EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CHRIS HATHCOCK OF THE RETICENT !!
“I Wanted To Make An Album That Confronted The Horror Of The Alzheimer Illness But Also The Cruel Way We Often Treat Those That Suffer With It.”
DISC REVIEW “THE OUBLIETTE”
「アルツハイマーが生み出す地獄。僕は家族と一緒にその光景を目の当たりにしたんだ。アルツハイマーは高齢者が大半を占めているから、病気を主張できないことが多く、社会的には見捨てられ、忘れ去られてしまうことだってよくあるんだ。僕はこの病気の恐ろしさと同時に、この病気で苦しむ人たちへの残酷な接し方にも向き合うアルバムを作りたいと思ったんだよ。」
65歳以上の6%が何らかの影響を受けるアルツハイマー病。ゆっくりと、しかし確実に重症度が増していく慢性的な神経変性疾患です。ゆるやかに自分自身を失っていく恐ろしい病。
プログメタルプロジェクト THE RETICENT の首謀者 Chris Hathcock は実際にその恐怖を目の当たりにし、その視点と経験を音の書へと綴ることを決意したのです。
「絶望と鬱を永続的に克服する道を知っていればいいのにと心から思うよ。僕たちの多くにとって、それはある意味生涯をかけた戦いになるからね。」
THE RETICENT は音楽に仄暗い感情を織り込む天才です。2016年の “On The Eve of a Goodbye” では、幼馴染だったイヴが自ら死を選ぶまでの悲愴を、すべてを曝け出しながら綴りました。徐々に近づいていく決断の刻。湧き出るような感情と共に迎えるクライマックス “Funeral for a Firefly” の圧倒的な光景は、聴くものの心激しくを揺さぶったのです。
「こんな悲しいテーマのアルバムを書いたのは、アルツハイマー病や認知症についての音楽がほとんどないからだよ。一般的に、多くの人は特に後期の段階でアルツハイマー病がいかに衰弱を強いる残酷な病気であるか、完全に認識していないよね。患者は記憶を失うだけでなく、さらに話すことも、移動することも、食べることも、飲み込むことさえ出来なくなるんだよ。」
そして THE RETICENT は再度真っ暗な感情の海へと旅立ちました。”The Oubliette” はアルツハイマーの7つの進行状況を7つの楽曲へと反映したコンセプトアルバムです。オープニングで、病院で自分の病状にさえ気付かず至福の時を過ごす主人公ヘンリーを紹介されたリスナーは、彼の静かな戦い、容赦のない悪夢を追体験していきます。
「僕はいつも、伝えたいことの感情に合ったサウンドを見つけようとしているんだ。それは伝統的なバンド(ギター、ベース、ドラム)のセットアップであることもあれば、ジャズのコンボやダルシマー、あるいはブラックメタルのようなワイルドな異なるジャンルへの挑戦の時もあるね。」
実際、ほぼすべての楽器を1人でこなす Chris のコンポジションとリリックは完璧に噛み合っています。OPETH のアグレッション、PORCUPINE TREE のアトモスフィア、RIVERSIDE のメランコリーに NEUROSIS の哲学と実験を認めた多様な音劇場は、エセリアルなメロディーやオーセンティックなジャズの響きに希望を、激烈なグロウルとメタルの方法論に喪失を見定めて進行していきます。亡き妻の生存を信じながら、時に彼女の死を思い出す動揺は、天秤のようなコントラストの上で悲しくも描かれているのです。挿入されるスポークンワードやトライバルなパーカッションも、ストーリーの追体験に絶妙な効果をもたらしていますね。
クライマックスにしてタイトルトラック、Oubliette とはヨーロッパ中世に聳え立つ城郭の秘密の地下牢。高い天井に一つの窓。ヘンリーはその唯一の出口、すなわち死を絶望的な懇願と共に迎えるのです。ただし今際の際に垣間見るは遂に訪れた平穏。
「それは複雑で “勝ち目のない” 状況と言えるだろうな。だからこそ、このアルバムが病気の現実に対する認識を高め、病気を経験している人やこれから経験するかもしれない人たちに小さな慰めを提供できたらと願っているんだよ。」
THE RETICENT はアルツハイマー病の認知度を高めるために、そして病と戦う患者や家族のために、またしても悲哀を呼び起こす感情的な傑作を創造しました。Chris Hathcock は音楽でただ寄り添い、世界へ訴えかけるのです。
今回弊誌では、その Chris にインタビューを行うことができました。「この病気で苦しんでいる人たちの世話をする人たちは、真のヒーローだよ。実に困難な仕事だからね。時にはほとんど不可能なくらいに。心が痛むし、イライラするし、意気消沈するし、とにかく絶え間ない葛藤が続くんだ。このアルバムで僕は、そんなヒーローたちにそれでも誰かが理解してくれるとメッセージを直接伝えたかったんだ。」 Jamie King のプロデュースはやはりプログメタルに映えますね。どうぞ!!
