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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PYRRHON : ABSCESS TIME】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DOUG MOORE OF PYRRHON !!

“A Good First Step In Driving Bad Actors Out Of Metal Would Be To Foster a Stronger Appreciation Of Lyrics. It’s Still Very Common To See Metal Fans With Broadly Progressive Values Accepting Truly Vile Ideologies From Bands They Like Because “You Can’t Understand The Lyrics Anyway” And “The Riffs Are Sick, So Who Cares,” And So Forth. Perhaps It’s Worth Paying More Attention To What Your Favorite Band Is Screaming At You.”

PYRRHON “ABSCESS TIME”

「NYC のバンドに透徹する哲学は、ジャンルをミックスしたり、音楽的な分野を融合させたりすることに意欲的であること。 この特徴は、ニューヨークが “メルティングポット” “坩堝” としての地位を築いてきたことの賜物で、様々なバックグラウンドを持つ人々やアイデアが混ざり合っているからね。」
分裂と流動の時代極まるエクストリームメタル。革命的なアイデア、脳髄を溶かすサウンド、野生的な実験の黄金三角形は、ニューヨークが震源地です。IMPERIAL TRIUMPHANT, LITURGY, ANCION, DYSRHYTHMIA。ジャンルを開拓再定義するような異能が蠢く中で、ブラックメタルの冒険を牽引する KRALLICE の平行線に位置する、大胆不敵なデスメタルの探窟家こそ PYRRHON でしょう。
「古いバンドのサウンドを真似するだけでは時間の無駄だと思えるね。デスメタルをプレイするのは難しいんだ。そんな難しい音楽をプレイするのに、なぜ自己表現をしないんだい? 」
OSDM リバイバルで活況を見せている昨今のデスメタルシーン。しかし、PYRRHON はその動きから一定の距離を置いています。もちろん、MORBID ANGEL や GORGUTS, CYNIC といった巨人の実験精神、創造性とたしかにチャネリングしながら、エクストリームミュージックの自己実現にむけてただ真摯に邪悪と哲学を磨きあげていくのです。
「デスメタルは、限界まで自分を追い込みたい、今までにないことに挑戦したいと思っているミュージシャンを惹きつける特別な音楽の形だと思うからね。」
TODAY IS THE DAY のアヴァンギャルドノイズ、CAR BOMB のマスコアミューテーション、GORGUTS のプログレッシブアグレッシブ。たしかに、PYRRHON の音風景をジクソーパズルのように分解して掘り下げることも可能でしょう。ただし、彼らの真髄は決してモザイクタイルを貼り合わせて創り上げる、高尚で機械的な壁画のアートにはありません。
なぜなら、時に不自然で突拍子もないように思える異端のピースが、PYRRHON の音楽をむしろ自然で有機的な太古の海へと誘っているからです。ゆえに、人工的で機械化されたテックメタルの不協和も、彼らの手にかかれば狂骨から溶け出す原始のスープへとその姿を変えていきます。
ある意味、PYRRHON が醸し出す奇妙の原点はジャズのインプロビゼーションなのかもしれませんね。言ってみれば、物理学の実験のために複雑な数学の方程式を解くことが一般的なプログレッシブデスメタルの常識だとすれば、彼らはそれをアシッドトリップの最中にやり遂げることを本懐としているのです。
「現在アメリカを飲み込んでいるこの複雑な危機は、約10年前から避けられないように僕には見えていたんだよ。それは単純に、皮膚の下で化膿している病気がいつ表に出てくるかという問題だったのさ。それがアルバムタイトルの由来だよ。」
最新作 “Abscess Time” “化膿の時” に反映されたのは、システムが朽ち果て国の程さえなさなくなった今のアメリカひいては世界です。インタビューに答えてくれたボーカリスト Doug Moore は、そんな潜伏していた膿を反映した偏見渦巻くメタル世界だからこそ、歌詞を深く理解して自分の頭で考えてほしいと訴えます。
もはや、リフがよければ別にとか、どうせ何叫んでるかわかんねーしで許される時代は過ぎ去ったとも言えるでしょう。それはある意味、誰がなっても同じと選挙権を放棄する行動に似ているのかもしれません。結局は因果応報、すべては自身に返ってくるのですから。
そうして完成した最高傑作は、Doug の言葉を借りれば “忍耐と反復” のカオス。スピーカーから不気味な膿が溢れ出すようなミニマルな混乱の中で、獰猛さと重圧を保ちながらしかし構成の妙を一層極めたアルバムは、過去の3作と比較してより直線的なリスニング体験を可能としています。
我々はただ、作曲と即興、残虐と窒息、可解と不可解、混沌と解放、血液と膿の境もわからず立ち尽くすのみ。KRALLICE の鬼才 Colin Marston がプロデュースを行ったことも、決して偶然ではないでしょう。
ピュロンとは古代ギリシャ初の懐疑論者。すべてを吟味しあらゆる独断を排除する者。今回弊誌では、エクストリームシーンきっての語り部 Doug Moore にインタビューを行うことができました。「僕の考えだけど、”悪い役者” をメタルから追い出すためのより良い第一歩は、歌詞への理解を深めることだと思うんだ。幅広く進歩的な価値観を持つメタルファンでも、好きなバンドの本当に下劣なイデオロギーを “どうせ歌詞なんて何叫んでるかわかんねーから” とか “リフが最高なら気にしない” などと受け入れてしまうのは、今でもよく見かける光景だよね。自分の好きなバンドが何を叫んでいるのか、もっと注意を払う必要や価値があるのかもしれないよ。」 どうぞ!!

