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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【THE CALLOUS DAOBOYS : CELEBRITY THERAPIST】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH CARSON PACE OF THE CALLOUS DAOBOYS !!

“The Non-metal Elements Are Way More Important, That’s What Sets Us Apart. We Would Be Playing To 5 People At Local Shows Once a Month If We Didn’t Think Outside Of The Box And Push Ourselves To Be More Than Just a Heavy Band.”

DISC REVIEW “CELEBRITY THERAPIST”

「真の “ダークサイド” なんて存在しないんだよ。少なくとも、君や僕が同意しない側にいる人々にとって、彼ら自身はまったく “ダークサイド” ではないんだから。彼らは自分を社会ののけものとか殉教者だと思っているかもしれないけど、少なくとも自分から見て悪意ある行動をとっているわけではなくてね。真摯に話せる友人がいないから間違った道に進んでしまう」
ジョージア州アトランタのメタルコア・ハイブリッド、THE CALLOUS DAOBOYS。彼らはマスコア、ソフトジャズ、ボサノバ、オルタナティブ、ラジオ・ロック、エフェクトで歪んだヴァイオリンなど複雑なサウンドの嵐を生成し、メタル世界で大きな注目を集めています。そしてその台風の目には、Carson Pace がいます。
ステージ上のエネルギーレベルは桁外れで、PUPIL SLICER とのコラボレートや GREYHAVEN とのツアー、そしてバンドの待望のセカンド・アルバム “Celebrity Therapist” のリリースで、彼らの知名度は飛躍的に向上しました。重要なのは、世界に解き放たれたことで Pace が対話を始める機会を多く得られたということ。彼の叫びはなぜか、陰謀論やカルトに囚われた人たちにも素直に届きます。それはきっと、頭ごなしに否定から入ることをしないから。”ダークサイド” だと見下し、馬鹿にして、間違っていると断言することで、囚われの勇者たちはむしろ、自分が正しいと確信してしまうのですから。
「安倍晋三は去った。それが僕の公式見解だよ。右と左の争いについては、グッドラック!としか言えないよね。僕たちはその解決策をまだ見つけられていないけど、まあ解決策を探す人たちには幸運を祈るよ」
しばしば謎めいた歌詞のアプローチにもかかわらず、Carson は THE CALLOUS DAOBOYS にその生来のストーリーテラー、語り部の感覚を持ちこむことに成功しています。Carson の声は、パワーハウス的な叫びから、Mike Patton や Greg Puciato のような筋張った歌声へとドラマティックに変化して、ストーリーを紡ぎます。”Celebrity Therapist” における Carson のリリックは、盲目の愛国心、陰謀論、アルコール依存症、有名人の崇拝などを点と線で結びつけ、人は皆いずれかの悪徳に陥っていると主張しているのです。
例えば、”Title Track” では、彼は “有名人だと威張って話すリードシンガーの不条理さ” を論じていますが、この内観は逆説的に自己矛盾を抱えていることを自覚しています。つまり、Carson がハマってしまった “カルト” とはナルシズム。自分たちが FOO FIGHTERS ではないにもかかわらず押し寄せるエゴイズム。そう、陰謀論やカルトは決して他人事、宇宙人の話ではないのです。
「THE DILLINGER ESCAPE PLAN も MR. BUNGLE も僕の大好きなバンドだからね。でも、先日イギリスのインタビュアーが、僕らを90年代の Madonna と比較していたんだけど、あれは最高にクールだったね。僕はヘヴィーな音楽よりもポップスやエレクトロニック・ミュージックをよく聴くんだけど、それが間違いなく曲作りに反映されていると思うんだ」
カルトといえば、彼らの “アート・メタル” もカルト的なファンを集めています。”Celebrity Therapist” に収録されたよりプリズム的で、常識はずれな楽曲の数々は、流動性と万華鏡の輝きを保ちながら、常にメタルの常識を疑っています。つまり、彼らの教義とは、疑うこと。エレベーター・ミュージックをモチーフにした轟音スラッシュ “The Elephant Man in the Room”、ポップでロックなファンク・ベースと組み合わされたサイコなバイオリン “Beautiful Dude Missile”、サックスが冴える理路整然なポップとグロテスク・デス・モッシュ “What Is Delicious? Who Swarms”。そうした異端と驚きの数々は、メタルらしさ、メタルの定形を疑うことから生まれ落ちたのです。
今回弊誌では、Carson Pace にインタビューを行うことができました!「僕たちにとってはメタル以外の要素の方がずっと重要で、それが僕らを際立たせているんだ。もし、メタルという狭い箱から出なかったとしたら、自分たちを単なるヘヴィー・バンド以上の存在に押し上げなかったとしたら、月に一度、地元のライブでたった5人を相手に演奏することになっていただろうからね」 どうぞ!!

THE CALLOUS DAOBOYS “CELEBRITY THERAPIST” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【AN ABSTRACT ILLUSION : WOE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH AN ABSTRACT ILLUSION !!

“We Take Influences From Anathema, But Also From Brian Eno, Hammock And Ólafur Arnalds.”

DISC REVIEW “WOE”

「EDGE OF SANITY の “Crimson” からは大きな影響を受けた。もちろん、INSOMNIUM の “Winter’s Gate” からも影響を受けているよ」
1996年、スウェーデンの鬼才 EDGE OF SANITY が、40分1曲で構成されたアルバム “Crimson” をリリースしました。それは、アルバム全体を1曲で構成するというアイデア以上に、繰り返される説得力のあるテーマや作品の多様性が白眉で、エクストリーム・メタルという文脈において非常に特異なものに感じられたものです。
それから20年。同じスウェーデンの INSOMNIUM が同様に1曲のみの傑作 “Winter’s Gate” をリリースしました。彼らに共通するのは飽くなき知への探求と境界を押し広げる冒険心。幸運にも当時弊誌では、彼らにインタビューを行うことができました。
「アルバムには 90年代のスカンジナビアンメタルの雰囲気が多分に存在するね。僕たちが10代の頃に愛していたようなマテリアルだよ。EMPEROR, EDGE OF SANITY, DISSECTION, OPETH といったようなね」
スカンジナビアにはやはり、純黒で物憂げでプログレッシブな雪の結晶が眠っています。さらに5年以上が経過し、今度はスウェーデンの新鋭 AN ABSTRACT ILLUSION が、7つの章から成る60分1曲の壮大なエピック “Woe” で、メランコリックな美狂乱を披露します。
「今回は、AN ABSTRACT ILLUSION のよりアトモスフェリックなサウンドを追求したかった。今はそのスタイルがより心地よく感じられるようになり、だからこそ注目度も高まっているんだろう。ANATHEMA はもちろん、Brian Eno, HAMMOCK, Ólafur Arnalds からも影響を受けているんだ」
しかし、このアルバムが特別なのは、奇抜な方法論や、メタリックとメロディック、過激と難解、冷静とカタルシス、激情と友愛といった異なる要素をすべて対比させつつ使用していることだけではありません。それらはただはめ込むだけのパズルのピースではなく、さながら弧を描くように循環し、シームレスに、流れ込むよう注意深く織り込まれているのです。その画期的な手法は、大曲のまとまりのなさを解消するだけではなく、過去に彼らが比較されてきた OPETH や NE OBLIVISCARIS でさえ迷い込む “定型化” の迷宮からの脱出にも大きく寄与しています。
「”Woe” という単語には “大きな悲しみや苦悩” という意味があるんだけど、このアルバムの全体的なムードを表現するのに適していると思ったんだ。アートワークでは、女性が美しい花輪を身につけているんだけど、同時に茨の冠のように血を流しているのが見えるよね。この美と痛みの対比は、僕たちの音楽の大部分に当てはまることなんだ」
幽玄で崇高で孤高。アルバムには数多くの山と谷があり、繰り返される音楽テーマとその再演、そしてアトモスフィアのうねりはポスト・メタルやクラシックのダイナミズムを連想させ、60分の絵巻物にたしかな連続性を与えています。メインテーマとなるメロディーは非常に多くの変容を遂げ、そのすべてを把握することは不可能に近いでしょう。
さらに、インターバルの変化、3拍子の解釈、コード進行やトランスポーズなど、純粋に音楽だけをとっても飽きることのない面白さがここには秘められています。大きなテーマの違いが提案されたときに章は移り変わり、幕間はオーケストラやコーラス、電子音がちりばめられたインタルードがつないでいきます。すべては、花と血のために。
まさに “Woe” は、考える人のためのアルバムでしょう。科学と演劇の両方に対応し、その巧妙な対位法と劇的な性質によって驚きと畏怖を見事に両立しています。その核となる音楽はアトモスフェリック・デスメタルですが、このジャンルでおなじみの不協和音は影を潜め、定形を排除することで、彼らは KING CRIMSON や YES に対する挑戦権を得たのです。ツンドラからの賛美歌によって。
今回弊誌では、AN ABSTRACT ILLUSION にインタビューを行うことができました。「僕たちの音楽はメタルに支配されているわけではなくて、それがサウンドにも反映されているんだよ。メタルという制約に縛られている感じは全くないんだ」 どうぞ!!

AN ABSTRACT ILLUSION “WOE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【LILLIAN AXE : FROM WOMB TO TOMB】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH STEVE BLAZE OF LILLIAN AXE !!

“Now, We Are Being Called Prog Rock. I Actually Feel We Are In a Category Of Our Own, Having Influences From All Types Of Music.”

