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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【VVON DOGMA I : THE KVLT OF GLITCH】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH FREDERICK “ChaotH” FILIATRAULT OF VVON DOGMA I !!

“As For Unexpect We Helped Coin The Term ‘Avant-Garde Metal’ Whatever That Meant.”

DISC REVIEW “THE KVLT OF GLITCH”

「2000年代のメタルやハードコアのシーンは、スタイルがまだ探求され、発展していた時期だった。音楽のサブジャンルがまだ生まれていて、中でもケベックのバンドは本当に何かを持っていたんだよ。CRYPTOPSY の前にはテクデスがなかったように、DESPISED ICON の前にはデスコアがなかったように。さらに ION DISSONANCE のようなバンドはエクストリームなマスコアを前進させた…そして UNEXPECT は、その意味がどうあれ、”アヴァンギャルド・メタル” という言葉を生み出す手助けをしたんだよ」
VOIVOD の偉業を振り返るまでもなく、カナダ、特にケベック周辺はメタルの進化に欠かせない異形を生み続ける特異点です。そして振り返れば、まだモダン・メタル=多様の定義もおぼつかなかった90年代後半から00年代にかけて、UNEXPECT ほど混沌と新鮮をメタル世界にもたらしたバンドは多くはありませんでした。
「UNEXPECT が早すぎるということはなかったと思うよ。僕の考えでは、シーン全体を前進させるためには、新しいアイデアを持って、早すぎるくらいに登場する必要があるんだよ」
もはや伝説となった9弦ベースの使い手 Frédérick “ChaotH” Filiatrault はそう嘯きますが、プログレッシブ、デスメタル、ブラックメタル、ジャズ、クラシック、オペラ、フォーク、エレクトロニカが “予想外の” ダンスを踊る UNEXPECT の音楽は、現在の多弦楽器の流行を見るまでもなく、あまりにも “早すぎて” 理解を得られなかった鬼才で奇祭にちがいありません。そして、UNEXPECT や WALTARI がいなければ、アヴァン・メタルの現在地も、今ほど “攻め” やすい場所ではなかったのかもしれませんね。
「このバンドは、90年代のオルタナティブや Nu-metal、2000年代の実験的なハードコアやメタル、2010年代のエレクトロニックの爆発など、僕がこれまで聴いてきたすべてのジャンルの音楽を調和させようとしたものなんだ。James Blake、Bon Iver, DEFTONES, MESHUGGAH, MARS VOLTA, IGORRR…といったアーティストのありえないブレンドを目指していたからね」
一度は夢を諦めた ChaotH が再びメタル世界に降り立ったのは、自身を形成した偉人たちに感謝を捧げ、そこから新たな “ドグマ” “教義” を生み出すため。さながら蛹が蝶になるように、華麗に変身した ChaotH のドグマは、EDM が脈打つインダストリアル・メタルと、欲望に満ちたプログレッシブ・メタルを、七色に輝くオルタナティブな経歴を反映しつつ融合しようと試みているのです。
つまり、VVON DOGMA I は UNEXPECT ではありません。もちろん、彼らのX線写真を見ると、過去の同僚 Blaise Borboën の乱れ打つヴァイオリンや、ChaotH の異世界ベース・パルスなどおなじみの骨格はありますが、機械の心臓は突然変異的な異なる動力で脈打っています。右心室に CYNIC を、左心室に MESHUGGAH を宿した VVON のサイバーパンクな心臓部は、時にタップを、時にスラップを、時に早駆けをを駆使して変幻自在に躍動する ChaotH の9弦ベースによって切り開かれ、緻密で冒険的で、しかし歪んだ哀愁の風景をリスナーの脳へと出力します。Djenty ながら Djent より有機的で、ヒロイックで、しばしば TOOL とも邂逅するギタリズムも白眉。
何より、悪魔城ドラキュラのメタル世界を想起させる “The Great Maze” から、”Triangles and Crosses” のネオンに染まる KING CRIMSON、そして RADIOHEAD の鋼鉄異教徒によるカバーまで、ここにはヘヴィ・メタルの “If” が存分に詰まっています。ノイズを崇拝し、レザーストラップと砂漠のゴーグルを身につけ、奇抜な乗り物に鎮座した VVON DOGMA I のサイバーな “もしも” の世界観は、AI と現実の狭間でリスナーという信者を魅了していくのです。
今回弊誌では、Frédérick “ChaotH” Filiatrault にインタビューを行うことができました。「クリエイティブな面では、アートワークの制作にAIが参加するのはとても興味深いことだと思ったね。つまり、このレコードの自発的な音楽 “合成” の側面は、アートワークによって強調され、とてもふさわしいものとなった。メタルヘッズの間では、シンセティック (人造、合成) なものを受け入れるというのは、あまりポピュラーなコンセプトではないけど、僕はアナログでなければ “メタル” ではないというエリート意識は、まったくもってデタラメだと思うよ」 傑作。どうぞ!!

VVON DOGMA I “THE KVLT OF GLITCH” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【IGNEA : DREAMS OF LANDS UNSEEN】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH HELLE BOHDANOVA OF IGNEA !!

“I’d Say Music Can Definitely Change People’s Mood And Mind. But Changing The World… I’m Afraid, I Cannot Be So Naive Because Of Everything Happened To Me And My Country.”

DISC REVIEW “DREAMS OF LANDS UNSEEN”

「もちろん、音楽は非常に重要なもので、この1年間、ウクライナでもそのことが示された。塹壕の中や負傷したときに歌う兵士、防空壕の中で歌う人々、音楽は人々をより落ち着かせることができたわ。だから、音楽は人の気分や心を変えることはできると思う。でも、世界を変えるなんて……自分や自分の国に起こったことを考えると、そんなにナイーブにはなれないわ」
ロシアとプーチンの侵攻から1年経った今、ウクライナのモダン・メタル旅団 IGNEA はアルバムという自らの分身を世に放つことを決意します。当然、彼らのドッペルゲンガー “Dreams of Lands Unseen” が怒りに満ちた作品でも、暴虐に向けた鋭き矛先でも、リスナーが驚くことはないでしょう。もちろん、音楽は世界を変えられない。音楽で身を守ることはできない。それでも、IGNEA はより芸術家らしい方法で、不条理に抗することを決めたのです。
「Sofia はどこを旅しても、必ずウクライナ文化の一部を持ち込んでいて、自分がウクライナ人であることを強調していたのよ。また、彼女は言葉の使い方が巧みで、歌詞の中のフレーズもそのまま彼女の言葉をウクライナ語で残したかったんだ。最後に、私たちはウクライナ人で、自分たちの言葉を愛しているから、自分たちのルーツへのトリビュートとしてもウクライナ語を使ったのよ」
IGNEA は、暴力に暴力で立ち向かうよりも、見過ごされてきた歴史的な人物の粘り強さと功績に焦点を当て、ウクライナの誇りと強さを描き出しました。”Dreams of Lands Unseen” の主人公、旅行写真家/文筆家の Sofia Yablonska は、祖国ウクライナから世界を旅し、初の女性ドキュメンタリー映画監督となり、ヨーロッパの植民地主義がもたらした悪影響にしっかりと目を向けた偉大な人物。彼女をウクライナの象徴的な女性像として、そして帝国主義の批判者として光を当てるというコンセプトは、最近のロシアの不当な侵略や行き過ぎた暴力と闘うための、より文化的なアプローチであると言えるでしょう。
「戦争が始まって最初の数カ月は、私たちにとって生き残ることだけが重要だったわ。あらゆる音が怖くなって、音楽を聴くことすらできなかった。それでも私たちの地域が占領解除され、この戦時下の状況に慣れたとき(ひどい言い方だけど)、私たちはアルバムを作り続けようと強く思ったの」
ウクライナ人としての誇り。ウクライナが真に戦っている相手。そしてウクライナが今、必要としているものを浮き彫りとしたアルバムは、恐怖であった “音” をいつしか勇気へと変えていました。そしてその IGNEA が手にした勇気は、しっかりとその冒険的な音楽にも反映されています。
シンフォニックなオーケストレーションと伝統音楽が、メタルを介して結びつくその絶景はまさにトンネル・オブ・ラブ。Sofia がモロッコ、中国、スリランカなどを旅したように、東洋や中近東の光景が巡る実に多様で自由なモダン・メタルは、かつての帝国主義や権威主義とは正反対の場所にいます。
そうして、抑圧に抗う可能性と力は、Helle Bohdanova の声を通して世界へと伝播していきます。光と陰を宿した Helle の美女と野獣なボーカルは、大戦中に女性一人で世界を旅することの逞しさと恐怖、その両面を実に巧みに表現しています。そしてその逞しさや恐怖は、そのまま現在の Helle の中に横たわる光と陰でもあるのでしょう。メタル・バンドには珍しい異端楽器の数々はきっと彼らの軍備。ただ一つ、確かなことは、ウクライナの勝利が、IGNEA の冒険と Helle の勇気によって一足早くもたらされたという事実。未到の地の夢は、愛する地があればこそ映えるのです。
今回弊誌では、Helle Bohdanova にインタビューを行うことができました。「アルバムの発売日である4月28日の夜中に、大規模なミサイル攻撃があったわ。そして、その1週間後には、私が住んでいる家のすぐ隣の5つのアパートをドローンが直撃した。もちろん、最前線に近ければ近いほど、状況は悪化するわ。それでも、ウクライナに住む人は皆、翌日が来ることに確信が持てないのよ」 どうぞ!!

