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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【FULL OF HELL : TRUMPETING ECSTASY】JAPAN TOUR SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SPENCER & DYLAN OF FULL OF HELL !!

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Maryland / Pennsylvania Quartet, Full OF Hell Has Just Released The Newest Album “Trumpeting Ecstasy”!! Diverse, But More Into Extreme Metal Realms!

DISC REVIEW “TRUMPETING ECSTASY”

メリーランド、ペンシルベニアのカルテット、破壊者 FULL OF HELL がフルアルバムとしては2013年の “Rudiments of Mutilation” 以来となる新作 “Trumpeting Ecstasy” をリリースしました!!日本が誇るノイズゴッド MERZBOW, アヴァンギャルドノイズデュオ THE BODY とのコラボレート、さらには NAILS, PSYWARFARE とのスプリットを血肉としてリリースした作品は、要となる自身のルーツを軸としつつ、同時にエクストリームミュージックの領域を一際押し広げる重要なレコードとなりました。
CODE ORANGE, 日本の ENDON と並んで FULL OF HELL はハードコアとノイズ要素を融合させるアプローチの先端に立つアーティスト。もはやハードコアの大家となった感のある CONVERGE の Kurt Ballou が斬新なその三者全ての新作を手がけることとなったのも偶然ではないでしょう。
実験的な作風にシフトするかとも思われた “Trumpeting Ecstasy” は、意外にもストレートな楽曲が軸となり押し寄せる暗く激しい11曲23分となりました。インタビューにもあるように、サウンド、リフワークなど、確かにバンドはよりメタルの領域に接近したようにも思えますし、楽曲が”密着”していると語るのも頷けます。
しかし、勿論彼らの野心が一所に留まるはずもなく、レコードは同時にパワーバイオレンス、ノイズ、スラッジ、インダストリアルといった多様なアイデアを見事に昇華しコンテンポラリーなブルータリティーを散りばめたハイブリッドなエクストリームミュージックとして仕上がったのです。
“木々も鳥たちも悲しみに満ちている。彼らは歌っているんじゃない。ただ悲鳴をあげているんだ。” ニュージャーマンシネマの巨匠 Werner Herzog の言葉で幕を開けるアルバムオープナー “Deluminate” は文字通り世界の悲惨さ、絶望感の象徴です。不協和音をスクラッチする悪夢のデスメタルライクなリフワークと、疾走する巧みで手数の多い狂気のドラミングは無慈悲にもリスナーに地獄絵図を投下して行きます。”人間は地球の顔に出来た膿だ” と喉が張り裂けるほどシャウトする Dylan の苦痛を伴う憤怒は即ちハードコアのリアルで、聴く者に畏敬の念さえ感じさせますね。
禍々しい何かを引き摺るようにスローダウンする、スラッジーな “Gnawed Flesh” はまさに FULL OF HELL の真骨頂。脱退したベーシスト Brandon Brown のデモニックなガテラルは、Dylan の鋭いスクリームと凶悪なインタープレイを繰り広げバンドの顔となっていましたが、新たに加わった Sam DiGristine もしっかりとその伝統を引き継ぎ、自身のハラワタに宿した魑魅魍魎を地の底でスラッジパートに全てぶつけています。
さらに “Crawling Back to God” には ex-ISIS の Aaron Turner が、”At the Cauldron’s Bottom” には CONVERGE の Nate Newton がそれぞれボーカルでゲスト参加し、様々な声を得た作品は実に多様な色を加えているのです。
GRIMES のレーベルに所属するカナダのアーティスト Nicole Dollanganger の声を得たタイトルトラック “Trumpeting Ecstasy” はバンドが経てきたコラボレートの旅が結実した成果だと言えるでしょう。THE BODY の Lee Buford が生み出すビートと Nicole の天上の歌声は、不穏なノイズを宿した惨忍なバンドの暴虐と溶け合うこともなく、奇妙な二分法のまま冷やかなまでに無機質に進行して行きます。
インタビューで Dylan は、”Trumpeting Ecstacy” というタイトルが「他人の不幸は蜜の味」といった意味を持つと語ってくれましたが、この純美と非業、”喜び”と”悲しみ”の奇妙な共存はそのまま彼の語る人間の心の最も醜く陰湿な場所を映し出しているように感じました。
今回弊誌では、フロントマン Dylan とギタリスト Spencer にインタビューを行うことが出来ました!8月には THE BODY, FRIENDSHIP と回る日本ツアーも決定しています。どうぞ!!

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FULL OF HELL “TRUMPETING ECSTASY” : 9.8/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DRAGONFORCE : REACHING INTO INFINITY】JAPAN TOUR SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH FRÉDÉRIC LECLERCQ OF DRAGONFORCE !!

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UK Based Power Metal Speed Star, Dragonforce Reaches Into New Horizon With Their Newest Album “Reaching Into Infinity”!! Still Fast But Mature!

DISC REVIEW “REACHING INTO INFINITY”

