EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH HARRISON WHITE OF NOVENA !!
“We Felt That Ross & Gareth, The Two Tones They Created Were Distinct, Rich And Balanced Each Other Out Nicely. It Really Gave Us a Wide Palette Of Colours To Paint With On This Album. We Love Playing With That Duality Of Light/Dark, Fragile/Destructive etc.”
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH HOZOJI MATHESON-MARGULLIS OF HELMS ALEE !!
“And These Days, Pretty Much Every Single One Of My Best Female Friends Is An Extremely Talented And Active Musician. Many Of Them Play In Heavy Rock Bands. So The Feeling Of Imbalance Is Shifting To An Equilibrium In My World. I Can Say With Confidence That I Feel Accepted And Valued By The Male Musicians In My Community.”
“Capturing Emotions In a Painting Is Similar To Showing Depth And Light. If It Is Not There, If It Is Missing, The Art Is Simply Flat And It Does Not Look Good”
ABIGAIL WILLIAMS の “Walk Beyond the Dark” はアートワーク、音楽の両方で2019年ベストブラックメタルの一つだと言えました。白きフードの死神は他のアートワークとは一線を画しています。炎もたしかに存在しますが、もっと暖かな輝きが溢れています。きっと人が佇む死神の洞窟は暖かさと休息の場所、勇気が安全で報われる場所。今回の “孤独な人” はこれまでほど弱々しくは見えません。ライオンの巣穴に入り、死神の中を慎重かつ勇敢に移動します。それはまるでABIGAIL WILLIAMS がリスナーに、彼らの素晴らしく壮大なレコードへと参加することを望んでいるように。
Sorceron は THE FACELESS を去りこの作品に没頭しました。彼の献身と努力も同時にアートワークのイメージに重なります。 アンビエンスとブラックメタルを組み合わせ、プログサイドも完璧に機能。そのオーラは神々しいまでに美しく花開きました。
“Okay, So If Vikings Didn’t Have Horns On Their Helmets, Why Did We Have Them On Our Drum Riser? Amon Amarth Is a Show. It Makes For a Good Stage Prop To Have Horns, Even Though It’s Not Historically Accurate.”
JOHAN’S GUIDE TO VIKINGS & NORSE MYTHOLOGY
AMON AMARTH がヴァイキングの歴史、北欧神話、そして壮大な戦闘絵巻について書いた最初のメタルバンドという訳ではありません。それでもこのストックホルムの5人組は、世界で最もヴァイキングをイメージさせる雄々しき邪神です。
過去4半世紀にわたって、彼らはムーブメントの創始者でさえ想像も成し得なかったオーディンメタルを紡いで来ました。ビルボードデビュートップ20、ワールドツアー、さらにはモバイルビデオゲームまで、その社会的影響と成功、さらにアリーナを熱狂に巻き込むライブパフォーマンスを鑑みればネクスト IRON MAIDEN の座を確約されているように思えます。
純粋性という観点で言えば、AMON AMARTH は真のヴァイキングメタルではないかもしれません。ブラックメタル第一波の先駆者である BATHORY がサタンを称賛しなくなり、異教のルーツを受け入れたように。そう、アトモスフィアと剣撃を配置した新たな BATHORY の音の葉は、後にヴァイキングメタルのトレードマークとなる魔法を含んでいました。
90年代半ばから後半にかけて、UNLEASHED, ENSLAVED, EESIFERUM, ELUVIETIE はヴァイキングの旅団に加わり、ブラックメタルを北欧民族の神話や伝承、神から得る知恵と力、怒りの海を股にかける航海、暗く危険な森、死との戦い、ヴァルハラの門を越えた永遠の生といったテーマに憑依させました。
対照的に、AMON AMARTH は、AT THE GATES や DARK TRANQUILLITY といったスウェーデンのメロディックデスメタルをスタート地点としています。故に、先述のヴァイキングメタルパイオニアとは毛色が異なります。しかし当初から、ボーカリストの Johan Hegg はヴァイキングの祖先に魅了されていました。彼は詩的な民間伝承を知っていて、コロンブスが到達する500年前の北アメリカの海岸線へのヴァイキング遠征と、ウクライナとロシアへの9世紀の探検を深く研究していたのです。
“I Think I Just Get Bored Really Easily And Also I View Things In Eras,David Bowie Is a Big Influence And Inspiration To Me, And I Know That He’s Very Famous For His Different Eras And Stages And Evolutions. I Think It’s Kind Of An Artist’s Responsibility To Evolve Constantly.”
