EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TOM S. ENGLUND OF EVERGREY !!
“For Me, Personally I Can Only Base It On The Landscapes I Have Outside My House Which Indeed Is an Scandinavian One So If I Managed To Convey That Through The Music, That’s Great.”
DISC REVIEW “ESCAPE OF THE PHOENIX”
「僕にとってただ一つ重要なのは、僕が何を感じるかではなく、君たちが “何か” を感じてくれることなんだ。僕個人としては、自分の家の外に広がる、まさにスカンジナビアの風景に基づいて歌っているだけなんだよ。音楽を通してそれを伝えることができたなら、それは素晴らしいことだよね」
EVERGREY に宿り続けるメランコリー。宿命にも似たその陰は、いつしか退廃的なプログ・メタルの神話として語り継がれてきました。
世界中で数多くのファンが、EVERGREY の威厳に満ちた甘いメランコリーに心を打たれています。彼らのミソロジーを象徴するのが、Tom S. Englund の魂を込めた歌唱、誠実なリリックにあることは明らかでしょう。
「Vikram が EVERGREY の “Missing You” のカバーを演奏している YouTube のビデオを見て、彼のメロディのセンスと演奏へのアプローチの仕方が好きだと思ったんだ。だから彼にメールで、『バンドを始めようよ!』って言ってみたんだよ」
プログ・メタル世界で最大級の賛辞を送られる歌い手は、実にオープン・マインドです。近年、病と戦いながら音楽を続けるアメリカの戦友、Nick van Dyk の力になるため REDEMPTION にも加入していますし、無名だった若きピアニスト Vikram Shankar の才能に惹かれてすぐさま2人だけのプロジェクト SILENT SKIES を立ち上げています。
「僕は David Gilmour から Bruce Dickinsson まで、その間に存在する全てのシンガーに影響を受けているよ。自分は純粋に影響を受けたというよりも、むしろ “インスパイアされた” と思っているんだけどね」
SILENT SKIES のデビュー作 “Satellites” は、鍵盤とストリングスというシンプルな構造により、ボーカリストとしての Tom S. Englund の凄みが最も際立つ作品と言えるのかも知れませんね。
北欧の雪景色をANATHEMA の繊細、恍惚で表現した深く、悲しく、そして美しい音のミルフィーユ。俄然、すぐ後にリリースが決まっていた EVERGREY の “Escape of the Phoenix” にも期待が高まりました。
「僕とって、このアルバムはとてもハングリーでエネルギッシュな作品で、EVERGREY に新しいリスナーをもたらしてくれることは間違いないと感じているよ。つまり、任務完了だ」
25年以上のキャリアを経ても、EVERGREY の情熱と才能の井戸は枯れることを知りません。研ぎ澄まされたメタルのエッジと、儚くも美しい夢幻世界が絶妙なバランスで共存する芸術作品。暗闇の中にモダンな光を宿した直近の3部作を受け継ぎながら、”The Dark Discovery” の生々しさや “In Search of Truth” の情熱へと回帰した温故知新。この10年で翼を広げたアトモスフィアの奇跡を存分に享受して。
シングル曲の “Forever Outsider” と “Eternal Noctarnal” で最新のメタリックな牙とキャッチーな魅力をアピールする一方で、”In Absence Of Sun” の息を呑む情熱、繊細なピアノのフックは明らかにルーツへの回帰を匂わせています。SILENT SKIES の影響か、初期のごとく再び鍵盤に自由が与えられたことで、Tom Englund の哀愁にも磨きがかかります。
「James Labrie とのデュエットはとても素敵なことだったね。まるで僕たち二人だけの空間のような感覚で、一生大切にしたいと思う瞬間だったんだ」
クライマックスは “The Beholder”。自らがプログメタル世界へ飛び込むきっかけとなった DREAM THEATER の歌声との共演。いつしか、ジャンルで最高の評価を分け合うこととなった2人のデュエットは、2人の出自に相応しい思索に耽るような曲調で見事に溶け合っていくのです。
もちろん、EVERGREY のアルバムにバラードは欠かせません。”Stories” と “You From You” の考え抜かれた壮大には思わず息を呑みます。EVERGREY はテクニックで語らない。ギターソロの扇情力がそう物語り、アルバムに込められた希望と喪失、物憂げな内省の精神はこの2曲がミニチュアのように素晴らしく代弁しています。
“Stories” に示現した希望の光は、”Leaden Saint”、そして “Run” へと受け継がれ日の出のように燦々と降り注ぎます。あまりにドラマティックな物語の終焉には、純粋な至福と充実感、再生の喜びが待っていました。もしかすると、これは人類がパンデミックからの復活を遂げる預言者なのかも知れませんね。そうして不死鳥の脱出は、雲を突き刺すような明るい光でフィナーレを迎えるのです。
今回弊誌では、Tom S. Englund にインタビューを行うことができました。「僕がアルバムを「世界」に提供した時点で、それはもう僕のものではないような感じで、実際には世界が作品をどう評価するか、そしてそのアルバムが世の中でどのような位置を占めるかの方が重要だからね」金言です。どうぞ!!
