NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ETHEREAL SHROUD : TRISAGION】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JOSHPH HAWKER OF ETHEREAL SHROUD !!

“What I Didn’t Understand Was The Conservative Attitude Of a Lot Of The Second Wave Bands – Which Makes It All The More Rewarding To See Bands Like Violet Cold, Spectral Lore And Other Anti-fascist Bands Changing The Climate. We’re Here To Tip The Scale And Me Aren’t Going Away.”

DISC REVIEW “TRISAGION”

「”セカンド・ウェイブ” のバンドの多くが保守的なのは、僕にとって理解できないことだよ。でもだからこそ、VIOLET COLD や SPECTRAL LORE、その他のアンチ・ファシストのバンドがメタルや世界の風潮を変えていくのを見ると、本当に励まされるね。僕たちは局面を変えるためにここにいるし、いなくなりはしないよ」
メタル世界において、音楽的にも精神的にも、今最も進歩的なサブジャンルがブラックメタルであることに異論を唱える向きは少ないはずです。環境問題を歌い、マイノリティのために戦い、ファシズムの台頭を許さない。かつて殺人や教会への放火が取りざたされたジャンルとは思えない “正しい” 主張を展開する新鋭たち。ただし、その根っこの部分は実は同じなのかもしれませんね。
「ブラックメタルは “フリンジグループ” (中心ではなく端に位置する)の人たち、つまり落ち込んでいる人、虐げられていると感じている人たちを多く誘うんだよね。僕自身、LGBT だから、社会やパラダイムに反しているブラックメタルに慰めを見いだしたからね」
自身も LGBT で、社会に馴染めずブラックメタルに慰めを見出したと語る ETHEREAL SHROUD の首謀者 Joseph Hawker。ブラックメタルを創造した初期のアーティストにしても、少なからず社会から逸脱し、孤立した人たちであったことはたしかでしょう。つまり、ブラックメタルには孤独や喪失を無尽蔵に癒し包み込む、果てのない包容力が備わっているのです。
「僕は BELL WITCH をとても尊敬しているし、彼らはシーンで最も優れた現代のバンドの一つだと思っている。僕らは2人とも、強いメロディー、感情的な底流、ビッグなサウンドスケープを持つ長尺の曲を利用していると思うよ」
もちろん、ブラックメタルは音楽的にも寛容で多様です。フィジカルのみに付属するボーナス・トラックを含めると、4曲で1時間20分。その “Trisagion” と題された深く長い井戸の底から流れ出る旋律と感情の濁流は、繊細で傷つきやすいと同時に活力と魅力に満ちているという点で、あの BELL WITCH のジャンルを無意味な記号と知らしめた傑作 “Mirror Reaper” にも比肩し得る作品にちがいありません。
“Trisagion” の核心となる “コア” は、アトモスフェリック・ブラックメタルのイメージに据えられています。しかし、ETHEREAL SHROUD がブラックメタルの寛容を謳歌するのは、そのコアなサウンドの周辺に何層もの音彩を重ねてミルフィーユのようなサウンドの繭を形成している点にあります。
その影響はドゥームの最も憂鬱な重遅、冷たさと輝きを交互に繰り返すメロディックな蜘蛛の糸、従来のブラストとダブルベースを巧みに組み合わせたリズムの狡知、そしてポスト・メタリックな反復の美学という形で現れています。反復といえば、アルバムを通じて成される共通のテーマの再現は着実に、控えめにモチーフを進化させ、おなじみのメロディにやがて新しい生命を吹き込んでいきます。そして反復で溜め込んだ鬱屈は、文字通りエセリアルな女声や IN FLAMES 譲りの慟哭で、さながら蓮の花が開くかのようにカタルシスとして放出されるのです。
「ANATHEMA, ESOTERIC, SUMMONING, GOD IS ASTRONAUT, AGALLOCH, MOONSORROW をよく聴いていたね。こういったバンドが僕のサウンドを形成するのに役立ったと思う。表現への情熱が高まって、ドゥームメタルやブラックメタルの大きなうねりをそこに加えたんだ。彼らが巨大で、シネマティックで、濃密な表現をしているのを見て、それを自分なりの方向に持っていきたいと思ったんだよね」
“Trisagion” が世界に拒絶されるような憂鬱と孤独、そして怒りから始まったことはたしかでしょう。しかし、少なくともこの作品はその先を見据えながら前進することで、典型的なエクストリーム・メタルの在りようとは一線を画しています。”Trisagion” は夜明けを見通す窓であり、自分の居場所を無理やり探し出すのではなく、自然に自分らしく生きることがあるがままにできる未来を指し示しています。Joshph がこの賛美歌で ANATHEMA や ESOTERIC を自分らしく、自然に進化させたように。
今回弊誌では、Joshph Hawker にインタビューを行うことができました。「僕は音楽家になる前はよく、とても小さなことでアルバムを批判していたんだけど、芸術作品に対して自分自身や自分の見方を調整し、その意図を理解しようとしなければならないとは考えていなかったんだ」どうぞ!!