EVEN IF GENRE IS DEAD, POPPY IS DANCING ON IT’S GRAVE
カルトフォークとヘヴィーな音の葉をミックスした “Am I a Girl?” のクローサー “X” によって Poppy がメタルに移行したと決めつけるのは簡単です。ただし、Poppy 自身は自らをメタルアーティストだとは思っていないようです。
「メタルに傾倒しているかって? 答えは #Idisagree よ (笑)。もちろん、間違いなくメタルからの影響は存在するわよ。だってアルバムを作っている時、私たちが聴いていた音楽こそメタルなんだから。ただ、アルバム全体を聴けば、よりプログに傾倒している場所もあるはずよ。当然、未だにポップな部分もあるわ。だけどもう一番の要素じゃないわね。三番目ね。」
法的な闘争や Grimes とのいざこざ、悪質なレコード契約によって溜まった鬱憤を晴らすカタルシスがメタルだったという側面もあるようです。
「全ての怒りを私のアートに注ごうとしたのよ。だけど自然なことよ。”Am I a Girl?” を書いている時、私はスタジオまで運転する車でヘヴィーな音楽ばかり聴いていたのよ。蝶々や虹の曲を書きながらね。全然繋がってないって思ったわ。」
メタルに目覚めたのはごく最近のことなのでしょうか?
「いいえ。私はメタルを聴いて育ったから、またちょうど戻ってきたって感じね。聴く音楽は日によって違うんだけど、NINE INCH NAILS と Gary Numan はずっと好きだったわ。だけど同時に、ダンスのバックグラウンドも持っているし、ポップミュージックも愛しているの。だから当時、自分の音楽でダンスやポップを探求するのは理にかなっていたのよ。逆に今は自分の感情を発信するのにメタルが適してるって感じかな。」
Poppy にとってエクストリームミュージックへの入り口は MARILYN MANSON でした。
「幼い私の目を引いたのは、MARILYN MANSON 全ての衝撃値だったわ。キッズが彼のTシャツを着ていると、道行く人は二度見をしていたわ。最初はそれがとても魅力的だったの。それから音楽にハマっていったの。だけど私は結局、彼の創造した文化こそがマジカルだったと思うの。素晴らしかったわ。そしてある種彼はその魔法を利用していたと思う。」
Poppy が目指すのもまさにその魔法。つまり、カルチャーの想像力を長期的に捉える能力。Trent Reznor もその能力に秀でていると Poppy は考えています。もちろん Beck も。いつか Poppy がコラボレートを果したい偉人たちです。
「自分の成長を通して、リスナーも共に成長してくれることを望んでいるのよ。」
THE 100 BEST MELODIC HARD ROCK ALBUMS OF THE DECADE: 2010 – 2019
1: W.E.T. “Earthrage” (2018)
WORK OF ART, ECLIPSE, TALISMAN。メロディックハードの幾星霜に足跡を刻んだ三雄を頭文字に戴くスーパーグループ W.E.T.。WORK OF ART と ECLIPSE。2000年代以降、TALISMAN の遺志を継ぐように現れたメロディックハード希望の星は明らかにこの両雄でした。片や洗練の極みを尽くす AOR、片や情熱と澄明のハードロック。
しかしインタビューで語ったように、スウェーデンの同じ学校から輩出された2つの綺羅星 “W” の象徴 Robert Säll と “E” の象徴 Erik Mårtensson は、至上のメロディーを宿すシンクロニティー、宿命の双子星だったのです。実際、2人の邂逅は、AOR とハードロックの清新なる渾融を導き、ジャンルのレジェンド Jeff Scott Soto の熱情を伴って唯一無二の W.E.T. カラーを抽出することとなりました。
FOREIGNER の哀愁、SURVIVOR の理想、JOURNEY の夢を、奇跡にも思える有機的な旋律の蒸留、ハーモニーの醸造、ダイナミズムの精錬を経て創造した “Earthrage” は、一部の隙も無駄もないメロディックハードの殿堂。
「メロディックハードロックがまたチャートの頂点に戻れるとは思えないね。そして僕はそれで構わないと思っているんだよ。」