“It Was Thus Natural For Us To Try To Describe a Unique Event In Our History That Has Returned, After Almost Two Thousand Years, The Photograph Of a City That Has Remained Crystallized Over Time, To Reach Us Telling Us Stories Of Our Distant Ancestors”
“We All Grew Up Loving BTBAM And While We Never Sit Down And Attempt To Write Anything That Sounds Like Them, Their Philosophy Of Letting a Song Take Any Twist Or Turn That It Wants Is Certainly Present In Our Music. If Anything, Our Bands Are Most Similar In Our Liberated Attitude Toward Writing Music.”
DISC REVIEW “THE ANGEL OF HISTORY”
「ポストメタルは間違いなく僕たちのサウンドの大きな部分を占めているね。たしかに完全にポストメタルとは呼べないかもしれないけど、でも同時に、完全にプログレッシブメタルとも呼べないかもしれないよね。」
音の革新は、概しておぼろげであやふやな秘境に端を発します。プログレッシブメタルコアをアステカの魔法とカオスで異次元へと導いたトリックスター、VEIL OF MAYA に見出された NYC の海獣 CRYPTODIRA は、その名の通り深海で数万年もの異種族交配を繰り返したモダンメタルモンスターです。
「僕らはみんな BETWEEN THE BURIED AND ME を愛して育ったからね。楽曲を自由自在に捻くれさせる彼らの哲学は、僕らの音楽にも確かに存在しているんだ。どちらかと言えば、僕たちのバンドは彼らと、音楽を書くことに対する自由な姿勢が最も似ているんじゃないかな。」
BTBAM の名作群を手がけた Jamie King をプロデューサーとして迎えたように、たしかに CRYPTODIRA は難解と容易、混沌と明快、暴虐と安寧、激音と静謐の狭間に巣喰いながらメタルの荒唐無稽を自由自在に謳歌しています。
「彼はとてもオープンマインドなプロデューサーで、僕たちのアイデアをより商業的にに手なずけようとするのではなく、可能な限りクレイジーなことをしてサウンドに自分たちの息を吹き込ませるよう促してくれたんだからね。」
実際、マルクス主義、精神分析、フェミニストやポストコロニアル理論など人類史におけるテーマを哲学的な視点から俯瞰し、理想と現実の狭間を示唆する “The Angel of History” は、常軌を逸したメタルの歴史書だと言えます。プログ、ポストメタル、ハードコア、デスメタル、スラッジ、マスコア、ジャズの豊潤なるアマルガムは、深海で熟成されためくるめくテクニックや多彩な歌唱スタイルで人と音の歴史を投影するのです。それは万年海獣のみに許された秘法。
もちろん、”Dante’s Inspiration” を聴けば、瞬きと同時にテンポや拍子が移り行く THE DILLINGER ESCAPE PLAN の数学が、千変万化な歴史の授業に欠かせない教科書の一つであることは揺るぎません。ただしその一方で、ポストメタルの申し子は嫋やかで美麗な対比の魔法を忘れることはないのです。それは歴史に宿る儚さでしょうか。
“Self-(Affect/Efface)” で “Alaska” のような精神病的グロウルが高らかなクリーンボイスに磨き上げられる瞬間、”The Blame For Being Alive” で Pat Metheny がオルタナティブやデスメタルに蹂躙される瞬間、天使とのデュエット、”The White Mask Speaks” に宿る荘厳なポストメタルのシネマトグラフィー。あまりにドラマティックな場面転換はさながら猫の目のごとく。リスナーは予想不可能なメタルと人類の未来に幾度も思いを馳せるはずです。
今回弊誌では、CRYPTODIRA にインタビューを行うことが出来ました。「日本のアーティストは、様々なジャンルを日々聴いているよ。ちょっと頭に浮かんだだけで、toe, Tricot, Mouse on the Keys, Passepied, ゲスの極み乙女, Indigo la End, 水曜日のカンパネラ, Snail’s House なんかをよく聴くよ。」 どうぞ!!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH GUILLAUME CAZALET OF NEPTUNIAN MAXIMALISM !!
