“Just As Dream Theater Layers Contrasting Musical Ideas To Build Tension And Release, I Often Blend Jazz Fusion With Cinematic Storytelling, As Seen In My Reinterpretation Of Merry-Go-Round of Life.”
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ANDREW PATUASIC OF CYBER BAND !!
“My Dad Advised Us To Learn Tom Sawyer And YYZ by Rush If We Wanted To Win. And Through Learning Both Of The Songs Made Us Love Prog Rock And Opened Our Eyes To a New World Of Music.”
DISC REVIEW “THROUGH THE PASSAGES OF TIME”
「僕たちがまだ初心者だった頃、アマチュアのバンド・バトルに参加しては負け続けていたんだよ。父は、コンテストに勝ちたければ RUSH の “Tom Sawyer” と “YYZ” を覚えろとアドバイスしてくれた。この2曲を覚えたことで、僕たちはプログが大好きになり、新しい音楽の世界に目を向けるようになったんだ」
DREAM THEATER や GOJIRA のグラミー獲得。Steven Wilson の全英チャート1位。もしかすると、インスタントな文化、音楽に対する反動として、プログレッシブ・ミュージックの復権、その狼煙があがったように見える昨今。とはいえ、結局そうした怪気炎も音楽に対価を支払い、アルバム単位で鑑賞する過去の風習が染み付いた40代以上の踏ん張りに支えられているようにも思えます。
実際、シーンを牽引し、ムーブメントを起こすのは若い力。そうした意味で、20代前半からなるフィリピンの至宝 CYBER BAND が注目を集め始めていることに、プログの民はどれほど勇気づけられることでしょう。彼らの “情熱” は、勝利と喜びの味を教えてくれた RUSH とプログに対する恩返し。だからこそ、信頼できるのです。しかも彼らが現れたのはプログ未開の地、フィリピン。メタル同様、第三世界から登場する才能の芽は、シーンの未来を明るく照らします。
「僕らはプログの神様、EMERSON LAKE & PALMER, RUSH, YES, KING CRIMSON, GENESIS から影響を受けている。”Through The Passages of Time” は、壮大なプログ・ロック・ソングへの愛から生まれたもので、自分たちで作ろうと決め、自分たちの限界に挑戦したんだ。テクノロジーの台頭によって、より多くのミュージシャンが革新的で新しいものを生み出すようになると思う。プログの神々が当時そうであったように、もっと多くのアーティストが自分たちの限界に挑戦するようになれば、21世紀のプログレッシブ・ロック・ミュージックはもっと新しい音楽的次元へと進化していくだろうな」
事実、23分のオープナー “Through the Passages of Time” は、音楽の喜びを教えてくれたプログの神々に対する愛情にあふれています。さながら目前でライブを見ているかのような生々しいプロダクションはまさに70年代の偉大なプログやクラウトロックを彷彿とさせます。当時、レコーディングは生のまま、ある意味不完全なものが多くありましたが、だからこそバンドの演奏の楽しさとアイデアの豊かさが際立った側面はあるはずです。このアルバムのサウンドも同じで、パワフルでありながら扇情的で、レトロでありながらモダン。彼らのスピリットを余すことなく伝えていきます。
レトロとモダンの鍔迫り合いは音楽やアイデアにも飛び火します。CYBER BANDは、ドラム、ギター、ベース、ボーカルというクラシックなラインナップを基本としながらも、ストリングス、ピアノ、管楽器、エレクトロニック・エレメントがサウンドを豊かにし、多彩な音のビッグバンを作り出すことでプログ宇宙を拡張していきます。ジャズからクラシックまで、あの頃の巨人と同様に音楽の冒険を楽しみながら、シームレスに調和を取りながら、自らの歩みを進めるのです。
“Epitaph” や “Red Barchetta” を想わせる名演が繰り広げられるアルバムの中で、CYBER BAND をさらに特別な存在へと押し上げるのが、インタビューイ Andrew Patuasic の素晴らしい歌声でしょう。Wetton, Lake, Mercury といった伝説が帰還したかのようにエモーショナルで心を揺さぶる伸びやかな Andrew の歌唱はロックの本質、感情の昂りをリスナーに思い起こさせてくれます。それにしても、Arnel Pineda といい、フィリピンの人は本当に歌心がありますね。
今回弊誌では、Andrew Patuasic にインタビューを行うことができました。「アニメが大好きなんだ!”坂道のアポロン” というアニメが大好きで、日本がいろいろな音楽にオープンであることも大好きなんだ。”賭ケグルイ”のサウンドトラックを聴いて衝撃を受け、日本がいかにあらゆる音楽を愛しているかということを思い知らされたよ」 鍵盤とベースを同時に操る眼鏡クィッの彼も秀逸。どうぞ!!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TONY THOMAS OF DAWN OF OUROBOROS !!
