NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CHANGELING : CHANGELING】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TOM “FOUNTAINHEAD” GELDSCHLÄGER OF CHANGELING !!

“Hans Zimmer Famously Said That His Music Is Not Original, But It Is The Sum-total Of All The Music That He’s Consumed In His Life – And That Is Also True For Me.”

DISC REVIEW “CHANGELING”

「Hans Zimmer の有名な言葉に、”自分の音楽はオリジナルなものではなく、人生で消費してきた音楽の総体である” というものがある。そしてその言葉は、僕にとっても真実なんだ。僕は若い頃からオーケストラ音楽に興味があり、10代で初めてレコーディングしたときから、さまざまな種類の楽器を重ねたりオーケストレーションしたりすることで、ロックバンドのサウンドを超えることを試みていた。まだ10代の頃に書いた曲を収録した僕の最初のソロ・アルバムでさえ、オーケストラ・パートや世界中のパーカッション・サウンドがあり、さまざまなジャンルや音楽の伝統から影響を受けている。それが僕の頭の中の音楽の聴こえ方なんだと思う」
“モダン・メタルの歴史上最高傑作のひとつ”。AMOGH SYMPHONY で共闘した Vishal J Singh は、戦友 Tom “Fountainhead” Geldschläger の新たな旅路をこう称賛しました。その言葉は決して大げさなものではありません。長年、艱難辛苦に耐え抜いたフレットレス・モンスターは、これまでの人生と音楽体験をすべて注ぎ込み、モダン=多様を完璧なまでに体現しためくるめくメタル・アートを遂に完成させたのです。
「メディアだけでなくギター業界も、僕のプロとしての全生涯を通じて僕の作品をほとんど無視してきたからね。そしてもちろん、世界各国のアルバム・チャートにランクインした “Akroasis” を通して、ようやく世界中の聴衆に僕の作品を聴いてもらえたというのに、OBSCURA のバンド・リーダーによって、”Tom のパートを再録音した”、”アルバムにはフレットレス・ギターがない”、”Tom はスタジオでギターのチューニングもできない” と嘘の中傷キャンペーンを展開されたときがその最たるものだったね。それだけでなく、僕のビデオはほとんど削除され、僕のソーシャルメディア・ページは何度もハッキングされ、いじめられたり、せっかく僕の活動に興味を持ってくれていたオーディエンスから切り離されたりするケースもたくさんあった。だから、そうした僕の旅路が “Changeling” でやっとメディアの注目を得ただけでね。このアルバムを聴いて、斬新だと思われるのはよくわかるけど、実は僕はもう20年くらいフレットレスでメタルやそれに関連するスタイルを演奏してきたんだ」
Fountainhead が正当な評価を得るのにここまで時間がかかったのは、あまりに遅すぎたとしか言いようがありません。そして皮肉なことに、その評価の妨げとなっていたのは他でもない、彼を世に送り出した OBSCURA の “Akroasis” だったのです。
実際、Fountainhead は OBSCURA の最も野心的な作品となった “Akroasis” の源泉でした。15分の “Weltseele” では東洋の影響と弦楽五重奏を加え、魅惑の実験的スタイルでアルバムを締めくくるなど Fountainhead の貢献、その大きさは誰の目にも明らかであったにもかかわらず、近年よりその人間性が疑問視される OBSCURA の首領 Steffen Kummerer によって彼の存在は抹殺されてしまったのです。しかし豊かな才能は決していつまでも草庵で燻るべきではありません。遂に臥薪嘗胆が報われる日が訪れたのです。まさにメタルの回復力。
「フレットレス・ギターの長所と短所だけど、普通のギターではできないことを実現してくれる。微分音、グリッサンド、ハーモニクスをスライドさせたり、指板を縦よりも横に動けたり…本当にとても楽しいんだ。ただし、コードとなるとできることには限界があって、高音域でのサスティーン、演奏性にも限界がある。また、僕がよく使うメタル・フィンガーボードとブラス・ピックを使っても、ハイエンドを出すには限界があるんだ。だから、”フレットのない普通のギター” ではなく、”ユニークな目的&シチュエーションのためのユニークな楽器” としてアプローチするのが一番効果的なんだよね」
まずこの作品を特別なものにしているのが、Fountainhead のトレードマークであるフレットレス・ギターでしょう。フレットのない耳が頼りの弦楽器は、当然その習熟により大きな労力と鍛錬を必要としますが、あの Bumblefoot に薫陶を受けた Fountainhead にとってこの楽器はむしろ水を得た魚。輝くメタル・フィンガーボードで、この音楽にとって異質な夢幻の世界をフレットレス・ベースと共に紡ぎ上げていきます。
「アルバムのオーケストラ・パートの99%は本物の楽器なんだ。そう、それはとても大変で長いプロセスだった。既存のオーケストラと協力して、大きな部屋ですべてを生録音する手段がなかったからだ。 その代わり、数年かけていろいろな楽器やラインをいろいろな場所で録音した。そのために、さまざまなプレイヤーを起用する必要があったんだ。このアルバムのコンセプトのひとつは、曲ごとにまったく異なる形のオーケストレーションにすることだったから」
とはいえ、フレットレスの異端でさえこの作品にとっては飾りのひとつに過ぎません。ALKALOID, FEAR FACTORY, VIPASSI, DEATH, CYNIC といった強力なメンバーを礎に、混成合唱から、チェロ、フルート、ホーン、ピアノ、チューバ、ヴァイオリン、ヴィオラなど、あらゆる楽器でデザインされたテクニカル・デスメタルの宮殿は、ジャズ・フュージョン、プログレッシブ・ロック、ワールドミュージックを融合してまだ見ぬメタル景色を映し出していきます。アルバムを通して何度も登場し、クライマックスで花開くモチーフの成長も見事。そして、野心という実験音楽における諸刃の剣をしっかりと制御し、地に足のついたメタル・アルバムとして完成させたバランス感覚もまた見事。
今回弊誌では、Tom “Fountainhead” Geldschläger にインタビューを行うことができました。「”Changeling” には日本文化から直接影響を受けた曲が1曲あってね。”Abdication” なんだけどこの曲は、僕が最も影響を受けた音楽家の一人である久石譲の和声言語とオーケストレーション・スタイルを取り入れたものなんだ」これまで何度も弊誌に登場してくれている Morean の声も素晴らしいですね。どうぞ!!

CHANGELING “CHANGELING” : 10/10

INTERVIEW WITH TOM “FOUNTAINHEAD” GELDSCHLÄGER

Q1: First of all, what kind of music did you grow up listening to?

【FOUNTAINHEAD】: My dad was in a blues-rock band in the 70s and 80s, so I grew up surrounded by the music he and his friends were listening to: blues, rock, pop and quite a bit of progressive rock. As a teenager, I discovered heavy metal and brought that into the household – so as early as age 13-16, I was listening to Dream Theater & Iron Maiden but also Death & Cynic. But I’ve also always had a knack for anything that was avant-garde and “different” and even in my teens I was interested in the methods of composers like Xenakis, industrial music like Merzbow, or free-jazz like John Zorn.

Q1: 本誌初登場です!ますは、あなたの音楽的なバックグラウンドからお話ししていただけますか?

【FOUNTAINHEAD】: 父は70年代から80年代にかけてブルース・ロック・バンドをやっていたので、僕は父とその友人たちが聴いていた音楽に囲まれて育ったんだ。
ブルース、ロック、ポップス、そしてかなりのプログレッシブ・ロックがいつも周りにあったよ。 それからティーンエイジャーの頃、僕はヘヴィ・メタルに出会い、それを家に持ち込んだんだ。
13~16歳の頃には、DREAM THEATER や IRON MAIDEN はもちろん、DEATH や CYNIC も聴いていたね。でも、アヴァンギャルドで “異質 “なものにはいつも敏感で、10代の頃から Xenakis のような作曲家の手法や、Merzbow のようなインダストリアル・ミュージック、John Zorn のようなフリー・ジャズにも興味を持っていたよ。

Q2: What inspired you to start playing guitar? Who were your heroes at the time?

【FOUNTAINHEAD】: When I first started playing music, it was more my parents’ decision than my own and they had me take classical guitar lessons for a few years. But as these things tend to go, I got bored of having to practice every day and only learn music that I had no personal interest in at the time – and so I quit. But when I was around 12, a friend of my dad brought this mysterious looking CD into the house that I found myself magically drawn to – it was Joe Satriani’s “Time Machine” album. And I remember sneaking into the living room to listen to it, not being mindful of what the volume was, and when the first song came on, it literally blew my hair back because it was so loud. And that was the moment, when I suddenly knew: I want to play electric guitar and do THAT! Through Satriani, I then also got into Steve Vai, Eric Johnson (the first “G3 live” album came out around that time), Marty Friedman, Jason Becker & all the shrapnel-era shredders….but also David Gilmour, Jeff Beck, Terje Rypdal & Robert Fripp.

Q2: ギターを始めたきっかけは何だったんですか?当時のヒーローは誰ですか?

【FOUNTAINHEAD】: 僕が最初に音楽を始めたとき、それは自分自身の決断というよりも両親の決断だったね。クラシック・ギターのレッスンを数年間受けさせてくれたから。ただ、こういうことはよくあることだけど、毎日練習することに飽きたし、当時は個人的に興味のない音楽しか習わなかったから、一度辞めてしまったんだ。 でも、12歳くらいのとき、父の友人が家に持ってきた不思議なCDに魔法のように惹かれて、Joe Satriani の “Time Machine” というアルバムを聴いたんだ。 そして、こっそりリビングルームに忍び込んで聴いたことを覚えている。でもボリュームを気にしていなかったから、最初の曲がかかると超ラウドで度肝を抜かれたよ!そしてその瞬間、突然確信したんだ…エレキギターを弾きたい、これがやりたかったことだ!ってね。
Satriani を通して、Steve Vai, Eric Johnson, (その頃、最初の “G3” ライブ・アルバムが出た)、それから Marty Friedman, Jason Becker といったシュラプネルのシュレッダーにもハマっていったね。同時に、David Gilmour, Jeff Beck, Terje Rypdal, Robert Fripp にもね。

Q3: Not a few people in the bass world use fretless, but very few people use fretless on guitar. But, It’s a great way to express your personality! What made you decide to use a fretless? What are the pros and cons of this instrument?

【FOUNTAINHEAD】: It was more or less a “happy accident” that started my fretless journey: I had been playing my a few local shows with my first ever band – I must have been 18 or 19 – and my only (and very cheap) guitar at the time broke during a show. I had been abusing the whammy-bar so much that it ripped right out of the guitar’s body. I couldn’t just buy another guitar right away because my family was pretty poor, but what I could do was to bring it to a guy in my little seaside-town in the north-east of Germany that I knew who fixed and customized instruments. And at the time, I had just discovered a guitar player called Bumblefoot (a.k.a. Ron Thal), who had just made his very first recordings with a fretless guitar, which had left a huge impression on me. So when I brought the guitar to my friend and asked him to fix the bridge, I also asked him to make it fretless. And as they say: the rest is history.
As for pros & cons of the instrument… it does enable me to do things that I can’t do on a regular guitar, of course – the microtonality, the glissandi, sliding harmonics around, moving more horizontally than vertically on the fretboard… all of that is so much fun. However, there’s a limit to what you can do when it comes to chords, a limit to sustain and playability in the upper register, and a limit to the amount of high-end it can produce, even with the metal fingerboards and brass picks that I tend to use. So it reallyworks best if you approach as a unique instrument for unique purposes & situations, rather than “a regular guitar without frets”.