“The Idea Comes From The Fact That a Scientific Community Agrees That If Humans Had Not Occupied The Leading Place In The Food Chain, Then Probably It Would Be The Elephants Who Would Occupy Our Place.”
DISC REVIEW “EONS”
「もし人間が食物連鎖の頂点を占めていなかったとしたら、おそらく象が我々の場所に位置するという科学的なコミュニティも同意した事実から来ているんだけどね。」
叡智を育むゾウの生命に支配される地球の風景。避けがたきホモ・サピエンスの破滅を受け継ぐポスト・ヒューマンの存在。それはベルギーの実験音楽集団 NEPTUNIAN MAXIMALISM が思い描くディストピアな未来です。
「マキシマリズムという概念は、芸術の歴史に直結しているよ。それはまず、無駄を省いたミニマリズム(”less is more”)への反発であり、20世紀の現代美術に強い影響を与えた工業生産コードの回復が、アート市場の堕落を許したことに起因しているんだ。つまり、今日のアートが直面しているこの人間原理、アントロピアに対抗するためには、逆の意味を喚起する何かが必要だったんだよ。それは、現在の市場にある多くの芸術作品が示す安易さに反発して、より多くの仕事、より多くの音楽的レイヤー、さらなる寛大さへと向かうことが必要だったのさ。」
ミニマルな機能美が崇拝された20世紀へのアンチテーゼとして最大限の趣向、装飾、音数が注がれた3枚組2時間超のアルバム “Éons” は、儀式的なドローンのファンファーレで壮大な終末を手招きし、他の動物が高度な知性を得る未来への招待状。海王星の最大主義者を名乗る集団は、宇宙線に魂を貫かれ、自らの分子が散乱し、宇宙の広がりに飲みこまれるような体験を当然のように提供します。
「”サピエンス” という地位に到達するための動物の能力に気づいて欲しかったからなんだ。
言い換えれば、動物は潜在的な “人間” であり、そうなるのも時間の問題なんだ。だからこそ、僕たちは動物を対等な存在として考えなければならないよね。人間が進化の過程で非常にユニークな存在であると考えるのは間違いだと判明している。進化の過程が非常に長く(ホモ・サピエンスでは約30万年)、他の種でそれを観察する時間がなかったからわからなかっただけなんだよ。」
人類は特別な存在ではない。ただ他の動物より早く進化を遂げただけ。その主張と同様に、NEPTUNIAN MAXIMALISM の音楽は前人未到です。メタルとドローンの領域に足を踏み入れ、前衛ジャズの混沌とした自由を謳歌し、トライバルで異質な触手を持つこのグループのサウンドは、連続的な渦巻きの宇宙的ハイブリッドというべきものかも知れませんね。
もちろん、メタル世界は過去40年の間にジャズの血脈をしばしば取り入れてきました。CYNIC のコズミックなプログレッシブデス、PANZERBALLETT の迷宮と技巧、SHINING の異端。しかしかし、”Éons” はそんなユニークなアプローチの末裔というよりも、劇的な再解釈であると言えるでしょう。ジャズメタルではなく、ドゥームジャズでもなく、むしろ神秘的でオリンポス火山のようなドローンノワール。
