タグ別アーカイブ: prog-metal

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【GALNERYUS : ULTIMATE SACRIFICE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SYU & FUMIYA FROM GALNERYUS !!

20881954_913462622141003_7048560789978245881_n

The Best Power Metal Band In The World, Pride of Japan, GALNERYUS Has Just Released The Greatest Metal Opera Of The Year, “Ultimate Sacrifice” !!

DISC REVIEW “ULTIMATE SACRIFICE”

日本が誇るシネマティックメタルの英姿 GALNERYUS が、究竟の証 “Under The Force of Courage” の真秀なる続編 “Ultimate Sacrifice” をリリースしました!!前作の壮大かつ勇壮な世界観を威風堂々受け継ぎながら、さらにスケールアップを果たした雄渾無比なメタル活劇は、もはや世界でも最高峰のクオリティーを誇ります。
前作 “Under The Force of Courage” はバンド初のコンセプトアルバム。ギタリストでマスターマインド SYU の手による長編のドラマティックな戦記を元に、”人間の存在意義を問い、悟りに至るプロセスを描いた” 映画のような一大スペクタクルは、圧倒的な構成力に至上のメロディーとエモーションを湛えバンドの最高傑作とも評された作品でした。
リリース後にはアルバムの完全再現ツアーも行い順風満帆に見えた GALNERYUS は、しかし2003年からバンドのエンジンであり続けたドラマー Jun-ichi と袂を分かつ決断を下します。「Jun-ichiさんの脱退については、数年前から実はその傾向は見え隠れしていました。」 と SYU が語るように新たな血を加えるタイミングだったのかも知れません。
UNLUCKY MORPHEUS, THOUSAND EYES 等で名を馳せる FUMIYA を新たなダイナモに迎えて制作された “Ultimate Sacrifice” は事実、マイルストーンとなった前作の完成度、構成美に、瑞々しい躍動感や生命力が織り込まれた作品です。
“SIDOOH/士道” を描いた高橋ツトムのアートワークも映える自己犠牲の物語は、前作の主人公が遂に理想とする国家を打ち立てるも命が尽き果てる場面からスタートします。後任として仄暗く権力を握る主人公の部下と、真直ぐな主人公の息子が繰り広げる闘諍は “Enter the New Age”、まさに新世代のファンファーレで幕を開けます。
歌劇、メタルオペラ “Heavenly Punishment” の目も眩むような絢爛さ、圧倒的な造形美はすなわち GALNERYUS の真骨頂。息子の慟哭を封じ込めた悲傷の旋律は狂おしいまでにリスナーの胸を打つのです。実はバンドが得意とする、中盤の DREAM THEATER 的なメカニカルなデザインも楽曲を見事に引き締めていますね。終盤にはクワイアで一際高揚感を掻き立てます。
前作から続く畳み掛けの美学。さらにスピードを増した “Wings of Justice” を聴けば、新たな血がバンドのスピリットにしっかりと溶融したことが伝わるでしょう。SYU のファストなリフワークをランドマークに、破綻スレスレでバンド全体をごっそりと加速させる FUMIYA のアクセルワークは実にエキサイティング。
FALLUJAH や SikTh を最近のフェイバリットに挙げ、「昔からドラムも打楽器ではなくメロディ楽器として捉えている節がありまして、小口径のタムやエフェクトシンバルなどで曲中(特にフィルイン)に彩りを添えることは常々意識しています。」 と語るように、FUMIYA の彩り豊かでコンテンポラリーなドラム捌きは明らかにバンドの新たなる武器となっています。
武器と言えば、メンバー各自の多様な個性も GALNERYUS には欠かせない要素です。傑出した鍵盤奏者 YUHKI が創造した EL&P とパワーメタルの愛おしき邂逅 “With Sympathy”。戦いを重ねる中で生まれる戦士の友情を描いた雄々しくも希望に満ちたナンバーは、YUHKI が敬愛する Keith Emerson の風格を乗せて、アルバムに見事なコントラストを映し出すのです。
また、息子の運命的な恋愛を描く “Wherever You Are” は小野“SHO”正利と SYU の才能が見事にシンクロした一つのハイライトと言えるかも知れませんね。”SHO” よりも “小野正利” のペルソナにフォーカスした邦楽的なラブソングは、あまりに切なく、甘く、聴くものの過去の恋愛を脳裏に浮かび上がらせます。加えてアウトロの Gary Moore を思わせるエモーショナルでしかし巧みに起承転結を配置したリードギターは、さらに楽曲を遥かなる高みに導きます。
フレットポジションの異なる同音異弦チョーキングから、フルピッキングで加速しアルペジオにスケールを加えた独自のリックへと辿り着く刹那にはあまりの素晴らしさに、「やめて!!フェイドアウト!!しないで!!一時間でも二時間でも続けて!!」と叫ぶリスナーも多いはずです。
「テクニックを見せたい!という気持ちは最近は特に減退してて、トータルの音楽としてバランスを取りたいという気持ちが非常に強くなってます。」 テクニックと音楽の違いを浮き彫りにする SYU の言葉と演奏は、実際求道者故の凄みと説得力に溢れているのです。
アルバムを締めくくるのは、バンドの進化を見せつける目眩く二つの大輪、壮麗なる組曲。物語の最期はあまりに衝撃的。しかし GALNERYUS もストーリーもここが終着地ではないでしょう。アルバムは無垢なる胎動と共に、バンドの燦然たる未来と新たなるコンセプト作品を予感させて幕を閉じます。
今回弊誌では、SYU さんと FUMIYA さんにインタビューを行うことが出来ました。いつかは Wacken や Hellfest のヘッドラインを務めて欲しい。心からそう願わせるほどの感動がここにはあります。弊誌二度目の登場。GALNERYUS です、どうぞ!!

wpcl000012714_LLL-2

GALNERYUS “ULTIMATE SACRIFICE” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【GALNERYUS : ULTIMATE SACRIFICE】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【TONY MACALPINE : DEATH OF ROSES】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TONY MACALPINE !!

