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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【SWARRRM : こわれはじめる – Beginning to break】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TSUKSA & KAPO FROM SWARRRM !!

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After More Than 20 years Activity, Japanese Grindcore Titan Swarrrm Breaks The Genres And Hardcore Rules With Their Newest Record “Beginning to break” !!

DISC REVIEW “こわれはじめる – Beginning to break”

“Chaos & Grind” を御旗に掲げる気概と熱情のグラインドコア烈士 SWARRRM が、激しさに豊かな感情を宿す愛と破壊の狼煙 “こわれはじめる” をリリースします!!スタンダードなハードコア的ルールに別れを告げ、アレンジや表現の幅を止めどなく拡大した作品は、ジャンルの垣根を意に介さない強靭で普遍的な魅力に満ちています。
「ハードコアルール的なものにはもうあまり興味ありません。それよりも刺激を欲しています。」 とインタビューで KAPO 氏が語るように、”こわれはじめる” は怒りや絶望、憤りといったオールドスクールなハードコアに根差すネガティブなアティテュードや類型的なスタイルが文字通り壊れ始めるレコードだと言えるのかも知れません。
刺激という意味では、例えば CONVERGE が新作でその多様なサウンドデザインによって語らずしてハードコア本来の刺激を更新したように、混沌の先を見据え変化を渇望する SWARRRM が保守的な地下室から這い出し少なからず陽の光を欲することは必然にも思えます。
アルバムオープナー “ここは悩む場所じゃない” は変化の象徴。「前作 ”FLOWER” 収録の ”幸あれ” ”あがれ” といった曲に可能性を感じていたのは間違いない」 「より普遍的なロックテイストに辿り着くべくして辿り着いた」と KAPO 氏が語る通り、この楽曲が指し示すレコードのイメージはキャッチーで歌心を携えた前代未聞の歌謡グラインド。伝説 HELLCHILD 時代から、原川 司氏がこれほど “歌った” ことは勿論ないでしょう。
司氏が発する歌心、エモーションが、J-Pop ではなく70年代の歌謡曲を想起させる事実は重要です。ここに存在するのはロマンではなく浪漫、ラブではなく愛、儚さと寂寞そして感謝。
大人になれば世界のほとんどが綺麗事や純愛ではなく、どこか歪な愛や歪んだ感情で成り立っていることに気づきます。それでも今がある奇跡。モダンなポップスが纏う煌びやかな飾りを寄せ付けない、司氏の貫く “歌” は日本的な侘び寂びを孕んでどこまでも正直です。
そうした司氏の新境地とバンドのルーツが見事に融解した楽曲こそ “愛のうた” であり、”絆” であると感じます。「あなたの思うグラインドコアと、私たちのグラインドコアは違うという事でしょうか。」 と KAPO 氏が語るように、ブラストのアレンジメントにこそグラインドの美学を貫く SWARRRM。
美しさと儚さはメロディーに、混沌と破綻はブラストへと帰依し、そこから生まれるボーカルと演奏の鬩ぎ合い、美醜のコントラストは唯一無二の尊き激音を創出するのです。楽曲の前半と後半でガラリと情景が変化し衝撃をもたらす詩の魔法も見事。
そうして辿り着く “血が叫ぶ” は、実際ブラストが装飾程度にしか使用されない異端の極地。ファンキーなカッティングが映えるポップとも形容可能な楽曲にはノイズが大胆に散りばめられています。
インタビューにもあるように、勿論偶然で意図も離れていますが、とは言えエクストリーム最前線の ENDON, FULL OF HELL, THE BODY との偶発的シンクロニシティーはシーンの向かう先を朧気に映し出しているようにも思えますね。
そうしてアルバムは、幕開けと同様にアコースティックの静謐な音色でその幕を閉じるのです。
今回弊誌では、司氏と KAPO 氏にインタビューを行う事が出来ました。「激しい音楽に長く触れてこられた方にこそ聞いていただきたいです。何か感じていただけるのではと思います。」 変わらないことへの恐怖と、変わることへの恐怖。SWARRRM です。どうぞ!!

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SWARRRM “こわれはじめる – Beginning to break” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【IN VAIN : CURRENTS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JOHNAR HÅLAND OF IN VAIN !!

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Norwegian Progressive Extreme Metal Outfit, In Vain Has Just Released More Polished, More Varied, And More Intelligent Dynamic New Chapter “Currents” !!