ETHEREAL SHROUD “TRISAGION” : 10/10

INTERVIEW WITH JOSEPH HAWKER

Q1: This is the first interview with you. So, at first, could you tell us about yourself? What kind of music were you listening to, when you were growing up?

【JOSHPH】: I was listening to a lot of Anathema, Esoteric, Summoning, God is an Astronaut, Agalloch, Moonsorrow… I think all these bands helped shape the sound – I added a big dose of doom metal and black metal to it due to my passion for the expression. I saw huge, cinematic, dense ways these bands expressed themselves and wanted to take it in my own direction and you can see very subtle nods to these bands but with my own feel, I hope! I don’t like to talk about myself too much. I like my work to do the talking.

Q1: 本誌初登場です!まずはあなたの音楽的なバックグラウンドからお話ししていただけますか?

【JOSHPH】: ANATHEMA, ESOTERIC, SUMMONING, GOD IS ASTRONAUT, AGALLOCH, MOONSORROW をよく聴いていたね。こういったバンドが僕のサウンドを形成するのに役立ったと思う。表現への情熱が高まって、ドゥームメタルやブラックメタルの大きなうねりをそこに加えたんだ。
彼らが巨大で、シネマティックで、濃密な表現をしているのを見て、それを自分なりの方向に持っていきたいと思ったんだよね。まあ、僕はあまり自分のことを話したくないんだ。自分の作品に語ってもらいたいからね。

Q2: I’m a big fan of your beautiful guitar melodies, what kind of guitarists are your heroes?

【JOSHPH】: Thank you very much! Interestingly, a lot of my melodies don’t start on guitar, so that’s a difficult question to answer. They develop in my head and then I simply play them over and over again, developing them with flourishes until they’re as best as possible. As far as influences, it’s very difficult to answer because many of the artists who influenced the way I write melodies primarily used effects, synths and other instruments to write their melodies.

Q2: それにしても、あなたのギター・トーンやメロディーは素晴らしいですね!

【JOSHPH】: どうもありがとう!だけど面白いことに、僕のメロディーの多くはギターから生み出しているわけじゃないから、その質問に答えるのは難しいね。頭の中でメロディが生まれ、それを何度も何度も繰り返し演奏し、可能な限りベストな状態にまで発展させていくんだよ。
僕が影響を受けたアーティストは、エフェクトやシンセサイザー、その他の楽器を使ってメロディーを作ることが多いからね。

Q3: You wrote reviews for Angry Metal Guy under the name Noctus, and I really liked your reviews of Anathema and Lantros. Did your metal reviews help you in any way in the making of the album?

【JOSHPH】: You did your research! To tell you the truth, I’m unhappy with my reviews. Being a musician changed my perspective on the way I perceive music. Being a passionate individual about music can go both ways – you can both love something or be completely unreasonable about it, which I often was. I wouldn’t say that it helped me write my music, but it did help me respect musicians more in retrospect and help me understand that often I have to approach albums on their terms rather than the other way around. I often used to pick albums apart for very small things but didn’t consider that perhaps I had to try and adjust myself and my perspective to a piece of art – try to understand its intent.

Q3: あなたが昔、Angry Metal Guy でレビューを書いていたのを覚えていますよ。LANTROS や ANATHEMA のレビューなど、とても参考にしていましたよ。あのころの経験は、今に活きていますか?