20369791_10156542511729517_3712328381922289182_o

One Of the Most Satisfying Listens In The Shred Scene, “Death of Roses” Represent A Triumphant Comeback For Virtuoso, Tony MacAlpine !!

DISC REVIEW “DEATH OF ROSES”

癌との戦いに打ち勝った不撓不屈のギターマスター Tony MacAlpine が、復活の狼煙を上げる “Death of Roses” をリリースしました!!マエストロの新たなチャプターは、自身の “ハイライト” と断言する煌めく七つのモメンタムから始まります。
Tony が癌を患っている事実を公表したのは、2015年8月のことでした。快作 “Concrete Gardens” をリリースし、翌月には来日公演を控えて順風満帆まさに第二の全盛期を謳歌していた Tony のショッキングなニュースは即座にギター、メタルコミュニティーを駆け巡り、世界中のファンが彼の身を案じたのです。
祈りと支援の輪は当然ミュージシャンにも広がりました。2015年の12月に開かれた Tony のベネフィットコンサートには、Steve Vai, Zakk Wylde, John 5, Mike Portnoy, Billy Sheehan, Derek Sherinian といったレジェンドが集結。さらに Steve Stevens, Paul Gilbert, Steve Lukather, Joe Satriani 等のビッグネームも Tony のために自身のギターをドネートしたのです。
「Tony は親友で、実にスイートな人間で、最も才能のあるミュージシャンの一人だよ。」 コンサートを牽引した元バンドメイト Mike Portnoy はそう語ります。実際、インタビューを読めば彼の真摯で優しい人間性と音楽に対するストイックな考え方が浮き彫りになるはずです。
実は Tony を見舞った悲運は自らの病のみではありませんでした。時を同じくして愛する妻も癌に侵されていたのです。「病床からずっと妻のこと、彼女が経験しているであろうこと全てを心配していたんだよ。」 彼のこの言葉には、しばしば音楽の中にまでも滲み出るTony の豊かで温かな人間性が反映されていると感じました。
家族と共に困難な時を乗り越えた Tony が遂に音楽の世界へと帰還を果たす新作 “Death of Roses”。ハイライトであり新たなチャプターだと語る作品はまさに Tony の過去と未来の架け橋です。
31年のキャリアを通して、Tony はプログレッシブメタル、インストゥルメンタル、ジャズ/フュージョンの世界を股に掛けコアな音楽ファンに自身の純粋なる音のメッセージを伝え続けて来ました。
ヴァイオリンの技術を投影したシュレッドのみならずピアノまでをも自由自在に操り、クラシカルな旋律と流暢なギターハーモニーでエセリアルな美のシンフォニーを奏でた初期のソロアーティスト時代。Derek Sherinian, Virgil Donati とタッグを組みメタルとフュージョンを融合させた画期的なプロジェクト PLANET X。よりジャズ/フュージョンへとフォーカスしグラミーにもノミネートされたミュージシャンシップの権化 CAB。Steve Vai との共闘。Mike Portnoy, Billy Sheehan, Derek Sherinian、歴戦の強者たちとの邂逅、プログレッシブスーパーグループ PSMS。現代音楽への傾倒、そして多弦ギターと Djenty な要素まで吸収した近年のコンテンポラリーなスタイル。
復活の Tony が奏でる音楽は、その全てのエレメントがジグソーパズルのピースの如く集約し組み上げられた美しき曼荼羅、すなわち彼の本質であり中心なのかも知れませんね。
オリエンタルでキャッチーなメロディーと Vai ライクなスケールのチョイスが秀逸なアルバムオープナー “Chrome Castle”、スリリングなフュージョンの遺伝子を宿すシステマティックなコンポジションが Djenty でソリッドなリズムに映える “Axiomatic Jewels”、持ち前のクラシカルな素養とピアノの響きが多弦ギターの重低音と調和する “Synthetic Serenity”。実際、様々な要素が絡み合いレイヤーされた複雑でしかし頭に残る楽曲の数々は、Tony のミュージシャンとしての深潭、度量、奥深さを感じさせるに充分なクオリティーを誇ります。
中でもタイトルトラック “Death of Roses” のブルースを著しくエッジーに深化させる試みは、Scott Henderson, Hiram Bullock といった “本物” と浮名を流してきたハンガリアンセンセーション Gergő Borlai​ の助力も得て、作品に類まれなるダイナミズムをもたらしていますね。Jeff Beck, そしてその Henderson とはまた異色のブルースに対する切り口が光ります。
アルバムは、MESHUGGAH が奏でる現代音楽といった様相の低音リフと、アンビエントで優雅な調べが交互にダンスを踊る “Shundor Prithibi” で幕を閉じました。もしかしたら、Tony はここに病床で感じた闇と光を投影しているのかもしれません。そしてベンガル語で “美しい地球” を意味する “Shundor Prithibi” は、2枚組として設計された “Death of Roses” の後半、新たな宇宙へと繋がっていくのです。
今回弊誌では、Tony MacAlpine にインタビューを行うことが出来ました。「インストゥルメンタルミュージックは人間の精神世界への道であり、僕たち全員を結びつけるものなんだよ。」 二度目の登場です。どうぞ!!

21032577_10156651314894517_8929387060795538029_n-2

TONY MACALPINE “DEATH OF ROSES” : 9.8/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【TONY MACALPINE : DEATH OF ROSES】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【RINGS OF SATURN : ULTU ULLA】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH AARON STECHAUNER & MILES BAKER FROM RINGS OF SATURN !!