「最初、僕とルチアーノ(I、Voidhanger Records)は金子富之のこの作品にすっかり惚れ込んでしまったんだ。そのサイケデリズム、配色の多さ、複雑さ、空間の彩度などなどにね。僕たちの音楽に響くものがたくさんあったんだよ。特に怒りに満ちた複数の顔と犠牲になる牛の頭は、確かに我々の宇宙論と関係があったんだよ。」
“大威徳明王の大太鼓” でバーストするサックスの嘶きは、しなやかな即効性と強度を持って終末の儀式を開き、脈動するバリトンは渦巻く炎の中心で静かに輪廻からの解放を誘います。それは、128分の広大で予測不可能な宇宙の凛とした箱庭。
「ジャズかメタルかだって?それは君たちが考えることだよ。まあ僕にとっては、ヘヴィートライバル、時々はオペラドローンと言えるかな。」
世間一般の定義では “メタル”ではありませんが、NEPTUNIAN MAXIMALISM は、あらゆるジャンル、あらゆる意味での重力とヘヴィネスを想起させる絶対的に巨大なブラックホールを生み出しています。
“NGANGA – Grand Guérisseur Magique de lre Probocène” のひりつくようなグルーヴ感とリズム感、”PTAH SOKAR OSIRIS – Rituel de l’Ouverture de la Bouche dans l’Éon Archéen”ではミニマルなドゥームメタルの轟音にホーンが虹彩のカウンターポイントを与え、”ENŪMA ELIŠ – La Mondialisation ou la Création du Monde. Éon Protérozoïque” に至ってはカルトなジャズメタルの生け贄をサイケデリックなラーガロックへと再構成しているのですから。
SUN RA, John Coltrane, EARTH, SUNN O)))、クラウトの化身 EMBRYO, それにインドやアラブのフォークミュージック。”Éons” で想像される世界は、たしかに基本的にはどんなメタルバンドにも備わる暗黒のビジョンであり、荒涼としたファンタジーに満ちています。 しかし、NEPTUNIAN MAXIMALISM のアポカリプスはスピリチュアルで感動的、そして美しく混沌としていて、著しく奇妙なのです。
今回弊誌では、 バリトンギターからシタール、フルート、トランペットと音の自由を謳歌する Guillaume Cazalet にインタビューを行うことが出来ました。「進化したゾウは、彼らの黄金時代の間に動物の太陽都市(HELIOZOAPOLIS)を建立しているんだ。クローサーは、完全な静けさの中で僕たちの有限性を喚起するグループ BONG の歌のタイトルから取られているよ。僕たちの後継となる世界は美しいものになるからね。」 どうぞ!!
“We Agree That There Are Not Many Women Seen In This Particular Genre Of Music, But There Is, Without a Doubt, a Vastly Overlooked List Of Women Pioneering The Genre With Amazing Talent, And Doing a Lot For Metal And Rock Music As a Whole.”