EVERGREY “ESCAPE OF THE PHOENIX” : 10/10
INTERVIEW WITH TOM S. ENGLUND
Q1: Let me start by telling you about Silent Skies. I was really impressed by that album. You and Vikram are also involved in Redemption now, but how did that great project start?
【TOM】: Well thank you! I saw Vikram on a youtube video where he had made a cover if the Evergrey song Missing You, And I knew I loved his sense of melody and his way of approaching the playing.
So I basically wrote him an email saying ” Hey we should start a band” ! And so we did… Later I also told Nick to get in contact with Vikram as I knew it would be a great move for Redemption as well. So now we are writing our 2nd album.
Q1: まずは SILENT SKIES について伺わせてください。
“Satellites” には心から感銘を受けましたよ。あなたとピアニストの Vikram は REDEMPTION にも参加していますね。このプロジェクトはどうやって始まったのですか?
【TOM】: ありがとう! 最初は、Vikram が EVERGREY の “Missing You” のカバーを演奏している YouTube のビデオを見て、彼のメロディのセンスと演奏へのアプローチの仕方が好きだと思ったんだ。
だから彼にメールで「バンドを始めようよ!」って言ってみたんだよ。そして、実際その通りになった。(笑) 後日、僕は Nick Van Dyk にも Vikram と連絡を取るように言ったんだ。REDEMPTION のためになるからとね。それで今、僕らは SILENT SKIES の2ndアルバムを書いているところなんだ。
Q2: The simple structure of vocal and piano makes your singing stand out. I’ve always wondered, what kind of singers have influenced you and what kind of singers have you aspired to be?
【TOM】: well I am influenced by Davild Gilmour to Bruce Dickinsson so everything in between. I would think of myself rather more “inspired” than purely influenced. I was also becoming an vocalist purely by chance and that we didn’t have a singer anymore 2 weeks before the recording of the first Evergrey album,And from that day I have tried to learn how to become a good singer, by my own rules.
Q2: 鍵盤とボーカル、ストリングスというシンプルな構造が、かえってあなたの歌唱を際立たせていますね。
私は、Tom Englund という不世出のシンガーが、どんな影響を受けて形成されたのかずっと気になっていたんですよ。
【TOM】: そうだな、僕は David Gilmour から Bruce Dickinsson まで、その間に存在する全てのシンガーに影響を受けているよ。自分は純粋に影響を受けたというよりも、むしろ “インスパイアされた” と思っているんだけどね。
僕だって、純粋に偶然にボーカリストになっていたからね。EVERGREY のファーストアルバムはレコーディングの2週間前にはもかかわらずボーカルがいなかったから、僕が歌うことになった。その日から、自分のルールで良い歌手になる方法を学ぼうとしてきたんだ。
Q3: When I listen to ‘Satellites’ I can see the Scandinavian landscape in my mind’s eye. Is that kind of melancholy still an important part of you?
【TOM】: For me it’s only important that you feel SOMETHING not what I feel. For me personally I can only base it on the landscapes I have outside my house which indeed is an Scandinavian one so if I managed to convey that through the music, that’ great.
Q3: “Satellites” を聴いていると、スカンジナビアの美しい情景が目に浮かびます。ああいったメランコリーはあなたの血に刻まれたもののようですね?
【TOM】: 僕にとってただ一つ重要なのは、僕が何を感じるかではなく、君たちが “何か” を感じてくれることなんだ。僕個人としては、自分の家の外に広がる、まさにスカンジナビアの風景に基づいて歌っているだけなんだよ。音楽を通してそれを伝えることができたなら、それは素晴らしいことだよね 。
Q4: Now let’s talk about Evergrey. The title “Escape of the Phoenix” is in a way a metaphor for the pandemic that has hit the world today. Did this pandemic affect the album?
【TOM】: Not really as we had written the music more or less before the pandemic broke loose. On the other hand I guess everything affects you be it in the guitar solos to the production, it must have had SOME impact on as we are highly empatic all of us.
Q4: では、EVERGREY の新作 “Escape of the Phoenix” について話しましょう。アルバムタイトルは、世界を襲ったパンデミックのメタファーにも思えますが?
【TOM】: どうだろうね。パンデミックが発生する前に、ほとんどすべての曲を作っていたから。一方で、ギターソロやプロダクションに至るまで、すべてが影響を受けているとも思っている。
僕たちは皆が、非常に感受性が豊かだからね。必ず何かしらのインパクトを受けたはずだよ。
Q5: James LaBrie guesting on “The Beholder” is one of my favourites, Dream Theater is obviously one of the reasons that drew you into the world of prog metal, wasn’t it a dream come true moment?