IGNEA “DREAMS OF LANDS UNSEEN” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【IER : 物の怪】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH IER !!

“Impossible Not To Mention Ryuichi Sakamoto. He left Us This Year, But His Legacy Is Infinite.”

DISC REVIEW “物の怪”

「僕が初めて陰陽師を知ったのは “X/1999″。このアニメや漫画は僕の大好きな作品のひとつで、”御霊信仰” にも影響を与えているんだ。その後、君の指摘の通り、プレイステーション2時代に大好きだったゲーム “九怨” で再び陰陽師を知ったんだ。僕は小さい頃からサバイバル・ホラーゲームが大好きなんだけど、このゲームは平安時代というその種のゲームではあまりない設定なので、とても面白かったんだ。それに、本当に怖かった!!もうずっとプレイしていないんだけど、いつかまたプレイしなおしてみたいね。もうひとつのインスピレーションは、陰陽師を主軸に据えた “帝都物語”。残念ながら、英語版もスペイン語版もないので、まだ原作は読めていないんだ。ただ、1988年の映画を見て、これはすごいと思ったんだよ!」
近年、日本とその文化にインスピレーションを得たメタルは世界中で確実に増殖していますが、アルゼンチンの IER ほどこの国に精通したメタルヘッドは他にいないでしょう。むしろ、日本人よりも日本人なブラックメタルの改革者。平安の都から現代の大都市東京まで、時を駆け抜ける IER のブラックメタルには、呪いと雅と戦慄が渦巻いています。
「”犬神佐清” では、家族、争い、無邪気さの喪失を扱っているから、そうしたテーマを説明するために、1976年の映画 “犬神家の一族” は最適だったんだ。原作は大好きなんだけど、2006年のリメイク版はまだ見ていないんだよ…市川崑監督の作品ということで、さぞかし面白い作品なのだろうね。アーティストが過去の作品を再演する (監督、主演が同じ) のは好きなので、近いうちに見てみようと思う!」
西洋の刹那的でド派手なホラーではなく、日本の真綿で首を絞めるような持続性怪奇譚に取り憑かれた IER の首謀者 Ignacio Elias Rosner は、J-Horror をテーマとした連作の制作にとりかかります。”怪談” で怒り、”うずまき” で恐怖、”妖怪” で孤独について扱った彼が今回たどり着いたのが集団の狂気でした。
パンデミックやロシアによるウクライナへの侵略、極右の台頭。2020年代の初頭に私たちが見たくすんだ景色には、まさに集団狂気、マス・ヒステリアが色濃く反映されていました。正気を保つ人間がむしろ狂人となる。Ignacio はそうした群衆時代の “うずまき” に敏感に反応して、家族という “集団” の怨念と狂気を見事に描いた “犬神家の一族” をメインテーマに現代の “物の怪” を映し出してみせたのです。
「”By The Way” の引用を発見してくれて、本当にうれしいよ!君の言葉通り、僕は自分の心をオープンにして、できるだけ自由な音楽を作るように心がけているんだ。そういった要素が音楽全体の中でフィットしているのを、とても誇らしく思っているんだ。最近はファンクやヒップホップ、コンテンポラリー・R&Bを聴くことが多いから、”物の怪” ではぜひそうした影響を披露したいと思ったんだ。プログレッシブ・ロック/メタルに関しては何でも許される(のかな?)けど、ブラックメタル・シーンはずっと保守的な気がするんだよね。そうした影響は決して強引なものではなく、アルバムの表現方法として理にかなっていると思うのだけどメタルファンを遠ざけてしまう気持ちもまあわかるよ」
Ignacio が放つ狂気は、当然その音楽にも反映されています。レッチリを黒くコーティングした “日本の都市伝説 Vol.1″、KORN と Nu-metal の遺産を黒く受け継ぐ般若の面、そしてゲーム音楽の巨匠山岡晃への敬意で満たされた黒いサイレントヒル “最後の詩”。弊誌では、ブラックメタルこそが今最も寛容かつ先鋭であると主張し続けていますが、Ignacio にとってはそれでもまだ足りなかったのでしょう。ここにあるのは、まさにジリジリとひりつくように持続する和の戦慄と瀬踏みの共鳴。その逢魔時から忌み夜に続くゾゾゾな階段は、sukekiyo の怪談にも似て変幻自在の百鬼夜行をリスナーに突きつけるのです。”犬神佐清” で聴けるような、南米特有の “トリステーザ” がアルバムを通して絶妙のアクセントとなっていて実に素晴らしいですね。
今回弊誌では、IER にインタビューを行うことができました。「アートワークは、佐清の仮面と同じように、この映画を象徴するショットだからね。このショットは、日本の大衆文化の中でかなり参照されているよね? テレビ番組や映画で佐清の脚がたくさんオマージュされているという投稿を、どこかの掲示板で見た覚えがある。”新世紀エヴァンゲリオン” でも使われたくらいにね」  二度目の登場。どうぞ!!

IER “物の怪” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【LUNAR CHAMBER : SHAMBHALLIC VIBRATIONS】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH BRANDON IACOVELLA OF LUNAR CHAMBER !!

“日本はね…私にとって信じられないぐらい夢みたいなところなんですよ。人生と考え方に大影響を受けて、美しい思い出も出来ました…本当に本当に言葉で表現出来ません。今までで一番お気に入りの場所です!”