Q3: ベースの世界でフレットレスを使う人は少なくありませんが、ギターでフレットレスを使う人はほとんどいません。しかしあなたのフレットレス・ギターは、あなたの個性を表現する最高の方法ですね! なぜフレットレスを使おうと思ったのですか? この楽器の長所と短所はどこでしょう?

【FOUNTAINHEAD】: 僕のフレットレス・ジャーニーの始まりは、多かれ少なかれ “幸福な事故” だった。18歳か19歳だったはずだけど、初めてのバンドで何度か地元のライヴに出演したことがあってね。そのとき唯一持っていた(しかもとても安物だった)ギターが、ライヴ中に壊れてしまったんだ。ワミー・バーを酷使しすぎて、ギターのボディから裂けてしまったんだ。僕の家はかなり貧しかったから、すぐに別のギターを買うことはできなくて、僕にできることは、ドイツ北東部の小さな海辺の町で楽器の修理やカスタマイズをしている知り合いのところに持っていくことだけだった。
当時、僕は Bumblefoot(Ron Thal)というギタリストを知ったばかりで、彼はフレットレス・ギターで初めてのレコーディングを行ったばかりだった。その音楽が僕に大きなインパクトを与えていた。だから、そのギターを友人のところに持っていってブリッジの修理を頼んだとき、同時にそのギターをフレットレスにしてくれと頼んだんだ。そして、諺にもあるように、後は歴史が語る通りさ。
この楽器の長所と短所だけど、普通のギターではできないことを実現してくれる。微分音、グリッサンド、ハーモニクスをスライドさせたり、指板を縦よりも横に動けたり…本当にとても楽しいんだ。ただし、コードとなるとできることには限界があって、高音域でのサスティーン、演奏性にも限界がある。また、僕がよく使うメタル・フィンガーボードとブラス・ピックを使っても、ハイエンドを出すには限界があるんだ。だから、”フレットのない普通のギター” ではなく、”ユニークな目的&シチュエーションのためのユニークな楽器” としてアプローチするのが一番効果的なんだよね。

Q4: What is great about Changeling is that it is a metal band where not only guitars (Even though you also uses a fretted guitar) but also basses are fretless. This is truly unprecedented. Can you tell us about the possibility of metal without frets on all stringed instruments?

【FOUNTAINHEAD】: Well, actually it’s not unprecedented. I did exactly that on the Obscura “Akroasis” album back in 2016 – and even before that my first solo album “Fear Is The Enemy” in 2012 had both fretless guitars and fretless bass at the same time. It’s just that the media as well as the guitar industry has mostly ignored my work for my entire professional life. And of course, the lowest point of that was when I finally a global audience did hear my work through “Akroasis” – which entered the album charts in many countries around the world – only to having to battle a smear-campaign against me by the bandleader of Obscura, who claimed to have re-recorded my parts, that there was no fretless guitar on the album and that I “couldn’t even tune my guitar in the studio”. Not only that, but most of my videos got deleted, my social media pages got hacked multiple times and many more cases of being bullied and cut off from the audience that was interested in what I do. So you see, it has been quite the journey to now finally get some press attention with “Changeling” – I totally understand that people hear this album and think that this all very novel, but the truth is that I have been playing metal and related styles on fretless instruments for about 2 decades now.
But that being said, what you have to consider about playing metal on fretless instruments is that this is the genre of power-chords and distortion. And to properly intonate a powerchord with heavy distortion on a fretless guitar takes a lot of work and dedication, so I understand why it’s not a common thing. However, I do think that it opens up a ton of interesting possibilities for cool dissonances and new idea & sounds.

Q4: CHANGELING が素晴らしいのは、ギターだけでなく(普通のギターも使用はしますが)ベースもフレットレスというメタル・バンドであるところですよ。これは本当に前例がないですよね。 すべての弦楽器にフレットがないメタルの可能性について教えていただけますか?

【FOUNTAINHEAD】: 前例がないわけではないよ。2016年にリリースした OBSCURA のアルバム “Akroasis” がまさにそうだったし、それ以前にも2012年にリリースした僕のファースト・ソロ・アルバム “Fear Is The Enemy” ではフレットレス・ギターとフレットレス・ベースが同時に演奏されていた。
ただ、メディアだけでなくギター業界も、僕のプロとしての全生涯を通じて僕の作品をほとんど無視してきたからね。そしてもちろん、世界各国のアルバム・チャートにランクインした “Akroasis” を通して、ようやく世界中の聴衆に僕の作品を聴いてもらえたというのに、OBSCURA のバンド・リーダーによって、”Tom のパートを再録音した”、”アルバムにはフレットレス・ギターがない”、”Tom はスタジオでギターのチューニングもできない” と嘘の中傷キャンペーンを展開されたときがその最たるものだったね。それだけでなく、僕のビデオはほとんど削除され、僕のソーシャルメディア・ページは何度もハッキングされ、いじめられたり、せっかく僕の活動に興味を持ってくれていたオーディエンスから切り離されたりするケースもたくさんあった。だから、そうした僕の旅路が “Changeling” でやっとメディアの注目を得ただけでね。このアルバムを聴いて、斬新だと思われるのはよくわかるけど、実は僕はもう20年くらいフレットレスでメタルやそれに関連するスタイルを演奏してきたんだ。
とはいえ、フレットレスの楽器でメタルを演奏する際に考えなければならないのは、このジャンルの基本がパワー・コードとディストーションのジャンルだということだよ。そして、フレットレス・ギターでパワーコードとヘヴィなディストーションを適切にイントネートするには、かなりの労力と献身的な姿勢が必要で、だからこそこの楽器が一般的でない理由も理解できる。しかし、クールな不協和音や新しいアイデア&サウンド、そのための興味深い可能性がたくさん広がるのも確かなんだ。

Q5: What’s even more amazing about Changeling is that the various instruments participate in a realistic way, not programming, as if it were an orchestra! It is truly a piece of metal history! It must have been really hard to complete such a project, why did you gather so many instruments and their players?

【FOUNTAINHEAD】: Aw, thank you so much for saying that! Yes, 99% of the orchestral parts on the album are real instruments. And yes, it was a very hard and lengthy process, as I didn’t have the means to work with an existing orchestra and record it all live in a big room. Instead, I recorded all the different instruments and lines in many different places over the course of several years – which then made it necessary to bring in many different players, as one of the concepts for this album was also to have completely different forms of orchestration on each song.
As for “why”….well, why not? Hans Zimmer famously said that his music is not original, but it is the sum-total of all the music that he’s consumed in his life – and that is also true for me. I’ve been interested in orchestral music since a young age and even on my very first recordings as a teenager I was already experimenting with going beyond the sound of a rock band by layering and orchestrating many different types of instruments. Even my first solo album, which contains music that I wrote when I was still in my teens, has orchestral parts, percussion sounds from around the world and influences from many different genres and musical traditions. That’s really just the way that I hear music in my head, I guess.

Q5: “Changeling” でさらに素晴らしいのは、プログラミングではなく、さまざまな楽器がオーケストラのようにリアルに参加していることですよ! まさにメタルの歴史に残りますね! こうしたプロジェクトを完成させるのは本当に大変だったと思いますが、なぜこれほど多くの楽器とその奏者を集めたのですか?

【FOUNTAINHEAD】: そう言ってくれてありがとう!そう、アルバムのオーケストラ・パートの99%は本物の楽器なんだ。そう、それはとても大変で長いプロセスだった。既存のオーケストラと協力して、大きな部屋ですべてを生録音する手段がなかったからだ。 その代わり、数年かけていろいろな楽器やラインをいろいろな場所で録音した。そのために、さまざまなプレイヤーを起用する必要があったんだ。このアルバムのコンセプトのひとつは、曲ごとにまったく異なる形のオーケストレーションにすることだったから。
“なぜ?” かというと……そう、なぜか? Hans Zimmer の有名な言葉に、”自分の音楽はオリジナルなものではなく、人生で消費してきた音楽の総体である” というものがある。そしてその言葉は、僕にとっても真実なんだ。僕は若い頃からオーケストラ音楽に興味があり、10代で初めてレコーディングしたときから、さまざまな種類の楽器を重ねたりオーケストレーションしたりすることで、ロックバンドのサウンドを超えることを試みていた。まだ10代の頃に書いた曲を収録した僕の最初のソロ・アルバムでさえ、オーケストラ・パートや世界中のパーカッション・サウンドがあり、さまざまなジャンルや音楽の伝統から影響を受けている。それが僕の頭の中の音楽の聴こえ方なんだと思う。

Q6: You also have guest appearances by Jason Gobel and Andy Laroque, big names from Cynic and Death who created the very progressive death metal! Are you inspired by the creativity of that era?

【FOUNTAINHEAD】: Yes, very much so – both of these bands blew my mind as a teenager and have continued to inspire me ever since then. Both bands have released groundbreaking music that changed the course of metal as a whole – and have continued to evolve as time went on. That blueprint is something I’ve tried to honor and live up to since day one.

Q6: Jason Gobel や Andy Laroque といった大物もゲスト参加していますね。彼らは CYNIC と DEATH で、非常にプログレッシブなデスメタルを作り上げました! やはり、あの時代のクリエイティビティにインスパイアされているのですか?

【FOUNTAINHNAD】: この2つのバンドは、10代の僕の度肝を抜き、それ以来ずっと僕にインスピレーションを与え続けている。どちらのバンドも、メタル全体の流れを変えるような画期的な音楽をリリースし、時が経つにつれて進化し続けてきた。その青写真は、僕が最初から尊重し、生かそうとしてきたものだよ。

Q7: Can you tell us about the story, concept, and message being told in this epic album?

【FOUNTAINHEAD】: The main musical concept of “Changeling” was to build a musical journey from the past of the genre to the future. From the 4 chapters of the album, the first one is dedicated to paying tribute to the past – to my own past contributions to the genre in the form of mainly “Akroasis”, but also to the bands that inspired me the most in the context of (progressive) death metal. From chapter 2 onward, we then go more and more into what I can offer as a new vision for the genre, with new sounds, new techniques, new song- structures, new combinations of sounds. Then there’s smaller concepts, like having a rock-solid “core band” for all the main songs, but different kinds of orchestration on every piece of music – until they all come together on the final song “Anathema”.
Lyrically, it details a very intense psychedelic experience from a first-person perspective Over the different songs, the protagonist is going through many different stages of the trip, all the way to ego-death and complete dissolution of physical reality in “Abyss”.
From that point on, the protagonist re-emerges with a fresh new perspective and a broadened sense of what “reality” means.

Q7: この壮大なアルバムで語られるストーリー、コンセプト、メッセージについて教えていただけますか?

【FOUNTAINHEAD】: “Changeling” の主な音楽的コンセプトは、このジャンルの過去から未来への音楽の旅を構築することだった。このアルバムの4つの章から、最初の章は過去へのオマージュに捧げられている。主に “Akroasis” という形でこのジャンルに貢献した僕自身へのオマージュであると同時に、(プログレッシブ)デス・メタルの文脈で僕に最もインスピレーションを与えてくれたバンドへのオマージュでもある。
第2章以降では、新しいサウンド、新しいテクニック、新しい曲の構成、新しいサウンドの組み合わせなど、このジャンルの新しいビジョンとして僕が提供できるものにどんどん踏み込んでいく。例えば、すべての主要な曲で揺るぎない “核となるバンド” を起用し、すべての曲で異なる種類のオーケストレーションを使用する、といったような小さなコンセプトがあり、最終曲の “Anathema” でそのすべてが集約されるんだ。
リリックでは、一人称の視点から非常に強烈なサイケデリック体験を詳述している。さまざまな曲の中で、主人公はトリップのさまざまな段階を経て、”Abyss” では自我の死と物理的現実の完全な溶解に至る。
その時点から、主人公は新鮮な新しい視点と、”現実” が意味するものについての拡大された感覚をもって再登場するんだ。

Q8: You have performed wonderfully in such prestigious bands as Pitts/Minnemann, Obscura, and Amogh Symphony. Which of your works are you especially proud of?

