EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MIKE SCHEIDT OF YOB !!
PHOTO BY JIMMY HUBBARD
“There Is No Doubt The Near-death Experience Is a Part Of The Music, But In a Triumphant Way. It’s a Survival Album, Not a Sickness Album. “
DISC REVIEW “OUR RAW HEART”
オレゴンの悠久からコズミックなヘヴィネスと瞑想を標榜し、ドゥームメタルを革新へと導くイノベーター YOB。バンドのマスターマインド Mike Scheidt は2017年、自らの終焉 “死” と三度対峙し、克服し、人生観や死生観を根底から覆した勝利の凱歌 “Our Raw Heart” と共に誇り高き帰還を遂げました。
2017年1月に地元の食料雑貨店で重度憩室炎を発症した Mike は、6時間にも及ぶ大手術、ブドウ球菌感染症、さらなる合併症の併発で3度の死地をくぐり抜けました。想像を絶する苦痛、薬の副作用、幻覚、そして様々な不安からメタルシーンの “禅マスター” を救い、心の平安をもたらしたのはマントラと創作活動だったのです。
「死に近づいたことで僕の人生はとても深みを帯びたと感じるよ。」と Mike は語ります。実際、”楽しむこと”、創作の喜びを改めて悟り享受する Mike と YOB が遂に辿り着いた真言 “Our Raw Heart” で描写したのは、決して仄暗い苦痛の病床ではなく、生残の希望と喜びを携えた無心の賛歌だったのですから。
事実、ミニマルで獰猛な2014年の前作 “Clearing the Path to Ascend” を鑑みれば、全7曲73分の巡礼 “Our Raw Heart” のクリエイティビティー、アトモスフィアに生々流転のメタモルフォーゼが訪れたことは明らかでしょう。
作品のセンターに位置する16分の過重と慈愛の融合 “Beauty in Falling Leaves” はまさに YOB が曝け出す “Raw Heart” の象徴です。甘くメランコリックなイントロダクションは、仏教のミステリアスな響きを伴って Mike の迫真に満ちた歌声を導きます。それは嵐の前の静けさ。ディストーションの解放はすなわち感情の解放。ベースとドラムスの躍動が重なると、バンドの心臓ギターリフはオーバートーンのワルツを踊り、濃密なビートは重く揺らぐリバーブの海で脈動していくのです。
煌めくダイナミズムの中で、Mike は亡き Chris Cornell の抑揚ともシンクロしトランス状態にその身と感情を委ねます。「ずっとこんな感じだったよ。人生を通じてね。だけど君の心だけが僕を家へと連れ帰ってくれる。そう、落葉の美しさを眺めている間、僕らの世界は永遠なんだ。」バンド史上最もエモーショナルでドラマティックなエピックは、死生の悲哀と感傷から不変の光明を見出しているのです。
ゆえに、蘇った YOB の作品を横断するスロウバーン、全てを薙ぎ倒す重戦車の嗎は決して怒りに根ざしたものではありません。むしろそれぞれの人生や感情を肯定へと導くある種の踏み絵、あるいは病室で眺望と光陽を遮っていたカーテンなのかも知れませんね。
結果として YOB はドゥームに再度新風を吹き込むこととなりました。例えば CATHEDRAL の闇深き森をイメージさせるオープナー “Ablaze” ではジャンルのトレードマークにアップリフティングでドリーミーなテクスチャーを注入しドゥームの持つ感情の幅を拡大。
さらに “The Screen” では自身の臨死体験を通して経験した苦痛や恐怖を苛烈なギターチャグで表現しながら、メランコリックな神秘の息吹にも思えるキャッチーな歌唱でネガティブをポジティブへと変換しているのですから。
そうしてアルバムは僅かな寂寞とそして希望に満ちた光のドゥーム “Our Raw Heart” でその幕を閉じます。人生と新たな始まりに当てた14分のラブレターは、バンドに降臨した奇跡のマントラにしてサイケデリックジャーニー。開かれたカーテンから差し込むピュアな太陽。ポストメタルの領域にも接近したシネマティックでトランセンドな燦然のドゥームチューンは、彼らとそしてジャンルの息災、進化を祝う饗宴なのかも知れませんね。
今回弊誌では、魂の探求者 Mike Scheidt にインタビューを行うことが出来ました。「今の状態を不満や苦痛に思ったりはしていないんだ。僕はこの経験から多くを学んだし、今生きていることに感謝しているからね。」なお、彼が Chris Cornell の死にかんして読者に送ったメッセージは、自身もうつ病、拒食症に悩まされた過去を持つが故。どうぞ!!
YOB “OUR RAW HEART” : 10/10
INTERVIEW WITH MIKE SCHEIDT
Q1: First of all, you were diagnosed with diverticulitis in 2016, but it seemed you were successfully treating it for over a year. So, we were really surprised and worried about hearing the news you almost died last year. What happened to you at that time? Are you alright now?