メロディックハードはメロディーだけが優れていれば良い。そんなリスナーは意外と少ないのではないでしょうか。90年代から00年代初頭にかけて活躍したカナダの VON GROOVE には、同郷の HAREM SCAREM にも似て、インストゥルメンタルパートからも鋭い自己主張とユニークなセンスが垣間見れたバンドでした。
そんな VON GROOVE のギタープレイヤー Mladen の協力を得て MORATTI を立ち上げ、後に彼と FINAL FRONTIER を結成した不世出のシンガーこそ Rob Moratti でした。
天上に突き抜けるメロディーの煌めき、芳しきハーモニーの躍動を全編に施したアルバムは、同時に Reb Beach, Tony Franklin, Fredrik Bergh (STREET TALK), Brian Doerner (SAGA) といった手練れたちの音芸を披露する美しき演武場にもなりました。テクニックの躍動は、MAROON 5を想起させるメインストリームへの接近をも、ドラマティックなロックの浪漫へと変化させるのです。
エレクトロの仄かな香りは隠し味。Rob がプログレッシブなサウンドを得意とする SAGA に一時期加入したことも、作品の創造性に寄与したでしょうか。そして全てを繋ぐのは Rob のカリスマティックな声そのもの。
「とにかく、出来るだけメロディックにしようとした。パワフルで卓越したソングライティングとミュージシャンシップを備えながらね。」
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TAMAS KATAI OF THY CATAFALQUE !!
“I Realized That What I Do Is Very Similar To What Naïve Painters Do. They Lack Formal Training And They Have This Childlike, Dreamy Attitude, Some Pureness And Instinctivity Unlike Trained Artists’ Professional And Practical Approach.”
THE 100 BEST MODERN GUITAR ALBUMS OF THE DECADE: 2010 – 2019
1: ANIMALS AS LEADERS “THE JOY OF MOTION” (2014)
「優れたブルースギタリストになるための基礎はもちろん美しいよ。だけど別の僕がギターにはもっとユニークなことが出来ると語りかけるんだ…」
10年前に ANIMALS AS LEADERS のリーダーとしてデビューして以来、8弦のDjen衛建築家 Tosin Abasi はタッピング、スイープ、スラップ、フィンガーピッキングなど百花繚乱なテクニックを駆使してクラシカル、エレクトロニカ、ファンク、フュージョン、プログメタルを魔法のように調合し続けています。その鮮やかな多様性とテクニックの再創造まさに10年代モダンギターのベンチマークとなりました。
「シンセやエレクトロニックベースがあるから必要ない。」と言い放ち、もう1人の天才 Javier Reyes を従えた2ギター1ドラムの編成も革新的。
Generation Axe ツアーで Steve Vai や Yngwie Malmsteen でさえ文字通り引き裂いた Tosin の実力は、しかし決して才能だけに依るところではなく日々の鍛錬から生まれているのです。
1日に15時間練習しているのか?との質問に Tosin はこう答えました。
「出来ないことにひたすら取り組み出来るようになる。それは中毒のようなものでね。再びその現象が起こることを望み、再度成功すると徐々に自分の可能性を追い求めるようになる。そうして最終的には自分の理想に極めて近づくんだ。部屋に閉じ込められ義務感で練習している訳じゃない。自分の中に溢れる可能性を解き明かしているだけなんだよ。」
2: ERIC GALES “MIDDLE OF THE ROAD” (2017)
Jimi Hendrix に憧れ、右利き用のギターを逆さまに使用した左利きの Eric Gales は、90年代初頭、Guitar World 誌のベストニュータレントを名刺がわりに華々しく登場しました。しかし以降およそ20年の間、Eric の名前が表舞台で取り上げられることはほとんどありませんでした。