DISC REVIEW “FROM WOMB TO TOMB”

「僕たちはどのカテゴリーにも当てはまらないという点で、とてもユニークな存在なんだ。僕らが出てきた当時は、そういった音楽が流行っていたからヘアメタルというジャンルに括られていた。だけど今、僕たちは “プログ・ロック” と呼ばれているんだからね!あらゆるタイプの音楽から影響を受けている僕たちは、実は自分たちだけのカテゴリーに属していると思う」
LILLIAN AXE は、常にメロディック・ロックの境界線を越え続けてきたバンドです。セルフ・タイトルのデビュー作と、それに続く “Love + War” で名を上げた彼らは、RATT との深いつながりや WARRENT の Jani Lane が加入寸前だったこともあり、ポップな恩恵を受けつつもその黎明は “ヘアメタル” のカテゴリーに幽閉されていたとも言えます。
「”Psychoscizophrenia” が僕らの時間軸の中で大きなランドマークだったということには、僕も同意するよ。曲作りに関して、僕はあのアルバムで心が大きく開くのを感じたんだ。だからこのアルバムは、僕たちの歴史の中で決定的な場所になったと感じているよ」
その才能が完全に開花したのは、1992年、まさにヘアメタルの徒花となった “Poetic Justice” でした。後に、CROWBER や BLACK LABEL SOCIETY, GODSMAC などとも共闘するメンバーを輩出した LILLIAN AXE は、首領者 Steve Blaze が語るようにアメリカ南部の血脈、ルイジアナの神秘性をメロディック・ロックに配合していきます。骨太でありながら知的、ポップでいながらダークで、リリカルな玉手箱はここに一つの完成を見ます。
世はグランジ全盛。しかし、神秘の暗がりが出身地である LILLIAN AXE にとって、主流の逆転はむしろ吉。繊細なメランコリアや重量感を増したダークなアトモスフィア、ステレオタイプからの脱却を纏った “Psychoschizophrenia” は、時代の狭間に置き忘れるにはあまりにも印象的な辞世の句となったのです。
「”From Womb to Tomb” は、僕たちの決定的瞬間であり、作品だと感じているよ。LILLIAN AXE を最も完璧に定義するアルバムなんだ!君の言う通り、まさに素晴らしい映画のサウンドトラックになると確信しているよ。オーケストラや合唱団と一緒にライブをすることを話し合っているくらいでね」
解散と再結成を経てメンバーも大きく変わりましたが、Steve Blaze と彼のバンドは今も、メロディック・ロックの開拓者として実験と挑戦を重ねています。10年ぶりとなる “From Womb to Tomb” は文字通り Steve の自伝とも思える “ゆりかごから墓場まで” のコンセプトで、その魅力的な音の多様性によって高められた作品はメロディックもプログレッシブも超越した、サウンドトラック・ロック、濃密なストーリーをもたらしているのです。そうして典型的な心の葛藤以上に、”From Womb to Tomb” は世界の現状、人類の寿命、人生の栄光と苦悩を深く正直に明らかにしていきます。
エニグマティックで美しいピアノセクション、スタッカートのストリングス・アレンジ、鳴り響く鐘の音に混ざり合い、溶け出す重暗いリフと濃密なコーラス、崇高なボーカル・ライン。メロディックな光沢とパワフルなメタルの毒気は、プログレッシブな探求やサイケデリックなクワイア、アコースティックの浪漫によって典型から遠く離れて、音楽的な賞賛を一身に受けとめます。
物語の終幕は “Ascension”。心と魂の再生はまさしくこの感嘆符のような作品の象徴です。メランコリックな歌声が響き渡り、神聖な終わりへと向かっていく。華やかさと壮大の間を行き来するこの曲は、古と新、子宮と墓、誕生と死に歴史の反復を投影しながら次の輪廻へと誘うのです。メロディック・ハードからの PAIN OF SALVATION に対する解答。素晴らしきリスニング体験、素晴らしき人生観。
今回弊誌では、Steve Blaze にインタビューを行うことができました。「僕のソロは、それぞれ楽曲のストーリーの重要な部分として取り組んでいるからね。ただ、技術的な強みを誇示するためではなく、音楽的、感情的に曲にフィットするように創作しているんだ」どうぞ!!

LILLIAN AXE “FROM WOMB TO TOMB” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【TOXIK : DIS MORTA】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JOSH CHRISTIAN OF TOXIK !!

“I Think When You Realize You’ve Got a Knack For Something It’s Seductive You Want To Keep Pushing It To See Where Your Boundaries Are. The Expression Is What Carries Us As Artists.”

DISC REVIEW “DIS MORTA”

「レーベルは METALLICA と SLAYER の波を利用することばかり考えていたみたいだけど…特にアメリカではね。純粋に僕たちは早すぎたんだ。たしかに TOXIK はスラッシュの波に乗ったけど、これってスラッシュなの??それが完璧な例えだよ。初期の TOXIK の75%は超高速でシンコペーションしたテストステロンで、残りの25%はメロディとダイナミクスだったから。スラッシュはみんなの中にある最も近い定義だっただけなんだと思う」
80年代半ばにギタリスト Josh Christian によって結成されたアメリカのスラッシュメタル・バンド TOXIK はメタルにとって早すぎた “毒気” であり、勇気ある開拓者でした。デビュー作 “World Circus” の無慈悲な猛攻で MEGADETH や ANTHRAX, それに SANCTUARY といった猛者たちを震えあがらせた彼らは、続く “Think This” でメタルの羽化を促しました。例えば、CORONER が、例えば WATCHTOWER が、例えば MEKONG DELTA が、例えば ARTILLERY がそうであったように、TOXIK もまたメタルのスピードとスリルを奇想天外な知と魑の世界に誘いました。中でも、彼らの精巧な技巧とプログレッシブな創造性は群を抜いていました。
「自分の限界を知るため挑戦することは魅力的だからね。そうすることが、僕たちをアーティストたらしめているとも言える。”Think This”…これは無謀で純粋な芸術的主張だった。レーベルはそれを好まず、ファンは “奇妙だ” と言った…だから当時は崖から飛び降りたようなものだったけど、今となってはこのレコードが多くの人にとってベンチマークとなっているのだから、振り返ってみると正しいことだったように思えるね」
結局、商業的な成功を収めることは叶わず、92年に解散に至った TOXIK。しかし、Josh が語るように彼らの無謀とも思える挑戦は決して無駄ではありませんでした。”Think This” の異様はいつしか威容へと姿を変え、CYNIC, ATHEIST, 後期 DEATH, MESHUGGAH、さらに最近では VEKTOR といったゲームチェンジャーたちの指標となりました。そうして彼らは、メタルの多様性や寛容さを開花させていくこととなります。
「たしかにこのアルバムには時間がかかったけど、これから僕たちは進み続けるし、実はこの現代版の僕たちをもっとたくさんマテリアルがあるんだよ。残酷だけど超美しいものがたくさんあるんだ」
20年間沈黙を守っていた TOXIK ですが、2013年には世界の舞台に戻り、ダイナモをはじめとする数々のフェスティバルに出演。その後、新しくなったバンドで “In Humanity”, “Breaking Class”, “Kinetic Closure”の3枚の EP をリリースし、”World Circus” と “Think This” の再録を披露。そして今、2022年、TOXIK は前作から33年という壮大な年月を経て、3rdアルバム “Dis Morta” を完成させました。
大胆に、苛烈に、衝動的に疾駆する “Dis Morte”, “Feeding Frenzy” のオープニング・ダブルは、得意の社会的・政治的なトピックを題材にしながらトラディショナルなモッシュピットを構築します。”発情した QUEEN”、そんな作品の世界観を植え付けながら。もちろん、MORDRED にも通ずるクロス・オーバーの美学も TOXIK の個性ですが、OVERKILL にも匹敵する強度と灼熱のペースも同様に彼らの真骨頂。スラッシュに対する鬼気迫る飢えは、33年の空白を埋めて余りあるターボチャージャーの衝撃。
それにしても、Allan Holdsworth のソロ曲を無理やりスラッシュメタルと悪魔合体したかのような後者は壮絶。Alex Skolnick だけが持て囃されるスラッシュ・ギターの世界は不公平だと言わざるを得ません。HEATHEN の Jim DeMaria もスーパー。
一方で、緩やかななパッセージ、ミドルテンポの迷宮、プログレッシブな情熱が巧みなギヤチェンジを交えて融合した “Hyper Reality” は、新たな地平への大胆な挑戦として際立っていて、TOXIK が未だ実験とサウンドスケープの拡張を恐れていないことを改めて証明します。同様に、古のプログレッシブを引用した “Chasing Mercury” やジャズ・バラードが加速する “Devil in The Mirror”, NEVERMORE の異形にも接近した “Creating the Abyss” も TOXIK にしか不可能な境界の侵食でしょう。そう、これはまごう事なき “Think This” の続編。
今回弊誌では、Josh Christian にインタビューを行うことができました。「僕の父は、僕が生まれる前に日本にいた頃の話をしながら、日本の文化をロマンチックに語ってくれていたからね。父は日本の社会とその組織を非常に尊敬していて、アメリカ社会についての会話でしばしば対比的な例として使っていたんだよ…。80年代、NYの子供たちは日本の影響を受けつつあって、特に僕はゲームに夢中で、他にもコミック、アニメ、音楽などで影響を受けたんだ。当時、日本に夢中になっていたから “Tokyo” という名前がフィットしていたんだよ。今日でも、TOXIK から日本の影響を聴くことができるよ」 どうぞ!!

TOXIK “DIS MORTA” : 10/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【MEGADETH : THE SICK, THE DYING…AND THE DEAD!】


COVER STORY : MEGADETH “THE SICK, THE DYING…AND THE DEAD!”

