERSPASSK とはそんな彼らのシベリアという厳しくも美しい環境に特化した別人格。今にも “死にかけた” 村の名前を抱きながら。
「私はずっと自分のやり方でボーカル・テクニックに取り組んできたわ。主な方向性は、伝統的なロシアのフォーク・ボーカル、北欧のヨイク (サーミ人の伝統歌唱) 、トゥバ共和国の喉歌よ」
KIBERSPASSK の特別な音楽の核となるのは、間違いなく Baba Yaga の歌唱です。Baba Yagaはその名の通り異能の力を持つ魔女でシャーマンかもしれません。ヨイクで天使のメロディーに荒々しい異教の呪いの声をかけたり、ホーミーで草原や森林に邪教の声を響き渡らせるのですから。そしてその歌声は、MINISTRY を想起させる攻撃的で無機質なインダストリアルの背景に独特の夜と自然、呪術的アトモスフィアをもたらすのです。
「シベリアの先住民族のフォークロアも同様だけど、ロシアの伝統音楽は私たちの祖先の精神的・文化的遺産のルーツを保存する非常に深い階層なの。本物の感情と個性を持った、とても美しく壮大な音楽よ。とてもインスパイアされるわ。私はもともと歴史家で、自分の土地の歴史や神話を研究し、古代の人物を自分の歌の中で蘇らせることが好きなのだから」
インスピレーションの源は、シベリアの環境や景色はもちろん、スラブ神話の暗黒面にまで及びます。キキーモラ (働き者の願いを叶え怠け者を喰らう幻獣)、ドモヴォーイ (家族を守るため悪い精霊や侵入者の殺害も厭わない家の妖精)、バーバ・ヤーガ (森に住む妖婆。骨と皮だけにまで痩せこけて、脚に至ってはむき出しの骨だけの老婆の姿をしている。人間を襲う魔女のごとき存在)、リホ (小さくて毛深い生き物) など、ロシアの子供たちが生まれたときから知っているキャラクターたち。
古い集落が消えつつあるこの土地では、シベリアの精神と真の神秘性が保たれていて、今でも神話と現実の境が曖昧です。この地で生まれ、生活し、音楽を創造する KIBERSPASSK。だからこそ、その音楽に太古の息吹と孤高、霊妙、荘厳、超自然、そして奇々怪界を持ち込むことが可能だったのでしょう。革新がもはや珍しくなってしまったジャンルに、新鮮で厳しい寒風を吹き込みながら。
今回弊誌では、Baba Yaga にインタビューを行うことができました。MV に登場する印象的なダンサーは Pahalenko 夫妻のの娘さんとの情報も。謎が深まりますね。「Babymetal は実に興味深いバンドよ!彼女たちのショーとエナジーが大好きなの。そういった要素のいくつかは、おそらく KIBERSPASSK に影響を与えているわ」 どうぞ!!

KIBERSPASSK “SEE BEAR” : 9.9/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【WARDRUNA : KVITRAVN】


COVER STORY : WARDRUNA “KVITRAVN”

“Wardruna’s Music Is a Way Of Connecting To Those Energies In The Absence Of Nature. It Becomes a Bridge. It Becomes a Way Of Getting In Touch With These Things I Think a Lot Of People In Modern Society Are Feeling a Loss Of, Or a Longing For. Some Form Of Connection To Our Surroundings.”

