COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【JERRY CANTRELL : I WANT BLOOD】


COVER STORY : JERRY CANTRELL “I WANT BLOOD”

“I Felt Like I Was Operating At The Top Of My Abilities As a Singer, For Sure. I Think I’m Growing. I’m Trying To Get More Consistent At Everything. That’s The Goal”

I WANT BLOOD

「私はこのレコードのファンだ。もし私が私でなく、ALICE IN CHAINS のメンバーでなかったとしても、ALICE IN CHAINS の作品と私が作ったソロ作品のファンになっていただろう」
ヘヴィ・ミュージックの世界は永遠に流動的で、新しい声は台頭し、常に驚くべき進化を遂げています。
2024年夏季オリンピック・パリ大会では、開会式でフランスのメタルバンド、GOJIRA が大活躍を果たしました。7月、このバンドは、かつてマリー・アントワネットが幽閉され、死刑判決を受けた中世のコンシェルジュリー宮殿で、火柱が立ちのぼり、窓から何人もの首を切られたアントワネットが歌う中、雷鳴のように19世紀のフランス国歌 “Ah!Ça Ira” を轟かせました。
セーヌ川のほとりから世界中に、妥協のないメタルが鳴り響いたことに、Jerry Cantrell は目を細めます。
「クールで意外な選択だと思った。時代が良い方向に変わってきているのかもしれない」
もちろん、変わるものもあれば、変わらぬものも存在します。Cantrell にとって、創造の瞬間はこれまでと同じです。その感覚は、彼が若いギタリストとしてシアトルのガレージやベッドルームで過ごした時間と何ら変わらないのですから。
ALICE IN CHAINS のギタリストは、そうした初期の日々をはっきりと覚えています。
「そこでマリファナを吸ったり、RUSH のレコードを聴いたり、ドラムキットが半分しかなくても仲間と一緒に演奏してみたり。そういうのが好きだったんだ」

シアトルのシーンも懐かしく回想します。
「私たちの前にも、HEART や QUEENSRYCHE がいてずっと活気のあるシーンだった。音楽や芸術が盛んな土地でね。大都市じゃないから、誰からも干渉されずに熟成する時間があった。そして、ここで何かが起こっていると感じ、気がつけば自分もその一部となっていた。19歳や20歳の若者にとっては、それはかなりクールなことだった。
我々はMTVを開拓した最初のバンドともいえた。SOUNDGARDEN もね。シーンにとっては、MOTHER LOVE BONE も本当に重要なバンドだったし、MAD HONEY も、GREEN RIVER もいた。彼らみんなが小さな足がかりとなった。
一緒に仕事をしていなくても、我々はそれぞれが個人として、グループとして、お互いに助け合っていたよ。そしてその成功のひとつひとつが、より大きなものへとつながっていき、臨界点に達して、PEARL JAM や NIRVANA が誕生したんだ」
だからこそ、Cantrell は UK のバンドに大きな影響を受けたといいます。
「私はイギリスのバンドに大きな影響を受けた。JUDAS PRIEST, BLACK SABBATH, LED ZEPPELINなど当時はあの場所に素晴らしい音楽が圧倒的に多かった。量も質もね。これらのバンドはすべて、何らかの形で、互いに影響を与え合ったり、刺激し合ったり、誰かが別の道を進むための分岐点を作ったりしていた。そういう環境は、私たちの小さな町で一握りのバンドで起こったことと似ていて、健全なレベルの尊敬と同時に競争があり、それがすべてのバンドの成長に拍車をかけたんだ。多くのUKバンドも同じだと思う。
だから “British Steel” が好きなんだ。すべてのメタル・ヘッズにとって特別で時代を代表するレコードのひとつだ。Dimebag やVinnie Paul と何度一緒になったかわからないけど、Dime はいつも首にこのカミソリの刃のペンダントをしていたね。
このリフは、私が最初に弾き方を覚えたリフなんだ。K.K. と Glenn Tipton は、メタル界における名デュアル・ギターで、Rob Halford はまさに最高だ。彼のような人はいない」

一方で今、ロサンゼルスやシアトルの自宅のリビングルームで、Cantrell と彼の仲間たちは、アンプとペダル、電子ドラム・キットに接続し、ヘッドホンをつけて演奏します。彼の横に座るのは、ベーシストのDuff McKagan (Guns N’ Roses) と Robert Trujillo (Metallica), ドラマーの Gil Sharone (Marilyn Manson, Dillinger Escape Plan) と Mike Bordin (Faith No More), そしてコンポーザーでギタリストの Tyler Bates。
そうしてある日、”Let It Lie” となる曲が誕生します。完成したその曲は、Cantrell の新たなソロ・アルバム “I Want Blood” に収録されていますが、Cantrell はそれを、”クソみたいにドロドロしている” と表現しています。うなるギター、プログレッシブな中間部、ビッグ・ロック・ソロ、そして Cantrell の歌声からなるドロドロの叙事詩。”誰にでも呪縛がある/原始的な闘争衝動がある/相手の中に自分が見えるか?”
Cantrell にとってこの曲は、初期の SOUNDGARDEN を彷彿とさせる、重厚で荒涼としたロック・チューンで、彼がよく知るグランジの初期を彷彿とさせるもの。リビングルームでたむろしていたロック野郎たちが、偶然インスピレーションを得た瞬間から物語が始まりました。
「フリーフォームのジャムをやっていて、偶然あのリフを見つけたんだ。そうしたら Bates が別の何かで反応した。彼はただ、クールだね、という感じで私を見ていた。ジャムの段階やデモの段階では、少しローファイにしておくのが好きなんだ」

2021年のソロ・アルバム “Brighten” と同様にオールスター・ミュージシャンをフィーチャーした “I Want Blood”。ただ、”Brighten” は Cantrell にとって19年ぶりのソロ・プロジェクトでした。
その19年の間に彼は、2002年の Layne Staley の悲劇的な死によってキャリアを絶たれた ALICE IN CHAINS の復活に集中していました。彼らのカムバックは2009年の “Black Gives Way to Blue”。これはかつての AC/DC のように、ダイナミックなフロントマンの死後、ロックバンドが成功した珍しいケースとなり、アルバムはゴールドを獲得し、ビルボード200で5位を記録しました。その後、シンガーの William DuVall を迎えてさらに2枚のアルバムをリリースした ALICE IN CHAINS は、ツアーとレコーディングを積極的に行うユニットとして完全に再確立され、今年はラスベガスで開催された注目のシック・ニュー・ワールド・フェスティバルで話題をさらいました。
ALICE が確かな地盤を築いたことで、Cantrell はダウンタイムを手にし、1998年の “Boggy Depot”、2002年の “Degradation Trip” に続くソロ・キャリアに戻ることができました。このシンガー兼ギタリストはそうして “Brighten” で、エンニオ・モリコーネのハードロックと傷ついたバラードのコレクションで、新たな伸びを見せたのです。
「あの経験の後、私は燃え上がっていたんだ。もう少し早く仕事に取り掛かりたいと思ったし、時間とチャンスがあるうちにもう1枚やりたいって思ったんだ」
名は体を表す。アルバム・タイトル “I Want Blood” はまさに Cantrell の乾きと情熱を表しています。
「ALICE IN CHAINS の共同マネージャー、スーザン・シルバーとシック・ニュー・ワールド・フェスのためにヴェガスにいたとき、彼女に訊かれたんだ。タイトルは “Fuck You” でしょ?ってね!彼女は正しかった!私のカタログには、”Dirt”, “Facelift”, “Degradation Trip” など、強力なタイトルがいくつかあるからね。運が良ければ、核となる曲のひとつからタイトルをもらえたり、作品を体現するようなものをもらえたりする。”I Want Blood” という曲には、その両方があった。このアルバムはハードな内容なので、この曲のトーンがぴったりだと思ったんだ」

“I Want Blood” の曲の中で浮かび上がってくるのは、もっとヘヴィなもの。威嚇的な “Vilified” は、渦巻くギター、轟く Trujillo のベースラインと Sharone のドラムビート、そして Cantrell の特徴的な歌声が何層にも重苦しく重なりアルバムの幕を開けます。”Off the Rails” と “Throw Me a Line” を含め、ここにはたしかに ALICE IN CHAINS の初期から彼が生み出してきた印象的で陰鬱なロックのフックが溢れています。
「作曲だけでなく、ギターの演奏も歌もリスクを犯した。最高の作品というのは、自分が心地よくない場所にいるときに生まれるものなんだ。それをやり遂げられるかどうかわからない。もう少し安全なことをしよう。そんな考えは捨てて、とにかくやってみるんだ。そうすれば、きっと普段はやらないようなことをやったり、自分を追い込んだりして、自分が目指しているよりも高い目標を達成できるはずだ。中心から少しずれた、少し危険な感覚を味わうことができる。そして、偉大な作品になる可能性を秘めたものを作る良いチャンスを手に入れるんだ」
この9曲入りのアルバムは、Cantrell と Joe Barresi のプロデュースにより今年初めにレコーディングされました。セッションは、カリフォルニア州パサディナにあるバレージのJHOCスタジオ(ジョーズ・ハウス・オブ・コンプレッション)で、赤レンガの壁とヴィンテージ機材に囲まれて行われました。Cantrell は、TOOL, SLIPKNOT, QUEENS OF THE STONE AGE など、メジャー・アーティストとの仕事で知られるプロデューサーとのコラボレーションについて説明します。
「彼のスタジオに入ると、まるで10軒のギター・センターがひとつに詰め込まれたようで、過去50年分の機材で埋め尽くされているんだ」

陰鬱な “Echoes of Laughter” は、彼らが集まるたびに Bates が演奏していたリフから始まりました。マリリン・マンソン、HEALTH、Starcrawler のサウンドトラック作曲家、プロデューサーとして高く評価されている彼は、”Brighten” でも Cantrell の主なクリエイティブ・パートナーでした。ツアーにも帯同し、サウンドチェックや楽屋、そして Cantrell のリビングルームのジャムセッションで、このリフは何度も登場します。
「このレコードには、しばらく前から循環しているリフがいくつかある。家を探しているんだ。いいリフなんだけど、どこに置いてくれるんだい?僕の家で、 Bates がちょっといじり始めたんだ。俺は “お前はそれを弾き続けろ。それで何か作ろう”って。
僕はこう言ったんだ。君が思いついたんだってね。あの曲は、ほとんど彼が書いたものなんだ。でも、本当にエモーショナルで、映画のような曲だ。人生の美しさと有限性に触れている。私たちの人生はすべて終わってしまう。でも物語の中には、最初から最後まで美しい瞬間がたくさんある。この曲は、祝福すると同時に手放すというテーマに少し触れているんだ」
Cantrell は喪失感の歌詞で音楽に応えました。”君を横たえて、放して、太陽に咲く花/ざわめき、移動が始まった/もう二度と会わないし、抱きしめることもない”
「それはごく一般的な人間の経験だ。歌詞を書くときは個人的な歴史や他の人が目撃した人間的な瞬間に基づくことが多い、それは決して簡単なことではない。苦悩するよ。歌詞はクソ最悪の部分だ。出来上がったときは最高だけど、すごくイライラするんだ。音楽がまずあって、それから、よし、一体何を言えばいいんだ?この素晴らしい音楽を、バカなことを書いてすぐに台無しにすることもできるんだからね。
でも何かが形になり始めるまで取り組むんだ。多くの場合、出来上がるまで何が何だかわからないんだ。それでも時々、これはどこから来たんだろう?良い歌詞を書くには、第一に、個人的なものでなければならないと思う。自分自身、自分自身の感情、自分自身の感覚、自分自身の観察から始めなければならない」

Layne Staley の悲劇的な死も、Cantrell が対峙した喪失のひとつ。
「我々はそれぞれに個性的な好みがあった。彼が好きなもの、私が好きなものがそれぞれあって、その間にあるものをたくさん共有していたんだ。彼は本当に不思議な能力を持っていてね。誰かの喋りを一度聞いただけで真似できたり、映画のセリフをそのまま繰り返したり、ジョークを言ったりしていした。彼には、そういう模倣力があったんだ。
彼もハーモニーが好きだったし、私もそうだった。一緒に曲作りを始めたときは、自然の成り行きに任せていたね。ただ曲を作って、自分たちのスタイルを見つけようとしていた。他のアーティストの真似を1年ほど続けた後、やっと“これはクールじゃないか? これこそ自分たちの音楽だ”と思えるものに出会ったんだ。
どのバンドにも言えることだけど、本当に自分らしいと思えるアルバムを作るまで、試行錯誤に結構かかったりするよね。でも、私たちはデビュー作の “Facelift” ですでに、90~95%くらいは自分たちの音楽にフォーカスできていたと思う。まだ捨てきれていないものや、古い皮膚のようなものが残っていただけでね。
それは私たちが一緒に作り上げたものだった。だから、今でもそれを演奏し続けることでいい気分になるし、彼のことを思い出すこともできる。もちろん、彼がいなくなってとても寂しいけど、一緒に過ごした時間や一緒に作った音楽には感謝している。私たちが一緒に始めたものを私はこれからも続けていくよ」
だからこそ、”Let It Lie” では Cantrell がギターと同じくらい切れ味鋭い唸るような言霊を披露しています。
「これは個人的な人間関係の歌詞だ。自分の人生において、対立する誰かとどんな関係であっても、それをプラグ&プレイ “すぐに接続” することができる」

Cantrell にとって、インスピレーションは様々なところからもたらされます。彼のギター・ヒーロー、Joe Walsh のインタビューもそのひとつ。そこには、彼が1973年にヒットさせた “Rocky Mountain Way” の歌詞について書かれていました。
「彼は完全にふさぎ込んでいるのに、バンドは “おい、歌詞が必要だ” と言ったんだ。それで、彼はただ意識の流れに身を任せ始めたんだ。彼は立っていて、ロッキー山脈を見ているんだ。そして、”彼はこう言っている、ああ言っている” という歌詞は、彼のマネージャーからの電話だったんだよな」
Cantrell は、Walsh は彼の中に足跡を残したクラシック・ロック時代の多くのプレイヤーの一人だと説明します。
「JAMES GANG、ソロ・キャリア、EAGLES……彼が大好きなんだ。彼は偉大なソングライターであり、偉大なシンガーだ。素晴らしいギタリストだ。トーンも素晴らしい。Joe は僕の個人的なリストの中でも上位に入るね」
まだ多感な子供時代、Walsh の1978年の自伝的シングル “Life’s Been Good” をラジオで聴いたことを彼はしみじみと思い出します。そこには、パーティー、リムジン、マセラティ、ホテルに住み、壁を壊し、会計士に全部払ってもらうといったロックスターの退廃的な話がありました。そのすべてが幼い Cantrell には響いたのです。彼は結局、10年か20年後にヒットメーカーとなったハードロック・バンドのメンバーとして、似たような経験をすることになります。
「私はそうしたロックな物語のいくつかを生きてきた。個人的には経験したことがなくても、経験した人の隣に立っていたことはある。だから、私は犯罪の現場にいたようなものだね」

“I Want Blood” では、”Held Your Tongue” で Cantrell の歌詞の一部が露わに。冒頭のヴァース全体をアカペラで歌っています。初期の ALICE IN CHAINS のレコーディングから、Cantrell はバンドのボーカル・サウンドの重要な要素で、彼のラインは Staley のラインと混ざり合い、強烈に一目で AIC とわかるスタイルを作り出していました。彼のソロ・アルバムでも、そのスタイルは維持されています。しかし、たとえヴァースであっても伴奏なしで歌うことは、Cantrell がボーカリストとしての自信を深めていることを示唆しています。
「確かに、今はシンガーとして自分の能力の頂点で活動しているような気がした。私は成長していると思う。何事にももっと一貫性を持たせたいと思っているんだ。ギターを弾くのも、歌うのも、曲作りをするのも、プロデュースするのも、他の人と一緒に仕事をするのも、うまくプレイするのも。
そうすれば、避けられない浮き沈みが起きても、少なくとも戻るべきベースラインがある。前作では、ステップアップしたように感じた。今回のアルバムでは、特にボーカルにおいて、もう一段階上がったような気がするよ」
例えば、”Off The Rails” や “Afterglow” のような彼独特の、陰鬱でありながらキャッチーなメロディはどこからくるのでしょうか?
「私がミュージシャンになりたいと思ったのは、Elton John のバンドを好きになったことがきっかけだった。”Tumbleweed Connection” が好きでね。アメリカーナのような雰囲気があるんだ。私の印象では、Elton はアメリカを愛していると思うんだ。ポップスやロックンロールだけでなく、カントリー・ミュージックの要素もあるかもしれない。そしてこれには南部の雰囲気があるんだ。”Country Comfort” と “Amoreena” は、このアルバムの中でも特に好きな曲だ。
Elton には何度か会ったことがあったけど、彼はいつもとても物知りで、バンドにとても興味を持ってくれた。彼が僕らの曲 “Black Gives Way To Blue” をレコーディングすることになった頃に、私はそれを知ったんだ。彼は ALICE IN CHAINS の大ファンなんだ。彼自身がファンだから、いろんな音楽について常にアンテナを張っていて、すごく詳しい。自分にとって一番の音楽的インスピレーションの源である人物に、自分の曲で演奏してほしいと頼むなんて…それはとても意味のあることなんだ。まさか彼がイエスと言ってくれるとは思ってもみなかったけどね。私は彼にメールを書き、その曲の意味、特に Layne に敬意を表したいこと、あの曲は和解し、”親友よ、さようなら” と言い、同じ本の新しい章を生きるためにバンドとともに前進するために書いた曲だと説明した。彼はあの曲を聴いて、こう言ったんだ。”この曲の一部になりたい。感情がとても純粋で、この曲でピアノを弾きたい” ってね。私にとってもバンドにとっても、これまでで最もクールな出来事のひとつだ」

アルバムは、ドリーミーなギター・パターンとエレガントなギター・ソロ、伸びやかな単音で終わる壮大な “It Comes” でその幕を閉じます。Cantrell にとってこの曲は、PINK FLOYD とその象徴的なギタリストである David Gilmour への感謝の念と呼応しています。
レコーディング・セッション中、Cantrell は突然ひらめき、ギターのシングル・ピックアップに顔を近づけ、”Another Brick in the Wall, Part 2″ の不朽の名セリフを叫びました。
「”肉を食わなきゃ、プリンも食えないだろ?”よく聴いてみると、この曲の最後の瞬間にそのようなボーカルがあったことがわかる。その場の雰囲気に流されて、ただ面白いと思ってギターに向かって叫んだんだ」
PINK FLOYD への愛情は深く、Gilmourが彼の本質的なギター・ヒーローだといえますが、実際に会う機会はないといいます。
「いつかあの人と2、3時間一緒に過ごしたいよ。少なくとも、2、3時間ね。私は Gilmour が大好きだ。PINK FLOYD も大好きだ。彼らは私にとってビッグ・バンドなんだ。あのテイストを出すつもりで書いたわけじゃないんだけど、自然とそうなったんだ。この曲には、私のフロイドに対する感謝の気持ちと、ちょっとした煌めきの要素が含まれていると思う。あの人たちに触れることはできない。アンタッチャブルだよ。私にとって PINK FLOYD は、常にとても視覚的なバンドだった。音楽を聴いていると、いろんな場所に連れて行ってくれるし、風景や人物を見ることができる。私はいつも彼らのそういうところが好きだった。曲作り、パフォーマンス、プロダクション・レベル、特に当時としては、とても重層的で、とても豊かで深みがあった。私は Gilmour を尊敬するギタリストのトップ5に入れているんだ」
当然、シアトルの血脈として BLACK SABBATH も Cantrell の血肉となっています。
「私が最初に聴いたサバスのアルバムは、実は “Vol. 4” で、でもそれでいいんだ。あとは “Paranoid” も完璧に近いと思う。サバスにはヘヴィネスとダークネスがあり、それは私たちのサウンドに直接影響を与えたとしてよく引き合いに出される。たしかにその血統をたどることができるし、それはシアトルの多くのバンドに言えることだと思う。
サバスはフロイドと似てとても視覚的なバンドでもあるけれど、ただもっと直感的なんだ。オジーがホラー映画のサウンドトラックを作ろうとしていたというインタビューを読んだことがある。テーマは常にかなり暗く、殺伐としていて、テーマ的にも歌詞的にもパンチが効いていたからね。Tony Iommi も私のお気に入りのギタリストの一人で、とても影響を受けたよ」

Cantrell は自身のギターリフの特徴をどう捉えているのでしょうか?
「グランジはチューニングが少しずれていて、フルベンドとは言えないリフが多い。僕の曲には、大きくベンドするリフが多いんだ。これは僕の特徴のひとつなんだ。サバスの Tony Iommi や Ace Frehley を聴いていて、そう思うようになったんだ。Frehley は大のベンダーで、僕も子供の頃は彼の大ファンだった」
デュアル・ギターのバンドが Cantrell の好みです。
「私は長年 AC/DC のファンだった。”Highway To Hell” も “Back in Black” も完璧だと思う。とても巨大で、とても衝撃的で、私にとっても、何百万人もの人々にとっても、人生のしおりのようなものだった。
奇妙なことに、ALICE IN CHAINS は彼らが経験したことをいくつか経験した。私たちはメンバーの死を経験し、続けていく決心をし、それを成功させた。私たちのバンドは、ある意味パラレルなんだ。
バンドを始めたころは、私はどんなバンドでもリズム・プレイヤーだったから、Malcom にとても共感していたし、いつか Angus のようにリードを弾きたいと思っていた。彼は驚異的なリード・プレイヤーだけど、バンドのバックボーンはリズム・ギターだといつも思っている。私が好きなバンドの多くは、デュアル・ギターのバンドだと思う。IRON MAIDEN も SCORPIONS もね。ALICE IN CHAINS を始めた当初は、本当はもう1人ギタリストが欲しかったんだけど、他のメンバーがギタリストを欲しがらなかったから、もう少し弾けるようになる必要があったんだ(笑)」
ギタリストとして、同じシアトルのあの偉人も Cantrell に大きな影響を与えました。
「Jimi Hendrix はシアトルのローカルヒーローの一人で、私たちは同じ道を歩いた。彼と同じ町の出身であることを誇りに思っていた。このバンドのごく初期の頃、私たちは墓地まで車で行き、彼の墓に行ってビールを数本くすねたりしたのを覚えている。多くの人がそうしていることも知っていた。だから、もしマリファナが少なかったとしても、墓に行けば必ずマリファナが1、2本はあったよ……私たちも何度かやったけどね!(笑)みんな、ギターのピックや時にはマリファナ全部を置いていくんだ。そして私たちはジミと一緒にいて、人々が彼の墓に置いていったマリファナを吸った。
彼は驚異的なギタリストだった。彼のバンド、あのレコードのトリオは伝説的だ。”Are You Experienced?” は、私が最初に出会った彼のアルバムだ。そして今でもベストだと思っている。彼は革新者であり、極めてユニークだった。彼は時の試練を乗り越える独自性を持っていた。同レベルのギタリストは、Eddie Van Halen しかいない」

