EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ALAIN IBRAHIM OF TURBULENCE !!
“I Wouldn’t Say That The Lebanese Background Is Reflected Directly In Our Music. Because You Know, Rock And Metal Is Rebel Music, And Growing Up, Listening To Western Music Was Our Escape.”
DISC REVIEW “FRONTAL”
「特に “Metropolis Pt.2” が、バンドメンバー全員に与えた影響は否定できないね。このアルバムを聴いた時はまだティーンエイジャーだったんだけど、それがただプログへの愛を増幅させたんだ。あの名作を初めて聴いた時に感じた気持ちを誰かに感じてもらえれば、それはとても嬉しいことだと思うよ。」
DREAM THEATER の後継者と呼ばれるバンドは十指で足らぬほどに登場し、おそらく大半はその大役を果たせずにいます。とはいえ、プログメタルの感染力が増幅し、世界中で逞しく花開いた21世紀の状況に悲観することはないでしょう。これまでプログやメタルの第三世界と思われていた場所にも、魅惑の新緑が咲き乱れているのですから。現在プログメタルが燃え盛る灼熱の中東、レバノンから現れた TURBULENCE は、ジャンルの地図にどんな足跡を記すのでしょうか?
「レバノン人としてのバックグラウンドが直接、僕らの音楽に反映されているとは言わないけどね。みんなも知っているように、ロックやメタルは反抗的な音楽で、洋楽を聴いて育ってきた僕たちにとって、メタルはある意味そうした母国の文化からの逃げ場になっていたんだからね。」
中東や北アフリカといえば、ORPHANED LAND や MYRATH のオリエンタルでエキゾチックなプログメタルを想像するリスナーも多いでしょう。しかし、TURBULENCE の本質はそこにはありません。例えば、日本でも邦楽と距離を置き洋楽にアイデンティティーを求める音楽ファンが少なからず存在するように、TURBULENCE にとって母国の文化に反抗し自らの個性を確立する手段が西欧のメタルだったのでしょう。
「特に西洋の人たちにとっては中東の音楽はエキゾチックで魅力的なんだよね。純粋に商業的な観点から考えれば、僕たちも間違いなくそちらに惹かれると思うんだよ。でも、今は自分たちの音楽のコンセプトやストーリーを第一に考えて、それを提供したいんだ。」
そうして、DREAM THEATER のカバーバンドからはじまった TURBULENCE は、ただ真っ直ぐに己が信じる純粋無垢なプログメタル道を突き進むことになりました。TURBULANCE とはきっと “Six Degrees of Inner Turbulence” から受け継いだ勲章。2作目となった “Frontal” には、DREAM THEATER をはじめとするプログメタルの偉人にだけ許された “コンセプトアルバム” の誇りと血潮、そしてスケール感が宿っています。
「”Frontal” “前頭葉” は、建設作業員のフィニアス・ゲイジの実話に基づいているんだ。彼は、鉄の棒が頭を完全に貫通し、左 “前頭葉” の大部分が破壊され、永遠に肉体的にも精神的にも変化を残した事故を生き延びた。僕たちは、日常の生活が不測の事態に対していかに脆いのか、そこに焦点を当てたんだ。」
QUEENSRYCHE がいかにも気に入りそうな、人間の強さと弱さを同時に描いたアルバムにはプログメタルの現在、過去、未来すべてが収められています。ほとんどの曲が7分から10分程度、時間をかけたイントロダクション、意味深な歌詞、奇妙なリズムやアイデア、競い合う楽器のダンスにテクニカルな大円団。たしかに、TURBULENCE はプログメタルの家系図にしっくりとハマるパズルのピースです。
「僕たちのサウンドをユニークにしているのは、伝統的なストーリーテリングと現代的なモダンプログのリズムやサウンドを融合させて、限界を押し広げようとしている部分だと思うんだ。」
ただし、その場所にとどまらない第三世界の生命力と包容力は実に偉大で、時折見せるテクノ・ビートやテクニカルなチャグ、djentyなリフリズム、そしてクライマックスで漂う異国の風、オリエンタルメロディーは明らかにジャンルの未来を見据えています。
「それでも、僕らの音楽には、東洋的でオリエンタルな背景から生まれたいくつかの特徴が確実に反映されていると思うな。」
現代的なアトモスフィアを蓄えながら内省と高揚を行き来し、音数で楽曲を破壊する暴挙を許さぬ感情の深み。Ray Alder や Einar Solberg を想起させる Omar El Hajj のソウルフルな歌唱も独自性の構築に一役買っていますし、何よりあの Kevin Moore に薫陶を受けた Mood Yassin の温もりに満ちた鍵盤が絶妙。”Crowbar Case” や “A Place I Go To Hide” の表現力、ダイナミズムはまさに現代の “Awake” でしょう。
そして今回弊誌では、中東の Petrucci こと Alain Ibrahim にインタビューを行うことができました。実に流暢で、ジャジーなフレーズが巧みなギターヒーロー。
「”In The Name of God” はとてもパワフルで時代を超越した楽曲で、個人的には DREAM THEATER 屈指の名曲だと思っているんだ。」P-Vineから3/12にリリースされる日本盤には、DREAM THEATER の大曲カバーがボーナストラックとして収録。どうぞ!!
