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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【STAR ONE : REVEL IN TIME】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ARJEN ANTHONY LUCASSEN OF STAR ONE !!

“I See It As My Role As a Musician To Offer Escapism”

DISC REVIEW “REVEL IN TIME”

「STAR ONE は AYREON とは逆で、ギターリフをベースとしている。そして STAR ONE はもっとストレートな音楽なんだ。クラシカルでもないし、アコースティックもない。ストレス発散の時間だよ!」
自称、長身痩躯のヒッピー。オランダが生んだプログ・メタルの巨匠 Arjen Anthony Lucassen は GENTLE STORM, STREAM OF PASSION, GUILT MACHINE など数多のプロジェクトで、そのつど自身の様々な音楽的宇宙を探求し、知的欲求を満たしてきました。それが可能になるのも、ほとんどが壮大な2枚組で複雑にストーリーが絡み合う、さながらメタル世界の “スターウォーズ”、AYREON という母船が存在しているから。
「Bruce Dickinson は AYREON のアルバム “Universal Migrator” での私たちの共同作業をとても気に入ってくれて、私と一緒にアルバムを書いてレコーディングしたいと言ってくれたんだ。それで曲作りを始めたんだけど、その時、私は素直にこのことをインターネットに書いてしまったんだ。そのニュースはすぐに広がり、Bruce のマネージャーである Rod Smallwood にも伝わってね。彼は、私がそんな早い段階でこのプロジェクトの話をしたことを面白く思わず、プロジェクトをキャンセルしてしまったんだよ」
Bruce Dickinson との蜜月からはじまった “Space Metal” STAR ONE とは、AYREON のハイエナジーなプログ・メタル、その側面にフォーカスし、より掘り下げて表現したプロジェクト。映画を愛する Arjen は、自分の好きな映画、それもSFやファンタジーについての感想や感情を表現する場として STAR ONE に乗り込んでいます。ただし、これまでの “Space Metal” では、”スターゲイツ” や “スターウォーズ” といった遥か彼方の宇宙を探索したのに対して、今回はもう少し地球に寄りそい、”時間旅行” に端を発するディストピアや近未来的な映画をテーマとしているのです。
これまで STAR ONE では、Russell Allen や Floor Jansen のような才能あるメンバーが中心となってハーモニーを奏でてきましたが、今作では “One Song, Two Singers” を掲げた二枚組のアルバムとなり、さらに Arjen の世界中の最高のギタリストと仕事がしたいという野望を叶えるため乗組員の数は大幅に増加。多様な才能と名人芸を味わえる、ボリューム満点の壮大な宇宙メタルがここに完成をみたのです。
オープナー “Fate of Man” は、”Universal Migrator” サーガ第2弾で私たちが愛した要素をそのまま抽出したような、速く、重く、メロディックな幕開け。カナダのメタルバンド UNLEASH THE ARCHERS の Brittney Slayes が STAR ONE の世界に新鮮な声をもたらし、映画 “ターミネーター” の残像を伝えます。同時に、SYMPHONY X の Michiel Romeo は、壮絶なギターリードで T-800 の残忍な道を切り開いていきました。
次のトラック “28 Days” は、同じく SYMPHONY Xの Russell Allen が “ドニー・ダーコ” の複雑な物語を語るために歌詞を提供し、楽曲に説得力を付与します。ジェットエンジン、タイムトンネル、バニースーツのドロドロとしたカオスはドロドロとした楽曲に移行して、ドニーの奇妙な人生の最後の28日間を十分に表現しています。
3曲目の “Prescient” は、AYREON らしい伝統的なシンセと半ケルト的なメロディーで始まった後、映画 “プライマー” の物語となり、2人の主人公、エイブとアーロン を Michael Mills (TOEHIDER) と Ross Jennings (HAKEN) が見事に演じきりました。この曲のデュエットは、かつての “Human Equation” を想起させ、二人のアカペラパートが何層にも重なっていて、リスナーの脳内を駆け巡ります。
次の “Back From The Past” では、Jeff Scott Soto と Ron Thall の SONS OF APOLLO 組が暗躍し、1985年にタイムトラベル。若き日のマクフライの様に、デロリアンが午後10時4分に線を越えなければならないと訴えます。素晴らしいアレンジに素晴らしいミュージシャンシップ。
Steve Vai がメタルを弾く、今となっては珍しいタイトル曲の冒険の後訪れる “The Year of 41” はアルバムのハイライトでしょう。1941年、真珠湾攻撃を阻止するため、米海軍の乗組員がわずかな可能性に賭ける映画 “ファイナル・カウントダウン” にインスピレーションを得た楽曲。Joe Lynn Turner が Jens Johannson と再びタッグを組み、WHITESNAKE の偉大なる Joel Hoekstra を引き連れ軍艦に乗り込みました。AYREON 世界が素晴らしいのは、魔法のようにスペシャルな組み合わせが実現するファンタジー・ワールドであるところ。”41″ のミュージシャンシップは並外れていて、アルバムの中でも本当に傑出しています。特に Joe Lynn Turner の変わらぬ歌声、変わらぬメロディー。Arjen の RAINBOW に対するリスペクトが詰まった楽曲で、70の老兵は老いてますます盛んです。
まさに10年待った甲斐がある傑作。Arjen ならではの完成された作品であり、アグレッション、多様なボーカル、リリックと名人芸のイマジネーションに溢れた、中毒性の高い時間旅行。今回弊誌では、Arjen Anthony Lucassen にインタビューを行うことができました。「何というか、私はひどい反社会的な引きこもりなんだよね。恥ずかしながら、私は砂の中に頭を突っ込んでいるようなものでね。世の中で何が起こっているのか、まったくわからないし、知りたくもないんだよ。人間の言動が腹立たしいからだよ。そして、私は結局、人のひどい行動に対して何もできないんだ…」 それでも我々は、ディストピアをテーマとした彼の真意を汲み、行間を読むべきでしょう。二度目の登場。 どうぞ!!