その Van Halen は彼の恩人です。
「彼は私の友人でそう呼べたことを誇りに思っている。1990年頃、半年ほど彼らのツアーに同行したとき、彼らは私たちに最初のブレイクのきっかけを与えてくれた。
最初にファースト・アルバムを聴いたんだ。そして最初の一音から……それがどんなにマジカルだったかを覚えている。ジミヘンと同じだよ。だからふたりを引き合いに出すんだけど、彼らは時代の違う兄弟のようなものだと思うんだ。完全に唯一無二なんだ。Eddie の前には Eddie のようなサウンドを出す人はいなかった。でも、その後に彼のようなサウンドを出したり、彼の真似をしようとしたりした人は山ほどいた。
タッピング奏法をやってみたけど、全然ダメだった。あのレコードは、ギタリストになりたいと思っていた子供にとって、まるで達成不可能な目標みたいなものだった。
数年後、私たちは本当にいい友達になった。彼は新しいギターとアンプを持っていた。それを買っていいかどうか、少し安くしてもらえないかとか、そんなことを尋ねたのを覚えている。彼はこう言ったんだ “そんなのクソくらえだ、お前にやるよ!”」
Cantrell が夏のツアーで全米を回る中、”I Want Blood” で作った曲のほとんどは、”Vilified” を除いて秘匿されることになりました。90年代、ALICE IN CHAINS は次のアルバムに収録される予定の新曲をロードテストすることが度々ありましたが、それはスマートフォンが普及する前の時代だから。ファンが前夜のライヴの全編をハイビジョン映像でYouTubeにアップする時代ではありませんでした。
彼らが “Would?” や “Rooster” のような曲をテストしていた当時は、時折海賊がテープレコーダーをショーに忍び込ませ、サウンドボードに接続する以外は問題ではなかったのです。そのような傷だらけの録音を聴くのは、いずれにせよ選ばれた一部の人たちだったから。
「一般的に、私は最初にその曲のベスト・ヴァージョンを聴いてもらいたいんだ。それから、ビデオとかが氾濫するのはいいんだ。やり方が変わってきたし、おそらく多くの他のアーティストもそうだろう」

Cantrell は後ろを振り返ることにあまり時間を費やさないといいますがしかし、このギタリストは自分自身を音楽、ロックの連続体の一部だと考えています。
「私はバトンを手渡されたコミュニティの一員なんだ。そして、そのバトンを他の人々、次の世代のミュージシャンに渡すことができ、彼らがそのバトンを受け取り、自分のレースを走るのを見ることができた。とてもクールなことだよ。崇高な努力だよ」
昨年4月のシック・ニュー・ワールドのギグの後、具体的な計画がないとしても、ALICE IN CHAINS が彼の次なる舞台なのは確かでしょう。
「いつかはまたロックに戻るつもりだよ。それがいつになるのか正確にはわからないけど、適切な機会が訪れたり、”そうだ、やろう” と決めたら、やるつもりだよ。両方できるのはいいことだ。私の経歴を見れば、私のハートがどこにあるかわかるよ。私はアリスに生き、アリスを食べ、アリスを愛している。バンドにいることが大好きなんだ。でも、たまには船から出てひとりで泳ぐのもいい。それは健康的なことだ。ボートはいつでもすぐそこにあるし、泳いで戻ることもできる。それは私たち全員にとって変わらないことだ」
ソロ・キャリアを模索することは、ここ数年、アリスが現在進行形で取り組んでいるように、刺激的な場所であったと彼は言います。
「自分の直感に従うこと、自分らしくあること。この2つを実行すれば、勝っても負けてもうまくいく。それが私たちのモットー。何をするにしても、この2つから始めるようにしている。自分の直感を信じ、自分に賭けるんだ」


参考文献: REVOLVER :JERRY CANTRELL: “YOU CAN LOOK AT MY HISTORY AND YOU KNOW WHERE MY F**KIN’ HEART LIES”

KERRANG!:“It’s some of the best work I’ve done”: Jerry Cantrell takes us inside his new solo album I Want Blood

Trace The Bloodline: Jerry Cantrell Of Alice In Chains’ Favourite Albums

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DIAMOND CONSTRUCT : ANGEL KILLER ZERO】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH KYNAN GROUNDWATER OF DIAMOND CONSTRUCT !!

“Bands Like Korn And Linkin Park Blend New Things Together So Well. We’ve Always Looked Up To The Nu-metal Genre For Being Something Truly Unique. That’s What We Want To Do In a Modern Way.”

DISC REVIEW “ANGEL KILLER ZERO”

「KORN や LINKIN PARK のようなバンドは、当時の新しいものをうまく融合させていた。だからこそ、僕たちは Nu-metal というジャンルが本当にユニークなものであることを常に尊敬してきたんだ。僕たちは、ああいうことを今の現代的なやり方でやりたいんだ。誰かが僕らの音楽を聴いたときに、”あれは DIAMOND CONSTRUCT だ!”と言ってもらえるような、新しくてすぐ認識できるものを作りたいんだよ」
CODE ORANGE, VEIN, SPIRITBOX, LOATHE, VENDED, TETRARCH といった新鋭の登場、 MADVAYNE や SATAIC-X の復活、そして SLIPKNOT や KORN, DEFTONES の奮闘によって Nu-metal は再びメタルのトレンドへと返り咲いてきました。興味深いのは、あの奇妙で雑多な電子的重量感が、近年メタルの原動力となった “ノイズ” と絶妙な核融合を起こしていることでしょう。オーストラリアの DIAMOND CONSTRUCT は、そのノイズと Nu-metal の核融合を使って、メタルコアの原石をダイヤモンドの輝きへと磨き上げました。
「メタルコアというジャンルが非常に規則的で、特定のサウンドやリフの書き方があるせいで門戸が閉ざされているようだということには、僕たちもまったく同意見だよ。だからこそ、僕たちは常にオリジナリティを大切にしてきた。DIAMOND CONSTRUCT を他の誰かのように聴かせたくない。だから、他のバンドが残してくれたサウンドから影響を受けつつも、自らのサウンドを拡大させようとベストを尽くしているんだ」
実際、DIAMOND CONSTRUCT は、ヘヴィ・ミュージックの暗闇に多様でエレクトロニックな光の華を咲かせることに成功しています。それは、メタルコアという箱の鍵を解き放ち、”ニュー・メタルコア” の潮流を押し進めることにもつながりました。だからこそ彼らは、SPIRITBOX, THOUSAND BELOW, そして HARPER といった印象的なバンドを擁するあの Pale Chord における最初のオーストラリア人ロースターとなることに成功したのです。
そして、EMMURE, ALPHA WOLF, DEALER を源流とし、DIAMOND CONSTRUCT や DARKO US を巻きこんで大きな津波へと成長したその波は、日本にまで到達して PALEDUSK, PROMPTS のようなバンドが海を渡る力にもなったのです。
「Braden はとてもユニークな人だ。時代の流れに逆らうのが好きで、期待されることをするのが嫌いなんだ。Wes Borland, Josh Travis, Jason Richardson のようなギタリストへの愛が、彼をペダル・ダンスというニッチなテクニックを見つけるまでに成長させたんだ。彼は、自分が最もシュレッディでテクニカルなギタリストではないかもしれないことを知っているからこそ、他の多くの人ができないことをやっているんだ。僕たちは、全員がギターという楽器の限界を押し広げるのが好きなんだ」
そんなトレンドを “開拓” した彼らが世界から注目を集めた一因が、ギタリスト Braden Groundwater の “ペダル・ダンス” でした。シュレッドとテクニックが溢れるインターネットの世界で、DIAMOND CONSTRUCT は楽器の扱いにおいても常識にとらわれず、ノイズと色彩の新たな潮流を生み出していきます。Braden は驚異的スピードや奇抜なテクニック以外にも、ギターには様々な可能性があることをペダルのタップダンスで巧みに証明していきました。白には200色ありますが、Braden のサウンドはきっとそれ以上に万華鏡の可能性を秘めています。
「アニメやゲームが持つオーラといかにマッチしているかということに、多くの共通点やつながりがあることに気づいたんだ。個人的な成長や失恋、恋愛、グループとの境界を乗り越える物語。それがこのアルバムのテーマだ。ファイナル・ファンタジーのようなゲームがもたらすストーリーに似ているよね。だからそれと連動させるために、ゲームから抜粋した声でインタールードを書いたんだ。僕たちが作った音楽とテーマにマッチしたビジュアルを表現することは、すべて理にかなっていたんだ」
そうして生み出されたダイヤのサウンドは、”Angel Killer Zero” で日本の文化と見事に融合を果たします。日本のアニメやゲームは、孤独感、失恋、幼少期のトラウマ、そして目を見張るような成長という、人生をナビゲートするようなストーリーで世界を魅了してきました。誰もが経験するような物語だからこそ、彼らはそのテーマに感化され、メタルと共に開拓することを心に誓いました。そうした普遍的で、しかし特別な勇気をもらえるようなテーマは、SNS も駆使して世界中多くの人に自身の音楽を届けたいと願う今の彼らにピッタリだったのです。
今回弊誌では、ボーカリスト Kynan Groundwater にインタビューを行うことができました。「最近、僕たちは、本当に注目されたり、注目を浴びるためには、現代のソーシャル・メディアを把握しなければならないことに気づいたんだ。それは、音楽と同じくらい重要なことなんだってね。だから僕たちは、その世界を学び、それに取り組み、より上手になり、より一貫したものにすることを自分たちに課したんだよ」 Wes Borland に影響を受けたギターっていいね。どうぞ!!

DIAMOND CONSTRUCT “ANGEL KILLER ZERO” : 10/10

INTERVIEW WITH KYNAN GROUNDWATER

Q1: How was your tour with Prompts from Japan? There are more and more great Japanese bands like them, are you interested in the Japanese scene?

【KYNAN】: Touring with Prompts was an incredible experience. We all bonded quickly and personally noticed how humble and hard working they are as people. From the moment we first met them at the airport in Perth it was apparent that they have a very similar sense of humour to us so we knew we’d get along fine. Seeing them live on stage was awesome because we’ve never toured with a band from Japan before – it was great to see their energy and how they portray themselves. It made for a unique tour package that the fans here in Aus were very appreciative of. We’d love to return the favour and get over to Japan to tour with Prompts. Safe to say the goodbyes at the end of tour were somber so I’m sure they’d love to do it all again on their home turf.

Q1: 日本の PROMPTS とのツアーはどうでしたか?彼らのような素晴らしい日本のバンドがどんどん増えていますが、日本のシーンに興味はありますか?

【KYNAN】: PROMPTS とのツアーは素晴らしい経験だったね。みんなすぐに打ち解けたし、個人的には彼らが人間としていかに謙虚で勤勉であるかに気づかされたよ。
パースの空港で彼らに初めて会ったときから、ユーモアのセンスが僕らと似ていることがわかったから、きっと仲良くなれると思ったんだ。日本から来たバンドとツアーをするのは初めてだったので、彼らのステージを生で見ることができたのは最高だった。ユニークなツアー・パッケージとなったし、ここオーストラリアのファンもとても喜んでくれた。
この恩を返すために、PROMPTS と一緒に日本でツアーをしたいね。素晴らしい時間だったから、ツアー終了時の別れは寂しいものだった。だからね、彼らは地元でもう一度僕らとツアーをやりたいと思っているに違いないよ。

Q2: Speaking of Japan, “Angel Killer Zero” is clearly influenced by Japanese anime and video game culture? Why did you decide to make such an album?

【KYNAN】: The influence of Japanese anime and gaming culture on our latest album really comes down to our upbringing. Growing up in a small town in Australia – we loved watching the morning shows on TV before school. The characters and world building are what is really attractive to us.
As we were writing the album, I noticed a lot of similarities and connections in how the music and lyrical content matched the aura that these anime’s and games have. Stories of personal growth and heartbreak, love and overcoming boundaries with a group. That’s what this album is about. Similar to the storyline that a game like final fantasy brings you. We wrote interludes with voice excerpts from the games to tie in with that. It all sort of made sense to have a visual representation that matched the music and themes that we created.

Q2: 日本といえば、”Angel Killer Zero” は明らかに日本のアニメやゲーム文化に影響を受けていますね。なぜこのようなアルバムを作ろうと思ったのですか?

【KYNAN】: 僕らの最新アルバムに日本のアニメやゲーム文化が影響を与えているのは、僕らの育った環境に起因しているんだ。オーストラリアの小さな町で育った僕たちは、学校に行く前にテレビで朝の番組を見るのが大好きだった。そこで目にした日本のキャラクターやアニメの世界観は、僕らにとって本当に魅力的なものなんだ。
アルバムを作っているうちに、音楽や歌詞の内容が、そうしたアニメやゲームが持つオーラといかにマッチしているかということに、多くの共通点やつながりがあることに気づいたんだ。個人的な成長や失恋、恋愛、グループとの境界を乗り越える物語。それがこのアルバムのテーマだ。ファイナル・ファンタジーのようなゲームがもたらすストーリーに似ているよね。だからそれと連動させるために、ゲームから抜粋した声でインタールードを書いたんだ。僕たちが作った音楽とテーマにマッチしたビジュアルを表現することは、すべて理にかなっていたんだ。

Q3: The songs on the album pay homage to Evangelion, Akira, Gundam, Demon Slayer, etc. What anime and video game works actually influence you guys?

【KYNAN】: Shows like Dragon Ball Z, Yugioh, Beyblades etc. These sorts of anime shows had a massive influence on what we loved in terms of art forms and storylines. That grew into our love for JRPG video games like Final Fantasy and Kingdom Hearts. As we got older, watching shows like Evangelion and Gundam really nailed home the art form from an earlier time since before we got into Japanese culture. The art style is immaculate.

Q3: アルバムの曲からは、エヴァンゲリオン、Akira、ガンダム、鬼滅の刃などへのオマージュが見て取れます。あなたたちが実際に影響を受けたアニメやゲーム作品を教えていただけますか?

【KYNAN】: ドラゴンボールZ、遊戯王、ベイブレードなどなどだね。これらのアニメ番組は、アートフォームやストーリーの面で、僕らの嗜好に大きな影響を与えたんだ。それが “ファイナル・ファンタジー” や “キングダム・ハーツ” のようなJRPGのビデオゲームへの愛へと発展していった。
大人になるにつれて、エヴァンゲリオンやガンダムといったアニメを見て、僕たちが日本文化にのめりこむ以前からのアートフォームに釘付けになったよ。こうしたアートスタイルは永久不滅だね。

Q4: What theme or concept is behind the title and artwork of “Angel Killer Zero?”

【KYNAN】: It all actually came to me in a dream. I saw an angel crying holding her own wing and I vividly remember the three words ‘Angel Killer Zero’. I can’t really explain why but when I woke up I knew that what I saw was the album art and title for what we were working on at the time. It felt right the ambiguous title, the fallen angel. It all perfectly matched what we were writing lyrically and musically. The themes explore loneliness and abandonment, love, loss etc. So it made sense to put a concept of an anime or video game persona to the album. To make it digestible in a visual format.

Q4: “Angel Killer Zero” のタイトルとアートワークの背景にあるテーマやコンセプトは何ですか?

【KYNAN】: 実はすべて夢の中で思いついたんだ。自分の翼を抱いて泣いている天使を夢で見て、”Angel Killer Zero” という3つの言葉を鮮明に覚えていたんだよ。
なぜかはうまく説明できないんだけど、目が覚めたとき、自分が見たものが、当時僕たちが制作していたアルバムのアートとタイトルだとわかったんだ。この曖昧なタイトルと堕天使が正しいんだとね。僕たちが歌詞と音楽で書いていることと完璧に一致していたから。
テーマは、孤独や見捨てられること、愛、喪失感など。だから、アニメやビデオゲームのペルソナのコンセプトをアルバムに入れるのは理にかなっていた。視覚的なフォーマットで消化できるようにね。

Q5: Your way of incorporating noise into riffs like “I Don’t” is truly innovative! Metalcore has long been considered a formulaic genre, but I can sense your passion for evolving the genre, would you agree?

【KYNAN】: Thank you! We completely agree that the genre of metalcore is very regimented and almost gate kept by certain sounds or the way you are supposed to write riffs. We’ve always cared about originality. We don’t want Diamond Construct to sound like anyone else. So we make a point of trying our best to expand the sound that others have left for us to grab influence from. Bands like Korn and Linkin Park blend new things together so well. We’ve always looked up to the Nu-metal genre for being something truly unique. That’s what we want to do in a modern way. Create something new and recognisable that when someone listens to our music they can say “that’s Diamond Construct!”

Q5: “I Don’t” のような、リフにノイズを取り入れるやり方が実にクールで革新的ですね!メタルコアは定型的なジャンルだと思われて久しいですが、このジャンルを進化させようというあなたの情熱を感じますよ。

【KYNAN】: ありがとう!メタルコアというジャンルが非常に規則的で、特定のサウンドやリフの書き方があるせいで門戸が閉ざされているようだということには、僕たちもまったく同意見だよ。
だからこそ、僕たちは常にオリジナリティを大切にしてきた。DIAMOND CONSTRUCT を他の誰かのように聴かせたくない。だから、他のバンドが残してくれたサウンドから影響を受けつつも、自らのサウンドを拡大させようとベストを尽くしているんだ。
KORN や LINKIN PARK のようなバンドは、当時の新しいものをうまく融合させていた。だからこそ、僕たちは Nu-metal というジャンルが本当にユニークなものであることを常に尊敬してきたんだ。僕たちは、ああいうことを今の現代的なやり方でやりたいんだ。誰かが僕らの音楽を聴いたときに、”あれは DIAMOND CONSTRUCT だ!”と言ってもらえるような、新しくてすぐ認識できるものを作りたいんだよ。

Q6: Braden’s “pedal dance” is what gives Diamond Construct its trademark sound! I’ve never seen a guitarist so busy pedaling around, How did he arrive at that style?

【KYNAN】: Braden is a very unique person. He loves to go against the grain and doesn’t like to do what is expected. His love for guitarists like Wes Borland, Josh Travis and Jason Richardson is what grew him into finding his niche which is the pedal dancing. He knows that he might not be the most shreddy or tech guitarist but he’s doing something that not many other people can do and we love to push the boundaries of how a guitar is perceived.

Q6: Braden の “ペダル・ダンス” は、DIAMOND CONSTRUCT のトレードマークとも言えるサウンドを生み出していますね!
あんなに忙しそうにペダルを踏み変えるギタリストを見たことがないのですが、彼はどうやってあのスタイルにたどり着いたのでしょうか?

【KYNAN】: Braden はとてもユニークな人だ。時代の流れに逆らうのが好きで、期待されることをするのが嫌いなんだ。
Wes Borland, Josh Travis, Jason Richardson のようなギタリストへの愛が、彼をペダル・ダンスというニッチなテクニックを見つけるまでに成長させたんだ。彼は、自分が最もシュレッディでテクニカルなギタリストではないかもしれないことを知っているからこそ、他の多くの人ができないことをやっているんだ。僕たちは、全員がギターという楽器の限界を押し広げるのが好きなんだ。

Q7: The music of “Angel Killer Zero” is as diverse or major as that of Code Orange. Especially the crossover with Nu-metal, which has become a trend in modern metal, are bands from that era a big part of your music?

【KYNAN】: Code Orange are a great band! In the early days of childhood for us – our parents would put on a lot of bands that they were into. Bands like Slipknot, Limp Bizkit etc. So we grew up listening to Nu-metal from a young age. We almost understand that genre back to front. It’s undeniably the biggest influence in our music to date. It’s great to see that there is a resurgence in the crossover.

Q7: “Angel Killer Zero” の音楽は、もはや CODE ORANGE と比肩し得るほどに多様でメジャーなサウンドです。
特に、現代のメタルのトレンドとなっている Nu-metal とのクロスオーバーは実に見事ですね。あの時代のバンドは DIAMOND CONSTRUCT の音楽の大きな部分を占めているのでしょうか?

【KYNAN】: CODE ORANGE は素晴らしいバンドだよね!僕らが子供の頃、両親は自分たちが好きなバンドをたくさん聴かせてくれた。SLIPKNOT や LINKIN PARK, LIMP BIZKIT のようなバンドだ。だから僕らは若い頃から Nu-metal を聴いて育ったんだ。
僕たちは、そのジャンルをほとんど隅から隅まで理解している。これまでの僕らの音楽に最も大きな影響を与えたのは紛れもなく Nu-metal だ。だから、クロスオーバーが復活しているのを見るのは素晴らしいことだよ。

Q8: You guys have become even more popular with buzz on TikTok and Instagram. However, there are still many artists who would like to be evaluated on an album basis rather than such clipped videos. How do you feel about such changes in the music industry?

【KYNAN】: This is a really good question. For us, we solely care about writing original music. In a perfect world we’d love to be judged off our albums and songs in particular. But we also understand that the music industry has changed and you have to go with that change otherwise you fall by the wayside of so many bands. In recent times we noticed that to truly make a dent or to be seen you have to have a grasp on modern social media. It’s almost as important as the music these days. So we’ve taken it upon ourselves to learn that world and work on it, become better at it and more consistent with it.

Q8: あなたたちはTikTokやInstagramで話題となり、さらに人気が高まりました。しかし、そのような切り取られた動画ではなく、アルバム単位での評価を望むアーティストもまだまだ多いですよね。こうした音楽業界の変化についてはどう思っていますか?

【KYNAN】: 本当にいい質問だね!僕たちだけの考えならば、オリジナル曲を作ることだけに関心がある。完璧な、理想的な音楽世界であれば、特にアルバムや曲で評価されることを望んでいるに決まっている。
でもね、音楽業界が変化していることも理解しているし、その変化に対応していかなければ、多くのバンドのように道を踏み外してしまう。最近、僕たちは、本当に注目されたり、注目を浴びるためには、現代のソーシャル・メディアを把握しなければならないことに気づいたんだ。それは、音楽と同じくらい重要なことなんだってね。だから僕たちは、その世界を学び、それに取り組み、より上手になり、より一貫したものにすることを自分たちに課したんだよ。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED KYNAN’S LIFE!!

Korn “Follow The Leader”

Slipknot “Iowa”

Linkin Park “Meteora”

Architects “Daybreaker”

Limp Bizkit “Chocolate Starfish”

MESSAGE FOR JAPAN

Sure thing! We’d like to say thank you for listening firstly. It means so much to us that our music can reach your ears. We’d love to get over to Japan soon and show you all what we love to do, which is play shows and talk to new fans. Hopefully we get to meet you all soon.

まずは聴いてくれてありがとう!僕らの音楽がみんなの耳に届くことは、僕らにとってとても意味のあることなんだ。近いうちに日本に行って、僕らが大好きなライブや新しいファンとの会話を楽しみたいね。近いうちに会えることを願っているよ。

KYNAN GROUNDWATER

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【KANONENFIEBER : DIE URKATASTROPHE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH NOISE OF KANONENFIEBER !!