“For The First Time In a Long Time, Everything That We Needed On This Record Is Right In Its Place”

THE SICK, THE DYING…AND THE DEAD!”

MEGADETH は復讐と共にある。苦難の度に強くなる。長年 MEGADETH と Dave Mustaine を追い続けたリスナーなら、そうした迷信があながち世迷いごとではないことを肌で感じているはずです。METALLICA からの非情なる追放、薬物やアルコール中毒、Marty Friedman の脱退、バンドの解散、Drover 兄弟を迎えた新体制での不振…実際、厄災が降りかかるたびに、MEGADETH と Dave Mustaine は研ぎ澄ました反骨の牙で苦難の数々をはね退け、倍返しの衝撃をメタル世界にもたらし続けています。
逆に言えば、MEGADETH という船が順風満帆であることは稀なのですが、2016年の “Dystopia” 以降の期間は、彼らの波乱万丈の基準からしても、非常に荒れた展開であったと言えるでしょう。まず、”Dystopia” でドラムを担当し、当初はアルバムをサポートするためにバンドとツアーを行っていた Chris Adler が、2016年半ばに当時は本職であった LAMB OF GOD とのスケジュールの兼ね合いで脱退せざるを得なくなります。後任には元 SOILWORK の Dirk Verbeuren がヘッドハントされました。
そうして2019年、次のアルバムの制作が始まった矢先、Dave Mustaine は咽頭癌と診断され、50回以上の放射線治療と化学療法を余儀なくされます。
「今は100パーセント大丈夫だと思う。2020年の10月に医者からOKが出たからね。3年目の節目を迎えるはずさ。それはかなりクールなこと。治療、栄養、そして病院の外で行わなければならない個人的なことまで、すべて一生懸命取り組んだからな。医師たちは、癌を治療するために俺にとって本当に残酷なプログラムを組んでくれたよ。手術をせずにがんを退治しようというのだから仕方がないけど。
俺は医師たちに、Eddie Van Halen が舌の一部を切り取ったのが少し気になると言ったからね。歌えなくなっちゃ困ると。IRON MAIDEN の Bruce Dickinson や Michael Douglas も罹患していて、俺もその一員になったってことさ。素晴らしいプログラムが用意されて、担当医は本当に素晴らしい人たちだった。医者に診てもらって、健康に異常がないと言われれば、普通は本当にありがたく思うもの。もう、俺の癌には何の力もない。ファンが落胆しないようにしたいからな。医師は俺が歌い続けることがいかに重要かを知っていたよ」

無事、寛解にはいたったものの、その後 Covid-19 の大流行が起こり、アルバムの進行はさらに遅れます。決定打は2021年春。長年のベーシストで Mustaine の右腕であった David “Junior” Ellefson が、”性的不祥事” を起こしてしまうのです。バンドで最も品行方正、神父にして良い父親と思われていた Ellefson の性的なスキャンダル。その影響は大きく、バンドはすぐに解雇という判断を下します。そうして、TESTAMENT などで活躍を続けるフレットレス・モンスター Steve Di Giorgio が彼のパートの再レコーディングを行うこととなりました。
「俺は Ellefson を1000回でも許す。だけどもう共に演奏することはない。もう彼のことは本当に話さないよ。面白い話をするのは好きだけど、そういう話をするのは本当に嫌なんだ。
Steve への交代は、多くの理由からそうする必要があったから。外から見ているだけで、俺が間違ったことをしたと言っている人がいたけど、なあ、あの事件が例え真実でなかったとしても、俺の人生にあんなクソ騒動はいらないと思ってたんだ。重要なのはバンドで、バンドには4人のメンバーがいる。クルーがいる。ビジネスの関係もある。そしてその全員の家族たちも。リーダーが間違った決断はできないよ。
Steve は素晴らしい新鮮な空気を吹き込んでくれたよ。最近インタビューを受けたんだけど、女の子が “どうして Dave Ellefson のパートを変えたんですか” って言うんだ。それで俺は思ったんだ。”オマエはバカなのか?あんな事があったんだ、パートを変えなきゃいけないだろ?”ってね。彼女には言わなかったけど、そう思っていたんだ。
Steve Gi Giorgio も (後任の) James Lomenzo も2人とも、一緒にいて本当に楽しい人たちだよ。Steve のことは知らなかったけれど、James と同じくらい一緒にいて楽しいヤツだと思った。みんなが経験したあの時期は、少し気難しいものだったよな。でも、俺たちは正しいことをしたかったんだ。誰もすべての事実を知らないけど、それで誰かを引き抜きたいとは思っていなかったから。TESTAMENT は俺の友人だから。
Steve は偉大なベーシストだけど、俺ら(METALLICA)が TRAUMA から Cliff Burton を引き抜いたときのことを覚えてるよ。TRAUMA はそれほど良いバンドではなかったけど、それでもバンドにはメンバーがいて、彼らの人生はその時に変わってしまったんだ。もし誰かを雇うなら、誰かから盗んでいないことを確かめたかったんだ」

そして今、”Dystopia” から6年半以上、MEGADETH 40年の歴史の中で最も長いインターバルを経て、”The Sick, the Dying… And the Dead!” がついに解き放たれました。このアルバムの制作にまつわるトラブルや苦悩の山を考えれば、MEGADETH のリベンジが倍返し以上のものであることは、ファンにとって容易に想像できるでしょう。そうして実際、Dave Mustaine は逆境をものともせず、12曲のスリリングで知的で瑞々しい破壊と衝動の傑作を携え戻ってきました。MEGADETH のリーダーのレジリエンス、驚異的な回復力、反発力を再度証明しながら。
「この曲は何人もの人から “パンデミックの話だろ?” と言われたことがあるけど、そうではないんだよ。黒死病についてなんだ。歌詞はとても分かりやすいものさ。かなり明確にストーリーを語っているからね。映画を観たことがあるよ。メアリー・シェリーの “フランケンシュタイン” で、ロバート・デ・ニーロとケネス・ブラナーが出演していた。映画の中でペストについて話している部分があったんだけど、その部分がとても不気味だったのをはっきりと覚えている。童謡の “Ring Around the Rosie” が出てくるんだよ。”Ring-a-ring-a-roses, A pocket full of posies, Atishoo, atishoo, We all fall down.” という歌。”Go to Hell” みたいに童謡を加えたかった。これは黒死病の時代の子供向けの童謡で、死体が悪臭を放つため、悪臭を隠すためにポージー (薬草、花束) を大量に用意しなければならなかったことから、ポージーをポケットに入れることを題材にしたもの。黒死病にかかった人々は、病気を取り除くために死体を火葬しなければならなかったんだ」

COVIDパンデミックの暗さと悲観を反映しつつ、過去の疫病をも呼び起こす禍々しくもハードな開幕のタイトル・トラックから、鞭打つような帰還の狼煙 “We’ll Be Back” まで、Dave Mustaine と MEGADETH は逆境や病から完全に復活しただけでなく、まだ自分の仕事を地獄のように楽しんでいます。
「俺が癌の診断を受けたとき、それが MEGADETH の終わりで、Dave Mustaine の終わりだと思った人たちがいた。しかし、そんなことはあり得ないと思っている信奉者たちは、今回の旅の一部、あるいは全部を一緒に過ごしてきてくれた。多くの人が、俺が癌になったとき、癌がかわいそうなくらいだと言ってくれた。彼らは、俺が戻ってくることを知っていたのさ。
俺は、このレコードで自分を追い込み、最高の歌と演奏を込めてやると決めた。これまでよりも、1パーセント進化する挑戦をね。俺が自分の力と対話し、耳を傾けることに費やした最も重要な時間は、俺の年齢(61歳)では、より速く、より優れた音楽を生み出し続けることはできないかもしれないという弱気だった。でもね、この仕事を始めた頃は若かったけど、その頃に重要だったことは今でも重要で、それに対する考え方は変わっていないんだ。
ただ、シナリオの中で自分がどう位置づけられるかは変わってきているかな。”反抗期は若者の遊び” というのは有名な言葉だけど、俺は人より少し反抗するのが好きな傾向がある。大抵のロッカーは、少し年をとって少し成功すると、車道にメルセデスを置いてアナーキーのシンボルを描くような、詐欺師のような臭いがしてくる。偽善としか言いようがない。
インスピレーションとメンタリティーは、1日1%、良くなるでいいんだよ。それでみんな大喜びさ。今、俺たちは最高の人材を集めている。最も高価というわけではないけど、最高のクルーたちだ。今や、俺たちは皆プロフェッショナル。彼らの仕事ぶりを見るのが何よりの楽しみなんだ」

例えば、”Life in Hell” の「2、3杯飲めば大丈夫/2、3錠飲めば世界が消える/どうせ死ぬんだから」という歌詞を、悪意に満ちたフランク・シナトラのように唸る彼の顔には、無粋な笑みが浮かんでいるにちがいないのです。そうして迎える6分半の軍事大作 “Night Stalkers” には、偉大なる Ice-Tの激しいラップが装備されています。BPM190で、米軍第160特殊作戦航空連隊という高度に専門化した部隊の英雄的行為にリリックと威厳で取り組みました。
「初めて会ったとき、Ice-T はちょうどキャリアをスタートさせたところだった。彼はかなり物議をかもしていた。当時、ラップ・アーティストにはある種のメンタリティがあり、特に Ice-T が1992年に “Cop Killer” みたいな曲を出したときはそうだった。彼は大衆を偏向させていたんだよな。俺は、彼は才能があり、彼が歌っているのは芸術だと信じていた。彼の曲の一つ、”Shut Up, Be Happy” を何年もイントロ・テープとして使っていたくらいでね。”Night Stalkers” での彼のパートはクールだ。俺は、個性的でわかりやすい声と言い回し、それにストリートのメンタリティと言葉を持っている人が欲しかったんだ。彼なら、ヘリに乗り込んで準備をするのに最適な人物だと思った。
それに、メタルとヒップホップ、2つのアートを融合させれば若い奴らにも響くだろ?子供たちがヒップホップに夢中なのは、友達が夢中になっているからだ。音楽を聴くことにかんして、個性的でない子供たちがたくさんいるんだ。友達が聴いていないものは聴きたくない、仲間はずれにされたくないという人がたくさんいる。俺が10代の頃、IRON MAIDEN や AC/DC を聴いていた時はとてもハードでヘヴィだったから、友達はどう考えているかなんて気にしなかったがね」