TURBULENCE “FRONTAL” : 10/10
INTERVIEW WITH ALAIN IBRAHIM
Q1: When it comes to Lebanese metal/rock, maybe, Amadeus Amad and Slave to Silence are well known in the world. What do you know about them?
【ALAIN】: Both Amadeus and the girls from STS are close friends of Turbulence. Both great artists, and definitely helped put the Lebanese rock/metal scene on the map in their own ways. Amadeus and we go way back, he owned the rehearsal space we used to go to, and our keyboardist Mood recorded with him on some of his material.
Q1: レバノンのメタルやロックといえば、Amadeus Amad や SLAVE TO SILENCE が世界的にも有名ですよね。彼らとは知り合いですか?
【ALAIN】: Amadeus と STS の女の子たちはどちらも TURBULENCE の親しい友人だよ。両者とも偉大なアーティストで、レバノンのロック/メタルシーンを彼らのやり方で地図に載せる手助けをしてくれたのは間違いないね。
Amaeus は僕らがよく通っていたリハーサルスペースを所有していたし、僕らのキーボーディストMood は彼と一緒に彼の作品のいくつかをレコーディングしているんだよ。
Q2: How did you find metal in Lebanon and get into it? What is the metal scene like in Lebanon?
【ALAIN】: We found metal through bands like Metallica, Iron Maiden and Dream Theater right off the bat at a very young age (11-12). And then we learned that there were local bands covering them, so we attended shows and that was when the Lebanese metal scene was at its peak! The scene is still there, but audiences are distributed across more genres nowadays.
Q2: レバノンのメタル事情について教えてください。あなたはどうやってメタルにハマっていったのですか?
【ALAIN】: 11歳から12歳の幼少期に、METALLICA, IRON MAIDEN, DREAM THEATER といったバンドでメタルに出会ったんだ。そして、それらをカバーしているレバノンのバンドがいることを知り、ショーに参加していったんだよ。あのころがレバノンメタルシーンのピークだちまたかもね!
シーンは今でも存在しているが、最近ではオーディエンスはより多くのジャンルに分散しているね。
Q3: I think Lebanon is a place where the West meets the East. It has a diverse and long cultural and historical background. What do you think about the country, its culture, it’s history and its politics? Are these reflected in your music?
【ALAIN】: I wouldn’t say that the Lebanese background is reflected directly in our music. Because you know, rock and metal is rebel music, and growing up, listening to western music was our escape. However, there are some traits from our eastern/oriental background that precipitate into our music for sure.
Q3: レバノンは言ってみれば、西洋と東洋が交わる場所でもありますよね。ゆえに、多様な歴史や文化を誇っています。
そういった背景は、あなたの音楽に反映されていますか?
【ALAIN】: レバノン人としてのバックグラウンドが直接、僕らの音楽に反映されているとは言わないけどね。みんなも知っているように、ロックやメタルは反抗的な音楽で、洋楽を聴いて育ってきた僕たちにとって、メタルはある意味そうした母国の文化からの逃げ場になっていたんだからね。
それでも、僕らの音楽には、東洋的でオリエンタルな背景から生まれたいくつかの特徴が確実に反映されていると思うな 。
Q4: From the perspective of the Middle East and North Africa, Myrath and Orphaned Land have been successful in the metal world. They also play prog metal, but they are more ethnic than you, would you agree? Have you ever thought about incorporating more traditional music?
【ALAIN】: I think we can all agree that part of these bands’ charm is the oriental sound in their music, which is really exotic and attractive especially to the west. And if we were to think from a purely commercial point of view, we would definitely gravitate towards that as well. However, for now, we are putting the concept and story of our music first, and serving that. If we can use traditional music at the same time, that’s an added bonus for us!
Q4: 中東や北アフリカという視点で見れば、MYRATH や ORPHANED LAND はあなたたちと同様にプログメタルをプレイしつつ、よりオリエンタルな響きを取り入れ大成功していますよね?
【ALAIN】: 君が挙げたバンドの魅力の一部が、彼らの音楽の中にあるオリエンタルなサウンドであることは誰もが認めるところだと思う。特に西洋の人たちにとってはエキゾチックで魅力的なんだよね。純粋に商業的な観点から考えれば、僕たちも間違いなくそちらに惹かれると思うんだよ。
でも、今は自分たちの音楽のコンセプトやストーリーを第一に考えて、それを提供したいんだ。伝統的な音楽も同時に使うことができれば、それはそれでプラスになると思うけどね!
Q5: Your newest album, “Frontal”, is a big step up in every respect! What is the concept and lyrical themes behind the album?
【ALAIN】: “Frontal” is based on the true story of Phineas Gage, the construction worker who, against all odds, survived an accident which caused an iron rod to be driven completely through his head, destroying much of his left “frontal” lobe, leaving him forever physically and mentally changed. We shed light on how a stable life can be so vulnerable to unforeseen events that can alter us so deep into our core that we become unrecognizable by those we love. There are moments of pain, moments of despair, moments of confusion and anger and reminiscence. These very real emotions helped us create a canvas portraying human fragility as well as human triumph. We accomplish that musically by relying on rhythmic illusions and polyrhythms juxtaposed with somber melodies, a melting pot of crunching synths, soaring vocals, complex drumming, and a never ending stream of riff carnage that fuses jazz virtuosity with prog metal tension.
