EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CAMERON RASMUSSEN OF SOUND STRUGGLE !!
“I Think We Are Actually Still Seeing The Djent Scene Decline. It Has Become This Heavily Meme’d Culture That Seems To Realize Its Own Stupidity And Simplemindedness Where Guitar Riffs And Song Structure Are Concerned.”
DISC REVIEW “THE BRIDGE”
「SOUND STRUGGLE で注目すべき元メンバーは、Joey Izzo、Adam Rafowitz、Joe Calderone で、現在彼らは ARCH ECHO でフルタイムで演奏しているよ。彼らは、バンドを今のような形にする上で非常に重要な存在だったんだよね」
音楽は大きな海のようなもの。そこには無数の色があり、無数の命が宿り、無数の音が蠢いています。ただし、陽の当たる海面は大洋のほんの一部で、大部分はとても複雑で、暗く、冷たい深海。しかし、実はこの深海にこそ宝物が隠されているのです。
SOUND STRUGGLE もそんな音海の底で輝く財宝の一つ。3人の元メンバーが立ち上げた ARCH ECHO が水面で脚光をあびる一方で、取り残された Cameron Rasmussen はバンド名が示すように海底で苦闘を続けてきました。それでも、たった一人で長い時間をかけ、脚本、演出、構成のすべてを書き上げた二枚組1時間55分の超大作 “The Bridge” は、沈没船で朽ちさせるにはあまりに惜しいモダン・プログ・メタルの至宝に違いありません。
「ファンクや Prince からの影響は、SOUND STRUGGLE の初期の頃に多く見られたよね。だけどこのバンドが発展していくにつれて、ジャズやファンクのテイストをソロ・セクションやハーモニック・チョイスに加えた、よりモダンなプログレッシブ・メタル・バンドになっていったんだ」
MESHUGGAH meets Prince。10年代初頭、そんな奇抜な触れ込みで djent 世界に登場した SOUND STRUGGLE は、明らかにシーンの他のバンドたちとは一線を画していました。djent の創始者 PERIPHERY の血を引きながらも、その数学的で重々しい雛形にファンクのグルーヴ、ジャズの色彩、プログらしい旋律を配合し、サックスの嗎をも取り込みながら、特別な何かを生み出そうという意欲と野心に満ち溢れていたのですから。
「僕は、今もちょうど djent ・シーンの衰退を目の当たりにしていると思うよ。ギターのリフや曲の構成に関して、自分たちの愚かさや単純さに気づいていないような、ある意味ミーム化した文化になってしまっているよね」
10年代初頭から半ばにかけて、あれだけ雨後の筍のように乱立した djent の模倣者たちはそのほとんどが姿を消してしまいました。それはきっと、あの多弦ギター、近未来的音作り、0000の魔法にポリリズムといった djent のスタイル自体に魅せられすぎたから。一方で、SOUND STRUGGLE の半身ともいえる ARCH ECHO や、あの Steve Vai に見染められた Plini は早々にそのスタイルを武器の一つと割り切ってインストに特化し、より音楽的に、よりカラフルに、よりキャッチーに、”Fu-djent” の世界観を構築してギター世界のスターダムに登り詰めたのです。
「今の djent シーンがどうであろうと、djent はメタル音楽におけるギター・サウンドの基準としては、最もヘヴィーなものだと思っているんだ。だから djent のギターのテクニックとサウンドが、より高度で洗練されたハーモニーのアイデア、そして優れたソング・ライティングと共に適切に使用されるとしたら、きっとそこにメタルの未来があると僕は思う」
SOUND STRUGGLE、いや Cameron Rasmussen は彼らとは異なりあくまでも “メタル” であることにこだわりました。だからこそ、深海での潜伏を余儀なくされたとも言えるのかも知れませんが。もちろん、ブロードウェイ版 “ミセス・ダウト” や、ディズニーの音楽を任されるほどの才能ですから、ARCH ECHO や Plini になるのもそう難しい話ではなかったでしょう。しかし彼は、ギターを教えてくれたメタルを真のプログレッシブへと誘うことに情熱を傾けました。そうして完成した “The Bridge” は、まさにモダン・プログ・メタルの金字塔、深海に眠る宝石として眩いばかりの輝きを放ち始めたのです。
例えば Miles Davis の “Bitches Brew” とメタルがサックスを媒介に自然と溶け合う “Decisions”、例えば ストリングスを交え古のプログとメタルを絶妙に交差させた20分 “The Bridge”、例えば djent Crimson な “The Pursuit of Happiness”、例えばファンクやスウィングが MESHUGGAH と渾然一体で襲い来る “Where is She?”、例えば KORN とジャズが摩訶不思議にダンスを踊る “No Way Out”。あまりに多様で、あまりに混沌で、しかしあまりに審美な2時間は、まさに Cameron が理想とする “djent の適切な使用” を貫きながら壮絶なインテンスで息つく間もなく駆け抜けていきます。
それにしても、流暢を極めながら、突拍子もないアイデアと途方もない表現力でメタルらしく圧倒する Cameron のギタリズム、さらには Tre Watson (彼も長く djent シーンをフォローしている人にとっては懐かし名前) の紡ぐメタルらしい歌心満載の旋律に悪魔の囁きは、SOUND STRUGGLE が文字通り苦闘を重ねながらも “プログ・メタル” をマジマジと追求してきたその理由としてはあまりに出来すぎではないでしょうか。
今回弊誌では、Cameron Rasmussen にインタビューを行うことができました。「Dimebag Darrell はギターの腕前に加えて純粋な思いやりのある人で、人のために尽くしていた。だから僕にとっては、ギタリストとして尊敬できる人の条件をすべて満たしているんだよ」 ARCH ECHO の旧友たちもゲスト参加。どうぞ!!
SOUND STRUGGLE “THE BRIDGE” : 10/10
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