【MIKE】: I had a perforation in my sigmoid colon which almost resulted in peritonitis taking my life. Luckily, a surgeon was able to intervene in time to save me. I had two surgeries, and am doing much better. It’s been a long recovery, and in ways I’m still recovering. I have no lasting complaints however, as I learned a lot from the experience and am grateful to be alive.
Q1: あなたは2016年に憩室炎の診断を受けましたが、上手く病気と付き合っているように見えました。故に昨年、あなたが生命の危険を脅かされるほどの状況に陥ったというニュースは衝撃でしたし、ファンはとても心配していましたよ。
【MIKE】: 僕は S状結腸に穿孔を起こし、その結果、腹膜炎を併発してしまったんだよ。幸運なことに、外科手術で進行を遅らせることにより、何とか助かることが出来たんだ。
僕は2度の外科手術を受け、かなり回復したと言えるね。とはいえ全回復までには長い道のりが待っていて、僕はまだ治療を続けているんだよ。
ただ、今の状態を不満や苦痛に思ったりはしていないんだ。僕はこの経験から多くを学んだし、今生きていることに感謝しているからね。
Q2: It seems you wrote “Our Raw Heart” in your hospital bed when you were recovering from 6 hours surgery. 6 hours…really tough experience. What made you focus making music and Yob again?
【MIKE】: I wasn’t in my hospital bed, I was at home shortly afterward recovering and working on music feverishly, almost manically. I was in a heightened state where time was at a crawl and all I felt like doing was working on music, though I had to take frequent short to longer breaks due to pain and needing to rest. There is no doubt the experience is a part of the music, but in a triumphant way. It’s a survival album, not a sickness album.
Q2: 最新作 “Our Raw Heart” は6時間にも及ぶ大手術から回復途中、病院のベッドで書かれたアルバムだそうですね?非常にタフな状況で、それでも音楽を作り YOB の活動へとあなたを駆り立てたものは何でしたか?
【MIKE】: いや、この作品は病院のベッドで書かれた訳ではないんだよ。僕は回復し家に帰ってすぐ、音楽を無我夢中で、ほとんど熱狂的なまでに作り始めたんだ。
当時は危機的状況からゆっくりと回復を遂げている段階で、やりたいことと言えば音楽に打ち込むことだけだったからね。まだ苦痛が残り、休息の必要があったからしばしば休みを交えながらだったけどね。
そしてその経験は疑いようもなく、新作で表現されている音楽の一部となっているよ。ただし病に対する勝利の凱歌としてね。この作品はサバイバル・アルバムで、決して病んでいるアルバムではないんだよ。
Q3: I feel “Our Raw Heart” is different from your past works. Sometimes, there is hope or even delight in the record, do you agree that?
【MIKE】: Yes. Very much so. After surgery, the kind of direction and the atmosphere and flavor of the music presented itself a lot more clearly. It deepened everything. it deepened every single thing about my life, honestly. It’s kind of cliché to say that after a near-death experience, you have a different perception, but it’s a cliché because it unilaterally makes a person aware of where they’re putting their energy, and what’s really important to them.
It wasn’t about projecting into the future, like, ‘Eventually there’s going to be a record,’ or, ‘Eventually we’re going to record,’ it more was more just, ‘Enjoy this.’ And eventually things moved forward, and we were able to play again, and we were all just so elated.
Q3: 仰るように、”Our Raw Heart” には以前の作品と比較してより希望、時には喜びの感情まで垣間見得ますね?
【MIKE】: まさにその通りさ。この作品はとても希望に満ちているよ。手術の後、そういった音楽の方向性、テイスト、アトモスフィアはより明確になったね。実際、死に近づいたことで僕の人生はとても深みを帯びたと感じるよ。どんな些細なことでも全てにおいてね。
もちろん、臨死体験の後人生観が変わるという話はよく聞くけど、もっと踏み込むと臨死体験はある種一方的に僕たちがエナジーを注ぐべき場所、僕たちにとって何が本当に重要なのか気づきを与えてくれると言えるのかもしれないね。
とにかく、さあレコードを作ろう、レコーディングしなきゃって思うよりも、ただ「楽しもう」と思えるようになったんだ。そうして前に進み、僕たちは再びプレイ出来るようになって、その喜びをとても誇れるようになったのさ。
Q4: Regarding of death, we lost amazing Chris Cornell last year. It may be a coincidence, your voice in this album reminds me of Chris’ incredible emotion. Were you affected by his passing somehow?
【MIKE】: I’ve loved Chris Cornell’s songwriting and singing voice since I was 18 years old. His passing was an immense shock, and very sad. Anyone who feels that alone and is contemplating suicide, please don’t stay silent. Reach out and ask for help. There is no shame in it, ever.