Sammy Hager もボーナス・トラックで、自身の楽曲のカバーでゲスト参加しています。
「Sammy の曲のカバーソングをやったんだ。多くの人は、VAN HALEN で活動する前の Sammy を知らないんだ。でも俺は、彼が MONTROSE でプレイしていた頃から知っているし、その後、ソロ・キャリアも知っている。正直、VAN HALEN のあの頃の曲にはあまり納得がいかなかったんだけど、MONTROSE で Sammy の歌を聴いて以来、あの人は歌えるなぁと思っていたからね。彼は俺の大好きなシンガーの一人だったんだ、ずっとね」
“The Sick, the Dying… And the Dead!” には、暗闇と暴力、そして痛烈な社会批判が溢れています。原子力発電所の事故によって引き起こされた壊滅的な影響の中で、安全性を必死で手繰り寄せる “Dogs of Cernobyl”。”唾液が噴き出し、嘔吐し、ボウルを溢れさせる/悔い改め、神に問う、あなたはまだ私の魂を欲しているのか?”
さらに、”Junkie”, “Celebutante” といった激しいトラックでは、NWOBHM やクラシックなメタルのスタイルが MEGADETH にどれだけ影響を与えたか、それを隠そうともせず彼らの悪態を正当な形で体現しています。
「オランダで女の子が MEGADETH のロゴの入った服を着てたから、俺のバンドだと言ったんだ。そしたら、近寄るな、変態!みたいな顔してシッシッと光の速さで手を振る。違う、違う、俺のバンドだからと写真を頼んだが、知らない!嫌だとさ」
特に、”Celebutante” は富と名声のためなら何でもするセレブリティの愚かさを皮肉った楽曲。質実剛健な MEGADETH とは正反対の場所にいます。まさに Mustaine の “反発力” が炸裂した最高のストーリー。

「MEGADETH のギタリストに必要なのは Attitude (態度), Ability (能力), Appearance (見た目)だ。まずは態度が大事だ。MEGADETH は音楽が何より優先だから、バンドに始まりバンドに終わる生活が必要。無論、能力がなければ無理だがね。友人同士の馴れ合いでは成功しないから」
もちろん、ムステインが船を操縦している間、目的地に向かうためには良い乗組員が必要です。そして、Verbeuren とリードギタリスト Kiko Loureiro は明らかに、巧みに創造し、大胆に冒険する完璧な船員となりました。重要なのは、Loureiro が12曲中8曲でコ・ライターとしてクレジットされていること。彼のクラシックギター演奏は、広大な “Dogs of Chernobyl” に東欧のテイストを付与し、難解なリフとジャズ・テイストのソロワークは、”We’ll Be Back” と “Night Stalkers “のまさに推進力。また、ミッドテンポのタイトル曲では、Mustaine の唸るようなヴォーカルに呼応したコール&レスポンスを聴かせるなど、彼の存在感は大いに増しています。
「MEGADETH との2枚目のアルバムだけど、Dave とは2015年から7年間一緒にプレイしている。だから、様々な国、様々な年齢のファンに会うことができる。古い曲も新しい曲も演奏するし、業界の人たちにも会うし、もちろん Dave の家族、バンド・メンバー、マネージメント、レーベルの人たちにも会うんだ。だから、もう内輪の付き合いみたいなもんだよ。
でもね、ギター・ソロは、この7年間ほとんど変化していないんだ。ギターソロは、自分自身の表現のようなものだ。ただ自分の楽器を演奏すればいいだけだから。ただし、MEGADETH の遺産にふさわしい曲や、Daveを喜ばせ、ファンを喜ばせるような曲を作ることは、ある意味、このアルバムでもっと簡単にできたんだ。バンドをより理解することができたし、それが大きな違いだったね。VAN HALEN のリフを持ち込んだりはしないよ (笑)」

Loureiro の野生に知性を組み込んだメロディックなスタイルは Mustaine のマニアックなクランチと見事にマッチし、Verbeuren のリズミック・アプローチは、彼が共作した “Junkie” や、トライバル・パムリングを中心とした短い間奏曲 “Psychopathy” などで顕著に効果を発揮。Di Giorgio の妙技を堪能できる場面も多々あり、さらに “Dystopia” の共同プロデューサーである Chris Rakestraw は、”The Sick, the Dying… And the Dead!をでも同じ役割を担いながら、Mustaine とクルーの活力と凶暴性を最高の状態で捉えていきました。
「人生は厳しい。勝ち組になるか、そうでないか。人は敗者と呼ばれるべきではないと思う。でもな、2位になろうとすることは、敗者ではないんだよ。常に自分を高めようと努力する限り、完走した者は勝者なんだ。それはとても簡単なこと。人生を1%改善するだけで、3ヶ月ちょっとの短い努力で、仕事ぶりでも、大切な人に対してでも、子供に対してでも、まったく違う人間になることができる。俺はレコードや出版契約をすべて全うしたよ。俺らのステージや地位にいるバンドで、そんなことをするバンドがどれだけいるだろうか?そんなことはしない。普通は延長するか、そもそも膨大な契約とたくさんのオプションがあって、自由になることはないだろう。だが、俺は本当に抜け目のないビジネスパーソンで、できるだけ早く自分たちの未来を確認することができるのさ」
MEGADETH のように長い歴史を持つバンドの場合、批評家の間では常に最新アルバムをバンドの最も象徴的な作品と比較したり、後期の高水準作品として認められるものは何でも “…以来最高の作品” と呼ぶ傾向があります。しかし、”The Sick, the Dying… And the Dead!” が MEGADETH の膨大なディスコグラフィーの中でどのような位置づけにあるかを正確に知るのは時期尚早であり、現時点で本当に知るべきことは、この新作が素晴らしいかどうかだけ。安心して欲しい。このアルバムはただ、ただ、本当に素晴らしい!
「本当に久しぶりに、このアルバムには必要なものが、正しい場所に、すべて揃っている」

参考文献: IRISH TIMES: Megadeth’s Dave Mustaine: ‘I said, This one’s for the cause. We had to be taken out of the place in a bulletproof bus’ 

LOUDWIRE:Dave Mustaine Didn’t Want to Poach New Megadeth Bassist From Another Band Read More: Dave Mustaine Didn’t Want to Poach New Bassist From Another Band

UCR:Why Kiko Loureiro Isn’t Bringing Van Halen Riffs to Megadeth Read More: Why Kiko Loureiro Isn’t Bringing Van Halen Riffs to Megadeth |

REVOLVER:REVIEW: DAVE MUSTAINE IS BACK WITH A VENGEANCE ON MEGADETH’S ‘THE SICK, THE DYING… AND THE DEAD!’

NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PENSEES NOCTURNES : DOUCE FANGE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH LEON HARCORE A.K.A. VAEROHN OF PENSEES NOCTURNES !!

“Pensees Nocturnes Is Drinking a Glass Of Champagne On The Edge Of The Abyss, Where Everything Is Falling.”

DISC REVIEW “DOUCE FANGE”

