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THE 40 MOST IMPRESSIVE ALBUMS OF 2019: MARUNOUCHI MUZIK MAGAZINE


THE 40 MOST IMPRESSIVE ALBUMS OF 2019: MARUNOUCHI MUZIK MAGAZINE

1: VENOM PRISON “SAMSARA”

「私は “フィーメールフロンテット” って言葉が好きじゃないの。だってこの言葉はただフロントを務める人物のジェンダーのみによって、サブジャンルのようなものを形成してしまうから。その女性ボーカルを擁するバンドたちが生み出す音楽関係なしにね。」
これまで虐げられてきたシーンに対するリベンジにも思える女性の進出は、2010年代のモダンメタルにとって最大のトピックの一つでしょう。
VENOM PRISON の牙は上顎にデスメタルを、下顎にハードコアの “毒” を宿した音楽の鋭き牙。そうしてセクシズムやミソジニーのみならず、彼らは負の輪廻を構築する現代社会全域に鋭い牙を向けるのです。
“クロスオーバー” の観点から見れば、CODE ORANGE や VEIN がハードコアとメタルの禍々しき婚姻をハードコア側のプロポーズで成立させたのに対し、VENOM PRISON はデスメタルの血統で見事にクロスオーバーの美学を体現してみせました。当然、両者の凶悪なマリアージュ、さらに英国の復権も2010年代を象徴する混沌でした。
「セクシズムと言えば私たちはすぐにメタルを批難するけれど、性差別や女性嫌いは音楽業界だけでなく、私たちの生活のあらゆる面で直面する世界的な問題なの。だからセクシズムとの闘いについて話すとき、私はメタルという自分のミクロな宇宙の中だけでなく、あらゆるレベルで戦いたいと思うのよ。」
ファンタジーにかこつけたミソジニーを負の遺産と捉え始めたシーンの潮流において、VENOM PRISON のフロントウーマン Larissa Stupar は潮目を違える天変地異なのかも知れません。”Samsara” がそんな10年の閉幕にスポットライトを浴びたのはある種象徴的な出来事でした。

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2: DEVIN TOWNSEND “EMPATH”

「現在の Devin Townsend が持つ音楽的な興味全てが、一つの場所へ収まったとしたらどうなるだろうか?」
フォーク、シンフォニック、ポップ、プログ、ファンク、ブラックメタル、ジャズ、ニューウェーブ、アメリカーナ、ワールドミュージック、そして EDM。Devin の中に巣食うマルチディメンショナルな音楽世界を一切の制限なく投影したレコードこそ “Empath” です。そして “エンパス” “感情を読み取る者” のタイトルが意味する通り、Devin がアルバムに封じた万華鏡のエモーションを紐解くべきはリスナーでしょう。
「アルバムは、喜びと人々の助けになりたいという思いに根ざしている。楽曲に多様性を持たせたのは、”Empath” “共感”が弱さと捉えられてきた歴史の中で、人生を様々な観点から見る必要性を表現したかったから。僕にとっても長い間狭い場所に閉じ込められていた創造性を解き放ち、恐怖から脱却するためのやり方だったね。多様性が増す時代において、他人の気持ちになって物事を見ることは他者を理解する上で欠かせないプロセスさ。」

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3: WILDERUN “VEIL OF IMAGINATION”

「”エピック” はおそらく最も僕たちの音楽を要約した言葉だけど、ただ僕たちの音楽にあるいくつかのより進歩的で実験的な側面をそれでもまだ除外しているように感じるね。」
虚空に七色の音華を咲かせるフォーク-デス-ブラック-アトモスフェリック-シンフォニック-プログレッシブ-エピックメタル WILDERUN は、ジャンルという色彩のリミットを完全に排除してリスナーに名作映画、もしくは高貴なオペラにも似て胸踊るスペクタクルとドラマティシズムをもたらします。
「OPETH の音楽には特に昔の音源でダークな傾向があるんだけど、WILDERUN には常に見過ごされがちな明るく豊かな側面があったと思うんだ。」
時にアートワークから傑作を確信させるレコードが存在しますが、WILDERUNの最新作 “Veil of Imagination” はまさにその類でしょう。アートワークに咲き誇る百花繚乱はそのまま万華鏡のレコードを象徴し、”陽の”OPETHとも表現されるブライトでシンフォニックに舞い上がる華のモダンメタルは、シーンにおける “壮大” の概念さえ変えてしまうほど鮮烈なオーパスに仕上がりました。