2010年代に入り、転機はあの Shrapnel との契約でした。長年の艱難辛苦は、孤高のギタリストに愛と泪、汗と真実を染み込ませたのです。それは Jimi Hendrix と Miles Daves のレガシーを等しく受け継いだ王の帰還でした。
Dave Navarro, Joe Bonamassa, Mark Tremonti Carlos Santana といったエモーションの達人たちでさえ、Eric を “ブルースロック最高のギタリスト” “地球で最高のギタリスト” “ただただ驚異的” と Eric の才能を絶賛します。
中でもあの Gary Clark Jr.、Lauryn Hill がゲスト参加を果たした “Middle Of The Road” は、Eric に宿るロック、ファンク、ソウル、R&B、ヒップホップの灯火が、信じがたいほどオーガニックに溶け合った傑作となったのです。それは2010年代に開かれらたブルースやジャズのニューチャプターを探る旅とも密接にリンクしていました。
「俺がプレイしているのは全て、自身が経験した広大な感情だ。これまで克服し、貫いてきた下らないことのね。」
3: ICHIKA “FORN” (2017)
ゲスの極み乙女や indigo La End の頭領、百戦錬磨の川谷絵音との邂逅、遠き日本に住まいながら世界の名だたる音楽家から放たれる熱き視線、東京コレクションからNAMMを股にかけるしなやかさ、そして SNS を基盤とする莫大な拡散力。光耀を増した夢幻のクリスタル、琴線の造形師 ichika の有り様は2010年代を象徴し、現代に生きるアーティストの理想像といえるのかも知れませんね。
ただし、ichika は他の “インスタギタリスト” と異なりしっかりと作品というストーリーを残しています。
「僕は普段曲を作る前にまず物語を作り、それを音楽で書き換えようとしています。聴き手に音楽をストーリーとして追体験させることで、より複雑な感情に誘導することが出来るのではないかなと思っているからです。」という ichika の言葉は彼の作品やセンスを理解する上で重要なヒント。
つまり、映画や小説が基本的には同じ場面を描かず展開を積み重ねてイマジネーションを掻き立てるのと同様に、ichika の楽曲も次々と新たな展開を繰り広げるストーリーテリングの要素を多分に備えているのです。小説のページを捲るのにも似て、リスナーは当然その目眩く世界へと惹き込まれて行くはずです。それはきっと、30秒の魔法しか奏でられないSNSの音楽家にとって、左手と同様進化した右手の奇跡よりも羨ましい光景に違いありません。
「セルビアは言うならば西洋と東洋の文化がぶつかる場所なんだ。僕はそこで育ったから両方の世界から多大な影響を受けているね。だから確実に僕の音楽からその要素が聴こえるはずだよ。」
セルビアというギターにとって未知の場所、第三世界から颯爽と登場した DMM の躍進は、2010年代に撤去された境界の証でした。もちろん、テクノロジーの進化によって、DIY の音楽家が陽の目を見るようになったことも併せて時代は進んでいます。
「僕はまずコンポーザーなんだよね。だから違うサウンドを探索したりや違う楽器で実験するのが好きなんだ。」
Per Nilsson, Jakub Zytecki, Jeff Loomis といったマエストロが参加した “Bilo 3.0” において彼らは自分よりもギターにのめり込んでいると断言した David。もちろん、Jeff Beck と Steve Lukather を敬愛する David のソロワークは充分にフラッシーで魅力的ですが、しかしテクニック以上に彼の創造するギターミュージックは、繊細で想像力を喚起するカラフルな絵巻物です。何よりそこには純粋な音楽との対峙が存在します。
「”Bilo”では音楽が音楽を書いているんだ。一切のエゴに邪魔される事なく純粋に音楽自体を楽しむ機会を得ているんだよね。決して誰かを感動させようなんて思わないし、何でもいいけどこれは世界に発信しなきゃって感じたことを発信する僕流の方法なんだ。世界は聴いてくれている。幸せだよ。」
“I Am Huge Advocate Of a Lot Of The 60s/70s Prog Scene – Yes, Genesis, King Crimson, Rush, Pink Floyd, These Sorts Of Acts And Many More Are a Big Influence On My Approach To Song/Riff-Writing.”