DISC REVIEW “SHAMBHALLIC VIBRATIONS”

「Tomarumは普通に Progressive Black Metal をしてて、したことないもっとヘヴィな Progressive Death Metal をしたかったんです。お気に入りの Death Metal バンドを尊敬しながら自分のサウンドを作りたかったんです!」
“Shambhallic Vibrations” はプログレッシブでテクニカルなデスメタルのファンにとって、まさに天啓です。ブルータルでありながら静謐、エピックでありながら親密、難解でしかしスピリチュアルなデスメタルが、煌めきとヘヴィネスを伴って届けられる涅槃。
新進気鋭、アトランタのプログ・ブラック集団 Tómarúm の中心メンバー Brandon Iacovella と Kyle Warburn が Timeworn Nexus と They, Who May Not Be Perceived というペンネームで始めたバンドには、フレットレス・モンスターThomas Campbell、BENIGHTED のドラム・マシン Kévin Paradis という異才が加入して LUNAR CHAMBER の名乗りをあげました。
彼らのスピリチュアルな広がりと深みのあるブルータリティーは、現代のシーンに真の類似品がなく、その豊かできめ細かな質感は、フレットレス・ベースとスペーシーなシュレッドの綺羅星によって殊更際立つものとなっています。そのアプローチ、テクニック、トーン、そして影響の数々はあまりにも無数で、むしろすべてが一体となっていることさえ不思議なくらいですが、そこには、日本や仏教、東洋哲学に由来する調和の精神が大きく作用していました。
「若いころからヒンズー教と仏教に興味があって、歌詞とテーマを作りたかった時にその興味を思い出して、日本に住んでいた時とどのぐらい人生が変われたのかも思い出して、そのテーマについて書きたくなったんです」
実はコロナ禍以前、Brandon は日本が好きすぎて来日し、翻訳家を目指し学生として台東区で2年ほど暮らしていました。そこで日本の人たちと触れ合い、価値観や生き方を理解し、日本文化を受け入れることで彼の人生は大きく変わっていきました。争いよりも調和を、欲望よりも悟りを求める生き方は、そうしていつしか Brandon の創造する音楽へと憑依していったのです。
「日本のメタルシーンはめっちゃ凄くて、大好きです。Lunar Chamber の元々のドラマーは Temma Takahata なんですよ! Strangulation, 死んだ細胞の塊、Fecundation、等々のドラマーです!本当に凄いドラマーなんで、彼のバンドと他の友達のバンドも何回も見に行って、本当に大光栄でした。日本のシーンにも大影響を受けました。Desecravity, Viscera Infest, Anatomia, 等々も見ることが出来て、あれもかなりインパクトがありましたね。日本の音楽と言えば確かに Desecravity, Viscera Infest, Strangulation, 死んだ細胞の塊, Crystal Lake, Disconformity, 明日の叙景とかを考えますよね」
アルバムのフィナーレを飾る12分の “Crystalline Blessed Light Flows… From Violet Mountains into Lunar Chambers” は、今年のメタル界で最も注目すべき成果の1つかもしれません。シンセを多用した神秘的なオープニングから、巨大なフューネラル・ドゥームの睥睨、荘厳でマントラのようなメロディ、地響きのブラストと鋭く研ぎ澄まされたギター、瞑想的な静けさと地を這う重量の邂逅、そして到達する涅槃まで、すべては “菩提樹” で見せた印象的なモチーフとハーモニーをさながら経のように貫徹して、絶妙な結束を保持しているのです。
さらに言えば、LUNAR CHAMBER の体には、日本のメタル・シーンの “細胞” が組み込まれています。死んだ細胞の塊、明日の叙景、CRYSTAL LAKE といった現代日本のメタル世界を象徴するような多様性をその身に宿した LUNAR CHAMBER の “調和” は、その東洋思想と相まって、すべてが祇園精舎の菩提樹へと収束していきます。
今回弊誌では、Brandon Iacovella にインタビューを行うことができました。ほとんどの回答を日本語で答えてくれました。「仏教のメタルは、ある人にとっては間違いなく逃避の手段になり得ると思う。自分の音楽で物語を作るのが好きだし、この作品には内省的なところもあるから、誰かが自分の現実や心を探求し、私たちの物語に共感し、慰めを得ることができたら、それは私にとって大きな意味があるんだよ」 どうぞ!!

LUNAR CHAMBER “SHAMBHALLIC VIBRATIONS” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【A.C.T : FALLING】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH HERMAN SAMING OF A.C.T !!

“Hopefully More Will Understand Our Music In The Future. They Will Get It In Time.”

DISC REVIEW “FALLING”

「最近の人たちは音楽の聴き方が変わってきているからね。いつか、長いエピック・アルバムが戻ってくるかもしれないけど、今はファンがバンドにもっと頻繁に音楽をリリースすることを望んでいるんだよ。将来的にはフルレングスのアルバムをリリースするかもしれないけど、今のところ、今やっているEPのコンセプトに満足しているよ」
SNS で30秒の演奏動画がもてはやされ、音楽視聴もストリーミング全盛の時代。時短、合理性、簡潔が価値とされるインスタントな文化において、プログレッシブ・ミュージックは逆風の中にいます。だからこそ、複雑かつ長編のプログ絵巻で世界に抗するアーティストもいますが、スウェーデン、マルメからプログ・ポップを牽引した A.C.T は時代と調和する道を選びました。
「僕たちは、リスナーに “一巡する聴き方” をしてもらいたいと思っているんだよ。1stEP “Rebirth”(春)から聴き始め、”Heatwave”(夏)、 “Falling”(秋)、そして最後のEP(冬)を聴き終えたら、また最初から聴き始める。リスナーには、1年の季節を何度も感じてもらいたいんだ」
近年のパンデミックや戦争、気候変動を見ていると、人はもしかすると歴史から学ぶことなく、何度も何度も滅亡と再生を繰り返しているのではないか?そんな疑念も生じますが、A.C.T が時代と調和する際に選んだのがまさに人類の栄枯盛衰のディストピア。彼らは滅亡の原因を “ヒートウェーブ” と定めました。ただし、熱波は我々のエゴから生まれるのではなく、小惑星の衝突で起こってしまいます。そう、この4部作は6600万年前の再現であり、恐竜と人類の違いが試されているのです。
「僕たちだってより多くの人に A.C.T.を聴いてもらいたいという気持ちはあるんだけど、同時に自分たちのファンベースをとても誇りに思っているんだ。僕たちは世界で最高のファンを持っている!将来、もっと多くの人が僕たちの音楽を理解してくれることを願っているよ。うん、そのうち理解されるだろう」
恐竜と同じように、ごく近い将来、人類は絶滅に直面し、小惑星が最大速度で地球に向かって突進する。この筋書きは、逆境に直面した際、いかに対応し、いかに再生し、いかに人間らしさを保てるかというこれまで人類が養ってきた寛容さや回復力の踏み絵ともなっています。ただし、そうした陰鬱なストーリーにもかかわらず、バンドの活気あるサウンドとアップビートなテンポ、そして澄み渡った旋律の魔法が、EP群をうまく連動して人の光をつないでいます。複雑なプログレッシブ・ロックとエルトン・ジョンやビリー・ジョエルのメジャー感を混ぜ合わせた感染力の強いプログ・ポップはそうしてこの連続リリースにおいて、感情を高めるエフェクトやサウンドクリップを用いることで映画のような一大スペクタクルに昇華されました。A.C.T は決して確立した地位に甘んじるような “役者” ではないのですから。そうして地球は暗闇に飲み込まれます。フォール・アウト。審判の日はすぐそこです。
今回弊誌では、類稀なるフロントマン Herman Saming にインタビューを行うことができました。「新しいバンドが良いメロディーを優先しているのを見るのは素晴らしいことだよ。実はこの秋、MOON SAFARI と一緒にライブをする予定なんだ。彼らは素晴らしいミュージシャンを擁する、とても有能なバンドだ。彼らに会うのが本当に楽しみだよ」 二度目の登場。どうぞ!!

A.C.T “FALLING” : 9.9/10

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COVER STORY 【RETURN OF SAVATAGE】 INTERVIEW WITH ZAK STEVENS


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ZAK STEVENS OF ARCHON ANGEL & SAVATAGE !!

“Criss Treated Everyone With Total Love And Respect. He Had a Really Angelic Spirit.”