DISC REVIEW “CURRENTS”

闇深きノルウェーの森から獰猛なる知性を叫喚する、プログレッシブエクストリームの至宝 IN VAIN がシーンの “潮流” を左右するマイルストーン “Currents” をリリースしました!!神々しきメランコリーと邪悪なブルータリティが融解するその奇跡の眺望は、古の摂理に贖ってリスナーを魂の冒険へと誘います。
IN VAIN にとって、前作 “Ænigma” における Jens Bogren との邂逅は、運命にして僥倖でした。暗騒と調和を司る音響の魔術師との出会いは、バンドに備わる神秘のメロディーや豊潤なコンポジションを一際研ぎ澄まし、多様で濃密なプログレッシブワールドへの扉をしめやかに開いたのです。
鍵盤奏者でクリーンボーカルの Sindre Nedland は “Currents” を “キャッチーでインテンスに満ち、そして普通ではない” レコードだと評しています。実際、バンドは “Ænigma” でついに発見したバンドの個性、対比と実験が生み出す魔法の緊張感を “Currents” で決定的なものへと昇華し、エクストリームメタルの頂きに鋭く光る知性の剣を突き立てたと言えるでしょう。
アルバムオープナー、”Seekers of the Truth” はバンドのルーツであるエクストリームサイドを探求したリフの覇道。ギターチーム Johnar Håland と Kjetil Domaas Petersen の繰り出す魔手は、プログレッシブメタルコアの猟奇性、ブラックメタルの中毒性、メロディックデスメタルの即効性、そして流麗で夢見るようなプログロックのリードプレイを操り、Andreas のスクリームを纏って怪しく疾駆します。
Johnar はアルバムのテーマである “潮流” について 「人々はまさに大陸や国境、さらに世代をも越えて移動しているんだよ。つまり、文化は融合しているんだ。」 と語ってくれました。米国、英国、北欧を股に掛けるワイドな “真実の探求” は、この多様な作品のオープナーに相応しい説得力を誇っていますね。
一方で、”Soul Adventure” はバンドのエセリアルな一面に特化した荘厳の極み。シャープでマスマティカルなリフワークは、ノルウェーに心酔する Matt Heafey のボーカルとも確かにシンクロし、重なり合うコーラスを携えて ENSLAVED にも匹敵する神々しきエピックフィールドを創造しています。
全面参加を果たした LEPROUS のドラマー Baard Kolstad の実力には今さら触れるまでもないでしょうが、それでもコーラスの最中に突如倍テンでブラストをお見舞いする迫真の瞬間には才能の煌めきを感じざるを得ませんね。
極上の対比で幕を開けたアルバムは、”Blood We Shed” では Johanar が近年バンドはブラックからデスメタルへと接近したと語るように OBITUARY の這いずる邪心と賛美歌を悪魔合体へと導き、さらにアルバムの肝であるハモンドが牽引する “En Forgangen Tid (Times of Yore Part II)” では SWALLOW THE SUN の持つドゥームの美意識を70年代のプログ性と溶融しながら対比の頂点 “Origin” まで、劇的なエクストリームミュージックを奏で続けるのです。
アルバムは7分のエピック “Standing on the Ground of Mammoths” でその幕を閉じます。シンセ、ストリングス、ブルーズギター、サックスを組み込み織り成すシネマティックな一大ドラマは、バンドの70年代への憧憬が遂に結実した楽曲なのかも知れません。
溢れ出すノスタルジックなエモーションとシアトリカルなイメージは、時代の “潮流” を飲み込み GENESIS の創造性ともリンクしてバンドを遥かなる高みへと到達させるのです。
今回弊誌では、Johnar Håland にインタビューを行うことが出来ました!初めてリリースされる日本盤には、”And Quiet Flows the Scheldt”, “Ghost Path” 2曲のロングエピックが追加され1時間を超えるランニングタイムでこの傑作をより深く楽しむことが可能です。インタビュー後にも、日本のみんなに僕の日本愛を伝えて欲しいと熱く語ってくれた Johnar の熱意が伝わるようなプレゼントですね。どうぞ!!

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IN VAIN “CURRENTS” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【MAMMAL HANDS : SHADOW WORK】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MAMMAL HANDS !!

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New Chapter Of UK Jazz, Mammal Hands Carve Out A Great Footstep With The Expansive, But Monolithic New Record “Shadow Work” !!

DISC REVIEW “SHADOW WORK”

