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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【BLOODYWOOD : RAKSHAK】


COVER STORY : BLOODYWOOD “RAKSHAK”

“This Has Been Our Direction From Day One — Metal Can Be Fun. You Don’t Have To Be Angry All The Time. People Say Metal Is a Way Of Life, So You Do Get Happy, You Get Sad, You Are In a Chilled-out Mode.”


RAKSHAK

今世紀初頭。ムンバイのメタルヘッド、Sahil Makhija、通称 “The Demonstealer” が、シンフォニック・デスメタルの先駆者 DEMONIC RESURRECTION と共に登場したとき、彼らは必ずしもインドで諸手を挙げて歓迎されたわけではありませんでした。
インドでは80年代後半から POST MARK のようなメタルバンドが活動してはいましたが、00年代に入っても依然として地元のメタルはニッチな存在であり、ファンはヨーロッパやアメリカから来たお気に入りのアーティストを聴きたがっていたのです。そんな中で、IRON MAIDEN だけがインドを準定期的にツアーしており、地元のバンドのほとんどはカバー曲を中心に演奏するにとどまっていました。
「私たちはその頃、オリジナル曲を演奏するようになって、観客から瓶や石を投げつけられたものだよ。バスドラのペダルさえも手に入れるのが困難だった。レコード会社もなく、”ロック・ストリート・ジャーナル” という地元のロック雑誌があり、大きな大学では毎年、文化祭でバンド・バトルをやっていたくらいでね。当時はそれしかなかったんだ」
インドにおけるメタルのリソース不足に直面した Sahil は、インドのバンドを実現させたいなら、自分でやるしかないと決意しました。彼は、インド初のメタル専用のレコーディング・スタジオを設立し、その後すぐにインド初のメタル・レーベルである Demonstealer Records を設立します。そこで自身の音楽を発表し、ALBATROSS や今は亡き MyndSnare といったインドのバンドをサポートするだけでなく、彼のレーベルは BEHEMOTH や DIMMU BORGIR といった入手困難なバンドのアルバムをライセンスしリリースしました。また、元 DEMONIC RESURRECTION のベーシストである Husain Bandukwala と共に、インドで唯一のエクストリーム・メタル専門のフェスティバルである”Resurrection Festival” を立ち上げ、長年にわたって運営しました。

インド・メタルシーンの柱としての Demonstealer の地位は議論の余地がありません。しかし、自身の影響力と遺産について彼は実に控えめです。
「でも、もし私がやらなかったら、おそらく他の誰かがやってきて、いつか私の成したことをすべてやっていただろうね。でも、もし私が何らかの形で貢献できたのなら、それで満足だ。私は人生をメタル音楽の演奏に捧げているのだから」
Sahil は、貧困が蔓延している社会構造に加え、意味のある音楽ビジネスのインフラがないため、インドでバンドを存続させるためには基本的な収入が必要だと説明します。また、移動距離が長いためバンに乗って全国ツアーに出ることはできず、飛行機代やホテル代も考慮しなければならないことも。さらに最近まで、独自のPAシステムを備えた会場を見つけられることは稀で、各会場でPAシステムを調達し、レンタルしなければなりませんでした。
「その結果、ほとんどのバンドが赤字になり、長期的には解散してしまうんだ。今はマーチャンダイズで、なんとかやっていこうというバンドもいる。ツアーができるバンドもあるけど、簡単なことではないんだよ」
Sahil は早い時期から、物事を実現するために必要なことは何でもやると決めていました。
「メタル・ミュージシャンを続けられるように、自分の人生を設計したんだ。親と一緒にいること、子供を作らないこと、休暇にお金をかけないことも選んだ。自分がやりたいことはこれだとわかっていたから、そういった犠牲を払った。もし、友人たちのように給料が高くない仕事をするなら、その予算でどうやって生きていくかを考えなければならないだろうからね」

幸運にも、彼は “Headbanger’s Kitchen” というチャンネルと番組で、YouTuberとしてのキャリアを手に入れることができました。当初は一般の料理番組としてスタートした彼のチャンネルは、仲間のメタルミュージシャンにもインタビューを行いながら Sahil が実践しているケト食を推奨するプラットフォームへと発展し、今では彼の主な収入源となっています。
しかし、彼の最愛のものがメタルであることに変わりはなく、彼自身の努力もあって、この10年ほどでインドのメタルシーンは花開き始めています。多くの色彩、創造性、活気を伴いながら。
THE DOWN TRODDENCE は、地元のケララ州の民族音楽の要素をスラッシュとグルーヴ・メタル・アタックに融合させたバンドです。ただし、インドから生まれるバンドは、インドと同じくらい多様でありながら、ほとんどの場合、彼らは民族的なモチーフを過剰に使用することはないと Sahil は語ります。
「というのも、この国のメタルの魅力のひとつは、自分たちの文化に反抗することだからね」
オールドスクールなスラッシュとメタルを演奏する KRYPTOS、ブルータルなデス/グラインドを演奏するGUTSLIT、シッキム州の SKID ROW, もしくは WHITESNAKE とも言われる GIRISH AND THE CHRONICLES、メイデン風の高音ボーカルでホラー・メタルを演奏する ALBATROSS, 弊誌でインタビューを行ったインドの DREAM THEATER こと PINEAPPLE EXPRESS などこの地のメタルは意外にも、伝統への反抗意識から西欧の雛形を多く踏襲しています。

しかし、彼の地の多くのスタイルやサブジャンルが西洋の聴衆になじみがある一方で、社会的・政治的システムへの怒りや、地元の文化や神話を参照した歌詞には、インド独特の風味が際立ちます。ムンバイのスラッシャー、ZYGNEMA の最新シングル “I Am Nothing” は、インドの多くの地域で未だに悲しいことに蔓延している女性差別やレイプ文化に対して憤慨した楽曲。そして、The Demonstealer のバンドである DEMONIC RESURRECTION は、壮大なブラック・シンフォニック・デスメタルを得意とし、前作 “Dashavatar” はヒンドゥー教の神 Vishnu の10のアバターについて論じています。
その “Dashavatar” のリリースから発売から4年以上が経ちました。Sahil が詳述したロジスティックとファイナンシャルの問題により、バンドは過度に多作することができませんが、シンガー/ギタリストの彼自身はその限りではありません。WORKSHOP というコメディロックバンドや、REPTILIAN DEATH というオールドスクールなデスメタルバンドでも演奏し、現在は SOULS Ex INFERIS という国際的なアンダーグラウンド・スーパーグループでもボーカルを担当しています。その無限のエネルギーと情熱をソロ・プロジェクト Demonstealer に注ぎ込み、最新作のEP “The Holocene Termination” をリリースしました。この作品は、タイトルが示すように黙示録的であり、The Demonstealer 自身は、自分のネガティブな感情を全て注ぎ込んだと語っています。
「みんな今日起きて、パソコンを開いて最新の恐ろしいニュースを見るのが怖いくらいだと思うんだ。世界がどこに向かっているのか、自分がどう感じているのかを表現するには、音楽が一番だ。COVID にしろ気候変動にしろ、人々はどんどん頭が悪くなり、とんでもない陰謀論にひっかかり、学校で習った最も基本的な科学も忘れている。まるで進化を逆から見ているようだよ」
Demonstealer にはドゥーム系のダークな雰囲気が漂っていますが、Sahil Makhija はもっとポジティブで、特に彼が愛するヘヴィ・メタルの未来については楽観的です。
「インドのバンドがもっと国外に進出するのは間違いないだろう。10年前と比べると、みんなもっとたくさんツアーをやっているし、国際的なバンドがインドで演奏することも増えてきた。今後数年の間に、インド全土でそれなりのシーンと強力なオーディエンスを築き上げることができると思うよ」