英国が誇るパワーメタルスピードスター、DRAGONFORCE が7枚目のフルアルバムとなる “Reaching into Infinity” をリリースしました!!”無限大”の力と可能性を秘めたその魅力的な音時空は、素晴らしきカタルシスを伴って世界に光明と救いをもたらすことでしょう。
DRAGONFORCE は勿論、その計測不能なまでに狂速な bpm と、レトロゲームの影響を消化したチップチューンメタルのコンボで名を上げたバンドです。確かに、時に激しいギターデュエルを交えながら突き進む、その目まぐるしくも華麗で勇壮なスタイルは実にエキサイティング。バンドは暗雲漂うパワーメタルシーンの救世主として着実にその地位を築き上げて来たと言えるでしょう。
しかし、DRAGONFORCE は現在、そのパワーメタルという “檻” からゆっくりと着実にその領域を拡大させつつあります。
実際、ギタリスト Sam Totman という大黒柱がコンポジションの中心に座っていた “The Power Within” 以前のパワーメタル然とした作品と、マルチな才能を持つベーシスト Frédéric Leclercq が大々的に関わるようになり Sam との二頭体制を築いた後の作品には大きな差異が存在するようにも思えます。
二頭体制の幕開けとなった前作 “Maximum Overload” はバンド史上最高に芳醇な音楽性を誇る作品でした。インタビューにもあるように全てを2人で共作したというアルバムは、Frédéric が持ち込んだデス、スラッシュ、プログといった新たで多様な感覚と、奇跡の 235 bpm を実現した “The Game” が象徴するバンドのアイデンティティー “スピード” を共存させた完璧なる傑作だったと言えますね。勿論、Jens Bogren の類希なるセンスがバンドをまだ見ぬ高みへと導いたことも否定は出来ないでしょう。
ただ何より、Frédéric が日本のゲーム “悪魔城ドラキュラ” へのトリビュートとして制作した “Symphony of the Night” の妖艶なる美の調べは、以前のバンドには存在し得ない新たな至宝に違いありません。前世は日本人だったとまで語る Frédéric のメロディーには、コード進行をより意識することで生まれる日本的な “艶” が確かに備わっているのです。
二頭体制を引き継ぎながらも2人が別々に作曲を行い、結果として Frédéric が大半の楽曲を手がけることとなった新作 “Reaching into Infinity” は、”Maximum Overload” でのチャレンジをさらに1歩押し進めた作品に仕上がりました。
期待感を煽る荘厳なイントロダクションに導かれ幕開ける、アルバムオープナー “Ashes of the Dawn” はまさに歌劇”スピードメタル”。オペラティックな Marc Hudson の歌唱は、ファストでシンフォニックな舞台に映え、昇龍の如く天高く舞い上がります。自らのトレードマークをしっかりとアピールしながら、よりシアトリカルで洗練されたメロディーを提示する現在の DRAGONFORCE に死角はありませんね。
トランス的なイントロから HELLOWEEN を想起させるメジャーなコーラスを経てプログレッシブな展開を見せる新鮮な “Judgment Day”、新ドラマー Gee Anzalone の派手やかなお披露目から Frédéric の壮絶なベースソロまでリズム隊の活躍が顕著な “Astral Empire” と疾走するキラーチューンを畳み掛けたバンドは、徐々にその成熟を遂げたドラゴンの巨体を顕にして行きます。
“悪魔城ドラキュラ” トリビュートの続編、ディミニッシュの魔法が冴える “Curse of Darkness”、切なくも壮大なバラード “Silence”、そして ANTHRAX のエナジーを宿したスラッシュチューン “War!” と実に多彩なアルバムの中でもハイライトは11分の大曲 “The Edge of the World” でしょう。
IRON MAIDEN の長尺曲をも想起させる楽曲は、プログレッシブな展開美が白眉で実にエピカルかつドラマティック。ボーカル、ギターソロ、バッキングをよりオーガニックに誂え、しかし時にデスメタルの要素までも散りばめた世界の果ての景観は、静と動のコントラストが鮮やかに浮き彫りとなった新たな光景だったのです。それは様々なジャンルのバンドで経験を積んだフランス人の才能が、バンドのカラーと遂に溶け合った瞬間と言えるのかもしれませんね。
今回弊誌では、作品のキーパーソン Frédéric Leclercq にインタビューを行うことが出来ました!充分にファストですが、以前の良くも悪くもピーキーな DRAGONFORCE とは趣を異にする円熟の一作。同時に、今回も Jens Bogren は素晴らしい仕事を果たしたようですね。どうぞ!!

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DRAGONFORCE “REACHING INTO INFINITY” : 9.7/10

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SITHU AYE SENPAI EXPLAINS IT ALL !! 【SENPAI EP Ⅱ: THE NOTICING】


So fast forward 1 year and 7 months and I have released “Senpai EP II: The Noticing”, the follow up to the first EP. It continues to follow the story of these three girls in the style of a slice of life anime. 

“Senpai EP” から1年7ヵ月ぶりに “Senpai EP Ⅱ: The Noticing” をリリースしたよ!!この作品でも、女の子3人の物語を日常系アニメのスタイルで追っているんだ。

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(There’s a new girl in there – we’ll get to her later! Artwork by me)

RECAP OF “SENPAI EP”

To start with, a little bit of a recap of the first Senpai EP and an introduction to the characters. Senpai EP follows the adventures of 3 girls who love to play progressive metal music and is heavily influenced by slice of life anime, especially K-On!. The main character is Megumi Uehara (上原めぐみ) who is nicknamed Prog-chan (プログちゃん), a 17 year old 2nd year in high school who loves to play the guitar. All Prog-chan wants to do is to have fun and to play music with her friends. Her childhood friend (幼馴染) Hanako Todoroki (轟花子) is also 17 and in her 2nd year of high school and plays bass. She is also her class rep and top student in her year. Finally, we have Mari Matsumoto (松本まり) who is 16 and in her 1st year of high school. She idolises Megumi as her guitar playing Senpai. The first Senpai EP followed the idea of slice of life anime, where it followed a day in the life of the girls. It starts with Megumi being late for school (Oh Shit, I’m Late For School! (やだ、遅刻しちゃう!)), Mari trying to get Megumi-senpai to notice her (Senpai, Please Notice Me! (先輩、私に気付いて下さい!)) and a dream Megumi has while asleep in class where she and her friends are magical girls (魔法少女) trying to battle evil guitar frets (The Power of Love and Friendship! (愛と友情のパワー! )). I hoped to parody anime tropes, yet also convey the feeling you get while listening to anime music with this EP. It also established these three as characters that would appear again in Senpai EP II.