DISC REVIEW “THE DEAD LIGHT”
「僕が育ったかつては湿地帯だった荒野。この風景とそれが体現する感覚の両方を伝えようとすることが、僕の音楽に真のフィーリングと信憑性をもたらす唯一の方法だったんだ。FEN の音楽は大部分がこの特別な雰囲気をリスナーに届けるためのメカニズムで、彼らを荒涼として風にさらされた冷たい旅に誘うんだ。」
古い修道院、朽ちた電信柱、鄙びた風力タービンが唯一人の存在を感じさせる不毛の湿地帯フェンズ。イングランド東部の仄暗い荒野を名前の由来とする FEN は、キャリアを通してその白と黒の景色、自然の有り様と人の営みを伝え続けて来ました。そして奇妙な静けさと吹き付ける冷厳な風、くぐもった大地の荒涼を音に込めた彼らのダークな旅路は、”The Dead Light” に集約しています。
「当時は本当に小さなシーンだったな。僕たち、Neige のプロジェクト、ALTAR OF PLAGUES, それからおそらく LES DISCRETES。数年間は小さなままだったけど、ALCEST がより有名になるとすぐに爆発したね。 彼らのセカンドアルバム “Ecailles De Lune” は、ジャンルの認識を本当にターボチャージさせたと思うね。」
今では飽和さえ感じさせるポストブラック/ブラックゲイズの世界で、FEN は最初期からジャンルを牽引したバンドの一つです。ALCEST に親近感を覚え敬意を抱く一方で、DEAFHEAVEN には少々辛辣な言葉を投げかける The Watcher の言葉はある種象徴的でしょう。
なぜなら、FEN の心臓である “シューゲイズ、ポストロック、ブラックメタルの意識的な融合” は、決して奇をてらった “クレバーなマーケティング” ではなく、フェンズを表現するための必然だったのですから。
「僕は60年代/70年代のプログレシーンの強力な支持者なんだ。YES, GENESIS, KING CRIMSON, RUSH, PINK FLOYD といったバンドは、僕のソング/リフライティングに対するアプローチに大きな影響を与えているよ。ほとんど僕の作曲 DNA の本質的な部分と言っても過言ではないね。」
FEN がその ALCEST や他のポストブラックバンドと一線を画すのは、自らの音の葉にプログレッシブロマンを深く織り込んでいる部分でしょう。
実際、”The Dead Light” は PINK FLOYD のスロウダンスを想わせるドゥームの質量 “Witness” でその幕を開けます。ポストロックのメランコリーとプログレッシブなサイケデリアは、2部構成のタイトルトラック “The Dead Light” へと引き継がれ、メタリックな星の光を浴びながら ENSLAVED や VOIVOD にも迫るアグレッシブな酩酊のダンスを誘います。
「光が人間の目に届くまでに消滅した天体だってあるよ。つまり地球から遠い過去への窓を見ているようなもので、光子の量子が空虚を通して力を与え、最終的にアルバムタイトルのまさに “死の光” “長い死” のイメージを届けるんだ。」
もしかすると今、瞳に映る輝きはもはや存在しない死んだ星雲の残像なのかも知れない。そんな空想を巡らせるに十分なロマンチシズムと荘厳さを併せ持つ “Nebula” の魔法でポストブラックに酔いしれたリスナーは、”Labyrinthine Echoes” でプログレッシブとブラックメタルが交差する文字通り宇宙の迷宮へと迷い込み、そうして “Breath of Void” で遥かな天空から荒野の虚無を体感するのです。
もちろん、蒼く冷たい失血のロンド “Exanguination” はきっと彼の地に住まう人々の苦難、喪失、孤立、そして誇りを体現しているはずです。
今回弊誌ではフロントマン The Watcher にインタビューを行うことが出来ました。「ブラックメタルシーンは生き生きとしていて、魅力的な作品を作成する熱意を持ったアーティストで溢れているんだ。全くエキサイティングな時代だよ!」 冷厳でしかしロマンチックなブラックメタルファンタジー。どうぞ!!
“I Believe That Language Choice Of Words And Phrasing, Has a Lot To Do With The Collective Mindset Of The People. Being Singled Out Because Of My Gender Automatically Negates My Worth And Work As a Musician.”