【FOUNTAINHEAD】: Oh, that’s a difficult question to answer, as I always try to give 120% effort with everything that I do. I think I would say that I’m the most proud of doing all of those things in the first place– coming up as a traumatized teenager and young man with with deep anxiety and confidence issues, later as an adult with 2 kids and a PTSD-diagnosis.
All of the works that you mentioned were very important to me, but what’s even more important is that I showed up and gave it my all every time, regardless of any insecurities and anxieties that were telling me “you can’t do this – you’ll never be good enough.”

Q8: あなたは Pitts/Minnemann, OBSCURA, AMOGH SYMPHONY など名だたるバンドでプレイしてきましたが、振り返って最も誇れる作品はどれでしょう?

【FOUNTAINHNAD】: ああ、答えるのが難しい質問だね。僕はいつも、自分のすることすべてに120%の力を尽くそうとしているからね。 まず誇れるのは、そうした作品をやり遂げたことだ。なぜなら、僕はトラウマを抱えたティーンエイジャー、深い不安と自信の問題を抱えた青年として育ち、その後、2人の子供を持つ大人になり、PTSDと診断された人間だから。
君が挙げたすべての作品は、僕にとってとても重要なものだった。しかし、それ以上に重要なのは、”君には無理だ” という不安や心配の心の声に打ち勝って、毎回全力を尽くしたことなんだ。

Q9: Dream Theater and Gojira began to win Grammy awards. In an age when listeners’ attention spans are so short and instant content is so easily consumed, why is music that is complex, long, and requires practice beginning to be reevaluated?

【FOUNTAINHEAD】: Hmm, I wish I had better answer for this, but as I never have had any mainstream success in my 2 decades in the music business, it would be dishonest of me to talk about how complex music like that has been gaining more of a platform – because, honestly, if it has, I’ve never felt part of that movement and never felt like I have personally profited from that so far.

Q9: DREAM THEATER や GOJIRA がグラミー賞を受賞し始めました。リスナーのアテンション・スパンがこれほど短く、インスタントなコンテンツが簡単に消費される時代に、複雑で長く、練習を必要とする音楽が再評価され始めているのはなぜだと思いますか?

【FOUNTAINHEAD】: うーん、これに対してもっといい答えがあればいいのだけど、僕は音楽業界で20年間、メインストリームで成功したことがないから、そのような複雑な音楽がより多くのプラットフォームを獲得していることについて話すのは不誠実だろう…正直なところ、もしそうだとしても、僕はそのような動きの一部を感じたことはないし、これまで個人的にそこから利益を得たと感じたこともないからね。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED FOUNTAINHEAD’S LIFE!!

Mike Oldfield “Ommadawn”

King Crimson “Discipline”

Devin Townsend “Ocean Machine”

Death “Symbolic”

Squarepusher “The Ultravisitor”

MESSAGE FOR JAPAN

Oh yes, I’ve been fascinated by and interested in japanese culture since I was a kid. Anime, manga & japanese movies were a big part of my formative years and I always dreamed of going to and performing in japan some day. Actually, there is one song on “Changeling” that takes a very direct influence from japanese culure: “Abdication”, which channels the harmonic language and orchestration style of Joe Hisaishi, who I consider to be one of my greatest musical influences.
Dear music fans of japan – thank you so much for giving “Changeling” a chance! And thank, Sin, for giving me this opportunity to engage with your audience! If anybody in Japan is willing to help bring me over for shows or master-classes in the future, I would be beyond grateful for that – I have been wanting to come to your fascinating country for my entire life and would love so much to finally get an opportunity to do so.

子供の頃から日本文化に魅了され、興味を持っていたんだ。 アニメや漫画、日本映画は僕の形成期の大部分を占めていたし、いつか日本に行って演奏するのが夢だった。 実際、”Changeling” には日本文化から直接影響を受けた曲が1曲あってね。”Abdication” なんだけどこの曲は、僕が最も影響を受けた音楽家の一人である久石譲の和声言語とオーケストレーション・スタイルを取り入れたものなんだ。
日本の音楽ファンのみんな、”Changeling” にチャンスを与えてくれて本当にありがとう! そして
Sin、日本のオーディエンスにリーチする機会を与えてくれてありがとう! もし日本の誰かが、将来僕をショーやマスタークラスで呼んでくれるとしたら、とてもありがたいことだよ。
日本という魅力的な国にずっと行きたいと思っていたので、ついにその機会を得られるとしたらとても嬉しいことだね。

TOM “FOUNTAINHEAD” GELDSCHLÄGER

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CHANGELING Bandcamp

SEASON OF MIST

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ANCIENT DEATH : EGO DISSOLUTION】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JERRY WITUNSKY OF ANCIENT DEATH !!

“Pink Floyd’s My Biggest Influence. I Picked Up a Guitar When I Was 4 Years Old Because Of David Gilmour From Watching Pink Floyd Live at Pompeii. So My Natural Style Is Just Things I Picked Up From Listening And Watching Him.”

DISC REVIEW “EGO DISSOLUTION”

「ATHEIST, CYNIC, DEATH…ANCIENT DEATH はこれらのバンドなしでは存在しなかっただろう。僕がそうした “グループ” を知ったのは、10歳か11歳の頃だった。当時クールだった “トレンド” の枠を超えて、より傷つきやすく内省的なところから曲を書くことで、個人として、ミュージシャンとして、自分らしくいられることを教えてくれたんだ。その体験は文字通り、僕の世界を変えた。僕は今年28歳になるけど、彼らは今でも当時と同じくらい僕にとって重要な存在だよ」
真の芸術は時の試練をものともせず、時代を超え、そして受け継がれる。メタルコアや Djent 直撃世代の Jerry Witunsky は、そのトレンド以上に探求すべきプログレッシブなデスメタルの審美と人間味に魅了され、情熱を注ぎ、ついには日本で愛するバンド ATHEIST の一員としてライブを行うという夢を叶えようとしています。その夢の実現のために大きな助けとなったのが、彼の世界観を体現した ANCIENT DEATH だったのです。
「”Ancient Death” という名前は僕らにとって実に意味があるんだ。それは、僕らの曲 “Voice Spores” の歌詞にある。ここで基本的に語っているのは、今は否定が否定を生み、それが僕たちを互いに分断しているということ。僕たちの見解では、否定性こそが人と人とのつながりにおける古き良き “古代の死” なんだよね」
憂鬱、悲しみ、心の平和、自己成長といったテーマを探求することで、ANCIENT DEATH は、人々がやがて自分自身にも他人にももっと優しく、寛容となり、共感できることを願っています。SNS では他者を否定し、断罪し、攻撃して溜飲をさげる行為が当たり前となった現代。彼らはそんな時代を古き良き “古代の死” と命名しました。デスメタル世界の “つながり” によって夢を叶えた Jerry は、心と魂のつながりの強さを信じています。つい最近、地球上で最も影響力のある人物が共感は “西洋文明の根本的な弱点” だと言及したばかりですが、だからこそ彼らのデスメタルはそうした合理主義に反旗を翻していきます。
「PINK FLOYD に一番影響を受けたっていうだけなんだ。彼らの “Live at Pompei” を見て、David Gilmour の影響で4歳のときにギターを手にしたんだからね。だから僕の自然なスタイルは、彼の演奏を聴いたり見たりして得たものなんだ。また、サウンドトラックの大ファンで、特に宮崎駿監督の映画は大好きで、1作を除いてすべて久石譲が手掛けているよね。僕にとって音楽とは、解放の場なんだ。誰かに何かを “感じさせて”、違う場所に連れて行く…それこそが美しいことだよ」
ANCIENT DEATH の音楽は、メタルを別次元に誘った80年代後半から90年代前半の、プログレッシブで実験的なデスメタルの鼓動を宿しています。しかし、オールドスクールなデスメタルに正直で真っ直ぐでありながらも、決して過去の焼き直しだけには終わりません。音楽を先に進めることこそ、彼らが先人から受け継ぐ美学。彼らがほんの数秒前まであった場所とは全く違う方向へと聴く者を連れて行くような、豊かなサウンドの雰囲気を作り出した時の驚きは、決してあの BLOOD INCANTATION に負けるとも劣らず。
90年代、DEATH や CYNIC が開拓したデスメタルの実験は、オフキルターなリズム、脈打つベースライン、幻覚的なギターの響きで、さながら THE DOORS や PINK FLOYD が見せる精神的な深みへと移行していきます。時折歌われるクリーンな祈りは、濃い瘴気の中で聴く者に手を差し伸べる静寂の声。
常に移り変わるムード、複雑なドラム・パターン、不可解な拍子記号がジグソーパズルのように組み合わさったアルバムは、それでも “Ego Dissolution” エゴを捨て去りすべてをアートとデスメタルのためにのみ捧げられています。だからこそ彼らは、ゴア描写や反宗教的な歌詞にこだわるのではなく、デスメタルらしい安っぽさや陳腐さを感じさせることもなく、私たちの感情の内面や魂の本質を探る、より深いトピックに踏み込んでいくことができたのです。
今回弊誌では、Jerry Witunsky にインタビューを行うことができました。「Rand Burkey は、僕にとってメタル界で最も影響を受けたギタリストだろう。彼のソロとメロディーは他のギタリストにはないものだった!14歳の頃、寝室で彼のパートをかき鳴らし、まるで自分が書いた曲のように人前で演奏することを夢見ていた僕が、実際にステージに立って彼らとまさに同じ曲を演奏しているなんて!デスメタル世界の心とつながりは、とてもパワフルなものだよね」 どうぞ!!

ANCIENT DEATH “EGO DISSOLUTION” : 10/10

INTERVIEW WITH JERRY WITUNSKY

Q1: First of all, what kind of music did you grow up listening to?

【JERRY】: I grew up in a very musically diverse home. Both of my parents were huge music heads. Some of my earliest memories are being in my parents car listening to Black Sabbath’s Sabotage and Pink Floyd’s Animals. My sister and I absolutely adored those records. They exposed us to everything; The Grateful Dead, Slayer, Rage Against the Machine, A Tribe Called Quest, Pantera, you name it. Because they both listened to metal it was fairly easy to get into even more extreme music at such a young age. I heard Evil Dead by Death when I was 10 and my mind completely shifted. I bought my first death metal cd when I was about 11 years old (Death’s The Sound of Perseverance). And it’s been all downhill from there!

Q1: 本誌初登場です!まずは、あなたの音楽的なバックグラウンドからお話ししていただけますか?

