タグ別アーカイブ: Revocation

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【GARGOYL : GARGOYL】WHEN GRUNGE AND PROG COLLIDE


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DAVE DAVIDSON OF GARGOYL !!

‘For Me a Band Like Alice In Chains Does Have Progressive Edge To Them Even Though They’re Considered Grunge. They Definitely Weren’t Just Taking a Radio Rock Approach, They Always Had Something New To Say With Every Album.”

DISC REVIEW “GARGOYL”

「僕はこのプロジェクトを自分の中にある別の影響を吐き出す場所にしたかったんだ。普段、僕がかかわっている音楽から離れてね。そうすることで、アーティストとしての別の一面を表現することができるから。」
前身バンドも含め、ボストンの名状しがたきデスメタル REVOCATION で2000年から活動を続ける Dave Davidson は、究極に複雑なリフ、慄くようなスクリーム、そしてブラストの嵐の中で20年を過ごしてきました。つまり、自らの全てをエクストリームメタルへと捧げることで、シーン随一のギタープレイヤーという威名を得ることとなったのです。DEATH や CYNIC の正当後継者、魂の継承は彼にこそ相応しい。ただし、それは Dave という多面体の音楽家にとってほんの一面にしか過ぎませんでした。
「自分たちが影響を受けたものにオマージュを捧げたいという気持ちはあったと思うけど、それは自分たちのやり方でやる必要があったんだ。 俺たちは過去を振り返るバンドになろうとしているのではなく、影響を受けてそれを発展させることができるバンドになろうとしているからね。」
AYAHUASCA のギター/ボーカル Luke Roberts を巻き込み立ち上げた新たなプロジェクト GARGOYL で、Dave は自らが多感なスポンジだった90年代の音景を、培った20年の発展を注ぎながら再投影してみせました。グランジ、ゴス、オルタナティブ。具体的には、ALICE IN CHAINS や FAITH NO MORE の面影を、Dave らしいプログレッシブやジャズの設計図で匠のリフォームの施したとでも言えるでしょうか。ALICE IN CHAINS + OPETH, もしくは MARTYR という評価は的を得ているように思えますし、プログレッシブ・グランジという Dave が失笑したラベルにしても、少なくとも作成者の苦悩と意図は十分に伝わるはずです。
「間違いなく、僕たちは全員が ALICE IN CHAINS から大きな影響を受けていると言えるね。そうは言っても、Luke は間違いなく非常にユニークなアプローチを行なっているし、彼は本当に個性的になろうと努力しているんだよ。」
Luke を乗船させたのは明らかに大正解でした。ALICE IN CHAINS の神々しき暗闇が、Layne Staley の絶望を認めた絶唱とギタリスト Jerry Cantrell の朴訥な背声が織りなす、音楽理論を超越した不気味で不思議なハーモニーにより完成を見ていたことは間違いありません。そしてアルバム “Gargoyl” が荘厳極まる “Truth of a Tyrant” のアカペラハーモニーで幕を開けるように、Luke の声によって GARGOYL は、ALICE IN CHAINS の実験をさらに色濃く推し進めているのです。
「僕にとってクラシック音楽やジャズは超ヘヴィーなものなんだよ。不安や実存的な恐怖を呼び起こす緊張感、クライマックスでその緊張感を解消した時のカタルシスや爆発的な解放感など、曲の中にテンションを生み出すことで得られる攻撃性やアティテュードがね。」
実際、”Gargoyl” はブラストやグロウルに頼らなくとも重さの壁を超えられることの証明でもあります。不協和なドゥーム、不規則なアシッドトリップに潜みそそり立つ美麗なる聖堂。LEPROUS にも通じるそのコントラストこそ、真なるヘヴィー、真なるプログレッシブを導く鍵であり、メタルがグランジを捕食した気高き勲章なのかも知れませんね。
今回弊誌では、Dave Davidson にインタビューを行うことが出来ました。「僕にとって ALICE IN CHAINS のようなバンドは、グランジと言われていてもプログレッシブなエッジを持っているんだよ。Jerry Cantrell のソロは特に派手ではないし、夥しいわけではないんだけど、僕ははずっと愛してきた。彼はまた、ユニークなリフを生み出す優れた耳を持っていたしね。とにかく、彼らはただラジオ・ロック的なアプローチを取っていたわけでは全くない。どのアルバムでも常に新たな挑戦に挑んでいたんだ。」  二度目の登場。どうぞ!!