復活のSAVATAGE

「タイトルは”カーテン・コール”になるだろう。来年の4月、Criss の誕生日にリリースしたい。そうしてツアーでファンに愛と感謝とさよならを伝えるんだ。これまでのメンバー全員に関わってもらい、10点満点の最高傑作で幕を閉じる」
US プログ・パワーの伝説、SAVATAGE の首領 Jon Oliva の言葉です。復活の SAVATAGE。アメリカにプログ・メタルとパワー・メタルの種をまいたドラマティックな反乱軍が、ついにメタル世界へと帰還します。
「僕が92年に初めて SAVATAGE に参加したとき、Criss が “今まで一緒にいられなかった時間を取り戻し、一緒に遊んで、もっとお互いを知る必要がある。だから一緒に暮らそう” と言ってくれたんだ。それが彼のやり方なんだよ。彼は誰に対しても完全な愛と敬意を持って接していた。本当に天使のような精神を持っていたんだ。僕たちは一緒に音楽を作り、失われた時間を取り戻していった。だからこそ、数年というより、10年以上一緒に仕事をしていたような気がしているんだ」
SAVATAGE を語るとき、避けては通れない2つの魂こそ、Criss Oliva と Paul O’Neill。両者とも、この世を去って何年も経ちますが、未だに彼らに対するスタンディング・オベーションと “カーテン・コール” は鳴り止みません。
Jon Oliva の弟、Criss Oliva は天賦の才に恵まれたギタリストでした。Eddie Van Halen の技量を宿しながら、エモーションとカタルシスに全振りした Criss の流麗なソロイズムはまさに天国への階段で、バンドのドラマ性を飛躍的に向上させていました。Zak Stevens が証言するように、誰が評しても “天使” となるその本質は、むしろ Randy Rhoads に近かったのかもしれません。とにかく、Criss のギターと Jon のピアノ、そして後に Zak が受け継ぐ旋律の魔法を軸とし、Paul O’Neill の荘厳華麗なシンフォニーと変幻自在なリズム、そこに考え抜かれたコンセプトが加わって、SAVATAGE の唯一無二は実現していました。
ただし、Criss と Paul が召されてもなお、SAVATAGE-Ismは脈々と受け継がれ、途絶えることはありません。Chris Caffery, Alex Skolnick, Al Pitrelli といった超一流がギターの芸術を繋ぎ、Paul O’Neill のシンフォニーは TRANS-SIBERIAN ORCHERSTRA として多くの SAVATAGE メンバーと共に夢のような成果を残しました。後続への影響も並々ならぬものがあったはずです。そして、Jon Oliva が SAVATAGE の声であるのと同様に、Zak が歌った4枚の名作、その驚異的な完成度を鑑みれば彼もまた、SAVATAGE の声に違いありません。
「僕はいつも QUEENSRYCHE と FATES WARNING の大ファンだったんだ。ARCHON ANGEL とその2つのバンドを比較することは、間違いなく正しいよ。Aldo も QUEENSRYCHE の大ファンであることは知っているので、その比較は完全に理にかなっているね」
Jon Oliva とボーカルを分け合う Zak Stevens による新たなバンド ARCHON ANGEL も、そうした SAVATAGE-Ism の継承者であり、同時に SAVATAGE の復活を祝う天使の啓示でもあるでしょう。これほどドラマティックかつ知的なプログ・パワーは近年稀に見ると言わざるをえません。素晴らしいのは、SAVATAGE のシンフォニーやドラマを基軸としながらも、QUEENSRYCHE が見せたコンパクト&キャッチーなプログ劇場、FATES WARNING の濃密なプログ・エキスをしっかりと抽出して、アーコン・エンジェルの物語へと落とし込んでいるところでしょう。アーコンとは、神々の宣託を地上に伝える選ばれた天使のこと。その天使がもし、Criss Oliva だったとしたら、我々は USプログ・メタルの始祖が三位一体となった ARCHON ANGEL の作品で、SAVATAGE の雄々しき復活を今まさに天から告げられているのでしょう。
今回弊誌では、Zak Stevens にインタビューを行うことができました。「特に2020年以降、世界で起きているネガティブな出来事については、とても残念に思っている。 復活した SAVATAGE は、今まで通り、人々の人生のタイムラインになるような曲、人生の辛い時期を乗り越えるような曲、そして感動を与えるような曲を届けることができると思っているよ。 それは、ファンのみんなからいつも聞いている話で、僕たちの音楽を通じて、そうした素晴らしい出来事が継続することを期待しているんだ」 どうぞ!!

ARCHON ANGEL “Ⅱ” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【CRESCENT LAMENT :花殤 & 噤夢】 JAPAN TOUR 23!!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CRESCENT LAMENT !!

“Recently, There Are More And More Taiwanese Artists Presenting Notable Creations That Attract Foreigners To Take Notice Of Taiwan. As Long As We Can Keep Showing The Uniqueness Of Taiwan’s Culture And The Good Nature Of Taiwanese People, We Shall Get Positive Support From The World.”

DISC REVIEW “花殤 & 噤夢”

「私たち台湾人にも故郷を語り継ぐ義務がある。二.二八事件や白色テロでは、数え切れないほどの勇敢な台湾人、その多くは若いエリートが、残忍な独裁政権と戦うために命を犠牲にした。しかし、彼らの生涯を記した記録は、白色テロ時代の厳しい検閲のため、ほとんど残っていないんだ。
あと10年もしないうちに、二.二八事件の虐殺と拷問から生き延びた台湾の長老たちは、おそらくもう存在しなくなる。私たちの祖父母は、どのような不幸を目の当たりにしてきたのだろうか。彼らはどんな悲劇を記憶に封印してきたのだろうか。なぜ彼らは、第二次世界大戦中の日々を、第二次世界大戦後よりもまだ良かったと言うのだろうか。掘り下げれば掘り下げるほど、私たちは悲しい気持ちになる。
阿香と明風の物語は、私たちの祖父母の世代に属するもの。かつて台湾を窒息させた権威主義的な前政権によって、彼らは何十年も黙殺されてきた。今、私たちはそれを声高に語る義務があるのだよ」
東洋きっての悲劇の語り部。CRESCENT LAMENT の来日が決定しました。台湾という政治や国の争いに翻弄され続ける場所で、彼らは二胡と台湾語、そしてノスタルジックなアジアのメロディを用いて、メタルで抑圧や搾取に抗い続けています。その旋律は物語で、その物語は旋律。切っても切れない迫真の “オーディオ・ムービー” に、私たちは今こそ目と耳を傾ける時なのかもしれません。
時は昭和初期。阿香と明風の悲劇の物語は、台湾の日本統治時代に幕を開けます。日本人の松子と台湾人ビジネスマン清田が恋に落ち、産まれたのが阿香でした。しかし、当然のように松子と清田は共に両親からの猛反対を受けて別離。阿香は父清田のもとで育てられますが、心の傷を負った清田は自死を選び、阿香は置屋に売られてしまいます。
昭和15年。芸者として働き始めた阿香ですが、その心には将来への不安や仕事への葛藤が渦巻いていました。そんな折、一つの希望が湧き上がります。実業家、明風との出会いです。混沌とした時代に、若い2人は通じ合い、互いを運命の人だと信じます。
帰ってきたら結婚しよう。そんな言葉を残して明風は仕事で1年間、日本へと渡ることになります。しかしみるみるうちに戦況は悪化。何年も連絡のないままに、阿香は女将によって別の人と結婚を決められてしまうのです。
結婚式の当日。突然、明風があらわれます。そして、阿香に終戦まで出国が不可能だったことを涙ながらに告げるのです。すべては遅すぎたのでしょうか。来世での幸せを誓い合って2人は別の道を歩むことになってしまいます。
終戦を期に、日本による台湾統治は終わり、代わりに中国国民党がやってきます。「よく吠える犬が去って豚が来た」 などと言われるように、腐敗し抑圧的な中国国民党の支配は日本以上に台湾の人たちから嫌われるようになります。強姦、略奪、殺人など国民党が起こした事件は日本統治時代の30倍とも言われました。
そうした時代の変化は、裕福な家庭に嫁いだ阿香にとっても無縁ではありませんでした。軍人に強盗に入られ、夫を警官に殴り殺される。妾であった阿香は結局、もとの無一文、宿無し生活に逆戻りしてしまいました。
そんな窮状を再び救ったのが明風でした。新聞で事件の詳細を知り、すぐに阿香のもとへと駆けつけて、彼女を自分の商店へと連れ帰ります。ついに再会を果たした運命の2人。やっと幸せで平穏な時が流れるかに思ましたが、物価の大幅な上昇、搾取、そしてコレラの蔓延で台湾人の怒りが爆発。抗議行動を開始した彼らに浴びせられる機銃掃射。鬱憤は爆発し、二.二八の騒乱が巻き起こります。遂に結婚した若き2人でしたが、明風は台湾人としての誇りを胸に、阿香を残して抗議活動へとその身を投じます。帰らぬ愛しき人。移り変わるは季節だけ。しかし、阿香はいつまでも、いつまでも、明風の帰りを待ち続けるのです。中国国民党は92年までの白色テロで14万人もの知識人を惨殺したと言われています。
今回弊誌では、CRESCENT LAMENT にインタビューを行うことができました。「物理的な国防強化に加え、台湾の色彩豊かな文化を世界に輸出することは、我々普通の台湾人ができる簡単で効果的な方法だ。最近、台湾のアーティストが注目すべき作品を発表し、外国人が台湾に注目することが多くなっている。台湾の文化のユニークさと、台湾の人柄の良さをアピールし続ければ、世界から積極的に支持されるはずだからね」 どうぞ!!