その筆頭格が、ニューデリーの BLOODYWOOD でしょう。スラミング・ラップ・メタルとインドの民族音楽を組み合わせ、英語、パンジャブ語、ヒンディー語を織り交ぜながら、政治的、個人的な問題に正面から取り組む歌詞を描いた彼らのユニークなサウンドは、近年ますます話題になっています。
Sahil は、彼らがインドのバンドの中で最も国際的にブレイクしそうなバンドであり、3月に4回のイギリス公演を含むヨーロッパ・ツアーと、来年末の Bloodstock への出演が予定されていることに期待を膨らませます。
「インドはとても大きく、多様性に富んでいて、これがインドだと断定できるものは何もない。彼らはパンジャブ音楽を使うけど、その音楽はインドの南部では人気がないんだ。言語も文化も音楽も違う。国語もなく、すべてが多様なんだよね。でも BLOODYWOOD は、欧米や世界中の人が “インドのメタルはどんな音だろう?”と興味を持ったときに、聴きたいと思うようなものを捉えているんだ」
BLOODYWOOD が2018年に、”ラジ・アゲインスト・ザ・マシーン” という洒落たタイトルのツアーでヨーロッパを回ったとき、それはギタリスト、プロデューサー、作曲家の Karan Katiyar の言葉を借りれば “人生を変えるような経験” であったといいます。
「あの体験から立ち直れていないまま、もう2年も経ってしまったよ(笑) 俺たちにとっては1ヶ月の映画のようなもので、あらゆる感情が1000倍になっていたからね。友人たちは、俺たちがいつもその話をしていることにうんざりしているくらいでね。なぜなら、パンデミックに襲われる前、俺たちの人生で最後に起こった面白い出来事だったから。アレをもう一度、体験したいんだ」
3月にはヨーロッパに戻り、イギリスでの公演も予定されており、Bloodstook への出演も延期されていることから、彼らはその機会を得ることができそうです。今回は、煽情的なデビュー・アルバム “Rakshak” を携え、バンドを取り巻く興奮は最高潮にまで高まっています。

BLOODYWOOD の広大な多様性の感覚は、”Rakshak” で完璧に捉えられています。ヒンディー語と英語の混じった歌詞、そして常に変化し続けるサウンドで、このバンドを特定することは非常に困難な仕事となります。彼らは亜大陸の民族音楽(といっても北部パンジャブ地方が中心)を使うだけでなく、メタルの様々な要素を取り込んでいるのですから。彼らの曲の多くには明確に Nu-metal のグルーヴが存在しますが、時にはスラッシュやウルトラ・ヘヴィーなデスコアのような攻撃をも持ち込みます。
「俺らを特定のジャンルに当てはめるのは難しいよ。曲ごとにサウンドが大きく変わるから、インドのフォーク・メタルというタグに固執するのは難しいんだ。ジャンルが多すぎて特定できないけど、インドのグルーヴと伝統的なインドの楽器、そしてもちろんヒップホップを取り入れたモダン・メタルというのが一番わかりやすいかな」
そう Karan が分析すると、ラッパーの Raoul Kerr が続けます。
「ワイルドなアマルガムだよ。俺らは東洋と西洋の影響、その間のスイートスポットを探しているんだ」
シンガーの Jayant Bhadula がまとめます。
「これは様々な香辛料を配合したマサラ・メタルなんだよ(笑)」
どように表現しようとも、BLOODYWOOD のサウンドは実にユニークで、しかしそれ故にその開発には時間がかかりました。Raoul が説明します。
「観客の反応を理解し、完璧なバランスを見つけるために、何度も何度も実験を繰り返した結果なんだ。いったんスイート・スポットが見つかると、あらゆる可能性が開けてくる。インドの伝統音楽とメタル、この2つを融合させる新しい方法を見つけるのはまだまだ挑戦だけど、俺たちはこの方向性にとても満足しているんだ。このアルバムでは、そんなサウンドをたくさん聴くことができると思うよ」

2016年にニューデリーで結成されたこのバンドは、まずポップスやフォークソングを “メタライズ” した数々のカバーで、すぐにインターネット上でセンセーションを巻き起こしました。女優の Ileana D’Cruz がバングラ・ポップのヒット曲 “Ari Ari” の彼らのバージョンを何百万人ものインスタグラムのフォロワーと共有したときには、正真正銘のボリウッド・クロスオーバーの瞬間さえ起こしました。Raoul が振り返ります。
「ワイルドな時代だったね! 俺たちは自分たちのサウンドを発見し、オーディエンスを構築するためにカバーを使用したんだよ。それから自分たちの楽曲に集中した。アルバムには自分たちのオリジナルだけを収録したかったからね」
BLOODYWOOD というカレーには、メタル、ヒップホップ、バングラビートに伝統音楽。それ以外にも様々な香辛料が使用されているようです。
「あらゆる種類の音楽を聴いているよ。個人的にはメタル、ヒップホップ、ロックといったジャンルが好きだけど、どこの国の音楽であろうと、良いものは良いというのが俺らの共通認識なんだ。俺たちが作る音楽はそれを体現していて、どんなに異なるジャンルに見えても、全てに共通するものがあることを示している。Karan はThe Snake Charmer(インドで最も有名なバグパイパー)のプロデュースを、Jayant は穏やかな電子音楽とアコースティック音楽に情熱を注ぎ、Raoul は使命感を持って詩的なラップミュージックを作っているからね」
SNS は間違いなく、彼らのような “第三世界” のバンドにとってかけがえのない武器となります。
「間違いなくね。SNS のおかげで、地球上の人々はかつてないほど共感して、俺たちの音楽やメッセージに共鳴してくれるすべての人とつながることができるようになった。SNS は、俺たちが一体となって行動し、音楽の枠を超えてインパクトを与える力を与えてくれるんだ。俺たちのコメント欄をスクロールしてみると、俺たちとともに、インターネット上で最も美しい場所を作り上げている人々がいることがわかる。俺たちの成功は、ソーシャルメディアのポジティブな側面で築かれたものなんだ」

彼らにとって “妊娠期間” とも言えるカバーの時期は、BSB、50 cent、アリアナ・グランデ、そして NIRVANA, LINKIN PARK の曲を残酷にカバーしたアルバム “Anti Pop Vol.1″ で最高潮に達します。しかし、リック・アストリーをリフロールしていないときは(”Never Gonna Give You Up” の見事なヘヴィ・ヴァージョンが収録されている)、彼らは自分たちの楽曲に取り組み、それをよりシリアスなものへとゆっくりと変容させていったのです。
ライブ・セットでは時折騒々しいカヴァーが演奏されることもありますが、バンドは “ポップ・ミュージックを破壊する” という初期の目標よりも、もっと重要な目指すべきものがあることに気づくようになりました。自分たちのサウンドを発展させるだけでなく、自分たちが築いたプラットフォームを使って、自分たちが信じるものについて立ち上がり、発言するようになったのです。
BLOODYWOOD が真のデビュー作と位置づける、ヒンディー語のタイトル “Rakshak” は “保護者” と訳され、彼らの楽曲の多くにこのテーマが宿っています。Jayant が説明します。
「曲を聴いていると、守られているという感覚がある。でも、救世主が助けに来てくれるという意味ではないんだ。アートワークを見ると、子供と象が描かれているよね。象は、人間というこの壊れやすい生き物の中にある強さを表現しているんだ」
Raoul が付け加えます。
「より大きな視点で見ると、より良い世界への希望を象徴する人々、そして信念を守ることを歌っているんだよ。対立する政治をなくすことでも、性的暴行をなくすことでも、腐敗したジャーナリストの責任を追及することでも。何でもいい。大事なのはその希望の感覚を守ることなんだ。俺たちは、プライベートでも仕事でも、より良い世界への希望を与えてくれる多くの人々に出会ってた。俺たちが音楽を作る理由のひとつは、音楽が変化の触媒になり得ると信じているからなんだよ。音楽が俺たちに与えてきたポジティブな影響を考えれば、より良い世界を作る間接的な能力があると信じるに足るからね。
このアルバムは、俺たちが直面しているあらゆる課題から、人と地球全体を守るための共同作業について書いてある。俺たちは、問題を完全に排除することでこれを実現したいと考えているんだ。なぜなら、最善の防御は優れた攻撃であるから。分裂した政治、汚職、有害なニュース、性的暴行、いじめに関するメッセージや、うつ病との闘い、自分の限界への挑戦など、個人的なメッセージも封じながらね」