GARGOYL “GARGOYL” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【GARGOYL : GARGOYL】WHEN GRUNGE AND PROG COLLIDE

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【REVOCATION : THE OUTER ONES】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DAVID DAVIDSON OF REVOCATION !!

“Sometimes I’ll Discover Some Cool Voicings While Working On a Jazz Tune And I’ll Try To Manipulate Them In a Certain Way So That It Fits Into The Metal Framework Better.”

DISC REVIEW “THE OUTER ONES”

エクストリームメタルシーンの “名状しがたきもの”。刻々とその姿を変える轟音の支配者 REVOCATION は、神秘探求者たるリスナーの脳を時に捕捉し、時に喰らうのです。
「彼らは時代によって音楽性を少しづつ変化させていたでしょ?」David は信奉する DEATH の魅力についてそう語りましたが、自らのバンド REVOCATION にも同様の試みを投影しています。
ハイテクニカルなデスメタルの知性とスラッシュメタルの衝動の中に、オーセンティックなメタルの様式美を組み込んだ初期の煌きは眩しく、一方で鬼才 ARTIFICIAL BRAIN にも所属する Dan Gargiulo 加入以降の、前衛的で中毒性を宿した VOIVOD にも通じる不協和のカオスもまた魅力の一つだったと言えるでしょう。
そうして最新作 “The Outer Ones” でバンドが辿り着いた魔境こそ、トレードマークである演奏能力とアグレッションを拠り所とする”完璧なデスメタル”、すなわち “The Inner Ones” に、荘厳でリリカルなメロディーのイヤーキャンディーやジャズの複雑怪奇、すなわち “The Outer Ones” を織り込んだコズミックな宇宙でした。
饗宴の始まりはダークでソリッドな “Of Unworldly Origin” から。TRIVIUM の爽快さまでイメージさせる耳障りの良いファストチューンは、しかし同時にブルーノートを起点としたジャジーなコードボイシングで自らの異形をアピールします。
分解してスウィングさせればツーファイブにもフィットするウネウネとしたリードプレイから、冷徹でしかしファンタジックな DEATH の遺産、ツインリードへと雪崩れ込むギターの魔法は2人のマエストロを備える REVOCATION ならではの至宝でしょう。
実際、唯一のオリジナルメンバーとなった David Davidson のジャズに対する愛情は、先日あの TESTAMENT のジャズスラッシャー Alex Skolnick との対談でお互いが認め合ったように、本物です。ギター教師の一面も持つインテリジェントな David は、メタルにとって規格外のコード進行、ボイシング、そしてスケールを操りながらアルバムを未知の領域へと誘います。
ロマンチックとさえ表現可能な “Blood Atonement” はまさに David の異能が濃縮した楽曲でしょう。ブラッケンドな激情を叩きつける漆黒のワルツは幽かな叙情を宿し、一転して静寂の中紡がれるクリーントーンの蜜月は Joe Pass の匠を再現します。まさに David 語るところの “コントラスト” が具現化した “血の償い” は、CYNIC のアトモスフィアさえ纏って怪しくも神々しく輝くのです。
“Fathomless Catacombs” で再び DEATH への深い愛情を示した後、バンドは “The Outer Ones” で BETWEEN THE BURIED AND ME の重低音のみ抜き出したかのような不規則な蠢きでラブクラフトのホラーを体現し、さらに不気味なコードワークが映える “Vanitas” では VOIVOD はもとより ATHEIST, PESTILENCE のカオスをも須らく吸収してみせました。
アルバムを締めくくる大曲 “A Starless Darkness” はまさに名状しがたき暗闇。ドゥームの仄暗い穴蔵から這い出でし闇の化身は、勇壮なエピック、スラッシュの突心力、デスメタルの沈痛、シュレッドのカタルシスと多様にその姿を変えながら、OBSCURA と並びプログレッシブデスメタルの森を統べる者としての威厳を示すのです。
今回弊誌では、バンドのマスターマインド David Davidson にインタビューを行うことが出来ました。「ジャズの楽曲に取り組んでいる時、しばしば僕はクールなボイシングをいくつか発見するんだけど、それがメタルのフレームワークへとうまく収まるように手を加えてみるんだ。」フックと展開の目眩くクトゥルフ。今、最もハイテクニカルなギターチームが揃ったバンドの一つでしょう。どうぞ!!

REVOCATION “THE OUTER ONES” : 9.9/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【REVOCATION : THE OUTER ONES】