001-3

MA Based “Alien Core” Act, Rings Of Saturn Shows The Positive Possibility Of DeathCore, With Spacey Melodies And Galactic Chaos Of Their Newest Record “Ultu Ulla” !!

DISC REVIEW “ULTU ULLA”

メタルワールドの UMA、人知を超えたテクニカルデスコアアクト RINGS OF SATURN が、バンドの円熟を知らしめる神秘 “Ultu Ulla” をリリースしました!!シュメール語で “記録に残らないほど太古の昔” をアルバムタイトルへと冠した作品は、しかし厳然とアカシックレコードにその造化の妙を刻みつけます。
「もし宇宙に音楽が存在するならば、それは RINGS OF SATURN のようなサウンドだろう。」
予測不能なまでにカオティック、無慈悲なまでにテクニカル。カリフォルニアの超常的カルテットが創造する音宇宙は、 “エイリアンコア” と称されるほどに異次元で別世界。故に、複雑でメカニカルなその “非人間的” サウンドストラクチャーは、常に賛美と批判を等しく内包して来ました。
しかし、テクニカルデスコアシーンの盟主 Unique Leader Records から、メタルシーンの総本山 Nuclear Blast Records へと移籍を果たし、「全てがより意図を持ち、目的にフォーカスして行われている」 状況でリリースされた最新作 “Ultu Ulla” は、バンドに対するインヒューマンでデジタルという難詰を須らく沈黙させるに充分なクオリティーとディレクションを誇ります。
「このレコードで僕たちは、間違いなくより成熟し、構築されたサウンドの方向に進んだね。僕は音楽が究極にスムースに流れることを常に意識しているんだよ。」 と Miles が語るように、”Ultu Ulla” でバンドは自らのストロングポイントを保ちつつ、以前より確実にキャッチーなメロディーやナチュラルなストラクチャーへフォーカスしていると言えますね。つまり、RINGS OF SATURN は “法則” と “混沌” から成り立つ大宇宙のように、その音楽性を拡大させているのです。
アルバムオープナー “Servant of this Sentience” はバンドのイノベーションを象徴する楽曲です。極限にテクニカルなタッピングのイントロダクションは、同時に溢れ出るコズミックな旋律の銀河を創造しアルバムのムードを伝えます。
新加入、Aaron Stechauner の正確で硬質なドラミングは確かにマシナリーですが、切れ込むリフワークはメロディックデスメタルを想起させるほどエナジーに満ちてメズマライズな SF の世界を流麗に構築しているのです。グロウルとスクリームをフレキシブルに行き来する Ian の咆哮を伴って、作品にある種のキャッチーさ、普遍的なダイナミズムが生まれているのは明らかですね。
「デスコアそれ自体の影響より、全く異なるジャンルからの影響の方が僕たちの音楽、アイデアをより興味深く、新鮮にしていると思うんだ。」 Aaron が語るように、多様なインフルエンスもアルバムのテクスチャーを深く、魅力的にしています。
デスコアのチャグ感とシンフォニックなストリングス、さらに NECROPHAGIST のような難解さが渾然一体となる “Parallel Shift”。フォーキーなワルツとブラストビートが煌めきと獰猛を包含する “The Relic。さらに、”Unhallowed” や “The Macrocosm” で見せるアコースティックなアイデア、ジェントルなムードが象徴するように、バンドがデスコアというジャンルのポジティブな可能性へ変貌を遂げたのは確かです。
アルバムは、ピアノとクラッシックギターで古代インカの宇宙への交信を再現する “Inadequate” で幕を閉じました。
今回弊誌では、ドラマー Aaron Stechauner, ギタリスト Miles Baker の2人にインタビューを行うことが出来ました。「僕は”デスコア”のファンだったことは1度もないんだ。」 どうぞ!!

18839198_10155223343308463_594009574045800036_n-2

RINGS OF SATURN “ULTU ULLA” 9.5/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【RINGS OF SATURN : ULTU ULLA】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【LEPROUS : MALINA】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH BAARD KOLSTAD OF LEPROUS !!

19400223_10155757797020101_7026782522941255705_o

Norwegian Prog Metal Innovator, Leprous Delivers A Different Organic Flavour With Another Beautiful Album “Malina” !!

DISC REVIEW “MALINA”