“We All Grew Up Near The Coastline Of California So The Pacific Ocean Has Been a Major Theme Across All Of Our Music. In The Case Of Bioluminescence, Chelsea Felt It Was a Theme She Found Beautiful, And Wanted To Express Her Admiration Of It Through The Music.”
DISC REVIEW “BIOLUMINESCENCE”
「僕たちはみんなカリフォルニアの海岸線の近くで育ったから、太平洋は僕たちの音楽すべてに共通する大きなテーマなんだ。”Bioluminescence” の場合は、Chealsea が美しいと感じたテーマで、音楽を通して生物発光の素晴らしさを表現したかった。主にアルバムのタイトル曲でね」
“Bioluminescence”(生物発光)とは、生物の体内で起こる化学反応が光を生み出すことを表します。これは、カリフォルニア州オークランドの DAWN OF OUROBOROS、その自らの尾を飲み込む円環の音蛇を実に的確に比喩した言葉なのかもしれません。様々に異なる曲作りの技法を組み合わせた彼らの虹色の輝き、それはまさにブラックメタルの生物発光。
重要なのは、彼らがそうしたインスピレーションを、自らが生まれ育った太平洋の海岸線、美しき海原と生命の神秘から受けていることでしょう。もちろん、今日ブラックメタルはその出自であるサタニズムの手を離れて、自然崇拝や少数派、弱者の代弁、スピリチュアリズムなど様々な分野に進出していますが、彼らも自らのアイデンティティを余すことなくブラックメタルに注いでいます。メタルにおける自己実現。それはきっと、とても尊いこと。
「作曲を始めるときは、いろいろなドラムのアイデアに合わせてギターを弾き、気に入ったものが出てくるまでその上で即興演奏するんだ。だから、インプロビゼーションを通して自然に生まれるものなんだよ。でも、僕たちのサウンドが人々の心に響くのは、イントロ部分の Chelsea の歌のおかげだよ。彼女もそのボーカルの多くを即興で歌うので、曲に自然なジャズ・フィーリングが生まれたんだ」
そうして唯一無二の方法で育まれた DAWN OF OUROBOROS の音楽は、当然ながら他のブラックメタルとは一線を画しています。現代的なブラックメタルとデスメタルが巧みに混ざり合う “Bioluminescence” の世界には、さながら深海を探索するようなポスト/プログのアトモスフィアが漂います。発光生物の多くが海に生息しているように、DAWN OF OUROBOROS の音色は明らかに水中のイメージを想起させ、ボーカルとギターのメロディーにはオワンクラゲのごとくみずみずしき浮遊感が存在します。
一方で、リズム・セクションが津波のようなシンセ・ラインとともに脈動し、激しいうなり声や叫び声が大空から轟いてくることもあり、この太平洋の神秘と荒波の二律背反こそがウロボロスの夜明けを端的に表しているに違いありません。
「僕たちは自分たちが好きな音楽を作ること以外を目指したことはなかったから、他のバンドがよくやること、当たり前なことなんて考えたことはなかったんだ。それに、Chelsea の声はそれ自身で彼女がいる意味を物語っていると思うし、何より彼女はハーシュ・ヴォーカルもクリーン・ヴォーカルも、他のヴォーカリストよりもうまくこなせるんだ」
そうした DAWN OF OUROBOROS の両極性を増幅させるのが、Chelsea Murphy の多面的なボーカルでしょう。ドリーミーな歌声と生々しい叫び声を瞬時に切り替える彼女の類まれな能力は、ROLO TOMASSI の Eva Korman を想わせるほどに魅力的。
“Slipping Burgundy” ではスムースでジャジーに、”Fragile Tranquility” では荒く、ほとんど懇願するようなトーンでリスナーの感情を刺激します。 先程までラウンジで歌声を響かせた歌姫が、まるで燃え盛るマグネシウムのまばゆい輝きのように耳を惹き、ハリケーンのように畏敬の念を抱かせるスクリームで世界を変える瞬間こそ圧巻。バスキングと威嚇を繰り返すウロボロスの円環はあまりにも斬新です。
今回弊誌では BOTANIST でも活躍する Tony Thomas にインタビューを行うことができました。「最近では、ALCEST や DEAFHEAVEN, 明日の叙景、LANTLOS, HERETOIR のようなポスト・ブラックメタルや、COMA CLUSTER VOID, ROLO TOMASSI, ULCERATE のようなプログレッシブ・メタルを探求しているね」 どうぞ!!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ANDY MARSHALL OF SAOR !!
