COVER STORY : MACHINE HEAD “OF KINGDOM AND CROWN”
“Attack On Titan Was That Both Sides In That Story Believe That They’re Doing Good, But They’re Both Committing Evil And Atrocities. Once I Started Wrapping My Head Around The Concept That Was Going On In Attack On Titan, I Was Like, “Oh, Shit, I Can Do That To This Concept That I’m Writing.”
OF KINGDOM AND CROWN
Robb Flynn は、逆境に慣れているわけではありません。若い頃は、オークランドのストリートで暴力に遭遇し、ドラッグに手を染めたこともありますがそれでも。MACHINE “Fuckin'” HEAD は、多くの人がメタルは終わった、死んだと言っていた90年代初頭のシーンで、頭角を現しました。長年にわたり、彼はバンドの約30年の歴史の中で唯一不変の存在であり、ゆえに内部からの問題、そして外部からの問題に直面し続けています。直近では、2019年のアルバム “Catharsis” が多くの批判にさらされ、その直後、バンドの半数が辞めていきました。
しかし、常に襲い来る逆風の中でも Robb Flynn は背筋を伸ばし、自らの意思を貫いてきました。しばしば、突き刺さる批判という槍の鋒も、結局は彼を駆り立てただけでした。MEGADETH の記事でも触れましたが、あの時代のメタル・アーティスト、そのレジリエンス、反発力、回復力は脅威的です。そうして “ØF KINGDØM AND CRØWN” は、賛否両論のあった前作とは異なり、”The Blackening” 以来、誰もが認める MACHINE HEAD 新たな最高傑作であり、一部の評論家はバンドが息切れしたと考えていましたが、再生の一撃ともなりました。
Flynn がクリーンな歌声を披露する場面もあれば、これまでで最もヘヴィなリフを披露する場面もあり、何よりクリエイティブかつ怒りに満ちています。つまり、このアルバムにはハッキリと、”Robb Flynn を見捨てるのは危険だ” と書かれているのです。
「俺はただブルドーザーで突き進むだけだ。他のことをする資格はないんだ。プランBなんて俺の人生にはないんだよ。これが俺の仕事だ。俺は曲を書き、激しく、超強烈なパフォーマンスを行い、観客を熱狂させる。それが俺の仕事だ。だから、もし今バンドにいるミュージシャンたちの活動状況が変わったとしても、俺は自分のやることをやり続けるつもりだ」
“ØF KINGDØM AND CRØWN” が誕生したのは、通常よりも少しリラックスした雰囲気の中でした。パンデミックの最中も、Flynn は音楽を続けていました。金曜日の夜には、バンドのライブストリーム “Acoustic Happy Hour” に出演し、その後、妻と一緒に過ごす。
「妻と一緒にデートをするようになったんだ。スタジオに行って、”Acoustic Happy Hour” をやって、それから家に帰ってきて、一緒に過ごすんだ。そんなことができるようになったのは、13~15年ぶりかな。子供たちはティーンエイジャーで、携帯電話や PC で自分たちのことをしている。だから、久しぶりにガレージで酔っぱらうようなことができるようになった」
そんなとき、Flynn 夫人は MY CHEMICAL ROMANCE の “The Black Parade” を聴きながらある提案をします。コンセプト・アルバムの制作です。
「俺たちのお気に入りのアルバムで、ずっと聴いているんだよ。コンセプト・アルバムは以前、試したことがあったんだけど、その時はボツにしたんだ!だから妻には、”どうだろう…クソみたいなコンセプト・レコードになるかもしれない。それに、クソみたいなコンセプト・レコードを出すような男にはなりたくない” と言ったんだ」
しかし、彼女は粘ります。”The Black Parade” のストーリーを説明し、”超酔っぱらい” の Flynn はようやく理解し始めます。
「彼女は一曲一曲、歌詞ごとに説明してくれたんだ。それで、”ワオ、これはすごい” と思った。やってみて、どうなるか見てみようと思ったんだ」
Flynn はすでに次の音楽制作に取り組んでおり、作品にもとりかかっていましたが、どのような形になるのか、まだきちんと把握はできていませんでした。
