COVER STORY : IMPERIAL TRIUMPHANT “SPIRIT OF ECSTASY”
“I Got Into Learning About Rolls-Royce As a Company And Learning About These Ultra Luxury Product Companies Like Rolex And Such. The Rolls-Royce Has This Hood Ornament That Is Known As The Spirit Of Ecstasy.”
“Spirit of Ecstasy” は “Alphaville” よりもシンプルなサウンドですが、しかし、よりミクロで、彼らの細部へのこだわりは繰り返し聴くことでより一層、聴き応えを与えてくれます。
「構造的には、”Alphaville” よりもさらにシンプル。僕らは次のステップに進むために、自分たちのミクロなニッチをさらに開拓し、狭い穴にさらに入り込んで、そう、ソングライティングもさらに向上させようとしたんだ。混沌の中にある明晰さの瞬間を人々に与えようとしたんだ。僕たちは曲をすべて書き上げてから、それらをいじくりまわして、非常に細かい部分まで綿密に調べていった。すべてがあるべき姿であることを確認するために、1秒1秒レコードを見直したんだ」
こうしてニューヨーカーの努力は、異様に録音されたボーカル、サックスとギターのデュエル、風の吹くサンプルなど様々な要素を加えるという形で実を結び、すべてが特定の場所に配置され、独自の “フードオーナメント” を掲げて、”Spirit of Ecstasy” がラグジュアリーな “高級ブランド” の産物であることを示すことになりました。
「Max G (Kenny G の息子) は親しい友人で、以前は IMPERIAL TRIUMPHANT のメンバーだった。一緒にニューヨークで小さな会社を経営しているんだ。ある日の午後、ランチを食べているときに、彼にこう聞いたんだ。”僕たちの新譜にこんなパートがあるんだけど、ギターがサックスと戦うというか踊るようなデュアルソロの状況を想像している。君と君のお父さんはこのパートに興味がある?”ってね。彼はイエスと答え、父親に尋ね、父親も同意し、そして彼らは絶対的な傑作を作り上げて帰ってきてくれた。僕たちのやっていることを理解してくれる人たちと一緒に仕事をすると、より強い作品ができるんだ。彼らのような演奏は、僕には決してできないからね。ゲストを招くのは結局、音楽のためであり、他の人の才能に信頼を置くことでもある。Kenny G はモンスター・プレイヤーで、Max G はモンスター・シュレッダーだということを知らない人がいるかもしれないけどね。
僕たちのドラマーの Kenny は Alex Skolnick とフリー・インプロヴァイズのカルテットで演奏している。だから、彼にはかなり簡単に依頼できたよ。VOIVOD の Snake は、彼らも Century Media に所属しているから、”Alphaville” のためにやった VOIVOD の “Experiment” のカヴァーを彼らが気に入っていることが分かったんだ。だから、Century Media は、もし僕らがゲストを望むなら、コネクションを作ることができると言ってくれたんだ。IMPERIAL TRIUMPHANT が決してやらないことは、名前だけのゲストをアルバムに迎えること。どんなに有名な人が来ても、その人がもたらすものは、何よりもまず音楽のためになるものでなければならない。それ以降のことは、すべて飾りに過ぎない」
一方で、Ezrin のギターに対するアプローチは、それ自体が興味深いもの。クラシックからジャズ、スラッシュからブルースまで、様々なスタイルを研究してきた Ezrin は、伝統的な手法と非伝統的な手法を融合させ、既成概念にとらわれないものを作り上げています。
「例えば、チャールズ・ミンガスのような演奏スタイルからインスピレーションを得て、そこから盗むことが多いんだ。彼は指板の上で弦を曲げたり外したりして、エフェクトをかけるんだ。完璧に音を出すことにこだわらなくなれば、いくらでもクールなことができる。アンプを通さない状態でヘヴィーでファッキンなサウンドなら、ゲインたっぷりのアンプで弾くと超ヘヴィーに聞こえるはずだよね。
プレイヤーとして、ある種のパラメーターを持つことはとても楽しいことなんだ。例えば、僕のギターはEスタンダードなんだけど、それよりずっと低い音で演奏するんだ。ワミーバーを使って、ローEのずっと下の音でメロディーを作るんだ。そうすることで、より深く考え、よりクリエイティブになることができる」
IMPERIAL TRIUMPHANT は、リスナーが “Spirit of Ecstasy” を掲げたロールス・ロイスでディストピアの荒野を走り抜けるようなイメージを追求しました。スラッシュ・ヒーローの VOIVOD TESTAMENT のメンバー、そして伝説のサックス奏者 Kenny G を加えたトリオは、不協和音のデスメタルに新たなラグジュアリーと高級感を付与し、55分の長さの中でリスナーにさらなる探究心を抱かせるきっかけとなりました。
「このアルバムは、聴けば聴くほど好きになるようなレコードの一つだと思うんだ。それは非常に挑戦的なことだけど、非常にやりがいのあることだ」
“This Regime Cannot Tolerate Hearing Different Opinions And Voices Outside Their Beliefs Other Than Their Own. And We Believe That The Regime Is an Obvious Example of What Happens To a Nation Based On Religion.”