「僕は音楽を優先し、バンドをケースバイケースで判断し、なるべくカタログ化しないようにしているからね。インターネットの発達により、国籍という概念は音楽においてもはや意味を持たなくなったと思う。だから、たとえフランスに強力なブラックメタル・シーンがあるように見えても、フランス人であることに特に誇りを持つことはないんだ」
メタルヘッズがブラックメタルを想像するとき、ノルウェーのフィヨルドや教会を思い浮かべるのか一般的でしょう。しかし、”実験好き” な人たちはその限りではありません。PLEBEIAN GRANDSTAND, DEATHSPELL OMEGA, BLUT AUS NORD, CREATURE, そして IGORRR。バゲットとエスカルゴとエッフェル塔の国は、確実に今、そのトリコロールに血と知の漆黒を加えつつあります。
それでも、PENSEES NOCTURNES の首謀者 Leon Harcore A.K.A Vaerohn は、音楽に国籍はないと嘯きます。レッテルを剥がす、固定観念を疑う、欺瞞の美を笑う。それこそが彼らの目的なのですから。ある意味、そのニヒリズムとシニシズムこそ、フランスらしいと言えなくもないでしょうが。とにかく、この夜想と不安の申し子は、圧倒的なブラックメタルの核を、オーケストレーション、ジャズ、フォーク、エキセントリックな装飾、そして皮肉にもセーヌの滸やルネサンス、それにアール・ヌーヴォーでコーティングした裏切りの饗宴を催しています。
「なぜ好きな楽器を使えるのに、3つや4つに楽器を限定してしまうんだい?PENSEES NOCTURNES はライブと違ってスタジオでは常にワンマンバンドとして活動しているから、好きなものを何でも試すことができるのさ」
常識を疑い、当たり前をせせら笑う PENSEES NOCTURNES にとって、”ノン・メタル” な楽器の使用はある意味至極当然。ヴァイオリン、フルート、クラリネット、アコーディオン、トランペット、トロンボーン、サックス、ディジュリドゥ、ティンパニー、コントラバス、ハーモニカなど雑多なオーケストラと通常のメタル・サウンドが混在するインストゥルメントの狂気は、あのシルク・ド・ソレイユさえも凌駕します。ただし、Leon のサーカスは安全と死の狭間を良く知っていて、様々な要素をバランスよく取り入れながら、地獄の綱渡りを渡り切って見せるのです。
「PENSEES NOCTURNES は明らかに唯物論的な音楽であり、今ここで聴くべき音楽だ。憂鬱でもなく、無邪気な喜びでもなく、美しくもなく、酷くもなく、現実的で悲劇的な人生のビジョンだから。むしろ、僕たちの存在に対するニヒリズムと笑いのシニシズム (慣習の否定。冷笑主義)なんだよ」
フランスを笑う狂気のブラックメタル・サーカス “Douce Fange” は人間大砲の音で開演し、”Veins Tâter d’mon Carrousel” ですぐさま狂騒曲の舞台を設定します。芝居がかった叫び声は同じフランスの IGORRR を想起させ、刻々と変化する音の曲芸は無限にアクロバティック。ブラスセクションで始まる “Quel Sale Bourreau” は、DIABLO SWING ORCHESTRA にも似て、曲芸師のように様々な演目を披露。IMPERIAL TRIUMPHANT 的なブラックメタルのカオスとオペラが戦う様は、まさにニューヨークとフランスの決闘。そうして次々に、無慈悲なピエロたちはジャンルの境界線を歪めながらメタル化したワルツを踊り、笑い笑われながら即物的な享楽を与え、漆黒のアトラクションを血と知に染めあげていきます。
「キリスト教が現世の死である以上、ブラックメタルは生でなければならない。つまり、ブラックメタルは物質主義的な快楽であるべきで、それ以上の何かを望むことなく、今あるわずかな人生を楽しむことだ。 神秘的、超越的な側面も、サタンも、神も、どんな信念もない。 ただ、現実が、可能性と限界を伴ってあるがままにある。 その観点からすると、PENSEES NOCTURNES は他のどのバンドよりもブラックメタルなんだ」
Leon にとって、ブラックメタルの反語はキリスト教。天国に行くという目的のために、現世における享楽を放棄して、真面目に粛々と生を全うするその教義は彼にとって全くのナンセンス。美しいとされる “人生を楽しまない” 生き方に Leon は疑いの目を向け、快楽と狂気と反骨の三色に染まったトリコロールの旗を振ります。ブラックメタルこそが生。重要なのは、一見、ふしだらで退廃的で危険で強欲にも思えるこのサーカスには、実のところ何の強制力もありません。
今回弊誌では、Leon Harcore A.K.A. Vaerohn にインタビューを行うことができました。「PENSEES NOCTURNES は、すべてが落ちていく深淵の縁でシャンパンを飲んでいる」名言ですね!タイトルはもちろん、シャルル・トレネの “優しいフランス” のオマージュで  “汚れたフランス”。どうぞ!!

PENSEES NOCTURNES “DOUCE FANGE” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【DYMBUR : CHILD ABUSE / RAPE CULTURE】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DYMBUR !!

“We Cannot Expect To Change The World. We Are Just a Small Band From a Remote Corner Of The World So If Our Music Can Touch Just a Few Hearts And Bring About Just a Small Change Then We Would Consider Our Duties Fulfilled.”

CHILD ABUSE, RAPE CULTURE

「バンド名の DYMBUR はカシ語源で、英語では “Fig Tree” “イチジクの木” と訳される。カシ族は、インド北東部のメーガーラヤ州に住む先住民族なんだ。イチジクの木とは、古い枝から新しい葉が新しい形を形成する事、乾燥した期間の後に再生し新たに成長する能力から、再生、進歩、闘争の後の勝利への進化を象徴しているんだよ」
インド北東部の高地シロンを拠点とする DYMBUR。雨と雲に愛され、神の庭とも称される熱帯雨林を守るカシ族の申し子は、この10年でそのバンド名イチジクの木のように再生、進歩、そして勝利を手にしてきました。そもそもは、Djent とプログレッシブ・メタルに専念するバンドとして、国内のメタル・シーンで存在感を示していた彼ら。しかし、2020年になり、バンドは自分たちの音楽スタイルを一歩進めることを決め、その場所にカシ族の伝統音楽を融合させるようになったのです。
「僕たちは Djent/Metal とカシ族の伝統楽器を融合させ、独自のサウンドを作り上げることを決意し、ジャンルに “THRAAT” という言葉を加え、”Khasi Thraat Indian Folk Metal” と名づけることになった。例えば、デュイタラ(カシの小型ギター)は、8弦ギターと調和するように改造しなければならない。伝統的なデュイタラには4本の弦が張られているけど、僕たちは6本の弦に変更し、ナイロン弦を使うようにした」
今では、”Khasi Thraat Folk Metal” というアイデンティティで活動している DYMBUR。”Thraat” という新鮮な言葉は、長い年月をかけて、伝えるべきメッセージによってさまざまな形をとりながら熟成されてきました。”3連符の連鎖からの突然の停止”。DYMBUR 特有の音やグルーヴを見事に表現するその語感は、Djent における Thall と近い部分もあるのかもしれません。とにかく、今インドで “Thraat” とタグ付けすれば、それは即ち DYMBUR のこと。”Thraat” の最新形は、イントロにシンセウェーブのフィーリングを加えつつ、民族楽器のデュイタラやボムと融合させ、よりアグレッシブにラップまでをも取り入れています。LINKIN PARK や NU-METAL に対する憧憬を込めながら。
「インドではレイプが “文化” に変わり、人々は被害者に対して何の反省も同情もなく、日常生活を送ってしまっているんだ。場合によっては、被害者さえも、レイプされたのは自分のせいだと思い込んでしまうほど。だからどうしても、DYMBUR はこの曲を書き、制作しなければならなかったんだ」
2019年にリリースしたアルバム “The Legend of Thraat” に続き、2021年11月に社会派の新曲 “Rape Culture” を携え帰ってきた DYMBUR。彼らにとって “Rape Culture” とは、犯罪を矮小化したり常態化したりする行為が当たり前となっているインド社会を、少しでも変えたいという気持ちの現れでした。あまりにも犯罪が多すぎて、犯罪が “文化” となってしまう現実。DYMBUR はその “不都合な免疫” をメタルで洗い流そうとしているのです。
「僕たちは、変化をもたらすために少しでも努力しているだけなんだよ。インドにおける児童虐待は深刻だ。この曲の歌詞には、正確な事実が書かれている。1,000万人の子どもたちが児童労働に従事していて、毎日100人以上の子どもたちが何らかの形で虐待を受けている」
“Rape Culture” のリリース直後から、DYMBUR はインドの社会問題をさらに掘り下げ、”Child Abuse” を完成させます。児童労働、児童婚、児童虐待が蔓延するインドにおいても、特に彼らの出身地シロンは、炭鉱における限界を超えた劣悪な児童労働というデリケートなテーマに直面しています。
必要なのは、きっと国内以上に海外からの反響でしょう。もし BLOODYWOOD のようにこの曲が世界から大きな注目を集めることができれば、きっと世界は黙ってはいないでしょうから。さらに、社会に変化をもたらしたいという願望にとどまらず、DYMBUR はシロンを拠点とする非営利団体 SPARK のため資金集めも行っています。この団体は、社会から疎外された人々、特に女性や子どもたちの権利向上と福祉に力を注いでいます。
今回弊誌では、DYMBUR にインタビューを行うことができました。「僕たちは世界を変えようとは思っていない。僕たちは世界の片隅に住む小さなバンドに過ぎないから。でもだからこそ、僕たちの音楽がほんの少しでも人の心に触れ、ほんの少しの変化をもたらすことができれば、僕たちの任務は果たされたと考えられるんだ」 どうぞ!!

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【A-Z : A-Z】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH MARK ZONDER OF A-Z !!

“The Main Focus Was Songs And Big Catchy Choruses. Nothing Better Than a Catchy Sing-Along Chorus.”

DISC REVIEW “A-Z”