DISC REVIEW “LIMBO”
「このメタルという特定の音楽ジャンルに女性があまりいないことには同意するけど、このジャンルを開拓し、素晴らしい才能を持ち、メタルやロック音楽全体のために多くのことを成してきた女性は、間違いなく大きく見落とされているわね。Hayley Williams (PARAMORE) みたいなボーカリストや、素晴らしい友人 Adrienne Cowan (SEVEN SPIRES) , Elizabeth Hull がいなければ、今のような自信を得ることはできなかったと思う。そしてもちろん、母である Sandy Casey の指導と助言がなければ、私はどこにも居場所がなかったでしょうね。彼女は私の人生に影響を与えてくれた、最も刺激的なシンガーよ。」
ロックやメタルの世界における女性の躍動は、間違いなく21世紀におけるメジャーなトピックの一つです。ただし、その開拓には古くはジャニスにスージー・クワトロ、アニー・ハズラムから、アンネケ、ターヤ、エイミー・リーまで、ゼロから土壌を培った幾人もの献身が捧げられています。Casey Lee Williams の母 Sandy Casey もその一人。そうして今、引き継がれた遺産はプログメタルの世界を変革へと導きます。
実は、Casey はすでに有名人です。あの全世界で1億再生以上を記録し第8シーズンまで継続されているモンスターコンテンツ、大ヒット3DCGアニメ “RWBY” のサウンドトラックでメインシンガーを務めているのですから。それだけではありません。彼女の父は Jeff Williams。”RWBY” シリーズのコンポーザーで音楽監督。母との共演もそのサウンドトラックで実現。サラブレッドの血と才能は、そうしてさらなるアーティスティックな飛躍を求めました。
「最初のリハーサルの時から、彼女はこのプロジェクトに参加したいと思っていたし、非常に複雑だけど美しい音楽の上に歌を乗せるという挑戦を受け入れたいと思っていたんだ。」
バークリーの知的な複雑怪奇と、アニメの甘やかな表現力。昼と夜、二つの異世界が出会う逢魔時にはきっとこの魔法の言葉が似合います。OK, GOODNIGHT。
「アルバムのコンセプトは、奇妙な扉が開かれ、地球を荒廃させ、誰でも何でも破壊する異世界の巨人がやってきたような巨大な黙示録の中で生き残ろうとしている若い女の子を中心に展開しているよ。」
デビューフル “Limbo” でバンドが語るのは異世界からもたらされた辺獄のストーリー。幼い頃から日本の文化やアートを愛しアニメを見続けた異能のギタリスト Martin と、映画のサウンドトラックを養分とする鍵盤奏者 De Lima、そして “RWBY” で近未来の理不尽な御伽草子を紡ぐ Casey が交わるにはあまりに完璧な舞台です。
「アトモスフェリックなサウンドとピアノを、大きな作品の一部として使用することで、リスナーの心を掴み、より集中して聴くことができるようになると思う。ヘヴィーなギターリフと優雅なテクスチャーの並置は、このバンドのサウンドの大きな部分を占めているよ。」
ストーリーへの没入感を加速する対比のダイナミズムと、メタルとサントラのマリアージュが投影を加速する音映像。もちろん、その難題はバークリーのカラフルなテクニックと、Casey の伸びやかでムード満載な歌声によって実現されていくのです。
クラッシックやジャズ、ポストロックのキメラさえ基本。ここには PROTEST THE HERO も、DREAM THEATER も、PLINI も、RADIOHEAD も、ほんの少しの Djent も、CASIOPEA のようなジャパニーズフュージョンだって、それにアニメのイントロやアウトロのドラマティシズムまでもが繊細に大胆に織り込まれているのですから。最新 EP “Under the Veil” の幕引きに流れる Casey の気高きソプラノは、20年代プログメタルの辿る道をほんのりと照らしているのかも知れませんね。
今回弊誌では、OK GOODNIGHT にインタビューを行うことが出来ました。「僕たちは皆、好きな音楽や音楽を演奏するようになった経緯が全く違っていて、それがアーティスティックな選択にも表れていると思うよ。それに、長所と短所もそれぞれ違っているよね。」どうぞ!!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DEAN WELLS OF TERAMAZE !!
ALL PHOTO BY KARINA WELLS
“I Like To Push My Self As a Musician So That Style Lets Me Do All The Styles That I Like To Write, We Fall In And Out Of Progressive Metal Its Anything Goes Really In Teramaze, Thats What Makes It Fun.”