STAR ONE “REVEL IN TIME” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【AYREON : THE SOURCE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ARJEN ANTHONY LUCASSEN OF AYREON !!

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The Most Gorgeous Metal Opera In The World, Ayreon Are Back To “Forever” Saga With The Newest Record “The Source” !! Beautiful And Wonderful 70’s Vibes Are Here!

DISC REVIEW “THE SOURCE”

オランダを代表するコンポーザー、マルチプレイヤー、シンガー、そしてプロデューサー、Arjen Anthony Lucassen のメタルオペラプロジェクト AYREON が2枚組90分の一大スペクタクル “The Source” をリリースしました!!AYREON の宇宙を再び拡大し、過去最高とも思えるクオリティーを備えたよりギターオリエンテッドなレコードは、絶佳なる現代のスペースオペラとしてシーンに君臨するでしょう。
“Forever” サーガと称される AYREON のストーリーは、時代も時空も超越した壮大なるSFファンタジー 。まるで “Star Wars” と “The Lord of the Rings” が共鳴し溶け合ったかのような知的かつファンタジックな物語は、実際ロック史に残るエピックとして海外では絶大な人気を誇るのです。
“Forever” サーガのストーリーラインは、アルバムのリリース順に語られる訳ではありません。

「”Forever” とは技術の進歩により長寿の秘密を発見した “Planet Y” に住む水生知的生命体。感情を失い全てを”マシン”に頼るという生き方に進化してしまった彼らは、種族を再度活性化させるため彗星に自らのDNAを託し地球へと送ります。彗星の衝突は地球を支配していた恐竜を滅亡させ、破壊の灰の中から人類が登場したのです。
当初、”Forever” の実験は成功したように思えました。 “Forever”の遺伝子を有する人類は、”Forever” が “マシン”に頼るようになる以前の感情を有していたのですから。しかし、進化をスピードアップさせた “Forever” は、皮肉にも人類が彼らと同様の問題に直面したことを知ります。それはテクノロジーへの依存と感情の危機でした。人類のモラルは発展の速度に追いついてはいなかったのです。”Forever” は人類を自己破壊から救えるのでしょうか?」