【JERRY】: 音楽的にとても多様な家庭で育ったよ。両親ともに大の音楽好きだった。一番古い記憶は、両親の車の中で BLACK SABBATH の “Sabotage” とPINK FLOYD の “Animals” を聴いていたことなんだから。
僕と妹は、そうしたレコードが大好きだった。僕はそうした作品を崇拝していたんだ。他には
GRATEFUL DEAD, SLAYER, RAGE AGAINST THE MACHINE, A TRIBE CALLED QUEST, PANTERA とかね。ふたりともメタルを聴いていたから、若くしてさらに過激な音楽にのめり込むのは簡単だった。
そうして10歳のときに DEATH の “Evil Dead” を聴いて、僕の心は完全に変わったんだ。11歳くらいの時に初めてデスメタルのCDを買ったよ。DEATH の “The Sound of Perseverance” だったね。それからはもう転がるようにのめり込んだよ!

Q2: How was Ancient Death formed? What is the meaning behind the band name?

【JERRY】: I formed Ancient Death with our bassist/vocalist Jasmine and guitarist Ray in 2019. Ray and I have been playing music together for almost 16 years now. We jammed with a few drummers until joining up with Derek in 2021 to record the Sacred Vessel EP. He was only initially going to be a session musician for that release but we had a chemistry like no other so he ended up staying permanently. I also want to give a giant shoutout to Jasmine who learned to play bass specifically for this band. To see her growth as a musician and individual in such a short time absolutely amazes me. The name came from a particular night after rehearsing back in 2019, we all were really happy about a tune we had just written and got extremely stoned at the beach. We were trying to describe what we had done and I think I said something along the lines of “It sounds like ancient fucking death metal”. Ancient Death does mean something to us though, which you can find in the lyrics for our song ‘Voice Spores’. Essentially how negativity begets negativity and that’s what divides us from one another. In our view negativity is the ‘Ancient Death’ of human connection.

Q2: ANCIENT DEATH はどのようにして結成されたのですか?このバンド名に込められた意味は何ですか?

【JERRY】: 僕は2019年にベーシスト兼ボーカルの Jasmine とギタリストの Ray と ANCIENT DEATH を結成したんだ。Ray と僕はもう16年近く一緒に音楽をやっているんだよ。2021年に “Sacred Vessel EP” をレコーディングするために Derek と合流するまで、何人かのドラマーとジャムっていたね。彼は当初、EPリリースのためのセッション・ミュージシャンとして参加する予定だったんだけど、僕たちには他にはないケミストリーがあったから、結局、永続的に参加してくれることになったんだ。また、このバンドのために急にベースを学んだ Jasmine にも大きなエールを送りたい。この短期間で彼女がミュージシャンとして、また個人として成長したのを見ると、本当に驚かされるよ。
バンド名の由来は、2019年にリハーサルを終えたある夜、みんなで作ったばかりの曲にすごく満足して、ビーチですごく酔っぱらったんだ。自分たちがやったことを説明しようとして、”古代のクソ・デスメタルのようだ” というようなことを言ったと思う。でも、”Ancient Death” という名前は僕らにとって実に意味があるんだ。それは、僕らの曲 “Voice Spores” の歌詞にある。ここで基本的に語っているのは、今は否定が否定を生み、それが僕たちを互いに分断しているということ。僕たちの見解では、否定性こそが人と人とのつながりにおける古き良き “古代の死” なんだよね。

Q3: Your music is great and very honest to the death metal of the late 80’s and early 90’s! But why were you drawn to old school death metal when modern metal like metalcore and Djent must have been popular in your generation?

【JERRY】: That type of music just never did it for us as kids. Derek is a bit older than the rest of us, he was 14 years old back in the early 90s already playing with death metal bands like Headrot. So I’d say core and all that was past his time. As for the rest of us, it just never had a grasp on us. No offense to bands in that genre, but we liked things more musical and diverse, with lyrics that just brought you to another world. As young kids we thought it was pretty weak compared to bands like Morbid Angel and Death. We wanted to go heavier, more technical, more progressive.

Q3: あなたの音楽は、80年代後半から90年代前半のデスメタルにとても正直です!ただあなたの世代ではメタルコアやジェントのようなモダン・メタルが流行っていたと思うのですが、なぜオールドスクールなデスメタルに惹かれたのですか?

【JERRY】: そういうタイプの音楽は、子供の頃の僕たちには合わなかったんだ。Derek は僕らより少し年上で、90年代初頭には14歳で、すでに HEADROT のようなデスメタル・バンドと一緒にプレイしていたんだ。だから、彼にとってコアな音楽はも世代が違うと思う。それ以外のメンバーに関しては、コア系が理解できなかったというのが本音だね。
そのジャンルのバンドに悪気はないんだけど、僕たちはもっと音楽的で多様性があって、歌詞も別世界に誘ってくれるようなものが好きだった。若い頃の僕たちは、MORBID ANGEL や DEATH のようなバンドと比べると、コア系のバンドはかなり “弱い” と思っていた。もっとヘヴィで、もっとテクニカルで、もっとプログレッシブなものを求めていたんだ。

Q4: Interestingly, your music is not just a rehash of the past, but a masterful fusion of death metal with the contemplative atmospheres of Pink Floyd. How did you come up with that idea?

【JERRY】: Honestly, I just write what I want to hear. Sometimes that’s ripping and brutal, sometimes it’s calm and beautiful. We never write and go “oh it needs to be this style here” or “let’s write this kind of part here”. I think we just jam out things and if it flows and feels natural then that’s the way it’s meant to be. Pink Floyd’s my biggest influence. I picked up a guitar when I was 4 years old because of David Gilmour from watching Pink Floyd Live at Pompeii. So my natural style is just things I picked up from listening and watching him. I’m also a huge fan of soundtrack music, specifically Joe Hisaishi who worked on all of Hayao Miyazaki’s movies with the exception of one. Music for me is a place of relefection. To make someone “feel” something and bring them to a different place, that’s a beautiful thing.

Q4: 興味深いことに、あなたの音楽は単なる過去の焼き直しではなく、デスメタルと PINK FLOYD の瞑想的な雰囲気を見事に融合させています。そうしたアイデアはどうやって思いついたのですか?

【JERRY】: 正直なところ、僕はただ自分が聴きたいものを書いているだけなんだ。それは時には破裂するようなブルータルなものだったり、穏やかで美しいものだったりする。”ああ、ここはこういうスタイルにしよう” とか “ここはこういうパートを書こう” なんて考えながら書くことはない。ただジャム・アウトして、それが自然な流れで感じられるなら、それがあるべき姿なんだと思う。
だから、PINK FLOYD に一番影響を受けたっていうだけなんだ。彼らの “Live at Pompei” を見て、David Gilmour の影響で4歳のときにギターを手にしたんだからね。だから僕の自然なスタイルは、彼の演奏を聴いたり見たりして得たものなんだ。また、サウンドトラックの大ファンで、特に宮崎駿監督の映画は大好きで、1作を除いてすべて久石譲が手掛けているよね。僕にとって音楽とは、解放の場なんだ。誰かに何かを “感じさせて”、違う場所に連れて行く…それこそが美しいことだよ。

Q5: Speaking of death metal that respects Pink Floyd, Blood Incantation has had great success. What do they mean to you?

【JERRY】: Blood Incantation are great friends of ours and they are absolutely killing it right now! Ray and I played a show in our old band during their first East Coast tour in 2016. As much as we love those guys and everyone has been comparing us to them, they haven’t been a direct influence to our music. Bands like diSEMBOWELEMENT, Lush, Atheist, Autopsy, Cynic, Gorguts, Pink Floyd, and Death are more of our influences. Or rather the atmospheres they create.

Q5: PINK FLOYD をリスペクトするデスメタルといえば、BLOOD INCANTATION が大成功を収めていますね。あなたたちにとって彼らはどんな存在ですか?

【JERRY】: BLOOD INCANTATION は僕たちの素晴らしい友人で、今まさに絶好調!Ray と僕は、2016年に彼らが初めて東海岸ツアーを行った時に、僕たちの古いバンドで共にショーを行ったんだ。彼らのことは大好きだし、みんな僕らを彼らと比較しているけど、彼らは僕らの音楽に直接影響を与えたわけじゃない。diSEMBOWELEMENT,
LUSH, ATHEIST, AUTOPSY, CYNIC, GORGUTS, PINK FLOYD, DEATH といったバンドの方が僕らには影響を与えている。もしかしたら、彼らが作り出す雰囲気には影響を受けているかもね。

Q6: Bands such as Death, Atheist, Cynic, and Pestilence took metal into a different realm in the early 90s, one that was more diverse, progressive, and intelligent. You will be playing with Atheist in Japan, what is your legacy from these bands?

【JERRY】: Those are some of my favorite bands and probably my favorite style of music. Ancient Death wouldn’t exist without those bands. I discovered all those groups when I was about 10 and 11 years old. From pushing beyond the boundaries of what ‘trends’ were cool back then and writing from a more vunerable and introspective place, it showed me I could be myself as an individual and musician. It quite literally changed my world. I’m turning 28 this year, and they still mean as much to me now as they did back then. To play in Atheist is a dream come true. They were my absolute favorite band since I was 12 years old. To go from having posters of Kelly Shaefer and the og lineup on my wall, to sharing the stage every night with him is something I can’t really put words to. Rand Burkey was probably the most influential guitarist in the metal world to me. He just ripped his solos and melodies like no other (upside down mind you)! That fact I used to shred his parts as a 14 year old in my bedroom and dream of playing it in front of others as if I’d written that music to actually be on a stage playing those same songs is like, holy shit! The mind and connection to our world is a very powerful thing.

Q6: DEATH, CYNIC, ATHEIST, PESTILENCE のようなバンドは、90年代初期にメタルをより多様でプログレッシブで知的な別の領域へと導きました。あなたは今年、日本で ATHEIST のメンバーとして演奏しますが、そうしたバンドからあなたが受け継いだものは何ですか?

【JERRY】: 君が挙げたバンドはまさに僕の愛するバンドであり、おそらく僕の好きな音楽のスタイルだろう。ANCIENT DEATH はこれらのバンドなしでは存在しなかっただろう。僕がそうした “グループ” を知ったのは、10歳か11歳の頃だった。当時クールだった “トレンド” の枠を超えて、より傷つきやすく内省的なところから曲を書くことで、個人として、ミュージシャンとして、自分らしくいられることを教えてくれたんだ。その体験は文字通り、僕の世界を変えた。僕は今年28歳になるけど、彼らは今でも当時と同じくらい僕にとって重要な存在だよ。
ATHEIST と演奏できるなんて夢のようだ。彼らは僕が12歳の頃から絶対的に大好きなバンドだったからね。 Kelly Shaefer や当時のラインナップのポスターを壁に貼っていたくらいで、毎晩彼とステージを共にすることになるなんて、言葉では言い表せないよ。 Rand Burkey は、僕にとってメタル界で最も影響を受けたギタリストだろう。彼のソロとメロディーは他のギタリストにはないものだった!
14歳の頃、寝室で彼のパートをかき鳴らし、まるで自分が書いた曲のように人前で演奏することを夢見ていた僕が、実際にステージに立って彼らとまさに同じ曲を演奏しているなんて!デスメタル世界の心とつながりは、とてもパワフルなものだよね。

Q7: The artwork for “Ego Dissolution” reminded me of the artwork for Obituary’s “Cause of Death”. In a way, does it show your respect for them?

【JERRY】: Haha, I’m glad you bring this up. That record is without a doubt a classic and one we all love but the art for that had absolutely no connection to ours. I mean that art wasn’t even supposed to be for Obituary initially, it was supposed to be for Sepultura’s Beneath the Remains. And past that it’s actually a cover for an H.P. Lovecraft book. So to those claiming we’re ripping off that art, it’s like whatever. But if people see that similarity, then cool, it’s a badass record. We put so much time and love into Ego Dissolution. The art was made by Maegan LeMay, who absolutely exceeded our expectations. She’s such an incredible artist. She based the art off of our song Breathe – Transcend (Into the Glowing Streams of Forever) which deals with the connection of our hearts and souls to the Earth. In my view, we’re all connected to one another. And I think we should embrace that.