DISC REVIEW “I WONDER”
「僕はミュージシャンとして自分をプッシュするのが好きだから、好きなスタイル全部を込めて作曲が出来るんだよ。プログレッシブメタルの中に出たり入ったり……TERAMAZE では何でもありで、それが楽しいんだ。」
PLINI, HIATUS KAIYOTE, KARNIVOOL, KING GIZZ, CALIGULA’S HORSE, VOYAGER, NE OBLIVISCARIS。オーストラリアが今、多様で真にプログレッシブなアーティストの桃源郷であることは疑う余地もありません。TERAMAZE の Dean Wells はインタビューてその理由を意味不明だと笑いましたが、実は彼自身が意識する “プログメタルに出たり入ったり”、自由自在何でもありのスピリットが彼の地には浸透しているのかも知れませんね。
「Tera とは何兆億もの道を指し、Maze は迷宮。だから、基本的に TERAMAZE とは平和への一つの道を通って自分の進む場所を見つけることなんだ。」
実際、 プログメタルというエニグマティックな迷宮においても、TERAMAZE が辿り到達した道の先は稀有なる特異点だと言えるでしょう。結成は1993年、デビュー作のリリースが95年ですから実はかなりのベテラン。当初はスラッシュメタルや PANTERA の影響色濃いアグレッシブなメタルをプレイしていましたが、2002年の解散、そしてリユニオンを経て、旋律の色彩を解き放つプログレッシブの昴として瞬き躍動しているのですから。
Dean が人生を変えたアルバムの一枚に SAVAGE GARDEN の “Affirmation” を挙げていることは、彼らを紐解く重要なヒントなのかも知れません。90年代を席巻した同郷オーストラリアのポップレジェンドは、たしかに TERAMAZE の遺伝子を改変しました。
メランコリーを帯びた官能的な歌声と旋律。洗練と無機の狭間で揺らぐ未来型シンセとドラムパターン。そんな二極を混淆して新世界への扉を開けた SAVAGE GARDEN の哲学は、そのまま TERAMAZE のエモーション極まるポップログメタルへと通じています。
「”Lake 401″ はたしかにサクスフォンととてもよく似ているよね。面白い話だけど、サックスは僕が初めて習った楽器で、正直嫌いだったんだ。(笑) でも今はそのサウンドが大好きだよ。実に歌っているようだからね。」
Dean の別プロジェクト、エクストリームな MESHIAAK のアルバムを聴けば、彼のテクニックが今まさに臨界へと達していることは明らかです。それでも、Dean が TERAMAZE でギターを捌くのではなく語らせるのは、ポリリズムやプログレッシブに潜む歌心を何よりも重視しているからでしょう。
そうして遂に Dean は最新作 “I Wonder” で自らが歌うことを選びました。バンドにとっては3作連続で異なるシンガーがフロントを務めることになりましたが、どうやら Dean の感傷的なソフトボイスは TERAMAZE の進化へと完璧に寄り添っているようですね。
アルバムには10分に迫る大曲が多数配置され、構成の妙やリズムの魔法で目眩く闇と祈りの絵巻物を象っていきます。それでも作品で最も印象に残るのは、”Lake 401″, “A Deep State of Awake”, “I Wonder” のような甘く切ないメロディーの輝き。逆に言えば、きっとポップソングは5分以内という常識を打ち破るのが何でもありの TERAMAZE なポップログ。
今回弊誌では、Dean Wells にインタビューを行うことができました。「僕たちは自分たちを、信念に従い音楽を書こうとしている人間以外の何者でもないと思っているんだ…僕は自分の信念を持っているし、それが音楽に浸透していくこともあるんだけど…でも、俺たちはただの TERAMAZE なんだよ。どんなラベルも関係なくね。」 どうぞ!!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JAMES PRATT OF COUNTLESS SKIES !!
“Maybe, Some Of The People Who Miss The Death Metal Elements Will Enjoy Glow. I Think If Nothing Else, It Has The Diversity That Was Found In Early Opeth.”