PYRRHON “ABSCESS TIME” : 10/10

INTERVIEW WITH DOUG MOORE

Q1: From the Corona crisis to Black Lives Matter, America is going through a turbulent time right now. First of all, what’s your perspective about the US situation?

【DOUG】: To put it as simply as possible, I think it’s the result of many forms of injustice finally breaking through into the public consciousness. Americans are masters when it comes to papering over hypocrisy and exploitation, but eventually, systemic issues like the one my country is struggling with can’t just be shrugged off. In English, we have a saying: “the chickens come home to roost,” which means that your sins will come back to haunt you sooner or later. That is what’s happening in America, on a grand scale – problems we’ve tried to ignore for decades or centuries are finally making the country ungovernable.

Q1: コロナ危機から Black Lives Matter とアメリカは激動の時を迎えていますね?

【DOUG】: できるだけ簡単に言えば、多くの不正がようやく世間の意識に浸透してきた結果だと思う。アメリカ人は偽善や搾取の上塗りを得意としているけど、徐々に僕の国が直面しているシステムの問題が結局のところ、無視できなくなってきたわけさ。
英語には “ニワトリは焼かれるためねぐらに帰ってくる” “因果応報” という諺があってね。これは、遅かれ早かれ犯した罪は自分に返ってくるという意味なんだよ。
何十年、何世紀にもわたって無視しようとしてきた問題が、ついにアメリカを統治不能な国にしてしまったんだ。

Q2: You know, your lyrics sometimes reflect American politics and nightmarish world affairs like “The Invisible Hand Holds a Whip”. Are you inspired by 2020’s dark time in your new record “Abscess Time”?

【DOUG】: Abscess Time was actually written during 2018 and 2019, so it wasn’t specifically inspired by the events of this year. However, a complex crisis of the kind that is currently engulfing America has seemed inevitable to me for about a decade. It was simply a question of when the diseases festering under the surface would burst into plain view. That’s the origin of the album title – we are all living through Abscess Time now.

Q2: “The Invisible Hand Holds a Whip” のように、あなたの歌詞は時にアメリカの政治や世界の悪夢を反映していますよね? 最新作 “Abscess Time” は現在のダークな状況にインスパイアされたのでしょうか?

【DOUG】: “Abscess Time” (膿瘍の時間) は実際には2018年と2019年の間に書かれたから、今年の出来事に特別触発されたわけではないんだ。
だけどね、現在アメリカを飲み込んでいるこの複雑な危機は、約10年前から避けられないように僕には見えていたんだよ。それは単純に、皮膚の下で化膿している病気がいつ表に出てくるかという問題だったのさ。それがアルバムタイトルの由来だよ。

Q3: Pyrrhon’s artwork is always spooky, but it also captures the imagination. How does this time relate to the theme of the record?

【DOUG】: The art for Abscess Time is a little more abstract than some of our past album covers. However, it speaks to some themes present in the music: inner workings being revealed; wounds that will not heal; the wear and tear that life inflicts on the body.

Q3: PYRRHON のアートワークは不気味ですが、同時に想像力を刺激しますね。今回はそのアルバムテーマと関連させているのでしょうか?