“Senpai EP Ⅱ” の解説を始めるにあたって、まず少しだけ “Senpai EP” のおさらいと、キャラクター紹介をしておこう。
“Senpai EP” はプログメタルをプレイするのが大好きな3人の少女が繰り広げるアドベンチャーで、日常系アニメ、特に “けいおん!” に強く影響を受けていたんだ。
メインキャラクターは上原めぐみ、17歳の高校2年生。プログちゃんと呼ばれているようにギターが大好きな女の子さ。楽しく友達と音楽をプレイしたいと望んでいるんだ。
めぐみの幼馴染み、轟花子も17歳の高校2年生で、ベースをプレイするよ。花子はめぐみと同じクラスで学期委員長。学年でもトップの成績を誇るんだよ。
そして3人目が松本まり。16歳の高校1年生。めぐみのことをギターが上手い先輩としてアイドル視しているんだ。
“Senpai EP” の1作目は、日常系のアニメにアイデアを得て、彼女たちの日常を追ったものだったんだ。EP はめぐみが学校に遅刻しそうな場面から始まるよ (Oh Shit, I’m Late For School! (やだ、遅刻しちゃう!) )。
まりはめぐみ先輩に気づいてもらおうとしていてね (Senpai, Please Notice Me! (先輩、私に気付いて下さい!))。
めぐみが授業中に居眠りしていて見た夢は、彼女と友達が魔法少女となり悪のギターフレットとバトルするものだったんだ (The Power of Love and Friendship! (愛と友情のパワー! ))。
つまり僕は、この作品でアニメのトロープスをパロディーすることで、アニソンを聴いている時の感覚を伝えることが出来ればと思ったんだよ。”Senpai EP Ⅱ” にも登場する3人のキャラクターを確立することも出来たしね。

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(The three girls, from left to right: Mari (まり), Megumi (めぐみ) and Hanako (花子). Artwork by Ulrich)

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【川口千里 / SENRI KAWAGUCHI : CIDER ~Hard & Sweet~】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH SENRI KAWAGUCHI !!

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20 Years Old Drum Maestro, Sernri Kawaguchi From Japan Has Just Released Hard & Sweet Fusion Record, “Cider” !!

DISC REVIEW “CIDER ~Hard & Sweet~”

“手数姫” こと女子大生スーパードラマー、川口千里が遂にメジャーデビュー作 “CIDER ~Hard & Sweet~” をリリースしました!!二十歳の節目にメンバーを固定して望んだ成長著しい快作は、まさに茫々と広がる世界への確かな切符となるでしょう。
インタビューにもあるように、5歳でドラムと運命的な出会いを果たし、8歳であの “手数王” 菅沼孝三氏に師事を始めたという彼女の物語は、さながら現代のお伽噺のごとく素敵な奇跡と共に幕を開けました。12歳で挑んだプレイスルー動画の総再生回数は4000万回に迫り、世界的なドラム関連サイト “ドラマーワールド” では世界のトップドラマー500に撰されるなど、もはやその存在はワールドワイドに熱い視線を浴びていると言えますね。
すでにインディーズで2枚のソロ作品をリリースしている川口千里。しかしその活躍は自身のリーダー作のみに留まりません。E-girls, Guthrie Govan のライブをサポートし、Lee Ritenour とも共演。さらには 映画 “さらばあぶない刑事” のサウンドトラック、ももいろクローバーZのアルバム “AMARANTHU” にも参加するなどその素晴らしくジャンルを股に掛けた活躍により、彼女はしっかりと自身の軌跡を刻んで行っているのです。
「20歳を記念するアルバムなので、大人をイメージしつつ爽やかな若さもあるタイトル」「私のドラミングの “Hard” な部分も “Sweet” な部分も両方感じてほしい」 という理由から名付けられた3作目のリーダー作 “CIDER ~Hard & Sweet~”。アニバーサリーの冒険で彼女がキーパーソンに指名し絶大な信頼を置いたのが、Philippe Saisse でした。THE ROLLING STONES, David Bowie から David Sanborn, Al Di Meora まで数多の巨人と共演しそのアレンジを手がけて来た、フランスの偉大なキーボーディストにしてコンポーザー、プロデューサーは自身のグループ PSP の “S” を Simon Phillips から Senri Kawaguchi に翻しその力を貸すことにも吝かではありませんでした。
アルバムオープナー “FLUX CAPACITOR” は “バックトゥザフューチャー”、時代を行き来する作品の予告編でしょうか?フュージョンがスムーズジャズと呼ばれる以前のクロスオーバーなエキサイトメントとフリーダムを掲げつつ、同時に Philippe のポップなセンスを活かすクリアーなプロダクションとモダンなテクニックを内包する楽曲は瑞々しさに満ちています。ゴーストノートやハイハットの細かな刻みまで隈なく見渡せるサウンドの透明度は本当に群を抜いていますね。
Philippe のビンテージな機材から繰り出されるキャッチーなテーマは、川口千里の刻々と拍子を移すダイナミックなリズムワークに牽引され、万華鏡のように鮮やかな広がりを見せて行きます。Pino Palladino の代役として参加したカメルーン生まれのテクニシャン Armand Sabal-Lecco は、低音域から高音域までフレキシブルなベース捌きを披露し、Philippe の Jan Hammer を想起させるスリリングなソロワークと相まってギターの不在を感じさせませんね。トリオのタイトなグルーヴがダブルタイムへ移行すると、そのカタルシスはさらに加速しロックの衝動をさえ孕みながら音のユーフォリアを創造していくのです。
マリンバを使用し野性的な雰囲気を演出する “Wupatki”、彼女自身が作曲を行ったロマンチックなバラード “Longing Skyline” を挟んで訪れる “Do Do Ré Mi” はアルバムのハイライトと言えるかもしれませんね。ジャズスタンダードの古典ようにスタイリッシュに幕を開ける楽曲は、突如その舞台を現代的なフュージョンへと移します。アルバムに収録するのが初めてとは思えないほど堂にいった4ビートから6/8拍子へと切り替わるその魔法の瞬間はリスナーに音楽の “楽しさ” を運ぶはずです。”間”を大切にしたという彼女の言葉通り、スティック一閃、バンドがピタリと完全に音を止める瞬間はあまりにクールで川口千里というコンダクターの実力を存分に見せつけています。
さらに 「現場での化学反応が想像以上に凄かった」 と語るように、楽曲終盤のサンバをベースとした、ドラムスがリード楽器に思えるほど壮絶なインタープレイは、”Ginza Blues~intro~” や “Senri and Armand Groove” と並んで “手数姫” の面目躍如であり、同時にメンバーの個性、そしてトリオのケミストリーが結実した得難き刹那だと感じました。
インタビューでフュージョンを音楽の “交差点” と位置づけた千里さんの想いを乗せたアルバムは、奇しくも個性的な三者の道が交差した証である “In Three Ways” でカラフルに幕を閉じました。「単なるスムーズジャズじゃない」という言葉に込められたプライドをしっかりと実現した充実の51分。
今回弊誌では、川口千里さんにインタビューを行うことが出来ました!世界を見据えつつ、同時に現役女子大生らしいかわいらしい部分も垣間見えると思いますよ。どうぞ!!

