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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【THRESHOLD : LEGENDS OF THE SHIRES】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH RICHARD WEST OF THRESHOLD !!

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Sprawling 83 Minute Double Album, Perfect Epic “Legends of the Shires” Is An Excellent Introduction To Threshold’s World !!

DISC REVIEW “LEGENDS OF THE SHIRES”

結成は1988年。1993年にデビュー作をリリースした不朽のプログメタルアクト THRESHOLD が、”モンスターレコード”の名に相応しきダブルアルバム “Legends of the Shires” をリリースしました!! デビュー当初、”英国からの DREAM THEATER への回答” と謳われし希少なる生残の先駆者は、四半世紀の時を超え遂に至純なる “アンサー” を提示しています。
海外のプログメタルシーンでは、信頼出来るビッグネームとして揺るぎない地位を築いて来た THRESHOLD。一方で、残念ながら日本ではおそらく、 “スレショルド” “スレッショウルド” “スレッシュホウルド” 等、今一定まらない名前の読みづらさと、サーカスライクの派手なプレイに頼らない楽曲重視の音楽性に起因する無風、凪の状況が長く続いてきました。しかし、”Legends of the Shires” は間違いなく日本のファンにとって THRESHOLD への素晴らしき “Threshold” “入口” となるはずです。
楽器陣は2003年から不変である THRESHOLD の歴史は、天賦の才に恵まれた3人のシンガーが織り成す鮮やかな音楽絵巻だと言えます。今回リードシンガーを務める Glynn Morgan は、バンドのセカンドアルバム “Psychedelicatessen” 以来の復帰。三度目の脱退となった前任者 Damian Wilson の魅力でもある若干クセの強い歌声に比べると、2011年に残念ながら亡くなってしまった Andrew “Mac” McDermott の透明でハーモニーの映える声質に近いように感じますね。IRON MAIDEN の Bruce 後任オーディションで最終選考まで残った実力は本物です。
実際、Richard はインタビューで、”Legends of the Shires” が、”Mac” 時代の名作 “Subsurface” “Dead Reckoning” と似た雰囲気を持つことを認めています。そして、おそらくこの並外れたコロッサルなエピックは、精彩なるメロディーの崇高美、エレガントで壮観な審美的デザインの観点から前述の二枚をも凌駕しているのです。
バンドはリスナーのイマジネーションに配慮し、あまり作品の背景、詳細を明かそうとはしませんが、アルバムが同郷のトールキンの小説にインスパイアされていることは確かでしょう。”The Shire” とはトールキン作品の舞台である “中つ国” に存在するホビットの美しき居住地。そして Richard 語るところの 「変化からより強くなって戻ってくる」 というメッセージには、どうやら現在の英国の状況を隠喩し重ねている部分もあるようです。
アルバムは鐘の音、鳥の囀り、そしてアコースティックサウンドで悠久の大地を眼前に描く “The Shire (Part 1)” で緩やかに幕を開けます。続くダークで小気味よいリフワークが印象的な “Small Dark Lines” でアルバムのストーリーは躍動を始め、THRESHOLD の真骨頂とも言える鮮やかなメロディーでリスナーの心を溶かすのです。
事実、Glynn は、ハイトーンに重きを置く他のプログメタルアクトとは一線を画する、ミッドレンジ中心の爽やかでエモーションにフォーカスした歌唱を披露。頭に残るボーカルとコンパクトなリフワーク、ツインギターのハーモニーは、バンドがキャッチーでコマーシャルな楽曲を恐れない冒頭の強固な意思表示となっていますね。
とは言え、勿論プログレッシブな一面はバンドの象徴です。”The Man Who Saw Through Time”, “Lost In Translation” の10分を超える二つの叙事詩は、THRESHOLD がプログレッシブなスピリットと、豊潤なるサウンドスケープを内包する稀有な集団であることを雄弁に語っていますね。複雑でしかしナチュラルにレイヤーされた広大な音楽のパノラマは、Karl の見事なトーンコントロール、Richard のムーディーで流れるようなキーボード捌き、ドライブするシーン屈指のソリッドなリズム隊を携え、様々な場面を映す奇跡のオデッセイとしてリスナーに “The Shire” の景観や物語を運ぶのです。
アルバムのハイライトは、”Stars and Satellites” で訪れます。DREAM THEATER がハイテクニカルで、圧倒的なある種数学的視点によりプログメタルを捉えたのに対して、FROST*, VANDEN PLAS, そして THRESHOLD 等はプログレッシブロックの精神性やコンセプトによりフォーカスしているのかも知れませんね。
Richard が影響を受けたアルバムに、KING CRIMSON や YES ではなく PINK FLOYD, GENESIS を挙げているのは象徴的かも知れません。このスーパーキャッチーで、聴く度に心が踊るポップな宇宙は、逆に DREAM THEATER が決して到達し得ないプログレッシブポップ領域のはずです。
アルバムは英国からの回答をより鮮明に感じさせる、美しきピアノバラード “Swallowed” で静かに幕を閉じました。
今回弊誌では、1992年からバンドのキーボードプレイヤーを務める Richard West にインタビューを行うことが出来ました。間違いなく日本でこそ評価されるべきバンドです。どうぞ!!

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THRESHOLD “LEGENDS OF THE SHIRES” : 10/10

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