「大衆にアピールしつつ、自分たちらしさも忘れない。それが当初からの目標。主な焦点は歌とキャッチーなコーラスだった。 そういうことをするバンドは、たいてい世界で一番大きなバンドだ。でも、このバンドで演奏しているメンバーなら、同時に素晴らしい音楽性が光るし、プログの人たちにもアピールできると思ったんだ。キャッチーなシンガロング・コーラスほど素晴らしいものはないからね」
FATES WARNING, WARLORD のドラマーとして名を馳せた Mark Zonder が2020年初頭に新バンドの計画を立てた時、彼は非常に明確なビジョンを持っていました。それは、ビールのコマーシャルや車のコマーシャルで使えそうな音楽。ただし、なにもポップスやヘアメタルが作りたかったわけではありません。これまでのキャリアを活かした洗練された音楽パートを保ちつつ、ハーモニーやメロディー、ビッグなフックを最優先に取り組むことにしたのです。なぜなら、それこそが 「リスナーの大多数が求めるものだから」。
洗練された知性とコマーシャルな大衆性の両翼をどちらも羽ばたかせるために選んだメンバーは極上でした。Steve Vai/ RING OF FIRE のベーシスト Philip Bynoe、ARABESQUE などで知られるギタリスト Joop Wolters、先ごろ美しきリーダー作を発表したキーボーディスト Vivien Lalu。そして最後のピースとなる “歌” を Mark が探した時、そこに降臨したのはかつて FATES WARNING で苦楽を共にした名シンガー Ray Alder だったのです。
「彼がコマーシャルな音楽に夢中になっていることは以前から知っていたし、何より彼はこの種の音楽を理解して、いつもとてもコマーシャルなポケットの中のグルーヴで歌ってくれると思っていたんだ」
A-Z というバンド名は Alder Through Zonder の意味。そこにはもちろん、悠久の時を超えたリユニオンの浪漫も込められていますが、それ以上に名前でバンドの音楽を限定してリスナーの数を決めてしまいたくないという強い想いが存在します。例えば、ドラゴンや剣を題材にすればメタルのリスナーを、大自然や宇宙をテーマにすればプログのリスナーをある一定数は取り込めるでしょうが、彼らはリスクを犯してでもそんな狭い檻を飛び出したいのです。
「個人的にはこういう大衆受けするヒット曲の音楽の方がずっと好きだったんだ。”Perfect Symmetry” の “Through Different Eyes” で、FATES WARNING の商業的な分野での発展が見られるとあの時思ったんだよな。あのドラムのパートは、誰もがついていけるような素晴らしいグルーヴとフィーリングを作り上げているよ」
とはいえ、これが FATES WARNING という運命的な夢の続きであることも事実。以前 Daymare Recordings からの再発盤のライナーにも記したとおり、FATES WARNING はある種カメレオン的な性格を有していて、時と場所を選びながら様々な方向に振れていったのですが、ビルボード20位という結果が示すとおり “Parallels” は最も異質で最もコマーシャルな作品でした。疑いようもなく、QUEENSRYCHE の大成功にも影響を受けていたでしょう。
コンパクトで洗練されていて知的でメロディアス。以降、Mark はアーティスティックな方向に進む FATES WARNING にある種の違和感を抱いていたのでしょう。つまり A-Z は “もし FATES WARNING が商業的な成功を追いかけていたら?” という If の世界を具現化したスーパーグループでもあるのです。
興味深いことに、ここでの Ray Alder は FATES で見せるハイパーな歌唱を捨てて、Harry Hess のようなハーモニー、メロディー、声質のアプローチを選択しています。加えて、名手たちのツボを押さえたテクニカルな演奏、洗練された作曲術によって、開幕から HAREM SCAREM や MILLENIUM を想起させるプログレッシブ・ハードの目眩く世界が展開されていきます。ただし、そこだけに終わらないのがこのバンドの恐ろしいところで、Vai 時代の ALCATRAZZ, TOTO, 80年代の YES に RUSH といったジャンルを超越したまさにロックの A-Z な色彩の妙がアルバムを通して展開されていくのです。
どの楽曲にも、オッ!と感じる旋律やウッ!と拳を握りしめるフックが必ず内臓されているのがミソ。結局、複雑極まる音楽でも単純明快な音楽でも、メロディーが死んでしまっては意味がありません。そうして英雄たちの邂逅は、FATES WARNING 夢の続きを確信させる3連打で幕を閉じるのです。
今回弊誌では、Mark Zonder にインタビューを行うことができました。「DREAM THEATER は “Pull me Under” が MTV でとてもプッシュされたからね。その後メジャーレーベルの助けも借りて成功を収めたんだ。もちろん、彼らは自分たちのやり方を貫き、とても努力した。 だけど同時に、ビデオ再生やメジャーレーベルの力、リソースも非常に役立ったのはたしかだよ」どうぞ!!

A-Z “A-Z” : 10/10

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NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【WAKE : THOUGHT FORM DESCENT】


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH RYAN KENNEDY OF WAKE !!

“I Think We’re a Metal Band. For Better Or Worse There’s No Specifying Sub-genres For The Type Of Music We Want To Make, In My Opinion. We Play Metal.”

DISC REVIEW “THOUGHT FORM DESCENT”

「最近、僕らの音楽活動に対して “成長” や “発展” という言葉がメディアによってよく使われているけど、僕らにとっては、すべてが論理的で当たり前のステップのように感じられる。長い間同じ音楽を聴いてきて、その時々に浮かんだアイデアを形にするだけ。それが “ユニーク” かどうかはわからないけど、少なくとも自分たちを正直に表現しているとは言えると思う」
カナダの WAKE は決して同じことを繰り返すだけのバンドではなく、リリースのたびに進化を遂げているとメディアは評します。しかし彼らはただフワフワとジャンルの境を漂う根無し草などではなく、溢れ出る自らの音楽的な創造の泉を “エクストリーム” “ブルータル” とは何かを再考し再発明するための挑戦の場として活用しているのです。
「”ブルータル”、”クラッシング”、”デヴァステーティング” という言葉は、エクストリーム・ミュージックの形容詞として乱用されすぎだ。僕たちは、”ブルータル” や “エクストリーム” のアイデアはブラストビートや鋭いトライトーンだけではないことを証明したいし、もっと重要なのは “ブルータル” な要素は鋭さだけでなく受動的な緩やかさからも生み出せるんだ。そのどちらにも通じる、ユニークな衝撃を生み出すことができるというアイデアを、人々に直面させようと思ったんだ」
その結果、容赦なくヘヴィなものから絶妙な美しさまで、時に片側一車線、しばしば相互通行で同時に駆け抜けるニュアンス豊かな8曲が誕生しました。それは瞬時にリスナーの心を掴み、全ての神経を張り巡らせれことを要求します。”Thought Form Descent” は豊かな質感と緻密なレイヤーで構成され、聴くたびに奥行きを感じさせ、WAKE をナチュラルに新たな次元へと導いているのです。
「僕たちは単にメタル・バンドだと思うんだよ。良くも悪くも、僕らが作りたい音楽のタイプにサブジャンルの指定はないと僕は思っているんだ。僕らが演奏するのはメタルであり、あらゆるジャンルを網羅したメタルなんだ。僕たちの個性は、ジャンル、テンポ、音色がどうであれ、僕たちが導入するあらゆる音の要素の間に常に潜んでいるから」
重要なのは、WAKE が “クラスで一番” を目指しているわけではなく、メタル世界全体の “目覚め” を誘うことに重きを置いている点でしょう。例えば同郷の ARCHSPIRE のように、”テクニカル・デスメタル” という狭い “教室” を極め尽くして一番になる。それも名を上げる一つの方法です。しかし、WAKE はあらゆるメタル、あらゆるサブジャンルを網羅した包括的な “ヘヴィ・メタル” でメタルの革新を願うのです。故にグラインドに 端を発する彼らの旅路には、ブラックも、デスも、ドゥームも、スラッジも、プログレッシブも存在し、ポストメタルでさえ顔を覗かせていきます。
「今回は多くのアイデアが試されたけど、すぐに却下されていった。なぜなら、典型的な怒りに満ちた攻撃的な歌詞から軌道修正する必要性があったから。同時に、あまりに憂鬱で個人的なものでもないようにしたんだ。そうして僕たちは、自分たちのドリーミーな方向性を追求していったんだ」
タイトルの “Thought Form Descent” は、「心の中に一種の迷宮を作り、それを現実に物理的に顕在化させる」というアイデアに由来しています。自分自身の無意味さ、人生の虚無感に直面した主人公が現実と対立し、未知の世界に大きな意味を見いだすというもの。
明晰夢、瞑想、幽体離脱、臨死体験といった手段で、彼は未知の場所に旅立ち、良くも悪くも現実の扉の向こう側を発見します。己の生との対立、現実との対立。そうして主人公はアストラルセルフとフィジカルセルフのどちらが真の存在なのかで混乱し、2つの間を引き裂くような意識状態の中で戦っている自分に気づきます。そして最終的に彼は、両方を元に戻して絶対的な無になろうとするのです。
現実からの逃避と夢見がちなストーリー・ライン。その音楽的な具現化には、ALLEGAEON, CATTLE DECAPITATION, KHEMMIS, PRIMITIVE MAN などモダンメタルの多様を牽引するプロデューサー Dave Otero も一役買っています。彼のメタルだけでなくポップ・ミュージックとその構成を理解する能力、音楽理論の知識、リフだけでなく曲の動きとコード進行にも連動する姿勢は、”デスメタル” “ブラックメタル” をはるかに超え、同様に “超越者” である GORGUTS の Kevin Hufnagel が流麗なメロディーを奏でることでアルバムは至上の域に達しました。
今回弊誌では、ベーシスト Ryan Kennedy にインタビューを行うことができました。「たしかに僕は DARKTHRONE や MAYHEM, BATHORY などを聴いて育ったから、ブラックメタルと僕は強い感情的なつながりを持っているけど、哲学的な意味合いを持っているわけではないからね。それに、僕も歳をとったから、哲学的な傾倒がより多様化する傾向にあるしね」 どうぞ!!