【JOSHPH】: すごいリサーチ力だね! ただ、実を言うと、僕は自分のレビューに不満があるんだ。ミュージシャンになったことで、音楽のとらえ方が変わったからね。音楽に対して情熱的なリスナーは二極的な考えに陥りがちだ。何かをとことん愛するか、完全に理不尽に嫌ってしまうか。僕も昔はよくそうなった。
だからレビューを書いていたことが曲作りに役立ったとは思わないな。むしろ、音楽家になったことで、振り返ってみるとミュージシャンをより尊敬できるようになったし、アルバムに対して自分が思うのとは逆にアプローチしなければならないことが多いということを理解するきっかけにもなったよね。
僕はよく、とても小さなことでアルバムを批判していたんだけど、芸術作品に対して自分自身や自分の見方を調整し、その意図を理解しようとしなければならないとは考えていなかったんだ。

Q4: “Trisagion” was recorded during the pandemic, was it influenced by that extraordinary situation?

【JOSHPH】: I think it must have influenced it and made it a far more isolationist, intense piece of work. It made it much more difficult to record – Shannon, my guest vocalist, is my next door neighbour but due to strict lockdown mandates we had to wait months before we could record her part. Richard couldn’t visit and had to do his parts remotely, so it hindered communication massively – he still did an incredible job though, no doubt due to his deep understanding of the album. Lyrically the album was completed prior to the pandemic but I think subconsciously I must have approached the record in a more intense, visceral way due to how isolated I was at the time.

Q4: “Trisagion” はパンデミックの最中にレコーディングされたわけですが、あの異常事態がアルバムに及ぼした影響は少なくないですよね?

【JOSHPH】: その影響もあってか、ずっと孤独で強烈な作品になったと思う。レコーディングでさえとても大変だった。ゲスト・ボーカルの Shannon は僕のの隣人なんだけど、厳しいロックダウンにより、彼女のパートを録音できるまで何ヶ月も待たなければならなかったからね。Richard は来られないから、彼のパートはリモートで録音しなければならなくて、コミュニケーションに大きな支障をきたしたね。
このアルバムの歌詞はパンデミックの前に完成していたんだけど、録音当時はとても孤立していたから、無意識のうちにより強烈で直感的な方法でこのアルバムにアプローチしていたんだと思う。

Q5: ‘Trisagion’ is a term meaning ‘Thrice Holy’ and used to denote an orthodox hymn in three parts. The three songs on the album seem to be your resistance to the recent situation where greed and power have promoted fascism, leading to the division of the world and worsening climate change. Would you agree?

【JOSHPH】: Absolutely. In times of crisis, humanity looks to simple things to blame – often Fascism comes up in these conversations as minorities are blamed for societal ills. Power structures vilify easy targets using propaganda as the past has proved to be effective. Being passive about these issues isn’t enough – people must make a stand about the rising numbers and tenacity of fascists.

Q5: “トリサギオン” とは「三聖祝文」という意味の言葉で、3つの部分からなる正統派の賛美歌を表すのに使われます。
このアルバムの3曲は、欲と権力がファシズムを推進し、世界の分断や気候変動の悪化を招いている昨今の状況に対するあなたの抵抗のようにも思えます。

【JOSHPH】: その通りだよ。危機の時代には、人々は非難しやすいものに目を向ける。マイノリティが社会悪として非難されるとき、しばしばファシズムが話題に上るよね。
権力組織は、過去に効果的であったことが証明されているように、プロパガンダを使って非難することが簡単なターゲットを中傷するんだ。こうした問題について受動的であることは十分ではないよ。人々は、ファシストの数の増加と粘り強さについて、立ち向かわなければならないんだ。

Q6: “Trisagion” is probably Atmospheric Black Metal, but it’s a very diverse album, from Melodic Death Metal and Doom Metal to the avant-garde side with viola and female vocals, right?

【JOSHPH】: I would agree – but it wasn’t intentional. I just wrote this album rather naturally and put parts in organically. They are simply the sounds and melodies that spoke to me and felt expressed the emotions that were congruent with the theme. I think that’s the success of the record, I’m very proud of it.

Q6: “Trisagion” はおそらくアトモスフェリック・ブラックメタルに分類されるのでしょうが、メロデスからドゥーム、ヴィオラや女性ボーカルを配したアヴァンギャルドな音の葉まで、メタルの様々な側面を配合した多様なアルバムですね?

