EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH NICK BLACKA OF GOGO PENGUIN !!
PHOTO BY LINDA BUJOLI
Manchester-based Ambitious Jazz Trio, GoGo Penguin Draws Incredible Acoustic-Electronic Visions With Their Eclectic New Record “A Humdrum Star” !!
DISC REVIEW “A HUMDRUM STAR”
“Acoustic Electronic” な音景をヴィヴィッドに描くマンチェスターの彗星 GoGo Penguin が、宇宙の真理を奏し最新作 “A Humdrum Star” をリリースしました!!多種多様な次元が交錯し、衝突し、そして融解する偶然絶後のエピックは、膨張する宇宙の営みを彼方から俯瞰する、若しくは人の内なる宇宙を心の目で見つめる音の天体観測なのかも知れません。
「GoGo Penguin はメンバー3人ともジャズをプレイして来た歴史があるけど、同時に他のタイプの音楽も聴いてプレイして来たんだよ。だから、そういった好きな要素をバンドに持ち込むのは当然だよね?」 大胆さと繊細さを兼ね備えた ベーシスト Nick が語るように、GoGo Penguin の音楽は2010年代の拡大拡散するジャズを象徴する多様性に満ちています。
三者が学問として学んだクラッシック、ジャズを基盤として、エレクトロニカ、インディーロック、ポストロックへの愛が溢れるそのエクレクティックで斬新なデザインは、英国の音楽賞マーキュリープライズへのノミネートやニューヨーク・タイムズ紙による ”SXSW 2017”のベスト・アクト12への選出が実証するように高い注目、評価を集め続けているのです。
さらに踏み込んで思考を進めれば 「UK、特にマンチェスターでは、何がジャズで何がジャズじゃないかなんて気にしていないんだよ。」 という一言が目に止まるはずです。
世界を驚かせた拡大するコンテンポラリージャズのプロパガンダ “Jazz The New Chapter” ですが、実際は Nick も語るように、ある種未だ伝統的な中心地アメリカから遠く離れた UK でこそ衝撃的なブレンドのカルチャーが勃興しているのです。先日インタビューを行った MAMMAL HANDS にも言えますが、結合物がブラックミュージックであれ、エレクトロニカであれ、ポストロックであれ、最早彼らの創造する “ジャズ” は “ジャズ” ではない何かへと移行しつつあるようにも感じますね。
“Inner” と “Outer”。二つの思考から制作を始めたという “A Humdrum Star”。インタビューで Nick が語るように “Outer” とは俯瞰した広大な宇宙、”Inner” とは壮大な宇宙にポツリと浮かぶちっぽけな人間やその精神世界を指すはずです。
同時に、シーンでもずば抜けたテクニックを誇るドラマー Rob は、このレコードがエレクトロニカをベースに作られながらも、プロデューサー Brendon が全てにおいて細部までオーガニックであることに拘ったと語っています。例えるなら、PC で精密にデザインされた建築物を、匠の手作業で一つ一つ忠実に再現して行くようなプロセスでしょうか。
すなわち、”Outer” とはデジタルな世界、そして “Inner” とはよりエモーショナルなヒューマンの領域をも示すダブルミーニングなのでしょう。
そして確かにアルバムを通して貫かれる “Acoustic Electronic” なテンション、デジタルとオーガニックが生み出す二面性の世界観はある意味超越的ですらありますね。オープナー “Prayer” で聴くことの出来る Chris の美しきピアノメロディーとジャズの不協和音に巣食うコントラストは手動の電子ノイズを導き、ソウルフルでしかしリスナーをどこか不安にさせる不思議なアトモスフィア、人間らしさを伴いアルバムのイメージを喚起します。
“Raven” で複雑かつメカニカルなデジタルビートとノイズをそのフィジカルで一手に引き受け全てのテクニックを楽曲へと還元する一方で、”Brado” ではハウスミュージックの装いでチルアウトする Rob の存在感は圧倒的。デジタルなビートを細部まで究極に人間が再現したかのような、ある種逆説的な Rob の手法は、シンプルで厳かな耽美のメロディーに電子の残響を宿す Chris のピアノトーン、Nick の多彩で強靭なウッドベースを伴って異様なまでの推進力、奇跡のグルーヴを創出しています。
二面性の収束こそ “Transient State” だと言えます。東京で過ごした日々の中で、代々木八幡の神聖さと周囲の雑多な雰囲気の違いに衝撃を受け神道に興味を抱いたという Chris。自然の中に神を見つけ善も悪も等しく抱きしめる神道の考え方は、ネガティブな出来事もポジティブな出来事も壮大な神秘の一部であるという作品のテーマに繋がることとなりました。
アコースティックとエレクトロニカ、静と動のダイナミズム、広大な宇宙と狭小な人の営み、そしてネガティブとポジティブ。様々な二進法で彩られたレコードは、バンドがインストルメンタルでありながら類希なるストーリーテラーであることを鮮やかに物語っているのです。
今回弊誌では Nick Blacka にインタビューを行うことが出来ました!!2/19からは待望の日本ツアーも始まります。どうぞ!!