Karan、Jayant、Raoul の3人が中心となって結成され、ツアー時にはさらにメンバーが加わる BLOODYWOOD は、メンタルヘルスやいじめといった問題についても焦点を当てています。例えば、オンライン・カウンセリングを必要としているファンに無料で提供したり、ツアーの収益を NGO に寄付して、ホームレスの動物を助けるための救急車を提供したり。
例えば “Yaad” は、人間と人間の親友である犬の感動的な物語を通して、愛と喪失という普遍的な人間の経験を祝福するものです。 “Yaad” はヒンディー語で “思い出す”、”記憶の中で” という意味で、Karan の実体験を通して愛する人やペットを失ったことを受け入れて前に進む力について歌っています。
「この歌詞は、彼らが俺たちに与える永久的な影響を祝福し、どんなに離れていても、最高の思い出として彼らを胸に留め続けるという信念を繰り返している。俺は10年前に愛犬を亡くしたけど、今でもその喪失感を感じているんだ。MV では、そのメッセージを強調するために、人間と愛犬の絆を見せたいと思ったんだよ」
この曲とビデオの精神に基づき、BLOODYWOOD は、The Posh Foundationという地元の非営利動物保護施設に動物の救急車を購入する資金を提供しました。同団体が以前使用していた車両は、酷使と故障のために買い替えが必要でした。今後5年間でインドの首都圏にいる27,000匹以上のホームレス動物の命を救うことができるといいます。

一方で、”Machi Bhasad” は、高揚感とエネルギーに満ち、世界を変える声となります。
「元々は Ubisoft のゲーム “Beyond Good and Evil 2” のために作られた曲だ。新しい世代のパワーと、前世代よりも良くなる可能性を称える政治的メッセージのあるトラックなんだよ。ゲームの文脈の外では、この曲はトリビュートと行動への呼びかけ、その両方を意図している。俺たちのような人々に、かつて皆のためになることを考え、行動するようインスピレーションを与えたミュージシャンやリーダーへのトリビュート。同時に、多くの人の犠牲を払って少数のエリートに奉仕する不公平なシステムに疑問を投げかける。俺たちの世代が、先人たちが始めた仕事をやり遂げるための行動への呼びかけでもあるんだよな。世界をより良い方向に変えていくために」
パンジャブ語で “勇者よ生きろ” という意味の “Jee Veerey”は、鬱と戦い、心の健康を提唱するエモーショナルなテーマになっています。また、このシングルに関連して、オンライン・カウンセリングサイト HopeTherapy と提携し、彼らはバンドが負担する50回のカウンセリングセッションを提供しているのです。
「BLOODYWOOD の初日から俺たちは言っているんだが、メタルは楽しいものなんだ。いつも怒っている必要はないんだよ。よく、メタルは人生だと言われている。だから、喜んだり、悲しんだり、冷静になったりしてもいいんだよ。
俺らの曲が好きだという人からメッセージをもらったんだけど、そこには “でも、同性愛嫌悪や女性嫌悪に対するあなたの立場は?”って書いてあったんだ。俺はただ、”好きな人を好きになればいい” と言ったんだ。俺たちは、基本的にとてもオープンなんだよね。そういうメッセージを発信したいんだ」

Raoul にとって、”Raj Against The Machine” のタグ(バンドが最初のヨーロッパ公演の際に撮影したツアードキュメンタリーのタイトルでもある)は、単なるダジャレ以上のものでした。ラッパーである彼は、RAGE AGAINST THE MACHINE から音楽的にも活動面でも最も大きな影響を受けているからです。
「彼らは音楽が政治的、社会政治的な観点からどこまで行けるか、そして理想やアイデアの背後に人々を集結させるという点で、音楽がどれほど強いかを証明したんだよ。ほとんどのアーティストは、自分たちのやっていることで足跡を残したいと思っているし、俺たちも人々の生活にポジティブな影響を与えたいと思っている。それは作曲するときに常に念頭に置いていることで、このバンド全般のテーマは、この世界に価値を与えるものでなければならないということなんだ」
彼らは、そのポジティブさと正義の怒り、そして驚くほどユニークな音楽の組み合わせを、もうすぐ世界を震撼させることになるでしょう。
「どこに行くのか正確にはわからないけど、100パーセント確実に言えるのは、このアルバムにすべてを捧げたということだよ。完璧な嵐のように感じるよ。新しいセットでより高いレベルで戻ってくるし、フェスティバルもあるし、今年は本当に爆発するような、そんな良いポジションにいると思う…..音楽が音楽を超えて現実に影響を与えること、音楽が世界を変えることができることをさらに証明したいんだよ」
最後に、BLOODYWOOD とは結局、何なのでしょう?
「BLOODYWOOD はバンドであると同時にファミリーであり、ムーブメントでもあるんだ。俺らの音楽は、地球に永続的でポジティブなインパクトを与えるためのものなんだよ」

参考文献: KERRANG!:Bloodywood: “The theme of this band is that it has to be something that adds value to this world”

KERRANG!:Meet the man who brought metal to India

REVOLVER:WATCH INDIAN METAL VIRAL STARS BLOODYWOOD’S UPLIFTING NEW VIDEO “JEE VEEREY”

BLOODYWOOD BANDCAMP

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【MOON UNIT : DIFFERENCES IN LANGUAGE AND LIFESTYLE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JURE BULJEVIC OF MOON UNIT !!

“All Japanese Bands Are All Having a Lot Fun, a Lot Of Metal Bands Are Very Grim And Serious But Sex Machineguns And Maximum the Hormone Both Are The Complete Opposite.”

DISC REVIEW “DIFFERENCES IN LANGUAGE AND LIFESTYLE”

