タグ別アーカイブ: An Abstract Illusion

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【AN ABSTRACT ILLUSION : WOE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH AN ABSTRACT ILLUSION !!

“We Take Influences From Anathema, But Also From Brian Eno, Hammock And Ólafur Arnalds.”

DISC REVIEW “WOE”

「EDGE OF SANITY の “Crimson” からは大きな影響を受けた。もちろん、INSOMNIUM の “Winter’s Gate” からも影響を受けているよ」
1996年、スウェーデンの鬼才 EDGE OF SANITY が、40分1曲で構成されたアルバム “Crimson” をリリースしました。それは、アルバム全体を1曲で構成するというアイデア以上に、繰り返される説得力のあるテーマや作品の多様性が白眉で、エクストリーム・メタルという文脈において非常に特異なものに感じられたものです。
それから20年。同じスウェーデンの INSOMNIUM が同様に1曲のみの傑作 “Winter’s Gate” をリリースしました。彼らに共通するのは飽くなき知への探求と境界を押し広げる冒険心。幸運にも当時弊誌では、彼らにインタビューを行うことができました。
「アルバムには 90年代のスカンジナビアンメタルの雰囲気が多分に存在するね。僕たちが10代の頃に愛していたようなマテリアルだよ。EMPEROR, EDGE OF SANITY, DISSECTION, OPETH といったようなね」
スカンジナビアにはやはり、純黒で物憂げでプログレッシブな雪の結晶が眠っています。さらに5年以上が経過し、今度はスウェーデンの新鋭 AN ABSTRACT ILLUSION が、7つの章から成る60分1曲の壮大なエピック “Woe” で、メランコリックな美狂乱を披露します。
「今回は、AN ABSTRACT ILLUSION のよりアトモスフェリックなサウンドを追求したかった。今はそのスタイルがより心地よく感じられるようになり、だからこそ注目度も高まっているんだろう。ANATHEMA はもちろん、Brian Eno, HAMMOCK, Ólafur Arnalds からも影響を受けているんだ」
しかし、このアルバムが特別なのは、奇抜な方法論や、メタリックとメロディック、過激と難解、冷静とカタルシス、激情と友愛といった異なる要素をすべて対比させつつ使用していることだけではありません。それらはただはめ込むだけのパズルのピースではなく、さながら弧を描くように循環し、シームレスに、流れ込むよう注意深く織り込まれているのです。その画期的な手法は、大曲のまとまりのなさを解消するだけではなく、過去に彼らが比較されてきた OPETH や NE OBLIVISCARIS でさえ迷い込む “定型化” の迷宮からの脱出にも大きく寄与しています。
「”Woe” という単語には “大きな悲しみや苦悩” という意味があるんだけど、このアルバムの全体的なムードを表現するのに適していると思ったんだ。アートワークでは、女性が美しい花輪を身につけているんだけど、同時に茨の冠のように血を流しているのが見えるよね。この美と痛みの対比は、僕たちの音楽の大部分に当てはまることなんだ」
幽玄で崇高で孤高。アルバムには数多くの山と谷があり、繰り返される音楽テーマとその再演、そしてアトモスフィアのうねりはポスト・メタルやクラシックのダイナミズムを連想させ、60分の絵巻物にたしかな連続性を与えています。メインテーマとなるメロディーは非常に多くの変容を遂げ、そのすべてを把握することは不可能に近いでしょう。
さらに、インターバルの変化、3拍子の解釈、コード進行やトランスポーズなど、純粋に音楽だけをとっても飽きることのない面白さがここには秘められています。大きなテーマの違いが提案されたときに章は移り変わり、幕間はオーケストラやコーラス、電子音がちりばめられたインタルードがつないでいきます。すべては、花と血のために。
まさに “Woe” は、考える人のためのアルバムでしょう。科学と演劇の両方に対応し、その巧妙な対位法と劇的な性質によって驚きと畏怖を見事に両立しています。その核となる音楽はアトモスフェリック・デスメタルですが、このジャンルでおなじみの不協和音は影を潜め、定形を排除することで、彼らは KING CRIMSON や YES に対する挑戦権を得たのです。ツンドラからの賛美歌によって。
今回弊誌では、AN ABSTRACT ILLUSION にインタビューを行うことができました。「僕たちの音楽はメタルに支配されているわけではなくて、それがサウンドにも反映されているんだよ。メタルという制約に縛られている感じは全くないんだ」 どうぞ!!

AN ABSTRACT ILLUSION “WOE” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【AN ABSTRACT ILLUSION : WOE】