「ラッキーなことに、俺は自分のスタジオを持っているんだ。ボーカルマイクとギターを持ち、ラップトップをセットアップして、一人で通っていたんだよ。ただアイディアを試すだけで、歌詞のアイディアも何もなかったんだけどね。そのどこかで、オープニング・トラックの “Slaughter The Martyr” のイントロを書いたんだ。これがアルバムの終わりかもしれないし始まりかもしれない…みたいな感じで。どこに向かっているのか全然わからなかったんだ」
アルバムのストーリーやコンセプトを Flynn に与えたのは、家族の別のメンバーでした。そもそも、Flynn が意図していたアルバムのコンセプトは古典的な善と悪の戦いでした。しかし、それがなかなか定着しなかったのです。そして、息子たちと一緒にテレビを見ることになります。
「当初、俺のコンセプトはとてもアメリカ的なストーリー展開だった。善玉と悪玉。いい人が勝つ、というような。でも、結局俺はそれに共感できなかったんだ。まるで、言葉を歌うロボットのような気分だった。で、パンデミックのある時期から、子供たちがアニメをたくさん見るようになった。一日中コンピューターに向かっていて、アニメにどハマりしていった。そういえば、俺も子供のころはアニメオタクだった。最初はスターウォーズ・オタクで、フィギュアやデス・スター、ミレニアム・ファルコンを集めてた。それからアニメオタクになり、”マクロス”, “ロボテック”, “Akira” や “宇宙戦艦ヤマト” に夢中になった。息子たちは知らないが、俺は彼らの年齢のころ、完全にアニメオタクだったんだよ!グッズを買って、フィギュアを集め、コンベンションにも足を運んだ。それから、メタルオタクになり、トレーディング・テープや輸入盤を集めるようになったんだ。 レコードが発売される3ヶ月前に “Reign In Blood” を手に入れた。カセットにはまだハイハットのカウントが入ってるんだ。EXODUS の “Bonded by Blood” は発売の6ヶ月前に持っていた。”Pleasures of the Flesh” や “Brain Dead” のブートレグも持っていたし、親父のガレージでブートレグからジャムって、EXODUS の未発表曲をリハーサルしていたんだよ。そうやって、俺たちはメタルにのめり込んでいったんだ。それで、今度は見たこともないような新しいアニメをまた、子供と一緒に見るようになったんだ。衝撃だったよ!」
そして Flynn の頭に浮かんだのは “進撃の巨人” でした。少なくとも、善と悪が単純に割り切れるような作品ではありません。
「”進撃の巨人” を観たことがない人は、とにかく奇妙でサイケデリックで残忍でクレイジーで、とてもクールなストーリーだから、ぜひ見てほしい。子供の頃に戻って夢中になれるよ。しかもストーリーが長いんだ。シーズン2やシーズン3あたりから、”誰がいい人なんだ?誰が悪者なんだ?” となる。もう何が起こっているのかわからないよ。どっちもめちゃくちゃで、どっちも相手を悪だと思ってるんだ。スゲえな!俺にも、自分の物語でできるかもしれない。善人も悪人もいない。どっちも良いことしてると思ってるけど、どっちも恐ろしくて残虐なことをしてるんだ。そう、このアニメの残虐なところが気に入ってる。どんな映画やドラマにも負けないくらいね」
Flynn の視点が変わったのは、これまでこうした書き方の経験がなかったからに他ならないのです。
「俺はこれまで9枚のアルバムで世界について歌ってきた。俺の目を通して、自分に起こった経験、自分が社会をどう見ているかということを歌ってきた。今、俺は、空がいつも赤く染まっているような近未来で、犯罪が多発する荒野に住む人物を通して作品を書いた。そして、この男の最愛の人を殺した、正反対の人物を通して書くことにもなったんだ。アーティストとして、とても刺激的だった。音楽制作をする上で、いつもとは違う頭の使い方ができたし、本当にクールだったよ」
Flynn の頭の中には、作品の絵コンテまでが存在していました。
「グラフィック・ノベルのようなアルバム、という言い方がぴったりだね。子供がマンガをよく読んでいるから、俺も一緒に読んでいるうちにマンガに目覚めてしまったんだよな。絵コンテのアイデアは、俺の頭の中にあって、文字通り、上から下へ、上へ下へとマンガを描き始めたんだ。ディテールにこだわりたかったんだよ。1人目の主人公アレスは最愛の人、アメジストを失い、彼女を殺した者たちに対して殺人的な暴挙に出る。2番目の登場人物はエロスで、母親を麻薬の過剰摂取で失い、落ちぶれる中で、カリスマ的リーダーによって過激化し、自らも殺人を犯し、アメジストを殺した一人となる。歌詞の中では彼らの人生がどのように絡み合っていくのかが詳細に描かれているよ。オープニングの “Slaughter of the Martyr” は、基本的に登場人物のオリジン・ストーリー。アレスは最愛の人を亡くしたばかり。彼が求めるのは復讐心だけ。それが物語の始まりなのさ」