WAKE “THOUGHT FORM DESCENT” : 10/10

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COVER STORY + NEW DISC REVIEW 【ITHACA : THEY FEAR US】


COVER STORY : ITHACA “THEY FEAR US”

“I Want People To Say ‘I’ve Never Seen a Band That Looks Like Ithaca” I’m Gonna Go And Do That”

THEY FEAR US

傷ついたデビュー作 “The Language Of Injury” に全ての怒りを注ぎ込んだ UK 出身のヘヴィ・ヒーロー ITHACA は、ロックダウン中に自らを再発見し見つめ直しました。ニューアルバム “They Fear Us” に込められた感情や経験は、バンドが自分たちの過去と向き合い、その傷を癒すためのモチベーションを見出したことを物語っています…。
バンドのボーカリスト Djamila Boden Azzouz の歌詞が怒りに満ちていたのは当然のことで、デビュー前の7年間、彼女は性差別や人種差別の受け皿として苦心してきたのですから。ITHACA は2012年末、ギタリストの Sam Chetan-Welsh が掲示板に、アメリカの THE CHARIOT に影響を受けたハードコアグループを立ち上げ、ボーカリストを探していると書き込み、結成されました。Djamila は、違う理由でそのサイトを閲覧していました。
「彼女は EAGLES のカヴァー曲を探していたんだ」と Sam。「時代が違うのよ!」と Djamila は笑います。
「TikTok はなかったし、YouTube も今のような形ではなかったわ。掲示板の他にどこで笑うことができるの?(笑)」
UKのメタリック・ハードコア・シーンは当時、今とは全く異なる場所でした。EMPLOYED TO SERVE, SVALBARD, ROLO TOMASSI など、現在では主流となっているバンドが皆若手だったため、ITHACA は代わりに強気のグラインドコアやデスメタルとステージを共にすることになったのです。
「ブラックメタルやハードコアのバンドの多くは、本当に歓迎してくれた。まだ自分たちのサウンドが何なのかよく分かっていなかったから、多くの異なるラインアップに問題なく溶け込めたのもあるわね。それは私たちにとって本当に有益なことだったの」
多くの仲間は ITHACA を受け入れてくれましたが、プロモーターやコンサート参加者からはバンドに対して偏見がちらほら存在しました。インドの血を引く Sam は、「パブで、ギグを企画していた人物から人種差別的な言葉を浴びせられた」と回想しています。一方、アルジェリア系のバイセクシャル女性、Djamila は、自分が直面したあまりに多い偏見の数を思い出そうとして諦めます。
「ある時、”人種差別的なバンドを支持するのはやめろ” と書かれたTシャツをライヴで着たの。そしたら、私たちの Facebook ページに、実際に存在するネオナチが押し寄せてきて、こう言われたのよ。”殺しにいくぞ!”って」
「私たちのショーに出演するバンドが、少なくとも一組は男性ではない、多様なラインアップであることを確認することさえ、非常に大きな議論を呼んだのよ!」と彼女は続けます。「人々はそんなことを、本当に問題視したの。ああ、そんなことをやっているのか?ってね。そうよ!悪い?!」

Djamila Boden Azzouz が言葉を濁すことはありません。ITHACA のニューアルバムについて、その “売り” を聞かれたとき、彼女は一片の曖昧さも許しませんでした。
「私たちは他の誰よりも何マイルも進んでいると思う。それをどう受け止めるか。傲慢?そうかもしれない。それは本当なのか?そうおもう、たぶん… 今、こんなことをやっている人は誰もいないと思う。音楽的な面でも、特にイギリスでは、私たちは私たちのようなバンドとは比較にならないくらい、豊かで多様な影響を受けている。このレコードは、私たちが作るような音楽を作る多くの人が、達していないような創造性と繊細さを示しているの。だから、私たちは他の誰よりも優れていると思う…傲慢に聞こえるわよね?でも事実は事実よ (笑)」
ITHACA のギタリスト、Sam Chetan-Welsh も、彼女の意見に同意しています。
「人によっては傲慢だと思うかもしれないね。でも、自分がそう思っていなければ、構わないんだよ」
とはいえ、今 ITHACA の言葉を傲慢と捉える人はほとんどいないでしょう。この大言壮語は、少し皮肉っぽく聞こえるかもしれませんが効果的で、二人が言っていることは間違いなく真実なのです。
“They Fear Us” は、意味と深みに富んだヘヴィ・ミュージック作品です。Sam は慎重に “プログ・ハードコア” という表現を使いながら、比較対象として ROLO TOMASSI を挙げていますが、実際このレコードは感情的で知的で創造性に富み、DEFTONES, CONVERGE からジャネット・ジャクソンやプリンスまで、幅広い影響を完璧に消化しているのです。当然、ジャンルに縛られることは Djamila が最も忌みきらうこと。
「私はジャンルに縛られるのが好きではないけど、私たちが様々なカテゴリーに当てはまることはとてもうれしいわね。これは、私たちが自分たちのためにしか音楽を書いてこなかったという証。自分たちがハッピーになれる音楽を書いて、それを好きになってくれる人がたくさんいるのは本当にラッキーなことよ。だから、メタルコア・アルバムとかブラッケンド・ハードコア・アルバムとか、そういうものをハナから書くつもりで座っている人たちが本当に不憫。なんてつまらないんだろう」

彼らのデビュー・アルバム、2019年の “The Language Of Injury” は、EMPLOYED TO SERVE, SVALBARD, CONJURER, PUPIL SLICER, DAWN RAY’D といった多様でスペシャルなアーティストを擁する最近の英国メタルシーン、その頂に ITHACA が君臨することを知らしめたレコードでした。ツアーでは、ハマースミス・アポロのような大きなステージで演奏し、何も知らない観客には、ITHACA を見る人は耳栓を用意した方が良いという警告が会場に掲示されたこともありました。ギザギザのハードコアに口ずさむメロディーをちりばめたことで絶賛を浴びた “The Language of Injury”。それに続く “They Fear Us” は、バンドのヘヴィネスとアティテュードを損なうことなく、シューゲイザーに近いレベルの輝きを加えた、今年最も野心的でカリスマ的なジャガーノートに仕上がっています。
当然、今の時代の苦難もありました。パンデミックです。Djamila が回想します。「もう二度とライブを取り戻せないんじゃないかと心配になったわ」
しかしバンドはゆっくりと、書き、作り、録音をはじめ、すぐに新しいレコードに入れるべきものがたくさんあることに気がつきます。ロックダウンに加え、悲しみ、精神的な問題、内紛、そして暗い状況下でのレーベルの崩壊といった激動は、再考と成長の機会も意味していたのです。Sam はそれを “再生” と呼び、さらに ITHACA は “6回ほど再生した” と付け加えています。
「前作は辛いことを歌っていたんだ。おそらく、人生のどん底の一つだった。私生活でもバンドでも、何度も何度も不運に見舞われたような気がした。いつになったら僕らにとって正しいことが起こるんだろう?って感じだった。だけどこのアルバムは、パワーや強さ、自信を手に入れるためのもの。エンパワーメントのアルバムさ!」
実際、この2つのアルバムが意図するところは大きく異なっています。”The Language Of Injury” は、熱狂的で血まみれ、傷だらけのレコードでした。無軌道な怒りから生み出されたこの作品は、有刺鉄線で編んだ布団のような痛みと心地よさを与えてくれます。Djamila はその内容を “多くの自己嫌悪” と表現していました。自分とバンドメンバーの人生に起きていることに対する “直感的な反応” を直感的に描いた作品だと言います。
Sam にとって、このアルバムは母親の死後間もなく取り掛かった作品でした。自分のパートを録音することになったとき、彼は「血まみれのアルバムを作るために、ベッドから起き上がるのが精一杯だった」と言います。
「本当に、とても生々しい悲しみの中にいたんだ。レコーディングに没頭することで忘れようとしていた。あのアルバムは、僕たちが感じていた深い痛みに対する直接的な感情的反応だった。基本的に吐いているような感じだったよ」

一方で、”They Fear Us” は再び立ち上がることをテーマにしています。痛々しい暴力性を伴った再起の音牙。オープニングの “In The Way” では Djamila の「あなたの血を流し台で洗いなさい 私たちは記念品を取っておかないから」という不穏な宣言が、意図的かつ明瞭に、ふさわしい敵に向けられます。
「曲の多くは復讐をテーマにしているの。もし、あなたを傷つけた人たちに償わせることができるとしたら、あなたはそうする?」
Sam によれば “冷笑やニヒリズムはとても安い通貨だ” そう。彼らは、傷や恐怖を深く浴びることに何の意味があるのか、反撃する方法を教えないでどうするのか、と考えたのです。
「怒りや自己嫌悪をすべて外に向けるべき。私のせいではないんだ、と気づくことが大事なの」 と Djamila は言います。
「一番深いところまで落ち込んで、でもそこから立ち直ることが大事だ。そして実際、この作品は非常に暗いアルバムではあるけれど、特に最後のほうになると楽観的な部分も多くなってくると思うんだ。多くのレコードがそうであるようにね。個人的には、これは過激な反抗の行為だと感じている」と Sam は結論付けました。
“ラディカルな反抗” について語るとき、”They Fear Us” の多くがクローズアップされます。Djamila は虐待、人種差別、性差別、その他あらゆる問題に取り組む必要があると考える人物であり、それらを拒否することは、バンドに期待されるクリエイティビティに疑問を投げかけることにも繋がります。ITHACA では、歌詞、写真、テーマ、音楽的影響、映像など、あらゆる要素に何重もの注意が払われ、あらゆる角度が芸術的あるいは意味深いものとなって深みを持って語られるのです。それは、多くの人がヘヴィ・バンドに期待するものとは違うのかもしれませんが。
アルバムには “Healing” “癒し” という言葉が何度か登場します。Sam は、パンデミックによって、レコードを書きアイデアを徹底的に追求するために、通常よりも時間をかけることができただけでなく、精神的に多くのことを解明する機会を得たと言います。母親を亡くした傷を癒したのは、母親の葬儀のためにインドを訪れ、ガンジス川のほとりで僧侶がガンガー・アールティの祝福の儀式を行う様子を録音したこと。
「僕たちは皆、パンデミックの始まりと前後して、個人的な悪魔に立ち向かわなければならなかった。そして、パンデミックによって、深い内なる仕事が始まりまったんだ。僕自身は、自宅で、自分自身とどう向き合っていたのか、頭の中の声とどう向き合っていたのかに直面させられた。精神的な面でも、自分が対処できていないことがたくさんあったし、それはバンドの他のメンバーも同じなんだ」