Q7: “Ego Dissolution” のアートワークを見て、OBITUARY の “Cause of Death” のアートワークを思い出しました。ある意味、彼らへの敬意を表しているのでしょうか?

【JERRY】: ははは、そう言ってもらえると嬉しいよ。あのレコードは間違いなく名盤で、僕らみんなが大好きなものだけど、あのアートは僕らとはまったく関係ないものなんだ。もっといえば、あのアートは当初 OBITUARY のためのものですらなく、SEPULTURA の “Beneath the Remains” のためのものだったはずなんだからね。本当の起源は、実はH.P.ラヴクラフトの本の表紙なんだ。だから、僕らがそのアートをパクっていると主張する人たちかについては、どうでもいいって感じだね。
ただ、みんながその類似性に気づいてくれるって、逆にいえばクールで注目されているレコードってことじゃない。僕らは “Ego Dissolution” にたくさんの時間と愛情を注いだ。アートはMaegan LeMay が担当したんだけど、彼女は僕らの期待を遥かに超えてくれた。彼女はとても素晴らしいアーティストだよ。彼女は僕たちの曲、地球における心と魂のつながりを描いた “Breathe – Transcend (Into the Glowing Streams of Forever)” をもとにアートを制作してくれた。僕の考えでは、僕たちは皆、互いにつながっている。それを抱きしめるべきだと思う。

Q8: There were always great guitar shredders in the great death metal of those days. Personally, I think shred is essential to death metal, and your music is great with lots of perfect guitar shred reminiscent of Chuck Schuldiner! Who is your guitar hero for the band?

【JERRY】: I absolutely agree. Solos are an essential part of our music and for me, lyrical. They’re the words I can’t say. It’s hard to pinpoint one hero but some of my biggest influences are David Gilmour, Chuck Schuldiner, Rand Burkey, Kelly Shaefer, Paul Masvidal, Jason Gobel, Jerry Garcia, Slash, Tony Iommi, Jeff Hanneman, Dimebag Darrell, and although not a guitarist, Chi Cheng from Deftones. His bass playing changed my way of writing music. He’s so unique and inspiring and I can’t stress enough his importance as a player has on my writing style. It’s truly a shame he left this Earth. Ray has a gazillion too, but I know for a fact he absolutely loves Jimmy Page, Eddie Van Halen, Uli Jon Roth, Trey Azagthoth, tons of fingerpicking players like Jerry Reed and Chet Atkins, and most of the ones I stated.

Q8: 当時の偉大なデスメタルには、常に素晴らしいギター・シュレッダーがいましたね。個人的には、デスメタルにシュレッドは不可欠だと思っていますが、あなたの音楽にはあの Chuck Schuldiner を彷彿とさせる完璧なギターシュレッドが多く存在していて素晴らしいですね!
バンドにとってのギター・ヒーローは誰なんですか?

【JERRY】: まったく同感だよ。ソロは僕らの音楽に欠かせないものだし、僕にとってはリリカルなものでもある。ヒーローを一人に絞るのは難しいけど、一番影響を受けたのは David Gilmour, Chuck Schuldiner, Rand Burkey, Kelly Shaefer, Paul Masvidal, Jason Gobel, Jerry Garcia, Slash, Tony Iommi, Jeff Hanneman, Dimebag Darrell、そしてギタリストではないけど、DEFTONES の Chi Cheng だね。彼のベース・プレイは、僕の作曲方法を変えたんだ。彼はとてもユニークで刺激的で、彼のプレイヤーとしての重要性が僕の作曲スタイルに与えた影響はいくら強調しても足りないくらいだ。彼がこの世を去ったのは本当に残念だよ。
Ray にもたくさんいるけど、彼が Jimmy Page, Eddie Van Halen, Uli Jon Roth, Trey Azagthoth, それから Jerry Reed や Chet Atkins といったフィンガーピッキング・プレイヤーを愛していることは確かだ。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED JERRY’S LIFE!!

Linkin Park “Meteora”

Pink Floyd “The Dark Side of the Moon”

U2 “The Joshua Tree”

Atheist “Unquestionable Presence”

Deftones “Around the Fur”

MESSAGE FOR JAPAN

Massively! Like I stated earlier, I love Joe Hisashi’s work with Hayao Miyazaki. Those Studio Ghibli films; particularly Laputa: Castle in the Sky, Princess Mononoke, Kiki’s Delivery Service, and Spirited Away are some of the most important pieces of art in my life. I’m a HUGE Legend of Zelda and Final Fasntasy (particularly VII and XII) fan. Lost in Translation (set in Tokyo) is one of my favorite films ever. I’m also big into manga and anime (Sailor Moon, Death Note, Neon Genesis Evangelion, etc.). For music I really love Boris and that first Babymetal record. I’ve wanted to go to Japan since I was 7 years old. I used to watch Guns N’ Roses live in Tokyo ‘92 and have wanted to visit there since. I told myself at that age if I could ever play a show in Tokyo, at whatever capacity, then I made it. Can’t believe I’ll be playing there with Atheist this June.
Thank you so much for the interview. And thank you to everyone who has given Ego Dissolution a chance. We appreciate you more than you know. Ancient Death hopes to come to Japan soon! Worship the true cosmic flow that is…ANCIENT DEATH!

日本の文化はマッシブだよ!先ほども言ったように、僕は宮崎駿監督と久石譲の仕事が大好きなんだ。特に “天空の城ラピュタ”、”もののけ姫”、”魔女の宅急便”、”千と千尋の神隠し” などのスタジオジブリ作品は、僕の人生で最も重要な影響のひとつだよ。それにゼルダの伝説とファイナルファンタジーの大ファンでもある(特にVIIとXII)。”ロスト・イン・トランスレーション”(東京が舞台)は、これまでで最も好きな映画のひとつだよ。漫画やアニメ(”セーラームーン”、”デスノート”、”新世紀エヴァンゲリオン”など)も大好き。音楽は Boris と BABYMETAL の最初のレコードが気に入っているよ。
7歳の頃から日本に行きたいと思っていたんだ。GUNS N’ ROSES の92年の東京のライブ・ビデオを観て以来、ずっと日本に行きたいと思っていたんだよ。もし東京でライヴができるのなら、どんなキャパシティのライヴであれ、その時は必ずやると、その時自分に言い聞かせていたんだ。今年の6月に ATHEIST として東京で演奏できるなんて信じられないよ。
インタビューをありがとう。そして、”Ego Dissolution” にチャンスを与えてくれたすべての人に感謝を。君たちが思っている以上に感謝しているんだ。近いうちに、ANCIENT DEATH も日本に行けたらいいね!ANCIENT DEATH という真の宇宙の流れを崇めよ!

JERRY WITUNSKY

JERRY は ATHEIST のメンバーとして来日!チケットのご購入はこちら!

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DROWN IN SULPHUR : VEANGENCE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DROWN IN SULPHUR!!

“We Would Like To Make Concerns What Happened After Lorna Shore’s Explosion. They Have Created a Trend That Is Followed In a Schematic Way By Many Deathcore Bands And We Find It Quite Monotonous.”

DISC REVIEW “VENGEANCE”

「LORNA SHORE の初期の作品は、少しクラシックなデスコアで、もちろんそれからのシンフォニックな進化も両方高く評価しているんだよ。ただ、彼らの爆発的な人気の後に起こったことに対して唯一コメントしておきたいのは、彼らは、多くのデスコア・バンドが図式的に、システマティックに追随するトレンドを作り出してしまったよね。僕たちはそれが非常に単調だと感じている。それが気がかりなんだ」
シーンに巨大なバンドが出現すると、それに追従する数多のフォロワーが出現する。それは黎明期から続く “ロックの法則” であり、飽和と定型化、そして衰退がひとつのライフ・サイクルとしていくつものジャンルを隆盛させ、また没落させてきました。そして現在、デスコアの巨人といえば LORNA SHORE でしょう。
「僕たちは常にオリジナリティのあるものをファンに提供し、僕らに気づいてくれた人たち、そしてデスコア/メタルコア・シーン全体に対して DROWN IN SULPHUR を認識させ、差別化したいと考えているんだ。そのために、作曲や作曲方法において、より多くのジャンルから影響を受けることを恐れないんだよ」
イタリアの DROWN IN SULPHUR は素直に LORNA SHORE をリスペクトしつつも、決して彼らの足跡を追おうとはしていません。なぜなら、そうした “セルアウトの方程式” がいつしかシーンを衰退に導く諸刃の剣だと知っているから。だからこそ、彼らはオリジナリティあふれる自らのデスコア道を歩んでいきます。
「僕たちは皆、ブラックメタルからクラシック・デスコア、ハードコア、ニュースクール・メタルコア、オールドスクール・デスメタル、そしてプログレまで、全く異なる嗜好を持っているんだ!もちろん、ロックやメタルの偉大な古典を愛する共通項もあるしね」
DROWN IN SULPHUR のデスコアはむしろ WHITECHAPEL の哲学に近い。そんな感想を抱くほど彼らの音楽は多様で、実験的で、それでいて非常に “聴きやすい” キャッチーさを多分に備えています。LORNA SHORE のように荘厳なる痛みをアルバム全体で醸し出すよりも、リッチで目まぐるしい展開を選んだともいえます。
クラシックなデスコアやデスメタルの重量感とテンポ・チェンジ、PANTERA のグルーヴやソロイズム、ハードコアのエナジーや衝動、ブラックメタルの暗がりやスピード、そして時に補充されるシンフォニーや民族音楽の響き、プログレッシブな構成美。特筆すべきは、”Scalet Rain” で見せるような悲痛なクリーン・ボーカルでさえ、”Vengeance” というアルバムにはわずかな違和感さえなく完璧にハマっている点でしょう。
まさにアートとしてのデスコア。憤怒と毒を含んだミケランジェロ。ヘヴィネス、スピード、ブレイクダウン、アトモスフィア、そしてメロディが黄金比で織り込まれたデスコアのダビデ像は、”Vengeance” でジャンルと音楽業界の不条理に中指を立てながら、一方では深い知性と実験性を備えたその美しき構成と展開の妙でジャンルの未来を切り開いていくのです。
今回弊誌では、DROWN IN SULPHUR にインタビューを行うことができました。「シンプルに僕たちは、パワー・メタルのようなジャンルに特に興味を持ったことはないんだ。メタルの真髄は、検閲や圧力なしに多くの創造性を発揮する余地を残したエクストリームなサブジャンルにあると信じているからね」 常軌を逸した演奏の巧さ、ギターソロののドラマ性、そして複雑な構築美。DREAM THEATER を影響元に挙げているのも頷けますね。どうぞ!!

DROWN IN SULPHUR “VEANGENCE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SNOOZE : I KNOW HOW YOU WILL DIE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH LOGAN VOSS OF SNOOZE !!

“The More People Are Inundated With Instant Gratification, The More It Becomes Impactful When Something Comes Around That Was Worked On Really Hard. I Think The Pendulum Is Beginning To Swing The Other Direction.”