THE RISE OF NORDIC FOLK

古き良き道を守り続けてきたノルウェーの WARDRUNA は、遠い過去や文化の大仰で滑稽な遺物だと思われるかもしれません。しかし、彼らの音楽が、実際は今日の自分たちを理解する鍵となるのかもしれません。実際、スカンジナビアに行けば、北欧のフォークミュージックが鉄器時代のヨーロッパの公海にバイキングが最後に乗り込んで以来、最大のブームを記録しているのですから。
WARDRUNA は明らかにそのムーブメントの先頭に立っています。彼らのリリシズムの根底には神話や伝説があり、その壮大で瞑想的なサウンドは “Game of Thrones” の中でも特に暴風のエピソードにおいて違和感を感じることはないはずです。彼らのニッチな部分は、毛むくじゃらなジェイソン・モモアと、あごを掻きむしるメタルヘッドの間へ進入しているのです。
WARDRUNA という名前は「ルーンの守護者」と訳され、ニッケルハルパ、ヤギの角、骨笛、西暦500年のドイツ製竪琴のレプリカを使って音楽を奏でます。フロントマンの Einar Selvik は、長い格子状の顎ひげを生やし、ヴァイキング時代のシャープな髪型を整え、凍てつくようなフィヨルドの風景の中で、裸足で自然への頌歌を厳粛に歌い上げるのです。驚くべきことに、”Lyfjaberg (Healing-mountain)” のビデオは1000万回の再生回数を突破しています。
Einar は自らの音楽について「シリアスである必要はないし、深遠である必要もない」と語ります。明るい目をしていて、カリスマ性があり、誠実な人物。シニカルな時代においても、彼の魔法に影響される余地は十分にあるでしょう。彼は、時代や世界を超えて語りかけるような音色、モード、ドラムパターンを採用しています。
「ある意味では、原始の音は俺たちのDNAの中にあると思うし、世界的なものだ。だからどこの国の人であっても、つながることができると思う」

セカンドアルバム “Yggdrasil” がリリースされたあと、WARDRUNA の音楽はヒストリーチャンネルのテレビ番組 “Vikings” で大きく取り上げられ話題となりました。この番組のプロデューサーは最終的に Einar に直接連絡を取り、”Vikings” の シーズン2のサウンドトラックで作曲家の Trevor Morris (The Borgias) とのコラボレーションを依頼したのです。
「音楽業界で成功するには、まず良い音楽を作ること、そして次に聞かれることが重要なんだ。」
少なくとも、WARDRUNA はプログレッシブな音楽を作っています。過去を描き、現在を表現し、未来の予想図を提示する。博物館のケースから古い楽器を取り出しながら。実際、太古の楽器が奏でる刺激的な音に耳を傾けると、多くの海を越える大航海のイメージが浮かんできます。”Assassin’s Creed” のメーカーも確かにそう考えたようで、人気ビデオゲームの最新作 “Valhalla” の音楽に Einar を抜擢しています。新進気鋭の AURORA との共演も実現。
明らかにステレオタイプなポップスターというよりも、頑固な学者タイプである Einar は、北欧の民俗学を掘り下げ、雄鹿、烏、狼への頌歌や、癒しの “薬の歌” と呼んでいる音楽を披露します。新しい歌を研究する際には考古学者、歴史家、言語学者に依頼し、オックスフォードからデンバーまで大学で自らの仕事について講義まで行ってきました。
「自然との関係、お互いとの関係、そして自分自身よりも大きな何かとの関係において、古い文化を利用すること。それが昔話や昔の音を掘り起こす理由だよ。俺は、過去から学ぶ価値があると感じるものに声を与えているだけだからな」
ではなぜ、Einar は古代北欧の神話に惹かれたのでしょうか?
「子供の頃に古代北欧の物語や歴史に心を奪われたんだ。白と黒、善と悪といった一神教的な世界観とはとても違っていたから。それははるかに複雑なものだったよ。10代の頃には、古い伝統の秘教的でスピリチュアルな側面への興味がさらに深まりまったね。でも、それらを音楽的に解釈してくれる人はいなかった。だから俺はそれを試してみたいと思ったんだ。個人的にもっと意味のあることをしたいと思っていたんだよ。古い詩をただ暗唱するだけではなく、その知識を統合することが重要なんだ。」