Q4: 昨年私たちは Chris Cornell を失いました。偶然かも知れませんが、死に直面した後のアルバムであなたの声は時に Chris のエモーションを想起させます。
【MIKE】: 僕は18の時から、Chris Cornell のソングライティングと歌唱、声を愛して来たんだ。彼が亡くなったことは本当に大きなショックで、とても悲しかったよ。
もし一人で悩み、自殺を考えている読者の方がいるなら、沈黙を貫かずぜひ声をあげて欲しいと思う。手を伸ばして助けを求めるんだ。一切ためらったり、恥ずかしがることなんてないんだからね。
Q5: I always love your impressive artworks. Among them, “Our Raw Heart”‘s artwork is my favorite. Does it relate to concept or lyrical themes of “Our Raw Heart”?
【MIKE】: It does, but I prefer to not explain these things. Music and art sometimes benefits from some mystery.
Q5: YOB のアートワークはいつもイマジネイティブで素晴らしいですが、今回は特に白眉ですね?歌詞のテーマやコンセプトとリンクする部分もありそうですが?
【MIKE】: そうだね、確かにリンクしているよ。ただ、僕はあまり作品のコンセプトを説明してしまうのが好きじゃないんだよ。音楽やアートは時に謎が多い方が楽しめるからね。
Q6: I feel “Beauty in Falling Leaves” seems to bring Yob next realm. It’s really beautiful, most heart wrenching song that the band has recorded to date. From low to high, your vocal performance is incredible, full of emotion, right?
【MIKE】: The ballad is not new to us, we wrote and released Essence on the Japan only version of The Unreal Never Lived, followed by The Great Cessation, then Adrift In The Ocean, and Marrow before Beauty In Falling Leaves. So that is 13 years of ballads. We won’t be stopping that expression anytime soon, haha.
Q6: アルバムの中でも、”Beauty in Falling Leaves” は YOB の音楽をさらに次のステージへと誘っているように感じました。バンド史上、最も美しく、心揺さぶる “バラード” ですよね?
【MIKE】: バラードは決して僕たちにとって全く新しい試みという訳ではないんだよ。”The Unreal Never Lived” の日本盤には “Essence” というバラードタイプの楽曲を書いて収録したよね。それから、”The Great Cessation”, 次に “Adrift In The Ocean”, そして “Marrow”。
だから13年もバラードを書き続けて来たんだよ。この表現方法を止めてしまうつもりはないね。
Q7: Also, “Our Raw Heart” is very progressive record for me. Regarding progressive, legendary Rush is also three piece band. Have you influenced by them?
【MIKE】: We’re perhaps indirectly influenced by Rush. I’d say we’re more influenced by King Crimson Red than any Rush album, though we love Rush!
Q7: 同時に “Our Raw Heart” はとてもプログレッシブなレコードでもありますよね?
例えば RUSH は同じスリーピースバンドですが、彼らからの影響も感じられる気がします。
【MIKE】: おそらく、間接的には RUSH から影響を受けていることになるのかな。つまり、僕たちは KING CRIMSON の “Red” から RUSH のどの作品からよりも影響を受けているからね。とは言え、RUSH も大好きだよ!
Q8: So, in Doom, Sludge territory, bands like Mastodon, Pallbearer seem to set their course forward more Pop, Catchy realm. On the other hand, I feel Yob keeps more artistic aspect still now. What’s your perspective about their way of “Doom goes Catchy”?
【MIKE】: Music that has a mass appeal because of it’s quality of feel and songwriting will stand out, regardless of genre. I personally don’t need doom to be in a box of exclusivity. The more extreme, slow, brutal bands will have their audience, and in some cases it’s a wide audience. The most important thing to be is if the music makes me feel something, inspires something in me, makes me muse and lose myself, or alternately, find myself. I don’t compartmentalize that into genre or supposed genre restrictions.
Q8: ドゥーム、スラッジのテリトリーでは、MASTODON, PALLBEARER といったバンドが先頭に立ってポップでキャッチーな領域を探求しているように感じます。
対して YOB の方法論はよりアーティスティックですよね?
【MIKE】: ジャンルの違いにかかわらず、感性の質の高さと際立ったソングライティングを備えた音楽はマスアピールするはずなんだよ。僕は個人的に排他性という箱のために、ドゥームである必要性を感じはしないんだ。
よりエクストリームでスロウ、そしてブルータルなバンドにもオーディエンスがいて、場合によってはそれはより幅広い聴衆となるんだよ。
最も重要なことは、音楽が僕に何かを感じさせ、何かを奮い立たせ、夢中にし、自分を失い、もしくは代わりに自分自身を見つけることができるかどうかなんだ。僕はそれをジャンルやジャンルが生み出す制限に区分したりはしないんだよ。