“The Topic Of War In The Metal Genre Is Often Handled In a Provocative And Glorifying Way. We Wanted To Create a Contrast To That And Develop a Project That Depicts War In Its Worst Aspects, Serving As a Warning.”

DISC REVIEW “DIE URKATASTROPHE”

「メタル・ジャンルにおける戦争の話題は、しばしば挑発的で美化された方法で扱われているという点で意見が一致した。私たちはそれとは対照的に、戦争を最悪の側面から描き、警告の役割を果たすようなプロジェクトを展開したかった。戦争における苦しみと死は時を経ても変わらないものだから、今日の世界の緊張に照らしても特に適切なテーマだと思ったんだ」
例えば、SABATON や ACCEPT のように戦争の英雄譚を語るメタル・バンドは大勢います。それはきっと、メタルならではの高揚感や攻撃性が、勇壮な勝利の物語と素晴らしくシンクロするからでしょう。
しかし、彼らの描く戦争はあくまでファンタジー。ファンタジーだからこそ、酔いしれることができます。実際の戦争にあるのは、栄光ではなく悲惨、殺人、残酷、無慈悲、抑圧に理性の喪失だけ。誰もが命を失い、魂を失い、人間性を失う。だからこそ、戦争の狂気を知るものが少なくなった時代に、KANONENFIEBER はその狂気を思い出させようとしているのです。
「KANONENFIEBER の真正性は、大衆に理解されやすいことよりも私にとって重要なことだから。私の英語力では、兵士たちのスラングを正確に伝えることはできないんだ。そして、もうひとつの重要な要素は、私が扱う手紙や文書がドイツ語で書かれていることだ。私はそうした兵士の手紙や文書をもとに歌詞を書いているし、多くの文章を直接歌詞に取り入れているからね。だから、KANONENFIEBER にドイツ語を使うのは論理的な選択だった」
KANONENFIEBER がその “教育” や “警鐘” の舞台に第一次世界大戦を選んだのは、そこが産業化された大量殺戮の出発点だったから。そして、”名もなき” 市井の人や一兵卒があまりにも多く、その命や魂を削り取られる地獄のはじまりだったから。
だからこそ、彼らは戦争の英雄、戦争を美化するような将校やスナイパーではなく、数字や統計で抽象的に描かれてきた名もなき弱者を主人公に選びました。顔のない被害者たちに顔を与える音楽。そのために KANONENFIEBER の心臓 Noise は、当時の残された手紙や文献、兵士の報告書をひとつひとつ紐解き、心を通わせ、バンドの歌詞へと取り込んでいきました。
そうして、”Die Urkatastrophe” “原初の災難” と名付けられたアルバムには、採掘チームが戦線の地下にトンネルを掘り進めた苦難や(”Der Maulwurf”)や、オーストリア=ハンガリーがロシア軍からリヴィウ/レンベルクを奪還した地獄の戦い(”Lviv zu Lemberg”)といった真実の戦争が描かれることとなりました。
「デスメタルとブラックメタルは、私たちが選んだ戦争を最悪の側面から描くというテーマにとって最高の音楽的出口だ。これほど危険で抑圧的なサウンドでありながら、同時に雰囲気があってメランコリックなジャンルは他にないと思う。それに、私はこうしたジャンルにいると単純に落ち着くというのもあるね」
そしてそのストーリーは、凶悪さと物悲しさを併せ持つ、ほとんど狂おしいほどのエネルギー、メタルというエネルギーによって紡がれていきます。Noise のカミソリのような叫びや地を這う咆哮は兵士や市民の恐怖を代弁し、パンツァーファウストのように地鳴りをあげるトレモロに夕闇の荘厳とメランコリーが注がれていきます。そうして流血、死、絶望にまつわる物語の糸は戦場エフェクトや話し言葉の断片によって結ばれ、アルバム全体を有機的にあの暗黒の1910年代へと誘っていきます。
我々はこの狂気の嵐の中から、当時の戦災者の言葉から、戦争の非道、虚しさ、地獄を読み取らなければなりません。安全な場所から大きな声で勇ましい言葉を吐く英雄まがいほどすぐ逃げる。彼らは決して自分の体は張りません。だからこそ、KANONENFIEBER は匿名性を貫き、顔の見えない負けヒーローを演じ続けるのです。
今回弊誌では、Noise にインタビューを行うことができました。「私の家から車で10時間もかからないところで、戦争が起こっている。過去の領土主張をめぐって、人々が残忍にも他人を殺しているんだ。私には理解できない。私は政治的な教養があるわけではないし、政治的な対立について議論しようとは思わない。しかし、何事も暴力が解決策であってはならないと信じている。すべては言葉を交わすことと、譲り合いによって解決できるはずなんだ」ANGRY METAL GUY で滅多に出ない満点を獲得。どうぞ!!

KANONENFIEBER “DIE URKATASTROPHE” : 10/10

INTERVIEW WITH NOISE

Q1: There are many metal bands that deal with the theme of war, but few of them deal with the nameless people whose dignity, souls, and lives were taken by war like yours. I think it’s wonderful! How did you arrive at such a theme?

【NOISE】: I’m glad you like our concept! I was sitting down with a historian friend of mine (Dani B.) over a cup of coffee. We were chatting about the pros and cons of the local metal scene and came to the conclusion that there should be a band that deals with the subject of war, but without glorifying it. Dani and I agreed that the topic of war in the metal genre is often handled in a provocative and glorifying way. We wanted to create a contrast to that and develop a project that depicts war in its worst aspects, serving as a warning. This is especially relevant in light of today’s foreign policy tensions, as the suffering and death in war remain the same.

Q1: 戦争をテーマにしたメタルバンドはたくさんありますが、あなたたちのように戦争によって尊厳、魂、命を奪われた名もなき人々を主役として扱ったバンドは少ないですよね。素晴らしいと思います!どうやって、こうしたテーマにたどり着いたのですか?

【NOISE】: 私たちのコンセプトを気に入っていただけてうれしいよ!歴史家の友人(ダニ・B)とコーヒーを飲みながら話していたときのことだ。地元のメタル・シーンの長所と短所について話しているうちに、戦争というテーマを扱いながらも、それを美化しないバンドがあるべきだという結論に達したんだ。
ダニと私は、メタル・ジャンルにおける戦争の話題は、しばしば挑発的で美化された方法で扱われているという点で意見が一致した。私たちはそれとは対照的に、戦争を最悪の側面から描き、警告の役割を果たすようなプロジェクトを展開したかった。戦争における苦しみと死は時を経ても変わらないものだから、今日の世界の緊張に照らしても特に適切なテーマだと思ったんだ。

Q2: The stories of the nameless victims of war remind us of those of us today, and we can relate to them very well. That there is no glory in war, and that war must never happen again. Is (death, black) metal the right tool to tell these stories?

【NOISE】: I completely agree with you. In my opinion, death and black metal are the best musical outlets for the themes we’ve chosen. I don’t think there are any other genres that sound as dangerous and oppressive, while also being atmospheric and melancholic at the same time. Plus, I just feel at home in these genres.

Q2: 名もなき戦争の犠牲者たちの物語は、現代の私たちを思い起こさせ、大いに共感できるテーマです。戦争に栄光はないこと、戦争は二度と起こしてはならないこと。デスメタルやブラックメタルは、そうした物語を語るのにふさわしいツールにも思えますね?

【NOISE】: まったく同感だ。私の意見では、デスメタルとブラックメタルは、私たちが選んだ戦争を最悪の側面から描くというテーマにとって最高の音楽的出口だ。これほど危険で抑圧的なサウンドでありながら、同時に雰囲気があってメランコリックなジャンルは他にないと思う。それに、私はこうしたジャンルにいると単純に落ち着くというのもあるね。

Q3: I understand that one of the things that awakened you to such warnings and education was your great-grandfather’s diary about World War II. However, you are basically describing World War I. Why is that?

【NOISE】: The First World War was like the starting point for industrialized mass killing. Additionally, very little is said about this horrific war today, even though it laid the foundation for modern warfare. When I was in school, many history lessons were dedicated to the Second World War, but only a handful to the First World War. It’s important to me to bring the events of the First World War back into people’s memory.

Q3: そうした警告や警鐘、教育に目覚めたきっかけのひとつが、第二次世界大戦に関するあなたの曾祖父の日記だったと理解しています。しかし、あなたは作品では基本的に第一次世界大戦についてを描いていますね?

【NOISE】: 第一次世界大戦は、産業化された大量殺戮の出発点のようなものだからね。加えて、近代戦争の基礎を築いたにもかかわらず、この恐ろしい戦争について今日語られることはほとんどない。私が学生だった頃、第二次世界大戦に特化した歴史の授業は多かったが、第一次世界大戦についてはほんの一握りだった。だから、第一次世界大戦の出来事を人々の記憶に取り戻すことは、私にとって重要なことなんだよ。

Q4: Perhaps your message might be better conveyed to the world if you sing in English. Why do you still sing in German?

【NOISE】: The authenticity of Kanonenfieber is more important to me than being easily understood by the masses. My English simply isn’t good enough to accurately convey the soldiers’ slang. Another key factor is that the letters and documents I work with are written in German. Since I incorporate many passages from these letters directly into my lyrics, using German for Kanonenfieber was the logical choice.

Q4: あなたのメッセージは、もしかしたら英語で歌った方が世界に、多くの人に伝わるかもしれませんね。それでもドイツ語で歌うのはなぜなんですか?

【NOISE】: KANONENFIEBER の真正性は、大衆に理解されやすいことよりも私にとって重要なことだから。私の英語力では、兵士たちのスラングを正確に伝えることはできないんだ。そして、もうひとつの重要な要素は、私が扱う手紙や文書がドイツ語で書かれていることだ。私はそうした兵士の手紙や文書をもとに歌詞を書いているし、多くの文章を直接歌詞に取り入れているからね。だから、KANONENFIEBER にドイツ語を使うのは論理的な選択だった。

Q5: Despite these many reminders, even today there have been major wars, and oppression and division have not disappeared. Is the path humanity has taken the wrong one?

【NOISE】: Less than a 10-hour drive from my home, a war is taking place. People are brutally killing others over territorial claims from the past. I just can’t understand it. I’m not politically well-educated, and I would never presume to discuss political conflicts. However, I believe that violence should never be a solution. Everything can be resolved through words and compromise.

Q5: ただ、こうした警鐘が多く鳴らされてきたにもかかわらず、今日でも大きな戦争があり、抑圧や分断はなくなっていません。人類の歩んできた道は間違っていたのでしょうか?

【NOISE】: 私の家から車で10時間もかからないところで、戦争が起こっている。過去の領土主張をめぐって、人々が残忍にも他人を殺しているんだ。私には理解できない。私は政治的な教養があるわけではないし、政治的な対立について議論しようとは思わない。しかし、何事も暴力が解決策であってはならないと信じている。すべては言葉を交わすことと、譲り合いによって解決できるはずなんだ。

Q6: Japan also took part in the World War, and the nameless people suffered tragically. The “Kamikaze” suicide attacks by soldiers were particularly inhumane, but there are still many who revere them. How do you feel about such illusions and propaganda created by war?

【NOISE】: So-called “heroic deeds,” such as Kamikaze pilots or the suicide mission at the fortress of Osowiec in August 1915, which went down in history as the “Battle of the Dead Men,” are certainly very impressive. The total sacrifice and the willingness to give one’s own life is, from an outside perspective, the ultimate form of devotion. There are no better propaganda tools than these self-sacrificing protagonists.
What do I think of it? Well, let’s put it this way: personally, I can only imagine giving my life in the defense of my loved ones. Anything else is unimaginable to me.

Q6: 日本も世界大戦に参加し、名もなき人々が悲惨な目に遭った国のひとつです。特に兵士による特攻 “カミカゼ” は非人道的な作戦でしたが、いまだにその指令を肯定し、崇拝する人も少なくありません。こうした戦争が生み出す幻想やプロパガンダについて、あなたはどう感じていますか?

【NOISE】: カミカゼパイロットや、”死者の戦い” として歴史に残る1915年8月のオソヴィエツ要塞での特攻作戦など、いわゆる “英雄的行為” は確かに非常に印象的だ。完全な犠牲を払い、自らの命を捧げようとする姿勢は、外部から見れば究極の献身に見える。こうした自己犠牲的な主人公たちに勝るプロパガンダの道具はないよ。
さて、私はそれをどう思うだろうか?個人的には、愛する人を守るために自分の命を捧げることしか想像できない。それ以外のこと、家族以外の他人に命を捧げるなんて私には想像もできないよ。

Q7: Your stages are also impressive, with trenches and cannons. And you are dressed in military uniforms and masks. Why do you dress like this on stage?

【NOISE】: With our show, I’m trying to bring the reality of war to the stage. For that, the stage props and outfits you mentioned are essential. Our show should be perceived more like a musical than a typical metal concert. In the future, we will incorporate more theatrical elements into the performance to depict the suffering and death in war even more effectively. Because if our show is meant to achieve one thing, it’s this: it should shock and make people think.

Q7: 塹壕や大砲を使ったステージも印象的ですね。そしてあなた自身は軍服とマスクに身を包んでいます。

【NOISE】: 私たちのショーでは、戦争のリアリティを舞台で表現しようとしているんだ。そのためには、君が言及したような舞台の小道具や衣装が欠かせないんだよ。
私たちのショーは、典型的なメタル・コンサートというよりも、ミュージカルのように受け止められるはずだ。将来的には、戦争の苦しみや死をより効果的に描くために、演劇的な要素をもっと取り入れていくつもりだよ。というのも、もし私たちのショーで何を達成したいかと聞かれたら、それは “人々に衝撃を与え、考えさせること” なのだから。

Q8: Finally, can metal be some sort of “antidote” for a world full of violence, discrimination, and oppression?

【NOISE】: No, not an antidote. The true antidote must form in people’s minds. As soon as no one participates in war anymore, there will be no more war. However, I hope that through my music I can provide some food for thought that helps promote this “mental antidote.”

Q8: 最後に、メタルは暴力、差別、抑圧に満ちた世界に対するある種の “解毒剤” となり得ますか?

【NOISE】: いや、解毒剤にはなれないよ。真の解毒剤は人々の心の中に形成されなければならないものだから。誰も戦争に参加しなくなれば、戦争はなくなるんだ。だけどね、私の音楽を通して、この “心の解毒剤” を促進するための思考の糧を提供できればと願っているんだよ。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED NOISE’S LIFE!!

Amon Amarth “With Oden On Our Side”

Hail Of Bullets “…Of Frost And War”

Deafheaven “Sunbather”

Finntroll “Nattföd”

Dimmu Borgir “Enthrone Darkness Triumphant”

MESSAGE FOR JAPAN

First of all, thank you for the great and detailed questions. To the reader who made it this far through the interview: thank you for your attention! I hope that one day we can visit the beautiful Japan with Kanonenfieber to learn more about this culture that has shaped the world. Thank you for your attention.

まず最初に、素晴らしく詳細な質問をありがとう!そして、インタビューを読んでくれた読者へ。注目してくれてありがとう!いつか KANONENFIEBER と一緒に美しい日本を訪れ、世界を形作ってきた日本文化についてもっと知ることができることを願っているよ。ありがとうございました。

NOISE

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CENTURY MEDIA RECORDS

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ZEMETH : MIREN】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JUNYA OF ZEMETH !!

“When I Realized That What I Was Intoxicated With Was Probably Not Metal, But Melody Itself, There Was Almost No Music That I Didn’t Like.”

DISC REVIEW “MIREN”

「こんな闇鍋みたいなアルバムがあってもいいんじゃないかという気持ちで “Miren” を仕上げまして、本当にメタルを自称していいのか…?と疑問に思うような曲もありつつ、これも新時代のメタルとして世間に受け入れて頂きたい気持ちもあります。個人的に何を持って”メタル”とするのかはジャンルよりもマインドの方が大切だと思っております。演歌をメタルという人も居るわけですし、メタルとは非常に深い概念だと思いますね」
何をもって “メタル” とするか。それはもしかしたら、フェルマーの定理を解き明かすよりも難解な問いかもしれません。しかし少なくとも、メタルに対する愛情、情熱、そして知識を持つものならば、誰でもその定理へとたどり着くための挑戦権を得られるはずです。北海道を拠点とする JUNYA は、まるでピタゴラスのようにその3平方を自在に操り、メタルの定理を新時代へと誘います。
「閉鎖的なコミュニティで”わかってる”音楽を披露するのも楽しいかもしれませんが、とにかく誰でもいいから僕の音楽が届いて欲しいという思いが一番強いです。ライブの感動や音楽を通した人の温かみを知らずに北海道の辺境で生きてきた自分が初めて音楽に目覚めてイヤホンやスピーカーを通して感じた感動を誰かにもZemethで味わってほしいと思っています。メロディが持つ力というものは自分の中で何事にも代え難いものなので、それを皆様にも体感して頂く為にもこれからもメタルというマインドを携え色々な挑戦をしていきたいと思っております」
JUNYA がメタルの定理を新たな領域へと誘うのは、ひとりでも多くのリスナーに自分の魂ともいえる音楽を届けたいから。何もない僻地で暮らしてきた彼にとって、音楽の神秘と驚異はイヤホンとスピーカーからのみもたらされたもの。しかし、だからこそ、JUNYA はその冷たい機械を介して音楽がどれほどの感動や温もりを届けられるのか、孤独の隙間を埋められるのかを骨身に沁みて知っています。
もはや、ZEMETH の音楽を聴くために “メタル” の門を開ける必要はありません。メロディに酔いしれていたら、それがメタルだった。そんな感覚で世界は ZEMETH の虜になっていくでしょう。
「メタルが無いっていうのはメタラーとしてどうなんだとは思いますが、Falcom、村下孝蔵、ZABADAKが僕の中の3大人生を変えたアーティストなんです。やっぱり世の中のアーティストはもっと音楽の話をするべきだと思いました。ルーツや影響を提示してこそ、その人の音楽の真意が見えるのだと思います。だって自撮りとか音楽関係無い自分語りばっか上げて音楽の話をしないアーティストって中身が見えなくて何考えてるかまるでわからない!僕は自分が生んだ楽曲が生まれた過程は大公開したいですし、僕自身の人となりよりも音楽的な部分を楽しんでほしいです」
アルバムには、イースを中心としたファルコム・ミュージック、スパニッシュ・メタル、ジャニーズ、つんく、ボカロ、アニソン、インフルエンサーに歌謡曲と実にさまざまな要素が飛び交いますが、それでも貫かれるのはメロデスの心臓ともいえる慟哭の旋律。JUNYA はその精製に誰よりも自信があるからこそ、何の “Miren” もなくジャンルの壁を壊していきます。
“音楽の話をしよう”。JUNYA のその言葉は明らかに、音楽を伝えるために音楽以上に重要となってしまった SNS や “バズ” に対する強烈なアンチテーゼでしょう。そして、彼には中身を明け透けにしてもなお、誰にも真似できない旋律の魔術師たる誇りと信念、そして揺るがぬ覚悟が備わっています。
“あくまでコンポーザー”。ボーカルが入っていても、インストのような感覚が強い ZEMETH の音楽。それはきっと、すべてのパート、すべてのトーン、すべてのリズム、すべての音欠片がただメロディのために、楽曲のために働いているからでしょう。
“音楽をファッション感覚で聴く人って音楽にリスペクトが無い気がしてそれこそシャバいとは思うのですが、本当~~に正直に言うと僕はチャラい音楽を聴いてるような女性が好きです!!” それはそう。それはそうなんですが、孤独や僻地の閉塞感を埋めるのは決してチャラい音楽を聴いているような女性だけではないことを、実は JUNYA 自らが証明し、誰かの希望となり続けているのです。
今回弊誌では、JUNYA にインタビューを行うことができました。「僕が心酔しているのは恐らくメタルではなくメロディそのものなんだと気づいた頃から、苦手な音楽はあれど嫌いな音楽というものはほとんどなくなりました」 “PURE IGNORANCE” で一瞬静寂が訪れ、チャイムが鳴り響き、そして爆発する瞬間ね。これが才能よ。どうぞ!!

ZEMETH “MIREN” : 10/10

INTERVIEW WITH JUNYA

Q1: When I heard “Miren” for the first time, I had the feeling that “metal has finally come this far”.
I have been saying for a long time that “modern metal = diversity” and this album was the ultimate example of that. It’s not melodeath anymore, it’s a genre called ZEMETH.
I wish the metal world would be tolerant enough to accept even a song like “HIBISKUS” for example, but of course there are “gatekeepers” in the scene who protect traditions and stereotypes.
Perhaps it would be easier to play “metal that is metal”. Still, why break down the barriers and move on?

【JUNYA】: I am glad you think so.
I finished this album with the feeling that it would be okay to have an album like this, an album that is like a pot of darkness, and there are songs that make you wonder if we can really call ourselves metal. I hope that the world will accept this album as a new generation of metal music.
Personally, I believe that the mindset is more important than the genre in determining what constitutes “metal. There are people who call enka “metal,” and I think metal is a very deep concept.
As a matter of fact, as a listener, I am more on the side of tradition, and I am the kind of person who longs for stylistic beauty rather than seeking new sounds, and I find it outrageous to mix melodic death metal and melodic death metal together. I understand the feelings of those who dislike Zemeth’s sound.
At the time of the first album, Zemeth was often said to be “not metal” or “not even melodic death metal”, but I thought, “Well, that’s true…” and I have not received any such comments since then.
I thought that the direction of Zemeth had become known to some extent, so I started to take on new challenges around the time of the EP “LONELINESS” released in 2022.
It is certainly easy to love metal that sounds like metal, and to send out a sound to people who like metal that sounds like metal, because my other project, “Bloody Cumshot,” which is more of a metal sound, is actually very easygoing.
However, I don’t feel that “Bloody Cumshot” is resonating with hardcore metallers due to the soft and effeminate image of Zemeth, so I decided to shake things up a bit, and that’s how Zemeth came up with this outrageous idea.
It may be fun to play music that I “know” in a closed community, but my strongest desire is for my music to reach everyone, no matter who they are.
Having lived in a remote area of Hokkaido without knowing the excitement of a live concert or the warmth of people through music, I would like someone else to experience the excitement I felt through earphones and speakers when I first became aware of music through Zemeth.
The power of melody is something that is irreplaceable in my mind, and I would like to continue to take on various challenges with a metal mindset in order for everyone to experience it.

Q1: はじめて “Miren” を聴いたとき、”遂にメタルはここまで来たか” という感情が沸いたんです。というのも、私がずっと言い続けている “モダン・メタル=多様性” を極めたような素晴らしく色とりどりのメタルだったからなんですね。もう、メロデスと言うよりも、ZEMETH というジャンルですよね。
私は、例えば “HIBISKUS” のような楽曲さえ受け入れる寛容さがメタル世界にあってほしいと願っていますが、もちろんシーンには伝統やステレオタイプを守る “門番” のような存在もいるでしょう。もしかしたら、”メタルらしいメタル” をやる方が楽かもしれません。それでも、壁を壊して進むのはなぜなんですか?