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SENRI KAWAGUCHI “CIDER ~Hard & Sweet~” : 9.7/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【heaven in her arms : 白暈 / WHITE HALO】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH KENT & KATSUTA OF heaven in her arms !!

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PHOTO: Taio Konisi

One Of The Most Dynamic Post-Hardcore Act From Japan, heaven in her arms Has Just Released Gorgeous and Awe-inspiring New Record “White Halo” !!

DISC REVIEW “白暈”

トリプルギターが映し出す濃密なシネマと、アーティスティックで詩的なリリックが交錯する東京のポストハードコアアクト heaven in her arms が実に7年ぶりとなる待望のフルレングス “白暈” を Daymare Recordings からリリースしました!!アートワークにも顕在する “White Halo”、白く差しそめし光芒の暈は、バンドの黒斑を侵食し遂にはその枷をも解き放ちました。
変化の予兆、耽美でアンビエントなイントロダクション “光芒の明時” が燭明のごとくリスナーを “白暈” の世界に導くと、作品は “月虹と深潭” でその幕を開けます。
激烈なトレモロの嵐はまさに深潭、エセリアルなクリーンパートはまさに月虹。前作 “幻月” で提示された、ひたすら深淵をのぞき込むがごときスラッジの閉塞はポストブラックの冷酷へと姿を移し、繊細で艶美なアルペジオは闇夜に映る月輪のように、”浄化” という名の詩情豊かなサウンドスケープをもたらします。
Kent の絶唱と朗読のコントラストは楽曲に豊潤な文体を与え、終盤に観せるリードギターとドラムスの知的で瑞々しいアプローチは風雅をすら運んでいますね。
「今回は”黒い”イメージを脱却したかった」 と Kent が語るように、闇と絶望を宿した黒を基調とするバンドの色彩に仄かな燐光をもたらしたのは、7年間の集大成とも言える “終焉の眩しさ” だったのかも知れません。
COHOL とのスプリットに収録された “繭” と “終焉の眩しさ” を融合し再録したこの名編は、狂気と正気を行き来する壮大な表現芸術です。Katsuta が「heaven in her arms ってどんなバンド?と聞かれた時に “終焉の眩しさ”はその答えとして分かりやすい」 と語るようにまさにバンドを象徴する名曲は、静と動、光と闇、絶望と救済が混淆するダイナミックな激情のドラマとして中軸に据えられ作品の趨勢を決定づけているのです。
奇数拍子と偶数拍子がせめぎ合う “終焉の眩しさ” の根幹はキャッチーとさえ言えるほどフックに満ち溢れたドラムスのアイデアに支えられ、同時にバンドのシグニチャーサウンドであるトリプルギターは轟音、アルペジオ、そして妖艶で耽美なメロディーを宿した極上のリードプレイを奏でます。
「ハーモニーに関して他のバンドとは一線を画したい」 と語るように、heaven in her arms のアンサンブル、コンポジションは決定的でプログレッシブと言えるほどに精密だと言えるでしょう。
実際、heaven in her arms はハーモニーのみならず、その巧みなリズムアプローチにおいても他のポストハードコアバンドと一線を画しています。パイプオルガンの荘厳な響きを “枷” として綯う “円環” は、”5″と”6″のリフレインが異国のメロディーを紡ぐ異形のロンド。ワルツに移行し踊るクラシカルな旋律は静謐も激情も平等に愛し、7年の月日で養ったバランス感覚を洗練という軌跡へと昇華させているように思えます。
“終焉” の先に見据えたものは何でしょう?ブラックゲイズの領域へと侵入したアルバムクローサー、11分のマボロシ “幻霧” では、儚き祈り、悲痛な叫びが霞む海霧の中、確実に希望という一筋の光がリスナーの元へと届くはずです。ワルツで始まりワルツに終わる45分。しかしどこか冷ややかな”光芒の明時” と “幻霧” の仄かな光明を比較した時、そこに更なる深淵が現れるのかも知れませんね。
今回弊誌では、Kent さん(Vo, Gt)と Katsuta さん(Gt)にインタビューを行うことが出来ました。先日出演を果たした日本が誇るハードコア/ポストロックの祭典 “After Hours” についても語ってくれました。どうぞ!!

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heaven in her arms “白暈” : 9.7/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【VIVA BELGRADO : ULISES】JAPAN TOUR 2017 SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CÁNDIDO GÁLVEZ OF VIVA BELGRADO !!

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One Of Spain’s Most Well Thought Screamo/Post-Rock Act, Viva Belgrado Will Come To Japan With Splendid New Record “Ulises” !!