「MOON UNIT の名前は偶然生まれたものでね。いろいろな名前を考えていたんだけど、どれもしっくりこなかった。そんな時、友人がリハーサル・スペースにミックスを見に来て、私たちの音楽を “Devin Townsend と Frank Zappa のラブチャイルド” と評してくれたんだ。それで、自然に MOON UNIT が出てきて (Moon Unit とは Frank Zappa の娘の名前) 、そのまま定着してしまったわけさ」
FAITH NO MORE, Devin Townsend, Frank Zappa, RAGE AGAINST THE MACHINE, Eminem, ファミコンのサウンドトラック、アニメのイントロダクション、そしてスタートレック。考え得る最高のものを融合させたクロアチアのプログ怪獣、MOON UNIT。彼らのデビュー・アルバム “Differences in language and Lifestyle” は、今年最もワイルドでエキサイティングでインタレスティングなアルバムであると同時に、”第二次世界大戦でみんなが恐竜になったら?” “スーパー・ヒーローのスーパー・パワーがウナギと話せることだけだったら?” など壊れた現実世界よりは多少まともなテーマを扱っています。
「日本の音楽の何が好きかって?多くのメタルバンドは非常に重苦しくてシリアスだけど、SEX MACHINEGUNS と MAXIMUM THE HORMONE は正反対だから。彼らの曲は、シリアスで大きなテーマに取り組むのではなく、みかんや料理のレシピのような生活の中のありふれた普通のことを扱っている。同時に自分たちの音楽に対してとても真面目で強烈な印象を持っていて、それがとても魅力的だと感じたんだよね。クリエイティブでタイトな曲作り、優れた音楽性、ポジティブなエネルギー、とにかく全てが揃っていて、何かに挑戦することを恐れていないように感じられるんだ」
現在、プログの未来と絶賛される MOON UNIT は、東欧クロアチアからその音楽に対する哲学をなんと日本に学んでいました。”Differences in Language and Lifestyle” は、プログレッシブ・ロックやメタルのような “真面目” な世界では見落とされがちな、”楽しむ” ことを究極のテーマとしています。音楽面ではもちろん、DREAM THEATER や BETWEEN THE BURIED AND ME といった大御所の血がたしかに流れている一方で、MOON UNIT は未来のディストピアや昏睡状態の自己反省よりも、土曜日の朝のアニメやビデオゲーム、50年代の冒険シリーズをモチーフにしたタペストリーで成り立っていて、最も陰鬱なテーマにしても “スタートレック:ボイジャー” の下っ端として働くことの単調さと疲労についての瞑想という、メタルやプログの陰鬱とはかけ離れた日常の延長にあるのです。
そんな下らなく見えて実は重要で前代未聞な世界観を伝えたのが日本のアーティストであり、日本が培ってきた豊かなメロディーでした。そうして MOON UNIT は、歌って踊れて爽快で楽しく乗れてそれでも思慮深く知性が折り重なったプログの突破口を見出していったのです。
「90年代は、様々な音楽のムーブメントがあらゆる方向に向かって爆発した、とてもワイルドな時代だった。僕たちはもちろん、モダンな音楽も大好きだよ。特にヒップホップ。僕たちは常に新しい刺激的なものを試しているよ。だけど、自分たちのルーツから完全に離れることはできないからね。だから、僕たちの音楽は90年代の基盤を通してすべてのものが再解釈され、そこから多くの興味深いことが起こっているんだ」
エクレクティックの極北にありながら、これだけ “楽しさ” に的を絞ったプログを生み出せたのは、彼らが重度の音楽オタクであるという側面が大きいのではないでしょうか。オタクのツボはオタクにしかわからない。
開幕の “Velocirapture” では FAITH NO MORE でもマニアックな “Real Thing” を攻め立て、”Anatomy Park” では眩いばかりのシンセ・サウンドがホバークラフトのように “F-Zero” の世界を飛び回ります。”Ensign For Life” でドリーミーなギターポップを放てば、その返す刀 “Secret Squad” ではオールドスクール・ヒップホップと RATM, A TRIBE CALLED QUEST の共演でリスナーを沸かせ、”Splitting Hares” では臆面もなくメタルとゲーム音楽、そしてサイケデリック・トランスへの愛情を温故知新で紡いで見せます。
極めつけは、”Tuesday” でしょう。彼らのすべてを凝縮したプログの叙事詩は、ワクワク感を永続させながら楽曲のテーマである “終わりを受け入れること” についてあまりにも雄弁に語ってくれました。今回のプログ・パーティーはここでお終い。Jure が語るように、彼に乗り移る Kevin Moore のセンス、鍵盤やエレクトロのダンスが作品をネクスト・レベルへ誘っているのは明らかでしょう。
今回弊誌では、鍵盤奏者 Jure Buljević にインタビューを行うことができました。「日本には本当に優れたミュージシャンやプロデューサーがたくさんいるから、僕はいつも何かを探しているよ。日本のアーティストの多くは、心に残る素晴らしいメロディーを書く才能があって、それでたやすく音楽が言葉の壁を越えられるんだ」 どうぞ!!

MOON UNIT “DIFFERENCES IN LANGUAGE AND LIFESTYLE” : 10/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【GHOSTEMANE : ANTI-ICON】


COVER STORY : GHOSTEMANE “ANTI-ICON”

“Is There a Lack Of Danger In Modern Rock, Compared To Rap? Sometimes. But The Feeling Of Inauthenticity Is More About The Lack of Intent.”

ANTI-ICON

GHOSTEMANE の這い出る混沌、”Anti-Icon” は彼の人生において最も激動の時の産物です。それは歪んだビジョンによる究極のカタルシス。
“トラップメタル” の先駆者、多作の Eric Whitney は8枚のスタジオアルバム、10枚の EP、さらに4つの異なるペルソナのもと無数のコラボレーションまでを踏破し、ヒップホップ、ブラックメタル、ハードコア、ノイズに跨り新種のエクストリームミュージック傾倒者の想像力をかき立ててきました。古代から伝わる神秘主義、オカルトのイメージを織り込みながら。
遺体安置所での乱行パーティー、砂漠で燃やす霊柩車のプロローグを経て、”Anti-Icon” は10/21にリリースされました。淡い肌、黒い口紅に乳白色のコンタクトレンズ。さながら吸血鬼か死体のような彼の写真は、GHOSTEMANE のサウンドと美学の進化を象徴していました。
「Soundcloud にいたラッパーたちはストリートウェアに夢中だった。Supreme のような憧れのブランドは、信頼性の証でもあったんだ。だけど僕にとってそれは、皮肉で偽善的なものだったんだよ。だってそれを持っていないとからかわれるんだからね。僕にロゴはつけないよ。他の誰にも似せたくないから。」
それがアルバムタイトル “Anti-Icon” の源流なのでしょうか?
「アイコンというのは、インターネット時代を象徴する言葉の一つだと感じている。僕にとってアイコンとは、アリス・クーパーやマリリン・マンソンのような人のことだよ。10マイル離れていても誰だかわかる。外見も、声も、アクションフィギュアだって作ることができるほどに特徴的なんだ。でも最近じゃ、YouTuber や TikToker、ネット上のパーソナリティーにレッテルを貼るため。それがアイコンだとしたら、少なくとも僕がなりたいものじゃないね。」

ゴーストの物語は、フロリダ州レイクワースから始まりました。パームビーチから南に8マイル、サンシャインステートの郊外に広がる小さな町。ただし、Eric の記憶は父親の影によって暗く沈んでいます。
Eric が生まれる直前、ニューヨークからこの地に転勤した血液技師の父親は、Eric が4歳の時に交通事故で負傷し、それ以来ソファーと杖に拘束されていました。そうしておそらくはその苦境、その結果としてのオピオイド依存症が父親による Eric への支配を引き起こしたのです。Eric はその “暴君のような、ヘリコプターのような親” の複雑な記憶を歌詞の中で 「巨大な手を持った大きな怖い男たちが、僕の胸に指を突っ込み、何をすべきか命令した」と鮮明に振り返ります。
町の下層中流階級で育った Eric の青春は目立たないものでした。アメフトの男らしさも、オシャレへの努力も、行動的になることも、喉の奥で抑圧されていたからです。
「僕はとても内向的だった。友達も全然いなかったしね。学校じゃ、クールなブランドなんて身につけない子供さ。自分以外の何かになりたい、学校以外の何かをやりたい、ここ以外のどこかに行きたい、彼ら以外の誰かといたい、そんな圧倒的な衝動に駆られた10代だったな。いつも本当の自分との折り合いをつけようとしてるんだ。」

17歳の時に父親を亡くしたことが、Eric の感情的地滑りの引き金となりました。「ソーダのボトルを振ってキャップを開けたようなものさ。」
高校卒業後についた営業職で高額な年俸を得ていた Eric ですが、結局、閉所恐怖症のオフィスは彼が夢見ていた人生ではありませんでした。最初の逃避先はハードコアパンクでした。
「NEMESIS でギターを弾き、スラッジメタル SEVEN SERPENT ではドラムを叩いた。それで楽器のマルチな技術と友情が培われたんだ。今でも僕のキャリアには欠かせないものだ。家のようなものだったんだ。」
スピリチュアリティと仏教も Eric の閉ざした心を開かせました。ハーメティシズムと20世紀初頭の書物キバリオンの発見が彼を突き動かしたのです。
「それは宗教だけど、本当に科学に基づいている。僕にとって宇宙物理学は究極のスピリチュアリティなんだ。何より、僕たちが宇宙の中心じゃなく、もっと大きな存在の証を証明してくれるからね。僕にとって、別の領域への逃避でもあったんだよ。間違いなく今、世界は燃えている。ただ、世界には3つのタイプの人がいてね。僕は世界を売った人でも、世界を燃やした人でもない、ただそれを報告するためにここにいるだけなんだ。」
父親からもらった Dr.Dre の傑作 “The Chronic” を除いて、Eric のヒップホップな要素はこの時点まで皆無でした。しかし、NEMESIS のフロントマン Sam のレコードコレクションがその領域への道を開いたのです。DE LA SOUL, OUTKAST, HIEROGLYPHICS のようなアーティストの軽妙な創造性はまず Eric を魅了しました。それからメンフィスの大御所 THREE 6 MAFIA, マイアミの RAIDER KLAN のダークなライムを発見し、遂に Eric はヒップホップと真に心を通わせます。
「夢中になったよ。理解するべきは、僕が感じる闇や重苦しさは必ずしもヘヴィネスやラウドネスと同義ではないってことだった。それはね、ムードなんだよ。」