拡大する UK ジャズの象徴にしてニュージャズの新たな潮目、MAMMAL HANDS。昨年、初来日公演も成功させた異端のベースレストリオがリリースした最新作 “Shadow Work” は、多彩多様なジャンルを繋ぐ架け橋としてタイトルとは裏腹の凛とした光彩を放っています。
Robert Glasper に端を発する、拡散する新たなジャズの潮流はまさにモダンな音楽世界の縮図と言えます。ヒップホップ、ソウル、ファンク、エレクトロニカ、フォーク、クラシカル。様々なジャンルを縦横無尽に横断し、”Jazz The New Chapter” とも形容されるニュージャズの瑞々しいアプローチは、そして今、世界各地で同時多発的に勃興しているのです。
とりわけ UK は北欧、南米と並んで、その万華鏡のサウンドスケープで注視される新聖域の核心だと言えるでしょう。
「沢山の新たな UK のジャズアクトがその音楽にエレクトロニカを取り入れる傾向は驚きではないんだよ。というのも、UK では多くの偉大なエレクトロニカミュージックが制作されているからね。」 インタビューで Nick が語ったように、そうして UK ジャズ新世代が一際フォーカスしブレンドした個性こそ、彼の地が誇るエレクトロニカの胎動でした。
Matthew Halsall 率いる Gondwana Records のロースターはその滾りし地熱の趨勢を握ります。ハングの叙情を取り入れた PORTICO QUARTET, ビッグレーベル BlueNote への移籍を果たした GOGO PENGUIN, そして中でも今回取り上げる MAMMAL HANDS は最もエクレクティックで普遍的な魅力を備えたトリオだと言えるのかも知れませんね。
何より記して置くべきは、バンドの持つ Steve Reich 由来のミニマリズムと幻想的なそのサウンドデザインが、馴染み深きポストロックやポストプログレッシブの領域と非常に接近している点ではないでしょうか。
「実の所、僕たちは自分たちをジャズグループだと考えたことは一度もないんだよ。」 と JESSE が語れば、Nick は 「僕が聴いて育ったのは、MOGWAI, GODSPEED YOU! BLACK EMPEROR, KING CRIMSON といったバンドなんだ。」 と証言します。
レコード最長のエピック “Transfixed” はその象徴かも知れません。シングルノートの反復から生まれるグルーヴは、いつしか複雑で多面的なリズムとメロディーを重ねて行きます。
ライヒとチャネリングを果たしたかのようなミニマリスティックなデザインは、Jesse のタブラを使用したパーカッシブなアプローチ、Nick のアコースティックとエレクトリックを行き来するヒプノティックな鍵盤の妙、Jordan のコルトレーンを想起させる冷ややかなテナーの情熱、そしてさりげのない電子の海を全て携えて、60, 70年代の “スピリチュアルジャズ” をロックとコンテンポラリーのイメージを伴い21世紀へと蘇らせるのです。
実際、「新しいアプローチとトラディショナルなアプローチをブレンドして音楽を創造することは、 僕たちにとって本当に興味深い手段なんだよ。それに、僕は新たなバンドがコンテンポラリーなサウンドを追い求めることは重要だと思っているからね。」 と Nick が語るように、彼らの戦略は実に巧妙です。
近年、よりエレクトロニカへとコミットする PORTICO QUARTET とは対象的に、MAMMAL HANDS はジャズのトラディショナルな偶然性からコンテンポラリーな必然性、そしてロックやプログ、エレクトロニカのリスナーにもアピールするキャッチーなフックとチャレンジングな革新性を兼ね備えているのですから。
ストリングスを文脈に配置したミニマルジャズの体現 “Black Sails”、フルートで作曲されたアイリッシュフォークとジャズの美麗なる落とし子 “A Solitary Bee”、クラシカルの息吹が宿る “Boreal Forest”、そしてグループのアイデンティティであるワールドミュージックに特化したタブラの魔術 “Three Good Things”。
つまり全ては、アドベンチャーを志向するジャズ、ロック、フォーク、アンビエント、ダンスリスナーにとって、格好の架け橋として設計されているのです。そして絶景なるその無垢なる橋からの眺望は、逆説的に言えばカテゴライズを超越したただ “音楽” と描写されるべき風景なのかも知れませんね。
今回弊誌では、メンバー全員にインタビューを行うことが出来ました。アクセシブルでありながら非常に繊細かつ多様な彼らの音楽は弊誌の理想ともシンクロします。「多くの人が、僕たちの音楽が他のジャンルを聴くきっかけになったと言ってくれるのは嬉しいよ。」 どうぞ!!

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MAMMAL HANDS “SHADOW WORK” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DIABLO SWING ORCHESTRA : PACIFISTICUFFS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DANIEL HÅKANSSON OF DIABLO SWING ORCHESTRA !!

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Hybrid Of Old–style Swing jazz, Classial, and metal. Sweden Based Incredible Octet Diablo Swing Orchestra Has Released More Unique, Unexpected But Ultra-catchy Masterpiece “Pacifisticuffs” !!