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH NICO MIROLLA OF KARDASHEV !!
“Young People Will Inevitably See The Cognitive Decline Of Someone Close To Them Beit a Grandparent, Aunt, Uncle, Or Parent In Their Life At Some Point And We Wanted To Capture That Moment In An Album.”
“We Stand With The Native People That Take Care Of The Forest. Sometimes Against Transnational And Ecuadorian Enterprises Protected By The State Which Are The Ones That Pollute The Most. It Seems Totally Stupid To Destroy One Of The Megadiverse Countries Of The World Just To Get More Oil And Minerals.”
COVER STORY : PORCUPINE TREE “CLOSURE/CONTINUATION”
This Is Not a Reunion, Porcupine Tree Has Never Broken Up, Just Like Tool Is Coming Back 15 Years Later With a New Album. We Were Even Earlier, Right?
CLOSURE/CONTINUATION
「これは再結成じゃない。PORCUPINE TREE は一度も解散していないんだ。TOOL が15年後に新しいアルバムで戻ってくるのと同じことだ。私たちの方がもっと早かったくらいだろ?」
12年前、ロイヤル・アルバート・ホールのステージから降りたとき、現在の PORCUPINE TREE 3人のメンバーのうち2人は、バンドがまだ存続していると考えていました。しかし、フロントマンでギタリストの Steven Wilson だけは、少なくとも当分の間は、このバンドはもう終わりだと判断していたのです。ただ、彼はバンド・メンバーにそのことを告げませんでした。マネージメントにも。レーベルにも。一切誰にも。
Steven Wilson。この英国人音楽家のバックカタログは、多彩なソロアルバム、No-Man、Blackfield、I.E.M、Storm Corrosion、Bass Communion、そして復活を遂げた PORCUPINE TREE と、多様なプロジェクトやコラボレーションを量産しています。もちろん、他のアーティストの作品をドルビー・アトモス音響にリミックスすることもあり、スタジオにいないときはワールドツアーを行っています。
ファンの間では長年の議論があります。Wilson は休暇を取ったことがあるのだろうか?
「PORCUPINE TREE のアルバムが終わったら、次のソロアルバムもほとんど書き終えているんだ。あと今、10枚くらいのアルバムをリミックスしているんだ。それから、家庭生活も素晴らしいよ」
Wilson は1987年、XTC の “Dukes of Stratosphere” のような、英国の伝統的サイケデリック・ロックのオマージュとして、PORCUPINE TREE を始めました。しかし、彼はそこに閉塞感を感じていました。そもそもサイドプロジェクトとして始めたものが、人々が彼を知るきっかけとなり、さらに多くのものを提供することを期待されるようになったのですから。
「これは私がやるべきことではないと思い始めたんだ。たしかに、PORCUPINE TREE は私の音楽人生のすべてを支配するものではないはずだった。他のミュージシャンとも仕事をしたかったし、他のスタイルの音楽もやりたかったんだ」
Wilson は当時、ドラムの Gavin Harrison やキーボードの Richard Barbieri から、自分が注目を浴びていることに憤りを感じ、自分の音楽性が批判されているように感じたといいます。
「バンド内で特に好かれているとか、尊敬されているとかいう感じはなかった。正直なところ、メンバー間の関係はいつも少し…”冷え切っている” という言葉は適切ではないかもしれないけど…私たちは人間として全く違う存在なんだ。実際のところ、例えば私のソロ・バンドにはいつも喜びがあったのに、PORCUPINE TREE が素晴らしかったという記憶はないんだ。ソロ・バンドではとても楽しかったけど、PORCUPINE TREE では、いつも少し憤りを感じていた。私はフロントマンになるつもりもなかったし、フロントに立つのは少し嫌だと感じていたんだ。フロントに立っていると、いつもちょっと詐欺にあったような気分になるんだ。
リード・ギター・プレイヤーであることに、いつも若干の詐術的なものを感じていたんだ。それに、技術的な能力という点では、自分がこのバンドで一番弱いミュージシャンだということを強く感じていたんだと思う。でも、ほとんどの曲を書き、ほとんどのインタビューに応じ、バンドの中心的存在だった。それを感じたのは、おそらく私が初めてではないだろうがね。Roger Waters なんかは、私の大好きな PINK FLOYD の中で、明らかに一番弱いミュージシャンだからね。
ただ、バンドが活動を停止し、お互いに距離を置いたことで、人間関係はより良くなったと思う。このアルバムを作るのは、過去のどの PORCUPINE TREE のアルバムよりも楽しかったと思う。それは、自分がただバンドの一員、チームの一員であることを許したからだと思う。私はもともと、チームプレイが苦手で、支配的な性格なんだ。だから、ソロのキャリアが確立され、時間が経って、自分も少し穏やかになった今、今度は自分自身を共同作業の一部にすることが、ようやく楽しくなったんだと思う」
他のメンバーから、今回はインプットを増やしたいという申し出はあったのでしょうか?