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4: JINJER “MACRO”

「時に穏やかで平穏。だけど時に人々は何かが起こるのをただ待っている。今現在、少なくとも爆撃はされていないわ。それは良い事ね。」
アイコニックな女性をフロントに抱き、多様性を音楽のアイデンティティーとして奉納し、ウクライナという第三世界から登場した JINJER は、実はその存在自体が越境、拡散するモダンメタルの理念を体現しています。テクニカルなグルーヴメタルに Nu-metal と djent の DNA を配合し、R&B からジャズ、レゲエ、ウクライナの伝統音楽まで多様な音の葉を吸収した JINJER のユニークな個性は双子の “Micro” と “Macro” で完璧に開花します。
無慈悲なデスメタルから東欧のメランコリー、そしてレゲエの躍動までを描く“Judgement (& Punishment)” はJINJER の持つプログのダイナミズムを代弁する楽曲でしょう。
「僕たちの音楽に境界は存在しない。いいかい?ここにあるのは、多様性、多様性、そして多様性だ。」そう Eugene が語れば Tatiana は 「JINJER に加わる前、私はレゲエ、スカ、ファンクをプレイするバンドにいたの。だからレゲエの大ファンなのよ。頭はドレッドにしていたし、ラスタファリに全て捧げていたわ。葉っぱはやらないけど。苦手なの。JINJER は以前 “Who Is Gonna Be the One” でもレゲエを取り入れたのよ。レゲエをメタルにもっともっと挿入したいわ。クールだから。」と幅広い音楽の嗜好を明かします。
比較するべきはもはやメタル世界最大の恐竜 GOJIRA でしょうか。それとも MESHUGGAH? 音楽、リリックのボーダーはもちろん、メタファーではなく実際に険しい国境を超えた勇者 JINJER の冒険はまだ始まったばかりです。

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5: LINGUA IGNOTA “CALIGULA”

「世界に正義を見出すこと、私を傷つけた人間に責任を見出すことにずっと苦労してきたの。だから音楽は奴らに責任を負わせ、正義を見つける私のやり方なの。私なりの復讐なのよ。」
家庭内暴力、虐待の生還者 Kristin Hayter のパワフルな言葉です。そして彼女の受けた恐ろしき痛みと攻撃性は、オペラからノイズ、インダストリアル、フォークに教会音楽、スピリチュアル、そしてメタルまで全てを渾淆した婀娜めきのプロジェクト LINGUA IGNOTA に注がれています。
マイノリティーの逆襲、虐待というタブーに挑む女性アーティストは今後増えて行くはずだと Kristin は語ります。事実、SVALBARD はリベンジポルノを糾弾し、VENOM PRISON は代理出産やレイプについて叫びをあげているのですから。
「どれだけの人が女性を嫌っているか、どれだけ世界が女性を嫌っているか知れば知るほど、”サバイバー” として他の女性への責任を感じるの。これからどこに行くのでしょうね?だけど最も重要なことは、リアルであり続けること。だから音楽を作ったり、暴力について語る必要がなくなればそうするわ。永遠に虐待の被害者になりたくはないからね。」

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6: LITURGY “H.A.Q.Q.”