DISC REVIEW “PACIFISTICUFFS”

メタルワールドのアウトオブボックス。世界で最もカラフルかつユニークな悪魔の楽団 DIABLO SWING ORCHESTRA が、遂にシーンへとより深く浸透すべき新作 “Pacifisticuffs” をリリースしました!!複雑怪奇とポップを過去最高の滑らかさで融解させた作品には、タイトルに冠した “平和主義” と “殴り合い” の二律背反が見事にフィットしています。
“ポストファーストメタルタイム”。WALTARI の Kärtsy Hatakka が弊誌のインタビューで証言したクラッシックメタルとモダンメタルの偉大なる架け橋に、スウェーデンが果たした役割はあまりにも絶大でした。
MESHUGGAH, OPETH の両巨頭を挙げるまでもなく、90年代初頭から此の地の先鋭は、ベーシックなメタルのデフォルトにプログレッシブの波動、エクストリームな残虐性、フォルクローレの優美、そして複雑なリズムアプローチ等を付加してモダンメタルの礎となる百花繚乱の多様性を創世し続けているのです。
中でも、チェロやホーンセクションを備えた8人組 DIABLO SWING ORCHESTRA のエクレクティックな存在感は飛び抜けて異端だったと言えます。その名が物語る通り、メタル、ジャズ、クラッシックを等しくベースとする狂気を孕んだクロスオーバーの濁流は、アヴァンギャルド、エクスペリメンタルの狭い定義に堰き止められ限定的ながら、間違いなく強烈な印象と影響を残して来たのです。
そして、前作 “Pandora’s Piñata” から5年という長いインターバルを経てリリースしたバンドの最新作 “Pacifisticuffs” は、囚われていたその狭い檻までをも突き破り、より幅広く認知と賞賛を受けるべき作品に仕上がったと言えるでしょう。
オペラティックな歌唱でバンドの顔とも言えた Annlouice Lögdlund が脱退し、新たに Kristin Evegård を迎えたことは、結果として変化の象徴となりました。より普遍的で、しかしアンニュイかつジャジーな魅力と個性を備えた Kristin の伸びやかな歌唱は、バンドのカルトなイメージを一新させるフレッシュな起爆剤だと言えますね。
爽快でキャッチー、そしてあまりに多様なオープナー “Knucklehugs (Arm Yourself with Love)” は楽団の新たなイメージへと誘う招待状。Daniel が 「僕たちはまず、強力なメロディーやリズミックなフックといった楽曲の強固な基盤にフォーカスする傾向があるんだよ。」と語る通り、ポップパンクのコマーシャルな突進力さえ喚起する Kristin と Daniel のデュエットは、メタリックなギターリフ、スウィングするホーンセクション、そしてバンジョーとストリングスを携えたエルヴィスの祝福を一身に受けて、至上なる創造性とフックを提示します。
陽気なブルーグラスから一転、オーケストレーションとホーンをさらに前面に配した感傷的なメタルポルカ “The Age of Vulture Culture” で Kristin の完璧なる融合を証明した後、バンドは “Superhero Jagganath” でトロピカルなレゲエにハワイアン、”Lady Clandestine Chainbreaker” ではフラメンコの邪悪な誘惑にフォーカスし、”Pacifisticuffs” の音楽が世界を巡る旅であると高らかに宣言するのです。
そうして辿り着く “Jigsaw Hastle” は、故郷スウェーデンへの凱旋と言えるのかも知れません。Kristin の透明な哀愁を生かしたウルトラキャッチーなダンスチューンは、同郷の ABBA を彷彿とさせる北欧の煌びやかな風。アートワークのトライアングルから注入された電気の魔法は、きっとこの楽曲のエレクトロニカな要素へと還元されたに違いありません。
Daniel が提唱する “異なるサウンドを独自のものへと昇華する偉大なる自由” は、究極のポップと巡るエクレクティックな世界旅行の果てに遂に完成を見たのかも知れませんね。
今回弊誌では、シンガーでギタリスト、バンドの中心人物 Daniel Håkansson にインタビューを行うことが出来ました。どうやら Daniel のボーカルパートが減った理由も、Kristin の加入による理想のオクテットの完成にある様ですね。「今まで成されてきたことの “外側” について考えなくてはいけないと思うんだ。」どうぞ!!

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DIABLO SWING ORCHESTRA “PACIFISTICUFFS” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【BELL WITCH : MIRROR REAPER】2017 X’MAS SPECIALL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DYLAN DESMOND OF BELL WITCH !!

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Seattle Based Doom-duo, Bell Witch Takes You Poetic And Philosophical Deathly Journey With Timless Masterpiece “Mirror Reaper” !!