DISC REVIEW “I KNOW HOW YOU WILL DIE”

「アートが消費され、”コンテンツとなった芸術” の時代である今、より多くの人々が、よく練られ、愛のこもった作品で、時代に左右されずに存在する音楽、芸術、アイデアを求めているのだと思う。人々が即座に満足できるインスタントなものが溢れれば溢れるほど、情熱をかけて心から一生懸命取り組んだものが世に出たときの衝撃は大きくなる。より多くの人々が、自分の意思をあまり持たずスマホに釘付けになることに不満を感じ、振り子が反対方向に振れ始めているんだと思うよ」
アートが消費される “コンテンツ” となった現代。人々はさながら SNS を一瞬賑わせ、そしてすぐに忘れ去られていく日々のニュースのようにアートを消費し、放流していきます。しかし本来、芸術には “永続性” が備わっているはず。本来のアートは時代を超えて愛されるべきでしょう。そうした意味で、シカゴの “ハッピー・ヘヴィ・マスロック” SNOOZE の音楽はさながらスマホのアラーム、あの “スヌーズ” 機能のように、時が過ぎても何度も何度もリスナーの心を目覚めさせていくはずです。
「ヘヴィな歌詞の内容とヘヴィ・メタルに影響を受けた音楽的要素が、とても楽観的なコード進行の選択と組み合わさって、楽しい認知的不協和を生み出しているように感じるよ」
複雑怪奇な変拍子を操る SNOOZE の最新作 “I Know How You Will Die” が4/4日にリリースされた事実がすでに、彼らのニヒリズムと知性が生み出す二律背反を見事に表現しています。たしかに SNOOZE はハッピーなマスロック・バンドですが、同時にヘヴィなプログレッシブ・メタルでもあります。その怒りと幸福、ヘヴィとキャッチー、実験と正統をまたにかけるダイナミズムの妙こそ、彼らが情熱を注いだアート。
「若いメタルヘッズだった僕たちは、テクニカルさと名人芸に取り憑かれていたような気がする。それからマスロックに出会ったとき、それと同じ波動を感じたような気がしたんだ。だから、それを掘り下げていくと、より多くの非常識なバンドを見つけることができた。 でも最近の僕たちは、可能な限りテクニカルなこと(考えすぎること)を探すのをやめて、意味のある、感情的な音楽に傾倒していると思う。だからよりメロディックな音楽の中に濃密なリズムのアイディアを取り入れる人がいると、いつも嬉しくなるよ」
またにかけるのは光と闇だけではありません。エモ/ポップ・パンクのヴォーカル・センスをヒントに、マスロック、プログレッシヴ・メタル、ポスト・ハードコアをブレンドした、大胆かつ折衷的な旋風こそ彼らの真骨頂。 最も際立っているのは、それぞれのジャンルをシームレスに行き来しながら、独自の色と説得力をもって主張する彼らのアイデンティティでしょう。BETWEEN THE BURIED AND ME が見せるようなボーカル・ハーモニー、その実験的な使い方も、SNOOZE の複雑な楽曲に驚くほどの色彩と感情をもたらしています。彼らの創意工夫を前にして、スマホに齧り付くことはできません。振り子の針は逆側に触れ始めました。
今回弊誌では、ボーカル/ギターの Logan Voss にインタビューを行うことができました。「当時は VEIL OF MAYA をよく聴いていて、ギターを初めて弾いた曲のひとつでなんと “It’s not Safe to Swim Today” を覚えようとしたんだ。YouTube の黎明期には、バイラルになる動画は限られていたので、初期の ANIMALS AS LEADERS のミュージックビデオを見たとき、みんなが度肝を抜かれたのは間違いないよね!」 どうぞ!!

SNOOZE “I KNOW HOW YOU WILL DIE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SLEEP PARALYSIS : SLEEP PARALYSIS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH STEPHEN KNAPP OF SLEEP PARALYSIS !!

“I Really Like Using The Pianos Percussiveness, It Can Add a Lot To The Rhythm Section In Different Ways While Also Providing Harmony And Accents, Plus Slamming Loud Dissonant Chords Sounds Sick As Fuck Over Blast Beats.”

DISC REVIEW “SLEEP PARALYSIS”

「ピアノのパーカッシブさを使うのがとても好きなんだ。ハーモニーやアクセントを提供しながら、リズム・セクションにさまざまな形で多くのものを加えることができるし、ブラスト・ビートの上で大音量の不協和音を叩きつけると、最高に気持ち悪いサウンドになる。 ピアノは曲の緊張感を高めるのにとても効果的だし、クラスターコードはサウンドに違う色を加えるのに遊んでいていつも楽しい」
メタルにおいてピアノの響きは過去のものになりかけています。キーボードにしても場所をとりますし、ギターの可能性が広がるのと比例して、ピアノの出番はどんどん少なくなっていきました。しかし、本当にメタルからピアノは消え去るのでしょうか?ピアノの打楽器的な力強さ、一方で両の手で組み立てる繊細さと旋律の妙はやはり唯一無二のものでしょう。SLEEP PARALYSIS をひとりでとりしきる Stephen Knapp はそんなピアノの可能性をブラックメタルで再度呼び起こします。
「MIDIですべてを書き込んで、どんな音がするかすぐに調整できる汎用性が気に入っている。それに、自分の思い通りのサウンドにするために、必要に応じてダイナミクスを調整できるのも魅力だ。メタル・コミュニティでは、楽器をプログラミングすること(特にドラム)は簡単な方法だという汚名があるように思う。とはいえ、実際にドラムやピアノを演奏してレコーディングするのと同じくらい難しいとは言わない。最終的には、自分のビジョンを完全に実現し、目指すヴァイブを達成するためのツールでしかないからね」
面白いことに、Stephen はピアノが弾けるにもかかわらず弾いていません。すべてをプログラミングで入力しています。なぜなら、彼には思い描いた音楽の確固たるビジョンが存在するから。NEURAL GLITCH もそうですが、若い世代のアーティストにとってはプログラミングもまた楽器のひとつ。自らの理想を実現するためには、むしろ “入力” という正確な手段の方が彼らにとっては必要だったのです。
「大学時代、睡眠時間がめちゃくちゃで、慢性的な睡眠不足に陥っていたとき、よく金縛りになったんだ。 このアルバムのために最初に書いた “Sleep Paralysis” という曲は、僕が初めて金縛りになったときのことを音楽的に解釈したもので、どこにでもいるような金縛りの影鬼が僕の上に乗っていた」
そんな Stephen がブラック・ピアノ・メタルの実験場に選んだテーマが “金縛り” でした。実際、この悪夢のようなオデッセイの上演にこの主題は完璧でしょう。陰湿に渦巻く不協和音。恐ろしいほどスリリングな混沌。聖歌隊に狂気のラグタイム、ホラー映画、任天堂の怪奇ゲームに重なるドゥビッシーやラベル、ショパンのファンタズマゴリア。不吉で威圧的で猛烈に突き進むこの悪夢の錯乱状態に、ピアノのアタックやサスティナーはあまりにも完璧にフィットしています。
そう、このアルバムはリスナーを恐怖と不安で冷や汗の渦に引き入れ、PTSD ストックホルム症候群の湧き上がる疑念が押し寄せる中、それでももう一度アルバムの再生ボタンを押させる日本の怪談のような不気味な中毒性を宿すのです。
今回弊誌では Stephen Knapp にインタビューを行うことができました。「ピアノは、メロディー、ハーモニー、リズム、テクスチャーなど、通常のメタルでは見られないようなものを加えることができるので、超万能なんだ。WRECHE のファンになってしばらく経つし、DEATHSPELL OMEGA の曲のピアノ・カバーをいくつか見ていたから、ピアノ中心のブラックメタルがうまくいくことはわかっていた」 どうぞ!!

SLEEP PARALYSIS “S.T.” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CKRAFT : UNCOMMON GROUNDS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CHARLES KIENY OF CKRAFT !!

“I Might Be Wrong, But I Don’t Think There’s Another Metal Band Fronted By This Accordion And Saxophone Section.”

DISC REVIEW “UNCOMMON GROUNDS”

「バンド名の CKRAFT は、”Craft” と “Kraft” という2つの単語を意図的に組み合わせたもので、僕たちの音楽哲学の核心を表している。英語の “Craft” は、僕たちが深く大切にしている “クラフトマン・シップ”、つまり作曲、レコーディング、演奏、そしてサウンドをゼロから構築していく実践的な作業を意味している。サンプルもプログラミングもなく、すべては楽器の演奏から生まれることをね。一方、ドイツ語で “Kraft” は “強さ” や “力” と訳され、ヘヴィでクラッシングなサウンドを意味するんだ!」
テクノロジーの進歩は、メタル世界にも様々な恩恵をもたらしています。アナログ時代には想像も出来なかったサウンド、正確性、利便性。その一方で、アナログ時代に確かに存在した “クラフトマン・シップ”、職人芸や鍛錬を重ねることでたどり着く創造性が失われたと感じるリスナーも少なくないでしょう。芸術の都パリを拠点とする CKRAFT は、伝統と革新の融合で失われつつある音楽の “クラフトマン・シップ” を再度提示します。
「僕の最大の情熱のひとつは、音楽(そして芸術全般)がいかに永続的で普遍的なものであるかを探求することで、このような古代のサウンドがいかに現代の文脈の中でも共鳴しうるかということが、それをよく表していると思う。それは、一見異質な世界の間に “共通点” を見出すことなのだ」
CKRAFT がすべて人の手から生まれる “クラフトマン・シップ” にこだわるのは、音楽の、芸術の永続性を探求するため。最新のテクノロジーどころか、電気もなかった時代。そんな時代の音楽でも、今の世に響く素晴らしさ。そこに CKRAFT は感動を覚えました。そうして、CKRAFT は、現代で感動を覚える MESHUGGAH や GOJIRA のヘヴィ・グルーヴと古代の音楽が共鳴することを発見します。彼らが特に感化されたのが、グレゴリオ聖歌。その壮大で神聖なクオリティは、まさに CKRAFT が愛するジャズとメタル、そして古代と現代のギャップを埋める重要な “糸” だったのです。
「アコーディオンやサックスはおそらく、僕たちを知ったときに最初に目にするもののひとつで、CKRAFT を際立たせている。間違っているかもしれないけど、このアコーディオンとサックス・セクションを前面に出したメタル・バンドは他にないと思う。僕にとっては、破砕的なリフに対する深い愛と、僕が大切にしているアコースティック楽器を融合させ、それを力強く機能させる方法を見出したかったということに尽きる」
CKRAFT のそんな野望、野心に応える楽器がアコーディオンでした。17世紀に誕生した美しき蛇腹の楽器は現在まで、時の試練に耐えその麗しき音色を奏で続けています。まさに時代をつなぐアーティファクト。だからこそ、聖歌、クラシック、ジャズ、メタルの架け橋として、彼らにとっては完璧な楽器でした。もちろん、そのままの音量ではメタルの喧騒に埋もれてしまいます。アコーディオン奏者で今回のインタビューイ Charles Kieny はそこに現代のテクノロジーを注ぎ込みました。シンセ・アコーディオン。ラウドに生まれ変わった古来の楽器は、そうしてモダン・メタルと多様な融合を果たすことになりました。
そうして “クラフトマン・シップ” の申し子たちは、メタルのヘヴィネス、ジャズの自由、グレゴリオの不滅の旋律を借りた、精巧でパワフルなサウンドの職人として完成しました。テナー・サックスとアコーディオンの熱狂的なブラストは決して声にも劣りません。真に才能のあるインストゥルメンタル・アーティストは、言葉を一切使わずに最も壮大なイメージを呼び起こすことができるのです。
今回弊誌では、Charles Kieny にインタビューを行うことができました。「MESHUGGAH はメタルにおける複雑さと精密さの頂点を表していると思う。彼らには独自のグルーヴがあり、そのリフはこの地球上の誰も生み出したことのないものだ」 どうぞ!!