“皇帝” の庇護から脱却し、独自のプログレッシブワールドを追及するノルウェーの先覚者 LEPROUS が、ジャンルという鳥籠からブレイクスルーを果たす新作 “Malina” をリリースします!才気煥発なモダンプログレッシブの麒麟児は、シーンのフラッグシップとして地図にはない道をスタイリッシュに切り開いて行きます。
当初は EMPEROR、そしてノルウェーミュージックシーンの首謀者 Ihsahn のバックバンドとして注目を浴びた LEPROUS。しかしバンドの独創的かつ洗練されたクリエイティビティー、天性の審美眼はすでにその肩書きをも遠く置き去りにしています。
LEPROUS のその深遠は、変貌や流動といった言葉に象徴されるのかも知れませんね。まずバンドメンバーが非常に流動的です。世代最高のシンガーにして唯一無二のコンポーザー、キーボードも担当するマスターマインド Einar Solberg、そしてギタープレイヤー Tor Oddmund Suhrke。在籍するオリジナルメンバーは現在彼ら二人のみ。今作では長年バンドに多大な貢献を果たしてきたギタリストの一翼 Øystein Landsverk も脱退し、後任に Robin Ognedal, ベーシストも新たに Simen Børven を迎えて制作されたのです。
変わりゆくのはメンバーだけではありません。バンドはその音の潮流もアルバム毎に脈動させて来たと言えます。実はパンクバンドとしてスタートした LEPROUS。プログメタル、アヴァンギャルド、オルタナティブにポストハードコアと作品ごとにフォーカスするサウンドテーマを変転させつつ、巧みに Djent やポスト系、ブラックメタルの要素も取り入れ、多様なモダンプログレッシブの世界観を構築して来たバンドは、しかし同時に Einar の絶対的な歌唱を軸とした仄暗く美麗なムードをトレードマークとして近年掲げるようになったのです。
2010年代最高のプログメタルオペラとなった “Coal” の後、彼らはより “硬質” でデジタルな作品 “The Congregation” をリリースします。メタリックな音像、正確性と複雑性を極めたバンドが次に見据えた先は、よりオーガニックでナチュラルなサウンドとジャンルの破壊でした。
「アルバムの “全てのインフォメーション” を直ちに伝える」 と Baard が語るように、アルバムオープナー “Bonneville” はまさに変化の象徴です。ジャズのリズムと繊細なギタートーンに導かれ、Einar は朗々と官能のメロディーを歌い紡いで行きます。比較するならば彼が敬愛する RADIOHEAD やMUSE でしょうか。
インテリジェンスとエモーションが有機的に溶け合った切なくも美しいそのサウンドスケープは、メタルやプログレッシブという狭い枷からバンドを緩やかに解き放ち、アーティスティックで “ロック” な新生 LEPROUS を主張します。楽曲序盤と、ポストメタルの激情を伴うコーラスパートとの対比も効果的で、アルバムは確実にそのダイナミズムを増していますね。
さらに、前作から加わったドラマー Baard のアイデア、テクニックはアルバムを通して群を抜いており、当然 “Bonneville” の細やかで斬新なハイハットワーク、ゴーストノートの魔術は明らかに楽曲を強く牽引しています。
“Captive” から “Illuminate” への流れはアルバムのハイライトと言えるかも知れません。複雑なタイムストラクチャーと相反するキャッチーなボーカルラインはまさしく LEPROUS の真骨頂。とは言え確かに譜割には Djenty な要素も色濃いものの、ギターや鍵盤の音色が実に繊細で生々しくヴィンテージとさえ言えるために、異能のドラムワークを含め、結果として極めて興味深い斬新なデザインのサウンドストラクチャーを堪能することが出来るのです。
ソフトで音楽的な “スペース” が広がったシネマティックな “Malina” で、弦楽器チェロの使用は詩情豊かな作品の芸術性を一段と高めていますね。例えば “Stuck” では弾力に満ちたギターリック、温かみのある鍵盤とコントラストを描くシリアスなムードを楽曲へともたらしていますし、ポストロックに接近したタイトルトラック “Malina” ではより実験的でアーティスティックなイメージを生んでいます。
アルバムを締めくくる “The Last Milestone” は Einar の独壇場。パーフェクトなクラッシックオペラ。高齢にもかかわらず、生きるためラズベリーを売り歩かなければならないグルジアの老婆にインスパイアされた心震えるアルバムは、実に切なく、悲しく、幽暗かつシリアスで、しかし崇高なる無上の美を秘めて幕を閉じました。
「僕たちは典型的な所謂 “ビッグメタルサウンド” を求めていなかったんだ。」 様々な要素、テクニックが “オーガニック” というキーワード、そして哀切のストーリーに注がれた純然たる “ロック” の傑作 “Malina”。リリースは 8/25。シーン屈指のレコーディングチーム David Castillo & Jens Bogren のタッグも健在です。
今回弊誌では、シーン屈指のドラマー Baard Kolstad にインタビューを行うことが出来ました!バンドとしては前回の Einar に続き二度目の登場です!どうぞ!!

18556032_10155643571650101_6880641999645372966_n-2

LEPROUS “MALINA” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【LEPROUS : MALINA】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ORIGIN : UNPARALLELED UNIVERSE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH PAUL RYAN OF ORIGIN !!

Origin-Band-Photo-Spring-2017

The Originatior Of Technical Death Metal From Kansas, Origin Introduces Blasting Metallic And Technical Chaos With Their Newest Record “Unparalleled Universe” !!

DISC REVIEW “UNPARALLELED UNIVERSE”