「哲学は思慮深い政治的スタンスを持つための非常に重要なツールだと、僕は心から思うんだ。だって今の世の中、特定の強い意見を持つ人にしたって、大抵そこに本当の根拠はないんだからね。」
もしかすると、Hunter Hunt-Hendrix の原動力は全てこの言葉に集約するのかもしれませんね。つまり彼は音楽、芸術、哲学の三原則を新たな三位一体とした、資本主義を超越する新世界の到来を啓蒙も厭わないほどに心から願っているのです。
「音楽コミュニティは一般的に反知的だから、アルバムの表紙に哲学システムを載せることで少なくともリスナーにそれを見てもらい、それが何を意味するのか気にして欲しかったんだ。」
世界を少しでもより良い場所へと導きたい。その想いは、アートワークのダイアグラムから始まり徹頭徹尾、”超越的な神” であり現実世界の活動原理である “H.A.Q.Q.” と、それを理想として生まれ来る未来都市 “Haelegen” の実現へと注がれています。
「ほとんどの人は、意志、想像力、理解の間に根本的な違いがあることには同意するけれど、誰もその理由を知らないんだ。実はこれら3つは音楽、芸術、哲学にそのままマッピングすることができて、この分野を発展させれば歴史的な運命の道筋を作ることが出来るんじゃないかな。」
“H.A.Q.Q.”、いや LITURGY でさえ、Hunter Hunt-Hendrix が標榜するより良い世界 “Haelegen” への道筋でしかありません。

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7: TOOL “FEAR INOCULUM”

待てば海路の日和あり。長すぎる13年の潮待ちはしかし TOOL アーミーにエルドラドの至福をもたらしました。三度グラミーを獲得し、Billbord 200のトップ10を独占した今でも、TOOL はアートメタル、オルタナティブ、サイケデリア、マスメタル、プログレッシブが交わる不可視境界線に住んでいて、ただ己の好奇心とスキルのみを磨き上げています。
“Thinking Persons Metal”。知性と本能、静謐と激情、懇篤と獰猛、明快と難解、旋律とノイズ、美麗と醜悪、整然と不規則といった矛盾を調和させる TOOL の異能は思考人のメタルと評され、多様性とコントラストを司るモダンメタルの指標として崇められてきました。そして4750日ぶりに届けられたバンドの新たなマイルストーン “Fear Inoculum” は、日数分の成熟を加味した “Think” と “Feel” の完璧なる婚姻だと言えるでしょう。
「完成させたものは良いものとは言えない。良いものこそが完成品なんだ。」 Adam Jones のマントラを基盤とした作品には確かに想像を遥かに超えた時間と労力が注がれました。ただし、その遅延が故にファンから死の脅迫を受けた Maynard に対して Danny が発した 「みんなが楽しんでいる TOOL の音楽は TOOL のやり方でしか作れないのに。簡単じゃないよ。」の言葉通り難産の末降臨した “Fear Inoculum” には徹頭徹尾 TOOL の哲学が貫かれているのです。
年齢を重ねるごとに、ポロポロと感受性や好奇心の雫がこぼれ落ちるアーティスト、もっと言えば人間を横目に、瑞々しさを一欠片も失わないレジェンドがテーマに選んだのは “成熟” でした。
TOOL, TOOLER, TOOLEST。反抗、進化、融和、魂の同化。そして遂に最上級へと達した TOOL の成熟。TOOL のタイムラインはきっと人間の “人生” と密接に関連しているはずです。次の啓示がいつになるのかはわかりませんが、自身の経験やドラマとバンドのメッセージを重ね合わせることが出来るならそれはきっと素晴らしい相関関係だと言えるでしょう。

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8: CHELSEA WOLFE “BIRTH OF VIOLENCE”