「いや、その反対だ。PORCUPINE TREE のレコードを作るなら、君たちにも書いてもらいたいと言ったんだ。というのも、その時点(2012年、2013年)で、私はすでにソロで2枚ほどアルバムを出していたからね。だから、私が一人で PORCUPINE TREE の新譜を書いて、それを持ちこんで、歴史的にそうであったように、”みんな、PORCUPINE TREE の新譜ができたよ” と発表することに何の意味があるんだろう、というのが私の視点だった。それなら、ソロのレコードとして作ることもできるんだ。だから、私にとっては、これをやるなら、物事を変えようということだったんだ。実際に集団で書いてみようと。とはいえ、ほとんどの曲は私と Gavin、または私と Richard のデュオ形式で書かれているけど。要は、新しい曲や新しいアイデアを思いついた瞬間から、常に誰かとの共同作業が行われていたんだよ。だから、私が法律を作ったとは言わないけれど、新しいレコードを作るなら、共作でなければならないということを原則の1つにしたんだ。もちろん、彼らはそれを気に入ってくれた。ある意味、これまでそうでなかったことに不満を持っていたようだけど、今回はもうすべてをコントロールする必要性を感じなくなったんだよね。それは、私にとっても、彼らにとっても安心できることだった」
ソロでの成功は、Wilson に何をもたらしたのでしょうか?
「フロントマンとして、シンガーとして、より自信を持てるようになったと思う。皆が口を揃えて言うのは、このアルバムのボーカルはより自信に満ちていて、よりソウルフルで、より多様に聞こえるんだそうだ。これは、シンガーとして、またフロントマンとしての役割を快適にこなせるようになった結果なのだろうね。もうひとつ、私のソロ活動で特筆すべきことは、ギタリストではなかったということ。ギターは弾くけど、キーボードも弾くし、歌も歌うし、いろいろなことをやった。でも、Guthrie Govan, Dave Kilminster など、私のライブバンドにはいつも “スーパースター” 的なギタリストがいたんだ。だから、自分をギタリストと考えるよりも、フロントマン、フォーカルポイント、リードシンガーであることを許せたんだと思うんだ」
故に当時 Wilson はわざわざ彼らに何かを伝えることはありませんでした。彼はただ去り、PORCUPINE TREE は永久に未解決の案件となったのです。数年間、他の2人は Wilson が戻ってくるのを待っていました。しかし、彼がソロ・キャリアについて語り、自分たちのバンドへの関心を否定するようなインタビュー記事を読んで現状を知ります。
1982年末に David Sylvian が JAPAN から去ったときと同じ状況に陥った Barbieri は、苦い思いと傷みを感じずにはいられなかったと言います。
「批評的にも商業的にも成功したところまで来て、まさにその時点で、置いてけぼりにされた。メンバーがただ続けるのは簡単ではないよ。そこからキャリアに踏み出すまでには、かなりの時間が必要だ。でも、フロントにいる人 (Wilson) は、同じマネージャー、同じレコード会社、同じファンベース、同じ出版社、同じプロモーター、同じエージェントと一緒にやっていける。だから、彼らにとっては、とても楽なことだった。でも、同じように時間をかけて仕事をしてきた人たちを残していくわけだからね…」
Harrison は Wilson の近くに住んでいて、2012年からもしょっちゅうジャムっていたので、インタビューにはあまり動じなかったと語っています。
「まあ、先週彼とお茶を飲んだんだけど、彼は僕にそんなことは言わなかったよって思うんだ。でも、Steven からすれば、自分が始めたバンドと自分自身、彼の頭の中で起こっている2つの異なることの間で、どこか内輪もめをしていたのだと思うし、少なくともファンには、PORCUPINE TREE がいつ復活するかよりも、自分のソロ活動に目を向けてほしかったのだろうね」
Wilson が PORCUPINE TREE の将来について言及することを拒否し続けたことは、幸か不幸か彼らが不在の間にバンドの伝説が大きくなることを意味していました。彼らは “逃亡したプログ・バンド” となったのです。この言葉を嫌う Wilson にとっては、必ずしも喜ばしいことではなかったかも知れませんが。
「このプロジェクトは、2012年に私と Gavin がジャムるところから始まった。だから、もしこのアルバムを作るなら、オンラインでストリーミング配信だけにして、大々的に発表しないほうがいいんじゃないか?ライヴもやらずに、ただ音源を出すだけでいい。そして、まあ大きなショーを1回だけやるか、ヨーロッパとアメリカで大きなショーを1回ずつやるかという感じになったんだ。
でも、マネージメントやレコード会社との交渉が始まると、このした控えめなレコードを作るという計画はすべて水の泡になった。素晴らしいことだけどね。人々が興奮しているんだから。ただ、私たちが不在の間に伝説が大きくなったのには驚いたよ。2010年当時、私たちが活動を休止したころには、2022年に私たちが演奏するような会場で演奏することは決してできなかっただろうからね。アルバート・ホールで一晩やったのが、僕らのイギリスでの軌跡の頂点だったんだ。その後、ソロ・アーティストとしてアルバート・ホールで何度も公演を行ったけど、今回、PORCUPINE TREE はそのすべてを飛び越えて、ウェンブリー・アリーナをソールドアウトさせるんだ。それも1万2000人規模の。すごいことだよ。だから、”不在は心を豊かにする” ってことわざを地で行くようなものだよ」