Q5: それにしても、最新作 “Frontal” はすべての面で大きな進化を遂げていますね!まずは、この壮大な作品のコンセプトやテーマから聞かせていただけますか?
【ALAIN】: “Frontal” “前頭葉” は、建設作業員のフィニアス・ゲイジの実話に基づいているんだ。彼は、鉄の棒が頭を完全に貫通し、左 “前頭葉” の大部分が破壊され、永遠に肉体的にも精神的にも変化を残した事故を生き延びた。僕たちは、日常の生活が不測の事態に対していかに脆いのか、そこに焦点を当てたんだ。自分たちの核となる場所さえ容易く壊れて、愛する人たちさえ認識できなくなってしまうんだからね。
アルバムには痛みの瞬間、絶望の瞬間、混乱と怒りの瞬間、そして回想の瞬間が存在する。これらの非常にリアルな感情が、人間のもろさと、そして人間の勝利を描いたキャンバスを作るのに役立ったんだ。
音楽的には、ジャズの名人芸とプログメタルの緊張感を融合させ、クランチング・シンセのメルティングポット、舞い上がるようなヴォーカル、複雑なドラミング、果てしなく続くリフの殺戮を駆使しながら、陰鬱なメロディーと並置されたイリュージョンやポリリズムに頼ることで、物語を完成させたんだよ。
Q6: The first thing that struck me when I heard this album was the same overwhelming feeling as Dream Theater’s “Metropolis Pt.2” and “Six Degrees of Inner Turbulence”. I don’t suppose that’s where you got the name Turbulence from, but you started out as a DT cover band and these two albums seem to have had a big influence on you, would you agree?
【ALAIN】: We can’t deny the influence that these two albums have had on all of the band members, especially SFAM. We were teenagers when we listened to the album, and it only amplified our love for prog music. If we can make someone feel what we felt when we first listened to SFAM, I’ll consider that an accomplishment I’m very pleased with!
Q6: アルバムを聴いてまず思い浮かべたのが、DREAM THEATER の “Metropolis Pt.2” や “Six Degrees of Inner Turbulence” だったんですね。
バンド名をそこから取ったとはさすがに思っていませんが、そうした作品から影響を受けているように見受けられます。
【ALAIN】: この2枚のアルバム、特に “Metropolis Pt.2” が、バンドメンバー全員に与えた影響は否定できないね。このアルバムを聴いた時はまだティーンエイジャーだったんだけど、それがただプログへの愛を増幅させたんだ。
あの名作を初めて聴いた時に感じた気持ちを誰かに感じてもらえれば、それはとても嬉しいことだと思うよ。
Q7: On the other hand, you also have modern prog metal philosophies like Haken, TesseracT and Leprous, and heavy, complex polyrhythms like Meshuggah in your arsenal, right?
【ALAIN】: I’d like to think that what makes our sound somewhat unique is incorporating the traditional story-telling with the modern prog rhythms and sounds, and trying to push the envelope in that regard. Frontal was written in 2016-17 and it’s still musically relevant in 2021 I think, so hopefully now that we have Frontiers supporting us, we’ll be able to release music sooner and dictate what happens next in prog haha!
Q7: 一方で、TURBULENCE には、HAKEN, LEPROUS, TesseracT といったバンドのモダンな哲学と、MESHUGGAH 由来のポリリズムも武器として備わっていますよね?
【ALAIN】: 僕たちのサウンドをユニークにしているのは、伝統的なストーリーテリングと現代的なモダンプログのリズムやサウンドを融合させて、限界を押し広げようとしている部分だと思うんだ。
“Frontal” は2016-17年に書かれた曲なんだけど、2021年になってもまだ音楽的に意味があると思っているよ。だから、今は Frontiersがサポートしてくれているから、もっと早く音楽をリリースして、プログ世界の次の展望を決めることができればいいなと思っているんだ。(笑)
Q8: The Japanese version of the album will include Dream Theater’s big epic “In The Name of God”. Why did you choose this song out of all their great songs?
【ALAIN】: In The Name of God is such a powerful and timeless song, to be considered a classic from DT’s catalog I personally think. We actually chose to cover it because we all love the song firstly, and secondly there wasn’t any full cover of it on all of YouTube back in the time, so we thought it would be fun!
Q8: 日本盤のボーナストラックには、DREAM THEATER の大曲 “In The Name of God” のカバーが収録されていますね。数ある名曲の中から、なぜこの曲を選んだのですか?
【ALAIN】: “In The Name of God” はとてもパワフルで時代を超越した楽曲で、個人的には DREAM THEATER 屈指の名曲だと思っているんだ。実際にこの曲をカバーすることにしたのは、第一にみんながこの曲を愛していて、第二に当時 YouTube にはこの曲のフルカバーがなかったからなんだけどね。