たしかに、メタルやハードコアは Eric の渇望するエネルギーとカタルシスを提供していましたが、無限の創造的可能性をもたらしていたのはラップだったのです。
「バンドだと他のメンバーと衝突しながら、自分のアイデアを伝えなきゃならない。ラップだとすべてが自分のアイデアなんだ。自分のやることは自分のやりたいこと。僕は完全にコントロールできるようになった。ただ、ラップ、メタル、インダストリアル、テクノ、アンビエント、アコースティック。それが今までに僕が持っていた全ての音とアイデアだ。胸の奥底にあるオカルト的なディストピアの悪夢を、血まみれになって届けるためのね。僕は何もためらっていない。ジャンルは絵の具のようなものだと思っていて、異なる考えや感情を表現するために異なる色相を使っている。だから、何かを感じたら、それに従う。その感情に合った音を見つけて、たとえそれが不完全なものであっても、たとえそれが “悪い” 音であったとしても、たとえそれに耐えられなくても、自分の外に押し出していくんだ。それが自分の真実に響くものであれば-自分の気持ちに響くものであれば-それはレコードに収録される。それだけさ。」
2014年に GHOSTEMANE が誕生し、カリフォルニアのより寛容なシーンを求めて移住したことが真のターニングポイントとなりました。
「”Ghostmane” ってトラックは音楽的な化学実験だった。これが本当の自分の姿だと気づいたんだ。」

インダストリアルな暗闇とメタリックなエッジ、それに NINE INCH NAILS の不気味さはもちろん当初から明らかに存在していました。ただし、”Anti-Icon” には新たな地平へ向かいつつ自らの精神を掘り下げる、縦と横同時進行のベクトルにおける深遠な変貌が見て取れます。2年というこれまでにない長い制作期間はその証明でもありました。
「多くのことを経験してきたよ。人生で最も変革的な時期だった。僕は自分の中にあるクソを全部取り出して作品に投影したんだ。みんな僕を羨んでいるけど、正直正気を保って自分が何者か忘れないようにすることに苦労してるから。」
“Anti-Icon” へのヒントは Eric の多種多様なサイドプロジェクトにありました。
“アンチ・ミュージック” と呼ばれるノイズプロジェクト GASM は、拷問のような不安感に苛まれていましたし、SWEARR の叩きつけるようなエレクトロは束縛なき陶酔感の中で脈動していました。BAADER-MEINHOF の生々しいブラックメタルは刃をつきつけ、GHOSTEMANE ブランドでリリースした 2019年ハードコアEP “Fear Network” は闘争、そのダークなアコースティックカウンターパート “Opium” は絶対的な虚無感を捉えており、そのすべては “Anti-Icon” への布石とも取れるのですから。
もちろん、2020年において “Anti-Icon” というタイトルはそのまま、”AI” というワードに直結します。人工知能。近未来のディストピア的イメージは、心を開いた Eric と親の威圧感からくる強迫観念、妄想被害の狭間で揺れ動いているのです。
「オピオイドなんて自分には関係ないと思ってた。中毒者のものだってね。だけど困難な時を経験した人なら誰だってそうなり得るんだ。僕はハイになったとさえ感じなくなった。気分が悪くならないように、ただそのために必要だったんだ。」

偽りの愛を繰り返し嘆く “Fed Up”, 「I DON’T LOVE YOU ANYMORE!」のマントラを打ち鳴らす “Hydrochloride”。疑心暗鬼は怒りに変わり、中毒で盲目となった Eric にとってこれはオピオイドへの別れの手紙でもあるのです。どん底へと落ちた Eric を引き止めたのは、まず父親と同様の行動を取った自身への嫌悪感だったのです。つまり、Eric は大の NIN ファンでありながら、ダウンワードのスパイラルではなく、ダウンワードからの帰還を作品へと刻んだと言えるでしょう。古い自分を終わらせ、新たな自分を生み出す。MVで示した燃える霊柩車は過去の灰。”N/O/I/S/E” からの解放。
「不死鳥は灰の中から蘇るだろ?古い自分を壊し、殺し、そこから新たな人間になるんだよ。」
前作はただ痛みと苦悩を記し続けた作品だったのかも知れません。
「”N/O/I/S/E”をレコーディングした時、僕は自由で真実味のある音楽を作りたかった。言葉は不器用で解釈を誤ることがあって、芸術の無形の資質を損なうものだと思っているからね。僕は自分の脳と骨の中を深く掘り下げて、これまで感じてきたあらゆる苦悩や、自分を含め多くの人に襲いかかるあらゆる惨劇を扱ったアルバムを作ったんだ。”N/O/I/S/E” は独自の言語であり、痛みと哀れみの出血する舌であり、恐怖の遠吠えであり、光や地上の音をすべて見失うほど深いところにある。世界が内側から自分自身を引き裂く音だった。」

毒を持って毒を制す。Eric の闇に光をもたらしたのは、奇しくも彼と同様ジャンルを渡り歩く賛否両論の “アイコン” Poppy でした。レディング&リーズのフェスで出会った二人は、7月に婚約を発表し、お揃いの漆黒に髪を染めた Poppy は “Lazaretto” の MV まで監修しています。
「彼女は素晴らしいよ。ビジュアルアーティストとして、彼女は他の追従を許さない。それは僕のキャリアの中で、自分自身を十分発揮できていなかった分野の一つだからね。だから彼女に自分の一部を託すのは、奇妙だけど楽しみなアイデアだよね。」
エクストリームミュージックの未来を担う新種として、そのパワー、可能性、そして自らの責任についてはどう考えているのでしょうか?
「ラップにくらべてロックが危険じゃない?時にはね。けど本物じゃない感じはたしかにあるよね。意図が失われたよ。メインストリームでモダンロックは大きく後退している。本当に悲しい曲や怒っている曲はもうラジオじゃ流れていないんだ。壊れた、失われた、悲しい、怒っている、病んでいる、実在の人々と実際につながるための意図がもっとあるべきだと思うんだ。僕にとっては、それが昔との最大の違いなんだ。」
とはいえ、ラップが GHOSTEMANE にとって根幹であることに変わりはありません。高音の叫び声から喉を掻き毟る嗚咽に密やかな囁きのが交互に繰り返されるさまは、さながら体に複数の悪魔が閉じ込められているよう。その悪魔はそうしてリアルを失ったロック世界を侵食していきます。
“Lazaretto” のクイックなリズムとダウンチューンギターの組み合わせには Nu-metal の亡霊が宿り、一方で”Sacrilege” ではハードコア、圧迫的なエレクトロニクス、そして幽玄なムードがダイナミックにブレンドされていて、現代のメタルアイコン CODE ORANGE とのシンクロニシティーを窺わせます。そして、”ASMR (Anti-Social Masochistic Rage) “の突き刺すようなビートは、Eric のアイコン、マリリン・マンソンと同様のダーティーな秘め事を思い起こさせるのです。