Einar にとってルーンはどういう意味を持つのでしょうか?
「”ルーン “という言葉には様々な意味がある。書かれた文字の表音系だけじゃなく、秘密、知識、技術、秘教的な知恵、魔法の歌を意味することもある。フィンランドの民間療法の伝統では、魔法の歌は常にルーンと呼ばれているんだ。ルーンの秘密を知ることは、人が持つことのできる最高の知識と考えられていた。だからこそ、俺はとても尊敬の念を持ってアプローチしているんだよ。
ノルウェー語、アイスランド語、アングロサクソン語の3つの異なるルーンの詩がある。それらはことわざやなぞなぞのようなもので、教育するために作られているんだ。その詩を音楽的に表現するにあたって、俺の創造的なコンセプトは、独自の前提で解釈することだったんだ。
つまり、白樺の木を象徴するBのルーンであれば、森に出て白樺の木で遊ぶ。水をテーマにしているのであれば、川の真ん中に立ってボーカルを全部やりながら、水の音を使う。そういった場所を捉えて、それを音楽に反映させていくことだね。」
Einar は自らを「マルチ・ディシプリナリアン」と表現しています。ワークショップで教えたり、レクチャーを行ったり。そして、歴史的に言えば、「確固たる地に立つ」ように努力しています。創造する際、彼は根のない木に登ることに抵抗があるのです。
同時に彼は、教養と素朴さのバランスを求めています。ただ古代の管楽器の起源を理解するだけで、子供のように初めて演奏することの驚きと喜び(そして失敗)を失って何の意味があるのでしょうか?
もちろん、WARDRUNA の音楽は北欧が誇るブラックメタルにも影響を受けています。あの GORGOROTH の元ドラマーという経歴は伊達ではありません。
「スカンジナビアの音楽は、この場所の環境に非常に影響を受けている。非常に重苦しく、メランコリックでダークだけど、俺たちはそこに美しさを見出しているんだ。だから伝統音楽とブラックメタルにも当然通じる所はある。初期のブラックメタルは伝統的な調性に非常に影響を受けているし、もちろんそのテーマは神話やフォークロアなんだからな」

とはいえ、Einar にとってメタルバンドは “仕事” でしかなかったようですが。
「俺はメタルのバックグラウンドを持っているけど、GORGOROTH のようなバンドはただの仕事だったんだ。それが非常にパワフルな芸術表現であることを除けば、自分の創造的な声を込めるようなものではなかったからな。GORGOROTH で Kristian と知り合った時、二人とも異教徒で、自分たちのルーツや歴史に非常に興味を持っているという共通点を見つけたんだ。だから WARDRUNA を始めたとき、彼を入れるのは自然なことだったよ。最初の頃から、彼は俺のアイデアを跳ね返してくれた男だった。一緒にコンセプトを作っていったんだ。メタルの世界でこれほど多くの人が WARDRUNA に興味を持っているのを見て、ちょっと驚いたよ。反響は圧倒的だった。」
ただし、このネオフォークの信者たちはロックダウンの間、教会を燃やすかわりに、森の中で小さなミードを作ったり、歴史を研究していたのですが。ブラックメタルの現在地については、どう思っているのでしょうか?
「俺は個人的な思いからこのプロジェクトをやっている。それ以外はすべてオマケさ。食品にしても音楽にしても、何かが工業化された途端に栄養がなくなってしまう。音楽に栄養を求める人が増えていると思う。以前のブラックメタルは音楽の背後にある意図を重視していて、テクニックや音質は二の次だった。でも、今ではテクニックが重視されていて、どれだけ良い音を出せるかが重要になってきているよね。だけどね、音楽には、意味を運ぶ全くユニークな能力がある。音の力、言葉の力、そして自分の意志と声の力は、北方の秘教的な伝統の中で重要な要素なんだよ。」
ENSLAVED の Ivar Bjørnson とのコラボレーションはまさにメタルとノルディックフォークの融合でした。
「最初のコラボレーション SKUGGSJA の依頼を受けた時、その前提は『Enslaved meets Wardruna』ということになっていたんだ。もちろん、それは非常に魅力的でクールなものだった。それから数年後に別の作品 (Hugsja) を一緒に書く機会があったんだ。 もっとアコースティックなギターとドラムを使って、より自然な風景に持っていきたいと思ったんだ。今までとは違うセットアップでね。完全な WARDRUNA や ENSLAVED ではなく、その中間のようなものさ。でも WARDRUNA よりギターが主体だ。」