“When People Listen To SAOR, I Want Them To Close Their Eyes And Be Transported Somewhere Else―Away From Their Worries, Even If Just For a Little While. Music Has That Power, And I Think That’s What Makes It So Special.”
DISC REVIEW “ADMIST THE RUINS”
「メタルには生の激しさがあり、伝統的な民族音楽と見事に調和するパワーがある。民族音楽は魂に語りかけるもので、歴史や感情、土地との深いつながりを運んでくる。それとメタルのヘヴィネスとエネルギーとを組み合わせると、重厚で深い感動が生まれる。自然な融合だよ」
ブラックメタルが根付いた土地の文化や自然を愛する営みは、今やメタル世界において最も純粋さが感じられる尊い瞬間のひとつ。その老舗であり盟主、SAOR の中の人 Andy Marshall は世界屈指のフォーク/ブラックメタル・アーティストであり、スコットランドの計り知れない美しさと民俗文化に誰よりも思いを馳せ、愛情を注ぎながらその音楽を書いています。そう、ヘヴィ・メタルも伝統音楽も、魂に語りかける歴史と感情の音楽。だからこそ両者は、純粋に、そして外連見なく溶け合います。
「僕はいつもスコットランドの歴史に魅了されてきたんだ。”グレンコーの虐殺” は、僕たちの過去において最も暗く悲劇的な瞬間のひとつだった。僕は自分の音楽でスコットランドの歴史の異なる時代を探求していくのが好きなのだけど、当時は、この特殊なストーリーがとても心に響いたんだよね」
“Amidst the Ruins” “廃墟の中で” と題された SAOR 6枚目のアルバムは、ここ数作で少し霞んでいたスコットランドの自然、荒涼とした高地、艶やかな湖、霧に覆われた渓谷が再びまざまざと眼下に広がる作品に仕上がりました。壮大でプログレッシブ。伝統楽器とディストーションがドラマチックに勇躍する旋律の重厚舞踏。
ブラックメタルの激しさとケルト民謡のメロディーの壮大な融合はそうして、ハイランドの歴史に生命を吹き込んでいきます。 カレドニアの精神に導かれ、SAOR の音楽は故郷の古代の物語と響き合い、時を超えます。哀愁漂う廃墟と自然の中で SAOR の奏でる音魂は、人間の裏切りから森がささやく秘め事まで、時代を超越した風景と人類の業を風化した幽玄なる渓谷から蘇らせていくのです。
インタビューの中で Andy は、歳をとるにつれて政治に関心がなくなってきた、暴力や欺瞞が蔓延る暗い現代よりも自分の音楽に集中したいと語っています。実際、スコットランドの独立を願っていた以前よりも肩の力が抜けて、スコットランドの美点へとよりフォーカスした作品はそんな考え方の変化を反映しているようにも感じます。
ただし、そうした変化の中でも Andy は、荘厳にして深淵、一際悲哀を誘う “Glen of Sorrow” で “グレンコーの虐殺” を取りあげました。これは17世紀にイングランド政府が手引きして起こった、スコットランド、グレンコーの罪なき村人たちが殺戮された忌まわしき事件。この一件により、スコットランドとイングランドはより険悪な関係となり、その余韻は300年を経た今でも少なからず続いています。ハイランドの嘆きの谷。そこに巣食う亡霊は今の世界を見て何を思うのでしょうか?きっと、Andy Marshall はそんな問いかけをこの美しくも悲しい暗がりで世界に発しているのではないでしょうか?
今回弊誌では、Andy Marshall にインタビューを行うことができました。
「僕はメタルだけじゃなく、すべての音楽は、ある意味で逃避場所になりうると思う。人々がSAORを聴くとき、目を閉じてどこか他の場所へ…ほんの少しの間でも悩みから遠ざかってほしい。音楽にはそういう力がある。それが音楽を特別なものにしていると思う」それでも、私たちにはヘヴィ・メタルがある。二度目の登場。 どうぞ!!
“We Had This Inspiration- What If All These Master Composers Were Alive Today, Having Access To The Technology And All The Musical Capacity Of Everything We Have Today, How Would It Sound?”