GOGO PENGUIN “A HUMDRUM STAR” : 10/10
INTERVIEW WITH NICK BLACKA
Q1: First of all, how was your Japan Tour in the past? Your next Japan tour will start soon. What do you like about Japan?
【NICK】: We haven’t really toured in Japan yet but we’ve played in Tokyo quite a few times. We first played in Tokyo at the Blue Note Jazz Club in 2016 and then we came back twice in 2017 for the Blue Note Jazz Festival and Tokyo Jazz Festival. It’s great to visit Japan. We always get a really warm reception and a great response from the fans. On our second visit we were able to see more of the city and do some sightseeing which we all really enjoyed. We’re definitely looking forward to coming back to play at the Blue Note Jazz Club again and to visit Nagoya for the very first time.
Q1: 2/19から始まる日本ツアーを楽しみにしているファンも多いと思います。まずは過去に行った日本ツアーの感想を聞かせていただけますか?
【NICK】: 実際はまだ日本をツアーしたことはないんだよ。だけど東京では何度かプレイしているね。
最初に日本でプレイしたのは、2016年の Blue Note 東京だったね。昨年にも、Blue Note Jazz Festival と Tokyo Jazz Festival でプレイしたんだよ。日本を訪れるのは素晴らしい経験だね。僕たちはいつだって、日本のファンから本当に温かい歓迎と素敵なレスポンスをもらっているんだからね。
2度目の来日では、より多くの都市を訪れ観光することも出来たんだ。本当に全員が楽しめたね。
Blue Note 東京に戻ることをとても楽しみにしているし、名古屋は初めてだからそれも楽しみだね。
Q2: This is the first interview with you. So, could you tell us about yourself and band itself? What kind of music were you listening to, when you were growing up? Who was your musical hero at that time?
【NICK】: We’ve all come from slightly different musical backgrounds. I personally grew up listening to more guitar based music and some jazz records from my mum’s record collection. A bit later I got into bands like Joy Division and The Smiths. We used to play their songs in my first band when I was around 13 or 14 years old. I then discovered jazz, hip hop, drum and bass and electronica and studied jazz at music college. In the band both Chris and Rob studied classical music but we all met playing on the jazz scene in Manchester. We all have a shared love of electronica and in the early days we were influenced by artists such as Aphex Twin, EST, Four Tet and Radiohead to name but a few.
Q2: 本誌初登場です!まずは、あなたの音楽的なバックグラウンドについて話していただけますか?
【NICK】: 僕たちは全員が少しづつ異なるバックグラウンドを持っているんだ。僕個人としては、よりギターをベースとした音楽、それに母のレコードコレクションからいくつかジャズのレコードなんかを聴いて育ったんだ。その少し後には、JOY DIVISION, THE SMITH みたいなバンドにのめり込むようになったね。僕が13、14の頃の最初のバンドでは彼らの楽曲をよくプレイしていたね。
そこからジャズやヒップホップ、ドラムンベースにエレクトロニカなんかを発見し、ジャズを学ぶため音楽大学に進んだのさ。
Chris と Rob はクラッシック音楽を勉強していたんだけど、僕たちが出会ったのはマンチェスターのジャズシーンだったね。全員がエレクトロニカを愛していて、特に最初の頃は APHEX TWIN, E.S.T., FOUR TET, そして RADIOHEAD みたいなアーティストから影響を受けていたんだ。少し挙げただけだけどね。
Q3: How did the band come to be? OK, we love Penguins, they are really cute and nice. But what made you choose “GoGo Penguin” for your band name?
【NICK】: We were named after a stuffed penguin that was in the room where we first rehearsed. Initially the idea was to get together and play and write some music together. There wasn’t a plan to go and play live at that point so we didn’t need a name. However, a friend who organised a gig in a bar in Manchester was looking for a band after another band had dropped out at the last minute. He asked us to fill in but said that we needed a name so that he could promote the gig. Someone suggested Penguin and then the GoGo was added afterwards for some reason.
Q3: それにしても、GoGo Penguin というバンド名は強く印象に残りますね?
【NICK】: この名前は、僕たちが最初にリハーサルを行った部屋に置かれていたペンギンのぬいぐるみに因んでつけたんだよ。
最初のアイデアは、とりあえず集まって一緒にプレイしたりちょっと作曲をしてみたりするような感じだったね。その時はライブでプレイする計画はなかったんだ。だから名前も必要なくてね。
だけど、マンチェスターのバーでライブをオーガナイズしている友人がドタキャンしたバンドの穴埋めを探していてね。彼は僕たちに頼んで来たんだけど、名前があればギグをプロモート出来ると言うんだ。誰かがあのペンギンを思い出して、それから GoGo が何かしらの理由で後から加えられたんだ。
Q4: Since your previous record “Man Made Object”, you transfered to legendary label Blue Note. Off course, I respect your ex-label Gondwana Records, but you seem to be one of the jazz greatests. How do you feel now?