WARDRUNA のニューアルバム “Kvitravn” とは、「白いカラス」を意味し、世界と世界の架け橋の象徴としてそのカラスを使用しています。アルビノの精霊動物は、多くの文化圏の神話に登場します。北欧の伝統では、カラスのフーギンとムニンはオーディンに属し、思考と記憶を象徴しています。
アルバムのストリーミングイベントでは、Einar がスカルド詩に基づいた新曲 “Munin” のソロ・ストリップバック・バージョンを披露しました。
「誰の顔も見えないがパフォーマンスをする。スカルドは北欧の吟遊詩人。彼らは大きな力を持っていた。彼らは物事に名前を付けることができ、そうすることで物事をコントロールすることができたんだ。スカルドは人々の生きた記憶を持っていた。彼らは過去と現在の間の 媒介者としての役割を果たした。オーディンは詩の神だよ」
Einar “Kvitravn” Selvik。自らの呼称の一部を冠した作品は、これまでよりもパーソナルなものにも思えます。
「必ずしも個人的なものだとは言わないよ。アルバムには自分のアーティスト名のバリエーションが入っているけど、自分の名前を冠したアルバムではないからね。というよりも、最初にその名前を名乗ろうと思ったきっかけと同じものに飛び込んでいると言ってもいいだろうな。
ある種のことをより深く掘り下げているとは思うよ。それはおそらく、様々な伝統や自然との関係、そして自分自身をどのように定義しているのかといった人間の領域に焦点を当てているのだろう。
多くの曲は俺の視点から見た曲なんだ。そういう意味では、もちろん少し親近感がある。だからこそ、より個人的なアルバムとして受け止められるのかもしれないけどね。」

動物は Einar にとっていつもインスピレーションをもたらしてくれる源泉です。
「もちろん動物は、トナカイであれ熊であれヘラジカであれオオカミであれ、カラスやヘビであれ、インスピレーションを与えてくれる。このアルバムにはオオカミも登場しているしね。
その曲は、動物と人間の関係をロマンチックにしようとしているわけではないんだけど、俺らが輪になっていた頃に戻ろうとしているんだ。ここノルウェーでは基本的にすべてのオオカミを殺してしまった。多くの人が彼らを殺したいと思っていたからね。
俺ははこの問題を理解している。争いの全体像も理解している。双方の立場を理解しているんだ。自然界で起きている全ての問題は、生態系の一部を取り除けばオオカミだけではなく、自然全体に影響を与えることになる。全体のサイクルが不均衡になるんだよ。俺たちは自然の保護者であり、管理者でなければならないからね。
オオカミを殺すことは有効な解決策ではない。クマやオオカミ、そしてこれらの肉食動物と一緒に暮らすことには、犠牲が伴うことを理解しなければならないんだ。犠牲があるとすれば、それには価値がある。真の価値がね。」
“Kvitravn” で Einar は、記憶の声のように、また21世紀の私たちの良心のように、音の葉に舞い降ります。重要なのは、これが単に歴史の再演ではない点でしょう。彼にとっては、「自分のルーツを知ることで方向性が見えてくる」のです。
「自然が語りかけてきても、俺たちはその声に耳を傾けなくなった。このアルバムは、自然と再接続するための心の叫びなんだよね。それはロマンチックな考えではないよ。古代では、人類は自然と戦い、自然をコントロールしようとしていたんだから。今では、自然からほとんど完全に離れてしまった。2020年の春、一般の人たちが緘黙していたことに改めて気づかされたね」