CRESCENT LAMENT “噤夢” : 10/10

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COVER STORY + INTERVIEW 【ELEGY : REUNION 2023】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH IAN PARRY OF ELEGY !!

“Henk Was Ahead Of His Time With His Unique Song Writing Style And Phenomenal Technique On Guitar.”

ELEGY REUNION 2023

「やはり Henk の功績は大きいよ。彼は、DREAM THEATER などの偉大なバンドが存在するプログ・シーンよりも何年も前に、ELEGY の曲を書いていたんだからね。だから、Henk はそのユニークな曲作りのスタイルとギターの驚異的なテクニックで、時代の先端を走っていたと言える」
日本ほど ELEGY を愛し、ELEGY に愛された国は他にありません。おそらく、この国のリスナーは世界のどの国よりもメタルに知を求め、美を求めていました。だからこそ、早すぎたオランダの至宝に恋焦がれ、挽歌が眠りについた際にはいつまでも、いつまでもその目覚めを待ち続けていたのです。今でこそ、当たり前になったファンタジーとテクニカルの饗宴、”プログ・パワー” ですが、明らかに ELEGY はその源流です。そうして、DREAM THEATER よりもファンタジックで、HELLOWEEN よりもテクニカルかつ知的な失われし夢の迷宮がついに長き眠りから覚める時が訪れました。
「あの頃、Henk の母親が悲しいことに他界してしまい、想像できるように、それは彼にとって本当にものすごい打撃となってしまったんだ。彼は2人の子供を育てていたから、家族のために音楽から手を引くことにしたんだよ。でも ELEGY は、Henk と常に連絡を取り合っていたんだ」
ELEGY と聞いて、あなたは何を思い浮かべるでしょうか?明らかに、前ボーカリスト Eduard Hovinga の月まで突き抜けるような甲高いハイトーンとドラマティックなメロディは、初期 ELEGY の象徴でした。そしてもちろん、Henk van der Laars と Arno van Brussel / Gilbert Pot が織りなすあまりに劇的なギター・ハーモニーの疾駆は、ELEGY の代名詞と言えるでしょう。
その美しき両翼が完全に噛み合った “Lost” において、私たちはメタル・カタルシスの最高到達点を経験しました。逆に言えば、”Spanish Inquisition” の身を捩るような音スタシーを知ってしまった我々は、生半可なプログ・パワーでは満足しない体に調教されてしまったのです。いやー、”Supremacy” も良いんですよね…”Lust For Life” みたいな壮大荘厳なバラードを書けるバンドが他にどれほどいることか。
そうした絶頂期に、なぜかギター・スイープのテクニックまでずば抜けていた Eduard がバンドを去り、VENGENCE, Misha Calvin, そして TAMAS などで活躍した “Zero” の申し子ともいえる Ian Parry が ELEGY に加入します。Ian は Eduard のような天空のシンガーではありませんが、例えば Ronni James Dio のような力強く、エモーショナルな歌唱を得意としていました。だからこそ、少しスピードを抑えて、内省的で狂おしいほどにエモーショナルな “State of Mind” には適任でした。
嘘のような話ですが、当時の中高生は皆、カラオケで名曲 “Shadow Dancer” を歌いながら踊り狂ったものでした。それほど、あの頃の ELEGY は人気があったのです。本当です。Ian Parry はあの年、BURRN! 誌のベスト・シンガーに選ばれたんじゃなかったかな…とにかく、だからこそ、突然の Henk の脱退は青天の霹靂、あまりにも衝撃的で絶望的なニュースだったのです。
「ELEGY は2000年から、Jean Michel Jarre/Consortium Project の Patrik Rondat と2枚のアルバム “Forbidden Fruit”, “Principle of Pain” をレコーディングしていた。しかし、ファンが Henk を欲していることは明らかで、Patrik がやめると決めた時、Martin と私はバンドを繭の中に入れて、いつか Henk が戻ってくることを願うことにしたんだよ。その日がついに訪れたんだ!」
バンドは名手 Patrik Rondat を勧誘し活動を続けますが、非常にユニークなソングライターと、本当にユニークなサウンドを持つギタリストという二足の草鞋を履いていた天才の抜けた穴を埋めることは難しく、ELEGY は長い眠りにつくことになりました。たしかに Patrik はクラシック・ギターも縦横無尽に使いこなすフランスでも屈指のプレイヤーでしたが、ヴァイオリンから始まっている Henk が司るキーボードまで含めたゴージャス&カルフルなオーケストレーションの色彩こそ、ELEGY の真骨頂だったのかもしれませんね。
結局、ファンだけでなく、Ian も Martin も Dirk も Henk van dar Laars という偉人の帰りを待っていたのです。”Lost” のアートワークに描かれた月のように、時は満ちました。全作の再発、日本も含む?!リユニオン・ツアー、そしてその道の先には、私たちが焦がれ続けた新作が待っているようです。
今回弊誌では、Ian Parry にインタビューを行うことができました。「素晴らしい未来への希望を歌うことだよ。メディアでよく見聞きするような怖い話ではなく、もっとおとぎ話を書きたいんだ。魔法にかかったようなファンタジーの世界をね。そうだね、それで、1997年の “State of Mind” の時のように、ファンの皆に再び幸せな気持ちになってもらえたらうれしいね」 弊誌独占世界初インタビュー。どうぞ!!

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【DEMONSTEALER : THE PROPAGANDA MACHINE】


COVER STORY : DEMONSTEALER “THE PROPAGANDA MACHINE”

“Make The Minority The Big Villain That The Majority Should Fear In Any Country, And You’ve Suddenly Got Control. It’s All The Same Tactics; It’s Just That The Country Changes.”

THE PROPAGANDA MACHINE

“The Propaganda Machine” は、エクストリーム・メタルの言葉で叫ばれる戦いの鬨。Sahil Makhija 4枚目のソロ・アルバム “Demonstealer” は、母国インドをはじめ世界中の大衆を操り搾取する右翼政治家、人種差別主義者、偽情報の拡散者、宗教過激派を狙い撃ちしています。Sahil が言葉を濁すことなく、このアルバムに収録されている歌詞はすべて、抑圧に対する抗議の看板となり得るもの。ただし Sahil は、20年前、彼の先駆的バンド DEMONIC RESURRECTION でインドにデスメタルを紹介していた頃には、まだ “The Propaganda Machine” を作ることはできなかったと認めています。
「俺はボンベイ・シティに住む、かなり恵まれた子供だった。そして、ほとんどの子供がそうであるように、俺は政治に興味がなかったんだ」と Sahil は自身の音楽活動の初期を振り返って言います。SEPULTURA の “Refuse/Resist” のような政治的なメタルを聴いていたにもかかわらず、政治を意識することはなかったのです。
Sahil の覚醒は緩やかでした。彼は2015年のシングル “Genocidal Leaders” で遂に DEMONSTEALER に社会的な歌詞を取り入れ始め、前2作 “This Burden Is Mine” と “The Last Reptilian Warrior” では現実世界の問題がより浸透するようになりました。しかし、”The Propaganda Machine” は、彼がこれまで制作した中で、圧倒的に政治色が強いレコードだと言えます。その理由は、周囲を見渡せばわかるでしょう。トランプ、Brexit、目に余る警察の残虐行為、復活したネオナチズム、世界的なパンデミック、ロシアのウクライナ侵攻など、その暗闇のリストは身近で気が滅入るものばかり。