CKRAFT “UNCOMMON GROUND” : 10/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【DEAFHEAVEN : LONELY PEOPLE WITH POWER】


COVER STORY : DEAFHEAVEN “LONELY PEOPLE WITH POWER”

“If Power Is Influence, We Have a Responsibility To Be As Understanding, Empathetic And Knowledgeable As Possible”

LONELY PEOPLE WITH POWER

第二次世界大戦の冷酷と殺戮の後、アメリカの心理学者グスタフ・ギルバートは悪の本質について何年も考え続けました。そして1947年に出版された “ニュルンベルク日記” の中で、生き残ったナチスの指導者たちとのインタビューについて書いた彼は、悪の本質を見つけたと信じていました。 悪、すなわち戦犯たちを結びつける一つの特徴は、弱者や少数派の苦境に関わることができない、あるいは関わろうとしないことであると。悪とはつまり、共感の欠如であったのです。
「国民が戦争したがるように仕向けるのは簡単。国の危機を宣伝し、平和主義者を非難すればいいだけ。これはどんな体制でも同じ」
80年後、グスタフの教訓は忘れ去られようとしています。世界中のポピュリスト政治家たちが、再び人間の自己中心性を食い物にしているから。 弱者蔑視と外国人憎悪を武器に足場を固め、富裕で影響力のあるオリガルヒに屈服し、自分たちの今でも計り知れない富がさらに膨れ上がるのであれば、喜んで工作に協力する。
「西洋文明の根本的な弱点は共感であり、共感搾取である」と、世界一の大富豪イーロン・マスクは最近CNNで説き、非正規移民に基本的な医療を提供することが、公的資金配分の誤りだと主張しました。 マスクは弱者や少数派への共感を西洋文明の “バグ” だとして、そこから犠牲を強いられる “集団” を救うとさながら英雄のように強弁したのです。非常に怖い話です。
George Clarke は、DEAFHEAVEN の素晴らしき6枚目のアルバム “Lonely People With Power” で、西洋社会の右傾化について特に語っているわけではありません。 実際、常に冷静で知的なこのフロントマンは、アルバムに込められたアイデアを解き明かす際、政治的な対立をむしろ避けようとしています。しかし、マクロ的なレベルでは、個人的な出世や富のために共同体を捨てるというコンセプトは、まさにこの暗い現代に対するアンチテーゼといえるでしょう。
「私は万能で慈悲深い世界の創造主など信じていない。このレコードに関連して “力” について語るとき、私は本当に影響力について話しているんだ。 視点を形作る力、世界観を形作る力、それに伴う責任についてだ。 彼らのような富と影響力を手に入れるためには、周囲のものを手放すことが必要なんだよ。彼らは孤独な目的を追い求めている。それは、隣の人の幸福など気にも留めないほど圧倒的なシニシズムと虚無感がなければ達成できないものだから。”孤独” は時に無知やナルシシズムや精神の空虚さの代用品となる。そうやって、共感を捨てて得た冨や影響力は、逆に精神的な空虚さを表している」

ウィリアム・ランドルフ・ハーストは1951年8月14日に亡くなりました。DEAFHEAVEN の本拠地サンフランシスコで生まれたこの新聞王は、米国のセンセーショナルなタブロイド紙の先頭に立ち、1900年代を通じてニューヨーク州知事選、ニューヨーク市長選、合衆国大統領選に出馬して落選しました。当初は進歩的な政治を支持していたハーストでしたが、20世紀に入ると保守的で孤立主義的な政策を採用。1930年代には、ナチス・ドイツを声高に支持した人物です。
多くの点で、ウィリアム・ランドルフ・ハーストは George の語る典型的な孤独な権力者だといえました。
「ハーストのメディアの巨人としての時代は、今日私たちが目にしている多くのことの先駆けのように感じられる。ああした人たちは常に熾烈で、嘘をつくことも誇張することも厭わず、道徳的な境界線というものをまったく理解していない。ハーストの人間関係は、刹那的で執着的な傾向があったにもかかわらず、決して人間的ではなかった。ハーストは、人間や、世界が動くより大きなメカニズムにまったく関心がなく、非常に利己的だった。それは奇妙な二律背反だった。支配欲を満たすためには、寛大さもヒューマニズムもなく、他人を蹴落とし周囲の世界から皮肉なまでに切り離される必要があるんだよ。
コミュニティーの欠如、自己孤立、自己保存、利己的な動機はすべて、人が支配力を集め、権力を獲得するために必要なもので、単にその権力が他よりも価値があると見なすために必要なものだ。 政治や産業界ではよく見られることだ」
サイコパスと呼ばれようが、ソシオパスと呼ばれようが支配欲が満たされれば関係ないのでしょう。
「最も多くの富を蓄え、最も多くの人々を支配するためには、反コミュニティである必要がある。普通の人なら困惑するだろう。10億ドルを与えられて、それで何をしたいかと聞かれても、僕にはわからない。率直に言って、そのような目標を追い求めるなら、仲間とつながる時間はなくなってしまう。だから莫大な物質的なものを追い求めることに、共感する余地はないんだ」

ソーシャルメディアは、ハーストの新聞全盛期以来、金と影響力の最も明白な混同を生み出しました。DEAFHEAVEN でさえ、その引力から逃れることはできません。彼らは1月27日のアルバム発表から3月28日のリリースまでの間に、ミュート・ウィドウズが監督した各曲の一連のショート・クリップを公開。それは最終的に包括的な物語に結びついていて、アルバムの前後の素晴らしさをより明確に描き出しています。
芸術的な深みを加えながらリスナーに届くという点でその手法は優れていて、フェイスブックやインスタグラム、XやTikTokの否定的な側面とは対極にあるようにも思えます。George は、SNS の隆盛で名声と富を求めるキッズたちのゴールポストが変わったと見ています。
「セレブ文化は常に存在し、華やかさはその性質上魅力的だ。しかし、以前は成功しないかもしれないと思いながら多くの犠牲を払わなければならなかったもの、今はコメントや “いいね!”、そしてマネタイズによって “成功” の度合いが小さくなっている。かつては一部の人にとっての大きな夢であったことが、ビジネスになってしまったんだ」
しかし、陰湿なアルゴリズム、ねじ曲がったデジタル・リアリティ、死んだような目をしたSNSのオーナーたちは、結局はかつての新聞王以上にその支配力を際限なく拡大させています。
「前例のない瞬間を生きていると思うか?と聞かれることがある。私はそうは思わない。メディアが存在する限り、人々はそれを形作ることに憧れてきた。しかし、テクノロジーがそれを変えたのは確かだ。ソーシャルメディアには即効性があり、中毒性がある。即効性があり、すべてを飲み込むように感じられ、負の感情を強調しようとする勢力がある。常に恐怖を煽り、悪いニュースの嵐だ。人々はリラックスすることを許されない」
そうして、テクノロジー業界の億万長者たちが、アメリカ大統領就任式で選挙で選ばれた人たちが座るはずの最前列の席を占拠しているのです。
「私は歴史家ではない。でも、ちょっと馬鹿にされているような気がしないでもない。これって、製薬会社のCEOが薬物中毒のジャンキーたちの部屋に入り込むようなものだと思っている。この時点で、彼らは笑っているだけだ。まあ終わったことは終わったことだ。彼らの影響力はあまりに強く、人々はその中で迷い込んでしまう」

デビューから15年、DEAFHEAVEN は “Sunbather” のように再び自分たちを定義できるようなアルバムを作る必要性を感じていました。そうして伝説的なメタル・レーベル、ロードランナーとのレコード契約を受け、新たなスタートを切ったのです。KNOCKED LOOSE や INTERPOL など様々なアーティストと共演し、自分たちを証明してくれる潜在的な新しいファンの川は深く流れていました。
「”Infinite Granite” が楽しくて必要なアルバムであり、私たちがあのアルバムを誇りに思っているのと同じくらい、私たちのヘヴィ・ミュージックへの愛に再び火をつけたのは、あの作品の曲をツアーする過程だった。 長い間、あのメロウな音楽を演奏していたから、もっとヘヴィな曲を演奏したかったんだ。 それに、”Sunbather” のアニバーサリー・ライヴをやる機会もあったし、KNOCKED LOOSE とのツアーも楽しかった。 速くてハードな演奏をするという精神が復活したんだ。 特に Kerry にとっては、これが自分の好きな音楽なんだという個人的な気づきにつながった。 彼は、このレコードがまだ DEAFHEAVEN らしいものであるという条件付きで、スピードと重厚さを取り戻すという真のビジョンを持っていた。 一つの方向には向かっていないんだ」
“Lonley People With Power” の野心的なアプローチについて、George はこう説明しています。
「DEAFHEAVEN はバンドとして十分な年月が経っているので、自分たちが以前に何をしてきたかを参考にすることができる。今までのアルバムや一緒に経験したことを通して、このバンドが一体何なのかを消化し始めることができる。それを抽出しようと試みることさえできる… このバンドのDNAには、ちょっとした貧乏根性が埋め込まれていると思う。 私たちは2人とも、一生懸命やっても誰も気に留めないようなバンドに何年も在籍していた。 だからこのバンドのDNAに深く刻み込まれているのは、オーバーワークなんだ。すべてが完璧だと感じられない限り、十分な働きはできない。私たちは泡銭、家のお金で遊んでいるようなもので、本当はここにいるべきでないようなもの。だから、それを最大限に活用しないのは、宇宙に対して失礼なことだと思う」

かつてポーザーと呼ばれていたのが馬鹿らしいほど、彼らはもはやメタルを代表する存在となりました。
「何年もの間、みんなが DEAFHEAVEN を “ポーザー “と呼びたがっていたのに、今ではその話題もなくなってしまった。我々のバンドを支持する人も嫌いな人も、それが退屈な会話だということに同意して握手していると思う。 DEAFHEAVEN のことを嫌っている人たちでさえ、”ああ、クールだ、新譜が出たんだ” と思えるくらい、私たちは長く活動してきた。
メタルがここ数年、大きな盛り上がりを見せていることが救いだ。 多くの素晴らしいバンドが誰でも簡単にアクセスでき、ツアーを行い、常に素晴らしいショーを行っている。 私たちは皆、その方がいいと思う」
NINE INCH NAILS, St. Vincent, THE MARS VOLTAといったアーティストを手がけるベテラン・プロデューサー、ジャスティン・メルダル=ジョンセンは、”Infinite Granite” に参加して、そのアルバムのソフトなエッジに驚かされました。そして今回、彼は期待をさらに上回る驚きを “Lonely People With Power” に感じました。
「初めて彼に “Revelator” を聴かせたときのことを覚えているよ。彼は、”ワオ、これは私が期待していたヘヴィネスを満たしているだけでなく、それをはるかに超えている… “という感じだった。
それは、私たちが以前やっていたやり方を引き継いだものだ。 そう、”Magnolia” は音楽的にかなり攻撃的だ。そして、このアルバム全体を通して、似たようなサウンドの部分がある。 確かに “Lonely People With Power” には獰猛さがあるが、DEAFHEAVEN は常にエモーショナルな核を維持し、物事を特異なレンズを通して見ないことを目指してきた。 その意味で、このアルバムの多くは、赦すこと、あるいは自分自身を含む権力の力学を認識することをテーマにしている。 そう、怒りがある。 しかし、決意、許し、認識もある。 そして、それらは均整のとれた音のパレットで表現されている」