【JUNYA】: そう思って頂き嬉しい限りです。
こんな闇鍋みたいなアルバムがあってもいいんじゃないかという気持ちで本作を仕上げまして、本当にメタルを自称していいのか…?と疑問に思うような曲もありつつ、これも新時代のメタルとして世間に受け入れて頂きたい気持ちもあります。
個人的に何を持って”メタル”とするのかはジャンルよりもマインドの方が大切だと思っております。演歌をメタルという人も居るわけですし、メタルとは非常に深い概念だと思いますね。
実は僕個人としてはリスナー側としてはどちらかというと伝統を重んじる側の人間で、新しいサウンドを求めるよりも様式美万歳であり、メロディック・デス・メタルとメロディックなデスメタルを一緒にするのは言語道断というような人間なので、Zemethの音を毛嫌いする方々の気持ちも痛くわかります。
1stアルバムの時点でZemethは「メタルではない」「メロデスですらない」と散々言われてきたのですが、まぁそりゃあそうだよな…と思いつつこのスタイルを崩さずやってると今では一切そういう類の言葉は頂かなくなりました。
Zemethの方向性がある程度周知されてきたかなと思い、2022年リリースのEP”LONELINESS”辺りから新しい挑戦を始めていきました。
メタルらしいメタルを愛でながらメタルらしいメタルを好きな方々に向けた音を発信するのは確かに楽なんですよ、どっちかというとそっちよりの音をやっている僕の別プロジェクトの”Bloody Cumshot”は実際めちゃくちゃ気楽に出来ているので。
ただ、Zemethで軟派で女々しいみたいなイメージがあるせいか硬派なメタラーに”Bloody Cumshot”が響いている実感は無くて、じゃあもう振り切ってしまおうと思いZemethがこんな暴挙に出たという裏面もあったりします。
閉鎖的なコミュニティで”わかってる”音楽を披露するのも楽しいかもしれませんが、とにかく誰でもいいから僕の音楽が届いて欲しいという思いが一番強いです。
ライブの感動や音楽を通した人の温かみを知らずに北海道の辺境で生きてきた自分が初めて音楽に目覚めてイヤホンやスピーカーを通して感じた感動を誰かにもZemethで味わってほしいと思っています。
メロディが持つ力というものは自分の中で何事にも代え難いものなので、それを皆様にも体感して頂く為にもこれからもメタルというマインドを携え色々な挑戦をしていきたいと思っております。

Q2: your knowledge and passion for metal music is so overwhelming that you are able to silence the gatekeepers. When the name of OPUS ATLANTICA made a big appearance in an interview in another magazine once, I jumped out of my mind.
I have only my idol in that band, but I thought there were only about 20 Japanese who were knocked out by the three strongest solemn opening songs and the harpsichord.
I had no idea that Pete Sandberg’s name would be mentioned by an artist much younger than me.
But yes, there are some similarities with ZEMETH… Besides that band, can you tell us some “maniacal” metal bands that you would like listeners to listen to in order to unravel ZEMETH?

【JUNYA】: When I was in middle school and high school, there was already YouTube and Nico Nico Douga, so I mainly got my metal information there. There was a time when I was just consuming time and looking for good melodies from one side to the other with enthusiasm.
Nico Nico Douga, especially in the early days, already had a lot of maniacs uploading extraordinary soundtracks, and because of that (and thanks to that), I became quite an obsessive music fanatic.
I discovered OPUS ATLANTICA quite early on after I got into metal, and from there I got into Midnight Sun and others.
The first song I heard was “Falling Angel” and I fell out of my chair when I heard the distorted cembalo and synth layered sound and melody in the intro.
By the time I was 16 years old, I remember that I was already writing songs influenced by OPUS ATLANTICA.
When I think of my favorite “maniacal” metal, the first band that comes to mind is the Mexican power metal band LEPRYCORN.
LEPRYCORN reformed under the name GUARNERIUS after their breakup and re-recorded some of the songs from the LEPRYCORN days, but I personally prefer LEPRYCORN because of their less refined sound with a stronger sense of speed and melancholy.
Also, the song “As One We’ll Survive” by ALLEGRO, a Brazilian power metal band, is one of the strongest weepy metal songs in history, and the way the interlude is structured is a strong influence. It is great that the song is available on the Subscribe page.
Another band, CHESS from Argentina, is a very melancholy Spanish metal band, but as far as I can tell from Metallum, they have only released a demo, and I have only listened to what I can find on the Internet, but I recommend them.
I have always liked Russian power metal band ARCHONTES, which is a little known as “Hennacho Metal” among the fans, and their first album “Saga of Eternity” is a masterpiece full of catchy melodies.
And although I think they are categorized as V-kei, I think KLEIN KAISER from Japan is a supreme neo-classical metal band. Neo-classical doesn’t mean fast playing and sweeping like Yngwie’s influence,
I especially like the song “to freeza”.
The other one is METAL-X from Japan. The song “Scream In Thunder” is the ultimate HEAVY METAL. I recommend it especially to those who like NWOBHM and power metal, but anyone who truly loves metal should definitely listen to this song.
As for melodeath, CHAOS FEEDS LIFE is a project band formed by the members of Skyfire. To be honest, I like them more than Skyfire by far.
SUBLIMINAL from Ecuador is a melodeath band that I wish would be more appreciated for their unique riffs, even though their music is directly under THE BLACK DAHLIA MURDER.
HELSLAVE from Italy is a death metal band that I really like because I love DISMEMBER.
I have listed as many as I could think of, but you can see that my musical tastes are quite biased….

Q2: ただ、その門番を黙せられるほどに、JUNYA さんのメタルに対する知識と情熱は圧倒的ですね。以前、他誌のインタビューで OPUS ATLANTICA の名前が大々的に登場したときは、頭が真っ白になって飛びましたよ。
あのバンドには私のアイドルしかいないのですが、最強荘厳冒頭三曲とチェンバロにノックアウトされた日本人は20人くらいだと思っていたので。ピート・サンドベリの名前が、まさかだいぶ年下のアーティストから出るとは思いもよりませんでした。でも、たしかに ZEMETH と通じる部分があるんですよねぇ…あのバンド以外にも、ZEMETH を紐解く上でリスナーに聴いてほしい “マニアックな” メタル・バンドをいくつか教えていただけますか?

【JUNYA】: 自分が中高生の頃にはもうYouTubeがあり、ニコニコ動画があったので主にメタルの情報はそこで仕入れていました。ただただ時間を消費し熱量で片っ端から良いメロディを探していた時期がありました。
ニコニコ動画は特に初期の頃から既にマニアの方々がとんでもない音源を上げていて、そのせい(おかげ)もありかなり拗らせた音楽マニアになりました。
OPUS ATLANTICAはメタルにハマってから結構早い段階で知りまして、そこからMIDNIGHT SUN等も掘る程ハマりました。
“Falling Angel”という曲を一番初めに聴いて、イントロの歪んだチェンバロとかシンセをレイヤーしたようなあの音とメロを聴いて衝撃で椅子から転げ落ちて、その後”Holy Graal”の鬼チェンバロとサビメロで完全に虜になりました。
16歳の頃には既にOPUS ATLANTICAから影響を受けた曲を作っていた記憶があります。
“マニアックな”メタルで好きなものといえば、一番初めに思い浮かんだのがメキシコのパワー・メタルのLEPRYCORNです。
LEPRYCORNは解散後にGUARNERIUSという名義で再結成してLEPRYCORN時代の楽曲を再録していたりするのですが、LEPRYCORNの方が疾走感や哀愁感が強く、洗練されていない感じが個人的には好きです。
あとブラジルのパワー・メタルALLEGROの”As One We’ll Survive”という曲は史上最強レベルの泣きクサメタルで間奏の構成の仕方等かなり影響が強いです。しっかりサブスクで配信されているのが素晴らしいです。
更にはアルゼンチンのCHESSというバンドなのですが強烈な哀愁スパニッシュ・メタルなのですがMetallumを見る限りデモしか出しておらず、音源もネットで聴けるものしか聴いていないのですがオススメです。
ヘナチョコメタルとしてマニアの間では少し知名度のあるロシアのパワー・メタルARCHONTESは昔からずっと好きで、1stアルバム”Saga of Eternity”はキャッチーなメロディ満載の名盤だと思います。
そしてV系に分類されるとは思うのですが、日本のKLEIN KAISERは至高のネオ・クラシカルメタルだと思っております。ネオクラといってもイングヴェイの影響下にある様な速弾きやスウィープという訳ではなく、メロディの作りがクラシックのキャッチーな部分の寄せ集めみたいな感じで歌メロから間奏までとんでもないクサメロが耳にこびり付きます。to freezaという曲が特に好きです。
あとは何と言っても日本のMETAL-Xです。”Scream In Thunder”という曲は究極のHEAVY METALです。特にNWOBHMやパワー・メタルが好きな方にオススメですが、心からメタルを愛する人は絶対聴くべき名曲です。
メロデスだとCHAOS FEEDS LIFEというSkyfireのメンバーによって結成されたプロジェクトバンドなのですが、EP1枚しかリリースしてないのですがブラストビートにとんでもない美トレモロリフを乗せていて最高です。正直Skyfireよりも断然好きです。
エクアドルのSUBLIMINALというバンドはTHE BLACK DAHLIA MURDER直下の音楽性ながらも個性的なリフを持っていてもっと評価されて欲しいメロデスバンドです。
イタリアのHELSLAVEはDISMEMBERが大好きな自分にはドツボなデスメタルをやっていてとても大好きなバンドです。
思いつくままに沢山挙げてしまいましたが音楽的な嗜好がかなり偏っている事がわかりますね…

Q3: What I could sympathize with even more is Junya’s devotion to Spanish metal. Our magazine has also featured a lot of so-called “frontier metal” to show the vitality and spreading power of metal, and we have been insisting that there are no more “national borders” for metal.
That’s why I was so happy to hear that you created the finest Japanese Spanish metal with Elisa from DARK MOOR in “LLOVIZNA DE TRISTE”. Could you talk about the appeal of Spanish metal and “frontier metal”?

【JUNYA】: I got into music through video game music, and melodic speed metal was the next music I got into, but I never really liked the famous melospheres bands.
Symphonic metal and Scandinavian power metal didn’t really suit my skin. I got into a few songs with neoclassical elements, but that was about it, and I didn’t like them enough to follow the bands.
After listening to a lot of music, I realized that I like neo-classical metal, not melo-spy, and that I like music from Spanish-speaking countries, Russian-speaking countries, Sweden (melodeath), and Japan.
However, I think that language is not so important, but I am attracted to the musical elements that are rooted in the country.
Outside of Japan, I love Spanish metal and Russian pop music. In my new song “Mirren,” I have included some flamenco elements, but I think it is more influenced by Japanese J-pop, and not by flamenco.
I mentioned Domainer Spanish bands in answer to the previous question, but there was a time when I was attracted to Spanish-speaking power metal to death for some reason, while forever playing channels on the Internet radio that played only Spanish metal at that time,
I even did the odd thing of searching for power metal from Spain, Argentina, Mexico, etc. on the Encyclopaedia Metallum and listened to it from one side to the other.
I think the main reason why I got hooked on this band was because of MAGO DE OZ. I am not very good at major key music, but Spanish metal was the only genre that I could tolerate major key music, and it was MAGO DE OZ that got me hooked on it.
From there, I went through Spanish bands such as Furia Animal, AVALANCH, RED WINE, ARS AMANDI, SAUROM LAMDERTH, and Argentine bands such as IMPERIO and RATA BLANCA, and became a complete Spanish Metal fanatic.
I went to Spain because of my love for Spanish metal, but my timing was bad and I could not see any live concert,
That is why Barcelona is one of my favorite cities in Spain.
I am going off topic, but my musical strike zone is quite specific and narrow, so not only in Spanish metal, but of course there were many bands I could not fall in love with.
Dark Moor has a different quality of melody from other Spanish metal bands, and I personally consider it to be a different kind of music.
I wanted Elisa to sing my songs someday, which is why I asked her to sing for me! I would like to continue to work with singers from various countries in the future.

Q3: さらに共感できたのが、JUNYA さんのスパニッシュ・メタルへの傾倒です。弊誌もこれまでいわゆる “辺境メタル” を多く取り上げて、メタルの生命力、拡散力を示し、もはやメタルにとって “国境” など存在しないと主張してきたつもりです。
だからこそ、あなたが “LLOVIZNA DE TRISTE” で元 DARK MOOR の Elisa と共に極上の和製スパニッシュ・メタルを作り上げてくれてうれしかったんですよ。スパニッシュ・メタルや “辺境メタル” の魅力についてお話ししていただけますか?

【JUNYA】: ゲーム音楽で音楽に目覚めた自分が次にハマった音楽がメロディック・スピード・メタルだったのですが、実は有名なメロスピバンドって全然好きになれなかったんですよ。
シンフォニック・メタルや北欧のパワー・メタルがあまり肌に合わなかったんです。ネオクラ的な要素のある数曲はドハマリしましたがその程度でバンドを追うほど好きになれませんでした。
そこで色々聴いた結果メロスピではなくネオ・クラシカルメタルが好きで、スペイン語圏とロシア語圏、スウェーデン(メロデス)、そして日本の音楽が好きだという事に気が付きました。
と言っても言語はそれほど大切ではなくその国に根付く音楽的な要素に惹かれているのだと思います。
日本以外の国だと何と言ってもスパニッシュ・メタルやロシアン・ポップスが大好きです。新曲”MIREN”でフラメンコの要素も取り入れましたが、どちらかというと日本のJ-POPからの影響なので本場のフラメンコからの影響ではなかったりします。
先ほどの質問の回答でドマイナースパニッシュバンドを挙げてしまったのですが、スペイン語圏のパワー・メタルになぜか死ぬほど惹かれていた時期があり、その頃はインターネットラジオでスパニッシュ・メタルだけを流しているチャンネルを永遠に再生しつつ、Encyclopaedia Metallum でスペイン、アルゼンチン、メキシコ等のパワー・メタルで検索をかけて片っ端から聴いていくという奇行すらしていて、高校生の頃ですが狂気に満ちていました。
ハマってしまった一番の原因はやはりMAGO DE OZなのだと思います。長調の曲が大の苦手な自分が唯一長調を許せるジャンルがスパニッシュ・メタルで、そのきっかけを作ったのがMAGO DE OZでした。
そこからFuria Animal、AVALANCH、RED WINE、ARS AMANDI、SAUROM LAMDERTH等のスペインのバンドやIMPERIO、RATA BLANCA等のアルゼンチンのバンドを通り完全にスパニッシュ・メタル狂になりました。
好きが故にスペインにも赴きましたがタイミングが悪く何かしらのライブを観る事は出来ず、ただただビーチに半日居座ってトップレスの女性を横目にスパニッシュ・メタルに思いを馳せておりました、、、
そんなこんなでスペインのバルセロナという街は一番好きな街だったりもします。
話が逸れましたが音楽的なストライクゾーンがかなり特殊で狭いので、スパニッシュ・メタルに限った話ではないですが全てが盲目的に好きになるわけではなくハマれないバンドも当然多かったです。
Dark Moorは他のスパニッシュ・メタルとはメロディの質が違うので個人的に別の音楽性だと思っているのですが、僕がメタルにハマったきっかけがDark MOORでいつかElisaに自分の曲を歌って欲しいという思いもあり彼女に歌唱を依頼しました。
Zemethではドイツ語をよく取り入れていたりと言語はいっぱい使ったら楽しいよね!というスタンスだったので、今後も色々な国のシンガーと作品を生み出していきたいです 。

Q4: The other influences are “Ys” and Falcom. I am a direct descendant of the Ys IV generation, so the intro of “Miren” really got to me…
In fact, we have met many overseas artists who claim to have been influenced by game music, but it is usually Final Fantasy and Zelda, isn’t it?
Why were you more attracted to the music of Ys than those major titles?

【JUNYA】: It is a great pleasure for me to know that you can feel Ys IV from the intro of Miren!
The origin of my music is the song “MIGHTY OBSTACLE” from Ys VI, and I can say without a doubt that without this song, I would never have been awakened to music.
It was because of this song that I started listening to music, started composing music, and picked up a guitar, and it all started with this song.
Please take a look at my NOTEBOOK for more information about how I got into music and about this song! It’s a publicity stunt!

MIGHTY OBSTACLE, the most powerful melody “Why I became a melody supremo”
https://note.com/zemeth_obstacle/n/nc3791f96c1ad

And what kind of game has such a badass song in it? And I was even more surprised when I played Ys VI. What nothing but great songs…
Then I went on to listen to other Ys songs, and I realized that it was a miracle that all of them were masterpieces, and if I had to choose 10 albums to take to the grave, all of them would be Ys soundtracks, which has never changed from now to the present.
Ys Origin was released when I was in the 6th grade in the midst of my agony over Ys music, and it is no exaggeration to say that the Ys Origin soundtrack constitutes most of my musicality today.
Ys Music led me to listen to music from other Falcom products such as Sorcerian, Xanadu, Brandish, and The Legend of Heroes, as well as Yuzo Ancient’s The Scheme and others. I started digging game music seriously after watching the video.
From there, I started listening to a variety of game music, mainly music from Castlevania, Mega Man, Touhou, F-Zero, Romasaga, Thunder Force, and many others.
I started listening to a lot of game music, mainly from Dracula, Mega Man, Touhou, F-Zero, Romasaga, Thunder Force, etc. This may have been where my music mania began, but the FM soundtrack was so pleasing to my ears that I spent my days fishing for music from PC88 and other minor games and listening only to music from games that were crap games but had good music.
I liked to look for songs like “THE ALFEE made game music! I think I liked to look for music like “THE ALFEE made game music!
However, my opportunities to play video games have decreased drastically since I was around 20 years old. I was never interested in manga or anime, and even watching movies to the end was painful for me,
Even though I prefer non-fiction to fiction, I used to play only games, but since the reason for playing games became music, I feel like I can’t play games anymore.
Nevertheless, I still play Ys until I clear the game when a new one is released, but sometimes I miss it because I am not satisfied with the current direction of Falcom.
I think it is inevitable that the artists from overseas cite FF and Zelda because of their name recognition, but I think that many of them are strongly influenced by them in that sense as well, because they have a worldview that is popular overseas.
If I were asked about my favorite game music, I would say that the music of “God Slayer: Sonata in the Sky”, “Ninja-kun: Asura no Sho”, and “Uozu” are the best! I would like to say that..

Q4: あとは、なんといっても “イース” とファルコムからの影響ですよね。私はイースⅣ直撃世代なので、”Miren” のイントロにはやられました…
実際、これまで弊誌でもゲーム音楽に影響を受けたという海外のアーティストにはたくさん出会ってきましたが、だいたいがファイナル・ファンタジーとゼルダなんですよね。なぜ、JUNYA さんはそうしたドメジャー・タイトル以上に、イースの音楽に惹かれたのでしょうか?

【JUNYA】: MirenのイントロからイースⅣを感じ取って頂けるのは嬉しみの極みです!!!
そもそも自分の音楽の起源がイースⅥの”MIGHTY OBSTACLE”という曲で、この曲が無ければ絶対に音楽に目覚める事は無かったと断言できます。
この曲がきっかけで音楽を聴き、作曲を始め、ギターを手に取ったわけでして、全ての始まりがこの曲でした。
音楽に目覚めたきっかけやこの曲に関することはnoteにまとめているので是非ご覧下さい!宣伝です!!!
MIGHTY OBSTACLEという最強のメロディー “メロディー至上主義者になった理由”
https://note.com/zemeth_obstacle/n/nc3791f96c1ad
そして、こんなヤバい曲が収録されているゲームってどんなもんなんだろう?と、イースⅥをプレイして更に驚きました。なんと名曲しかない…
それから他のイースの楽曲も聴き進めていくと、気が付けば全てが名曲という奇跡が起きており、墓場に持っていくアルバム10枚を選ぶならば全てがイースのサントラになる事は今から現在まで一度も変わったことがありません。
イースの楽曲に悶絶していた真っ最中の小学6年生の時にイース・オリジンが発売されたのですが、このイース・オリジンのサントラが今の自分の音楽性のほとんどを構成しているといっても過言ではないです。
イース・ミュージックをきっかけにソーサリアン、ザナドゥ、ブランディッシュ、英雄伝説などFalcomの他作品の楽曲や古代祐三氏のザ・スキーム等を聴き漁っていた頃”みんなで決めるゲーム音楽ベスト100″という企画が某掲示板で生まれ、それがニコニコ動画でまとめられた動画をきっかけにゲーム音楽を真面目にディグるようになりました。
そこから悪魔城ドラキュラ、ロックマン、東方、F-ZERO、ロマサガ、サンダーフォース等々…の楽曲を主に色々なゲーム音楽を聴くようになりました。
自分の音楽マニア気質なのはここで始まったのかもしれませんが、FM音源があまりにも耳触りが良かったのかPC88等のドマイナーゲームの音楽を漁ったり、クソゲーだけど音楽は良いゲームの楽曲ばかりを聴いていたりという日々も送るようになりました。
THE ALFEEがゲーム音楽を作りました!みたいな曲を探すのが好きだったんだと思います。
ただゲーム自体をプレイする機会は20歳頃からめっきり減ってしまいました。元々漫画やアニメはほとんど興味が無く、映画を最後まで観るのも苦痛なほどの人間で、フィクションよりもノンフィクションが好きでもゲームだけはやっていたのですが、ゲームをプレイする理由が音楽になってからゲーム自体が出来なくなってしまったように感じます。
それでもイースは未だに新作が出ればクリアまでしますが、今のFalcomの方向性に納得がいかずに懐古する事もあります。
海外のアーティストが挙げるのがFFやゼルダというのは知名度的にも仕方がない部分はあるとは思いますが、海外受けするような世界観だと思うのでそういう意味でも影響を強く受けている方が多いのだと思います。
僕は好きなゲーム音楽を問われれば遠慮なく、”ゴッド・スレイヤーはるか天空のソナタ”や”忍者くん阿修羅ノ章”や”うおーズ”の音楽は最高です!と言いたいです。

Q5: other than that, you have other music such as Johnny’s, Tsunku, Vocaloid, Anisong, Influencer, and Songs, your musical fountain never runs dry.
Usually, the more one is fascinated with metal music, the more one rejects such “frivolous” music or feels “I hate this shabby music,” but I don’t feel such feelings from JUNYA, right?