テクニカルデスメタルの 象徴にして “起源”。貫禄と威信の US フォーピース ORIGIN が、バンドの宇宙を拡充する新作 “Unparalleled Universe” をリリースしました!!コントラストや政治性という新要素にフォーカスした作品は、まさしく “未曾有の” 第二章の幕開けを告げています。
ORIGIN は1997年に結成され、今年20周年を迎えたデスメタルのイノベーター。鬼神のようなハイテクニックと、獰猛なるブルータリティーを共存させた “ニュースクールデスメタル” の筆頭格だと言えるでしょう。「今日のキッズは色々なラベルをデスメタルに加えているね。ただ、僕は ORIGIN こそがデスメタルのサウンドを変えたと強く感じているんだよ。」 と語る孤高のギタープレイヤー Paul Ryan の言葉には、例えば DYING FETUS, NECROPHAGIST, VITAL REMAINS NILE などと共にシーンを牽引してきた当事者だからこその凄みとリアリティーが内包されています。
バンドとして初めて前作と同様のメンバーで制作した “Unparalleled Universe”。しかしフックに欠けるなどとの意見もあった前作 “Omnipresent” とは対照的に、ORIGIN の新たなる “比類なき世界” は魅力的なアイデアとリピートを誘うフックに満ちた実に創造的なレコードとなりました。
異世界のスイーピングで幕を開けるアルバムオープナー、”Infinitesimal to the infinite” は ORIGIN の残虐性が未だに一級品であることを伝えます。圧倒的な音の密度と生まれくるカオスは “無限に” リスナーの聴覚を襲い、参加2作目となるボーカル ex-SKINLESS の Jason Kayser も前作より遥かに堂にいったグロウルを披露しています。
何より、メカニカルかつファストな楽曲を牽引する超人 John Longstreth の、Flo Mounier にも比肩し得るスピードと正確性はバンドのストロングポイントとして強い光彩を放っていますね。
“Cascading Failuers, Diminishing Returns” はバンドが新たな領域へと進出した確かな証です。インタビューで、初期のアルバムをアクション映画に例えたバンドが “Unparalleled Universe” で見せつけたのは、抜群のインテリジェンスと多様な構成力でした。
無慈悲なブラスト一辺倒ではなく、起伏に富んだテンポコントロールで予想もつかない展開を構築するリズムセクション。シュレッドを効果的に盛り込みながら、時に激烈に、時にメロディアスに攻め立てるギターアンサンブル。トラディショナルなテクニカルデスメタルのように、音符を詰め込むだけの方法論では決して辿り着けない境地がここには存在しています。楽曲終盤に見せるアトモスフェリックとさえ表現可能な壮美で幽玄なムードは、まさにそれを象徴していると言えるでしょう。
“Invariance Under Transformation” はバンド史上最もスロウな楽曲かも知れません。グルーヴィーなベースラインと冷酷なまでに難解なパーカッションに刻まれるギターリフは、CANNIBAL CORPSE や SUFFOCATION を想起させるほどにプリミティブでオールドスクール。全てがタイトに一体化したバンドのパフォーマンスは、ブラックホールの質量を纏ってリスナーに激越なグラビティーの洗礼を浴びせます。
“Burden of Prescience” にも言えますが、地獄の罰 “火盆処” の如くジリジリと骨の髄まで焼き尽くすようなローテンポで、しかし重厚な責め苦のサウンドスケープは、バンドのファストな王道と見事にコントラストを描き、ORIGIN の新たなるトレードマークを誕生させているのです。
「現在のアメリカ政治がいかに厄災であるかを顧みれば、政治的な楽曲を収録する正しいタイミングだと感じたんだよ。僕は自分の国を恥ずかしく思っているんだ。」 これまで政治的なオピニオンを決して楽曲には取り入れてこなかったバンドを触発したのがトランプ政権であることは明らかですし、”ろくでなしの政府、全ての革命を目覚めさせる” と歌った BRUJERIA のカバー “Revolución” はまさに ORIGIN の主張を見事に代弁した楽曲だったのでしょう。
今回弊誌では、バンドのマスターマインド Paul Ryan にインタビューを行うことが出来ました!「最近のキッズは CD に合わせてプレイしているけど、僕たちは全くそんなことはしないよ。」 痺れます。どうぞ!!

18485645_10154764206899037_1562780883955892576_n-2

ORIGIN “UNPARALLELED UNIVERSE” : 9.6/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ORIGIN : UNPARALLELED UNIVERSE】

MASTERPIECE REVIEW + INTERVIEW 【WALTARI : SO FINE!】JAPAN TOUR SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH KÄRTSY HATAKKA OF WALTARI !!

1397345_10152928486608410_2199665636389988584_o

Legendary Avant-garde Metal Act From Finland, Waltari Will Come To Japan For The First Time Ever! Don’t Miss The Amazing Performance Of Pioneer!

DISC REVIEW “SO FINE!”