フォーク、ゴス、ポストパンク、インダストリアル、メタル…2010年、デビューアルバム “The Grime and the Glow” を世に放って以来、Chelsea Wolfe はジャンヌダルクの風姿で立ち止まることなく自らの音の葉を拡張し続けてきました。10年続いた旅の後、千里眼を湛えたスピリチュアルな音求者は、本能に従って彼女が “家” と呼ぶアコースティックフォークの領域へと帰り着いたのです。
「批判を受けやすく挑戦的な作品だけど、私は成長して開花する時が来たと感じたのよ。」
ダークロックのゴシッククイーンとして確固たる地位を築き上げた Chelsea にとって、アコースティックフォークに深く見初められたアルバムへの回帰は確かに大胆な冒険に違いありません。ただし、批判それ以上に森閑寂然の世界の中に自らの哲学である二面性を刻み込むことこそ、彼女にとって真なる挑戦だったのでした。
「私はいつも自分の中に息づく二面性を保持しているのよ。重厚な一面と衷心な一面ね。それで、みんながヘヴィーだとみなしているレコードにおいてでさえ、私は両者を表現しているの。」
”目覚め始めるレコード” において鍵となるのは女性の力です。
「そろそろ白か黒か以外の考え方を受け入れるべき時よ。”ジェンダー” の概念は流動的なの。そして全ての種類の声を音楽にもたらすことで沢山の美しさが生まれるのよ。今まさにその波が押し寄せているの!素晴らしいわ!」
長い間会員制の “ボーイズクラブ” だったロックの舞台が女性をはじめとした様々な層へと解放され始めている。その事実は、ある種孤高の存在として10年シーンを牽引し続けた女王の魂を喚起しインスピレーションの湖をもたらすこととなりました。

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9: ALCEST “SPIRITUAL INSTINCT”

“Spiritual Instinct” の製作は Neige にとってある意味ヒーリングプロセスとも言えるものでした。
「生きづらいと感じる原因の一つが自己評価の低さなんだ。自分が全然好きじゃなくてね。それってクールじゃないんだけどね。自分を貶めながら生きている訳だから。普通の生き方じゃないよ。だからこのアルバムは疑問と疑いに満ちている。だけど今はあの頃より良い場所にいる。だからこの作品は治療の意味合いもあったんだ。」
Neige が厳格に成文化されたブラックメタルの基準を回避して来たのは、その音楽の大部分が怒りに根差していないからとも言えます。自然からインスピレーションを受けるノルウェーのミュージシャンに共感する一方で、常に希望を伝える Neige の有り様はコープスペイントで木々に五芒星を書き殴るよりも、森の中のアニミストのようにも思えます。
実際、Neige は5歳のころから約4年間自らの精神が肉体を離れる幽体離脱、臨死体験のような超感覚的ビジョンを経験しています。
「何度も何度も、完全にランダムに起こる現象だった。この世界には存在しないような場所のイメージや感情、時にはサウンドまで心の中に浮かんで来るんだ。まさにスピリチュアルな体験で、人生を永遠に完全に変えたんだ。」
そうして物質宇宙を超えて別の領域が存在するという確信を得た Neige は、スピリチュアルに呼吸する” 音楽 “Spiritual Instinct” を完成へと導きました。
「あの臨死体験を経て、僕は死後の世界、魂とは何か、そして人生の意味を問うようになったんだ。ビッグクエッションだよね。」
つまり、Neige がフランス語で紡ぐ憂鬱と悲しみのイントネーションには、彼が憧れの中に垣間見た魔法の場所へと回帰するロマンチックな目的まで含まれているのです。ALCEST の動力源は審美の探求。例えその場所が死によってのみでしか到達できないとしても。

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10: BLOOD INCANTATION “HIDDEN HISTORY OF THE HUMAN RACE”

「僕たちの音楽、アートワーク、歌詞の主な目標は、人々に先入観を疑わせることなんだ。音楽的にだけじゃなく、概念的にも限界を押し広げることが重要なんだよ。そのため、エイリアンや次元を股にかける存在だけじゃなく、何かにインスパイアされて自分自身の内なる世界を拡大することもまた重要なテーマなんだ。」
宇宙、異次元、エイリアンをビッグテーマに “アストラルデスメタル” の称号を得る BLOOD INCANTATION は、しかし自らの存在や哲学を “サイエンスフィクション” の世界に留め置くことはありません。SF を隠喩や象徴として扱う “デス・スター” 真の目的は、現実世界のリスナーに森羅万象あらゆる “常識” に対して疑問を抱かせることでした。
もちろん、その非日常、非現実は音の葉にも反映されています。HORRENDOUS, TOMB MOLD, GATECREEPER を従え津波となった OSDM リバイバルの中でも、BLOOD INCANTATION の映し出す混沌と荘厳のコントラスト、プログの知性やドゥームの神秘まで内包する多様性はまさに異能のエイリアンだと言えるでしょう。