これだけ長い間離れていると、ケミストリーの心配を感じるかもしれませんが、それは完全なる杞憂。ニューアルバム “Closure/Continuation” のオープナー “Harridan” を駆け抜けるトリオは完璧にシンクロしているように見えます。ベースとドラムが夏草のつるのように複雑に絡み合い、その上をキーボードが波のように押し寄せ砕け散る。それは、複雑でとげとげしく、しかしメロディアスなまごう事なき PORCUPINE TREE の音の葉です。
実は “Closure/Continuation” は、PORCUPINE TREE が終わったと思われた頃から制作されていました。つまり、Wilson と Harrison が過去10年に渡って行ってきたジャムが、ロックダウン中に再訪されたのです。Barbieri が後年 Wilson に送ったテープも、曲として仕上げられていました。3人はすべてのレコーディングを自宅で行い、それゆえに2010年以降一緒に演奏することはありませんでしたが、結局誰にも知られることなくニュー・アルバムを制作することが可能となったのです。つまり、バンドは解散ではなくあくまでゆっくりと動き続けていたのです。Wilson が説明します。
「ああ、明らかに私たちはこの作品に取り組んでいることを隠していたから、多くの人が PORCUPINE TREE は終わったんだろうと結論づけたんだ。というのも、このバンドが1枚のアルバムを作る間に、私は5枚のソロ・アルバムを作っているからね。1年、あるいは2年という長い時間をかけて心血を注いだ自分の作品のプロモーションをしているときに、誰かが PORCUPINE TREE について聞いてくれば、”もういい、バンドは終わったんだ” と答えることもあるよ。何よりもフラストレーションから。まあそのことが、私たちがチームとして一緒に音楽を作るのをやめたという、人々が抱く誤解の信憑性につながったのはたしかだけど。でも、実際には、私たちはこの作品に10年以上も取り組んできたんだよ。それが長引けば長引くほど、もし戻ってくるなら、本当に強くて、これまでやってきたことと同じくらい良いものでなければならないと感じるようになったんだけどね」
PORCUPINE TREE に戻ることは “後退” だと語っていた時期もありました。
「私のキャリアで初めて、”ファンが望むものを提供する” と見られる可能性があったから。私はその原則に嫌悪感を抱いているからね(笑)。私は常々、偉大な芸術とは…私自身が偉大な芸術家であるとは思っていないけど、少なくとも誠実な芸術家とは、期待に応えるのではなく、常に期待に立ち向かうべきであると考えている。今回の作品は、最近の記憶では初めて後者を実践していると言えるかもしれないね。私は、このレコードが “同じことの繰り返し” ではないという信念を持っている。PORCUPINE TREE のレコードの真髄を感じながらも、同時に何か新鮮なサウンドでもあるんだ。
もし、このアルバムが単にこれまでと同じようなものだと感じていたら、リリースに踏み切らなかったと思うんだ。私がベースを弾いていること、皆で一緒に作曲したこと、ヘヴィなギターが強調されていないこと…このアルバムには、これまでのアルバムとは違う点がたくさんある。もしかすると、私のキャリアを広く見れば後退しているように見えるかもしれないけれどね。でも、私のソロ・キャリアはまだ続いているし、次のレコードもすでに書き終えている。だから、その点では、今は2つのことが共存しているんだ」
伝説を築き上げたのは、SNS の発展でしょうか?それともソロ活動での成功でしょうか?
「両方だね。そのすべてが関係していると思うよ。私のソロ活動を通じて PORCUPINE TREE の知名度を上げ続けたこと、Gavin が KING CRIMSON とツアーを行い、彼を通じて人々が PORCUPINE TREE について調べるようになったこと。それに、私たちが PORCUPINE TREE でやったことは…当時は認めなかったとしても、今になって振り返ってみるとよくわかるんだけど…今でも完全にユニークに聞こえる。複雑でコンセプチュアルなロックという要素、Richard のサウンド・デザインやキーボードのテクスチャーへのアプローチ、Gavin のポリリズムへの憧れ、私のシンガー・ソングライターとしての感覚、さらには電子音楽や産業音楽、メタル音楽の要素などと融合させて、完全に直感的で無意識な方法ですべてをまとめ上げていたからね。つまり、私たちは “プログレッシブ・ロック” と呼ばれているけど、当時作られていた他のどのプログレッシブ・ロックとも違うんだ。そして、それはその後も真似され続けている。でも、私たちは今でも他の誰よりも上手くやっているよ(笑)。新譜を作った今、本当にそう思っているんだ」
PORCUPINE TREE の新作と Steven Wilson のソロ作の違いはどこにあるのでしょう?