【JUNYA】: When I was a teenager who started listening to metal music, I used to get irritated with the music. I can’t listen to hip-hop or reggae! I was so young when I was a teenager.
I was a young man when I realized that what I was into was probably not metal, but melody itself, and that there was almost no music I disliked anymore.
I think one of the reasons I came to this conclusion is that I began to realize how hard it is to create music after I started working seriously with Zemeth.
If a piece of music you hear is so strong that it sticks in your ears, then it is already family. It doesn’t matter if it contains rap, elephant noises, or gibberish. It seems that the music that I like is strongly imprinted in my mind.
The only element of music that I still don’t like is the cartoon voices. If the music is good, I can forgive it.
I think that people who listen to music as if it were fashion have no respect for music, and I think that’s what’s so shabby about them!
But of course, I think metaller women are great too! In the end, all music lovers are great and the best !!!!! Cheers !!!!!!!!!

Q5: 他にもジャニーズ、つんく、ボカロ、アニソン、インフルエンサーに歌謡曲と JUNYA さんの音楽の泉は枯れることを知りませんね。
私も含めて、普通はメタルに心酔すればするほど、そうした “チャラい” 音楽に対して拒否反応というか、”このシャバ憎が” 的な感情が沸いてくるものですが、JUNYA さんからはそうした感情が感じられませんね?

【JUNYA】: メタルを聴き始めのティーンエイジャーだった頃は”このシャバ憎が”とイキリ散らしていた気がします。ヒップホップとかレゲエなんて聴いてらんね~!みたいな事まで言ってて、今考えれば青かったな~と思います。
僕が心酔しているのは恐らくメタルではなくメロディそのものなんだと気づいた頃から苦手な音楽はあれど嫌いな音楽というものはほとんどなくなりました。
Zemethを真面目に動かし始めてから音楽を生み出す大変さを身に染みて感じるようになったのもそういった考えに至った一つの要因かと思います。
聴いた音楽が強烈に耳に残ればその曲はもうファミリーなんですよ。ラップが入ろうがゾウの鳴き声が入ろうがゲボの音が入ろうが関係無し。僕は気に入った音楽はとことん強烈にインプットされているようです。
唯一未だに苦手な音楽の要素はアニメ声くらいです。曲が良ければ許せるのですが…。
音楽をファッション感覚で聴く人って音楽にリスペクトが無い気がしてそれこそシャバいとは思うのですが、本当~~に正直に言うと僕はチャラい音楽を聴いてるような女性が好きです!!
でももちろんメタラーな女性も素敵だと思います!!!結局音楽好きな人はみんな素敵だし最強です!!!!!乾杯!!!!!!!!!

Q6: I love the interlude part of “FROZEN ENGAGEMENT”. You are a guitarist with great taste and technique, what players in particular do you respect?

【JUNYA】: I am a composer, so I can’t really think of a player that I admire.
In fact, I have never even copied a whole song of someone’s on guitar. I have only traced melodies from game music or played riffs from melodes.
However, it is Toshinori Hiramatsu who I think is the one and only in terms of guitar solo tears and phrasing. I used to listen to Hiramatsu-san’s Ys arrangement music a lot, and I was really surprised when he later joined Falcom’s main version as a guest guitarist.
I was quite influenced by the way he makes the guitar cry and the guitar solo structure.
Then there is also Syu of GALNERYUS. I learned how to make a guitar solo from his solo.

Q6: “FROZEN ENGAGEMENT” の間奏部分が大好きなんですよ。JUNYA さんはギタリストとしても素晴らしいセンスとテクニックを持っていますが、とくにどんなプレイヤーをリスペクトしているのでしょうか?

【JUNYA】: コンポーザー目線で見てしまう人間なので憧れのプレイヤーというのがあまり思い浮かばず、、、演者というよりもコンポーザーとしての憧れを抱く事は多いのですが。
実はギターは誰かの曲を一曲通して完コピしたことすらないほどの人間でして、ゲーム音楽のメロディをなぞって弾いたりメロデスのリフを弾くくらいの事しかやってきませんでした。
ただギターソロの泣きやフレーズ的にこの人は唯一無二だと思うのは平松俊紀さんです。平松さんのイースのアレンジ楽曲をよく聴いていたのですが、後にFalcomの本編にゲストギターとして参加されたのは本当に驚きました。
彼のギターの泣かせ方やギターソロの構成にはかなり影響を受けています。
あとはやっぱりGALNERYUSのSyuさんです。ギターソロとはどのように作るかは彼のソロから学びました。

Q7: Speaking of FROZEN, I also grew up in a rural area in Shikoku, so I feel very close to JUNYA who is based in Hokkaido.
Basically, there are no live concerts in the countryside, so I feel like I naturally immerse myself in sound sources. That is why I feel comfortable with the choice of “playing in a band by myself.
How do you feel about Hokkaido, the environment that nurtured you?

【JUNYA】: First of all, my motive for making music was to create a melody beyond the “MIGHTY OBSTACLE” of Ys VI, so I didn’t think much of taking the form of a band that requires members.
Even in the shithole countryside, I was once asked to form a band in a junior high school music class, and we had to play a certain V-type song with members, and the ultimate goal of the class was to record the song,
I was so determined to play only the songs I wanted to play that I practiced Dark Moor’s “Maid of Orleans” the whole class, and on the day of recording, I stood there and played the whole song just as I wanted.
I know myself well enough to know that I am a pain in the ass with no sense of cooperation, so naturally, I had no intention of forming a band with anyone.
My hometown is in a depopulated area where it takes 5 to 6 hours by car to get to Sapporo, and there are no train lines running through it, and it is far from other large cities. So, of course, I had never seen a live concert.
However, I loved nothing more than an environment where there was nothing but abundant nature, and music was like background music in a game for me, always playing in my ears and coloring my life.
I used to walk with my dog on the beach while listening to music, and I used to encounter fishermen and scare them while singing loudly.
I still can’t forget the first time I was given a pair of earphones and played “MIGHTY OBSTACLE” on my PSP. It was the first time I listened to music outside.
I went to a local festival that day and listened to “MIGHTY OBSTACLE” forever while playing with my friends, and I wore the earphones so much that my ears got a rash and started bleeding because I didn’t take them off. They were Daiso earphones with a scanty bass.
Looking back, it was probably because I had nothing that I was able to get into music so much. And I think that nature, which gave me inspiration, also helped me grow to this point.

Q7: FROZEN といえば、私も四国のド田舎で育ったので、JUNYA さんが北海道を拠点にしているのはとても親近感が沸くんですね。
基本、ド田舎にはライブがないので自然と音源に没頭していくような気がします。だからこそ、”ひとりでバンドをやる” という選択にも違和感がないんですよねぇ。
そうした JUNYA さんを育んだ環境、北海道という場所についてはどう感じていますか?

【JUNYA】: まず、音楽を作った動機がイースⅥの”MIGHTY OBSTACLE”を超えるメロディを作る事だったので、メンバーが必要なバンドという形式を取ることはあまり考えておりませんでした。
クソ田舎でも中学校の音楽の授業でバンドを組まされたことがあり、メンバーも揃えてとあるV系の曲を弾くことになり、その授業の最終目的がその曲のレコーディングだったのですが、、、
僕は自分が弾きたい曲以外絶対に弾きたくないので授業中ずっとDark MoorのMaid of Orleansを練習してた挙句、レコーディング当日突っ立って全部適当に弾くという事をしでかした地獄行き確定の人間です。
協調性の欠片もない面倒くさい人間だという事は自分自身よくわかっているので、当然誰かとバンドを組むことは考えておりませんでした。
僕の故郷は札幌に行くまで車で5~6時間かかり、他の大きな街からも遠く線路も通っていないという立地が最悪な過疎地域です。なのでもちろんライブを観たことがありませんでした。
ただ、豊かな自然だけがある何もない環境が何よりも好きで、音楽は僕にとってはゲームのBGMのように常に耳元で鳴り続けて人生を彩ってくれるような存在でした。
音楽を聴きながら浜辺を犬と散歩し、大声で歌いながら釣り人と遭遇し相手をビビらせるという事をよくやっていました。
それと初めてイヤホンを買ってもらってPSPで”MIGHTY OBSTACLE”を流した時の感動は未だに忘れる事が出来ません。初めて外で音楽を聴いた瞬間でした。
その日そのまま地元の祭りに行き友達と遊んでる最中も”MIGHTY OBSTACLE”だけを永遠に聴いてて、それからずっとイヤホンを外さなかったせいで耳がかぶれて出血するくらいイヤホンをしていました。低音スカスカのダイソーのイヤホンですよ。
今思えば何もないからこそ、ここまで音楽にのめり込むことが出来たのかもしれません。そしてインスピレーションを与えてくれた大自然もここまで自分を成長させてくれたのだと思います。

Q8: Zemeth’s popularity overseas is really amazing. I keep seeing his name on more and more forums and sites. It’s great to see you spreading your wings from your bedroom in Hokkaido to the world!
If you had the opportunity to perform overseas and could freely choose members from all over the world, what kind of band would you be?

【JUNYA】: Recently, unexpectedly, many people found out about Zemeth through TikTok, and it is surprising that many of them are also non-metallers and they are all young.
I’m also a little scared that the project has grown so big before I knew it…
As for the idea of overseas gigs, as I answered in the other question, I have not been looking at players with much attention, so it is difficult to come up with a vision of the kind of band I would like to see….
If you give me about 10 years, I’d like to try my best to split up and increase the number of players to about 5, practice instruments, and do it all my way.
That would defeat the purpose of the question too much, so I’ll answer seriously: I’m thinking that the singers would be nayuta, Elisa, and myself, who have participated as guests on the new album,
Since I respect Falcom, I naturally want to have people who were involved in the “Ys” sound to play live.
In addition, if I were to mention an overseas player, I would have to say Michael Angelo Batio as a guitarist. I don’t watch many videos of guitar performances, but I watched his videos a lot.
As for vocalists, I love ANAAL NATHRAKH’s V.I.T.R.I.O.L. because it is crazy, and I would love to hear him sing his own songs.
Also, the vocalist I respect the most is Trevor Strnad of THE BLACK DAHLIA MURDER, so I wanted to hear his voice on my songs. I think his voice is eternal.

Q8: Zemeth は海外での人気も本当にすごいですよね。フォーラムやサイトで名前を見かけることがどんどん増えています。北海道のベッドルームから世界へ羽ばたくなんて最高ですよね!
もし、海外でライブをやる機会があって、世界中から自由にメンバーを選んでいいとしたらどんなバンドになりますか?

【JUNYA】: 最近は予想外にTikTokでZemethの存在を知った方が多くて、しかも非メタラーも多くてみんな若いというのが驚きです。
いつの間にかプロジェクトがここまで大きくなっている事に少しビビっていたりもします…
海外ライブという想定ですが、他の質問で答えた通りプレイヤーをあまり意識して見てこなかったのでこんなバンドがいいというビジョンを思い浮かべるのが難しいですね…
10年くらい頂ければなんとか頑張って自分が分裂して5人くらいに増えて楽器を練習して全部俺的な感じでやってみたい気もします。
それだと質問の趣旨をぶっ壊しすぎるので真面目に答えると、シンガーは新譜にゲストで参加して頂いたnayuta様とElisaと僕でやるとして、
2007年頃のFalcom jdk BANDのメンバーで演奏して欲しいという願望があったりします。Falcomリスペクトな音楽をやっているので自ずと生演奏にもイースサウンドに携わった方々を求めてしまいます。
それに加えて海外のプレイヤーを挙げるなら、ギタリストだったらMichael Angelo Batioです。あんまりギター演奏動画って見ないのですが、彼の動画はめちゃくちゃ見ていました。
ヴォーカルはANAAL NATHRAKHのV.I.T.R.I.O.L.が狂ってて大好きなので自分の曲を歌っているのを聴いてみたいです。
あとは一番リスペクトしているヴォーカリストがTHE BLACK DAHLIA MURDERのTrevor Strnadなので彼の歌声が自分の曲に乗っているのを聴いてみたかったです。彼の歌声は永遠だと思います。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED JUNYA’S LIFE!!

Falcom Sound Team jdk “オリジナルサウンドトラック イースVI -ナピシュテムの匣”

間違いなく人類が聴くべき名盤ナンバー1です。散々言いましたが今は亡き石橋渡氏が生み出した”MIGHTY OBSTACLE”は究極の芸術です。
“MIGHTY OBSTACLE””RELEASE OF THE FAR WEST OCEAN””ERNST”の3大クサメタルチューンはもちろん、キャッチーな”QUATERA WOODS”や石橋渡氏のセンスが光る”MOUNTAIN ZONE””WINDSLASH STEPS”など捨て曲無しの超名盤サントラです。

Without a doubt, this is the number one album that mankind should listen to. I’ve said it many times, but “MIGHTY OBSTACLE” created by the late Mr. Wataru Ishibashi is the ultimate art.
Not to mention the three great “crunchy” metal tunes “MIGHTY OBSTACLE”, “RELEASE OF THE FAR WEST OCEAN”, and “ERNST”, the catchy “QUATERA WOODS”, and “MIGHTY OBSTACLE”, the “MIGHTY OBSTACLE” is the ultimate art form.
MOUNTAIN ZONE” and “WINDSLASH STEPS”, which shine with Mr. Wataru Ishibashi’s sense of style.

Falcom Sound Team jdk “イース・オリジン オリジナルサウンドトラック”

竹下遼氏という今世紀最強のメロディーメーカー大暴走のサントラで、特に”SCARLET TEMPEST”PRELUDE TO THE OMEN”の二曲は人生の楽曲トップ5に入る楽曲で、他にも”GENESIS BEYOND THE BEGINNING””SCARS OF THE DIVINE WING””SAMSARA AND PARAMNESIA”という最高のコード進行に最高のメロディが乗った曲があり。
宇仁菅孝宏氏の至高のネオクラ”SILENT DESERT”も人生トップ5に入る楽曲の1曲です。つまりこのサントラのトップ5楽曲が3曲も入っているわけです…恐ろしい。

This is a soundtrack by Ryo Takeshita, the most powerful melody maker of this century, Especially, “SCARLET TEMPEST” and “PRELUDE TO THE OMEN” are two of the top 5 songs of my life, and “GENESIS BEYOND THE BEGINNING”, “SCARS OF THE DIVINE WING”, “SAMSARA AND PARAMNESIA” are also among the top 5. and “SAMSARA AND PARAMNESIA,” which have the best chord progressions and the best melodies.
Takahiro Unisuge’s neoclassical “SILENT DESERT” is one of the top five songs of my life. In other words, there are 3 songs in the top 5 songs of this soundtrack…scary.

Falcom Sound Team jdk “オリジナルサウンドトラック イース -フェルガナの誓い”

フェルガナの誓いとはイース3のリメイクで、原曲はほとんどが名曲メーカーの石川三恵子氏作曲。それを天才音楽家の神藤由東大氏が編曲しているサントラです。
比較的有名な”バレスタイン城””翼を持った少年”ももちろん良いのですが、僕は”Be Careful”と”最強の敵”がめちゃくちゃ好きです。

Oath of Felghana is a remake of Ys 3. Most of the original songs were composed by master songwriter Saneko Ishikawa. The original music was composed mostly by the famous musician Saneko Ishikawa, and arranged by the genius musician Yudai Kando.
The relatively well-known “Ballestein Castle” and “The Boy with Wings” are of course good, but I really like “Be Careful” and “The Strongest Enemy”.

村下孝蔵 “同窓會”

村下孝蔵様の楽曲はZemethの音楽性の”哀愁歌謡”の部分で、哀愁とは何なのかを音楽で教えて下さいました。唯一無二のメロディーセンスを持っていた方です。
同窓會というアルバムは特に”夢からさめたら””あなた踊りませんか””この国に生まれてよかった””引き算”等、メタルのアルバムだとキラーチューンと呼ばれる様な楽曲が盛沢山です。
彼が遺した最後の作品ということもあり、特に”引き算”を聴くと胸が痛くなるのですが、この美しいメロディは永遠だと思います。

Kozo Murashita’s music is the “melancholy song” part of Zemeth’s musicality, and he taught us what melancholy is through his music. He has a unique sense of melody.
The album “Dousoukai” is full of songs that would be called killer tunes in a metal album, especially “Yume kara sasarete wa narashita,” “Anata odorinasanai,” “I’m glad I was born in this country,” and “Subtract,” among others.
The beautiful melody of “Subtraction” is eternal, though it makes my heart ache to listen to it, especially since it is the last work he left behind.

ZABADAK “Decade”

Zemethの音楽性の”ノスタルジック”の部分で多大な影響を受けました。中学生の時にZABADAKを知った時になぜかとてもノスタルジアを感じたのですが、
もっと小さい頃に聴いた教育テレビのBGMが実は吉良知彦氏作曲という事を知って納得しました。そこはかとなく寂しげな楽曲が日が暮れる時間帯を連想させます。
Decadeはベストアルバムですが、ZABADAKを知ったきっかけの”POLAND”や”harvest rain(豊穣の雨)””夢を見る方法””水の踊り(Original Version)”等のキラーチューンが目白押しです。

I was greatly influenced by the “nostalgic” aspect of Zemeth’s musicality. When I was in junior high school, I was very nostalgic when I first heard ZABADAK,
I was convinced when I learned that the BGM of the educational TV program I listened to when I was much younger was actually composed by Tomohiko Kira. The somewhat lonely music reminded me of the time when the sun was setting.
Although Decade is the best album, it is packed with killer tunes such as “Poland” (which introduced me to ZABADAK), “Harvest Rain,” “How to Dream,” and “Water Dance (Original Version).

上の3枚はもう言う事は無いです…この3枚は絶対に変わらないと思います。
ただメタルが無いっていうのはメタラーとしてどうなんだとは思いますが、Falcom、村下孝蔵、ZABADAKが僕の中の3大人生を変えたアーティストなんです。
本当はイース・ミュージックは全部のサントラを選びたいですし、村下孝蔵様には哀愁浪漫という全曲集があってそれを選びたいほどです。

I have nothing more to say about the above three albums… I don’t think these three albums will ever change.
I don’t know if it’s right for a metaller to say that there is no metal, but Falcom, Kozo Murashita, and ZABADAK are the artists who changed my life in the three major genres.
In fact, I would like to choose all the Ys Music soundtracks, and for Kozo Murashita-sama, there is a collection of all his songs called “Pessimistic Romance,” which I would like to choose.

MESSAGE FOR JAPAN

After this interview, I still think that artists in the world should talk more about music. I think that only by presenting the roots and influences of a person’s music can we see the true meaning of that person’s music.
Artists who take selfies and talk about themselves with nothing to do with music and don’t talk about their music are not revealing what’s in their hearts and I have no idea what they are thinking!
If someone asks you, “How do babies come into the world? If your child asks you how babies are born, do you show them a selfie or talk about yourself? No, that’s not true!
I want to make the process of how my music is born public, and I want people to enjoy the musical part of my music more than my personality.
The album “Miren,” which was created by a very troublesome music maniac, was released on October 2.
It is an album that I have cooked up in Zemeth’s own way, incorporating not only my own roots, but also many elements of music that I have recently come to love.
Of course, it is a very concentrated album, so if you like it, you are sure to be hooked!
The length of the album is compact and just right, so you can easily listen to the whole album on a short trip.
The length of the album is compact and just right, so you can easily listen to it in one sitting when you go out for a short time!

今回の取材を経てやっぱり世の中のアーティストはもっと音楽の話をするべきだと思いました。ルーツや影響を提示してこそ、その人の音楽の真意が見えるのだと思います。
だって自撮りとか音楽関係無い自分語りばっか上げて音楽の話をしないアーティストって中身が見えなくて何考えてるかまるでわからない!
自分の子供に赤ちゃんってどうやって生まれるの?と訊かれたら自撮り見せたり自分語りするんですか?違うじゃないですか!
僕は自分が生んだ楽曲が生まれた過程は大公開したいですし、僕自身の人となりよりも音楽的な部分を楽しんでほしいです。
というようにとても面倒くさい音楽マニアが生み出したMirenというアルバムが10月2日にリリースされました。
僕自身のルーツはもちろん、最近好きになった音楽の要素もふんだんに詰め込んでZemethなりに料理したアルバムになりました。
もちろん味付けは濃縮に濃縮を重ねた特濃なので、好きな方はドハマり間違い無しの1枚となっております!
アルバムの長さもコンパクトで丁度良いので、ちょっとしたお出かけの時にも1周聴けてしまうお手軽さです。
美しいメロディをこれでもかという程に突き詰めた本作とZemethをこれからもよろしくお願いいたします!

JUNYA

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DEFILED : HORROR BEYOND HORROR】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH YUSUKE SUMITA OF DEFILED !!


(ALL PHOTOS BY SHIGENORI ISIKAWA)

“I Think Everyone Has Something They Love And Can’t Get Enough Of. If We Pursue It With Full Curiosity And Love, We Can Reach a Certain Point, Even If We Are Complacent.”