【JOSHPH】: そう思うよ。だけど、意図的にやったわけではないんだよ。このアルバムは、どちらかというと自然に書いて、有機的にパーツを入れていっただけなんだ。テーマと一致する感情を表現している、そう感じた音やメロディーをそのまま使っただけだからね。それがこのアルバムの成功だと思うし、とても誇りに思うな。

Q7: The very long and artistic song reminded me of Bell Witch. Of course, your musical style is not that close to them, but is there anything you identify with them?

【JOSHPH】: I respect Bell Witch massively and think they’re one of the best modern bands in the scene. I think both of us utilise long form songs with strong melodies, emotional undercurrents, large soundscapes. Mirror Reaper was a triumph and rightfully is classed as one of the most notable modern doom metal albums. The beginning of ‘Astral Mariner’ gets a lot of comparisons to them but I truthfully wrote it before I’d ever heard of Bell Witch – I was channelling my experiences listening to the likes of Esoteric and Mourning Beloveth.

Q7: 近年、こうした非常に長くてアーティスティックな楽曲といえば、BELL WITCH が代表的ですね?

【JOSHPH】: 僕は BELL WITCH をとても尊敬しているし、彼らはシーンで最も優れた現代のバンドの一つだと思っている。僕らは2人とも、強いメロディー、感情的な底流、ビッグなサウンドスケープを持つ長尺の曲を利用していると思うよ。”Mirror Reaper” は大成功で、当然ながら現代ドゥーム・メタルの最も注目すべきアルバムの1つに分類されるよね。
“Astral Mariner” の冒頭は彼らと比較されることが多いんだけど、正直に言うと、BELL WITCH を聴く前に書いたものなんだ。ESOTERIC や MOURNING BELOVETH のようなバンドを聴いた経験を生かしたものだよ。

Q8: Considering the origins of black metal and the inner circle, it is very interesting to see more and more “righteous” bands such as your anti-fascism, Alcest (environmental protection), and Violet Cold (LGBT minority). Musically and ideologically, black metal is probably the most advanced subgenre of metal today. Why do you think this is so?

【JOSHPH】: Black metal invites a lot of people from fringe groups – people who feel dejected, mistreated. As someone who is LGBT myself I found solace in black metal for it being so against society and its paradigms. The sound was incredible. What I didn’t understand was the conservative attitude of a lot of the second wave bands – which makes it all the more rewarding to see bands like Violet Cold, Spectral Lore and other anti-fascist bands changing the climate. We’re here to tip the scale and we aren’t going away.

Q8: それにしても、初期のブラックメタルの成り立ちやインナーサークルを思うと、今その界隈に多くの “正しい” バンドが登場しているのは興味深いですよね。
あなたのようなアンチ・ファシスト、環境問題を歌う ALCEST, マイノリティのために声をあげた VIOLET COLD。いまでは、ブラックメタルは最も進歩的なメタルのサブジャンルだと感じます。

【JOSHPH】: ブラックメタルは “フリンジグループ” (中心ではなく端に位置する)の人たち、つまり落ち込んでいる人、虐げられていると感じている人たちを多く誘うんだよね。僕自身、LGBT だから、社会やパラダイムに反しているブラックメタルに慰めを見いだしたからね。そして何よりサウンドも素晴らしい。
だからね、”セカンド・ウェイブ” のバンドの多くが保守的なのは、僕にとって理解できないことだよ。でもだからこそ、VIOLET COLD や SPECTRAL LORE、その他のアンチ・ファシストのバンドがメタルや世界の風潮を変えていくのを見ると、本当に励まされるね。僕たちは局面を変えるためにここにいるし、いなくなりはしないよ。

FIVE ALBUMS THAT CHANGED JOSEPH’S LIFE

JAKOB “SOLACE”

ESOTERIC “THE PERNICIOUS ENIGMA”

IN FLAMES “THE JESTER RACE”

MOONSORROW “KIVENKANTAJA”

SUMMONING “OATH BOUND”

MESSAGE FOR JAPAN

Thank you so much for your immeasurable support – you’re all amazing. Much love!!

不朽のサポートをありがとう。君たちは素晴らしいよ!愛を込めて!

JOSEPH HAWKER

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