【TOM】: Yeah, this is just a lovely thing, a feeling of closing circles, a moment that I will cherish for the rest of my life. It feels like an accomplishment having him sing my vocal lines and my melody on music we have written. It’s just fantastic. And he makes a really great job too! Just as great as I imagined it sounding in my head!
Q5: James LaBrie のゲスト参加、デュエットは夢が実現した瞬間だったのではないですか?明らかに DREAM THEATER はあなたがこの世界に飛び込んだ理由の一つですからね。
【TOM】: そうだね、彼とのデュエットはとても素敵なことだったね。まるで僕たち二人だけの空間のような感覚で、一生大切にしたいと思う瞬間だったんだ。
僕たちが作った曲で、彼が僕のボーカルラインやメロディを歌ってくれるなんて、本当に達成感があるよね。とても素晴らしいことだよ。そして、James も本当に素晴らしい仕事をしてくれたよ。頭の中で想像していた通りの素晴らしい出来栄えになったね。
Q6: Beautiful ballads like this one and “Stories” are one of Evergrey’s trademarks. Still, this album is one of the most metallic in your discography, would you agree?
【TOM】: I don’t know, I rarely have a grasp of the albums we make until much later, and it’s not really relevant what I believe it is. As soon as I have given the album to the “world” it’s sort of not MINE anymore, and actually more important what teh world makes of it and what place it will have in the universe.
For me it’s a really hungry, and energetic record that will for sure bring new listeners to Evergrey = mission accomplished.
Q6: その “The Beholder” や “Stories” のように美しいバラードは、EVERGREY のトレードマークだと言えますね。それでも、今回の作品は EVERGREY の歴史の中でも実にメタリックな作品ではないですか?
【TOM】: どうだろうね。僕たちが作ったアルバムを、ずっと後になってから分析したり把握することはほとんどないし、そもそも僕が作品をどう思っているかはあまり関係ないと思っているんだ。僕がアルバムを「世界」に提供した時点で、それはもう僕のものではないような感じで、実際には世界が作品をどう評価するか、そしてそのアルバムが世の中でどのような位置を占めるかの方が重要だからね。
まあ、僕とって、このアルバムはとてもハングリーでエネルギッシュな作品で、EVERGREY に新しいリスナーをもたらしてくれることは間違いないと感じているよ。つまり、任務完了だ。
Q7: The world of progressive metal has evolved a lot. For example, the polyrhythmic riffs of Meshuggah and Gojira have been a revelation, and djent-derived newcomers such as Animals as Leaders and Polyphia came to the scene. How do you feel about the evolution of prog metal? Do you have a favourite new band?
【TOM】: I am not that big on genres, I love music no matter what genre or type. And to be honest I am not either up to date with what’s going on in the progworld or hte music world in general, I just listen to music when I am on tour, when I am home I write music and try to stay as fresh in my mind as possible.
Having said that I love all of the bands you mentioned above and then some!
Q7: EVERGREY が始まった当初と比べると、プログメタルの世界も大きく進化していますよね。
MESHUGGAH や GOJIRA のポリリズムは天啓でしたし、テクニックを向上させた ANIMALS AS LEADERS, POLYPHIA といった djent 由来の新人類も登場しています。
【TOM】: 僕はジャンルにこだわらず、どんな音楽も愛している。正直なところ、僕自身はプログ界や音楽界全般の最新情報には疎くて、ツアー中はただ音楽を聴き、家にいるときは作曲をして、できるだけ新鮮な気持ちでいられるようにしているだけなんだ。(笑)
そうは言っても、君が挙げたバンドは全部好きだし、それ以外のバンドも結構聴いているよ。
Q8: Recently Steven Wilson has been making a lot of comments about how rock is dead and the electric guitar is obsolete. What do you think of his views?
【TOM】: No idea, I don’t know anything about him or his views on music but in my humble opinion the electric guitar will never go obsolete, however, the people using it might.
Mankind will always be inventful and proggressive in the sense that they will make the instrument adapt to íts current world rather than trying to make today’s youth have to adapt to an older version or view of it as an instrument, they will re-invent it. That’s Rock n’ roll!
Q8: 最近、Steven Wilson がロックは死んだとか、ギターは過去の遺物的な発言を繰り返していますね。あなたはその意見についてどう思いますか?
【TOM】: 彼や彼の音楽観については何も知らないけど、僕の控えめな意見では、エレクトリック・ギターは決して廃れることはないと思う。だけど、それを使う人間は廃れるのかもしれないね。
人類は常に発明家で、進歩的だ。つまり、現代の若者が過去の古い考え方に合わせようとしなければならないのではなく、若者が楽器を現在の世界に適応させ、再発明していくんだよ。それがロックン・ロールというものさ。