DISC REVIEW “HORROR BEYOND HORROR”

「情報過多の中、限られた時間で好みの音楽を選別する慣習ができ、最初の30秒でジャッジされる軽薄な時代になったという憂いはあります。何度も聴かないと良さがわからない音楽、最初の30秒では把握できない音楽の中にも優れた音楽は沢山あります。それらがスキップされる時代になるのは音楽文化の退行にすらつながると思います。それは寂しい話です」
ストリーミング、SNS、切り抜き動画が溢れるインスタントな時代において、だからこそ DEFILED の音楽と哲学はギラリと異彩を放っています。”最初の30秒では把握できない音楽”。それはまさに DEFILED の作品のこと。
DEFILED の音楽はさながら、モナコGPのように知性とスリルと驚きを兼ね備えています。時速300キロのストレートから40キロのシケインへと減速し、曲がりくねったコースを闘牛士のように絶妙にいなし、シフト・チェンジを重ねながら前へ前へと突進を続ける。
もちろん、楽曲の中でストップ&ゴーを駆使するバンドは少なくありませんが、彼らのようにオフ・キルター (意図的にズラした) なリズムで混乱と好奇心を誘いつつ、フレーズやパッセージの端々で巧みにスピードをコントロールできるバンドは他にいないでしょう。そこはまるでランダムに見えて精巧な設計図のあるフリージャズの世界。そしてそのカタルシスは当然、何度も何度も聴き込まなければ得ることのできない失われたアークです。
「デスメタルというジャンルも勃興からすでに30年以上の歳月が経ちジャンル内における歌詞表現、世界観の幅も多様化し広がった感はあるかもしれません。音楽性だけでなく歌詞もいろんなアングルからの表現があるのはデスメタルというジャンルの発展によい事ではないでしょうか。ハードコアやクロスオーバー・スラッシュでは社会的問題などを直接的に歌うバンドも多く、それらのファンだった私にはそういう歌詞を自身のバンドに取り込む事に抵抗感はありませんでした」
その音楽同様、DEFILED の哲学や扱うテーマもジャンルのステレオタイプに安住することはありません。”Horror Beyond Horror”、”ホラーを超えたホラー”、そう題されたアルバムで彼らは、デスメタルの主要テーマであるホラー以上に恐怖を誘う、現代社会や世界の暗い状況を的確に描写しています。
近年、デスメタルとハードコア、デスメタルとブラックメタル、デスメタルとスラッシュの異種交配が進む中で、デスメタルに隠喩以上の直接的な社会的テーマ、抑圧に対する怒り、分断に対する嘆き、不条理に対する叫びを持ち込む若いバンドが増えてきました。DEFILED はSF、ディストピアの鏡に現代社会を映し出すことで、その先駆者としての矜持を存分に見せつけています。
「私たちがやっているような音楽は、必ずしも大金を稼げるとは限りませんし、利益のためだけにやっているわけでもないです。”人とのつながり” が原動力になっている面もたくさんあります。そして、”好き” 者同士が、互いの信頼と友情によって有機的に連携するシーンでもあります。私たちは幸いなことに、長年そのような状況で仕事をすることができ、それが私たちの前進を促してきました。お互いを尊重し合ってこそ、前進できます」
そんな DEFILED の誇り高き異端、ステレオタイプとの離別は寛容さと共感を内包したデスメタルへの情熱が原動力となっています。あくまで母数の少ない、ニッチなデスメタルというジャンルで生きていくことは簡単ではないでしょう。それでも、DEFILED が例えば、 “SLAYER meets VOIVOD meets MORBID ANGEL” などという強烈な枕詞で海外からも大きなリスペクトを集められるのは、”好きでたまらないもの” を真摯に、情熱を持って追いかけ続けたから。
そして好きでたまらないからこそ、情熱を注いでいるからこそ、愛があるからこそ、好奇心を失わないからこそ、彼らはデスメタルへの盲信を求めません。実際、今回のアルバムでもサンバやフラメンコの要素を大胆に取り入れ、挑戦者であり続けています。こうした “プリミティブ” で “生々しい” 音色でエクストリーム・ミュージックを叩きつける求道者も今ではほとんどいないはずです。これだけドラムを “楽器” として使いこなせるメタル・バンドがどれだけ存在するでしょうか?”Battery” ソロ前のフィル的なフレーズが奇妙奇天烈に広がる “Syndicate” の脅威よ。ちょっとした反復のリフでも、音の数や並び、スピードに譜割りを少しずつ変えてくる緻密さ、それでいてなおいささかも失わなわれない凶暴には脱帽しかありません。
だからこそ、DEFILED が望むのはきっと盲信ではなく共感。そして寛容な心。謙虚に挑戦者で求道者であり続ける DEFILED のその姿が、自然と共感を呼び、リスペクトを呼び、そうして好きと好きのつながり “Love Beyond Love” が広がっていくのです。
今回弊誌では、DEFILED のレジェンド、住田雄介氏にインタビューを行うことができました。「デスメタルに限らずですが人は好きで好きでたまらない、というモノが誰でもあると思うのです。前頭葉を揺さぶるような感動体験が皆さんあると思います。それらを好奇心と愛を全開で追求すれば仮に独りよがりでもそれなりの地点に到達できるのでは、と思います」プログレッシブ・ミュージックのファンにもぜひ聴いてほしい!!どうぞ!!

DEFILED “HORROR BEYOND HORROR” : 10/10

INTERVIEW WITH YUSUKE SUMITA

Q1: “There are different killer guitar sounds. And there is more than one right answer. The search for the ideal guitar sound is a never-ending journey. Curries are no different. There are a lot of killer curries that I haven’t tried yet. It’s fun to explore what I love. What a good life.”
I liked your post on Twitter (X). I think it is very important in life to keep exploring what I love, to never forget my curiosity, to keep my passion alive and to find a place where I can escape from reality… In that sense, the search for the ideal death metal and guitar sound is an endless maze to find the goal, and once you’re in it, you can’t get out. Isn’t death metal the perfect genre to have your own maze?

【SUMITA】: Wow, you asked me about curries in the first question! I am very happy to answer that. I think everyone has something they love and can’t get enough of. If we pursue it with full curiosity and love, we can reach a certain point, even if we are complacent.
In my case, the things I can’t get enough of are death metal, tube guitar sounds and curries. As for tube guitar sounds, the “Mesa Boogie sound” from Metallica’s “Master of Puppets” shook my brain from the inside out, and I have been searching for “my” ideal tube guitar sound ever since.
I am still chasing that first impulse I had in my youth. As you say, the search for the ideal death metal is like being in a maze with no way out, and there is no end to the exploration. I am also still chasing that first impulse that curries had on me in my youth.

Q1: 「極上のギターサウンドと一口に言ってもいろいろある。正解は一つではない。奥が深いし沼である。カレーも同じ。まだ出会ってない美味しいカレーはまだまだある。好きなモノの探求は楽しい。なんとも良い人生だ」
私は住田さんのこのポストがすごく好きで、共感できたんですよね。自分が好きなものの探求を続けること、好奇心を忘れないこと、情熱を持ち続けること、現実から離れられる場所って、やっぱり人生においてとても大切だと私は思っていて…そういう意味で、デスメタルやギター・サウンドって、一度ハマったら抜け出せない、正解という出口のない底なし沼で、探求と逃避のしがいがありますよね。 ある意味、デスメタルって、自分だけの沼を持つのに最適なジャンルではないですか?

【SUMITA】: 一問目からカレーですが!とても嬉しいです。ありがとうございます。デスメタルに限らずですが人は好きで好きでたまらない、というモノが誰でもあると思うのです。前頭葉を揺さぶるような感動体験が皆さんあると思います。それらを好奇心と愛を全開で追求すれば仮に独りよがりでもそれなりの地点に到達できるのでは、と思います。
その「好きでたまらないモノ」としてデスメタルやギターサウンド、そしてカレーが私の場合にはあったのです。ギターサウンドに関してはMETALLICAのMaster of Puppetsのメサ・ブギ アンプの音に脳天から痺れましてズッと理想の真空管ギターサウンドを追い求めています。
多感な青年期にうけた初期衝動を未だに追っかけています。おっしゃるとおり、デスメタルは出口のない底なし沼でして、探求の旅に終わりはありません。カレーも少年期にうけた衝撃を忘れられず未だに追っています。

Q2: Interestingly enough, many die-hard metalheads are also crazy about food. I was born in Sanuki, so I am proud of my passion for udon (Japanese noodles), but it seems that your passion for curries is also extraordinary. Can you tell us how you got hooked on curries, how metal and curries are connected, and which curry impressed you the most?

【SUMITA】: I love udon as well. When I’ve visited to Takamatsu for a gig, I was one of those who was fascinated by Sanuki udon. The broth is completely different from Tokyo, and the noodles are firm and filling. With such great food in your hometown, I do understand you must go crazy with it.
I was fascinated with curries as a child when my father took me to eat beef curry in the dining car of the Shinkansen bullet train. Unlike my mother’s homemade curry, it had a tangy, spicy, mature flavor. Later, when I was in high school, there was a curry restaurant near the cram school I attended (Ichigaya) called “Curry no Osama (King of Curry),” and I developed a love for curry with spicy flavors. I also liked to visit to a curry restaurant in Nakano, Tokyo called “Ceasar” (now closed).
Also, when Wes Benscoter, who does our artwork, lived in Tokyo for a few years a long time ago, we used to go to a Pakistani curry restaurant called “Great Punjab” (now closed) in Roppongi, Tokyo on weekend nights. We became friends beyond business through our many curry parties. Curries were also a frequent part of our get-togethers with good friends in Japan. When my band performs at Earthdom, our home venue, we usually start off at a curry restaurant called “Nimto”. We call it our “pre-stage ritual”.
The most impressive curry I’ve had is the one I ate in Kolkata when we toured India in 2015. The local promoter gave us the best curry I have ever had. There are many different tastes in curries, and there are many different axes of evaluation. It’s like being trapped in an endless maze while chasing “faves”.
I think that’s what makes it addictive. I can say the same thing about death metal and tube guitar sounds. In short, it is a maze of “faves”.

Q2: 面白いことに、多くのダイハードなメタル・ヘッズは食にも夢中になることが多いですよ ね(笑)。私は讃岐の人間なのでうどんにかける情熱は誰にも負けないという自負があるので すが、住田さんのカレーにかける情熱も並々ならぬものがありそうです。カレーにハマったきっかけやメタルとカレーの共闘、そして最も衝撃を受けたカレーについてお話ししていただけますか?

【SUMITA】: うどん最高です。私も公演で高松を訪問した時に讃岐うどんを食べその美味しさに衝撃を受けた一人です。出汁が関東とは全然違いますし麺のコシがあり食べごたえありますよね。地元にあんな美味しいモノあればハマるのは当然です。
私がカレーが好きになったキッカケは少年期に新幹線の食堂車で父親に連れてもらって食べたビーフ・カレーです。母親の作る家庭的なカレーの味と違いピリッと辛口の大人な味でした。その後、高校時代に通った塾の近くにカレーの王様(市ヶ谷店)がありスパイスの効いたカレー好きのベースができあがりました。成人後は中野にあったシーサーというカレー屋(今は閉店)にも通いました。
また私達のアート・ワークを担当してくれているWes Benscoter氏が大昔、数年、東京に在住していた時、よく週末の夜中に東京・六本木にあるグレート・パンジャブ(今は閉店)というパキスタン・カレーの店に一緒に通いました。彼とはカレー会議を重ねる事によりビジネスを超えた友人になったとも言えます。それ以外にも国内の仲の良い人たちとの会合の場がカレーが登場する事は多くなりました。バンド内でも私達のホームベースであるアースダムでライブする時はメンバーとのランチはニムトという店です。バンド内ではステージ前の”儀式”と冗談で呼んでいます。
最も衝撃を受けたカレーですが2015年にインド・ネパール・バングラディッシュをツアーしまして、その時インドのコルカタで食べたカレーです。プロモータがケータリングで持ってきてくれたカレーでしたがそのカレーが絶でした。カレーといってもいろいろな味があり評価軸も多様です。追求すると沼になってしまいますね。それがまた楽しいのでしょうけど。
先述と重複しますがそれはデス・メタルやギターサウンドにも言える事ですね。要は「好き」の沼です。

Q3: In fact, Gunnar Sauermann from ex.Season of Mist encouraged us in our early days and always praised your music and humble personality. As far as social networking goes, I have seen that Defiled is looking for a real human network in the scene. You have toured a lot around the world. You’ve been in the “underground” death metal scene for many years, is it important for you to “connect to the network” and has it helped you move forward?

【SUMITA】: What a small world! I was surprised to hear you mention his name here. He was very supportive of us when he was in Season of Mist. I was invited to his wedding in Iceland and we all went to celebrate with him. Of course there’s a lot of business networking, but at the same time I think it’s important to have networking outside of business.
In fact, the kind of music we do does not always make us a lot of money and we are not just in it for the profits. There are many aspects where we are motivated by the “metal network”. And this is a scene where those who “like” each other work together organically through mutual trust and friendship.
We are fortunate to have been able to work in such a situation for many years, and it has encouraged us to move forward. It is only through mutual respect that we are able to move forward.

Q3: 実は、弊誌の黎明期に最もお世話になって気にかけて下さったのが、当時 Season of Mist の Gunnar Sauermann さんで、彼が音楽や人間性をいつも大絶賛していたのが DEFILED だったんです。そうしたご縁も感じつつ SNS を眺めていると、DEFILED は人との繋がりやシーンをとても 大事にされている印象があります。ツアーでは、非常に多くの場所を回っていますし。デスメタルという “アンダーグラウンド” な音楽を長く続けてきた中で、”つながる” ことはやはり DEFILED にとって大切で、前へ進む力になってきたのでしょうか?

【SUMITA】: なんと世間は狭いのでしょう!ここで彼の名前を聞くとは驚きました。彼はレーベル在任時に、私たちをとてもサポートしてくれました。アイスランドでの彼の結婚式に招待され、バンドのメンバー全員でお祝いに行きました。もちろんビジネス上のつながりもたくさんありますけれど、同時にビジネスを超えたつながりを持つことも大切だと思います。
実際、私たちがやっているような音楽は、必ずしも大金を稼げるとは限りませんし、利益のためだけにやっているわけでもないです。「人とのつながり」が原動力になっている面もたくさんあります。そして、「好き」者同士が、互いの信頼と友情によって有機的に連携するシーンでもあります。
私たちは幸いなことに、長年そのような状況で仕事をすることができ、それが私たちの前進を促してきました。お互いを尊重し合ってこそ、前進できます。

Q4: I know you’ve been based in Okinawa for the past 10 years. I like to travel around the islands of the Seto Inland Sea. And I know the pros and cons of living on an island, such as isolation, distance limitations, and cultural differences. Can you tell us why you moved to Okinawa and why you moved back to Tokyo?

【SUMITA】: The islands of the Seto Inland Sea! They must be so beautiful! I would like to visit those islands someday. The cultures of the islands must be unique and very interesting.
As for how I moved to Okinawa from Tokyo, I would like to tell you my story honestly with apologies and repentance. The Great East Japan Earthquake in 2011 broke my heart and I ended up moving to Okinawa by accident.
The earthquake happened on the first day of our tour in Japan for our fourth album “In Crisis”, and although we managed to perform in Nagoya on the first day and Osaka the next day, the devastation was so huge that the whole country was in a mood of self-restraint and unable to perform gigs.
There were also power shortages due to extensive damage, and there was negative atmosphere that venues would also be targeted for condemnation. We had to cancel all the dates after the third day in Tokyo. Although it was unavoidable under the circumstances, it was a huge disappointment and setback for me.
I am ashamed to say that I panicked when the Fukushima nuclear power plant exploded and temporarily evacuated to Okinawa, where I have lived for the past 10 years. I am sorry to reveal this a personal story, but my father was from Hiroshima, and I knew about the deaths of my relatives from the atomic bombing, so I was very traumatized by radiation.
When I moved to Okinawa, I felt that the network and trust that I had built up over the years in Tokyo had been lost once and for all. In the end, I had to take responsibility for my panic evacuation, and I don’t want to make excuses, but I have accepted all the criticism and ridicule in the scene. In fact, I was in Okinawa for the first time in 2011, and I felt it was a completely different circumstance with Tokyo.
However, “tough times bring opportunities,” and there are great environments in Okinawa that you don’t find in Tokyo or other parts of mainland Japan, one of which was the private studio. It’s a freezer building converted into a studio. It’s located in Kokuba, Naha City (behind Okinawa University) and the rooms were shared by local bands. I contacted the boss of the studio and got a slot for one day a week to set up our own equipment and rehearse. Eventually we were able to rent a whole studio room on the top floor of the same building where we could rehearse and record with our own gear 365 days a year.
The line-up of the “In Crisis” era dissolved due to my moving to Okinawa after the European tour in May 2011. The Hamada brothers, who moved from Okayama to Okinawa, joined the band in August 2012. After they joined us, we spent every day rehearsing, chilling on the beach and enjoying local Okinawan street food. It was our dream time. Such a dream time came to an end with the demolition of the studio building due to its decrepitude at the end of 2018.
The Hamada brothers were originally supposed to move to Tokyo with me, but due to massive flooding from the heavy rain disaster in western Japan in the summer of 2018, which caused extensive damage to their parentshouse, they moved back to Okayama at the end of 2018.
Although our private studio was gone, I still liked Okinawa, and I lived a dual life in Tokyo and Okinawa from 2018 to the end of 2020, keeping my rented room and car in Okinawa.
There has been a “yuimar” spirit, a culture of helping each other, among Okinawa natives since ancient times. I have been helped by many locals and have learned a lot from them. Okinawa is already my second home. I am grateful for Okinawa, and I miss Okinawa very much.

Q4: DEFILED といえば、長く沖縄を拠点としていたことも有名ですね。私は瀬戸内海の島々を回るのが趣味なので島の良さは身に染みてわかるのですが、一方でやはり距離的な制約や文化の違いもありますよね。沖縄に行こうと決めた理由と、東京に拠点を戻した理由を教えていただけますか?

【SUMITA】: 瀬戸内の島々!いいですね!私はいつかそれらの島々を訪問してみたいと思っています。島の文化というのは独自のものがあり大変、興味深いです。
沖縄に居を移した経緯ですが、今だからこそ謝罪と懺悔の意味も込めて正直にお話をします。2011年の東日本大震災でなんか心がポキっと折れてしまい、成り行きで沖縄移住になりました。
震災は私達の4枚目のアルバム”In Crisis”の国内ツアー初日に起き、初日の名古屋と翌日の大阪はなんとか敢行しましたがその後は甚大な被害も明るみになり、ライブどころではない自粛ムードが全国を覆いしました。
電力も足りていないという話もあり、ライブハウスの稼動も非難の標的になってしまうようなピリピリ感がありました。3日目の東京以降の日程は、すべてキャンセルせざるをえませんでした。状況的にやむなしだったとはいえ、私としては大いなる失望と挫折でした。
福島原発が爆発してお恥ずかしながらパニックになり、沖縄に一時避難してそのまま10年、というのが本当のところです。個人的な話になり恐縮ですが、私は父が広島の人間で親族の原爆による被爆死も知っていたので放射能に大きなトラウマがありました。
沖縄に移ったとき、東京で長年築き上げてきたネットワークや信頼が一挙に失われた気がしました。結局、パニックで避難したのは自分の責任ですし、言い訳をする気はありません。シーンの中での私への批判や嘲笑はすべて受け入れてきたつもりです。実は私は2011年に初めて沖縄に来まして、東京とは違い完全に異世界でした。
しかしピンチはチャンスではないですが、沖縄には東京をはじめ本土にはない素晴らしい環境もあり、その一つがプライベート・スタジオでした。那覇市国場(沖縄大学の裏)にある元冷凍庫だった建物を強引にスタジオ化した場所があり、そこをローカルなバンドがシェアしていました。そこの胴元にコンタクトをとり、私達も自身の機材をそこに常設して練習できる曜日の枠をもらいました。そして最終的には私達専用のスタジオ部屋を同建物の上層階で借りる事ができ、365日いつでも自分たちの機材でリハーサル、レコーディングできる環境を構築しました。
アルバム”In Crisis”期のラインナップは欧州ツアー後、私の沖縄移住もあり、惜しくもバラバラになってしまいました。そんなピンチを救うべく岡山から沖縄に引っ越してきて加入してくれたのが今の濵田兄弟です。彼ら加入後は毎日のようにリハーサルと海と沖縄B級グルム探訪でした。そんな夢のような日々もスタジオの建物の老朽化による取り壊し決定により終止符を打たれました。
2018年末で取り壊しという事で濵田兄弟は当初は私と東京に一緒に移る予定でしたが、2018年の夏に西日本大雨災害の洪水で彼らの実家が甚大な被害を受けた事もあり彼らは岡山に戻りました。
私はプライベート・スタジオがなくなっても沖縄が好きで未練があり、2020年末までは賃貸住宅と車は沖縄に残し二重生活をしていました。
沖縄には”ゆいまーる精神”があり助け合う文化です。沖縄で沢山の人に助けられ多くの事を学びました。沖縄はすでに私にとって第二の故郷といいますか、望郷の念があります。そして感謝の気持ちがあります。

Q5: “Horror Beyond Horror”, which means that the current world, the current reality is much scarier than fictional horror, right? It’s a great title, isn’t it? While many death metal bands deal with horror movies and gore, you deal with the corruption, absurdity and oppression of society and reality. In terms of attitude you seem to be more hardcore. Do you support the recent crossover of death metal bands dealing with social issues?

【SUMITA】: Thank you for your intelligent analysis. It has been more than 30 years since the death metal genre was born, and the variation of lyrics and perspectives within the genre has diversified and expanded. I think it is good for the growth of the genre to have lyrics expressed from different angles as well as musicality. There are many hardcore, crossover and thrash metal bands that sing directly about social issues, and as a fan of those bands, I have no qualms about incorporating such lyrics into my own band.
Of course, death metal is a genre where bands based on horror movies and gore are mainstream. As far as lyrics go, I personally feel that it is not necessary to stick to gore at all. It depends on how you define the ideology of death metal, and it can be controversial, but I personally support death metal bands that deal with social issues.

Q5: “Horror beyond Horror”。素晴らしいタイトルですよね。”ホラーを超えたホラー”、つ まり、今の世界、今の現実の方がフィクションのホラーよりもよっぽど恐ろしくなっているという意味ですよね? 多くのデスメタル・バンドがフィクションやファンタジーのホラー、グロテスクな腐敗を描くのに対して、DEFILED は現実や社会における腐敗や不条理、抑圧を描くことを恐れません。そうしたテーマやスピリットという意味では、むしろハードコアに近いようにも感じます。近年、クロスオーバーが進み、そうした社会的テーマを扱うデスメタル・バンドが増えてきたことについては、やはり歓迎されているのでしょうか?

【SUMITA】: 聡明な分析をありがとうございます。デスメタルというジャンルも勃興からすでに30年以上の歳月が経ちジャンル内における歌詞表現、世界観の幅も多様化し広がった感はあるかもしれません。音楽性だけでなく歌詞もいろんなアングルからの表現があるのはデスメタルというジャンルの発展によい事ではないでしょうか。ハードコアやクロスオーバー・スラッシュでは社会的問題などを直接的に歌うバンドも多く、それらのファンだった私にはそういう歌詞を自身のバンドに取り込む事に抵抗感はありませんでした。
勿論、デスメタルはホラー映画などからの世界観を大事にするバンドが主流派ではあるジャンルではあると思います。歌詞や世界観に関しては、それらに固執しすぎなくてもいいのかなと個人的には思います。デスメタルのイデオロギーをどう定義するかにもよりますし、突っ込むと結構、深い議論になりますが、社会的テーマをどういう表現であれ取り込むデスメタル・バンドが増える事は個人的には歓迎しています。

Q6: “Horror Beyond Horror” was inspired by George Orwell’s novel “1984″, right? Thrash metal giants METALLICA were also influenced by this novel, and unfortunately the foresight of a dystopia of totalitarianism, censorship, surveillance and authoritarianism is becoming more and more real every day.
Speaking of thrash metal and dystopia, VOIVOD was also a pioneers in incorporating science fiction into metal. Your music is weird and complex. Did they influence you?

【SUMITA】: The novel “1984″ is the inspiration for the lyrics of many metal bands, and our lyrics are also heavily influenced by “1984”. The interesting thing is that many bands claim to be influenced by “1984”, but if you read their lyrics, they all express themselves differently.
We have our own perspective. As dark entertainment, we write lyrics that can be understood by anyone who reads them. Sometimes our lyrics can be considered political, but we do not support or criticize any particular ideologies.
We believe that the absurdity of the world is something wrong that everyone can feel. We never intended to hurt anyone with our lyrics.
VOIVOD has been one of our main inspirations since we started. They are so unique that we have consciously tried to avoid their influences. We don’t want to imitate them, even on a subconscious level. The lyrics take on more depth and meaning when they relate to real and emerging social issues. This is exactly what we learned from METALLICA and VOIVOD.