DISC REVIEW “ULISES”

スペイン、コルドバから世界を見据える激情ハードコア/ポストロックバンド Viva Belgrado 待望の初来日が Tokyo Jupiter Records の招聘により決定しました!! スウェーデンの巨人 Suis La Lune、スペインの熱風 Viva Belgrado、そして日本の新たな才能 Archaique Smile, Of decay and sublime が集結する二夜は、激情と美麗が交差する奇跡の瞬刻となるでしょう。
「鮮明で美しいアトモスフィアと、スクリームのコントラストを創造するのが好きなんだ。」インタビューで語ってくれたように、Viva Belgrado は情熱的な激情サウンドと、ポストロックの壮観なる美装を兼ね備えた南欧の逸材です。すでに欧州ハードコア/ポストロックのメジャーフェス Primavera Sound, Fulff Fest, ArcTanGent に出演を果たし、2年間で5度のユーロツアーを行うなどその勢いはまさにとどまるところを知りません。
バンドがリリースした最新作 “Ulises” は、都市や空港、オフィスといった現代社会の日常を舞台とした21世紀の叙事詩です。インタビューを読めば Cándido が各所で “True” “Honest” “正直” “誠実” というメッセージを発していることに気づくでしょう。
「僕たち自身の叙事詩を伝えたかった。」と語る Viva Belgrado の目的地は決して薄っぺらなプレハブの仮設物語ではなく、正直で誠実なアティテュードを携えたリアルなストーリーだったのです。
成功を収めたファーストフルレングス “Flores, Carne” のフォローアップとなる “Ulises” は、前作のアートワークに描かれた優艶な花々が “Ulises” のアートワークにおいて奔放に成長を果たしたように、自身の鮮麗なスタイルを磨き上げ、伸び伸びとしかし着実にスケールアップを果たした意欲作に仕上がりました。
アルバムオープナー “Calathea” は Viva Belgrado のその芳醇な音楽を象徴する楽曲です。パンクの推進力、ハードコアの衝動、ポストロックの情景、スクリーモの直情は、カラテアの新緑のごとく純粋に溶け合いバンドのリアルを伝えています。楽曲の隅々まで見透せるほどにクリアなプロダクションも白眉ですね。
Cándido の声はまさにこの叙事詩の主人公だと言えるでしょう。スクリームし、ラップし、アジテートし、朗読するそのボーカルはまさしく規格外で、さらにその全てがスペイン語を介することにより唯一無二の魅力を発していますね。
時に幸福を、時に悲哀を、時に情熱を、そして常に真実を運ぶ彼のリズミカルなラテンの響きは、リスナーに想像を超えるインパクトを与えることとなるのです。
実際、”Por la mañana, temprano” や “Apaga la llum” は Cándido の存在が成立させた新たな風です。ローズピアノを使用しポストロックの論理で構築されたソフトで繊細な楽曲は、しかし同時にダンサブル。よりコンパクトでストレートな作品を目指したという “Ulises” において、パンクのエナジーで疾走する “Erida” のような楽曲と見事なコントラストを描き出していますね。
Cándido の囁くようなラップは、スペイン語のセクシーな語感を伴いながらエキゾチックで現代的なムードをもたらし、”Apaga la llum” では “En Tokio no paraba de nevar” / “東京では雪が止まなかったんだ” としっかり愛する日本についても触れています。
アルバムは DEAFHEAVEN の息吹を吸収した光のシューゲイズ “Ravenala” で壮大に幕を閉じました。
今回弊誌では、バンドのボーカリストでギターもプレイするCándido Gálvez にインタビューを行うことが出来ました。envy や La Dispute のファンもぜひチェックしてみて下さいね。どうぞ!!

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VIVA BELGRADO “ULISES” : 9.7/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【BAROCK PROJECT : DETACHMENT】JAPAN TOUR 2017 SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH LUCA ZABBINI OF BAROCK PROJECT !!

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Italian Prog Rock Bandiera, Barock Project Becomes More Modern, More Diverse, And Sometimes heavier With Their Newest Album “Detachment” !!

DISC REVIEW “DETACHMENT”