WARDRUNA の音楽は、”ペイガニズム” が何を意味するのか、それが過去の意味とどのように異なるのか、という私たちのロマンチックな概念と、自然の不在に対する私たちの “憂鬱” との間の “摩擦”(Einar が繰り返し使う言葉)を探求しているのです。
Einar は野外で歌を「狩り」に出かけます。彼は音楽的に “文盲” であると自称し、直感的に曲を作ります。そしてその直感をドラマチックな自然の空間で演奏するのです。Einar は WARDRUNA の音楽を「自然の不在の中で、自然のエネルギーに接続する方法」だと考えています。
「架け橋になるよ。現代社会では多くの人が自然を失い、憧れを感じていると思う。環境とのつながりのようなものをね」
実際、WARDRUNA の最新作には、ノルウェーの森の香りが漂っています。このアイデアはバンドのヴォーカリストでアレンジャー Lindy-Fay Hella が考え出したもの。彼らはスカンジナビア北部の古代サーミの文化に触発された深い政治的な源を持っていて、ノルウェー、スウェーデン、フィンランドが彼らの土地の所有権を主張したことにより歴史的に嫌われてきた先住民族です。彼女自身、サーミの血統とリンクしています。
「サーミの人々が不当に扱われてきたことは、アメリカ先住民の歴史と似ているのよ。私の曾祖母がどこから来たのか、自分が誰であるのかを隠さなければならなかったという事実に、私は怒っているの。だから、私の歌い方に彼女の一部が含まれているのは正しい感じがするわ。」
都市景観の中で聴く WARDRUNA も不思議な感覚をもたらしますが、やはり自然の中ではより一層引き立ちます。時代を超越した音楽かもしれませんが、自然環境に根ざしていることが相乗効果を生み出すのでしょう。潜在的に Einar 頭の中では “2+2が5になる” のかも知れませんね。

WARDRUNA はドローン、重なり合う周波数、捻くれたビートなど、何世紀にも、何千年にもわたって儀式に使われてきた音楽のテクニックを使っています。それこそ、石器時代のシャーマンから中世の教会音楽まで。しかし、その目的は何でしょうか? Einar は自らをを説教者とは見なしたくないが、核心的な信念があると語ります。
「俺は、自然をもっとアニミズム的に捉えれば、全員のためになると強く信じている。俺たちは自然の神聖さを取り除いたとたんに、種としての道を踏み外してしまったと思うよ。それは必ずしもスピリチュアルなことではないんだ。というよりもアティテュードだよ。霊的な人であろうと宗教的な人であろうと、そうでない人であろうと、当てはまるからね。俺たちが支配者ではなく、自然を神聖なもの、重要なもの、俺たちの一部であると考える姿勢が大事だよね」
基本的に、アニミズムとは、私たちを取り巻く自然環境の生命力と固有の原動力を探求すること。では彼の宗教観はどのようなものなのでしょうか?
「まあ、どんな自然をベースにした宗教にも、もちろんその土地に応じた多様性はあるだろうけど、俺たちの伝統はこの土地で作られ、形作られている。俺たちの川、俺たちの自然、俺たちの森によってね。君たちの伝統もそうだろう。だから、結局概念は全く同じなんだ。俺たちは間違いなく、様々な意味で同じ伝統を受け継いでいると思っている。ラッピング、飾り付けが少し異なるだけでね」
古代の楽器を蘇らせること。それもアニミズムの一環です。
「自然楽器は、これまで扱ってきた他の種類の楽器とは違うんだ。ある意味では生きていて、自分の意志を持っている。昔の方法でフレームドラムを作っていた時は、動物の皮を剥いで、なめして、皮を削っていたんだからね。
それはとても単調で時間のかかる作業だけど、ゆっくりと新しい形で動物を生き返らせていくのはとても美しいことだよ。このプロセスを経て、自分の楽器をより個人的でアニミズム的に見ることができるようになったんだ。」