【NICK】: It’s a great honour and a privilege to be part of such an iconic label with such an amazing history. We didn’t have a plan to leave Gondwana Records but when Blue Note offered us a deal it was too good of an opportunity to turn down. The label have always been very supportive of what we are doing and we have a good relationship with the whole team.
Q4: 前作 “Man Made Object”は、ビッグレーベル Blue Note からの初の作品となりました。勿論、以前所属していた Gondwana Record も素晴らしいロースターを揃えたレーベルでしたが、やはり Blue Note は格が違いますよね?
【NICK】: これほど素晴らしい歴史を持つアイコニックなレーベルの一員となれて、本当に栄誉だし特別な出来事だよ。Gondwana Records を離れたいと思っていた訳ではないんだけど、Blue Note が出したオファーは、断ることが出来ないほど素晴らしい機会だったんだ。
Blue Note は僕らをとてもサポートしてくれているし、一つのチームとして素晴らしい関係を築いているんだよ。
Q5: Let’s talk about your newest record “A Humdrum Star”. “A Humdrum Star” seemed to be named after Carl Sagan’s “Cosmos”. You know, you are definitely great story teller in spite of instrumental band. So, could you please tell us about the concept of this epical record?
【NICK】: We chose that title because it depicts how we are all such a small part of something much greater, something that we can’t really understand. The title is in reference to the sun and the idea that it is just one small star in a gigantic universe. There is another quote by Carl Sagan about how earth is viewed as a pale blue dot. The photograph was taken from Voyager 1 back in 1990 of the earth from space and it’s just a small speck in the photo. It really puts into perspective the size of the universe and how all the small trivial things in life are really insignificant. The concept for the album was the idea of inner and outer and looking at things from different perspectives. Many of the ideas for the tunes are usually based in spiritual concepts or things that we’ve read about or even dreamed, such as the track ‘Raven’ where Chris dreamt that he’d been playing chess with a raven.
Q5: “A Humdrum Star” というタイトルは Carl Sagan のテレビシリーズ “Cosmos” に因んで付けられたようですね?
【NICK】: 僕たちがこのタイトルを選んだのは、この言葉が人間が自分たちの預かり知らぬあまりに壮大な何かのほんの一部分だという事実を端的に表していたからなんだ。タイトルで言及している “Star” とは太陽のことなんだけど、広大な宇宙においてはあの巨大な太陽にしても小さな星の一つにしか過ぎないという意味なんだよ。
もう一点 Carl Sagan から引用している部分があって、それは宇宙から見れば如何に地球が淡い青色の点に過ぎないかというものなんだ。写真はボイジャー1号が1990年に宇宙から地球を撮影したもので、その写真の中で地球は本当に小さなスペックなんだ。その写真は宇宙の大きさを実に想起させ、人生の中で起こる小さく些細な出来事が本当に無意味だと思わせるんだよ。
アルバムのコンセプトは、”Inner” と “Outer” のアイデアであり、さまざまな視点からの物事を見ているね。楽曲のアイデアの多くは、精神的なコンセプトや、僕たちが読んだ、あるいは夢見てきたものに基づいているんだよ。例えば、”Raven” は Chris がカラスとチェスを打つことを夢想して書いた楽曲なんだ。
Q6: Your trademark “Acoustic Electronic” sounds make a noticeable evolution on “A Humdrum Star”. Definitely, these songs based on the design of electronica, but the sounds are really organic! Adding that, “A Humdrum Star” seems to be more spacey, more vast, and more diverse record than your previous work “V 2.0” “Man Made Object”. What was your musical goal of “A Humdrum Star”?
【NICK】: We were just looking at the next step along for us. We don’t want to just keep making the same type of album over and over again. We were looking at different sounds we could bring in such as using a few more effects on the piano but also being a little more experimental in terms of form. We also tried to push ourselves a bit more in terms of performance and really make sure everybody’s individual voice was heard throughout the album. That also includes on the production side of things. The album was co-produced by Joe Reiser and Brendan Williams who’ve been with us since v2.0 and we really feel like it’s the next step for all of us.