アヴァンギャルドメタルの創始者にして、北欧の伝説。フィンランドが生んだカメレオン、千変万化なミクスチャーゴッド WALTARI がその30年のキャリアで初の来日を果たします!!
80年代後半から90年代にかけてスカンジナビアから勃興した新たなメタルの波。MESHUGGAH, AMORPHIS, OPETH, IN FLAMES, EMPEROR といった傑物を輩出し、インタビューで Kärtsy Hatakka が “ポストファーストメタルタイム” と呼んだそのムーブメントは、メタルの転換期にして、モダンメタルと現在のメタルシーンにとって架け替えのない重要なピリオドとなりました。
「スカンジナビアのバンドたちは、より幅広いスペクトルの音楽を聴くことで、メタルに “クレイジーさ” を加えていったんだ。」
Kärtsy が語るように、ある者は複雑なリズムアプローチを、ある者はプログレッシブロックを、ある者はデスメタルを、ある者はエクストリームな残虐性を、ある者はフォルクローレを “ベーシック” なメタルに加えることで、彼らはモダンメタルの礎となる多様性を築き上げていったのです。
“ポストファーストメタルタイム” を語る上でWALTARI は決して外せないバンドです。メタル、デスメタル、スラッシュ、オルタナティブ、プログ、ヒップホップ、ファンク、ジャズ、ブルース、フォーク、インダストリアル、テクノ、パンク、シンフォニック、ポップなど全てを飲み込む音楽性は、まさにそのモダンメタルに宿る多様性の申し子と言えるでしょう。
バンドが 1994年にリリースした “So Fine!” はまさにゲームチェンジングなレコードでした。獰猛なデスメタルのイントロから一転、オルタナティブな浮遊感とパンキッシュなエナジーで突き進む “The Beginning Song” で幕を開けるアルバムは、同じ感覚を持った楽曲が2曲と存在しない奇跡の多様性を誇ります。
確かにスラッシュとデスメタルがアルバムを通して軸とはなっているのですが、あまりに広大なその数多のインフルエンスは、 “ロックが本来持つオープンマインドなアティテュードを守る” “ロックを革命的なその本来の意味に戻したかった” という Kärtsy の言葉を裏付けるように、唯一無二でオリジナリティーに満ちていますね。
中でも、タイトルトラック “So Fine!” の創造性、完成度は驚異的です。EDM、当時のユーロビートを大胆に導入した楽曲は、同郷のヨーデルフォークグループ ANGELIT とコラボレートすることにより、トライバルなビートとフォーキーなヨーデル、そしてロックのグルーヴがせめぎ合う一大エピックとして語り継がれることとなりました。時に Ozzy Osbourne を想起させる Kärtsy のサイケデリックでポップな歌唱も実に魅力的ですね。
ポップと言えば、”To Give” にはバンドのそのセンスが集約しています。WALTARI 印のダンサブルかつファンキーなアレンジメントは確かに Michael Jackson のイメージを宿し、”Beat it, Leave it” と嘯く女性ボーカルとのデュエットは究極なまでにキャッチーでシンガロングを誘います。
インタビューにもあるように、真に根っこの部分はパンクである WALTARI。”Piggy in the Middle” や “Autumn” を聴けば、当時、大半のハードコアアクトがより直線的にパンクのルーツに向かっていったのとは対照的に、WALTARI がメタル、スラッシュとのクロスオーバーに強くフォーカスしていたことも伝わるはずです。何より、ジャンルとジャンルを軽快に股に掛ける “So Fine!” の精神性が後続に与えた影響は計り知れません。
同じアルバムは2枚作らないと語るように、以降 WALTARI はレコードを通じて様々な冒険を行っていきます。”Yeah! Yeah! Die! Die” ではオーケストラとデス/スラッシュメタルの完璧なる邂逅を持たらし、”Space Avenue” ではエレクトロインダストリアルに振り切ったサウンドで周囲を圧倒しました。
素晴らしき “Blood Sample”, “Release Date” といった近年の比較的、普遍なモダンメタルへと接近した作風の中にさえ、煌めくような驚きの瞬間は星の数ほど散りばめられているのですから。
ただ、そういった振れ幅の中でも WALTARI, Kärtsy が紡ぐメロディーは常に途方もなくキャッチーかつ魅力的。不安や孤独、現代社会に対する嘆きを独自のアイロニーを交えつつ珠玉の旋律へと変換し楽曲へと反映する彼のやり方が、バンドのアイデンティティーとして頗る機能していたことは記して置かなければなりません。
遂にレジェンド初の来日です!今回弊誌では、Kärtsy Hatakka にインタビューを行うことが出来ました。ベースとキーボードもこなし、あの X Japan の hide も影響を受けたと言われる不世出のシンガー。さらには KREATOR の Sami Yli-Sirniö が在籍し、過去には ex-CHILDREN OF BODOM の Roope Latvala も所属していたというシュレッダー好きにも堪らないバンドです。どうぞ!!

R-530739-1128179381.jpeg

WALTARI “SO FINE!” : 10/10

続きを読む MASTERPIECE REVIEW + INTERVIEW 【WALTARI : SO FINE!】JAPAN TOUR SPECIAL !!

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SHADOW OF INTENT : RECLAIMER】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CHRIS WISEMAN & BEN DUERR FROM SHADOW OF INTENT !!

18157459_652408941624917_1015245742480791902_n

The Halo-Themed Stunning Symphonic Deathcore Act From US, Shadow Of Intent Has Just Released One Of The Most Dramatic Record Of The Year, “Reclaimer” !!

DISC REVIEW “RECLAIMER”

遥かなる星河に美麗なるデスコアのシンフォニーを注ぐ、コネチカットのスペースシップ SHADOW OF INTENT がハイスペックな新章 “Reclaimer” をリリースしました!!人類とコヴナントの争いを描く壮大なる宇宙譚 HALO シリーズをテーマに抱いたバンドは、文字通りシーンの “再生” を担っていくはずです。
ギタリスト Chris Wiseman とボーカル Ben Duerr のプロジェクトとして始まった SHADOW OF INTENT。遂に5人のメンバーを揃え、真のバンドとしてリリースした初の作品 “Reclaimer” は実際全ての面で前作 “Primordial” を凌駕しています。
アルバムオープナー、”We Descend…” の神秘的なアトモスフィア、壮麗なるオーケストレーション、透徹したプロダクションはまさに進化の証。インタビューにもあるように、ABIGAIL WILLIAMS のキーボーディスト Kelsie Hargita の力を借りて構築するシンフォニーは、幾重にも重なりたなびく天の川銀河のごとく華麗に花開きます。
“The Return” で見せるコントラストはアルバムの素晴らしきインビテーション。Ben の地を這うガテラルと Chris の天翔るシュレッドは互いのインテンス、エレガンスを損なうことなく、むしろ崇高さと風格を相互作用で創造しながら激しく加速していきます。
インタビューで語ってくれた通り Jason Richardson をリスペクトする Chris のクラシカルでファストなリードプレイは、スリルと審美の無重力空間でダンスを披露し、Ben のガテラルはブラックホールの質量で全てを飲み込みます。さらに Matt のテクニカルかつクリエイティブなドラミングはカイパーベルトのごとくバンドを密に集約ししリスナーへと迫り来るのです。
彼らを凡百のデスコアバンドから際立たせているのは、確かに卓越したシンフォニックなアレンジメントとオーケストレーション、凛としたピアノの響き、そして鮮麗で純美なメロディーでしょう。しかし、同時により幅広く多彩な音楽的素養も注目されるべきだと感じます。
INFANT ANNIHILATOR の Dickie Allen, INGESTED の Jason Evans, そして Ben のトリプルボーカルで臨んだ “The Catacombs” ではフロリダデスメタルに接近し、チャグと対比させたよりプリミティブでオーガニックなブルータリティーを見せつけ、一方で “The Mad Tyrant’s Betrayal” では高音トレモロリフやクリーンギターを大胆に導入しブラッケンドでアトモスフェリックなドラマを提示します。
何より、Chris のデスコア、テクデス、ブルータルデスメタル、ブラックメタル、ブラックゲイズ、クラシカルなどを巧みに配置した千変万化なリフワーク、そして Ben とゲストボーカルが構築するガテラル、グロウル、スクリーム、クリーンをピースとした難解なジグソーパズルの融合には驚嘆するしかありません。
勿論、VILDHJARTA / HUMANITY’S LAST BREATH のメンバーにして BORN OF OSIRIS の最新作でミキシングも手がけたシーンのレジェンド Buster Odeholm が手がけたアルバムでは、「高校時代には、”The New Reign” EP を本当によく聴いたものさ。」 と Chris が語る通り “The Gathering of All”, “The Heretic Prevails” のようなBoO 直系のアトモスフェリックでコズミックなデスコアサウンドも見事に炸裂していますね。
そして遂にパワーメタルの領域にまで足を踏み入れたドラマチックな “The Prophet’s Beckoning”。クリーンボイスで勇壮に歌い上げる奇跡の刹那には、壮絶に畳み掛けたアルバム中盤の全てが最良の形で結実したかのような爽快感までをも感じることが出来ました。
ちょうど一時間、ドラマティックなスペースオペラは、作品で最もプログレッシブな長尺曲 “The Tarutarus Impalament” で深遠なスポークン・ワードと共に幕を閉じました。
今回弊誌では Ben と Chris にインタビューを行うことが出来ました。デスコアはもとより、シンフォニック、ブラッケンド、プログレッシブ、メロディックなど様々なメタルファンにぜひ聴いていただきたい作品です。どうぞ!!