DISC REVIEW “ON SHOULDERS OF GIANTS”
「もし、現代音楽の巨匠、作曲家たちが今に生きていて、現代のテクノロジーとあらゆる音楽的能力を利用できるとしたら、どんなサウンドになるだろうか?それは素晴らしい創造的な挑戦であり、僕たちにインスピレーションを与えてくれる音楽の巨匠たちに謙虚な敬意を払う機会でもあったんだ」
ヘヴィ・メタルとクラシック音楽は、RAINBOW, SCORPIONS や Yngwie Malmsteen が証明するように、太古の昔から美しきアマルガムを演じてきました。荘厳かつ影のあるネオ・クラシカルな旋律と、メタルのダークな重さは実に相性が良く、そのマリアージュは今やメタルの顔と言っても過言ではないでしょう。
一方で、アヴァンギャルドかつ多様な20世紀以降のクラシック、現代音楽とメタルの融合はあまり進んでこなかったというのが実情でしょう。もちろん、例えば SYMPHONY X のように現代音楽まで踏み込んで咀嚼するバンドは少なからず存在しますが、それ相応の音楽知識と好奇心、挑戦心を兼ね備えたアーティストは決して多くはないのです。SEVENTH STATION はそんな状況に風穴を開けていきます。
「DREAM THEATER と一緒にステージに立つという生涯の夢が、Jordan とのつながりの直後、このレコードで実現した。僕の音楽的マインドを解放してくれた最も影響力のあるヒーローたちと一緒に演奏するという信じられないような特権を得たし、このクレイジーな夢に50人もの才能あるバークリーの友人たちを招待することができた。DREAM THEATER のライブ・レコーディングに指揮者兼アレンジャーとして参加したことは、今でも思い出すとゾクゾクする」
そうした前代未聞を実現したのは、労力と時間をかけた学びの力でした。SEVENTH STATION は、スロベニア、トルコ、イスラエルを拠点とする多国籍プログレッシブ・エクスペリメンタル・メタル・バンド。エルサレムの音楽アカデミーとボストンのバークリー音楽大学の間で結成された彼らの “学びの力” “学びへの意欲” は多くの音楽家を凌駕しています。だからこそ、鍵盤奏者でプログラマーの Eren Başbuğ はあの Jordan Rudess の愛弟子となることができました。DREAM THEATER のオーケストレーションも担当。そうして彼らは常に高い到達点を目指し、感情的に複雑で巧みな芸術を追求し、アルバムごとにプログレッシブ・ミュージックがあるべきビジョンに向かって前進しているのです。
「美的にも芸術的にも、20世紀初頭に憧れがあるのは間違いない。テクノロジーが未熟だった時代にね。現代人がいつでも誰でもすぐに情報にアクセスできるようになったことで、多くの謎や心の余裕が失われてしまった。そのミステリーとマインドフルネスには、世界と互いについて常に好奇心を持ち、夢を見続けるという、人と人との表現とつながりという意味があった」
そんなSEVENTH STATION が理想とするのが、まだテクノロジーが未熟で、だからこそそこに謎や驚き、意外性が存在した20世紀初頭。ストラヴィンスキー、ショスタコーヴィチ、ヴォーン・ウィリアムズにモノトーンの無声映画。彼らはそうした古き良き時代にあった驚き、不確実性、不調和、シュールレアリズム、そして実験精神をヘヴィ・メタルで見事現代に甦らせました。木琴も彼らの手にかかれば立派なメタル楽器。異端児や歌舞伎者の魂は、決して一朝一夕、インスタントに貫くことなどできないのです。
今回弊誌では、SEVENTH STATION にインタビューを行うことができました。
「”Nagasaki Kisses” は、ラルフ・ヴォーン・ウィリアムズの交響曲第6番の第1楽章を僕たちが再構築したもの。多くの学者やリスナーは、ヴォーン・ウィリアムズの交響曲第6番、特にその第1楽章は、第二次世界大戦の暗い感情の余波を反映していると推測しているんだ。ヴォーン・ウィリアムズが交響曲第6番を作曲したのは戦後の数年間で、世界中が原爆戦争の悲惨な結末と、紛争が残した深い傷跡と格闘していた時期だった。暗く、陰鬱で、時に不穏な雰囲気を持つこの交響曲の陰鬱な曲調は、この破滅的な出来事から生じた「死」「絶望」「喪失」の感情と一致しているよ」 どうぞ!!
Dmitri Alperovich – Electric and Acoustic Guitars
Eren Başbuğ – Keyboards, Editing, Programming
Davidavi (Vidi) Dolev – Vocals [2, 4, 5]
Alexy Polyanski – Bass Guitars
Grega Plamberger – Drums, Marimba [3], Percussion