【DOUG】: “Abscess Time” のアートワークは、過去のいくつかのカバーよりも少し抽象的だよね。それでも、音楽に存在するいくつかのテーマを語ってはいるんだ。明らかにされた内部の隠蔽、癒されない傷、体に刻まれた消耗と涙。

Q4: You know, I feel the metal world still has bad past ideologies of fascism, racism and sexism, they’re still here in no small part. right? How do you think it could get better?

【DOUG】: Yes, metal is still rife with many forms of bigotry. In that way, it is a microcosm for the societies that produced it – most countries with big metal scenes are superficially advanced, but harbor plenty of reactionary ideas and tendencies. In my opinion, a good first step in driving bad actors out of metal would be to foster a stronger appreciation of lyrics. It’s still very common to see metal fans with broadly progressive values accepting truly vile ideologies from bands they like because “you can’t understand the lyrics anyway” and “the riffs are sick, so who cares,” and so forth. Perhaps it’s worth paying more attention to what your favorite band is screaming at you.

Q4: 悪性の腫瘍という意味では、メタル世界にも例えばファシズム、レイシズム、セクシズムといった過去の悪しきイデオロギーが未だに残る部分もありますよね?

【DOUG】: そう、メタルにはいまだに様々な形で偏見が蔓延しているよね。それってある意味では、メタルを生み出した社会の縮図でもあるんだよね。というのも大きなメタルシーンが存在する国の大半は、表面的には先進的だけど、反動的な考えや傾向を多く持っているからね。
僕の考えだけど、”悪い役者” をメタルから追い出すためのより良い第一歩は、歌詞への理解を深めることだと思うんだ。幅広く進歩的な価値観を持つメタルファンでも、好きなバンドの本当に下劣なイデオロギーを “どうせ歌詞なんて何叫んでるかわかんねーから” とか “リフが最高なら気にしない” などと受け入れてしまうのは、今でもよく見かける光景だよね。
自分の好きなバンドが何を叫んでいるのか、もっと注意を払う必要や価値があるのかもしれないよ。

Q5: In recent years, there has been a new wave of old school death metal revivalism. You guys seem to have distanced yourselves from that movement, haven’t you? It seems to be a more advanced and experimental death metal, world you agree?

【DOUG】: Haha, yes, it’s fair to say that Pyrrhon is not “OSDM.” We love a ton of death metal from the ‘80s and ‘90s, and I personally would not argue that death metal has to be insanely innovative to be good. That said, just doing an imitation of an older band’s sound seems like a waste of time to me. Death metal is hard to play; why not express yourself if you’re going to play it? The best death metal bands in 1990 built on what came before them to create something unique, and that’s true in 2020 as well.

Q5: 近年、メタル世界ではオールドスクールデスメタル復興の波が押しよせています。あなた達は、進歩的かつ実験的で、あのムーブメントとは距離があるように思えますが。

【DOUG】: ふふ。うん、公平に言って PYRRHON は OSDM じゃないと言えるだろうね。僕たちは山ほどの80年代と90年代のデスメタルが大好きだし、個人的にもデスメタルは革新的でなければ良いものにはならないなんて主張はしていない。だけどね、そうは言っても、古いバンドのサウンドを真似するだけでは時間の無駄だと思えるね。
デスメタルをプレイするのは難しいんだ。そんな難しい音楽をプレイするのに、なぜ自己表現をしないんだい? 1990年の最高のデスメタルバンドは、それ以前のバンドのサウンドをベースにして、独自のものを生み出してきたんだ。そして2020年でもそのやり方は真実さ。

Q6: What has been a challenge for you musically compared to your previous works? Is it important for the band to still stay in the death metal category?

【DOUG】: No, I wouldn’t say that we particularly care about whether we’re “still a death metal band” or not. Death metal will always be an influence on the music we make – probably a bigger influence than any other. But it does not own us, and questions of genre aren’t especially important to us. We want every new recording we make to provide new challenges. This time around, the challenge was patience and repetition. Perhaps on the next recording, we’ll go in the opposite direction and try to write 1-minute songs with 50 riffs each.

Q6: それでは、”デスメタル” という枠自体にとどまることは、今でもバンドにとって重要ですか?

【DOUG】: いや、僕らは “まだデスメタルバンドである “かどうかを特に気にしてはいないよ。デスメタルは常に僕たちの作る音楽に影響を与えている。だけど、デスメタルが僕たちを所有しているわけではないし、ジャンルの問題は僕らにとって特に重要ではないんだよ。
新たにレコーディングをするたびに、新たは挑戦をしていきたいとは思っている。今回の課題は、忍耐と繰り返しだったな。おそらく次のレコーディングでは、逆の方向に行って、50のリフを持つ1分間の曲を書こうとするだろうね。

Q7: Do you think you inherit the legacy of progressive death metal like Cynic, Death, Atheist and Gorguts somehow?