17498782_636487953217016_2576682200764432207_n-2

SHADOW OF INTENT “RECLAIMER” : 10/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SHADOW OF INTENT : RECLAIMER】

LOUD PARK 17′ SPECIAL INTERVIEW 【PER NILSSON : MESHUGGAH, SCAR SYMMETRY, KAIPA, NOCTURNAL RITES】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH PER NILSSON OF MESHUGGAH, NOCTURNAL RITES, KAIPA, AND SCAR SYMMETRY !!

19894647_10156615974834616_4186633892520889604_n

Now, The Most Notable Guitar Virtuoso In The Scene, Per Nilsson Will Come To Japan With Meshuggah At Loud Park 17′ !! The Busiest Man Talks Everything About His New Adventure !

ABOUT PER NILSSON

スウェーデンが誇る異能のギターマイスター Per Nilsson。現在、彼こそがメタル/プログコミュニティーで最も注目を集める怪物であることに異論を唱える向きはないでしょう。
モダンメタルの父、MESHUGGAH のマスターマインド Fredrik Thordendal が突然の “休暇” を申請したのは6月初頭のことでした。インタビューにもあるように、スタジオの建設とソロキャリア追求のためバンドを離れた求道者の代役として指名されたのが今回の主役、Per だったのです。実際、彼ほどの適任者は存在しないように思えます。
10代後半から MESHUGGAH を聴き漁り、リスペクトを捧げて来たという Per のギタープレイには、例えば彼のホームグラウンド SCAR SYMMETRY を聴けば分かるように、複雑でマスマティカルなリフワークや、レガートで滑らかにアウトするリードプレイなど、モダンメタルの巨人を想起させる場面が確かに存在します。
何より、亡き Allan Holdsworth の遺産を相続するのみならず、独自に進化させるプレイヤーはメタルの領域においてあまりに稀有で、オーディションも行わず Per を指名したバンドの英断には頷くばかりですね。
さらに Per が注目を集める理由。それは彼のフレキシブルな才能が可能とした、多方面での雄渾なる活躍です。多様でエクストリーム、実験性を秘めたモダンメタルを中枢としながらも、Per のセンス、スケール、そしてテクニックは様々な分野のアーティストを惹き付けてきました。
特にここ日本で絶大な人気を誇るメロディックメタルアクト NOCTURNAL RITES もその一つ。10年という長い沈黙を破るバンドの復活作 “Phoenix” で、ソロイストとして白羽の矢を立てたのが Per だったのです。インタビューにもあるように、トラディショナルでメロディーによりフォーカスした Per の新たな冒険は、バンドのマスターピースとして結実したようですね。9月のリリースを待ちましょう。
加えて、9月にはもう1枚 Per の参加したレコードがリリースされます。KAIPA の新作 “Children of the Sounds” です。70年代から活動を続ける、北欧シンフォプログの雄 KAIPA に Per が加入した事実はシーンに大きな驚きを与えました。実際、Per 自身が語るように、Roine Stolt の色彩と気品をメタルシュレッダーが引き継げるのだろうかという懐柔的な見方も多かったようですね。
しかし KAIPA の同僚で天賦のスティックマン Morgan Agren が、「Per は非常に滑らかなタッチと完璧なコントロールを持っているね。彼が演奏するときは、すべてが簡単に聞こえるんだ。素晴らしいプレーヤーだよ。」と語るように、Per のモダンなテクニックはバンドに新たな”血”をもたらし、スピードを備えたクラシカル、フォーキーなパッセージが壮麗なる推進力を生んでいるのは間違いないでしょう。
また、Per にはプロデューサーとしての顔も存在します。今ひとつ伸び悩んでいた自身のメインバンド SCAR SYMMETRY が、遂にそのステージを1歩進めた最新作 “The Singularity (Phase I – Neohumanity” では、Per がコンポジション、プロデュース、ミックス、マスタリング全てを手がけているのです。
非常にメロディックかつプログレッシブな方向へとシフトした作品が、脱退したギタリスト Jonas Kjellgren メインのプロダクションに比べよりクリアーで立体感を有していることは明らかですね。インタビューにもあるように、Per のスタジオも完成しトリロジーの第2章が幕を開ける瞬間も間近です。期待しましょう。
最後に Per がソロアルバム、ETERNITY’S END のプロダクションを手がけたテクニカルデスメタルシーンきってのテクニシャン Christian Muenzner は彼について 「Per Nilssonはこれまでの10年間で最もエキサイティングなギタープレイヤーだよ。美しいフレーズとインテリジェントなノートの選択は、素晴らしい音色を運び完璧なまでに楽器のテクニカルな要求を満たすんだ。僕がギタリストのプレイに探しているものすべてを彼は持っているんだよ。」と語っています。インテリジェンスを感じるのは当然かも知れません。Per の IQ は156を超えるとも言われており、あの高IQクラブ “メンサ” のメンバーなのですから。
型破りな知性が導くフレキシビリティ。今回弊誌では、Per Nilsson にインタビューを行うことが出来ました。遂にあの鬼才が MESHUGGAH として Loud Park にやって来ます!どうぞ!!