プログレッシブの血潮が脈々と流れ続ける、ルネサンス発祥の地イタリアに降臨したバンディエラ BAROCK PROJECT が、レトロとモダンを”超越”したタイムレスクラッシック “Detachment” をリリースしました!!名作 “Skyline” からよりオーガニックでマルチディメンショナルな境地へと辿り着いた75分の壮大なコンセプトアルバムは、アートワークの変化が示すように実にシリアスでパーソナル。ファンタジーの世界に別れを告げ、プログレッシブの新たな潮流ともシンクロする野心的で思慮深い作品に仕上がりました。
BAROCK PROJECT は J.S. Bach と Keith Emerson を敬愛するキーボーディストでコンポーザー、レコーディングも手がける若干33歳のマスターマインド Luca Zabbini が牽引するプログレッシブ集団。各所で高い評価を得た前作 “Skyline” からのインターバルで、バンドは不在だったベーシストとして Francesco Caliendo を得ましたが、2002年から在籍するバンドの声 Luca Pancaldi を失ってしまいます。
インタビューでも語ってくれたように、デモでは歌っていたものの自分をシンガーとして考えたことはなかったという Luca ですが、周囲の後押しもあり遂にリードボーカルも務めることを決断し傑作 “Detachment” は誕生したのです。
「”Prog” がエリートのもので、ほとんどがごく少数のコレクターにしか聴かれない状況を受け入れることに疲れ果ててしまったんだよ。」 それはまさに衝撃的な告白でした。プログロックという狭い檻に囚われているように感じていた Luca は、慣れ親しんだ領域を “Detachment” = “離脱”し、よりアクセシブルで多様性に満ちたモダン=多様な作品を制作することを決意します。
始まりの予感に満ちたピアノの小曲に導かれ、アルバムは “Promises” でその幕を開けます。イントロのエレクトロニカサウンドが好奇心を誘い、ボコーダーを使用した Luca のボーカルが複雑なドラムパターンとともに鮮やかに切れ込むとリスナーはそこに確かな変革の風を感じるでしょう。
中間部で見せるギターとハモンドのデュエルは実にアグレッシブでプロギーですが、同時にしっかりとデザインされた上で現代的にアップデートされレトロとモダンを行き交います。さらに芳醇なメロディーラインは引き継ぎつつも、ダークで内省的な Luca の声が生み出すリアリズムはポストプログの世界観にも通じていますね。
より幅広いリスナーへ届けるため多様性とキャッチーさにフォーカスしたという Luca のチャレンジは “Happy to See You” に結実しています。フォーク、ストリングス、そしてエレクトロニカを巧みに融合し独特のアトモスフィアを創出、極上のメロディーでリスナーの胸を激しく締め付ける手法は、まさに彼が人生を変えたアルバムで挙げている THE POLICE の Sting、例えば “Mad About You” を想起させますね。
TIGER MOTH TALE や CAMEL で活躍する Peter Jones がゲストボーカルで参加した2曲は中でも傑出しています。狂おしいまでに美しきバラード “Alone” はジャズのフレーバーとメランコリーを静かに湛え、”Broken” ではクラシカルやフォークを華麗にダイナミックに昇華。対照的な曲調ながら、アコースティック楽器のオーガニックな響きや張り詰めた空気感は共通しており、さらにそれこそがアルバムに貫かれた写実的なリリシズムの象徴だと感じます。
そして、Peter の John Wetton が憑依したかのような絶唱が司るメロディーの洪水はどちらの楽曲においても平等にリスナーの心を満たし遥かなる高みへと導くのです。
ソロワークやファンタジーに主眼を置く”プログレ” の世界から”離脱”し、アレンジメント、リアリズム、ダイナミズム、そして多様なコンポジションを武器に新たな旅へと繰り出した BAROCK PROJECT。アルバムに漂うある種の緊張感は、Luca のフラストレーションが表層化したものだったのかも知れませんね。
今回弊誌では Luca Zabbini に2度目のインタビューを行うことが出来ました。6月には MOON SAFARI とのカップリングで初の来日公演も決定しています。どうぞ!!

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BAROCK PROJECT “DETACHMENT” : 9.8/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【ETERNITY FOREVER : FANTASY】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH BEN ROSETT OF ETERNITY FOREVER !!

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Dance Gavin Dance, Chon And Strawberry Girls Get Together !! The Super Group, Eternity Forever Mixed Prog Rock And R&B With Their Amazing Debut EP “Fantasy” !!

DISC REVIEW “FANTASY”

ex-DANCE GAVIN DANCE, A LOT LIKE BIRDS の Kurt Travis、ex-CHON の Brandon Ewing、そして STRAWBERRY GIRLS で活躍する Ben Rosett という類い稀なる駿才が集結した新たなファンタジー、ETERNITY FOREVER が鮮烈なデビューEP “Fantasy” をリリースしました!!メンバーが誇る芳醇なキャリアを引き継ぎながらも、新たな冒険へと誘う作品は、近年稀に見る衝撃を伴って永遠に愛される不朽のエバーグリーンとなるはずです。
インタビューにもあるように、ETERNITY FOREVER の物語は昨年行われた CHON と STRAWBERRY GIRLS、そして POLYPHIA が一堂に会した “Super Chon Bros” ツアーから始まりました。
全世界で30万枚のセールスを上げる US インディーの雄 LOCAL NATIVES のベースプレイヤー Nick Ewing を兄に持つ Brandon は当時、CHON の一員としてツアーに帯同していました。Sumerian と契約し今や飛ぶ鳥を落とす勢いで邁進する、カリフォルニアの日差しを全身に浴びたマスマティカルでポジティブなプログレッシブ集団は、Camarena 3兄弟の次男が脱退したためベーシストを必要としていたのです。
一方、Ben Rosett が所属する STRAWBERRY GIRLS は、日本ではまだあまり馴染みのないバンドかも知れませんね。彼らもインストゥルメンタルを主戦場とする実験的なトリオ。ex-DANCE GAVIN DANCE のギタリスト Zachary Garren 率いる異能の集団は、可能性を発掘することにかけては定評のある Tragic Hero Records からダーク&セクシーな名作群をリリースしています。
ポストハードコア、マスロック、プログレッシブが魅力的に交差したツアーで Brandon と Ben は意気投合。Blue Swan, Equal Vision をセンターとしたシーンの中でもずば抜けた歌唱力を有する Kurt Travis との邂逅により、バンドはまさにスーパータレントブラザーズとしての生を受けたのです。
デビューEP “Fantasy” は4曲という僅かなボリュームにもかかわらず、圧倒的な躍動感と無限の可能性を感じさせる作品に仕上がりました。
アルバムオープナーでタイトルトラック、”Fantasy” の幕が上がるとリスナーは、Brandon が奏でる透明で繊細なギターの音色に酔いしれるでしょう。
ビビッドでリリシズムを湛えたその思索的な響きは、アイデアの潮流に乗り、宵闇の風に帆をはらませ無上のサウンドスケープを運びます。確かにここには CHON や DANCE GAVIN DANCE が持つ複雑にして軽快、難解にして耳馴染みの良い、モダンでイマジネーティブなセンスが開花しています。Brandon がベースのみならず、ギターのマイスターでもあることがここに証明されたと言えますね。
Kurt Travis の鮮烈で “黒い” ファルセットが切り込むと、楽曲は新たな顔を啓示しバンドの個性を主張し始めます。Prince を想わせるシルクのように滑らかで心地よいそのファルセットは、彼らの “Fantasy” に濃厚なブラックミュージックの風を誘います。Kurt が過去にどのバンドでも見せることのなかったその切り札は、プログレッシブでマスマティカルなロックとエモーショナルでトライバルな R&B やソウルが遂に溶け合うための重要な魔法の触媒となっているのです。
“Movies” の郷愁と慕情が入り混じった美しきポストロックのキャンパスが、Kurt のソウルフルな黒い歌唱で染めあげられ、未だ見ぬ奇跡の景色を宿す様はまさに ETERNITY FOREVER の真骨頂だと言えるでしょう。
4曲15分のEPを通して流れるのは、作品のプロデュース、ミキシング、マスタリング全てを手がけた Ben Rosett のイデオロギーかも知れませんね。STRAWBERRY GIRLS ではあの Kendrick Lamar のカバーも披露しているように、オープンで瑞々しい感性を持つ彼のアンテナは “Jazz The New Chapter” のマインドと通じます。
Hip Hop やネオソウルに接近し、ジャズの領域をブラックミュージックへと浸透、拡大。インプロビゼーションよりも、明確でソフィスティケートされたプロデュースを主張する Robert Glasper や HIATUS KAIYOTE の方法論を、Ben はプログレッシブロックの分野でチャレンジしたように感じられます。そして彼らの “New Chaper”は、コンパクトでキャッチー、エキサイティングで新鮮な、プログレッシブワールドの稀有なる地殻変動として”永遠永久に”歴史に刻まれることでしょう。
今回弊誌では Ben Rosett にインタビューを行うことが出来ました。今年一番のサプライズ。どうぞ!!