DISC REVIEW “MIRROR REAPER”

シアトルに居を置くベース/ドラムスのドゥームデュオ BELL WITCH が、1曲83分の暗重なる叙事詩 “Mirror Reaper” をリリースしました!!生と死を投影する難解なるあわせ鏡は、昨年逝去した前ドラマー Adrien Guerra へ捧げるトリビュートとしてその崇高なるメランコリー、哀しみの影を増しています。
紫煙のヘヴィートリオ SLEEP が1曲が一時間にも及ぶスロウでアトモスフェリックな反芻の集合体 “Dopesmoker” をリリースして以来、ドゥーム/スラッジ/ドローンのフィールドはメタルの実験性を最も反映する先端世界の一つとして、創造性のリミットを解除し、定石を覆しながらその歩みを続けて来ていました。
勿論、JESU や BORIS のエピカルな長編も、ジャンルの音楽性とは対極に位置する瑞々しくも天真爛漫なムードを追い風に創造された濃厚なサウンドスケープであったに違いありませんね。それでも、BELL WITCH の新たなチャレンジ、1曲83分の野心は想像を遥かに超えるサプライズでした。
“Mirror Reaper” を形作る要素自体は、前作から大きく変化を遂げてはいません。確かにヘヴィーなレコードですが、ランニングタイムの大半はラウドでもブルータルでもなく非常にオープンでスペーシー。ベース、ドラムス、ボーカルにハモンドB3が生み出すその空間に巣食うは巨大な絶望、悲哀と、全てを掻き集めても片手で掬い取れるほど希少なる希望。
しかし Dylan が 「誰にでも簡単に作れるようなレコードにする必要は全くないと決めたんだよ。楽曲を別々に分けてしまうと、説得力が失われる気がしたんだ。」 と語るように、48分の “As Above” と35分の “So Below” が自然と連続して織り成す構成の進化、常識の破壊は、より妥協のない緻密なコンポジション、Adrian の死に手向けるメランコリックな花束と共に、生と死の安直でステレオタイプな二分法へ疑問を投げかけ、”死のメディテーション” を指標しているのです。
アルバムは、アトモスフィアの波に溺れる6弦ベースの幽玄な調べで幕を開けます。実際、「Michael Hedges のギタープレイは実に参考になったね。」 と語るバンドのマスターマインド Dylan Desmond のベース捌きは驚異的で卓越しています。
左手のみならず、右手を強い感情と共にフレットへと叩きつけ、時に滑らし、時に揺らして生み出すトーンは唯一無二。
ギタリストの不在を感じさせない、むしろそれを不必要と思わせる、独特のウォームでメロディックなマルチディメンショナルサウンドは、新たなベースヒーローの誕生を強くアピールし、同時に崇高な意思と純潔なるムードをアルバムにもたらしていますね。
加えて、地を這うグロウルとミスティックな詠唱のコントラスト、SIGUR ROS を想起させるファルセットのハーモニー、ハモンドオルガンのオーガニックなサステイン、Jesse のセットから流れ出すシンバルの漣。アルバムは、瞑想の荒野、空虚な嵐、美麗なる責め苦を経て、いつしか全てが緩やかな生命と音の大河に注がれドゥームの奇跡、反復の魔術を完璧に創出します。そして挿入される亡き Adrian のボーカルは、”生と死の間に存在する共通要素” “ゴースト” を信じるバンド独特の素晴らしきトリビュートなのでしょう。
NEUROSIS, SWANS などと共闘を続ける鬼才 Billy Anderson のインプットにも触れない訳にはいきませんね。Billy ほど暗闇と混沌、そして壮大なサウンドを巧みに精製するプロデューサーは決して多くはないでしょう。そしてこの作品ほど、型破りで威厳を湛えたアンタッチャブルなメタルレコードも実際ほとんど存在しないはずです。
時間、場所、もしかしたら自分自身さえも忘れてただ広大な闇の迷宮で彷徨うだけの地獄、もしくは天国。コマーシャルと最も遠い場所にあるアートのエリジウム。
そして、詩的で哲学的な “死の旅路” は、作品で最も哀しく最も愛すべきポートレート、バンドのコラボレーター Erik Moggridge の消え入るような歌唱で幕を閉じるのです。
今回弊誌では、Dylan Desmond にインタビューを行うことが出来ました。海外メタル誌では軒並みベストの上位に撰されている傑作。そして弊誌にとっては、最もクリスマスらしい作品です。どうぞ!!

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BELL WITCH “MIRROR REAPER” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【VEIL OF MAYA : FALSE IDOL】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MARC OKUBO OF VEIL OF MAYA !!

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Sumerian Giant, Chicago Based Tech-Metal Quartet, Veil Of Maya Opens New Chapter Of Metal With Their Game-Changing New Record “False Idol” !!