Q6: “Horror beyond Horror” はジョージ・オーウェルの小説 “1984” がインスピレーションのひ とつとなっているそうですね? スラッシュの巨人 METALLICA もあの作品に影響を受けたそ うですが、全体主義、そして検閲や監視、権威主義のディストピアという予言は残念ながら あたりつつあります。
スラッシュ・メタルとディストピアといえば、VOIVOD もSFをメタルに取り入れた先駆者 です。彼らの複雑怪奇な音楽やテーマの用い方は DEFILED に影響を与えているのでしょうか?

【SUMITA】: おっしゃるとおりです。小説”1984″は多くのメタルバンドの世界観、歌詞のインスピレーション源になっていますが私達の歌詞も”1984”からの影響は大きいです。ただ面白いのは”1984”から影響を受けたと明言するバンドは多いですが彼らの歌詞を読んでみるとそれぞれ違うんですよね、表現が。
私達は私達なりの解釈と世界観があります。私達は誰が読んでも共感を得られつつあくまでダークなエンターテイメントの範疇で歌詞を書いています。私達の歌詞は政治的とも捉えられますが特定の思想信条を支持したり批判するものではありません。
昨今の社会の不条理は誰もが感じる問題だと思いますのでその範疇で歌詞を収めています。誰もが共感し誰も傷つけない範疇で。
VOIVODはまさに私達がバンドとして始動する時に大きなインスピレーションを受けたバンドの一つです。彼らはあまりに個性が強いため、彼らからの影響が無意識レベルでもそのままの模倣としてでないように意図的にそれらを排除しようとしたほどです。歌詞は現実でも起きつつある社会問題と絡めるとメッセージがより一層、深みと意味を持つようになります。そういった手法はまさにMETALLICAやVOIVODから学んだものと言えると思います。

Q7: Speaking of dystopia, the music market is also collapsing in a dystopian way: The CD market is almost dying and streaming is taking over. Artists who upload 30-second videos to SNS without releasing the full-length album are becoming very popular. Any thoughts?

【SUMITA】: I think there are pros and cons. One thing I can say is that times have changed drastically. How you look at the current situation and how you deal with it is up to you, but I think it is better to look at it in a positive way. The fact that exposure has become easier and the environment has become more appealing to new fans is a positive thing in itself. Even if you have to sell merchandise instead of albums, if you are passionate enough to bring your music to the world, you will try to survive.
Today we have too much information, it’s become common for people to judge their “favorite” songs in a limited time, and there’s a frivolity where people are judged after the first 30 seconds of listening. There are a lot of great songs that cannot be grasped in the first 30 seconds, songs whose quality cannot be appreciated without listening to them several times. I think that skipping over these songs would even lead to a regression of music culture. That is really sad.

Q7: ディストピアといえば、音楽業界の変化もある意味ではディストピアですよね。CD は売れなくなりストリーミングが視聴体験を支配。音源は出さずともSNS で30秒の切り取り動画をアップするアーティストが大きな人気を得ています。そうした変化を住田さんはポジティブに見ていますか? それともネガティブに感じていますか?

【SUMITA】: 両方の面があると思います。一つ言えることは時代は大きく変わったという事です。昨今の状況をどう捉えるか、向き合うかですが、どうせなら前向きに捉えたほうがいいですよね。露出が容易になり新たなファンにアピールできる環境ができた事自体はポジティブに捉えてもよいと思います。CDが売れなくなりアーティストの収益が大幅に下がりましたがそれでも自身の音楽を世界の人々に届けたいという情熱があれば、その分はグッズなどを売ってでも音楽の世界で生き残ろうとするものだと思います。
情報過多の中、限られた時間で好みの音楽を選別する慣習ができ、最初の30秒でジャッジされる軽薄な時代になったという憂いはあります。何度も聴かないと良さがわからない音楽、最初の30秒では把握できない音楽の中にも優れた音楽は沢山あります。それらがスキップされる時代になるのは音楽文化の退行にすらつながると思います。それは寂しい話です。

Q8: I listen to “Horror Beyond Horror” a lot and every time I discover something new. There are not many metal albums that incorporate samba and flamenco. It’s a very challenging album. Or rather, your music has always been challenging.
As I mentioned before, you are going to break the “barriers” of death metal, hardcore, thrash metal and many other types of music. It’s great. I especially like the title track “Horror beyond Horror” and “Trojan Horse”.
The crazy, off-kilter rhythmic approach of the title track “Horror beyond Horror’ is even closer to CONFESSOR than MESHUGGAH. In fact, DEFILED is a band with very complex rhythms and stop-and-go. Do you transcribe in your songwriting?

【SUMITA】: I am glad to hear you say that our music is even closer to CONFESSOR than MESHUGGAH. I think you analyze music deeply and accurately. Thank you for your compliment on our songwriting.
Regarding your question about the transcription, in our case, in the process of arranging songs, we tentatively transcribe them as a basic briefing among the members, we mainly check the composition verbally while jamming, so we do not do the final transcription at that process. Since the recording is the final process, transcriptions are necessary to prevent discrepancies in interpretation among the members.
We are not transcription supremacists, although there are many things we have noticed after transcribing. Ironically, we have often found that players who need scores to learn songs are less able to analyze the songs than those who cannot read scores. There are technical metal players who do not use scores, but this is because they have good ear-copying and memorization skills.
As you know, rock and metal bands are not like orchestras, just a simple band of 4 or 5 players at most, it depends on the ability of the players and the texture, but in many cases it is not necessary to transcribe. I think it depends on the band and the music they play.
In our case, the scores are only used for a rough briefing and final reminder, and only as a complementary tool for efficient and safe communication among us, not as a necessary tool for writing and learning songs.

Q8: “Horror beyond Horror” を何度も聴いているのですが、聴くたびに新たな発見がありま す。サンバやフラメンコの響きまで取り入れたメタルはそうそう存在しませんよね。非常に挑戦的なアルバムです。というよりも、DEFILED の音楽はこれまでも常に挑戦的でした。
先ほど述べたように、デスメタル、ハードコア、スラッシュメタルはもちろん、様々な音楽の “壁” を壊すことに躊躇がない ですよね。素晴らしいです。私は特に、タイトル・トラックと “Trojan Horse” が気に入っています。
タイトル・トラックのような、”MESHUGGAH よりもCONFESSOR” な狂気のオフキルターなリズム・アプローチが実にクールです。実際、DEFILED は非常に複雑怪奇なリズムとストップ&ゴーな展開が多いバンドですが、制作過程ではキッチリと譜面を作られているんですか?

【SUMITA】: “MESHUGGAHよりもCONFESSOR”というお言葉は嬉しいです。質問者様は深く鋭く音楽を聴かれていると感じました。私達の創作へのお言葉もありがとうございます。
採譜についてお答えします。私達の場合ですが、制作過程でメンバー間の楽曲すり合わせとレコーディング前の最終確認して譜面を作成しています。曲の起草、アレンジ段階の途中までは口頭とジャムでの確認が主で譜面を作り込みませんが、最終段階、レコーディングではやはりメンバー間の楽曲解釈の齟齬を防止する上でも採譜は必要になります。
採譜して気がつく事も多いですが、私達は決して採譜至上主義ではないです。これは長年、多くのプレイヤーとやってきての経験からですが、譜面を使わない(使えない)プレイヤーでも楽曲の解析能力は決して低くなく、皮肉な事にむしろ譜面に依存しているプレイヤーのほうが解析能力は低いと感じる事が多々ありました。テクニカルなメタルのプレイヤーでも譜面を使用しない人も少なからずいますが、耳コピー能力と記憶力が高いからこそ故です。
オーケストラではなくせいぜい4人ないし5人のシンプルなバンド編成であれば、プレイヤーの能力次第、楽曲次第ではありますが、譜面が絶対必須というほどではないケースも多いです。バンドによってここは意見分かれるところではあると思いますが。
私たちの場合、楽譜はメンバー間の大まかなすり合わせと最終的な確認に使うだけです。楽譜の使用はあくまで効率的で確実なメンバー間のコミュニケーションのための補助的なツールであり、私達のような楽曲においては必ずしも曲を作ったり学んだりするために絶対必要なツールではないと思います。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED SUMITA’S LIFE!!

It is difficult to choose 5 albums, but if I ask myself to choose the 5 albums for my whole metal life, it would be the following 5 albums.

BLACK SABBATH “Paranoid”

ACCEPT “Restless and Wild”

RUSH “Power Windows”

METALLICA “Master of Puppets”

VOIVOD “Killing Technology”

MESSAGE FOR YOUNG GUNS

Last but not least, do you have any advice or encouragement for young musicians who want to start or continue a metal band?
I am not in a position to give advice to others yet, but I would like to encourage young musicians from the bottom of my heart. I want them to keep their passion for what they love.
There is a big wall between ideal and reality in band work. You will face dilemmas, frustrations and compromises, but if you remember your initial “passion” and persistently keep in mind what you need to do to realize it, you will find a better way. I will leave you with one last word: “Persistence pays off. Thank you very much.

私はまだまだヒトにアドバイスをできる立場でもないです。ですが若い音楽家たちにエールは心から送らせて頂きたいです。好きな事への情熱は是非、持ち続けて欲しいです。
バンド活動は理想と現実に大きな壁があります。挫折と妥協とのジレンマが立ちはだかりますが、それでも初心の「好き」を思い出し、その具現化のためには何をすればよいかという事を念頭に、粘り強く進めていけば、活路は見出されるのではないでしょうか。”継続は力なり”、という言葉を最後に残せたらと思います。ありがとうございました。

YUSUKE SUMITA

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SEASON OF MIST

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【BLOOD INCANTATION : ABSOLUTE ELSEWHERE】


COVER STORY : BLOOD INCANTATION “ABSOLUTE ELSEWHERE”

“A Lot Of People Would Say, ‘I Don’t Even Listen To Any Metal At All, But This Record Somehow Does It For Me,’ Which I Found Amazing”

ABSOLUTE ELSEWHERE

「PINK FLOYD をどう説明する?彼らはサウンドトラックを作った。他のこともやっていた。”彼らはメタルやロック、プログのバンドだ” と言われるのではなく、ただ “バンドの名前だ” と言われるような立場にいることは、とてもクールなことだと思う。そして、僕らもその段階に差し掛かりつつある。BLOOD INCANTATION はただ BLOOD INCANTATION なんだ」
一見、BLOOD INCANTATION の作品はとっつきにくいように思えるかもしれません。デンバーの実験的デス・メタル・バンドは、過去10年間、音楽的挑戦だけでなく、一見不可解で幻覚的なイメージも包括する世界に肉薄してきました。その哲学は、彼らの歌詞だけでなく、アルバムのアートワークにも浸透しています。
つまり、BLOOD INCANTATION を完全に理解するには、エイリアンやピラミッド、オベリスクの意味を理解しようとする必要があるのです。CANNIBAL CORPSE が “スター・ウォーズ” なら、BLOOD INCANTATION は “2001年宇宙の旅”。
難解な音楽を披露するバンドにもかかわらず、彼らは幅広く多様な聴衆を惹きつけることに成功しています。2016年に発表された初のフルアルバム “Starspawn” は、バンドの土台を築き、より壮大でプログレッシブな野心を示す、最初の突破口となりました。しかし、扉を大きく開けたのは2019年の “Hidden History Of The Human Race” でしょう。その代表曲は18分ものサイケ・エピック “Awakening From The Dream Of Existence To The Multidimensional Nature Of Our Reality (Mirror Of The Soul)” であるにもかかわらず、”Hidden History” は2010年代で最も幅広く評価されたメタル・アルバムの1枚となりました。そうして、ブルース・ペニントンの象徴的なアルバム・ジャケット(グレーのエイリアン、淡いブルーの空、謎の浮遊物)をあしらったTシャツは、インディ・ロックのライヴで見かけるくらいに有名になったのです。
ギタリストの Morris Kolontyrsky は、「多くの人が、”私はメタルをまったく聴かないのに、このレコードはなぜか聴いてしまう” と言うんだ」 と目を細めます。

めまいがするほど広大な3枚目のLP “Absolute Elsewhere” を発表する準備中、彼らは増え続けるファンベースに対して過激なまでにオープンな姿勢をとりました。アルバムの発表と同時にDiscordチャンネルが開設され、そこでバンドはリスナーとたわむれたり、たわごとを言い合ったりしています。
彼らは、アルバムを構成する2曲のロング・トラックのうちの1曲目、”The Stargate” のMVを兼ねたショート・フィルムのプレミアに出席し、ベルリンの伝説的なハンザ・スタジオでのセッションを詳細に描いたドキュメンタリーの制作を監督しました。メイキング・ドキュメントのタイトルは、ハンザでミックスされた CAN の名曲から引用した “All Gates Open” “全ての扉は開いている”。ドラマー Isaac Faulk はその意味を説明します。
「このドキュメンタリー、そしてアルバムのエトス全体がオープンであることなんだ。自発性に対する開放性、コラボレーションに対する開放性。積極的に指示したり、箱の中に押し込めようとするのではなく、僕たち全員が波に乗っていたこの相互の創造的衝動。だから、すべての門が開かれているんだ」
BLOOD INCANTATION には最初から、濃密でクレイジーなアイディアが詰まっているけれど、そこにリスナーを招き入れたいんだ。隠された神秘的なものになろうとしているのではない。純粋なレベルで人々に関わってもらいたいんだ」
ハンザ・スタジオを訪れ、POWER TRIP や自身のバンド、SUMERLANDS のプロデュースで知られる Arthur Rizk とレコーディングを行った BLOOD INCANTATION。彼らがデビュー以来テーマとしてきたのは、人類の進歩に対する地球外からの影響と、すべての生命の相互関連性でした。ハンザの異質な環境に身を置くことは、新しいレコーディングの雰囲気を形成するのに役立ちました。
「壁には香のようなものが染み込んでいて、何十年も何十年もそこでレコーディングしてきた人たちの何かがそこにあるんだ」
ハンザのスタジオはまさに “Hidden History” でした。彼らは、ブライアン・イーノがデヴィッド・ボウイのエンジニアリングをしていたときに、ミキシング・デスクの脇の壁に自分の名前を書き込んだ場所を見ます。ボウイのレコーディングで使われたピアノがスタジオに残っていて、その音はアルバムに収録されました。TANGERINE DREAM が使用したマイク(おそらく現在では35,000ユーロの価値がある)は、”クローゼットの中” だったと、彼らはまだ信じられない様子で言います。そして BLOOD INCANTATION はそのすべてを “Absolute Elsewhere” に注ぎ込み、さらに9,000ユーロ相当のシンセサイザーを追加購入したのです。

バンドは、市内にある練習場で、9日間かけてアルバムの曲を40〜50回通しでリハーサルしました。ハンザ入りする前の週末、彼らはオリンピアシュタディオンで行われた DEPESCHE MODE のギグに8万人の観客とともに参加しましたが、このイギリスのシンセ・ポップ・グループも3枚のアルバムををハンザで制作していたのです。
“Absolute Elsewhere” の核心には、BLOOD INCANTATION の核心と同じように二律背反が存在します。一見、このアルバムは近寄りがたく、謎めいた作品でしょう。曲は2曲だけで、両者とも3つの楽章に分かれており、そのそれぞれが20分を超えています。そして BLOOD INCANTATION の過去のどのリリースよりも、デスメタルの攻撃性にクラウト・ロック、ダーク・アンビエント、70年代プログからの大胆なアイデアを加えており、作品の最も密度の高い部分では、アイデアからアイデアへと奔放に自由気ままに飛躍していきます。
その一方で、ギター・パートは、エクストリームであっても豊かなメロディーを奏で、かつてはミックスの奥深くに埋もれていた Paul Riedl のボーカルは鮮明。そのフレージングとアーティキュレーションを重視した彼の歌は、間違いなく BLOOD INCANTATRON 史上初めて、キャッチーを極めています。そして Riedl はクリーン・ボーカルを多く披露もしています。つまり、”Hidden History” が、ほとんど偶然に広く一般的なファン層を見出したとすれば、”Absolute Elsewhere” は、さらに多くの人々に届く態勢をしっかりと整えているのです。
「”Absolute Elsewhere” のサウンドは断固としてブルータルで、これまでのどの作品よりも飛躍的にテクニカルでプログレッシブだ。ただ、その過激さとは裏腹に、よりメロディアスでキャッチーで親しみやすい。この巨大で残酷なものの泥沼の中で、キャッチーな部分があればそれでいい。BLOOD INCANTATION の影響範囲は常に外に向かっているのだから。だから、僕たちが最初の範囲から外れたのものから学び始めることは避けられないし、常にそれらを大きな血の呪文のピラミッドに組み込んでいくんだよ」
BLOOD INCANTATION の誰もが、2022年にリリースされたアンビエント作品 “Timewave Zero” なくして “Absolute Elsewhere” はあり得なかったと信じています。4人のメンバー全員が典型的なギターとドラムの代わりにヴィンテージのシンセサイザーを演奏していたアルバムを、気に入った人も批判した人もいました。しかし、バンドにとって “Timewave Zero” は、自分たちのサウンドのパラメーターを広げる手段であり、同時に創造性の奥行きを広げる方法でもあったのです。”Timewave Zero” の経験は、バンドが “こうあるべき” という既成概念を打ち砕きました。
「メンバーと、異なる方法で、異なる言語で、一緒に音楽を演奏する方法を学んだ。僕たちはそして、”Timewave Zero” を通してより親密な友人にもなれたんだ」Kolontyrsky は言います。「”Absolute Elsewhere” では、その感性が発揮されたのだと思う。僕たちの絆はとても強いから、誰かの最悪のアイデアでも、誰も敬遠したり馬鹿にしたりすることはないんだ。
僕らはメタル・バンドが非メタルのレコードを作るのが好きなんだ。10代の頃、エクストリームでアンダーグラウンドなブラックメタルやデスメタルに夢中になっていて、CORRUPTED のようなバンドが大好きだった。あるいは ULVER のようなバンドは、すぐにアコースティックになり、その後、これまで以上にハードになって戻ってくる。そうしたバンドはすべて、サウンドスケープやアトモスフィアを取り入れている。彼らはそれをまったく恐れていない。彼らは逆張りをするためにやっているのではない。自分たちの音楽がいかに高尚かどうかを証明しようとしたわけでもない。彼らはただ、自分たちの旅路をたどるアーティストであり、僕たちのような若く多感な人々に、メタルにノンメタルを取り入れることが完全に可能であることを示しただけなんだよ。物理的に可能なことなんだ」

そう、彼らはモダン=多様性という、モダン・メタルの方程式を完全に理解しています。そして、もうひとつの重要なステップは、バンドが昨年秋にリリースした両A面シングル “Luminescent Bridge” でした。デスメタルのルネッサンスについて、まだ知らない人は多いかもしれませんが、しかしそれはアンダーグラウンドの洞窟でますます大きく鳴り響いています。CANNIBAL CORPSE や OBITUARY が活動を続け、会場の規模をアップグレードしているのと同様に、このサブジャンルの新しい形態もまた台頭してきているのです。そのひとつがコズミック・デス・メタルで、人体の切断を歌った曲を避け、人間存在に関するより広い形而上学的な問いを探求することを好んでいます。
昨年9月15日、コズミック・デス・メタルの先駆者2組が新曲を発表しました。トロントの TOMB MOLD が発表した “The Enduring Spirit” は、90年代のスピリチュアルな先達、CYNIC のサイケデリックな洗練に大きく傾倒した驚異的な作品で、最終曲の “The Enduring Spirit Of Calamity” は、クリスタルのようなギター・ソロと長く繰り返されるリフレインを含み、デスメタルに対する既成概念を大きく変えました。
同日、デンバーの BLOOD INCANTATION が12インチ・マキシ・シングル “Luminescent Bridge” をリリースしました。タイトル・トラックは、シンセとクリーン・ギターによるマントラのような作品で、2022年のアルバム “Timewave Zero” のアンビエントな実験性を引き継いでいましたが、A面の “Obliquity Of The Ecliptic” では、地球を震撼させるアルバムのメタリックな炎を宿しながらメロディックに飛び立ちました。
つまり、”Absolute Elsewhere” の鼓動するメロディックなハートは、”架け橋” のおかげでここまで完全に露わになったのです。「”Luminescent Bridge” の両面は、”Hidden History” よりもメロディーを取り入れやすくなっている」と Riedlyは言います。「”Obliquity Of The Ecliptic” の最後に巨大でヘヴィーなメタル・ギター・ソロがある。高揚感があって、メロディアスで、勝利的なんだ。それから “Luminescent Bridge” はほとんどメロディックなパートばかりだ。不協和音は最初と最後のスペース・サウンドだけ。それ以外はすべて、繰り返しのギター・リフ、繰り返しのギター・メロディ、そして大きく舞い上がるカラフルなメロディがある。でも、とてもシンプルなんだ」

BLOOD INCANTATION のサウンドスフィアでは、時間は平坦な円となり、まるで、彼らが長年にわたって発表してきたすべての音楽が、独自の次元に同時に存在しているかのよう。既知の音楽宇宙のはるか彼方への彼らの旅は、私たちの現実を構成する最も小さな粒子、存在の大きな理論、そして私たちの意識そのものを探求するもの。Issac Foulk は言います。
「僕はよく、多くのバンドは自分たちのサウンドにこだわりすぎると、その輪を自ら小さくしてしまうと言ってきた。でも僕らは、自分たちのサウンドを追求していくうちに、輪が大きくなり、さらにいろいろなものが加わっていくような気がするんだ」
BLOOD INCANTATION は、彼らの愛するビデオ・ゲームで例えれば、RPGでキャラクターがレベルアップするように、スキルツリーを通してレベルアップしているように思えます。レコードを出すたびに、バンドはXPを獲得し、新しいスキルをアンロックしていくようです。
「リリースのたびに、僕たちはハードウェアの能力を最大限に引き出している」とフレットレス・ベースの使い手 Jeff Barrett は言います。「そしてうまくいけば、僕たちは学び、次のリリースでハードウェアを拡張して、さらにその学びをプッシュすることができる」
BLOOD INCANTATION が “Absolute Elsewhere” に望んでいたのは、Faulk に言わせれば、「大きくて、壮大で、自由で、境界のない、超越した存在」になることでした。
“The Stargate” では、激しいリフが残響の多いダブのようなセクションへと進み、PINK FLOYD の “Echoes” のジャム・セクションを想起させるパッセージへと展開します。そして彼らは、あからさまに David Gilmoure 風のギター・ソロを聴かせます。そして嵐の前の静けさ、シンセサイザーとアコースティックの波の音。
「BLOOD INCANTATION は当初から、デスメタル以外のエクストリーム・メタル(特に90年代と2000年代)が、いかに様々な方向に突き進む音楽であるかに興味を持っていた」と Faulk は証言します。
“The Stargate” は、無限の宇宙に奉仕する儀式的な肉体の破壊を描いています。「すべての生命は一時的なものであり、永続するものは意識である」