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ETERNITY FOREVER “FANTASY” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【GHOST BATH : STARMOURNER】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DENNIS MIKULA OF GHOST BATH !!

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The Most Mysterious Black Metal 2nd Generation, Ghost Bath Mixed DSBM And Japanese Video Game Music With Their Newest Album “Starmourner” !!

DISC REVIEW “STARMOURNER”

インパクトと芸術性、そして崇高さを内包する多種多彩なブラックメタル第二世代の中でも、一際ミステリアスな存在として異彩を放つ GHOST BATH。彼らがリリースした最新作 “Starmourner” は、DEAFHEAVEN や ALCEST, LITURGY が押し広げたジャンルの壁をさらに拡張する、遠大な可能性に満ちた作品に仕上がりました。
GHOST BATH は当初、中国出身のバンドだと考えられていました。メンバーの顔を伏せた上で “鬼浴” と名乗り、アルバムをリリースしたレーベル、そしてバンドのロケーションも中国としていたのですからそれも当然です。しかしインタビューにもあるように、実際はノースダコタに拠点を置くアメリカのバンドだったのです。
Bandcamp にロケーションを要求された時、”No Location” が受け入れられなかったため、地球の反対側にある中国を何となく選んだら中国のレーベルからコンタクトが来たというのがどうやら真相のようですね。Dennis はそういった一連の流れについて「人間よりも音楽それ自体により直接コネクトして欲しかった」からと説明してくれました。
しかし、2ndアルバム “Moonlover” のヒットとそれに伴うメガレーベル Nuclear Blast との契約により全てを秘匿することが困難になったバンドは、メンバーの顔写真とロケーション、そして首謀者 Dennis Mikula の名前だけは明らかにすることとなったのです。(とは言え現在でも公式にはその名前は “Nameless” とされていますが。)
そういった経緯を経てリリースされた3rdアルバム “Starmourner” は、インタビューで Dennis が語ってくれた通り、”Moonlover” を序章とするトリロジーの第2章。バンド名が象徴するように、DSBM (デプレッシブスイサイダルブラックメタル) を自称する GHOST BATH ですが、天国や天使にフォーカスしたというアルバムはポジティブでハッピーとさえ言えるサウンドを前面に押し出し、デプレッシブなムードと夢幻に対比させた異例のブラックメタル作品となりました。
作品は天駆けるピアノが流麗な旋律を紡ぐ “Astral” でその幕を開けます。他のブラックメタル第二世代と比較して GHOST BATH をさらに特異な存在としているのは、明瞭でキャッチーなメロディーがアルバムの主役となっている点でしょう。”Seraphic” のパワーメタル的とさえ言える優美で凛々しいメロディーの洪水と、そのカウンターパートとして示されるダークでヒステリックなブラストの海原が手を取り合い創造する類希なるカタルシスは決定的にユニークで、バンドの新たなチャプターの始まりを告げています。
勿論、アルバムには DEAFHEAVEN に通じるようなインディー、シューゲイズからの影響も存在します。”Luminescence” を聴けば GHOST BATH がパワーメタルの手法を周到にその光の世界へと取り入れていることが伝わるでしょう。同様のチャレンジを試みる ASTRONOID と現在ツアーを行っていることは、決して偶然ではありません。
アルバムを語る時、Dennis の日本に対する愛情を欠かすことは出来ませんね。実は以前弊誌に登場いただいた時点で、日本に新婚旅行で訪れることを誇らしげに伝えてくれていた Dennis。すでに簡単な日常会話はマスターしており、本気でこの国に移住を考えていると言うのですから、日本のメタルファンにとってそれは大きな、そして喜ばしいサプライズに違いありません。
Dennis の日本とその文化に対する真情は “Celestial” に結実しています。彼が愛してやまない、日本のロールプレイングゲームに起因する勇壮なファンファーレがブラックメタルのタッチで描かれた時、リスナーはノスタルジーと共に生じる多幸感、恍惚感が新鮮な情動であることに気づくでしょう。その場所からさらに楽曲は、ULVER が “Perdition City” で見せたシンセワークとアトモスフィアを伴って静謐でプラトニックな “Angelic” へと歩みを進めて行くのです。その神聖なまでに巧みな構成力はまさに別世界の高みにあると言えるでしょう。
「ブラックメタルとゲーム音楽を融合させる。」  “Thrones”, “Elysian” と聴き進める内に、リスナーはその野望が完遂されたことを知るでしょう。そこには “Final Fantasy”、”ゼルダの伝説” といった私たちのクラッシックが見事に GHOST BATH のブラックメタルとして新たな生を与えられているのですから。今回も Dennis がほぼ1人で制作したアルバムは、狂気とアトモスフィア、耽美と悲愴を携えた、新鮮で文字通りプログレッシブな音楽として世界に衝撃を与えることでしょう。
70分を超える壮大な神曲は、ジブリの世界観を宿し、不思議に悲哀を称えた鍵盤とドラムスのピース “Ode” で静かに幕を閉じます。
今回弊誌では、Dennis Mikula にインタビューを行うことが出来ました。6月には Ward Records から日本盤の発売も決まっています。どうぞ!!

