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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【FIRST FRAGMENT : GLOIRE ETERNELLE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH PHIL TOUGAS OF FIRST FRAGMENT !!

“Japanese Power Metal Bands Like Saber Tiger, Galneryus, Versailles, etc Sing In Their Own Language And It Fits Their Music Much Like Quebec French Fits Our Own Music Best. We Will Continue To Do So.”

DISC REVIEW “GLOIRE ETERNELLE”

「ARCHSPIRE の音楽は、正確で、数学的で、冷たく、残忍で、容赦なく、人間離れした速さで、怒りに満ちていて、極めてよく計算されている。対して FIRST FRAGMENT の音楽は、折衷的で、有機的で、時に緻密で、時に即興的で、陽気で、時に楽しくて痛快で、時に悲劇的でメランコリックなんだ。だから私は FIRST FRAGMENT を “エクストリーム・ネオクラシカル・メタル” と呼び、ARCHSPIRE を”テクニカル・デスメタル” と呼んでいる」
現在、メタル世界で最高峰のテクニック、そしてシュレッド・ファンタジーをもたらす場所がカナダであることは疑う余地もありません。先日インタビューを行った ARCHSPIRE がメカニカルな技術革新の最先端にいるとすれば、FIRST FRAGMENT はシュレッドのロマンを今に伝える黄金の化石なのかもしれませんね。奇しくも同日にリリースされた “Bleed The Future” と “Gloire Éternelle” は、正反対の特性を掲げながら、テクニカルなエクストリーム・メタルの歩みを何十歩、何百歩と進めた点でやはり同じ未来を見つめています。
「2007年のことを思い出してほしい。ケベック州のモントリオール地域では、デスメタル、ブラック・メタル、デスコアが主流だった。今でもそうだけど、その時期はさらにその傾向が強かったんだよね。だから私のようなエッジの効いた矛盾した人間にとっては、フラストレーションの溜まる時代だったよ」
VOIDCEREMONY, EQUIPOISE, ETERNITY’S END, FUNEBRARUM, ATRAMENTUS…。おそらくメタル世界でも最も多忙なギタリストとして知られる Phil Tougas は、MARTYR, CRYPTOPSY, AUGURY などが闊歩するテクデスの聖地ケベックに生まれ、だからこそ別の道を進むことを決意します。91年生まれ、まだ30歳にもかかわらず、Yngwie Malmsteen, RACER X, CACOPHONY, Tony Macalpine, Joey Tafolla (!!) といったシュラプネルの綺羅星にどっぷりと浸かりながらそのギターの鋭利を研ぎ澄ませていきました。
一方で、同世代に同じ趣味のプレイヤーがいなかったことから、MORBID ANGEL や NECROPHAGIST といったエクストリームの涅槃にも開眼し、FATES WARNING や ELEGY (!!) のプログ・パワーまで吸収した Phil は、FIRST FRAGMENT で “エクストリーム・ネオクラシカル・メタル” を創造するに至ります。グロウルを使えばデスメタルなのかい?という問いかけとともに。
「私たちのリフはすべて、ネオクラシカルなパワーメタルのコード進行で構成されている。デスメタルは砕け散り、重く、邪悪で残忍だ。FIRST FRAGMENT はインテンスの高い音楽だけど、これらの特徴はどれも持っていないし、その気もないんだよね。ゆえに、デスメタルではない」
バロックやロマン派のクラシック音楽から、フラメンコ、ジャズ、スウィングやファンク、ネオクラシカルなパワーメタル、デスメタル、プログレッシブ・メタル.。ジャンルを踊るように融合させ、大きなうねりを呼び起こすという点で、FIRST FRAGMENT の右に出るバンドはいないでしょう。そしてその華麗な舞踏会を彩るのが、Phil Tougas, Nick Miller, Dominic “Forest” Lapointe のシュレッド三銃士。
「ソロ・セクション自体は、通常のツイン・ギターではなく、私が “トリプル・リード・アタック” と呼んでいるものなんだ。このアルバムでは、ベースがギターの役割を果たし、ベースがギタリストと同じ数のソロを演奏し、合計30のベース・ソロを演奏するという、メタル・バンドの中でも珍しいことを成し遂げている」 の言葉通り、すべての弦楽器が平等に、鮮やかに、驚異的な指板のタップダンスを踊り尽くします。特筆すべきはリードが放つ揺らぎやエモーション、そしてサプライズで、近年大半を占めるレールの上を滑らかに進むようなソロイズムとは明らかに一線を画しています。例えば、RACER X や CACOPHONY が絶対的な楽曲、リード、プロダクションばかりを誇っていたかと言えば答えは否かもしれません。しかし、あの時代のギタリズムには予測不能のびっくり箱が無数に用意されていました。FIRST FRAGMENT にも宿る同様のシュレッド・ファンタジーは、アルバムのテーマと同じく音の輪廻転成を信じさせるに十分でしょう。
「SABER TIGER, GALNERYUS, VERSAILLES といった日本のパワーメタル・バンドは日本語で歌っていて、それはケベックのフランス語が私たちの音楽に一番合っているように、彼らの音楽にも合っているよね」
アルバム全編をフランス語で歌うエクストリーム・メタルという意味でも、FIRST FRAGMENT は文字通り “はじめてのカケラ” だと言えます。彼らの母語に潜む哀愁とラテンの響きは、アルバムの根幹をなすフラメンコとクラシカルな響きと絶妙に混ざり合い、ELEGY が “Spanish Inquisition” で成し遂げた夢幻回廊の奇跡を現代のメタル世界へと呼び戻すのです。
今回弊誌では、Phil Tougas にインタビューを行うことができました。「Tony MacAlpine, Joey Tafolla, ELEGY の Henk Van Der Laars。この3人のギタリストは今でも私の最大のヒーローだと思う」まさにメタル温故知新の最高峰。エルドラドならぬシュレッドラド。どうぞ!!

FIRST FRAGMENT “GLOIRE ETERNELLE” : 10/10

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