「このアルバムは、プロパガンダ・マシーンというタイトル通り、ここ数年の世界のあり方に完全にインスパイアされているんだ。特に、ヒンドゥー教の右翼過激派政権が誕生してからのインドでの出来事に触発されているよ。”The Fear Campaign” では、多数派が少数派を恐れるように仕向けることで、政府が大衆をコントロールすることについて。”Monolith of Hate” は、憎しみの政治と、恐怖のキャンペーンを通じて多数派が少数派を憎むように仕向ける方法について歌っているよ。正直なところ、世界中でこうしたことが起こっているよな。インドではヒンドゥー教徒が大多数で、ヒンドゥーの政府はイスラム教徒に関する悪いプロパガンダを流し続け、ヒンドゥー教徒がイスラム教徒に恐怖を抱くようにしようとしている。イギリスやアメリカ、ヨーロッパでも同じように、移民を恐れさせるキャンペーンが行われているし、アメリカでは、人種や宗教などでも同じことが行われている。世界的な “戦術” なんだよな。”恐怖を与え続け、従順にさせる” という歌詞は、まさにすべてを要約しているよ。
“The Art of Disinformation” は、テクノロジーがいかに武器になるかについて。インドでは、WhatsApp の偽ビデオが、この憎しみを広めるために使われ、最終的には少数民族への暴力や殺害さえも扇動しているんだ。”Screams Of Those Dying” は、ここ数年、リンチや暴動、警察の横暴、殺人、基本的人権のために戦う人々の暗殺によって失われた実際の命について歌った。”The Great Dictator” は、自分たちの利益のために憎悪と暴力を推進・宣伝する右派の指導者について。”‘The Anti-National” “反国家” は、インドや自国の政府に疑問を持つ人々が、いかに “反国家” と呼ばれているかについて。そして最後に “Crushing the Iron Fist” は、俺たちが力を合わせれば、私腹を肥やし、宗教、カースト、人種によって人々を分断するのではなく、生活の質を向上させるために働く、より良い政府を見つけることができるかもしれないという希望をアルバムに残している。国民のために働くという、本来あるべき姿の政府をね」

世界のリスナーにとってあまり馴染みがないのは、2014年にナレンドラ・モディが首相に就任して以来、インドで起きている混乱かもしれません。NRC(全国市民登録制度)とCAA(市民権修正法)という大規模な政治問題です。CAA では、トランプの人種差別的なムスリム禁止令とは異なり、インドに入ってくるイスラム教徒の移民を制限する一方で、他の宗教のメンバーがより自由に入国できるようにしようとしていました。
「多くの抗議があり、俺もそうした抗議に出向いていた。そして、その抗議は、右翼過激派グループが大学の子供たちを攻撃したり、抗議者に発砲したりすることで頂点に達したんだ。その結果、ニューデリーで大規模な暴動が起こり、ヒンドゥー教の過激派によって多くのイスラム教徒が殺されてしまった。その後、パンデミックが始まった。すると政府は突然、人々の移動を制限するようになった。出稼ぎ労働者は出身地でない都市に取り残され、飛行機で帰ることもできず、結局、何百キロも歩いて村まで帰ることになった。その途中で亡くなった人も少なくないんだよ。社会として、俺たちはより憎しみに満ちた生き物へと変化していってしまう。幼い頃から憎むことを教え込まれ、宗教、肌の色、性的嗜好など、異なる誰かを憎むことを強いられ、憎しみは押し付けられ、憎しみのモノリスを築いている。それは俺たちを蝕んでいくものだ。特にインドでは、現在の右派の政府関係者自身が、憎しみのスローガンを唱え、暴力行為や犯罪を呼びかけるデモを行い、彼らのすべてのアジェンダが憎しみで構築されている。なんとかしなければ」
そんな暗闇が重くのしかかる中、Sahil は自宅のスタジオに入り、”The Propaganda Machine”となる曲を書き始めました。歌詞には、自分がインドで体験したことを反映させたかったのですが、同時にリスナーが世界の他の地域とも簡単に結びつけられるようにもしたかったのです。
「どこの国でも同じようなことが起きているのを見た。どの国でも、少数派を多数派が恐れるべき大悪党に仕立て上げれば、突然コントロールが可能になる。国が変わるだけで、すべて同じ手口なんだ。俺たちがいかにプロパガンダに対して盲目的になりがちであるかを伝えたい。宗教であれ、政治であれ、俺たちはある特定の “信者” になるよう条件付けされてきた。宗教もまた、最大のプロパガンダ・マシンのひとつで、世界中のほとんどの人が信じるように仕向けられ、現実が見えなくなる」

プロパガンダによる洗脳に惑わされないために、教育レベルの向上は必須でしょう。
「ただ、インドは巨大な国で、極度の貧困と社会的不平等が存在するから、効果が出るまでには長い時間がかかる。インドには巨大な国土があり、極度の貧困と社会的不平等が存在するんだ。時間が経てばその地点に到達できるかもしれないという希望はあるけど、ほとんどの場合、堂々巡りになってしまう。インドの生活の質、政府が運営する学校や病院の状況を見れば、その状況がわかると思うよ。本当に、宗教的な洗脳や政府による洗脳、時代遅れの習慣や伝統にしがみつく人々など、長い道のりが待っているんだ」
SNS も今や権力の “武器” と化しています。
「俺たちは、ソーシャルメディアによって物語がコントロールされる世界に住んでいる。インドでは、世界の他の地域と同様にフェイクニュースの大きなな問題があって、SNS のほとんどは、右派の与党政府によってコントロールされている。右派政権に対抗できる政党やまともな野党がほとんどない状態でね。この国で最大の誤報拡散者である Whatsapp を使ってプロパガンダや誤報を拡散するためだけに人が雇われているよ。Whatsapp が原因で、リンチされたり殺されたりした人も。物議をかもした市民権法に対する抗議デモの際も、IT部門はフル回転していた。彼らの最大の自慢は、Twitter で何でも流行らせることができること。どんな話題でも、コピーペーストしたようなツイートが表示されるのは悪夢のようなものだ。ウクライナへの攻撃の際にも、このようなことが起こっていたよな」
“レッテル貼り” も権力お得意の分断の手法。
「特にインドにおける右翼の戦術のひとつは、人々に “反国家” の烙印を押すこと。政府に疑問を持てば反国家、あるイデオロギーを推進しなければ反国家というわけさ。最悪なのは、政治とヒンドゥー教を結びつけてしまったことだ。だから今日、牛肉を食べると、憲法で権利が認められているにもかかわらず、反国民とみなされる。現政権は非常に攻撃的で、親ヒンドゥー的でファシスト的な性格を持ち、非常に暴力的なグループを支持している。現首相を批判する人がいれば、ネット上の荒らしの軍団や、実際のチンピラまで現れて問題を起こし、反国民の烙印を押されてしまうんだ。俺は、批判的で、宗教的・政治的な駆け引きではなく、国民の向上のために政府を後押ししようとする人たちこそ、真の愛国者であると信じている」