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GHOST BATH “STARMOURNER” : 9.7/10

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NEW DISC REVIEW【JASON RICHARDSON : I】INTERVIEW WITH LUKE HOLLAND, JAPAN TOUR SPECIAL !!


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH LUKE HOLLAND !!

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Jason Richardson & Luke Holland, One Of The Most Talented Young Guns Will Come To Japan With Game Changing Debut Record “I” !!

DISC REVIEW “I”

24歳と23歳。瑞々しくハイセンスなモダンメタルフロンティアが輩出した俊英2人、Jason Richardson と Luke Holland がタッグを組んだ宿命の別世界 “I” のリリースは、至大のインパクトと共にユニットを遥かなる日いづる国、日本へと導くことになりました。
若干20代前半にして、2人の履歴書はすでに驚くほど充実しています。バークリー入学を蹴って ALL SHALL PERISH でツアーを経験し、BORN OF OSIRIS, CHELSEA GRIN では名作のキーパーソンとなったギタープレイヤー Jason Richardson。最先端の10指が紡ぐ印象的でコズミックなフレーズの数々は、まさに Djent/デスコアミュニティーの発展に欠かすことの出来ないフラッグシップであると言えますね。
一方のドラマー Luke Holland は、インタビューにもあるように、16歳で YouTube チャンネルを開設しセルフプロモートを開始します。今日までに総計で5500万ビューという驚くべき数字を叩き出した彼のプレイスルーカバー集は、Djent, メタルからプログ、エモ、パンク、ポップに EDM までまさに百花繚乱な世界観を独自のアレンジメントと精緻なテクニックで華麗に彩り、今では自らの価値を証明する Luke の貴重な名刺がわりとなっているのです。
実際、動画を見た TEXAS IN JULY から代役を頼まれ、ついには2013年に THE WORD ALIVE の正式メンバーに任命されたのですから、例えば日本の川口千里さんにも言えますが、プレイスルー動画の持つ力、インパクトは音楽シーンのあり方を変えて来ているのかも知れませんね。
“究極的には毎晩ソールドアウトのスタジアムでプレイしたい” と語る Luke が次なるチャレンジとして選んだ “I” は、同時に Jason Richardson がただギターマイスターであるだけでなく、コンポーザーとしても多様かつ至妙であることを証明した一級品に仕上がりました。Luke の言葉からは寧ろ、コンポーザーとしても優れていることが、参加を決意させたようにも読み取れますね。
ダークでシンフォニックな世界観を携え、難解なリズムアプローチと美麗なリードプレイがアトモスフィアの波を掻き分ける “Omni” でアルバムは幕を開けます。不安を煽るようなオーケストレーション、ギターとシンセサイザーの一糸乱れぬ華麗なダンス、そして見事にコントロールされたチャグワークは確かに BORN OF OSIRIS の設計図をイメージさせ、まさに楽曲が Jason Richardson を象徴する”I”であることを宣言していますね。
勿論、現在2人だけでツアーを行っていることからも分かるように Jason と Luke のコンビネーションも抜群。ギターの細かなフレーズまでユニゾンしてしまう Luke の繊細でアイデア豊富なドラムワークはアルバムを確実に一段上の領域へと誘っています。Luke の THE 1975 や THE CHAINSMOKERS をメタルと同列で愛してしまう軽快さこそ彼を際立たせているのです。
粒立ち群を抜いているピッキングの驚異的な正確性、選択する音や音符の意外性、タッピングとオルタネイト、スイープを巧みに使い分けるアルペジオの豊かなバリエーション、そしてストーリーを持った構成美。ソロワークに目を移せば、すでに Jason が世界のトップであると誰もが確信するはずです。メカニカルなシュレッダーのイメージが強いかも知れませんが、”Omni” 中間部の静謐なパートで炸裂するベンド、ビブラートのエモーションは実に扇情的で崇高とさえ表現したくなりますね。全く非の打ち所がありません。
PERIPHERY の Spencer Sotelo がゲストボーカルで参加した “Retrograde” からさらに “I” の世界は広がっていきます。これまでスクリームとのコンビネーションがほとんどだった Jason のギターですが、クリーンボーカルとの相性も決して悪くはありません。Spencer の突き抜けるように爽快でキャッチーなトレードマークは Jason のポップセンスをも見事に開花させ、VEIL OF MAYA の Lukas Magyar, PERIPHERY の Mark Halcomb というオールスターキャストで贈る名曲 “Fragments” にその成果を結実させています。
ポストロックやクラシカル、ブルースにサーフロックの感覚すら包み込んだ “Hos Down” の多様性から生じる魔法はまさに別格です。現代の Guthrie Govan と形容したくなるほどマジカルでエクレクティックな奇跡のコンポジションは、Jason の未来、 “Next Stage” にも多大な期待をいだかせてくれますね。
Nick Johnston, Rick Graham など様々なゲストを迎え、才能が時に融合し、時に火花を散らしたアルバムは、巨匠 Jeff Loomis とのクラシカルな乱舞 “Chapter Ⅱ” でまさに “Ⅱ” の存在を予感させつつ幕を閉じました。
今回弊誌では、7月に来日が決定した Luke Holland にインタビューを行うことが出来ました。POLYPHIA, さらには先日インタビューを掲載した12歳の天才美少女ギタリスト Li-sa-X も出演しますよ。どうぞ!!

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JASON RICHARDSON “I” : 10/10

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