Eric にとってこうした多様で変幻自在な音の葉は、やはり暗闇への下降より自らの成長を象徴しています。”Anti-Icon” で最も荒涼とした瞬間 “Melanchoholic” でさえ希望のノートで締めくくられるように。
「僕の中にあったクソみたいなものを全部取り込んで、それを外に投影しているような感じ。今はとても気分がいい。自分の中に溜め込まずにね。」
エリックはどんな種類の伝道活動も嫌いで、「キリスト教と同じくらいラヴェイ派サタニズムを嫌っている」と宣言していますが、それは TikTok などで何が一番ポップになるかを気にするのではなく、他のアーティストが限界に挑戦するように願う気持ちにも通じます。
AUTHOR & PUNISHER, FULL OF HELL, 3TEETH。彼が真の同種と考えるアーティストは、箱の外に踏み出したパフォーマーなのですから。ボストンの VEIN もそのうちの一つ。
「彼らは実験を始めて、自分たちのシーンの人々がどう背を向けるかを経験しているんだ。僕もそれがどんなものか知っている。だから彼らが実験やり続けていること、常に努力していることは、僕にとっては驚くべきことなんだ。」
GHOSTEMANE の目的もより鮮明となりました。
「君が本当に自由であれば、作りたいものを作り、やりたいことをやり、自分の心を語り、制限なく生きることができる。だけど自分自身を傷つけてはならないよ。それがこのプロジェクトの目的だ。GHOSTEMANE は自由な精神を投影したものだから。
僕は自分とそして君たちのために音楽を作り続けるつもりだよ。別の生き方を探している人たちのために、道を切り開いていくんだ。僕は好きな時に好きなように動き、好きなものを作る。選択と独立性は僕たちが受け取った最もユニークな贈り物でだから。それは君だけがコントロールできるもの。痛みや苦悩を通してさえもね。君に治療法を与えることはできないし、どう生きるべきかを伝えることもできないけど、アイデアを与えることはできるから。僕見たこの世界を反映して、君が自由で真の人生への道を辿ることを願っているよ。僕は自分の音楽に種を蒔いてきたからね。解読するのには何年もかかるかもしれない。だけどそれが自由の仕事であり、独立の重荷だ。」

望むのは永遠不滅の音の遺産。
「自分を超えて生きているものを作りたい。この世で何が起こるかは、僕にとってそれほど重要なことじゃない。その先の世代に何が起こるのか、僕が死んだ後に何が起こるのか。全てが塵となり、荒廃した地球上に轟く風が、堕落した都市の記憶を蹴散らした時、僕は自分の音楽のかすかな叫び声を無限に響かせたい。」
最終的には、彼の最優先事項は常にファンでした。「批評家のことなど気にするな、彼らは本当に理解していないんだ。批評家のことなど気にするな、彼らは本当に理解していないんだ」と、熱を帯びて繰り返すリードシングル “AI” が宣言しているように。
「孤独や喪失感を感じたことのある人、この世界には何も残っていないと感じている人、何も持っていないと感じている人のための音楽さ。ただ音だけが聞こえるようになるまで、レコードを大音量で聴いて、落ち込んだことを忘れてほしい。ショーに来て、自分のことを知ってほしいんだ。」
300ドルの Supreme のパーカーを欲しがった15歳の若者は、結局自分で作った服が “ハイアートでプライスレス” あることに気づきました。鬱、中毒、自滅のサイクルから逃れるための教訓は結局のところ希望なのです。
「”Anti-Icon” は暗くて憂鬱で虚無的に聞こえるけど、実はとても希望的なものなんだ。人は常に変化し拡大し続けるものだから。かつての自分がが死ぬわけじゃない。君を押しつぶしているように感じるような人生だって、君がより良い何かとして自分自身を再創造するための新しい材料を作り出しているんだよ。超新星が爆発すると、新しい星が生まれる。エネルギーは永遠に続くんだ。」

参考文献:KERRANG! :How Ghostemane is changing the fabric of heavy music

REVOLVER:GHOSTEMANE: THROUGH THE FRAME

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NEW DISC REVIEW + COVER STORY 【SLIPKNOT : WE ARE NOT YOUR KIND】


COVER STORY: SLIPKNOT “WE ARE NOT YOUR KIND”

“We Are Not Your Kind” Is The Most Artsy Mainstream Metal Record So Far.

DISC REVIEW “WE ARE NOT YOUR KIND”

2019年は SLIPKNOT にとってビッグイヤーに定められた年でした。セルフタイトルのデビューアルバム “Slipknot” のリリースから20年、メタル史に残る金字塔 “Vol. 3: The Subliminal Verses” のリリースから15年。しかし、襲い来るトラウマや悲劇を乗り越えたアイオワの怪奇集団にとっては、その不死身の記念碑ですら通過儀礼に過ぎないことを最新作 “We Are Not Your Kind” が如実に証明しています。
ベーシスト Paul Grey の急逝、中心メンバー Joey Jordison の離脱、Corey Taylor の離婚、Clown 愛娘の逝去、Chris Fehn の解雇劇。並みのバンドならば歩みを止めざるを得ないような状況におかれても、SLIPKNOT は諦めることなく前進を続けています。アニバーサリーの追憶に浸る代わりに、バンドは長くソリッドなライティングプロセスを過ごし新たなマイルストーンを完成へと導きました。


「歩み続けるうち、俺らはまた自由を手にしたんだ。やりたいことは何でもできる。この作品は “Vol. 3: The Subliminal Verses” と同じヴァイブ、エナジーだったね。俺らが満足している限り、どこへでも行けるのさ。」
SLIPKNOT がこれほど大きな支持を得ているのは、その過激な外観、実験性、エクストリームな音楽性の内面に陰鬱美麗なメロディーと芳醇なフックを備えていることが理由でしょう。そして、Corey Taylor は “We Are Not Your Kind” が、かつて自らが生み出したそのダイナミズムの怪物と同様のイメージで制作されたことを認めています。
“Iowa” でインテンスとアグレッションの圧倒的な狂演を見せつけた後、バンドが辿り着いた自由な創造性と対比の美学こそ “Vol.3” の哲学でした。故に、切迫した暗がりでそのスピリットを引き継いだ “We Are Not Your Kind” には、あの重音の実験室に加えて、旋律と戦慄のコントラストが遥かな進化を遂げながら確かに宿っているのです。言い換えれば、Billboard 200 で No.1を獲得した驚異の最新作は最もアーティスティックな “大衆のためのメタル” と言えるのかも知れませんね。

もちろん、メタル、ハードコア、ヒップホップのトライアングルは SLIPKNOT のコアとして存在し続けてきましたが、”Vol.3″ のトリッピーなチェンバーポップ “Circle” が示すように、3つのフラスコのみで化学反応を起こすほど彼らの実験室は限定的ではありません。
「このアルバムで、また俺らが変わったことをやれていると感じた最初の楽曲が “Spiders” だった。コアの部分をまず録音して、そこからシチューを煮込むみたいに適切な要素を加えていったのさ。ギターソロは Adrian Belew に大きなヒントを得ているよ。David Bowie が “Fasion” でやったようなことさ。」
Corey の言葉通り、”Spiders” は David Bowie が残したニューウェーブの煌めき、カメレオンの音魂を彼らの流儀でダークに抱きしめた SLIPKNOT の新たな惑星でしょう。NINE INCH NAILS の音景も封入されているでしょうか。David をインスピレーションとした火星にも似たその新境地は1曲にとどまりません。”Space Oddity” のイメージをドゥーミーに、SWANS ライクに宿す “A Liar’s Funeral” は Corey のフェイバリットです。
「David Bowie がブラックメタルをやったような楽曲だね。大量のアトモスフィアと鋭さ、そして衝撃が混ざり合っている。」


実験という意味では、TANGERINE DREAM を想起させるコズミックなイントロダクション “Insert Coin” から連なる “Unsainted” の壮大なケミストリーを見逃すわけにはいきません。
「アルバムで最後に完成した楽曲なんだ。そして、アルバムの以降の方向性を告げる最高のランドマークとなったね。」
THE ROLLING STONES の “You Can’t Always Get What You Want”、もしくは PINK FLOYD の “The Wall” にも似たコーラスマジックを携えた楽曲は、メタル、インダストリアル、サウンドトラック、クラッシックロックのキャッチーかつ完璧なキメラです。
一方で、HEALTH や GOJIRA の波動を滲ませる “Birth of the Cruel” の狡猾さもアーティスティックな “大衆のためのメタル” に真実味を加えていきます。さらに “My Pain” のエレクトロなパルスを Stanley Kubrick の映画と評する Corey。事実、アルバムは Clown の子供とも言える “Death Because of Death”, “What’s Next” といったセグエによって映画のようなドラマ性を帯びています。それは、緩と急、静と動を織り込んだエモーションのローラーコースター。実は当初 Shawn “Clown” Crahan が目指していたのは、”The Wall” のようなコンセプチュアルで二枚組の壮大な音楽劇でした。

Jim Root が 「俺らと進化してこのアルバムを気にいっても良いし、そうじゃなくても良い。ただ俺らはいつもいきたい場所へ行くだけさ。」と嘯けば、Mick Thomson は 「アルバムが好かれようが嫌われようがどうでも良い。どの道俺らは全員にアピールするような音楽じゃないから。全員に気に入られるような音楽には興味がないよ。俺らはただ自分に正直でいたいんだ。」 と主張します。
つまり、SLIPKNOT はきっと永遠に “We Are Not Your Kind” 誰の言いなりにもならず自らの百鬼夜行を続けるはずです。ただし、心から望んで、正直に表現した音楽が、これほど多くの支持を得られる危険でエクストリームな “メインストリーム” メタルバンドも、きっと永遠に SLIPKNOT だけなのかも知れません。

SLIPKNOT “WE ARE NOT YOUR KIND” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PINEAPPLE EXPRESS : ANTHEM】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH PINEAPPLE EXPRESS !!