Q6: “A Humdrum Star” ではバンドのトレードマークである “Acoustic Electronic” サウンドが目を見張るような成長を遂げていますね!エレクトロニカなデザインをベースとしながら、非常にオーガニックなサウンドが特徴的です。
【NICK】: 僕たちはただ次のステップだけを見据えていたんだ。ただ同じようなスタイルのアルバムを何度も何度も作り続けるなんてゴメンだからね。
ピアノによりエフェクトをかけたりして僕たちは異なるサウンドを探っていたんだけど、同時に “フォーム” という意味でも少し実験的な試みを行ったんだ。勿論、パフォーマンスの面でもさらに自分たちをプッシュしたから、間違いなく全員の “声” がアルバムを通して聴こえると思う。
プロダクションにも進化は現れているね。このアルバムは “V 2.0” から僕たちを手がける Joe Reiser と Brendan Williams が共同プロデュースを行ったんだけど、全員がまさに次のステップへ踏み出せたと感じたんだ。
Q7: All songs are recorded in Manchester. I don’t know you love United or City, I love Manchester because Shinji Kagawa was there, haha. Off couse, lot’s of great artists emerged from there, like The Chemical Brothers, Take That, Oasis, The Smith, The Stone Roses, and you! Anyway, you seem to have strong love about the city, do you agree that? How did the atmosphere of Manchester affect the sounds of album?
【NICK】: We love Manchester. It’s a great city to be a musician in and it’s a lot cheaper to live in than London so there’s more time to be creative without always worrying about how you’re going to pay the rent. It’s also big enough to be able to meet lots of other creative people. There is a large music scene in Manchester and we’ve always found it to be a very creative environment. It’s very difficult to say exactly how it’s affected our music because we’ve always lived there as musicians but I think it must be part of our sound in the way that everyone is affected by their environment in some way or another. As for City or United? The band aren’t huge football fans but we’d choose City.
Q7: 全ての楽曲はホームタウンのマンチェスターでレコーディングされたそうですね?香川真司選手がユナイテッドに所属していたので日本にも馴染みが深い街だと思いますが(笑)、OASIS から THE STONE ROSES まで素晴らしいアーティストを輩出して来た音楽の街でもある訳です。その街の雰囲気はどの様にレコードへと反映されましたか?
【NICK】: 僕たちはマンチェスターが大好きなんだ。ミュージシャンにとっては偉大な街で、ロンドンより大分物価や家賃が安いから、部屋代や生活を気にすることなくクリエイティブな時間を作ることが出来るんだ。他にも、沢山のクリエイティブな人たちに会えることも重要だね。マンチェスターには巨大なミュージックシーンが存在し、いつだってクリエイティブな環境に身を置けるのさ。
正確に、この街がどのように僕たちのサウンドへ影響したのか語るのは難しいね。というのも僕たちはミュージシャンとしていつもここで暮らしているからね。ただ、全員がここの環境から何かしら影響を受けているから、僕たちのサウンドの一部であることは間違いないね。
シティーかユナイテッドかって?このバンドはフットボールの大ファンという訳ではないんだけど、僕たちはシティーを選ぶよ。
Q8: I had an interview with Mammal Hands recently, and I asked them same question. I feel UK’s new generations of Jazz have more electronic sound compared with US’s Jazz the new chapter. Do you agree that? If so, what’s your perspective about the reasons?
【NICK】: It’s a difficult question to answer. I guess you could argue that jazz is an American music and therefore it has more of a history or a tradition to adhere to in the US. In the UK, and particularly in Manchester we’re not as concerned with what is jazz or isn’t jazz. In GoGo Penguin the three of us have a history of playing jazz but also listening to and performing other types of music so why not incorporate those things that you like into your band? I think in America there may be more of a focus on jazz education and there is also a lineage of great American jazz artists. Perhaps it feels more like breaking the code to start incorporating things outside of jazz too heavily for some artists. As far as we’re concerned it’s all just rhythms and notes whatever you decide to call it.
Q8: 先日 MAMMAL HANDS にも同様の質問を投げかけたのですが、あなた達 UK ジャズの新たな波は、他の地域に比べてよりエレクトロニカに接近しているようにも感じます。
【NICK】: これは難しい質問だね。君はジャズがアメリカの音楽で、故にアメリカにこそその歴史や伝統が集約されていると言いたいのかも知れないね。確かに UK、特にマンチェスターでは、何がジャズで何がジャズじゃないかなんて気にしていないんだよ。GoGo Penguin はメンバー3人ともジャズをプレイして来た歴史があるけど、同時に他のタイプの音楽も聴いてプレイして来たんだよ。だから、そういった好きな要素をバンドに持ち込むのは当然だよね?
僕はアメリカではよりジャズの教育にフォーカスしていて、偉大なアメリカジャズアーティストの系譜が存在すると思うんだ。だから、そういったアーティストたちの一部は、伝統を破りジャズ以外の音楽を持ち込むことがなかなか難しいんだろうな。僕たちに関しては、君たちが何と呼ぼうと結局はリズムとノートに全て帰結すると思っているよ。