例えば地理的にも、歴史的にもヴァイキング文化の中心の一つスコットランドで撮影された映画 “ヴァルハラ ライジング”。この映画の視覚的な一面だけを捉えて、大衆向けのハリウッド作品と論じることは簡単です。一方で、原始的な力がより “先進的” なものに立ち向かう時の寓話、文化的帝国主義に対するアンチテーゼとして受け止めることも可能でしょう。
同様の視点で、メタルのリスナーは WARDRUNA を受け止めているはずです。そこに大仰な滑稽さと、深遠な知性が感じられるから。そして、国境のないメタルが原始の力や太古の歴史に惹かれる理由もそこにあるのかもしれませんね。
「俺は東洋や他の多くの場所に行って、俺たち自身の伝統音楽に非常によく似ているものを見つけることができた。それこそが、本当に古くて原始的な音楽表現がより深いレベルで俺たちに語りかけてくる理由の一つだと思うんだ。言語の壁や文化の壁を超えているように見えるし、リスナーが非常に多様であるという事実。それに、年齢や、リスナーが聴く他の種類の音楽の観点からも。国境を越えているんだよ」
Einar は、WARDRUNAの音楽はヴァイキング時代(西暦780年から1070年まで)と結びついているだけでなく、さらに遡って1万年前まで体験できると強調しています。当時、イギリス諸島はドガーランドと呼ばれる大陸によってヨーロッパ本土とつながっており、初期の中石器時代の狩猟採集民は、この場所を北上して移動してきたこともその理由の一つでしょう。
約8,200年前に津波がドガーランドを一掃したと長い間考えられていました。これは、ノルウェーの海岸沖で起きた「ストレッガ」と呼ばれる海底地滑りによって引き起こされました。最近の研究では、このラグナロクのような出来事は、土地全体とその人々を一掃するものではなかったかもしれないことが示唆されています。それどころか、その後何千年にもわたって気候変動と海面上昇がゆっくりと進行し、残りの群島を水没させてしまったのです。


つまり、Einar が自然に耳を傾けるとき、彼は自然がどのように変化しているかを追跡します。現在の気候変動の緊急事態は、”Kvitravn” のメッセージから切り離すことができません。アルバムのクライマックス ”Andvarljod’(’Song Of The Spirit-Weavers’) ” は、北欧神話に登場する北欧人が運命を司ります。WARDRUNA はこの曲の短縮されたスカルディックなパフォーマンスを冬至の日にリリースしました。占星術的に大きな変化をもたらす日に。Einar が「夏が生まれる」と表現したように、その最も暗い日に、この曲は潮の流れが変わる可能性を予告しています。
アルバムに収録されている10分間のバージョンでは、Einar が女性の声のコーラスをバックに、新たな高みに向かって歌い上げます。彼は、「自分の中にも共鳴するような音が出てくる。そうすれば、何かを成し遂げようとしていることがわかるんだ」
HEILUNG, MYRKUR, SKALD, Danheim。かつて古代文明が自然界に対して感じていたつながりが、ネオフォーク、ノルディックフォーク、ダークフォークと呼び方は様々ですが、新鋭を結びつける骨なのかもしれませんね。
「初めて WARDRUNA と仕事を始めた時から、自然との親近感を感じていたの。」と Lindy-Fay Hella は説明します。
「自然の中には、良いものだけでなく、醜さや畏怖といったコントラストも受け入れる余地があるわ。今のところ、私たちの荒々しいサウンドは、スカンジナビアの荒野に根ざしているのよ。そろそろヒゲを生やし始める時期かもしれないわね。」