“Bollywood” Just Translates To “Mainstream” For Me. Prog Is a Genre That Is Overlooked By The Mainstream Audience. But We Are Trying To Make It Accessible And Enjoyable For The Regular Listener. “

DISC REVIEW “ANTHEM”

“バーフバリ” やボリウッドの成功が象徴するように、桃源郷のようなインドのエンターテイメントは世界中を席巻しています。そして、モダンプログ/メタルの世界においても、インドはもはや目が離せないニューフロンティアとなっています。
PERIPHERY のキャッチーと TesseracT のアトモスフィアを抱きしめる SKYHARBOR、インドの伝統音楽を複雑怪奇に探求する AMOGH SYMPHONY, Bruce Soord, Steve Kitch の知を導入した PARADIGM SHIFT, ダークでオルタナティヴなピンクフロイド COMA ROSSI, そしてもはやベースワールドのトッププレイヤーとなった Mohini Dei。すでに、インドの活況はプログレッシブユートピアの相を呈していますね。
中でも、PINEAPPLE EXPRESS はそのインドのカラフルで煌びやかな悦楽の園を、見事にモダンメタル/プログの世界へと投影したエルドラドです。
「僕たちの音楽が持つポテンシャルを最大限発揮するためには、より多くの要素が必要だと悟ったんだよ。」バンドの創設者でキーボードプレイヤー YOGEENDRA が語るように、インド音楽シーンのハブ都市バンガロールに端を発する PINEAPPLE EXPRESS は、その壮大かつ多様な音楽性を具現化するために、8人のメンバーを揃えることとなりました。
フルートにヴァイオリン、そしてダブル、時にトリプルボーカルとなる豊かな旋律のアンサンブルは、最新シングル “Anthem” のまさにアンセムたる由縁です。そして、インドの伝統音楽から DREAM THEATER、SKRILLEX まで、通過した全ての音楽を等しく愛すると語る YOGEENDRA の言葉通り、モダンプログ/メタルはもちろん、Nu-metal, EDM, マスロック、ジャズ、エレクトロニカ、ヒップホップと涌き出でるその多様性の泉は、言語的ビッグバンをも伴って、圧倒的なフックと高揚感を孕みながらリスナーのエナジーへと変換されていくのです。
さらに、PVの熱狂的なオーディエンスが物語るように、その音楽とライブパフォーマンスが放つ圧倒的なスペクタクル性は、PINEAPPLE EXPRESS こそプログワールドにおける次世代の旗手である証なのかもしれません。
「僕にとって “ボリウッド” という言葉は “メインストリーム” と同義なんだ。そしてプログというジャンルはメインストリームのリスナーから見落とされていると思うんだ。だからこそ、僕たちはプログをよりアクセシブルに、一般的なリスナーが楽しめるように味付けしようとしているんだよ。」彼らはボリウッド成功の秘訣を理解しています。そしてあのゴージャスな浮世絵巻きを愛するプログの世界へと持ち込み、停滞するシーンに活路を見出そうとしているのかも知れませんね。
ただし、EP “Uplift” の複雑極まるオープナー “Cloud 8.9” を聴けば伝わるように、バンドの創造性、ハイテクニック、コンポジションはすでに名だたるプログロースターにも一切引けを取りません。むしろ従来のプログメソッドでも十分勝負可能なアビリティーを備えながら、メインストリーム、一般リスナーを意識した彼らの舵取りは、それこそが真の意味での “プログレッシブ” を体現しているのかもしれませんね。
今回弊誌では、4人のメンバーにインタビューを行うことが出来ました。公開数日での15万再生突破は伊達ではありません。さらに、旬のサウンドマン ARCH ECHO の Adam Bentley がミキシングを手がけたアンセムをぜひ。どうぞ!!

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【HIATUS KAIYOTE : CHOOSE YOUR WEAPON】SUMMER SONIC 2016 Special !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH NAI PALM OF HIATUS KAIYOTE !!

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Australia Based Super Eclectic Future Soul Outfit, Hiatus Kaiyote Set To Come Back To Japan in August! Don’t Miss Their Splendid Performance At Summer Sonic 2016 !!

DISC REVIEW “CHOOSE YOUR WEAPON”

オーストラリアを代表するアーティストへと躍進を遂げ、Summer Sonic 2016 への出演も決定している “Multi-Dimensional, Polyrhythmic Gangster Shit” こと HIATUS KAIYOTE。2度のグラミー賞へのノミネート、Q-Tip とのコラボレート、Robert Glasper の作品への参加、Chance the Rapper によるサンプルの使用など、何かと話題の多い彼らですが、注目を集めるのも当然。それは、”Neo Soul”, “Future Soul” と評されている事実からも分かるように、非常にエクレクティックで、スリリングで、斬新で、未来への扉を開ける音楽を創出しているからでしょう。
3年というインターバルを要した彼らの最新作 “Choose Your Weapon” は、さらにサウンドの領域を広げバリエーションに富んだ、完成度の高い傑作に仕上がりました。70分18曲に及ぶ大作は、Modern Jazz, 70’s Funk, Samba, Hip Hop, House, African Soul, Fusion, Prog Rock など実に多彩な要素を取り込みつつ、華やかなエレクトロニカサウンドで装飾された、カラフルで万華鏡のような作品です。デビュー作 “Tawk Tomahawk” が随所にその才能のキラメキを感じさせながらも、10曲30分といういかにも食い足りないランニングタイムであったことを考えれば、本格的に勝負に出たレコードとも言えるでしょう。
“Shaolin Monk Mothefunk” は “Choose Your Weapon” への招待状。ボーカル/ギター Nai Palm の Stevie Wonder, Amy Winehouse を想起させるソウルフルな歌唱、しなやかに配置されたメロディーとカウンターハーモニー、断続的に行われるキーチェンジは実に見事で、アルバムを通してバンドの推進力となっていますね。ウォーキングベースと4ビートでスウィングするヴィンテージジャズサウンドから一転、楽曲は目まぐるしくもアフロ・ポップのグルーヴを刻み始めます。シンセサイザー&フレットレスベースの高速アルペジオと Nai の鬼気迫る歌唱が一体となり、畳み掛ける終盤は圧巻の一言。リスナーはこの時点で、アルバムがいかにアイデアに溢れた作品であるか理解することでしょう。
楽器隊の群を抜いたパフォーマンスも勿論聴き所の1つです。特にシンセサイザーを操る Simon Marvin の音色の豊かさ、テクニックは白眉。宮崎アニメ、”天空の城ラピュタ”にインスパイアされたという “Laputa” ではシンセサイザーがパステルカラーの波を生み出し、”Jekyll” ではピアノでバンド全員のエキゾチックなルーツと並外れたテクニックを引き出します。”Breathing Underwater” での、サンバ・エレクトロニカなどと称したくなる試みも画期的ですね。
特筆すべきは、”Atari” で Dubstep 的ビートとチップチューンを大胆に使用し、キャッチーで未来色の音楽を提示しています。このレコードで何度も聴ける、Perrin Moss の異なる拍子を刻む多次元的なドラミングと Paul Bender の印象的なリフを刻むリードベースが、楽曲にロックらしいダイナミズムをもたらしていますね。同時に、彼らのプログ的側面も開花しており、YES のような”キメ”を使用し、70’s Rock のムードを盛り込んでいることは非常に興味深い対比ですね。
加えて、LAジャズシーンとの接近もアルバムの重要な要素です。”Jazz the New Chapter” シリーズで紹介されたように、HIATUS KAIYOTE は間違いなく、新たに拡散する Jazz サウンドの先端にも立っています。”Creations Pt.1″ には明らかに FLYING LOTUS からの影響が感じられますし、Nai が16.7歳の時に書いたという “Fingerprints” のサウンドは Robert Glasper の手法と通じます。
トレンドを意識しつつ、独自の音楽を開拓する HIATUS KAIYOTE。今回弊誌ではバンドの顔とも言える Nai Palm にインタビューを行うことが出来ました。5月の来日から3ヶ月での帰還となります。どうぞ!