激烈な “Magnolia” の後、セカンド・シングル “Heathen” は、彼らのアヴァンギャルドでポスト・メタル的な傾向を再び紹介するための意識的な努力のように感じられます。
同時に、事実上のオープニング曲 “Doberman”, 前述の “Revelator”、そして変幻自在の叙事詩 “Winona” で、George が2013年の名作 “Sunbather” の流れを汲む痛快なブラストビート・ブラックメタルに回帰していることも否定できないでしょう。
実際、”Sunbather” のジャケットであえてピンク色を使い、メタル全体に衝撃を与えたことから、前作 “Infinite Granite” ではメタルをほぼ完全に排除したことまで、あらゆる決断がバンドをこの瞬間へと導いたように感じらます。 ブラックメタルはその本質的な暗さにもかかわらず、多くの新しいリスナーを輝かせるチャンスがあることを証明する大作に仕上がりました。
「今は獰猛さにインスパイアされるんだ。もっと獰猛になりたくなる。自分たちのサウンドを抽出したいという欲求があったのと同じように、歌詞のテーマも抽出したいという衝動に駆られた。家族、アルコールと中毒の個人的な経験、自殺願望、友人との関係、女性との関係は、バンドにとって常に試金石だった。自分たちらしさを最大限に発揮しようとすることが、自分にとって何を意味するのかを考えた。それは、そうした考えやテーマに対してより直接的であることを意味する。これまではかなり抽象的だった。でもこのアルバムでは、私は自分の足で歩いている」
実際、George はこのレコードを作るにあたって、ヘヴィな世界を再発見していました。
「WOE の大きな世界を再発見した瞬間があった。僕らの新曲を聴いて SPEATRAL WOUND のことを言う人もいて、それは間違ってはいないんだけど、彼らが好きなバンドは我々も好きなんだ。DARKTHRONE, EMPEROR の鍵盤とベル、IMMORTAL も少し。
それに影響を受けたバンドが宇宙みたいにたくさんいる。 ウォー・メタルもあった。”Revelator” を聴いてみると、リフの背後にあるのは、DEAD CONGREGATION をもっと PORTISHEAD のコードに置き換えたらどうなるだろう、というような試みだった」

そうやって焦点を絞ることで、”Lonely People With Power” のよりパーソナルな側面が明らかになります。George は常に、両親や教師のような影響力を持つ人々からの影響について考えてきました。 アルバム “Sunbather” は、”私は父の息子/私は誰でもない/愛することはできない/それは私の血の中にある…” という嘆きで幕を閉じました。”Magnolia” にも同じような慰めの感覚が内包されています。タイトルは、 George の父の実家があるミシシッピ州の州花にちなんだもので、そこは叔父の葬儀に参列した場所でもあります。歌詞は、George の父と共通の特徴である、叔父のアルコール中毒とうつ病を問い、共有された遺伝と、新たな発見と温かさと受容とともに受け継がれた教訓を受け止めています。”私の愛は果てしない/あなたのすべてが私/一歩一歩が墓場へ向かう/私たちが与えられたのは肉と血だけだったのだろうか?”
“孤独” は “無知” の代名詞でもあると George は考えています。
「両親のような人々について話すとき、彼らのほとんどは自分が何をすべきかわかっていないように感じる。 このアルバムには、両親や教師が自分の人生において欠点やハンディキャップを抱えているにもかかわらず、それでも最善を尽くしていることが多いということを認識するんだよ。寛容の要素が含まれているんだ」
アートワークは、車の助手席の子供を挟んで話す両親と見ることもできますが、あまり健全でないことで道行く女性に寄っていく父親と見ることもできます。
「それは人々が自分で決めることだ。 運転する大人、窓際の女性、助手席の子供。 それをどう思うかは人それぞれだ。 しかし、人々は常に答えを得るよりも多くの疑問を見出すものだ。 私たちにとって、それは重要なことだよ」
切迫して脈打つような “Body Behaviour” では、年上の男性が、若い男の子にポルノグラフィーを見せて絆を深めるという “伝統” を描いています。そこに悪意はないと George は考えています。不気味でもない。ただ、知識を共有するための奇妙な試みなのだと。ある世代から次の世代へと受け継がれる、歪んだ通過儀礼のひとつなのかもしれません。そう歪んだ…
「正直なところ、私が知っている男たちは皆、父親や叔父、年上のいとこ、あるいは誰であろうと、そのような話を何バージョンか持っている。これは現代社会の “症状” であり、現在の男同士の関係の基準なんだ…」

このような話題は気まずく不快なものですが、それに立ち向かう姿勢は DEAFHEAVEN に信念を貫く勇気があることの証でしょう。ポピュリズムとインフルエンサー・カルチャーが有害な行動を強化し、有意義な人間関係を腐食させている世界において、男らしさ、”男はこうあるべき” という古い固定観念についての力強い議論とオープンな自己検証は、言うべき意味があります。
「どんな理由であれ、メタル・ミュージックでは “男らしさ” をアップデートするようなトピックは今でもタブーとされることが多い。それはとても奇妙なことだと思う。異なる視点を提供し、状況を打破し、”若い頃、こんなことがあったんだ。それは奇妙なことだった。そして、それがその後の人生にどう影響したかを知ることができる…” それが、感情的に健康な人間になるために必要なことなんだ。同時に、私は、周囲の世界からの逃避の方法として、空想的な主題に満ちた音楽を演奏するバンドを批判したくないと思っている。私も含め、多くのリスナーはそのような手の込んだストーリーテリングに惹かれるものだから」
ソーシャル・メディアの一角に身を置くと、多くの若者にとって不穏なロールモデルを見つけることができるでしょう。パトリック・ベイトマン。ブレット・イーストン・エリスが1980年代のヤッピー・アメリカのナルシシズムを風刺するために生み出したキャラクター、このアメリカン・サイコそのものが、一匹狼の “シグマ・メール” (アルファ・メール(勝ち組男性) と同程度の成功を収めているイケメン男性だけど、群れない人。頭もよく、見た目もよく、お金もあるけど、一匹狼) の憧れの的として再利用されています。裕福。怒りっぽい。周囲の人々から完全に切り離されている…2000年に映画化されたメアリー・ハロンの名作からのクリップをシェアしている人たちの中には、このジョークに乗っかっている人もいるでしょう。しかし、パトリック・ベイトマン自身が執着する対象であるドナルド・トランプがホワイトハウスに座っている現実では、出世のために喜んで絆を断ち切ろうとする人が現実に多く出現しているのです。
George は、ステージ上でベイトマンになりきっていたかもしれない初期のツアーを思い起こしながら、あの冷淡な離人感にはいつも魅了されてきたと過去の自分を振り返ります。
「あのキャラクターが好きなのは、自分自身の中にそれを見たからでもある。それは、パフォーマンスを魅力的なものにする大きな要素だ。少し深く掘り下げ、自分の中にあるものを見つけ、それを見世物のために裏返すのだ。
友人に聞けば、僕らの関係はより “リアル “になったと言うだろうね。若いうちは、受け入れられようとするあまり、見栄を張ってしまう。AからBに行くために、きれいごとやパフォーマンス的な習慣を身につける。仮面をはがすこと、本当のつながりに必要な弱さを見せることは、かつての私にとって難しいことだった。年を重ねるにつれて、正直でいることができるようになった。でも、それは目的地ではなく、むしろ旅路なんだ」

同様に、DEAFHEAVEN 自体も、彼の血管の中にある氷の単なるはけ口から、それを処理するための重要なツールへと変貌を遂げました。
「初期のころは、これが他の方法ではできない自己表現の方法だと感じていた。今は、セラピーのようなものだ。ツアーから離れることで、外に出ることがどれだけ自分の幸せにとって重要かがわかる。旅行や演奏だけでなく、新しい人々に会い、新しい文化を体験し、自分のバンドをよりよく知り、自分を違った形で知ることができるんだ!」
DEAFHEAVEN のオーラの中で、ブラック・メタルらしい危険や脅威はいまだに大きな役割を果たしています。それを今も維持し続けるのは難しいことなのでしょうか?
「ステージにいると、大きなパワーを感じる。エゴの塊だよ。ある程度の誇大妄想もある。私は今でもその極悪非道なキャラクターに傾倒するのが好きなんだ。大観衆の前での瞬間が、日常生活といかに違うかを目の当たりにし、私は自分の分身を掘り続けることを選ぶ。今の自分をどう見ているかの違いは、自己認識が深まったことと、そのキャラクターがとても優しく、共同的で人間的な瞬間のために、今の自分を壊すことを許されるようになったことだ。観客の中に入って誰かを抱きしめたり、バリアの上で泣いているファンに寄り添ったり。私の音楽は、私が最も傷つきやすいときのもの。パフォーマンスは、私が最もパワフルな時のものだ。キャラクターが壊れるとき、私は最も自分らしくなる。もし人々が本当に DEAFHEAVEN のシンガーと瞬間を共有し、歌詞を歌い、あるいは歌詞にしがみついているとしたら、それは Georgeと瞬間を共有していることになる…」

創作、パフォーマンス、個人的な経験の相互関係を分析することで、どのアーティストも、少なくともある程度は、力を持つ孤独な人間であるという気づきを George は得ました。
「パワーが影響力であるならば、私たちは皆、ある程度のパワーを持っている。インタビューはその典型的な例だ。誰かが私の発言を読み、それが彼らの意見を形成するかもしれない。だから私たちには、できるだけ理解し、共感し、知識を持つ責任がある。どうすれば誰かの教師になれるのか、と自問自答する。でも、それは常に進化する謎なんだ」
“Lonely People With Power” の最も難しい教訓は、まさにその最後に訪れる。ジャン・ウジェーヌ・ロベール=ウーダンの悪名高い19世紀の複雑な錯視にちなんで名づけられた “The Marvelous Orange Tree” “驚異のオレンジの木” は、自殺について歌った厳しくも美しい曲。”この病気と一緒に生きて/震える肌を見せながら/あなたと一緒に、私の終わりのない病気で/私の終わりのない病気で/暗闇の中を歩いていく” という表向きは絶望的なセリフで締めくくられています。しかしこれは、奈落の底へ転落するのではなく、常に足元に気をつけるようにという戒めなのです。
「物事には終わりがある。自分の中の悪魔を見極めているとき、”もう心配ない!” とか “もう終わったことだ!” と言うのは難しい。ドアは常に開いていると認識することが重要だ。それは、負けるとか屈するという意味ではない。ただ、本は決して閉じられていないということを知ることだ。
人は何かを打ち負かしたと思ったり、無視することを選んだりすると、思いもよらない形で再び忍び寄ることがある。この曲は、そのような負の感情がいつもまだ存在し、これからも存在し続けるということを認めている曲なんだ。死にたくなったことを話したくなったら、話すべきだし、そうしている。それを放棄することで起こりうる驚きに直面したくない。結局のところ、このアルバムは共感と許しが中心となっている。他人の欠点に対しても、自分自身の欠点に対しても。それはすべて、認識と理解に関係している。”Amethyst” の歌詞で歌ったように、ここには非難するようなものは何もない….」


参考文献: KERRAMG! :Deafheaven: “If power is influence, we have a responsibility to be as understanding, empathetic and knowledgeable as possible”

KERRANG! :https://www.kerrang.com/deafheaven-new-album-lonely-people-with-power-george-clarke-interview

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