Sahil は声を上げるためには、ある程度の人気が必要だと考えています。
「音楽にはたくさんの力がある。音楽がもたらす癒しやポジティブな変化はたくさんあるんだ。だけど、ニッチなジャンルの音楽を、ニッチな国で、しかも人気のないアーティストが演奏するとなると、そんな変化も期待できない。もしかしたら、一部の人に影響を与えるかもしれないけど、本当に影響を与えるためには、もっと多くの人に聴いてもらう必要があるんだよ。だから、今のところは、DEMONSTEALER は俺が目にした世界の間違ったことに対して発言するためのただの道具だ。でも、もしそれが人々に語りかけられ、共感され、音楽が人生の困難な時期を乗り越える助けになるなら、それは俺にとっても世界にとっても意味のあることとなる」
音楽的には、Sahil は DEMONSTEALER を実験室として使用し、頭に浮かんだあらゆるアイデアを探求する傾向があります。”The Propaganda Machine” では、彼のキャリアの中で最も緻密なレイヤーを持つ楽曲を作曲していることに気づくでしょう。もし、Sahil の威厳と自信に満ちたクリーン・ボーカルと、元 CRADLE OF FILTH キーボード奏者の Annabelle Iratni が醸し出すシンフォニックな華やかさがなければ、アルバムはもっとデスラッシュの閉塞空間にあったでしょう。Sahil は、自分の直感を信じることで、荘厳と凶暴の適切なバランスを見つけているのです。
「”次のアルバムは、今までで一番ブルータルなアルバムにしよう、ブラストビートと、最も重厚なリフ、そしてうなり声を出すだけだ” なんて思っていても、実際に曲を書き始めると、突然美しいメロディーを思いつき、”これはこの曲にピッタリだ!” なんて思うんだ」

DEMONSTEALER は厳密には Sahil のソロプロジェクトですが、NILE の George Kollias が “This Burden Is Mine” でドラムを叩いて以来、ゲスト・ミュージシャンはそのサウンドに欠かせない要素となっています。DEMONSTEALER のサポート・キャストは着実に増えており、”The Propaganda Machine” は総勢12人のプレイヤーによって命を吹き込まれているのです。クレジットには、鍵盤の Iratni、Hannes Grossmann を含む4人のドラマー、さらに4人のベーシスト、3人のリード・ギタリストの名前があります。James Payne (Kataklysm, Hiss From The Moat), Ken Bedene (Aborted), Sebastian Lanser (Obsidious/Panzerballett), Dominic ‘Forest’ Lapointe (First Fragment, Augury, BARF), Stian Gundersen (Blood Red Throne, You Suffer, Son of a Shotgun), Martino Garattoni (Ne Obliviscaris, Ancient Bards), Kilian Duarte (Abiotic, Scale The Summit), Alex Baillie (Cognizance), Dean Paul Arnold (Primalfrost), Sanjay Kumar (Equipoise, Wormhole, Greylotus)。Sahil は、彼らの役割について厳格に規定することはありません。ここでは、それぞれのミュージシャンが、それぞれの長所を発揮しているのです。
「各ミュージシャンは、それぞれの個性を生かす。これほど多才なミュージシャンと仕事をするのであれば、俺がプログラミングをしたり、これとこれを演奏しろなんて厳しく指示する意味はない。もちろん、ドラムのパートをすべてサンプルで置き換えるのはとても簡単だが、すべて全く同じ音になってしまう。それに何の意味があるのだろう?だから、ドラムの音はアルバムの曲によって変化するし、ベースのダイナミズムも当然変わってくるさ」
このアルバムは、Sahil の独特なソングライティングだけでなく、彼の思想によっても一貫性を保ちます。右翼のポピュリストが支配する不安定な国で活動することは簡単ではありません。最近、ニューデリーとムンバイにあるBBCのオフィスが、インド特集を放送した後に家宅捜索を受けました。”モディ・クエスチョン”(2023年)は、2002年にグジャラート州で起きた一連の暴動で首相が果たした役割を探るドキュメンタリー。ボリウッドの作品は、過激派の脅迫によって定期的に中断、破壊、閉鎖され、Sahil 自身も、風刺ロックバンド WORKSHOP で政治家と悪徳警官を罵倒した際、検閲に直面しました。Sahil が “偉大なる独裁者” や “鉄拳を砕く” のような曲を書くことの結果を恐れているとしても、彼はそれを表に出すことはありません。恐れよりも、彼は何度も自分の特権と、それを使って抑圧と闘う責任について言及します。
「俺のような人間は、アパートでくつろぎながら、こう言うこともできる。これは俺の戦いではないんだ。普通の平穏な暮らしを送ればいいってね。俺は何気ない生活を送れるのだから。だけど、踏みつけにされそうになっている人たちが大勢いる。いずれは反撃に出るべき人たちが。抗議の力、情報の力によって、俺たちは実際に変化を起こすことができるはずだ。どんな形であれ、善戦する人たちはたくさんいる。そして、願わくば、より多くの人々が目を開き、自分たちが持っている特権や、声を上げる必要があるという事実に気づくことを期待しているんだ。そして、この先、より良い日々が待っていることもね。俺たちは、自分たちが見つけた世界よりも良い世界を残すことができる、すべての人々にとってより公正で平等な世界に住むことができると信じたい。他人を親切に扱い、専制や抑圧に負けることはないとね。しかし、実際には、これは長い戦いで、変化は一夜にして起こるものではない。だからこそ俺は、より良い世界を作るために、時間、エネルギー、努力、時には命さえも犠牲にしてきたすべての人々に敬意を表したいんだ」

実際、Sahil 自身もより良いインドのメタル世界のために戦い続けてきました。
「俺たちも DEMONIC RESURRECTION でオリジナル曲を演奏するようになって、観客から瓶や石を投げつけられたものだよ。バスドラのペダルさえも手に入れるのが困難だった。レコード会社もなく、”ロック・ストリート・ジャーナル” という地元のロック雑誌があり、大きな大学では毎年、文化祭でバンド・バトルをやっていたくらいでね。当時はそれしかなかったんだ」
インドにおけるメタルのリソース不足に直面した Sahil は、インドのバンドを実現させたいなら、自分でやるしかないと決意しました。彼は、インド初のメタル専用のレコーディング・スタジオを設立し、その後すぐにインド初のメタル・レーベルである Demonstealer Records を設立します。そこで自身の音楽を発表し、ALBATROSS や今は亡き MyndSnare といったインドのバンドをサポートするだけでなく、彼のレーベルは BEHEMOTH や DIMMU BORGIR といった入手困難なバンドのアルバムをライセンスしリリースしました。また、元 DEMONIC RESURRECTION のベーシストである Husain Bandukwala と共に、インドで唯一のエクストリーム・メタル専門のフェスティバルである”Resurrection Festival” を立ち上げ、長年にわたって運営しました。インド・メタルシーンの柱としての Sahil の地位は議論の余地がありません。しかし、自身の影響力と遺産について彼は実に控えめです。
「でも、もし俺がやらなくても、おそらく他の誰かがやってきて、いつか俺の成したことをすべてやっていただろうね。でも、もし私が何らかの形で貢献できたのなら、それで満足だ。私は人生をメタル音楽の演奏に捧げているのだから」
Sahil は、貧困が蔓延している社会構造に加え、意味のある音楽ビジネスのインフラがないため、インドでバンドを存続させるためには基本的な収入が必要だと説明します。また、移動距離が長いためバンに乗って全国ツアーに出ることはできず、飛行機代やホテル代も考慮しなければならないことも。さらに最近まで、独自のPAシステムを備えた会場を見つけられることは稀で、各会場でPAシステムを調達し、レンタルしなければなりませんでした。
「その結果、ほとんどのバンドが赤字になり、長期的には解散してしまうんだ。今はマーチャンダイズで、なんとかやっていこうというバンドもいる。ツアーができるバンドもあるけど、簡単なことではないんだよ」

Sahil は早い時期から、物事を実現するために必要なことは何でもやると決めていました。
「メタル・ミュージシャンを続けられるように、自分の人生を設計したんだ。親と一緒にいること、子供を作らないこと、休暇にお金をかけないことも選んだ。自分がやりたいことはこれだとわかっていたから、そういった犠牲を払った。もし、友人たちのように給料が高くない仕事をするなら、その予算でどうやって生きていくかを考えなければならないだろうからね」
幸運にも、彼は “Headbanger’s Kitchen” というチャンネルと番組で、YouTuberとしてのキャリアを手に入れることができました。当初は一般の料理番組としてスタートした彼のチャンネルは、仲間のメタルミュージシャンにもインタビューを行いながら Sahil が実践しているケト食を推奨するプラットフォームへと発展し、今では彼の主な収入源となっています。
しかし、彼の最愛のものがメタルであることに変わりはなく、彼自身の努力もあって、この10年ほどでインドのメタルシーンは花開き始めています。多くの色彩、創造性、活気を伴いながら。ただし、インドから生まれるバンドは、インドと同じくらい多様でありながら、ほとんどの場合、彼らは民族的なモチーフを過剰に使用することはないと Sahil は語ります。
「というのも、この国のメタルの魅力のひとつは、自分たちの文化に反抗することだからね」

