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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【WHITE WALLS : GRANDEUR】RISE OF THE ROMANIAN METAL


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ȘERBAN-LONUT GEORGESCU OF WHITE WALLS !!

“I Think That If Progressive Metal Wants To Keep The Name, It Has To Stay Curious And It Has To Keep Exploring Other Genres. That’s Why I Really Appreciate Bands Like Polyphia – That Kinda Stuff Sounds Very Modern And “State Of The Art”, Precisely Because The Guys Writing It Are Super Open To Genres That You Wouldn’t Expect To Be Associated With More Traditional “Prog”

DISC REVIEW “GRANDEUR”

「ルーマニアのライブツアーに同行していたノルウェーやルクセンブルクの友人たちは、母国の文化省からお金をもらってやっていると言っていたのを覚えているよ。文化を輸出しているのだからね。もしこんな提案をルーマニアの政府にしたら、無視されるか、笑われて銀行に失業手当を取りに行くことになるね (笑)。」
ドラキュラと魔女伝説の神秘を湛える東欧の孤高、ルーマニア。そのメタルじみた伝承にもかかわらず、鋼鉄の炎が決して赤々と燃え上がってはいなかった彼の地において、WHITE WALLS が放つ斬新なプログメタルの魔法はさながらドラキュラのようにリスナーを虜にしていきます。
「WHITE WALLS のメンバー全員がニッチなプログにハマっていったのは、ルーマニアが過去30年間、インターネットアクセスやスピードに関して常に世界のトップ国にランクインしているからなんだろう。若くて、好奇心旺盛で、インターネット接続がスムーズなら、幅広い音楽教育を享受するのはそれほど難しくはないんだよ。」
Șerban-Ionuț Georgescu が語るように、インターネットの普及によって、もはや世界のどこにいてもメタルやプログレッシブの奥深い世界を探求することが可能です。実際、隠れたインターネット大国ルーマニアには、アンダーグラウンドな人気を集める E-AN-NA, BUCOVINA, DIRTY SHIRTS, MAGICA, SCARLET AURA といった優れたバンドが実は乱立しています。それでも WHITE WALLS の最新作 “Grandeur” は、その洗練、完成度、独自性において新たなルーマニアンメタルの道標を刻むようなインパクトを備えているのです。
彼らの洗練を支えた一つの要因が、KARNIVOOL, ANIMALS AS LEADERS, SKYHARBOR を手がけたモダンメタルの仕掛け人、プロデューサー Forrester Savell の起用でしょう。立体感のある音作りを得て、WHITE WALLS の物憂げかつアトモスフェリックな影、攻撃的でダイナミックな光、そして変動を続けるリズミックてグルーヴィーな大地の三原素はより躍動感をもってリスナーの元へと届けられるのです。仄かに感じられるは東欧の風。
「プログレッシブメタルという名前を維持したいのであれば、好奇心を持ち続け、他のジャンルを探求し続けなければならないと思うんだ。それが POLYPHIA のようなバンドを高く評価している理由なんだけどね。とてもモダンでまさに芸術だ。彼らは伝統的な “プログレ” に関連しているとは思えないようなジャンルにも非常にオープンに取り組んでいるからね。」
何より WHITE WALLS が真の “プログレッシブ” を体現しているのは、ノンメタル、ノンプログなテリトリーまで貪欲に咀嚼している点でしょう。ターンテーブルも電子の海も、ミニマリズムの方法論さえ、彼らにとっては捕食の対象でしかありません。RUN THE JEWELS から音節やアクセントの魔法を学んだという Șerban の言葉は、繊細にアーティキュレートされた表情豊かなレコードがしっかりと証明しています。
中でも、日本のアニメーション、Akira や 今敏に影響を受けた MV が秀逸なオープナー “False Beliefs” から “Eye For an I” の流れはモダンプログメタルの到達した一つの金字塔かもしれませんね。LEPROUS や CALIGULA’S HORSE が認める胸を抉るような恍惚のメロディーは、祈りのようなギターの荘厳と交わりながら暗闇と重力へのドアを開けます。Eugen Brudaru の時に縋るような、時に神々しく、時に悪魔にもなる歌声は WHITE WALLS、無垢な白壁を千変万化、カラフルに描き導くのです。
常にシンコペーションとグルーヴの妙を提示しながら、シャープな演奏で裏方に徹するリズム隊の働きも見事。そうしてメロウな高揚感、浮遊するヘヴィネスといった両極が不思議に交わるアルバムは、ブカレストのゲオルゲ・ザンフィルが奏でるパンフルートのように表情豊かなクローザー “The Slaughter (Marche Funèbre)” で絶頂に達するのです。
今回弊誌では、バンドのスポークスマン、ベーシスト Șerban-Ionuț Georgescu にインタビューを行うことが出来ました。「バンド名の由来は、BTBAMのアルバム “Colors” の素晴らしきクローザーから来ているんだ。言葉自体は意味の範囲が広いんだけど、僕らが特に惹かれたのは、生まれた時には世界は白い壁のある部屋のようなもので、人生で残すものがその壁に描かれていくという解釈だったんだ。」 どうぞ!!

WHITE WALLS “GRANDEUR” : 9.9/10

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