一方で、Riedl と Kolontyrsky の音楽的応答が、アルバムのB面 “The Message” です。”The Stargate” が BLOOD INCANTATION のこれまでのビジョンの集大成だとすれば、”The Message” は彼らが向かっている “絶対的な別の場所”。
この曲は、エクストリーム・メタル内部の戦争をシミュレートしているかのよう。恍惚としたブラックメタルのセクションが近年最高のスラッシュ・メタル・リフと競い合う至高。彼らはその高尚な音楽性ゆえに、狙った場所にハンマーを振り下ろすことができるのです。
Faulk がこの曲の中でサイケ・ロック・セクションと表現している部分は、彼にとって特別な挑戦でした。小節のタイミングがとても奇妙だったので、彼はリハーサルの間中、コンピューターで曲を追いかけ、躍起になってタイミングを捕まえようとしていました。
“The Message” の歌詞は、バンドの哲学的な水域に深く潜り込み、瞬間の陶酔状態を認めていきます。それは Faulk が「強烈な明晰さ、一体感、ありのままを受け入れること」と表現するもの。
「僕たちの音楽がやろうとしていることのひとつは、ジャンルだけでなく、バンドがなりうるもの、バンドができることの境界線を押し広げること。僕らは10年以上前にもこのようなことを話していた。これは、BLOOD INCANTATION の大きなテーマだった。自分たちがどこから来たのか、何者なのか、自分たちの深い信念を再考すること……。世界史や人類の起源に地球外生命体が影響を及ぼしている可能性。
それは、哲学とアイデアのイースト・ミーツ・ウエスト(東洋と西洋の融合)だ。意識とは、西洋科学がそうみなしたもの、つまりニューロンがたまたま発火しているだけで、もっと深いものがあるわけではない。でも、もっと深く掘り下げていくと、もっと多くのことがあるように思えてきて、すべての意識とすべての生命との間には、もっと深いつながりがあるように思えてくるんだ」

“Absolute Elsewhere” は、キーボーディスト兼フルート奏者の Paul Fishman が結成した70年代のプログレッシブ・ロック・バンドにちなんで名づけられました。彼はエーリッヒ・フォン・デニケンの1973年の著書 “In Search Of Ancient Gods” にインスパイアされたコンセプト・アルバムをレコーディングするためにそのグループを結成。最も注目すべきは、KING CRIMSON の Bill Bruford がセッション・ミュージシャンとしてそこでドラムを叩いていたことでしょう。
奇妙な偶然ですが、ABSOLUTE ELSEWHERE の長らく行方不明だったセカンド・アルバム “Playground” が今年リリースされたばかり。BLOOD INCANTATION がアルバム・タイトルにこのバンドを引用し、Robert Fripp がボウイやイーノとハンザでレコーディングしたときと同じ空間を巡ったことで、宇宙の閉塞が解け、ABSOLUTE ELSEWHERE の作品が再び物質的に存在するようになったかのようにも思えます。
そして実際、”All Gates Open” のドキュメンタリーは、ハンザがこの作品のための適切な実験場であったことを明らかにしています。ハンザは、デヴィッド・ボウイとイギー・ポップがベルリンで重なり合った時代の中心にあったスタジオで、”Timewave Zero” に唯一最大の影響を与えた TANGERINE DREAM はこの場所でアルバム “Force Majeure” をレコーディングしていました。彼らはハンザでの大規模なセッションでそのすべてを活用することができたのです。Riedl がその喜びを語ります。
「同じ芸術的な道に身を置くだけでなく、僕たちが聴いてきたレコードで彼らが使ったのと全く同じ機材や回路を使うことで、僕たちがインスパイアされた伝説的な人々を解明することができた。ほとんどの場合、誰かがこの機材を持っていたとしても、貴重すぎて触ることはできないだろう。でも、スタジオ全体がそうだからね。スタジオには、展示されているのに使えない機材はなかった。すべて、使ってレコーディングするためにあったんだ」

機材だけでなく、バンドはゲスト・ミュージシャンも自由に起用し、アルバムの限界をさらに押し広げました。2005年から TANGERINE DREAM を率いている Thorsten Quaeschning は、”The Stargate” の第2楽章に瑞々しいシンセ・サウンドスケープを提供し、SIJJIN と NECROS CHRISTOS の Malte Gericke は絶叫するような死のうなり声と話し言葉のボーカルを母国語のドイツ語で加えました。しかしおそらく最も重要なのは、HALLAS のキーボーディスト Nicklas Malmqvist が名誉メンバーとしてバンドに加わり、ピアノ、シンセサイザー、メロトロンのパートを重ねることで、このアルバムの70’sプログへの傾倒を顕在化させたことでしょう。BLOOD INCANTATION のメンバー4人だけで構想・実行された “Timewave Zero” とは異なり、”Absolute Elsewhere” のシンセ・パートはメタル圏外から提供されたのです。そして、それが重要でした。
「メタル系の人がアンビエントを作ると、ある種特定のサウンドになる」と Riedl は認めます。「でも Nicklas の耳は “メタルっぽさ” から完全に切り離されていて、だからメロトロン・フルートのようなクレイジーなアイデアをたくさん持ってくるんだ。ドキュメンタリーの中で、彼が “あまりヒッピーっぽいサウンドにはしたくない” と言っているのがわかる。でも、それが僕たちの望みなんだ!僕たちは20年以上メタル・バンドをやってきたから、ヒッピー・サウンドにはできない。彼の頭脳はもっと自由だから、そういうインスピレーションを取り入れることができるんだ」
バンドがデスメタルの繭の外に出てハンザでレコーディングしたり、メタル外の人たちと共演したりするのは、メタルヘッズに一見異質な分野が織り成す成果を示し、明確なつながりを作るためでもあります。Riedl は、BLOOD INCANTATION が人々に示したいことの例として、クラウトロックのパイオニア Conrad Schnitzler が MAYHEM の “Deathcrush” に提供したイントロ、”Silvester Anfang” を挙げました。
「この巨大なタペストリーは、影響と創造性の連続体における僕らの位置を示している。僕たちは、リスナーに対して、自分たちがこの異世界に参加していることだけでなく、そうやって広がる “輪” が、彼らが想定しているよりもずっと近くて大きいものであることを説明しようとしているのさ」
「つまり、最もカルト的でアンダーグラウンドでブルータルなブラック/デスでありながら、同時に高尚なエレクトロニック・ミュージックや70年代のプログ・スタイルのレトロ・バンドの世界にも入り込めるということを示している」と Kolontyrsky は付け加えます。「このバンドが成長するにつれて、そうしたすべてのコーナーに同時に進出していく。このバンドが成長するにつれて、ニッチで小さなもののひとつひとつに突き進んでいくんだ」

Steve. R. Dodd のアートワークもこのアルバムに欠かせないピースのひとつ。
「アートワークは僕らの包括的な美学の一部であり、それぞれが全体的なコンセプトの段階的な拡大に貢献している。僕たちのリリースを見れば、”ああ、これは明らかに BLOOD INCANTATION だ” とすぐに見分けることができる。さまざまなアートワークに描かれたそれぞれの風景が、理論的には同じ宇宙内の新しい場所となりうるという意味で、僕らの視覚的宇宙の発展にとって重要なんだよね」
Riedl の “Absolute Elsewhere” の歌詞には、BLOOD INCANTATION のディスコグラフィ全体にも言えることでしょうが、そうした考え方が反映されています。神秘主義やオカルト、古代のエイリアンやシュメール神話へのベールに包まれた言及の下で、Riedl は根本的に人間のつながりについて、つまり、理解しているかどうかにかかわらず、私たちは皆、集合意識の中に組み込まれていると語っているのです。MAYHEM と CAN、TIMEGHOUL と TANGERINE DREAM を結びつけるのと同じ絆が、私たち一人ひとりを互いに結びつけるのです。
「ダンスの中で自分の居場所を認識すること/己のビートを時間内に知り、どこからステップを踏むべきか知ること” と、Riedl は “The Message” の中で歌っています。そのダンスを学べば、BLOOD INCANTATION の見かけの不可解さは消え去るはずです。
「リスナーに直接語りかけたかったんだ。僕が話そうとしていることを理解するため、その人が戦わなければならないようなことはしたくなかった。BLOOD INCANTATION を聴いているとき、彼らもまた僕たちの一部なのだということを、暗黙のうちに理解してほしかった。それは巨大な、つながった相乗効果で、彼らがどこにいようと、僕たちがどこにいようと、両者をつなぐ心の橋なんだ。いわば、リスナーは僕らに侵入するようなものさ」


参考文献: STEREOGUM:Opening The Gates With Blood Incantation

THE QUIETUS:Expanding the Circle: Blood Incantation Interviewed

WESTWORD:Blood Incantation Is Taking Death Metal to New Frontiers

ANTICHRISTMAG:Interview with Paul Riedl of BLOOD INCANTATION

弊誌インタビュー2019

COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【CONSIDER THE SOURCE : THE STARE】


COVER STORY : CONSIDER THE SOURCE “THE STARE”

“Our Music Combines Influences From Turkish, Bulgarian, North and South Indian Styles With Jazz And Fusion, And Then We Filter It Through Our Own Heavy, Rock and prog sounds and approaches.”

THE STARE

CONSIDER THE SOURCE の音楽は、70年代フュージョン、伝統的な中東や中央アジアのスタイル、プログの難解とメタルの激しさを巧みにミックスしたものです。ギタリストの Gabriel Marin は、並外れたシュレッド、複雑なタイム感、伝統的スケールの博士号、稀有なるフレットレス・ギターの流暢さ、そしてエフェクトを操る多才すぎる能力を誇ります。そして、3機のペダルボード、17個のペダル、2台のギター・シンセサイザー、2台のアンプ、そして異形のカスタム・ダブルネックを持ってツアーする筋金入りの機材ジャンキーでもあるのです。
ニューヨーク出身の Marin はピアノから始め、16歳でギターを手に入れました。1年半後には Yngwie Malmsteen の “Far Beyond The Sun” を体得。ハンター・カレッジでクラシック音楽の学士号を取得し、インドの巨匠デバシシュ・バッタチャリヤの弟子となり、デヴィッド・フィウジンスキーに師事しました。OPETH や RADIOHEAD の傑出したカバーを披露する一方で、彼はまた、バ・ラマ・サズ、カマンチェ、ドンブラ、ドター、タンブール、ダン・バウなど、伝統的なアコースティック楽器の演奏法も会得しているのです。

「バンドを始めた当初はロックに傾倒していたけど、常に違う世界のものにも興味を持っていた。最初はグランジやシュレッダーから影響を受けた。Jerry Cantrell と Billy Corgan はグランジ系だった。10代の頃は Yngwie Malmsteen, John Petrucci, Steve Vai も好きだった。そういうプレイを学ぶことで、たくさんのギター・チョップを身につけることができた。僕は17歳で、ギターを始めて1年半くらいだったんだけど、イングヴェイの “Far Beyond the Sun” を弾けたんだ。”ああ、僕は何でも弾けるんだ!” って感じだったよ(笑)。
でもその後、2ヶ月の間にジョン・コルトレーンの “A Love Supreme” と John McLaughlin を聴いて、自分の音楽がすっかり変わってしまった。テクニックはそこそこだったけど、それ以上の意味があるように思えたんだ。コルトレーンが速いラインを弾いているとき、それは “この速いラインを弾いている私を見て” ではなかった。スピリチュアルな音の爆発だった。
僕は、”よし、これが自分のやりたいことだ” と思った。僕はいつも、顔で弾いたりギターを変な持ち方をしたりするような、ショー的なシュレッダーが苦手だった。それは僕には理解できなかった。でもそのふたりは一音一音に真剣で、超高速で演奏しているにもかかわらず、一切無意味なでたらめさがなかった」
オリエンタルな伝統音楽にのめり込んだのはなぜだったんでしょうか?
「その後すぐに、伝統音楽をギターで演奏する方法を見つけたいと思うようになり、インド、トルコ、ペルシャの音楽にのめり込んでいった。幸運なことに、偉大なミュージシャンと一緒にこうしたスタイルを学ぶことができた。僕はフレットレス・ギターを弾くので、伝統音楽のフレージングや装飾を正確に表現できるんだ。
僕は伝統的な楽器を使ってトルコやペルシャの古典音楽を演奏するために時々雇われるんだけど、そんな時でもフレットレス・ギターを持って行く!フレットレス・ギターをそのような場に持ち込むのはクールなことだ。CONSIDER THE SOURCE では、超未来的なサウンドを作るのが好きなんだ。僕らはトルコ、ブルガリア、北インド、南インドのスタイルからの影響をジャズやフュージョンと組み合わせ、それを独自のヘヴィ・ロックでプログなサウンドやアプローチでろ過しているんだ!」

たしかにフレットレスであることは、オリエンタルなサウンド・メイクに効果的です。
「フレットレスはスライドに最適なだけでなく、微分音も使える。中東のような多くの異なる文化では、ピッチとピッチの間にピッチがあるから、4分の1ステップや8分の1ステップといったものがあるんだ。
それに、フレットレスにEBowやサスティナー・ピックアップをつけ、ボリューム・ペダルを使えば、ギタリストというよりシンガーに近いサウンドになる。
僕はあまりコードを弾かないんだ。どちらかというとメロディックな単音奏者で、フレットレスはそれに最適な楽器なんだ。フレットを弾くときでも、流動的なピッチを得るために、ワミー・バーはずっと小指にあるくらいでね」
アラビアやインドの伝統音楽は、単にハーモニック・マイナー・スケールを演奏しているだけではありません。
「それが問題なんだ!インド音楽といえば、僕はインドのラップスティール奏者、デバシシュ・バッタチャリヤの弟子だった。彼は信じられないような人で、SHAKTI のレコーディングにも何度か参加している。僕はインドで彼と一緒に暮らし、彼がアメリカに来るときはいつも、1ヵ月間彼の家に滞在して本当に熱心に勉強したんだ。
あと、アゼルバイジャンのムガームのスケールも素晴らしい、 アゼルバイジャンでは本当に素晴らしい音楽が作られているんだ。他の国の人の耳にはなじみにくい音階を聴きたいなら、検索エンジンにその音階を入力して聴いてみて!」

フレットレスのもうひとつの魅力は、フレットレスに専念しているプレイヤーがほとんどいないことだと Marin は言います。
「僕はフレットレスを弾いているけど、シーンの誰もフレットレスを弾いていなかった。僕のフレージングのほとんどは、エレキ・ギターを弾かないミュージシャンから学んだものだ。未知の領域だよ。
最後にトルコを訪れたとき、ドゥドゥクを弾く人のレッスンを受けたんだ。僕がレッスンに現れたとき、彼は “ドゥドゥクはどこだ” と言ったので、僕はフレットレスを取り出した。彼は僕にどう教えたらいいのかわからなくて、何か弾いてみて、それをコピーさせて、僕のやり方が正しいかどうか教えてくれと言ったんだ。
管楽器で顎の圧力を下げる真似をギターでするんだ!それを理解するのは楽しかった。フレットレスのもうひとつの魅力は、フレットレスに専念している奏者がほとんどいないことだからね」
Marin は多くの伝統的なアコースティック楽器を演奏しますが、テクニックやスケール、モードといった面で、それはエレクトリック方面ににどの程度反映されているのでしょうか?
「スケールとモードは100パーセント。ここ10年ぐらいでトリルやスライドが自分の演奏に組み込まれたから、何を弾いても東洋の楽器のように聴こえてしまうんだ。それが今の僕の弾き方なんだ。でも、右手のテクニック、たとえばドンブラやドゥタールのテクニックは、ギターにはできないんだ。不思議なもので、ドンブラやドゥタール、あるいはサズを2、3時間弾いた後、ギターを手に取り、演奏できる状態になると思っていたのに、まるでまだ全然弾いていないかのようなんだ。まったく違うんだ。
フュージョンをうまくやるには、フュージョンしようとしている音楽の内側に入り込む必要があると思う。僕はトルコやペルシャの音楽を忠実に演奏することができる。そうやって、まずは正しい方法で音楽の言語を学び、それから自分の目的に向かうのが大切だと思う。
インド音楽を勉強していたとき、ちょっとブルージーな感じで弾いたら先生がすごく怒ってね。それが僕を変えた。よし、学ぶときは正しい方法で学ぼう。それから離れて演奏するときは、好きなようにやればいい。でも、それは分けて考えるんだってね」

伝統的な演奏方法と、CONSIDER THE SOURCE での解釈方法とは、明確に区別しているということでしょうか?
「伝統的な奏法について本当に研究しているのは、バンドで僕だけだからね。僕はバンド・メンバーのためにメロディーを弾き、彼らには自分のパートを書いてもらう。ふたりとも優れたミュージシャンだから、それぞれの持ち味を出してほしいんだ。例えば、ドラマーはダルブッカで育ったトルコ人じゃない。彼はドラムセットで素晴らしい演奏をする西洋人なんだ。彼はトルコのリズムを聴いて、それに合わせて自分なりの素晴らしいことをする。僕たちは決して伝統音楽をやっているわけではないからね。僕は伝統音楽を勉強しているけど、僕らはフュージョン・バンドなんだ」
CONSIDER THE SOURCE は変拍子も独特です。バンドが変拍子をダンスに適したリズムに分割する方法は、バルカン音楽にインスパイアされているのです。
「最初に変拍子を理解し始めたのは、DREAM THEATER の曲とか、わざと変拍子にしてあるようなプログの曲に合わせて演奏していた時だった。それからバルカン音楽を弾き始めて、深く衝撃を受けたんだ。装飾音やトリルなど、すべてが魅力的で、”よし、これこそが9拍子の曲だ” と思ったんだ。でも、ライブを観に行くと、バブーシュカを着た老女たちが踊っている。どうやって9で踊るんだ?どうやって11と7で踊っているんだろう?”と思うだろ?でもそれは、音楽が小さなグループに分かれているからできることなんだ。だから、僕はすべての音楽を小さなグループに分けるようにしたんだ。もう変な感じはしないね。バルカン半島の伝統的なダンス曲を5つのグループに分けて演奏するんだけど、何人かの人たちは、気にすることもなく、ノリノリになるんだ」

フレットレスを弾くときは、音名のない特定の微分音を意識しているのでしょうか?
「とても具体的だよ。微分音にはさまざまな伝統がある。例えば、トルコの伝統とアラビアの伝統はまったく違う。トルコ音楽でマカーム(伝統的な音程とそれに付随する旋律図形)を演奏する場合、第2音をある程度フラットにする。アラブ音楽でそれを演奏する場合は、別の程度までフラットにする。イントネーションは、僕が演奏中にとても意識していることだよ」
ワーミー・バーの叩き方にもこだわりがあるのでしょうか?
「イエスでもありノーでもある。あるときは、ただヒラヒラさせたり、叩いてみたりして、何が起こるか確かめたくなる。ワーミー・バーは本当にワイルドカードだ。音を出した後にギターを操作する余地がたくさんある。だから、そういう面は意識している。バーを使えば、自分の好きな音程に正確に曲げられるだけでなく、クールなこともできるはずだ」
Marin の演奏は、ペダルボードの上でダンスを踊ると評されます。
「10代の頃はペダルをいじるのに多くの時間を費やした。僕は大のSFオタクなんだ。ギターを弾きたいと思うようになったきっかけのひとつは、父に連れられてサム・アッシュ (ギターショップ) に行ったとき、フェイザー・ペダルを見たことだった。何これ?フェイザーだ!って。だからオタク音楽という側面は、僕にとって大きなものなんだ。クレイジーなSFサウンドが大好きなんだ。フリージャズも大好きだった。サックスで20分間、男たちがイカレた音を出すのを聴くのが好きなんだ。CONSIDER THE SOURCE ではあまりそういうことはできないけど、ペダルを使ってクレイジーなサウンドスケープを作るのが大好きなんだ。
そして僕らのアルバムにはキーボードがない。いつも “誰がキーボードを弾いたの?”って聞かれるんだ。誰もキーボードは弾いていない。僕はMIDIギターを使っている。ペダルは何十万も使う。リハーサルは、”この小節の3拍目にこのペダルを踏み、4拍目にこのペダルを踏み、次の小節の下拍にこのペダルを踏む “という感じだ。Axe-Fxとか、ボタンを1つ押せばすべてが変わるようなものは使わない。オン・オフしたいときは、ひとつずつやるんだ。このペダルを踏んで、スプリングが外れて、このペダルにジャンプする、というポイントがいくつかあるんだ。見た目はかなり面白いね。
EBowもよく使うし、KORGのKaoss Padもスタンドに置いてある。僕の周りには17台のペダルがある。ネックも2つあるし、スイッチも10億個ある。音楽の中で最も意識しなければならないのはそういう面だ。演奏は心から生まれるものだけど、そのためには意識的な思考が必要なんだ」

楽曲とソロに対するアプローチは変えているのでしょうか?
「曲の構成はほとんど変わらない。でも、ジャムになると、意識的に違うものにしようとするんだ。例えば、昨夜は高い位置からソロを始めたと記憶していたら、次の晩は低い位置から始める。前の晩にすごく良いものをやったとしたら難しいよ。”最高だった、もう一回やってみよう” と思うのは簡単だ。でも僕はその逆をやるようにしている。ひどいソロを弾くかもしれないけれど、ゼロから即興で始めたほうがいい。即興演奏をしていると、そういうこともある。でも同時に、それは必要なことなんだ。次の夜には、そのおかげで素晴らしい演奏になっているかもしれないからね。知っていることを演奏して成功するよりも、挑戦して失敗する方がずっといい」
CONSIDER THE SOURCE の音楽は世界中の多様な聴衆に届くはずです。
「ボーカルなしの長い曲を変拍子でクレイジーに演奏するんだ。僕たちのやることはすべて、新しいバンドを目指す人にするアドバイスとは正反対。その点、僕たちはちょっと頭が固いけど、自分たちのやっていることは多くの人に届く可能性があると本当に信じている。他の国に行って、あまり関係がないかもしれない他の国の音楽を演奏すれば、きっと気に入ってもらえると信じている。
初めて海外に行ったときのことを覚えている。イスラエルとトルコに行ったんだけど、そのときは外交問題で揉めた直後だった。イスラエルで、トルコでライブをすると発表したんだ。彼らはブーイングを浴びせたが、その後トルコの曲を演奏したら、彼らは熱狂した。そしてトルコに行って、イスラエルから来たと言ったんだ。ブーイングだった。それからクレズマーの曲を演奏したら、みんな大喜びだった。みんなが音楽を愛してくれた。そういうものなんだ。僕らの観客は老人、若者、いろんな人種、メタル・ヘッド、ジャム・キャットなど、超混ざり合っている。それを見るのが本当にうれしいんだよ」


参考文献: GUITAR WORLD:Gabriel Akhmad Marin: “I don’t play many chords. I’m more of a melodic single-note player, and the fretless guitar is a great instrument for that”

PREMIER GUITAR:Tao Guitar: Gabriel Marin