もう隣に Phil Demmel はいませんが、代わりに DECAPITATED の Vogg がいます。MACHINE HEAD にスーパースターが揃った印象もあります。
「Vogg は全く別の次元にいるんだ。彼は正気じゃない。そして、彼らと一緒にツアーをすることができた。パンデミックの前に行った “Burn My Eyes” の完全再現ツアーでは、バンドと一緒に毎晩プレイすることができたんだ。これだけの数のツアーをこなすと、お互いの心を読むことができるようになる。それが大事なことだと思う。パンデミックに見舞われたとき、俺たちはとても頑張っていたから、残念だったね。
ロックダウン中でもビルのオーナーは、俺のスタジオだからということで入れてくれた。だから、しばらくはリフを書いたり、デモを作ったりして、それを彼らに送っていたんだ。メールで送っていたよ。若いデスメタル・バンドを何組か知っているけど、彼らはそうやってレコードを全部作っているんだ。リフをメールして、ドラムのビートをメールして、それからギタリストにメールして、シンガーにメールするんだ。俺は、”よし、これなら俺にもできる” と思ったんだ。それで、”このリフを完成させてくれ” みたいな感じでやり始めたんだ」
MACHINE HEAD 最初のライブから30年が経ちました。
「当時はベイエリアにとってワイルドな時代だった。スラッシュ・シーンの多くが死に絶えていった。ゆっくりと恐ろしい死を迎えていたんだ。METALLICA の “Black Album” やチリペッパーズ、FAITH NO MORE のファンクを真似るバンドばかりだった。それで、スラッシュ・ファンクというのが出てきたんだけど、これはひどいもんだったね。俺たちはただヘヴィに演奏したかったんだ。当時はまだそんなにメタルは聴いていなかった。パンクやハードコアやインダストリアルばかり聴いていたよ」
MACHINE HEAD は再び上昇気流に乗ったように見えます。Flynn をさながらオジーのように、これほどまで頑なに前へと推し進めるもなは何なのでしょうか?
「何年も前に、バスケットボールのマイケル・ジョーダンの言葉を読んだことがあるんだ。”NBAを愛する必要はない。バスケットボールの試合だけを愛せばいい” ってね。音楽ビジネスやそれに付随するクソみたいなこと、政治やクソみたいなことに巻き込まれるのはとても簡単だけど、必要ないことでもある。俺は16歳の時にスラッシュ・メタルを始めたんだ。ベイエリアの悪名高いスラッシュ・クラブ、”ルーシー・イン” でプレイしていた。バックヤードパーティ。友達の親が旅行に行って、友達がパーティーを開くんだ。”リビングルームで演奏するんだ!” みたいな。あとは、教会のコミュニティ・センターで演奏していたんだ。スラッシュが好きで、音楽を演奏するのが好きで、その興奮が好きで、この世界に入ったんだよ。つまり、”メタルをやって超有名になるんだ!”なんて思ったことは一度もない。すごくアンダーグラウンドだった。”Burn My Eyes” をやったときも、”MTVで流されることはないだろう。ラジオで流れることもないだろう。ファンベースを獲得するのは大変なことだけど、一人一人、一生懸命に働いてやっていこう” と思っていた。俺にとっては、それは何も変わっていないんだ」
冒頭で述べたように、Robb Flynn は逆境に慣れているわけではありません。しかし、メタルのエネルギー、経験、そして音楽以外の何ものにも代えがたい感覚が、彼をスウィングさせ続けるのです。そこには、挑戦、あるいは克服を楽しみに変える何かがあるのでしょう。
「俺にとって、音楽はつながりなんだ。俺が育った、人々が楽しんでいるときに作り出す、あの狂ったような、目に見えないエネルギーのね。それこそが俺の生きる糧なんだ。ライブ配信からも、同じエネルギーを得ることもできる。それもまた本物だ。そこにあるんだから。全然違うものだけど。でも、そこにある。それこそが、俺にとっての醍醐味なんだよ。うん、それが俺の生きる道だ」
KERRANG!:How anime, date nights and My Chemical Romance helped recharge Machine Head