DISC REVIEW “A GAZE AMONG THEM”
「私は時々、BIG|BRAVE はどんなシーンとも全く繋がっていないんじゃないかと思う時があるの。それは、最初から特定のジャンルの音楽を作ろうと望んだことがないからだと思うの。私たちは自らの理論を概念化し、そこから前進していったから。」
ビジュアルアーツの背景から音楽世界に転進した異能の勇士は、定型化されたヘヴィーの概念へと挑戦します。
「私は、Mathieu と真剣に音楽を始めるほんの一年前にギターを手にしたの。公の場所で歌ったこともなかったのよ。実際、このバンドが誕生するまで、私は自分の声をどれだけ “使用” できるのか分からなかったくらいなの。」
バンドの顔である麗しの Robin Wattie は、自らの音楽経験が相当に不足していたことを素直に認めました。故に、BIG|BRAVE の旗揚げには文字通り “大きな勇気” が必要だったとも。
ただしその無垢なる履歴書は、紡がれた歴史の中で同質化が進んだ “ヘヴィネス” が元来有した “様々な姿形” を暴き出すにはむしろ好都合だったとも言えます。既存のあらゆるジャンルへと、従属を拒む選択もまた勇気。
ドゥーム、ドローン、ポストメタル、ポストロック、シューゲイズ。BIG|BRAVE を形容する看板は数あれど、確かにそのどれもがモントリオールの怪物を適正に言い表しているようには思えません。例えば、SUMAC の如くその全てを混交したハイブリッドのキメラならば少しは近づくでしょうが。
「単一のコードパターンを使用する場合、コード進行を考えたり聴いたりする必要はないよ。存在しないんだからね!故にその基盤に重ねる歌のフィーリングと音の階層にフォーカスすることが可能なんだ。そうすることで、リスナーをより容易く恍惚状態へと導ける。実にリズミカルなドローンさ。」
Mathieu は、”ワンコードでどれだけ興味深い音楽が作れるか” をバンドの命題に掲げています。その矛盾したテーマ、制限的なやり方はしかし一方で HEILUNG も言及していた “安定したビートを長時間浴びる時に起こる魔法、トランス状態で我を忘れる経験” をもたらすことが可能でしょう。
ただし、エレガントに難題をクリアする “A Gaze Among Them” を聴けば伝わるように BIG|BRAVE に流れるのは、Tony Conrad や Steve Reich といったミニマリストの柔軟な血脈です。
オープナー “Muted Shifting of Space” はある種象徴的でしょう。動的な和声の流れを拒絶して、様々な色調、音色、サウンドエフェクトがその代役を務めます。躍動するメロディーラインとリズミカルなタッチは、コードの動きを極力封じることで即興の自由、スポンティニュアスなイメージを得られたからこそ生まれました。
SUNN O))) のドローンとは明らかに異なるスロウバーン。野生で呪術的、しかしアクセシブルで感情に訴えかける音の葉の力強さは、Robin の本能、ジャズの背景に依るところが大きいのかも知れませんね。
「その質問をしてくれてありがとう。」セクシズムやミソジニーについて Robin はどうしても自らの言の葉を記しておきたかったようです。
「私は言葉や言い回しの選択って、人々の集団心理に大きく関係していると思うのよ。ただ私の性別だけで選ばれるとしたら、ミュージシャンとしての私の価値と仕事は自動的に無意味なものとなってしまうのよ。」
ダークディーバ、メタルプリンセス。Robin はそういった音楽と無関係な部分を売り物にする気はありません。きっと2020年代は、フィーメールフロンテットとわざわざ記すことを取り払うべき時代でしょう。性別は決して “ジャンル” ではないのですから。
“A Gaze Among Them” はつまり音響的な瞑想により自らをその肉体と切り離し、世界と共感、もしくは阻害を感じる作品かも知れませんね。”Them” 大衆の視線と自らの視線が交わる時、”既存のジャンルや価値観に当てはまる必要” はそれでもきっとないはずです。
今回弊誌では、Robin & Mathieu にインタビューを行うことが出来ました。「言語の選択に気をつけなければ、色とりどりの女性が一生懸命行ったことを評価する以前に、女性に制約を追加してしまうわ。それはほとんどの女性が知らずに持ち歩く内面化されたミソジニーを補強してしまうことにも繋がるの。」
GODSPEED YOU! BLACK EMPEROR の Thierry Amar, LINGUA IGNOTA や THE BODY を手がける Seth Manchester のクレジットも納得。どうぞ!!