オールドスクールなスラッシュとメタルを演奏する KRYPTOS、ブルータルなデス/グラインドを演奏するGUTSLIT、シッキム州の SKID ROW, もしくは WHITESNAKE とも言われる GIRISH AND THE CHRONICLES、メイデン風の高音ボーカルでホラー・メタルを演奏する ALBATROSS, 弊誌でインタビューを行ったインドの DREAM THEATER こと PINEAPPLE EXPRESS などこの地のメタルは意外にも、伝統への反抗意識から西欧の雛形を多く踏襲しています。
彼の地の多くのスタイルやサブジャンルが西洋の聴衆になじみがある一方で、社会的・政治的システムへの怒りや、地元の文化や神話を参照した歌詞には、インド独特の風味が際立ちます。ムンバイのスラッシャー、ZYGNEMA の最新シングル “I Am Nothing” は、インドの多くの地域で未だに悲しいことに蔓延している女性差別やレイプ文化に対して憤慨した楽曲。そして、The Demonstealer のバンドである DEMONIC RESURRECTION は、壮大なブラック・シンフォニック・デスメタルを得意とし、前作 “Dashavatar” はヒンドゥー教の神 Vishnu の10のアバターについて論じています。そして、ニューデリーのBLOODYWOOD。スラミング・ラップ・メタルとインドの民族音楽を組み合わせ、英語、パンジャブ語、ヒンディー語を織り交ぜながら、政治的、個人的な問題に正面から取り組む歌詞を描いた彼らのユニークなサウンドは、近年ますます話題になっています。
「インドはとても大きく、多様性に富んでいて、これがインドだと断定できるものは何もない。彼らはパンジャブ音楽を使うけど、その音楽はインドの南部では人気がないんだ。言語も文化も音楽も違う。国語もなく、すべてが多様なんだよね。でも BLOODYWOOD は、欧米や世界中の人が “インドのメタルはどんな音だろう?”と興味を持ったときに、聴きたいと思うようなものを捉えているんだ」
つまり、Sahil Makhija はもっとポジティブで、特に彼が愛するヘヴィ・メタルの未来については楽観的です。
「インドのバンドがもっと国外に進出するのは間違いないだろう。10年前と比べると、みんなもっとたくさんツアーをやっているし、国際的なバンドがインドで演奏することも増えてきた。今後数年の間に、インド全土でそれなりのシーンと強力なオーディエンスを築き上げることができると思うよ」

参考文献:Bandcamp Daily: Demonstealer Fights For a Better India Through Death Metal

No Clean Singing:AN NCS INTERVIEW: DEMONSTEALER

Demonstealer’s Incendiary Metal Assaults “The Propaganda Machine” (Track-by-Track Rundown)

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【THE ONGOING CONCEPT : AGAIN】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DAWSON SCHOLZ OF THE ONGOING CONCEPT !!

“When I Do Listen To Music Though It’s Not Heavy Music, I Tend To Listen To More Groovy/funk Style Bands Like Cory Wong And Dirty Loops.”

DISC REVIEW “AGAIN”

「音楽を聴くときは、ヘヴィ・ミュージックではなく、Cory Wong や Dirty Loops のようなグルーヴィーでファンクなスタイルのバンドを聴くことが多いね。で、ヘヴィとファンク、この2つの要素が、僕らの音楽がしばしば異なるジャンルに溶け込む理由だと思うんだ」
THE ONGOING CONCEPT はメタルコア/ポスト・ハードコアシーンにおいて常に謎の存在であり続けています。多くの人は、バンジョーによるカオスな冒険 “Cover Girl” と、それに合わせた愉快なミュージック・ビデオでまず彼らに気づいたはずです。メタルコア、ファンク、ブルース、サザンロック、ポスト・ハードコア、プログレッシブ・メタル、アコースティックなど、様々なスタイルから影響を受けながら、魅力的なブレンドと奇抜な発想でサウンドを形成してきた THE ONGOING CONCEPT のコンセプトはまさに “Ongoing” “進行中”。ワイルド・ウェストをテーマにした “Saloon” や、全ての楽器を一から作り上げた “Handmade” など、彼らのアルバムは常に興味深いコンセプトを携えて、刻々と冒険という名の変化を続けているのです。
「14歳のときに DREAM THEATER に出会って、音楽に対する考え方が変わったよ。プログレッシブ・ロックや DREAM THEATER がやっていた奇妙なことに夢中になった。それが、THE ONGOING CONCEPT の音楽に様々な要素を取り入れたり、アルバムにコンセプトを取り入れたりする理由になっていると思う」
バンドのファンなら、6年ぶりの新作 “Again” の曲名に見覚えがあるはずです。なぜなら、すべてが新曲でありながら “Again” の枕詞はすべてバンドの過去の曲名であり、そうすることでバンドは、過去の作品への言及やイースターエッグを取り入れつつ、過去と現在を融合させた新しい楽曲を作りたかったのです。こうした、遊び心やコンセプト・イズム、過去との邂逅は、まさに DREAM THEATER の優秀な門下生であることの証明でしょう。
どのみち、”Amends Again” ですぐにリスナーは曲名の謎を理解します。オリジナル曲のキャッチーなフックへのコールバックが曲中にちりばめられ、彼らの特徴的なリフはまるで旧友が戻ってきたかのような弾むようなグルーヴでアルバムをスタートさせます。オリジナル・スクリーマーでキーボーディスト Kyle Scholz の象徴的な、高音で混沌とした叫び声は、間違いなく “Swancore” リスナーに歓迎され、バンドのサウンドに再度命を吹き込んでいます。
一方で、”Unwanted Again” では、Dawson Scholz と Andy Crateau のボーカルが前面に出て、インディーズ・スタイルのメロウなロックソングを標榜。Kyle が奏でる複雑なクリーントーンのギターとシンセが、グルーヴィーでヴィヴィッドなこの曲は、アルバムの中でも際立ち、最後は味わい深いクラシックなソロで締めくくられていきます。
「僕らが音楽を作るときは、できるだけ純粋でありたいと思っているからね。周りの世界で何が起ころうとも、僕らの音楽に反映させる必要はないし、僕らの目には重要ではない。重要なのは、その曲がどんな時でもどのような気持ちにさせるかなんだ。10年後、100年後、僕たちの曲は時代を超越したものでありたいと思っているから。僕らが曲を書くときは、携帯電話やテレビ、コンピュータの電源を切って、自分たちがハッピーになれるような曲を書くことを心がけているんだ」
前作に続き、このアルバムもバラエティに富んでいるのが魅力。エレクトロニックな要素を含んだよりチルな雰囲気の曲もあれば、メタルコアとサザンロックのハイブリッドを披露しより激しい顔を生み出す曲もあり、ジャジーなブレイクやファンキーなグルーヴなど予想不可能な瞬間の目まぐるしき目白押しでジャンルに縛られないこと、自らの音楽に正直であることの楽しさを実証していきます。好きこそ物の上手なれ。結局、好きに勝てるモチベーションはないのですから。
今回弊誌では、Dawson Scholz にインタビューを行うことができました。「僕たちはたくさんの “Swancore” のバンドとツアーを行ってきたんだ。その中には、僕たちの大切な友人であるバンドもいる。特に EIDOLA は、一緒にツアーを回った中で最も好きなバンドのひとつだね」 どうぞ!!

THE ONGOING CONCEPT “AGAIN” : 9.9/10

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