何度も出てくるもう一つのフレーズは、”神聖な女性的パワー” です。Samは、この言葉はバンドのストーリーの中で誰もが共有している “虐待的な男性の権力構造” を反映しているものだと言い、その一例として、オーナーによる性的虐待の疑惑を受け、彼らの前レーベルである Holy Roar が崩壊したことを挙げています。彼らは、メタルは強さとパワーがテーマなのに女性の側に立つことはあまり持ち出されないアイデアだと指摘します。
「バンドやミュージシャンにとって、”私はフェミニストです” と言うことは非常にハードルの低いこと。でも、”いや、この曲は神聖な女性の力についてで、男性の力の乱用には積極的に反対しているんだ” と言った瞬間に、みんなに正気じゃないと思われてしまう」と Djamila は嘆きます。
「人々が恐れているのは、偏見を持って見られることだと思うの。このバンドはこういう考えだってね。だから彼らは仄めかすくらいにとどめておく。最低限のことはやっても、100パーセントのコミットメントはできないと。でも私たちは、とことんまでやるわ。
ただ、ネットで発言するときは、自分がバンドの大使であることを忘れないようにしないといけないね。クソみたいな投稿をしたり、愚かなことを言ったりしてしまうことはある。でも、ほとんどの場合それは、誰かがバカだったり、バカなことを言ったり、攻撃的なことを言ったり、人種差別や性差別的なことを言ったりしたときの反応。わざわざ理由もなくアホなことはしないのよ」
2020年9月には彼らのレーベル Holy Roar の代表であるアレックス・フィッツパトリックが複数の女性から性的暴行で訴えられました。ITHACA はこの悪夢に公的に対応した最初のバンドのひとつで、すぐにレーベルを離れ、こうツイートしています。
「Holy Roar Records は死んだ」
Djamila は、「もしお前がレイプ犯で、公共の場で見かけたら、ボコボコにしてやる!」と発言しました。
Djamila に “They Fear Us” の “They” とは誰かを尋ねると、彼女はこう答えます。
「自分の怒りを向ける相手や状況、それが自分を抑圧する相手であることは、多くの状況下で多くの人に当てはまるもの。このアルバムから何かを感じ取ってもらえるとしたら、それは力を与えてくれる感覚なの。”彼ら” とは、あなたにある種の感情を抱かせた人であれば誰でもいいの。それは人それぞれだと思う。”彼ら” とは、あなたに自分の価値を低く感じさせた人、何らかの理由で自分に価値がないと感じさせた人、過去にあなたを傷つけた人などよ」

“In The Way” のような曲は明らかに復讐を扱っていますが、他の曲では心の内面にも焦点を当て、自己と世界の結びつきを解き明かしています。例えば、”Camera Eats First” では、自己イメージと、自分が世界の中でどのように位置づけられているかという悩みにスポットライトが当てられています。この曲は、自己嫌悪を根底に持つ曲ですが、そこからの悟りや不必要な重荷を取り除くことも含まれている、とシンガーは言います。
「この曲は、自分自身をどう見ているか、そして自分自身についてどう感じられているか、また、他の人が自分をどう見ているかを検証することをテーマにしている。私は歪んだセルフイメージを持っていて、多くの人が共感してくれると思う。ドラマチックに聞こえるかもしれないけれど、”自分がどんな風に見えるのか、さっぱりわからない。自分がどんな顔をしているのかわからない。自分がどんな顔をしているのか、もう全然わからない”。でも、なぜそれが重要なの?なぜ私たちはそれにこだわるのでしょうか?セルフイメージに拘ることでどれだけ時間を無駄にしたか、どれだけ人生から遠ざかったか。カメラは自己嫌悪に陥ることのメタファーなの。自分をどう見るか、他人がどう見るか、 その両方は大きく異なるから」
Sam は、Djamila がグループの中で占めているポジション、立ち上がって叫ぶこと、そして自分の中にあるものを共有しようとする姿勢に感心しています。
「Djamila のような人は、非常に勇気があるし、弱さもある。そうした勇気と弱さを持ち合わせた人は、ほとんどいないだろうな」
“They Fear Us” は過去10年間に彼らが耐えてきた偏見とトラウマを武器にしています。メタルコアのラインナップに性別の多様性を求めないと非難された後、アルバムのアートは、ITHACA の男性メンバーが青白く従順に見える中、鮮やかなオレンジ色の服を着た Djamila を玉座に置くことで反撃しているのです。歌詞も同様に、シンガーを台座に乗せ、世の中の偏屈者や否定的な人たちを言葉巧みに罵倒しています。
アートワークで Djamila は王冠をかぶった女王のような力強い存在。その周りには男性陣がほとんど保護するように描かれています。このビジュアルは、アルバムのスリーブやバンドの写真を飾り、ビデオにも反映されています。
「男性が支配するようなアルバムジャケットの写真は、MANOWAR でもない限り、メタル界ではもう作られることはないでしょうね。私たちは、とても堂々としていて、パワフルでありながら、活気のあるものを作りたかった。大胆で鮮やかな色彩や、雰囲気のあるものなど、多くのメタルでは見られないものを入れてね」
アートワークは、80年代のニューウェーブ、TALKING HEADS のコンサートフィルム “Stop Making Sense” から影響を受け、バンドのフロントマン、David Byrne が、彼らのルックスは “過激なアイデア” を伝える方法だと説明したことに後押しされています。Sam が説明します。
「僕たちは Djamila の後ろにいる。でも、彼女のボディガードとかじゃなくて、彼女の後ろに立つ防御線なんだ。そうして僕たちは自分たちの中にある女性らしさを伝え、親密さを伝えている。手をつないだり、触れ合ったり、ヘヴィーなバンドが厳つい服を着て遠く離れた場所に立っているのとは正反対のことをやっているんだ。みんなが近くにいて、色彩があり、ラファエル前派の絵画があり、クィア・アートへの言及があり、親密さがあり、愛があり、喜びがあるんだ。なぜなら、それらは癒しの核となるものだから」
つまり Sam は、あれがメタルバンドか!と驚かれたいのです。
「台座の上の Djamila のコンセプトは、神聖な女性の力にリンクしている。タイトル曲には、母なる女神を招き入れるインドの儀式のサンプルが使われ、神聖な女性の力についてすべてが語られている。他の文化圏から来た人たちや、ヘヴィ・ミュージックで何か言いたいことがある人たちの中には、” これは私のためのものなのか?と思っている人たちがいるだろうね。そういう人たちに、ITHACA みたいなバンドを見たことがない、行ってみよう!と言ってもらいたいんだ」

Djamila はタイトルトラックの MV もお気に入りです。
「このビデオで気に入っているのは、主なロケ地がイギリスの地主階級の大邸宅なこと。壁に描かれた植民地時代のイメージと対比させて、ドアを蹴破り、空間を占有する私たちを表現しているのよ。これは、私たちにとって非常に印象的なことだった。ディレクターのポールは、こうしたアイデアをつなぎ合わせて、私たちが想像もしなかったような方法で命を吹き込んでくれたのよ」
もし COVID によって物事が減速していなかったら、”They Fear Us” が違っただけでなく、彼らも違ったものになっていたでしょう処理時間や息抜き、そして生まれ変わる機会がなかったとしたら、今よりもずっと暗い場所にいる2人の会話を想像してしまいます。一方で、”They Fear Us” は、正直で純粋。そしてそこから、必ずしも平和だけではなく、希望も生まれるのです。
「もし若い頃の自分に話せるとしたらやめなさい!と言いたくなるようなこともある。でも真面目な話、過去の自分自身に言えることなんて何もないと思うのよ。あのアルバムは起こるべくして起こったと思うし、戻って変えたいとは思わない。とても変わったアルバムだけど、それなりの理由があって特別なものだと感じている。あのレコードがなかったら、”They Fear Us” も今の私たちもなかっただろうしね」
“セルフ・カインドネス” とは、自分自身に対して、他人に対して話すような方法で話すこと。Sam はそうやって痛みを乗り越えてきました。
「良くなるとは思っていなかったと思う。あの喪失感から立ち直れるとは思っていなかったし、人生を立て直し、感情を豊かにし、自分らしく背伸びすることができるとも思っていなかった。このアルバムが僕にさせてくれていること。このアルバムをレコーディングして以来、僕が学んだ大きなメッセージは、本当の自分への思いやりとは何かということなんだ。ただ寝たり、ケーキを作ったりするのではなく、他の人に話すように、自分にも話すということだ。そのことに気づき、実践し始めると、すぐに人生が変わり、感情の状態も変わっていった。そして、自己嫌悪や自己愛の欠如を深く掘り下げることで、初めて反対側に出てくることができたんだ。だから “癒し” は可能。ありのままの自分に正直に、より勇敢に、より大胆になることは可能なんだ」
これほど傲慢から遠いことはないでしょう。Djamila が付け加えます。
「この数年間で、私たちはみんな人間的に成長した。”Language” を書いたとき、私はとても被害者的な感覚だった。だからこそ今回、”They Fear Us’ がアルバムのタイトルになったのは、とても自然なことだと感じたの。なぜなら、このアルバムにはもっと多くのエンパワーメントが含まれているから。全く違うアルバムで、より勝利に満ちているから」

参考文献: GUARDIAN:Ithaca: ‘We said: “Stop supporting racist bands”. Our Facebook page was flooded with Nazis

KERRANG!:Ithaca: “This is about divine feminine power”

NO ECHO:Ithaca Vocalist Djamila Azzouz on Their New Album, Breaking the Band in America + Mor