これが前々作 “01011001” のプロットであり “Forever” サーガの”エピソード0″に位置する話です。
そこからストーリーはファーストアルバム “The Final Experiment”、つまりエピソード1” へと繋がります。2084年に最後の世界大戦が起こり、火星へと移住し滅亡する運命の人類。2084年の科学者たちはタイムテレパシーで過去へと警告を発し、さらに人類は “Forever” に導かれ様々な時代、人種が滅亡を回避するための行動を続けて行くのです。
“The Source” は “エピソード-1″ に位置するストーリー。さらに時を遡り”Forever” が “Planet Y” へと辿り着く以前の物語が描かれています。

「人類の大きな祖先とも言える “The Alphans” は、環境問題や政治的混乱により危機を迎えていました。彼らの星を守るため “The Alphans” はグローバルコンピューター “The Frame” に全てを託しますが、コンピューターが星を守るために下した結論は、”The Alphans” の根絶だったのです。星から脱出可能な宇宙船は1台だけ。搭乗が許されたのは技術や能力を備えた一部の “The Alphans” のみでした。そうして彼らがたどり着いた惑星こそ “Planet Y” だったのです。
“The Frame” から解放された “The Alphans” は “Forever” と称するようになりました。それはテクノロジーを進化させ開発した、”マシン” により永遠の命を保証されたからに他なりません。しかし同時に “Forever” はテクノロジーに依存しすぎたがためその感情を失い、より高く構築した建物は太陽の光を全て遮り “Age of Shadows” という暗黒の時代を迎えてしまったのです。そうして彼らは地球に DNA を送ることとなったのです。」

ここまで長きに渡り、しかもスムーズにストーリーが繋がると戦慄すら感じますが、作品を通じてテーマとし警鐘を鳴らし続けるのが、”テクノロジーへの依存” がもたらす危険であることは明らかですね。
音楽的には、インタビューにもあるように、Keith Emerson, Rick Wakeman, Jodan Rudess など鍵盤のレジェンドを起用してプログレッシブかつキーボードオリエンテッドに仕上げた前作 “The Theory of Everything”、そして Anneke van Giersberge とタッグを組んだ “女性的な” GENTLE STORM のリアクション、反動として、”The Source” は非常にキャッチーでヘヴィーなアルバムに昇華されています。
重厚かつ絢爛なアルバムオープナー “The Day That The World Breaking Down” から登場しアルバムの要所で現れる、ハモンドと絡むヘヴィーなメインギターリフが DREAM THEATER の “Erotomania”, “Voices” に極めて酷似している点にはギョッとしますが、James LaBrie が参加しているのでおそらく問題はありません。
実際、オマージュこそが “The Source” のキーワードだと言えるでしょう。 インタビューにもあるように、Arjen は彼のロック/メタル、特に70年代に対する憧憬を隠そうとはしていませんね。例えば “Everybody Dies” “Journey to Forever” が QUEEN への愛情が込められたラブレターだとすれば、”Run! Apocalypse! Run!” “Into The Ocean” は RAINBOW の新作に対する督促状かも知れません。何よりも、Freddie Mercury や Dio の役割を問題なく果たすことの出来る Mike Milles や Russell Allen といった極上のシンガーたちを発見し、適材適所にオペラの “俳優” として重用する Arjen の才覚には脱帽するばかりです。
あなたがもしクラッシックロックのファンならば、アルバムを聴き進めるうちに JETHRO TULL, STYX, PINK FLOYD, Kate Bush, さらには同郷の FOCUS などを想起させる場面に出くわしニヤリとすることでしょう。しかし同時に Arjen の巧みで見事過ぎるコンポジションにも気づくはずです。
多弦ギターやエレクトロニカなどモダンな要素も吸収し、インタビューにもあるようにフォーク、メタル、アトモスフィア全てを調和させメロディーとフック、そしてダイナミズムに捧げたアルバムはまさにエピカルなメタルオペラの金字塔として後世に語り継がれていくはずです。
今回弊誌では、Arjen Anthony Lucassen にインタビューを行うことが出来ました。残念ながらツアーは引退したそうですが、これだけの内容をメンバー集めから全てほぼ1人でを制作し続けているのですから当然という気もします。どうぞ!!

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AYREON “THE SOURCE” : 10/10

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