WARDRUNA のコンサートで Einar が観客とコミュニケーションをとることはほとんどありません。
「WARDRUNA では、曲と曲の間にコミュニケーションをとることは、重要ではないんだ。最後の最後にやるだけさ。それが唯一のコミュニケーションの場なんだ。俺にとってコンサートは儀式だから。1時間から2時間の間に、神聖な空間を作るということだよ。
そこでは人々は音楽とつながり、儀式のように音楽に没頭することができる。教会やモスクなどに行かない人たちは、神聖で厳粛な空間やミーティングを得ることができないと思うからね。
宗教的なものやスピリチュアルなものである必要はないんだよ。俺たちの目標は、ある意味で自分よりも大きな何かと繋がることができるような空間を作ることだから。
それが音楽であれ、周りの人たちであれ何でもいいし、自然そのものでもいい。俺たちの音楽は、北欧の神話や遺跡などを映し出しているけど、本質を突き詰めていくと、核となるのはいつも自然なんだよね。自然とつながるための入り口として捉えている人が多いと思うんだよ。」
そうして、WARDRUNA のコンサートには様々な民族、様々な趣向、様々な年齢のファンが集まります。
「クラシック音楽が好きな人たちが、メタルファンと同じショーに来ているのを見るのはとても魅力的だよ。美しい光景だね。俺たちの音楽が、言語やジャンルを超えて国境を越えていく能力を持っていることは本当に素晴らしいことだと思うよ。ある意味、どの音楽ジャンルにも当てはまらない音楽なんだ。いろんな人に訴えかけることができるからね。」

参考文献: THE QUIETUS:A Kind Of Magic: Wardruna Teach Us To Laugh At Ourselves Again

GREEN GLOBAL TRAVEL:INTERVIEW: WARDRUNA REVIVES ANCIENT NORDIC FOLK TRADITION

METAL RULES: INTERVIEW WITH EINAR SELVIK

AMNPLIFY: INTERVIEW WITH EINAR SELVIK FROM WARDRUNA

SMASH:有料配信ライブ”Wardruna’s virtual release show

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EXCLUSIVE INTERVIEW 【ANNA MURPHY : ex-ELUVEITIE, CELLAR DARLING】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ANNA MURPHY OF CELLAR DARLING !!

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Anna Murphy, Gorgeous Muse Talks About Her Ex-Band ELUVEITIE, New Band Cellar Darling, And Solo Project !!

スイスが誇る Folk / Melodic Death Metal バンド、ELUVEITIE。ヴァイオリン、バグパイプ、ホイッスル、ハーディー・ガーディーといった伝統楽器を大胆に取り入れ、ケルトの民族音楽とメロデスを見事に融合させた革新的な集団です。
2014年に日本公演も大成功させた、このインターナショナルなメジャーアクトに今年、大事件が勃発しました。2000年代前半から所属していた中心メンバー、ボーカル/ハーディー・ガーディー の Anna Murphy, ギタリスト Ivo Henzi, ドラマー Merlin Sutter が脱退してしまったのです。
元々、作品毎に音楽性が変わりやすく、メンバーチェンジの多いバンドであったことは確かです。しかし、特に Anna の美麗なボーカルと、ハーディー・ガーディーが紡ぐケルトの響きは間違いなく ELUVEITIE の顔であったため、多くのファンを失望させています。
弊誌では以前も Anna にインタビューを行っていますが、今回再度登場いただき、ことの顛末、ELUVEITIE への想い、脱退した3人が新たに結成した新バンド “Cellar Darling” などについてお話を伺う事が出来ました。
「結局 ELUVEITIE は Chrigel のバンドだから」 「ここ何年間も封印されていたクリエイティビティ」 などという言葉の端々から、この脱退劇がバンドの創立者 Chrigel Glanzmann との対立、意見の相違であったことは明らかでしょう。最新作 “Origins” で Anna のボーカルはさらに増える傾向にあったため、そのあたりが引き金だったのかも知れませんね。
勿論、残念ではありますが、ELUVEITIE は ELUVEITIE で、LEAVE’S EYES の Liv Kristine をゲストに迎えてツアーを行っていますし、インタビューで Anna が語っているように、好きなバンドが2つに増えたと思えば楽しみにもなります。また、彼女はソロアーティストとしても活動しており、新曲 “Mayday” をリリースしたばかり。こちらにも Ivo, Merlin が参加しているので少しややこしいですが、ぜひチェックしてみてくださいね!どうぞ!!

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