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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【WORMROT : HISS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH RASYID JURAIMI OF WORMROT !!

“To Me, Grindcore Is The Most Free-Form Of Extreme Music. I Try To Challenge The Notions Of ‘Tough Guy’ And ‘Angry Music’. You Don’t Have To Be ‘Tough Guy’ To Listen To Grindcore Or Metal.”

DISC REVIEW “HISS”

「グラインド・コアには様々な見方があると思うんだ。ただ、多くの人はグラインド・コアに対して厳格なガイドラインを持っていると思うんだけど、僕にはそのガイドラインがないんだよね。
僕にとってグラインド・コアはエクストリーム・ミュージックの中で最もフリーフォームなもの。僕は “タフガイ” や “怒れる音楽” という概念に挑戦しようとしているんだよ。グラインド・コアやメタルを聴くのに “タフガイ” である必要はないんだ。最大限のディストーションも必要ない。パンクのジャケットも必要ない。自由でいいんだ。でも、正直でなければならない。なぜなら、結局リスナーは “たわごと” を嗅ぎつけることができるから」
グラインド・コアは、新規に参入するバンドが注目を集めることが難しいジャンルかもしれません。すでに目的地に到達したと分析するリスナーも多く、基本的に同じような系統の、激しく楽しく怒れるバンドが何百と存在する場所。シンガポールの英雄 WORMROT は、そんなグラインド・コアのガイドラインを破壊し、ジャンルの “門番” たちを一掃しようとしています。
6年ぶりとなるアルバム “Hiss” は、バイオリニストの Myra Choo が暗闇で跳梁し、Arif の歌声は千変万化、ジャズやポスト・メタルの領域まで探求した、気高き創造性の塊。その裏には、メタルに古くから存在する “マッチョイズム” ひいては、保守的なステレオタイプに対する反抗が潜んでいたのです。
「彼の脱退についてあまり深掘りすることはしたくないんだ。家族の問題だからね。僕は人生をかけて WORMROT のために曲を書いてきた。だから、うん、WORMROT は Arif なしでも続いていくよ」
WORMROT 4枚目のアルバム “Hiss” の完成直後に、オリジナルメンバー Arif Suhaimi がボーカリストとフロントマンの座を降りることが明らかになりました。現代のグラインド・コアで最も多様なボーカリストの一人が、最高傑作を発表したばかりのこの時期にバンドを去る。それは WORMROT にとって明らかに大きな痛手です。しかし、ギタリスト Rasyid Juraimi とドラマー Vijesh Ghariwala は不屈です。襲い来る苦難はむしろ、21のトラックの中で吐き出されるフラストレーション、勝利、敗北、良い経験、悪い経験をリアルにし、”Hiss” はこの波乱の時代により “傲慢に” 跋扈する作品となったのです。
「今回、”Hiss” で梶芽衣子と “女囚サソリ:701号恨み節” にオマージュを捧げたのは、アルバムのテーマに合っていて意味があると思ったからだよ。日本の音楽は、Boris、324、Four Get Me A Nots、Casiopea、杏里、中森明菜などなど、いろいろ聴いているよ」
この音楽的な自由と拡散を “セルアウト” と断じることは簡単です。しかし、そもそも Rasyid には、日本の映画や音楽から受けた濃密な養分が備わっていました。BORIS, CASIOPEA, 中森明菜。そのどれもが実は、”Hiss” の重要なパズルの欠片。むしろ、原点に立ち返り “正直” になった Rasyid にとって、グラインド・コアとは真っ白なフリーフォームのキャンパスだったのでしょう。
それでも、”Hiss” は依然として、ベースなしのグラインドとパワーバイオレンスの伝統に則った短く速い曲で溢れるアルバムです。つまり、WORMROT は PIG DESTROYER が過去数年の間に行ったのと同じように、その味覚を拡大したのです。クラシックロックのセンスとリフを時速数百マイルで掘り起こす “The Darkest Burden” 、グラインドとノイズコアの狂気に VOIVOD の不協和を追加した “Your Dystopian Hell”、通常の瞬きで見逃すほどのグラインド “Unrecognisable” といった強烈な “ガイドライン” があればこその対比の美学。
ポスト・メタルの音の渦をブラストビートと凶悪なボーカルの上に漂わせる “Desolate Landscapes” は出色。”Broken Gaze” では感情的なクリーンボーカルを取り入れ、”Behind Closed Doors” ではパンクとクラシックなベイエリア・スラッシュを組み合わせ、何より、”Grieve”、”Pale Moonlight”、”Weeping Willow ” のトリロジーは、SWANS のようなトライバルなリズムから、NAKED CITY 的フリーフォームの前衛的サウンドスケープへのアプローチまで、極限の雰囲気を持ち、バイオリンが不協和音の合間で泣き叫びます。つまり、彼らはグラインド・コアという狭い檻から、さながら女囚さそりのように脱獄を試みているのです。アートワークはまさに恨み節のカタルシス。
今回弊誌では、Rasyid Juraimi にインタビューを行うことができました。「どこの国でも長所と短所があると思う。シンガポールは小さな国だから、国家が僕たちを監視し、動きを制限するのは簡単なんだよ。ただ、だからこそ僕たちはもっと賢くならなければならないよね。それは、決して不可能なことではないよ」どうぞ!!

WORMROT “HISS” : 10/10

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