「例えば “Closure/Continuation” を聴いて、”The Future Bites” と比較すればとてもとても違うのはすぐわかる。もちろん、共通点はあるんだけど、それは私の音楽的な個性だから。それは隠そうとしても隠せないよ。自分ではすごく変わっていると思っていることをやって、親しい友人や家族に聴かせても、私の声しか聞こえないんだから!結局、何をやっても私の音にしか聞こえないんだ。だから、自分の個性を埋もれさせたくても埋められないんだ。でも、このレコードのタイミングは面白いと思う。私にとっては、PORCUPINE TREE が戻ってくる完璧なタイミングだと感じているよ。”Cannot. Erase.” などのアルバムでは、ファンか”あれは簡単に PORCUPINE TREE のレコードになり得た” と言われるような瞬間があったんだ。でも、”The Future Bites” のようなアルバムを聴くと、そうではないと思う。あれは、私が PORCUPINE TREE と一緒に作ったようなレコードではないからね。もっとエレクトロニックで、ギターを強調せず、ロック的な要素を排除している。PORCUPINE TREE はどのような存在であれ、またどのような存在になったとしても、明らかにロックバンドのようなサウンドを奏でているから」
“Closure/Continuation”。このタイトルには、バンドの将来に対する彼らの不安が反映されています。
「無理にこのアルバムを作る必要はなかったんだ」と Wilson は言います。「アメリカ・ツアーのために1,000万ドルのオファーを受けたから戻ってきたというわけでもない。ソロ・キャリアが失敗したから戻ってきたわけでもない。私たちは PORCUPINE TREE を再起動することが楽しいと思ったし、良いマテリアルを持っていた。それがアルバム・タイトルにも反映されていると思う。これが終幕なのか、それともバンドのキャリアを継続させるための新たな一歩なのか、僕には純粋に分からないんだ。”終幕 “であれば、本当にいい方法だと思うよ。あるいは、1年後に電話をして、楽しかったね。もう一回やるか? となるか。私の推測では、おそらく前者だと思う。たぶん、これが僕らが作る最後のレコードで、たぶん最後のツアーになると思うんだ。
長い間、レコードを作るなら、”これはカタログに何を加えるのか” という質問を自分に投げかけなければならないと信じてきた。このレコードを作る目的は何なのか? 同じようなことを繰り返すのは嫌だとね。というのも、多くのバンドが、単に同じものの繰り返し、同じものの繰り返し、同じものの繰り返し…AC/DC 症候群と呼ばれるような、音楽の遺産に何も加えない、ほとんど無意味なレコードをカタログに追加するようなサイクルに陥っているように思うから。私は AC/DC が大好きなので、AC/DC のことを取り上げるのは申し訳ないのだけど(笑)、彼らは私が思いつく限りその最高の例だと思っている。それは素晴らしいこと。でも、この新譜はカタログの中でその存在を正当化するものだと思うし、バンドのサウンドを新しくしたように感じる。そして、次はそれを再び見つけることができると感じなければならないだろう。だから、私たちはドアを閉めないよ。でも、これが最後のレコードだとしたら、最も重要なのは、本当に力強い方法で本を閉じることだと思うんだ。Gavin と Richard と話したんだけど、みんな同じように、最後に作った[2009年の] “The Incident” は最高傑作ではなかったし、特に良い終わり方だとは感じていなかったんだ。悪い作品ではないけれど、ベストな作品ではなかった。だから、もし “Closure/Continuation” が私たちの最後のレコードになるのなら、それについては良い気分でいられると思う」
Barbieri がつけ加えます。
「これが終わったら Steven はソロ・モードに入るだろうね。そして、それが彼をどこに連れて行くかによる。PORCUPINE TREE は Steven がその一員でありたいと思うからこそできることなんだ。僕は、このまま解散してしまっても構わないと思っているよ。それならとても快適だ。だって、いいアルバムができたんだから。そして、僕ら3人の間で良い雰囲気のまま終わることができると思うんだ。ネガティブな感情なんてないだろうしね」
とはいえ、このグループの中にいるのは簡単なことではありません。Wilson には、どんなバンドでも、実際に演奏する音楽はメンバーの好みの交点に限定されるという考えがあり、実際はそれがいかに野心を制限しているかについて話しています。
「PORCUPINE TREE の最初のピリオドが終わるころには、PORCUPINE TREE の曲の典型的な形が出来上がっていたんだ。だから最後のアルバム、最後のツアーに至るまでには、私にはもう面白くなくなっていた」