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HIATUS KAIYOTE “CHOOSE YOUR WEAPON” 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【KOUTEI CAMERA GIRL : LENINGRAD LOUD GIRLZ】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH KOUTEI CAMERA GIRL !!

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Japanese Girls Rap Crew, KOUTEI CAMERA GIRL has just released revolutionary new record “Leningrad Loud Girlz” !!!

衝撃のデビュー作 “Ghost Cat” から半年。ガールズラップクルー 校庭カメラガール が待望の2ndアルバム “Leningrad Loud Girlz” を早くもリリースしました!!
グラミー賞や各有名音楽紙ベストアルバムの結果を見るまでもなく、今年を代表する1枚が Kendrick Lamar の “To Pimp A Butterfly” であることは議論の余地もないでしょう。Kendrick や Flying Lotus, Robert Glasper などが提唱し取り組んでいるポピュラーミュージックのアップグレード。HIPHOP, ジャズ、ファンク、ソウル、エレクトロニカなど黒人音楽をルーツとしたこのムーブメントに素早く反応したガールズグループの一つが 校庭カメラガール なのではないでしょうか?”Star flat Wonder Last”なんて特に。同時に今年話題となった ZEDD, AVICII といった EDMアーティストの新作とも通じる部分はあると感じました。
勿論、ラップという観点ではアイドル枠でもリリスク、RHYMEBERRY が存在しますし、ガールズラップという括りで考えても水曜日のカンパネルラや泉まくらなど面白いアーティストが続々と出現しています。ただ、コウテカのトレンドを取り入れながらも、さらに先を切り開くような音楽性はその中でも驚くほどに異端ですね。基本はクラブミュージックでありながら、6人のラップやボーカルは非常にキャッチーで良い意味の邦楽感もありますし、メッセージ性も強く、先に挙げた要素以外にもポストロックやバンドサウンドまで幅広くチャレンジしています。
異端と言えば、メンバーの名前も「もるも もる」「しゅがしゅ らら」「ましゅり どますてぃ」「ののるる れめる」「らみた たらった」「ぱたこあんど ぱたこ」とかなり変わっていますし、今までには存在しなかった新しいアイドル像を体現しているのかも知れません。
今回弊誌では、コウテカメンバーのうち4人に話を聞くことができました。メンバーの時に人を食ったような回答も実にらしいですね。12/18には初のワンマン公演も控えています。購入はこちらから。どうぞ!

MMM RATING IS…

KOUTEI CAMERA GIRL “LENINGRAD LOUD GIRLS” : 9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SRV. VINCI : MAD ME MORE SOFTLY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DAIKI TSUNETA OF Srv.Vinci!!

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JAPANESE “ROCK THE NEW CHAPTER” HAS BEGUN!! Srv. Vinci HAS JUST RELEASED INCREDIBLE DEBUT ALBUM “MAD ME MORE SOFTLY”!!

例えばヘンドリックスだったり、例えばカート・コベインだったり、例えばシド・ヴィシャスだったり。ジャンルやシーンが誕生する時、そこには必ずアイコン的な人物が登場します。今回インタビューを行った Srv.Vinci の常田大希さんもそういった存在ではないか?音楽を聴いてご回答いただくうちに、そんな思いを強くしました。Srv.Vinci は東京出身の4人組。バンドの中心人物、常田さんは東京芸術大学でチェロを専攻していたという経歴の持ち主。クラッシックの素養は勿論、ジミヘンで音楽に目覚めたというロックな一面、そして日本でも新しいジャズのムーブメントを起こそうと行われた TOKYO JAZZ SUMMIT に招聘されるなどジャズに精通する一面も併せ持っています。そんな奇才の音楽が具現化されたのが Srv.Vinci のデビュー作 “Mad Me More Softly” です。一聴して感じたことは”日本からも遂にこんなアーティストが現れたのか…”。クラッシック、ブルース、ジャズ、ロック、ヒップホップ、エレクトロニカ…西洋音楽と総称される音楽ジャンルを全て詰め込んだのではと思えるほどカラフルでエクレクティックなサウンドに圧倒されました。RADIOHEAD に初めて出会った時の様な感覚かも知れません。”メジャーシーンの考え方と相入れるのは難しいと思う。でもそんなこと気にする事はなくて。まったく日本を意識したくないじゃん。ジャズでもロックでもポップでもなんでも、世界目線でポップであれば俺はいいと思うけどね。最終的に目指すのは。そう思ってやってますよ。” (Jazz Summit Tokyo インタビューより) 以前拝見したインタビュー、この一節に非常に共感を覚えたのですがまさに世界目線なサウンドであることは強調して置かなければならないでしょう。Robert Glasper をアイコンに掲げジャズの新たな地平を切り開く Jazz The New Chapter。Flying Lotus を首領とし、ヒップホップの新形態、斬新でクールなビートを模索する Brainfeeder。そして Kendrik Lamer, D’Angelo といった、今まさに世界の先端を走るイノベーターたちのサウンドと比肩し得るほど高いクオリティとチャレンジスピリットを兼ね備えた作品だと断言出来ると思います。同時に、先述したアーティストたちが重要視しているポップ性やアートワーク、PVを含む”見せ方”を Srv.Vinci も大事にしていて、世界でも認められる可能性を強く感じさせます。ぜひ今回のインタビュー、そして勿論彼らの音楽から Srv.Vinci の”アナーキズム”を感じていただきたいですね。どうぞ!!

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MMM RATING⭐️

Srv.VINCI “MAD ME MORE SOFTLY” : 9/10

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PICK UP ARTIST 【LOTUS】


JAMBAND? ELECTRO? POST-ROCK? Yeah,I think so. But I’d like to say it’s only ROCK!!

夏だ!サマーだ!フジロックだっ!夏フェスの季節になりましたね。
ただあんなクソ暑い中、野外でライブばかり見ていては体を壊します。熱中症まっしぐらです。涼しい自宅で昨年フジロックを沸かせたこのアーティストを聴きましょう。

LOTUSです!!

【JAMBAND/LIVETRONICA】

ああ言って置いて何ですが素晴らしいライブバンドです。当初はGREATFUL DEAD,FISHといったようなジャムとエレクトリックミュージックの融合を目指して結成されたバンドなのです。ファンクの要素も加えて踊れるインストに拘り年間のライブ本数は100本を越えます。話が違うじゃないですか・・・

”ライブとスタジオ作品は明らかに大きな差異のようなものがあると思っている。”

彼らは明確にライブとアルバムを区別しています。と言うよりもJambandという枠だけに彼らの才能が収まりきっていないと言った方が正確でしょうか。
Steve Reichのようなミニマル・ミュージックの要素に、バンド全員が影響を受けたというTORTOISEのような実験性Pat Methenyを敬愛するギタリストはジャジーでサウンドスケーピーなフレーズも奏でます。
特に近年はジャム、インプロはライブでといった考えが顕著なようでアルバムは非常にキャッチーでカッチリと仕上げている印象がありますね。と言うことで彼らの作品の中から自宅で聴くのにオススメなアルバムを紹介します。

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