DISC REVIEW “FALSE IDOL”

スメリアンの巨人、プログレッシブデスコアの先導者 VEIL OF MAYA が、メタルの領域を拡大しエクレクティックに羽ばたく新作 “False Idol” をリリースしました!!オーガニックかつ複雑な、アートロックやアヴァンギャルドの世界へとより接近した真なるメタルアイドルは、その偉大なる変革を推し進めて行きます。
00年代の中盤から、モダンプログメタル革命の中核に Sumerian Records が存在し続けることは明らかです。BORN OF OSIRIS, ANIMALS AS LEADERS, PERIPHERY, そして VEIL OF MAYA。”スメリアンロースター” は常にシーンの最前線に立ち、多様でコンテンポラリーなメタルの革新を色鮮やかに後押しし続けて来たのです。
中でもこのシカゴのカルテットが2008年に残した “The Common Man’s Collapse” の印象は鮮烈です。重圧のブレイクにビートダウン。デスコアサウンドを要としつつ、変幻自在なテンポと拍子、カオティックなデザインとトリッキーなアイデア全てを共存させて、コンテンポラリーかつ不可思議な独自のプログレッシブワールドでリスナーを魅了したのです。
シュメール帝国の拡大と歩調を合わせるかの如く、アステカの名を冠したバンドはそのサウンドを磨き上げ、ワイドに進化を続けています。グロウルとクリーンを併用する新ボーカル Lukas Magyar が加入し、ポップでキャッチーなイメージを開拓した前作 “Matriarch” は確かに驚きでしたが、決してその大変革は彼らの創造性を損なうものではありませんでした。
Marc が “Survive” と語るように、”Mikasa” という名曲とともに、バンドは自由な翼を手にしたようにも思えます。そしてよりダークでミステリアス、複雑性とダイナミズムを増した “False Idol” はポップとアートの枠を超えダイハードなファンをも唸らせるはずです。
「力に目覚めた男がダークサイドへと落ちていくフィクションなんだ。」 Marc は “False Idol” のテーマについてそう語ります。このアイデアが Lukas のものであることも、バンドの現在の一体感を物語りますが、”False Idol” が大統領ドナルド・トランプを隠喩していることは想像に難くありませんね。そしておそらくは、アルバムを支配する緊張の陰はそこに起因しているのでしょう。
電子の海で揺蕩うコズミックなイントロ “Lull” に導かれ幕を開けるオープナー “Fructure” はバンドのクリエイティブな進化の象徴です。”Unbreakable” を再訪するかのようなクリケットを活かしたマスマティカルでグリッチーなギターリフと、アトモスフェリックなシンセサウンドの奇想天外な融合は、メタルからの Kendrick Lamar や Flying Lotus への回答とも言えるほどに瑞々しく創造的です。
「実際、僕は最近はあまりメタルを聴いていないんだよ。だから君がコンテンポラリーなジャズや、Hip Hop、エレクトロニカなんかの影響を発見して言及してくれたことは嬉しいね。」 Marc はそう語ります。「少なくとも僕は、新たな要素を加えることは、メタルの進化を促す良い方法だと感じているよ。」 とも。
確かにアルバムには、現代的なジャンルのクロスオーバー、音楽のモダニズムを感じる場面が多く存在します。アグレッシブで複雑怪奇な Marc のリフワークと、光のシンセに映えるLukas のソフトでメランコリックなウィスパーは、”Doublespeak”, “Overthrow” と聴き進めるに従って、より絶妙なコントラストとインテンスを描き始めるのです。
そしてアルバムのハイライト、ダイナミズムの洪水は “Whistleblower” で訪れます。近年、Tigran Hamasyan へのリスペクトを公言してはばからない Marc のコンポジションは、遂にデスコアの猛進とジャズの優美な響きを同時に抱き締めました。Lukas の激情とメランコリーを行き来するボーカリゼーションも相俟って、イマジネーションを激しく刺激するアヴァンギャルドな楽曲はメタルの新たな可能性を指し示す期待感に満ち溢れてています。
また、インタビューにもある通り、Marc のゲームミュージックへの傾倒ぶりを見れば、初期の VEIL OF MAYA が究極にメカニカルでチップチューンライクな構成やリフを有していたことにも納得がいきます。つまり “False Idol” はバンドのオーガニックな変化の証。
伸びやかでキャッチーなクリーンボーカルのみで設計したポジティブな “Manichee”、Jacob Collier を思わせるコーラスのタペストリーが印象的な “Citadel”、そしてアルバムを締めくくるアンセミックな “Livestream”。全てはアンビエントなストリングスがバンドのデザイン、エモーションへナチュラルに溶け込んだ新機軸。同時にそれは、すでに “Djentrain” を降りたバンドの新たなる目的地なのかも知れませんね。
今回弊誌では、バンドのマスターマインド Marc Okubo にインタビューを行うことが出来ました。今年の2月には、Realising Media の劇的な招聘で来日公演を成功させています。「いつか Djent が死ぬその時も、きっと僕たちは VEIL OF MAYA らしいサウンドの音楽を作っているだろうね。」 どうぞ!!

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VEIL OF MAYA “FALSE IDOL” : 9.8/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CyHra : LETTERS TO MYSELF】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JESPER STRÖMBLAD & EUGE VALOVIRTA FROM CyHra !!

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The Term “Supergroup” Is Definitely Justified Here. CyHra Has Just Released Fantastic Debut-full, Modern Metal Bible “Letters to Myself” !!