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THE 40 MOST IMPRESSIVE ALBUMS OF 2018 : MARUNOUCHI MUZIK MAGAZINE


THE 40 MOST IMPRESSIVE ALBUMS OF 2018 : MARUNOUCHI MUZIK MAGAZINE

1: GHOST “PREQUELLE”

昨年 “最も印象的だったアルバム” の記事にも記しましたが、近年、MASTODON, VOLBEAT, Steven Wilson, PALLBEARER, Thundercat、さらに今年も GODSMACK, ALICE IN CHAINS, DISTURBED, SHINEDOWN など様々なジャンルの旗手とも呼べるアーティストが “ポップ” に魅せられ、レガシーの再構築を試みる動きが音楽シーン全体の大きなうねりとして存在するように思えます。当然、邪悪とポップを融合させた稀有なるバンド GHOST もまさしくその潮流の中にいます。
「JUDAS PRIEST はポップミュージックを書いていると思う。彼らはとてもポップな感覚を音楽に与えるのが得意だよね。PINK FLOYD も同様にキャッチー。ちょっと楽曲が長すぎるにしてもね。」
と語るように、Tobias のポップに対する解釈は非常に寛容かつ挑戦的。さらにモダン=多様性とするならば、70年代と80年代にフォーカスした “Prequelle” において、その創造性は皮肉なことに実にモダンだと言えるのかもしれません。実際、アルバムにはメタル、ポップを軸として、ダンスからプログ、ニューウェーブまでオカルトのフィルターを通し醸造されたエクレクティックな音景が広がっています。
もちろん、シンセサイザー、オルガン、キーボードの響きが GHOST を基点としてシーンに復活しつつあることは喜ばしい兆候だと言えますね。同時に、サックス、フルート、ハグストロムギターまで取り入れたプログレッシブの胎動は “Prequelle” 核心の一部。Tobias はプログロックの大ファンで、作曲のほとんどはプログレッシブのインスピレーションが原型となっていることを認めています。伝統的なプログロック、プログメタルの世界が停滞を余儀なくされている世界で、しかしプログレッシブなマインドは地平の外側で確かに引き継がれているのです。
ウルトラキャッチーでフックに満ち溢れたカラフルなレコードは、数多のリスナーに “メタル” の素晴らしさを伝え、さらなる “信者” を獲得するはずです。
ただし、匿名性を暴かれた Tobias の野望はここが終着地ではありません。多くのゲストスターを揃えたサイドプロジェクトもその一つ。すでに、JUDAS PRIEST の Rob Halford がコラボレートの計画を明かしていますし、これからもスウェーデンの影を宿したメタルイノベーターから目を離すことは出来ませんね。何より、全ては彼の壮大な計画の一部に過ぎないのですから。

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2: YOB “OUR RAW HEART”