それは、他のメンバーにとっても同様でした。Harrison はソウル、ファンク、ジャズを愛するドラマーですが、かつての PORCUPINE TREE にそれが入り込む余地はありませんでした。Barbieri も、自身の好む “非常にミニマルでゆっくりと進化するアトモスフェリックなアプローチ” が、他の2人にとって大きな関心事でないことに気づいています。だからこそ、少なくとも、”Closure/Continuation” は、Wilson が主導し他の2人の貢献が少ないこれまでの PORCUPINE TREE ではなく、真の共作で大部分が構成されている、全員が楽しめたアルバムなのです。
実際、ラインナップの変更を強調するかのように、アルバムの幕開けは “Harridan” での Wilson のベースラインが新鮮な攻勢をかけてきます。このエピックはアルバムに収録されている複雑なロックの一面を象徴し、キットの裏側にいる Harrison の驚くべき名人芸をも感じ取れます。同様に、”Rats Return” や “Chimera’s Wreck” はアインシュタインの方程式のように複雑な数学ロックで、”Herd Culling” のコーラスでは、ギターのリフを核兵器の中に封じ込めたような激しさを生み出します。そしてこの大半は、Wilson がベースから始めた音楽なのです。
一方で、PORCUPINE TREE の音楽が安易なジャンル分けに抵抗する理由を示す曲も存在。”Dignity” のアコースティック・ギターは、Barbieri の鍵盤が発するナノ粒子の渦に包まれていますし、”Walk the Plank” では、痛々しいボーカルと壮大なコーラスをフィーチャーし、Wilson のソロシングル “King Ghost” や Barbieri の魅力的なソロ作品に接近。また、デラックス・エディションのボーナス・トラックとして収録されている “Love in the Past Tense” は、シンバル、キーボード、ギターが奏でるキメ細やかな音色にのって、幽玄の世界へと誘われるような壮大さが溢れています。
ただし、この豊富な音楽のためには必要とされる努力もあります。64歳の Barbieri は、自分の集中力に悩んでいます。58歳の Harrison にとっては、ドラムの肉体的な負担がより切実な問題となってきています。
「このレベルの音楽をいつまで続けられるか。今までやっていた他のバンドでは、こんなにヘヴィーでフィジカルな演奏は必要なかったんだ。PORCUPINE TREE は、常に最もハードな仕事をこなしてきた。2014年からメンバーとして参加している KING CRIMSON では、メンバーの多くが70歳をはるかに超えていたけど、70代でこうしてドラムを叩いている姿は想像できないよ…」
それでも、彼らの努力は報われています。Harrison のドラムは物理的に不可能と思われる正確さと雷鳴が混在し、Brian Eno 以来最高のサウンドスケーパーである Barbieri は水彩画家のように音に色を落とし、Wilson はギターとベースで2人のアイデアを推進し、ボーカルを自分で物語を描きます。
PORCUPINE TREE が再びファンの前でライブをするときは、これまで以上に大きな観衆を前にすることになるでしょう。そして、ツアーが終わり、3人がステージを去るとき、それが最後となるかどうかは誰にもわかりません。Harrison は、「もしかしたら、これで一区切りかもしれない」と言います。「2022年に解散するとは言っていないよ。でも、2010年は奇妙な終わり方、あるいは終わり方ではない終わり方だった。だから、もし、そうなるならね」
ただし、UK オフィシャル・チャートのデイリー・アルバムで No.1を獲得し、Wilson の考えも少し変化しつつあるようです。
「もう1枚アルバムを作る可能性は十分にあると思う。実際、Richard とそのことについて話していたんだ。2週間前にドイツでベルリンでプロモをやっていたんだけど、誰かにその質問をされたんだ。私はこう思ったんだ。まだやるべきことがあると。”Walk the Plank” みたいな曲は、我々が最後に作った曲の一つなんだけど、ギターが全く入っていなくて、私がどんどん電子音楽に移行していることを反映しているような曲なんだ。PORCUPINE TREE のアルバムで、ギターではなくキーボードだけにフォーカスしたものを作れないかと考えたんだ。何か違うものでなければ、次のアルバムを正当化することはできないだろう」
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH TC OF SOMALGIA & SPIDER GOD !!