【DOUG】: Honestly, I try not to think about legacies too much – that’s what you reflect on when your career has ended! But I would say that the creative spirit and relentless experimentation practiced by those bands is a great source of inspiration to us. They are all good examples of what I was saying earlier about death metal; they’re all “old school” in the sense that they were making music in the early ‘90s, but none of them were imitating any previous band’s style. Death metal is a special form of music because it draws musicians who want to push themselves to the limit and try things that have never been done before. In that sense, I hope Pyrrhon is successfully channeling the spirits of the bands you mentioned.

Q7: CYNIC や DEATH, ATHEIST, GORGUTS といったプログレッシブなデスメタルの遺伝子は、多分に受け継いでいるように感じますが。

【DOUG】: 正直なところ、僕はあまり遺産については考えないようにしているんだ。それってキャリアが終わるときに総括するものだから! だけど彼らが実践している創造的な精神と絶え間ない実験は、僕たちにとって大きなインスピレーションの源になっているとは言いたいね。
彼らは皆、先ほど僕がデスメタルについて言ったことの良い例だと思うんだ。デスメタルは、限界まで自分を追い込みたい、今までにないことに挑戦したいと思っているミュージシャンを惹きつける特別な音楽の形だと思うからね。
そういう意味では、PYRRHON が君が挙げたようなバンドのスピリットをうまくチャネリングできていればいいなと思う。

Q8: When I had an interview with Hunter-Hunt Hendrix of Liturgy, he said “I sincerely think philosophy is a very important tool for having a thoughtful political stance.”. The NYC extreme scene is full of amazing and progressive bands, but is there some sort of common idea that exists?

【DOUG】: I wouldn’t say that there is a specific philosophy that bands from this area share. But in a more general, ambient way, I do think that New York’s music scene is something special. In my opinion, there are two clearly identifiable features that bands from this area tend to share. The first is a willingness to mix genres and blend musical disciplines. This feature is the legacy of New York’s status as a “melting pot,” where people and ideas from different backgrounds intermingle – boundaries which might seem uncrossable elsewhere feel a lot flimsier here, where people from all over the world live right on top of each other. The second characteristic is ambition. New York is very expensive and it’s often an unpleasant place to live. Lazy musicians and those without a true vision to pursue generally don’t last very long here.

Q8: LITURGY の Hunter-Hunt Hendrix にインタビューを行った際、「哲学こそが思慮深い政治的スタンスを保つための非常に重要なツールだ」 と語っていました。
NYC のエクストリームシーンには、プログレッシブな才能が集まっていますが、ある種共通の哲学のようなものが存在するのでしょうか?

【DOUG】: この地域のバンドが共有する特定の哲学があるとまでは言わないけど、一般的にアンビエント的な意味では、ニューヨークの音楽シーンは特別なものだと思うんだ。
僕の考えでは、この地域のバンドには明確に2つの特徴があると思う。1つ目は、ジャンルをミックスしたり、音楽的な分野を融合させたりすることに意欲的であること。 この特徴は、ニューヨークが “メルティングポット” “坩堝” としての地位を築いてきたことの賜物で、様々なバックグラウンドを持つ人々やアイデアが混ざり合っているからね。他の場所では越えられないように見える境界線も、ここでは、世界中から集まった人々がお互いを尊重して住んでいるように感じられるからね。
2つ目の特徴は野心。 ニューヨークはとても物価が高く、決して快適に住める場所じゃない。怠け者のミュージシャンや、追求する真のビジョンを持たない人は、概してここでは長続きしないんだよ。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED DOUG’S LIFE

RADIOHEAD “OK COMPUTER”

BLACK FLAG “DAMAGED”

TODAY IS THE DAY “IN THE EYES OF GOD”

MORBID ANGEL “COVENANT”

TOM WAITS “SMALL CHANGE”

MESSAGE FOR JAPAN

Thank you for reading! Touring your beautiful country has been a goal for Pyrrhon for many years; hopefully we can make it happen some day soon.

読んでくれてありがとう!君たちの美しい国をツアーすることは、ずっと何年も PYRRHON の目標なんだ。近々叶うといいな!

DOUG MOORE

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