スラッジ、ドゥーム、ストーナーのプログレッシブで多様な進化はもはや無視できないほどにメタルの世界を侵食しています。中でも、オレゴンの悠久からコズミックなヘヴィネスと瞑想を標榜し、ドゥームメタルを革新へと導くイノベーターこそ YOB。バンドのマスターマインド Mike Scheidt は2017年、自らの終焉 “死” と三度対峙し、克服し、人生観や死生観を根底から覆した勝利の凱歌 “Our Raw Heart” と共に誇り高き帰還を遂げました。
「死に近づいたことで僕の人生はとても深みを帯びたと感じるよ。」と Mike は語ります。実際、”楽しむこと”、創作の喜びを改めて悟り享受する Mike と YOB が遂に辿り着いた真言 “Our Raw Heart” で描写したのは、決して仄暗い苦痛の病床ではなく、生残の希望と喜びを携えた無心の賛歌だったのですから。
事実、ミニマルで獰猛な2014年の前作 “Clearing the Path to Ascend” を鑑みれば、全7曲73分の巡礼 “Our Raw Heart” のクリエイティビティー、アトモスフィアに生々流転のメタモルフォーゼが訪れたことは明らかでしょう。
作品のセンターに位置する16分の過重と慈愛の融合 “Beauty in Falling Leaves” はまさに YOB が曝け出す “Raw Heart” の象徴でした。甘くメランコリックなイントロダクションは、仏教のミステリアスな響きを伴って Mike の迫真に満ちた歌声を導きます。それは嵐の前の静けさ。ディストーションの解放はすなわち感情の解放。ベースとドラムスの躍動が重なると、バンドの心臓ギターリフはオーバートーンのワルツを踊り、濃密なビートは重く揺らぐリバーブの海で脈動していくのです。バンド史上最もエモーショナルでドラマティックなエピックは、死生の悲哀と感傷から不変の光明を見出し、蘇った YOB の作品を横断するスロウバーン、全てを薙ぎ倒す重戦車の嗎は決して怒りに根ざしたものではありませんでした。
結果として YOB は THOU や KHEMMIS と共にドゥームに再度新風を吹き込むこととなりました。例えば CATHEDRAL の闇深き森をイメージさせるオープナー “Ablaze” ではジャンルのトレードマークにアップリフティングでドリーミーなテクスチャーを注入しドゥームの持つ感情の幅を拡大しています。
そうしてアルバムは僅かな寂寞とそして希望に満ちた光のドゥーム “Our Raw Heart” でその幕を閉じます。人生と新たな始まりに当てた14分のラブレターは、バンドに降臨した奇跡のマントラにしてサイケデリックジャーニー。開かれたカーテンから差し込むピュアな太陽。ポストメタルの領域にも接近したシネマティックでトランセンドな燦然のドゥームチューンは、彼らとそしてジャンルの息災、進化を祝う饗宴なのかも知れませんね。

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3: SVALBARD “IT’S HARD TO HAVE HOPE”

女性の躍動と、多様性、両極性を旨とする HOLY ROAR RECORDS の台頭は2018年のトピックでした。越流するエモーションをプロテストミュージックへと昇華し、英国ブリストルから咆哮を貫く至宝 SVALBARD はまさにその両者を象徴する存在です。熾烈なメタル/ハードコアにポストロックの叙情と風光、ポストメタルの思索と旅路を織り込みさらなる多様化の波動を導いた新作 “It’s Hard to Have Hope” はシーンの革新であり、同時に閉塞した世界が渇望する変化への希望となりました。
確かに “It’s Hard to Have Hope” は怒れるアルバムで、中絶、性的暴力、リベンジポルノ、インターンシップの無賃雇用など不条理でダークな社会問題をテーマとして扱っています。
さらには、「このアルバムは、ステージに女の子が立つことにネガティブなコメントを寄せる人たちに対する私からの返答よ。”女性をメタルから追い出せ!” と言うような人たち、コンサートで女性にハラスメント行為を行う人たち。これは彼らに対する私からの恐れなき怒りの返答なの。」と語るように、女性フロントマンとして Serena が長年メタルシーンで苦しんできたハラスメント行為の数々も、作品の持つ怒りの温度を “フェミニストのメタルアルバム” の名の下に上昇させていることは明らかです。
とはいえ、この類稀なる感情と表情の結晶が、唯一怒りにのみ根ざすわけではないこともまた事実でしょう。実際、Serena はこの作品の目的が “人々にこういった社会的不公平を伝えるだけではなく、なぜそういった問題が起き続けるのか疑問を投げかけることだった” と語っています。「誰が正しいのか互いに主張し合うのを止めてこう尋ねるの。一緒に前進するために何ができるだろう?より良き変化のためお互い助け合えないだろうか?とね。」とも。
そうして世界のターニングポイントとなるべくして示現した “It’s Hard to Have Hope” に、一筋の光明にも思える尊きアトモスフィア、荘厳なる音の風景がより深く織り込まれていることはむしろ当然の進化だと言えるでしょう。
CULT OF LUNA や MY BLOODY VALENTINE のイメージこそ深化の証。そうしてポストブラックの激しさと光明を背負った彼女は悲痛な叫びを投げかけます。「いったい誰が女性を守ってくれるの?」