“Everything Is Backwards, Everything Is Upside Down. You Either Resonate With That Quote Or You Don’t – If You Do, Then You’ll Probably Understand ‘Inverted World”
DISC REVIEW “INVERTED WORLD”
「現在 Repose には、PAPANGU, LYKHAEON, SPIDER GOD, SOMALGIA. GATE MASTER, REIGN といったバンドが所属していて、非常に多彩な顔ぶれが揃っているんだ。こうしたバンドは全て、ブラックメタルの境界を押し広げ、現在革新の最前線にいると感じているよ。僕は同じものを何度も聴きたくないし、レーベルもその精神を反映している。 イノベーションか、時代遅れになるかの二択だよ。僕は、エクストリームとプログレッシブの間のギャップを埋めるという使命を担っているからね」
エクストリームとプログの架け橋 SOMALGIA でギター、ボーカル、シンセを担う TC は、楽器以外にも三足の草鞋を履いた英国メタル・アンダーグラウンドの鬼才。ZOPP で知られる Ryan S との蜜月 SOMALGIA 以外にも、BACKSTREET BOYS やブリトニー、果ては K-Pop のブラックメタル化で度肝を抜いた SPIDER GOD に携わり、さらにそうしたブラックメタルの革新を担う俊英たちを一手に引き受けた Repose Records まで立ち上げてしまいました。TC のそうしたイノベーションとチャレンジの哲学には、米国のエッセイスト、マイケル・エルナーの言葉が根幹にありました。
「マイケル・エルナーの言葉が、”Inverted World” “逆さまの世界” のコンセプトを完璧に言い表していると思っているんだ。”すべてが逆で、すべてがひっくり返ってる。医者は健康を破壊し、弁護士は正義を破壊し、精神科医は心を破壊し、科学者は真実を破壊し、主要メディアは情報を破壊し、宗教は精神性を破壊し、政府は自由を破壊する”。 この言葉に共鳴するかしないかだよ。もし共鳴するならば、おそらく “Inverted World” を理解することができるだろうね」
非常に陰謀論めいていて、非常に反抗的で、非常に極端な思想です。少なくとも、バランスのとれた思考の持ち主なら即座に笑い飛ばすでしょうし、当然これを鵜呑みにしてしまうわけにはいきません。
ただし、ここにはおそらく、真実も少なからず含まれています。メディアが情報を大事にしているのか?宗教が心を大事にしているのか?政治が人間を大事にしているのか?あなたがまともだとしても、この問いにはたして即答できるでしょうか? TC は、ややアレな面はあるにせよ、常識を疑い、権力を疑い、メディアを疑うことで、ブラックメタルにかつて宿っていた狂気じみた反抗の精神を、良きにせよ悪しきにせよ、現代に蘇らせているのです。
「僕はプログレッシブとポップ・ミュージックへの情熱を共有していて、ブラックメタルに著しく欠けているものはメロディ、フック、構造だと感じていた。もちろん、Varg が 構造、プロダクション、ハーモニーに反抗したことが、そもそもこのサウンドを生み出したのだと認識しているし、彼らのアルバムは永遠に不滅だよ。しかし、現状を打破して変える必要があるとも思うんだ。同じアイデアを繰り返せる回数は限られているからね。純粋主義者と破壊主義者の戦いは常に続いている」
もちろん、TC の疑いの眼差しは、閉塞的なメタル世界にも向けられています。彼らはメタルの常識を覆し、新しいものの見方(あるいは聴き方)の創造を、自分の頭で考えて、自分たちだけの力で実現しようとしています。例えば、アヴァンギャルドを極めた CREATURE や Igorrr がそうであるように、SOMALGIA はエレクトロニカ、トリップホップ、サイケ、プログレッシブとブラックメタルの複雑な婚姻を次のレベルへと旅出させています。ソマリアなのか、マトリックスの影響なのか、とにかくブラックメタルらしからぬ常夏のアートワークもまさに常識の破壊。
TC は20年後の音楽を生きていて、私たちは彼を通してそれを追体験することができるのかもしれません。さらに SOMALGIA は “The March of Tyranny” のように、ノルウェーの大物アーティストに負けず劣らずアンセム的な名曲を生み出すことができるのです。TC のそうしたポップセンスは、彼が携わるもう一つのブラックメタルの破壊、ポップの黒化を指標した SPIDER GOD にもありありと提示されています。
今回弊誌では、TC にインタビューを行うことができました。「僕たちは、このシーンがかなり陳腐化していて、ちょっとした揺り戻しが必要だと感じていたんだよね。確かに、境界線を押し広げ、常に優れた音楽をリリースしているレーベルやプロジェクトはあるんだけど、誰もがベッドルーム・スタジオとセルフ・リリースのプラットフォームを使えるようになったことの弊害として、クオリティ・コントロールが以前とは違ってきていることが挙げられると思うんだ」 どうぞ!!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH STEPHEN BRODSKY & JOHN-ROBERT CONNERS OF CAVE IN !!
“I Guess Heavy Pendulum Could Mean How One Decides To Use Their Time Navigating These Hardships. The More Weight That We Allow Things To Have In Our Lives, The Heavier The Pendulum Swings.”