続きを読む LOUD PARK 17′ SPECIAL INTERVIEW 【PER NILSSON : MESHUGGAH, SCAR SYMMETRY, KAIPA, NOCTURNAL RITES】

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ARCADEA : ARCADEA】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CORE ATOMS OF ARCADEA !!

18121397_1488188897908002_3297078369382183841_o

Mastodon, Withered, Zruda, Get Together As Synth-laden Progressive, Heavy Psych Band Arcadea !! This Should Be Interesting For Sure !

DISC REVIEW “ARCADEA”

MASTODON, WITHERED, ZRUDA のメンバーが集結した新たなるコスモフロンティア ARCADEA が、遥かなる未来を映し出すデビューフル “Arcadea” をリリースしました!!50億年先の宇宙をテーマとした壮大なるスペースオデッセイは、ロックという銀河の膨張を促すビッグバンとなるはずです。
MASTODON のドラマー/ボーカル Brann Dailor が、WITHERED のギタリスト Raheem Amlani, ZRUDA のギタリスト/キーボーディスト Core Atoms とチームアップしたスーパープロジェクト ARCADEA。
ホームバンドでは基本的にギタリストの Raheem, Core 2人をシンセプレイヤーへとコンバートし、プログレッシブかつサイケなエレクトロニカサウンドのみを Brann のダイナミックで手数に富んだドラムス、キャッチーなボーカルと融合させた ARCADEA の音楽はユニークで先見性に溢れています。何よりロック/メタルの必需品とも思えるギターサウンドがどの楽曲からも聴こえて来ないのですから驚きですね。
Brann のホームバンド、偉大なる MASTODON は “Crack the Skye” で Brann のリードボーカルを初めてレコードに取り入れて以来、彼のメロディックな歌唱と呼応するようによりキャッチーでストレートなコンポジションへと移行して行きました。その変化により Brann はさらにバンドにとって不可欠な存在となりましたが、皮肉なことにその方向転換は彼のトレードマークであるハイパーアクティブでフィルオリエンテッドなドラミングが減退する結果にも繋がっていったのです。
“Arcadea” は Brann Dailor の魅力全てが詰まった作品だと言えるのかも知れませんね。アルバム全体を覆うのは、間違いなくあの “Leviathan”, “Blood Mountain” で聴くことの出来た、リード楽器を主張するエキサイティングで高密度な阿修羅のドラミング。同時に彼のスペーシーでポップな浮遊感溢れる歌心は、確実に作品のコアとして土星の輪のようにレコードを包み込んでいるのです。”Arcadea” には2人の Brann Dailor が互いを損なうことなく生き生きと存在しています。
勿論それは、アルバムオープナー、電子音楽の軍歌 “Army of Electrons” が証明するように、Raheem, Core 2人の綿密かつ繊細なコンポジション、変拍子を活用したプログレッシブなイメージ、ベースからリードまで幾重にもテクスチャーされた魅惑のシンセサウンドが、影となり日向となり素晴らしき脇役として煌めくことで初めて成立する才能のシンフォニーだと言えるでしょう。
一方で、”Gas Giant” はバンドの出自を明確にする楽曲です。インタビューにもあるように、アーケードゲームの “アーケード” をバンド名としたように、ゲームミュージックの影響は彼らが共闘する大きな理由の1つ。
“ロックマン” を想起させる勇壮で8bitライクなイントロダクションは、ビデオゲーム時代の幕開けに育ち、”アーケードゲームはマジカルな場所だった” と語るバンドのロマンが楽曲に溶け合った夢のような瞬間だったのかも知れませんね。
さらに、エアリーな女性ボーカルとボコーダーを起用したスロウでムーディーな “Neptune Moon” では John Carpenter をイメージさせるロマンチックなエレクトロホラーサウンドを再現。
Core が “70年代、シンセサイザーは未来の楽器だった” と語るように、ビデオゲーム、映画音楽といった70’s~80’s の典型的な電子サウンドを Brann のコンテンポラリーでアグレッシブなドラムスと融合させることで、レトロフューチャーな顔貌を形成しているようにも感じました。
エレクトロニカでありながら加工された EDM とは全く異質、ヘヴィーでありながら重厚なメタルとも異なる唯一無二のデザインが冴え渡る革新作。今回弊誌では、Core Atoms にインタビューを行うことが出来ました。MASTODON の近作に何かシックリこないダイハードなファンにもぜひオススメしたい作品です。どうぞ!!

17022272_1488085951251630_4128789015247277774_n-2

ARCADEA “ARCADEA” : 9.9/10

続きを読む NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ARCADEA : ARCADEA】