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THE 40 MOST IMPRESSIVE ALBUMS OF 2016 : MARUNOUCHI MUZIK MAGAZINE


THE 40 MOST IMPRESSIVE ALBUMS OF 2016 : MARUNOUCHI MUZIK MAGAZINE

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1. GOJIRA “MAGMA”

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2016年は日本でもゴジラ旋風が吹き荒れましたが、世界のメタルシーンを制圧したのも間違いなく GOJIRA だったと言えるでしょう。
奇才 Duplantier 兄弟率いるフランスの4人組 GOJIRA がリリースした “Magma” と名付けられたレコードは、これまでのどの作品とも異なるものでした。コンパクトな43分という作品でフォーカスされたのは、エモーションとアトモスフィアを前面に押し出した、キャッチーさとアート性の共存。Prog, Death, Sludge, Tribal, Math をユニークにミックスし、メタルの最先端を走ってきた巨人は、その先鋭性を微塵も失うことなくコマーシャルな感覚を強く生み出しているのです。
アルバムオープナー、”The Shooting Star” はチャレンジングな楽曲。実に瞑想的で、Joe Duplantier のヒプノティックなクリーンボイスとドライブするグルーヴが卓越したアトモスフィアを生み、リスナーをトランス状態へと誘います。実際、Joe のクリーンボイスは以前より遥かに多用されており、尚且つ雄弁です。
“Silvera” ほどエモーショナルな瞬間はこれまでの作品には存在しなかったはずです。メインリフの重量感に、タッピングが生み出すアーティスティックなムード、そしてキャッチーなリードギターとクリーンボーカルが三位一体となり溢れる強烈な感情。このヘヴィーなテリトリーのエモーションは、レコーディング中に Duplantier 兄弟の母親が亡くなったことに起因しています。
兄弟の様々なな感情、特別なパッションを全てクリエイティビティに注いだ結果、アルバムは無駄な時間など一切存在しない、濃密でアトラクティブな傑作に仕上がりました。MASTODON やBARONESS もチャレンジしていますが、芸術性とコマーシャリズムの融合という点でこの作品を超えるモダンメタルのレコードはないと断言出来るように思います。

2. ALCEST “KODAMA”

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ALCEST は所謂 “Blackgaze”、Black Metal と Shoegaze を融合させたパイオニア的存在です。幻想的で内省的。メランコリックな繊細さと悲痛な激しさが生み出す圧倒的なダイナミズム、神々しいまでの美しさはシーンに衝撃を与え、DEAFHEAVEN などに続く Post-Black のうねりを創出したのです。
“Kodama” は前作 “Shelter” と対になるカウンターパーツ的な作品と言えるかもしれません。インタビューにあるように、今作のテーマとなったもののけ姫とも通じる自然を食い物にする現代社会、そしてその闇の部分でもあるテロリズムが ALCEST を動かしました。ある意味メタルのルーツに戻り、よりダークな1面にフォーカスした”最も怒れる”作品は、それでもやはり徹頭徹尾 ALCEST です。そして同時に、彼らの新しいチャレンジである POP センスが花開いたアルバムであるとも言えるでしょう。

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3. DAVID BOWIE “★”

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ロックにとって、2016年は R.I.P の年でした。それは勿論、多くの伝説的なアーティストを失ったという意味でもあり、同時に”ロックを避ける”というやり方で最も本来のロックを体現していた David Bowie を失ったという意味でもあるのです。
彼の遺作となった”★” は NYC の先鋭実力派ジャズミュージシャンを起用し制作されました。しかし、David は決してジャズアルバムを作りたかった訳ではありません。ここには、サウンドトラック、ロック、ソウル、インダストリアル、フォーク、ヒップホップなどカラフルでエクレクティックなサウンドの万華鏡があるだけです。
David は Kendric Lamar の “To Pimp A Butterfly” を愛聴していたと言われています。所謂 Jazz the New Chapter と共感したのは、ただ一つのジャンルに囚われず、様々なサウンドを取り入れジャンルを拡大して行くその精神性でした。
“Lazarus” は自身の墓標だったのでしょうか、トーマス・ジェローム・ニュートンの再来でしょうか、それともジギー・スターダストの復活なのでしょうか?ただ一つ言えることは、この狂おしいまでにダークで美しい世界観は、唯一無二で、究極にロックの本質である冒険性や自由さに溢れているということです。彼の遺志を次ぐアーティストがいつかロックの世界に現れるのでしょうか。