DISC REVIEW “LETTERS TO MYSELF”

IN FLAMES の崇高と誉を築いた二人の英傑、Jesper Strömblad と Peter Iwers が再び鼓動を重ね共闘を決意した新バンド CyHra。さらに ex-AMARANTHE の Jake E、ex-SHINING の Euge Valovirta、LUCA TURILLI’S RHAPSODY の Alex Landenburg で集成したバンドは、メンバーの過去と未来を率直に投影した “Letters to Myself” でその鮮烈なる月明かりを世界へと注ぎます。
Jesper と Peter の再結集に、あの慟哭と扇情の “メロデス” サウンドを期待し望むファンも多いでしょう。しかし、グロウルの存在しない CyHra は当然 “メロデス” ではありません。
勿論、時に Jesper のトレードマークである重厚でメロディックなギターハーモニー、トーン、リフワークは “Colony”/”Clayman” さらにはよりコンテンポラリーな傑作 “Come Clarity” の面影を効果的に感じさせますが、バンドの本質は Jake の伸びやかでエモーショナルな歌声を軸としたウルトラメロディックなモダンメタルに在ります。
実際、近年の IN FLAMES、そして AMARANTHE には不可欠な要素であるエレクトロニカをはじめ、ストリングス、ラップ、バラードなど多様な影響を自然に配したカラフルなアルバムは、メロデスの威風にメインストリームの風格すら携えてフレッシュな未来の息吹を湛えているのです。
オープナー、”Karma” からアルバムはエナジーとインテンスに満ちています。激動のエレクトロビートに Jesper と Euge のハーモニーリフが重なるエキサイティングなキックオフは、”Letter to In Flames” と形容可能なほどに扇情的。同時に、Jake E のキャッチーとエモーションの狭間で揺らぐ伸びやかな歌声は、Iwers/Landenburg の生み出すタイトなリズムとも完璧にシンクロし、Jesper の深いカルマさえも抱きしめて、リスナーの心を揺らしバンドの個性を主張します。
「実際、もうその話はしたくないんだ。だって僕が昔のバンドについて語るたびに、その内容は捻じ曲げられて伝えられるんだからね。」 Jesper が抱える IN FLAMES への想いは複雑でしょう。おそらくは、彼の中のジギルとハイドがせめぎ合っている最中なのかも知れません。故に、”Karma” とはまさに Jesper と Peter 2人が過去のバンドに抱えている”業”であり、この素晴らしきモダンメタルチューンは彼らの業を解き放つ勇壮な決意のステートメントであると信じます。
狂おしいまでにメランコリックな Jake の絶唱が胸を抉る “Heartrage”、Jesper お得意のクリーンギターが冴える “Here to Save You” は、共に静と動の見事なコントラストが北欧らしい澄んだ空気、アトモスフィアに映えるバンドの代名詞的な佳曲。実際、LINKIN PARK のスケール感をも想起させる彼らに、多くのメディアが IN FLAMES と AMARANTHE の “Hybrid Theory” と評する事実にも頷けます。
一方で、バンドは想像以上の驚きをもファンへ届けます。フォルクローレとターンテーブルが出会うパワーバラード “Closure”、ゴシックとエレクトロニカが交差する耽美な双極 “Closure”、オーガニックなストリングスとデジタルサウンドが厳かにに融合する静謐の “Inside a Lullaby”、さらには “Dead to Me” で見せるメインストリーム的なラップ。
「僕たちは、”一次元的” なアルバムは作りたくないんだよ。」 そう Euge は語ります。カラフルに彩られた43分のスペクタクルは、多様=モダンなメタルシーンにおいてバンドの豊潤なる可能性を明瞭に指し示しているのです。
「君は僕たちを葬ろうとしたね。だけど僕たちは最後の一日まで立ち続けるよ。」アルバムを締めくくる日本盤ボーナストラック “Forever” で Jake はそう歌い紡ぎます。ビッグバンドから離れたメンバーが大半を占める CyHra。彼らが過去の自分に送る手紙は、間違いなくその前向きな離脱を後押しするエールでしょう。
今回弊誌では、Jesper & Euge のギターチームにインタビューを行うことが出来ました。「僕たちはただ頭に思い浮かんだ楽曲を書いているだけさ。」 どうぞ!!

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CyHra “LETTER TO MYSELF” : 9.9/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【THRESHOLD : LEGENDS OF THE SHIRES】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH RICHARD WEST OF THRESHOLD !!

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Sprawling 83 Minute Double Album, Perfect Epic “Legends of the Shires” Is An Excellent Introduction To Threshold’s World !!