2人を繋ぎ合わせた TYPE O NEGATIVE の “October Rust” も彼女、そしてバンド全体にとって重要なレコードです。
「Peter Steele が大好きなの。私たちは TYPE O NEGATIVE が大好きで、彼らのアルバムは何枚も持っているけど、私にとってはこの作品がメインよ。”Cinnamon Girl”、”Be My Druidess”、そして “Wolf Moon”。Dobber は一度彼らのライブを見たことがあるのよ。うらやましいわ。私は Peter の自伝を読むことで埋め合わせなければならなかったの。バンドに関するメディアならは何でも買っているわ。彼らの曲を聴くのは経験になるのよ。Peter はとても賢い作詞家だから。聴いている音楽の中で一番面白い音楽だと思う。エネルギーを高めてくれるし、幸せな気分にさせてくれるわ。」
ANATHEMA, KATATONIA, SWALLOW THE SUN といった Peaceville 由来のゴシックドゥームな音モスフィアも当然 Cammie の養分です。
「ラブシックな音楽よね。クルーナー的な意味ではなく、切ない憧れとストーリー性を持った、かなりロマンティック。甘くて切なくて、夜にピッタリな音楽だわ。」
EVERGREY のプログレッシブな音の葉は OCEANS OF SLUMBER のスピリットと切っても切り離すことはできません。
「全員 EVERGREY の大ファンなの。”The Storm Within” は私の心を掻き毟り、彼らのエネルギーとボーカル Tom S. Englund が語る経験に引き込まれるわ。彼は信じられないほどソウルフルなのよ。OCEANS は彼らに比較的似ていると感じているの。素晴らしくとてもヘヴィなアルバムよ。」
Cammie の作詞へのアプローチは思慮深く、創造的です。”Pray For Fire” では、再生と破壊両方のための火の対照的な機能を探求しています。つまり人々と土地を守るため、国有林での制御された燃焼と、戦闘での火炎放射器の使用。
ファーストシングル “A Return To The Earth Below” では、自身の鬱病との闘いを、より幅広い社会のパターンとともに考察しています。「私は自分自身を助けるために、集中して前を向いて努力し続けなければならないと感じているの。誰にでも対処することや克服しなければならないことがあるわ。それをもう一度紐解いてみると、社会がいかに悪いパターンに陥っているかがわかるのよ。物事がうまくいっているように見えても、ヒトラー・ユーゲントのように、ゆっくりと、誰も気づかないうちに追い越されてしまうこともあるんだから。」
Cammie の文章には遊び心もあります。クローザー “The Red Flower” は女性としての葛藤と矛盾についての曲で、TYPE O NEGATIVE の “Wolf Moon” カヴァーが続きます。
「”The Red Flower” は女性らしさを歌った曲で、Peter Steele の超ロマンティックなラブソングが続くのよ。(笑) 彼は愛に溢れた男で、彼女のストレスを少しでも和らげたいと思っているのよ!あの曲を女性としてカバーするのはちょっと生意気だと思ったけどね。」
Cammie は将来、特に次世代に希望を持っています。
「子供たちは私たちが生きてきた頃よりも多くの情報を目にするようになってきていて、それが良い意味で彼らを形作っていくのは間違いないと思う。これからの世代は、情報に精通し、賢く、感情的に賢い世代。私は彼らが行動を起こして、過ちのいくつかを元に戻すと信じているわ。私は長い目で見て希望を持っているの。」
アメリカの会場が安全に再オープンし、OCEANS OF SLUMBER のツアーが許可されれば、Cammie は、旅を通して経験するすべての景色、匂い、味の感覚をまた満喫したいと語ります。
「会場に到着して、荷物を降ろして、街に繰り出す瞬間が恋しいわ。まだ開場していないし、皆が荷物を積み込んで、サウンドチェックをして、そして会場のドアから飛び出して外に出て、日の光に目を慣らしながら外に立ち、どこの街でも、どこの国でも、賑やかな通りを見て、すべてを受け入れるの。そして、オープン前の小さな探検の時間を過ごすのよ。地元のおやつ屋さんを見つけたり、コーヒーや食べ物を買いに行ったり。それが一番懐かしいわ。戻ってくるかどうかもわからない何かを待っている気分よ。例えば、飼い猫が逃げてしまった時のように。内向的な自分が思っていた以上にステージが必要なの。人が必要なの …ほとんど誰にも会わなかったこの期間で、思っていた以上に人や観客、ビジネスを失ったことは間違いない。ステージに立って、自分の歌を熱心に聴いてくれている人たちが受け止めてくれていることほど素晴らしいことはないの。それこそが繋がりよ。もう二度とそれを経験できないという考えは、心の中の何かを破壊してしまうのよ。」