4. ASTRONOID “AIR”

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ミュージックシーンには、時にリスナーの想像を遥かに超えて、ジャンルの壁を平然と、無慈悲なまでに叩き壊すような存在が現れます。マサチューセッツを拠点とし、”Dream Thrash” を指標する5人組 ASTRONOID はまさにそういったバンドでしょう。彼らが Blood Music からリリースしたデビューフルレングス “Air” は、メタルシーンのトレンドを左右しかねないほどの傑作にして重要作となりました。
Black Metal に新たな要素を加えた Post-Black と呼ばれるジャンルが注目を集める、昨今のメタルシーン。多幸感を伴うアトモスフィア、Shoegaze 要素を融合させた ALCEST, DEAFHEAVEN、WOLVES IN THE THRONE ROOM, 実験的な Math / Prog 要素を果敢に取り入れた KRALLICE, LITRUGY は間違いなく Post-Black シーンのフラッグシップだと言えますね。
ASTRONOID はその両輪、 Shoegaze, Math / Prog 要素のみならず、Thrash Metal, Prog, Post-Rock, Power Metal, Dream Pop など実に多様なジャンルをミックスし、”Black Metal の最終形態” とでも表現したくなるような新しい音楽を生み出したのです。
51分間のシネマティックなドリームスケープは、多幸感と希望に満ち、ポップさの限界までプッシュしながら、アグレッションと実験性をも多分に盛り込んだ、Black Metal のマイルストーン的な作品として長く語り継がれることでしょう。

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5. FALLUJAH “DREAMLESS”

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現在、海外のメタルシーンにおいて最も注目を集めている新鋭の1つ、変革者にして Atmospheric Death Metal の始祖 FALLUJAH。
“Death Metal Revolution” (デスメタル革命) とまで評された出世作 “The Flesh Prevails” から2年。メタル界のメガレーベル、Nuclear Blast に移籍して初の作品 “Dreamless” は、より美しく、よりキャッチーで、同時にシンセサウンドや女性ボーカルをチャレンジングに取り入れた、多様なモダンメタルを象徴する作品に仕上がりました。

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6. MESHUGGAH “THE VIOLENT SLEEP OF REASON”

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MESHUGGAH はモダンメタル、エクストリームミュージックの帝王でありパイオニアです。Djent は勿論、Jazz/Fusion を取り入れた Instru-metal, より数学的な要素にフォーカスした Mathcore などそのポリリズミックでローチューンドなヘヴィーサウンドが後続に与えた影響は計り知れません。
4年ぶりにリリースされた新作 “The Violent Sleep of Reason” は彼らのトレードマークとも言える複雑でヘヴィーな世界観、リズムセンスは保ちながら、よりオーガニックでストレートなアルバムに仕上がりました。アルバムオープナー、”Clockworks” を聴けば作品のプロダクションが非常に生々しく、有機的で、今日のメタルアルバムとは趣を異にすることに気づくでしょう。オールドスクールとも言えるノスタルジックなサウンドは、皮肉なことに過去のいくつかの作品よりもギタートーンをビッグに響かせ、新たな怪物を生んでいます。
メカニカルで精密に計算されたグルーヴを、率直で生々しいプロダクションで包み込んだ理由。それはアルバムのコンセプトに通じます。”危険な睡眠状態” とは、世界中で起きている無慈悲なテロリズムに対して、何ら行動を起こさない一般の人々を指しています。MESHUGGAH が作品に有機的な感覚、エモーションを強く取り入れたのは、世界の人たちにに手を挙げて欲しい、テロリズムと戦わなければならないというメッセージでもあるのです。
ダイナミックで、インテンスに溢れ、エナジーに満ちたレコードで MESHUGGAH はその価値を再度証明しました。この作品を受け止める私たちには何が出来るでしょうか?

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