DISC REVIEW “LEGENDS OF THE SHIRES”

結成は1988年。1993年にデビュー作をリリースした不朽のプログメタルアクト THRESHOLD が、”モンスターレコード”の名に相応しきダブルアルバム “Legends of the Shires” をリリースしました!! デビュー当初、”英国からの DREAM THEATER への回答” と謳われし希少なる生残の先駆者は、四半世紀の時を超え遂に至純なる “アンサー” を提示しています。
海外のプログメタルシーンでは、信頼出来るビッグネームとして揺るぎない地位を築いて来た THRESHOLD。一方で、残念ながら日本ではおそらく、 “スレショルド” “スレッショウルド” “スレッシュホウルド” 等、今一定まらない名前の読みづらさと、サーカスライクの派手なプレイに頼らない楽曲重視の音楽性に起因する無風、凪の状況が長く続いてきました。しかし、”Legends of the Shires” は間違いなく日本のファンにとって THRESHOLD への素晴らしき “Threshold” “入口” となるはずです。
楽器陣は2003年から不変である THRESHOLD の歴史は、天賦の才に恵まれた3人のシンガーが織り成す鮮やかな音楽絵巻だと言えます。今回リードシンガーを務める Glynn Morgan は、バンドのセカンドアルバム “Psychedelicatessen” 以来の復帰。三度目の脱退となった前任者 Damian Wilson の魅力でもある若干クセの強い歌声に比べると、2011年に残念ながら亡くなってしまった Andrew “Mac” McDermott の透明でハーモニーの映える声質に近いように感じますね。IRON MAIDEN の Bruce 後任オーディションで最終選考まで残った実力は本物です。
実際、Richard はインタビューで、”Legends of the Shires” が、”Mac” 時代の名作 “Subsurface” “Dead Reckoning” と似た雰囲気を持つことを認めています。そして、おそらくこの並外れたコロッサルなエピックは、精彩なるメロディーの崇高美、エレガントで壮観な審美的デザインの観点から前述の二枚をも凌駕しているのです。
バンドはリスナーのイマジネーションに配慮し、あまり作品の背景、詳細を明かそうとはしませんが、アルバムが同郷のトールキンの小説にインスパイアされていることは確かでしょう。”The Shire” とはトールキン作品の舞台である “中つ国” に存在するホビットの美しき居住地。そして Richard 語るところの 「変化からより強くなって戻ってくる」 というメッセージには、どうやら現在の英国の状況を隠喩し重ねている部分もあるようです。
アルバムは鐘の音、鳥の囀り、そしてアコースティックサウンドで悠久の大地を眼前に描く “The Shire (Part 1)” で緩やかに幕を開けます。続くダークで小気味よいリフワークが印象的な “Small Dark Lines” でアルバムのストーリーは躍動を始め、THRESHOLD の真骨頂とも言える鮮やかなメロディーでリスナーの心を溶かすのです。
事実、Glynn は、ハイトーンに重きを置く他のプログメタルアクトとは一線を画する、ミッドレンジ中心の爽やかでエモーションにフォーカスした歌唱を披露。頭に残るボーカルとコンパクトなリフワーク、ツインギターのハーモニーは、バンドがキャッチーでコマーシャルな楽曲を恐れない冒頭の強固な意思表示となっていますね。
とは言え、勿論プログレッシブな一面はバンドの象徴です。”The Man Who Saw Through Time”, “Lost In Translation” の10分を超える二つの叙事詩は、THRESHOLD がプログレッシブなスピリットと、豊潤なるサウンドスケープを内包する稀有な集団であることを雄弁に語っていますね。複雑でしかしナチュラルにレイヤーされた広大な音楽のパノラマは、Karl の見事なトーンコントロール、Richard のムーディーで流れるようなキーボード捌き、ドライブするシーン屈指のソリッドなリズム隊を携え、様々な場面を映す奇跡のオデッセイとしてリスナーに “The Shire” の景観や物語を運ぶのです。
アルバムのハイライトは、”Stars and Satellites” で訪れます。DREAM THEATER がハイテクニカルで、圧倒的なある種数学的視点によりプログメタルを捉えたのに対して、FROST*, VANDEN PLAS, そして THRESHOLD 等はプログレッシブロックの精神性やコンセプトによりフォーカスしているのかも知れませんね。
Richard が影響を受けたアルバムに、KING CRIMSON や YES ではなく PINK FLOYD, GENESIS を挙げているのは象徴的かも知れません。このスーパーキャッチーで、聴く度に心が踊るポップな宇宙は、逆に DREAM THEATER が決して到達し得ないプログレッシブポップ領域のはずです。
アルバムは英国からの回答をより鮮明に感じさせる、美しきピアノバラード “Swallowed” で静かに幕を閉じました。
今回弊誌では、1992年からバンドのキーボードプレイヤーを務める Richard West にインタビューを行うことが出来ました。間違いなく日本でこそ評価されるべきバンドです。どうぞ!!

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THRESHOLD “LEGENDS OF THE SHIRES” : 10/10

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