DISC REVIEW “HEAVY PENDULUM”
「Caleb が命を吹き込んだ曲を演奏することで、この2つのバンド (CAVE IN と OMG) 全員が彼の思い出を一緒に祝うことができて、とても感慨深いものがあったんだ。そして、あのイベントを企画し、参加してくれたすべての人々から受けたサポートは、とても心地よく、僕たちが創造性を前進させ続けるべき理由を思い出させてくれたんだよね」
マサチューセッツのヘヴィ・ロック・カルテット CAVE IN は、度重なる活動休止、ラインナップの変更、そして長年ボーカル/ベースを務めた Caleb Scofield の急逝など、重く苦しい経験と戦い続けてきました。Caleb の死をきっかけにリリースされ、彼がバンドのため最後に尽力した2019年の “Final Transmission” がそれでもバンドのほろ苦いスワンソングとならなかったのは、CAVE IN が養ってきた強さと共に、世界が彼らを求め、喪失の苦しみを共有し、サポートしたからに他なりません。
「”Heavy Pendulum” の制作では、20年代の暗い世界を尋常ないほど意識していたんだ。このアルバムのタイトルには、そうした苦難を乗り越えるために時間をどう使うかを決める、そんな意味もあるんだろうね。人生における物事の重みが増せば増すほど、振り子の揺れは重くなるのだから」
“重い振り子” と名付けられたアルバムには、苦闘と革新を続けてきた CAVE IN の折れない心、粘り強い才能が見事に投影されています。人生は振り子のようだ。良い時もあれば、悪い時もある。多くのトラウマに耐えた後、これほどの傑作で “幸福” に振り戻すことは決して容易ではないでしょう。巨大なリフとアンプを最大限活用した純粋なヘヴィ・ロックは、優雅と複雑のサブリミナル効果を活用しながら、悲しみと喪失があふれる世界に一筋の光を投げかけます。
「このレコードでは、2017年、 “Final Transmission” となった作品のスタート時に、Caleb が僕たちに勧めたビジョンを完全に具体化したかったんだ。だからある意味、借りを返すというか、約束を果たす意思こそがバンドが今回、より高いレベルに昇りたいと思う原動力となったんだ」
2000年代初頭、CAVE IN は90年代のハードコアを取り入れた作品群に続いて、新しいサウンドを模索。2000年にリリースされた “Jupiter” では、Brian McTernan 指揮のもと、スペースロックとアバンギャルドの影響を大きく取り入れるように変化。2003年、RCAレコードというメジャーに移籍すると、ポップとも捉えられる音楽性で大舞台での可能性を追求。
カオスもエモも、メタリック・ハードコアもドゥームもオルタナも捕食し、カラフルな繭で巣作りを続けてきた肉音獣。そのターゲットの変遷には常に確固とした理由がありましたが、Relapse に移籍を果たした “Heavy Pendulum” の原動力は故人との固い約束でした。
「悦生さんと彼のバンドやプロジェクトに直接触発された、僕の最近のノイズへの旅の始まりのいくつかは、実際に CAVE IN の新曲で聴くことができるよ。”Blinded by a Blaze” の終わりと “Nightmare Eyes” の終わり近くは、彼と彼の仲間を念頭に置いて演奏したんだよね」
CAVE IN が失ったのは、Caleb だけではありません。彼の追悼イベントともなった “Leave Them All Behind 2020” で共演し感銘を受けた ENDON の那倉悦生氏、そして POWER TRIP の Riley Gale。きっと亡き二人の実験魂もこの作品には生きています。
“CAVE IN は、実験とリスクを冒すときに最高の状態になる” そんな格言が生まれそうなほどに、この大作は挑戦的。もちろん、スラッジやポストメタルの “重力”、”Floating Skulls” や “Careless Offering” のような銀河系プログレッシブ・メタルはこのアルバムの基軸でしょうが、それだけではありません。
例えば、”Reckoning” は、ダーク・アメリカーナと FLEETWOOD MAC の蜜月を堪能できる CAVE IN の枠を超えた逸品ですし、タイトル曲の “Heavy Pendulum” はブルースのリズムをグランジの色合いで染め抜き、彼ららしい特徴的なギター・サウンドを使用した感情の洞穴。”Blinded by a Blaze” は SOUNDGARDEN や ALICE IN CHAINS と “Jupiter” における冒険が、ENDON を触媒に融合しているようにも思えます。
一方で、メタルマシーン “New Reality” や “Blood Spoiler” で新加入 Nate Newton が吠える喉をかき切る印象深いハウリングも見事。12分のフィナーレ “Wavering Angel” はまさに現在の CAVE IN を物語る真骨頂でしょう。もしかするとこの完全無欠に構築されたアートは、21世紀における LED ZEPPELIN、そんな異次元の領域を引き寄せたのかもしれません。時間もジャンルも、生と死さえも超越した音楽という深い好奇心の湖。
今回弊誌では、Stephen Brodsky と John-Robert Conners にインタビューを行うことができました。「悦生さんをはじめ、ENDON のメンバーの皆は、僕にとても親切にしてくれたんだ。悦生さんは “マッドマックス” に出てくるようなメッセンジャー・バッグのような楽器を演奏していたんだけど、僕はアレが今でもどんなものなのかわかっていないんだ。彼は、それだけでも非常にユニークなバンドのルックスとサウンドに、さらに特別なものを加えていたね」
苦難を乗り越えて前進することを決意し、轟くような激情と高鳴るフックの狭間で素晴らしいバランスを確保。サイクルの終わりにして始まりの作品は、CAVE IN の過去に敬意を表しながら、豊かな未来を予感させてくれますね。どうぞ!!
CAVE IN “HEAVY PENDULUM” : 10/10
CAVE IN are (associate acts)
STEPHEN BRODSKY: Guitar / Vocals
スティーヴン・ブロッズキー (NEW IDEA SOCIETY, CONVERGE, MUTOID MAN, OLD MAN GLOOM)
JOHN-ROBERT CONNERS: Drums
ジョン-ロバート・コナーズ (NOMAD STONES, DOOMRIDERS)
ADAM McGRATH: Guitar / Vocals
アダム・マッグラス (CLOUDS)
NATE NEWTON: Bass / Vocals
ネイト・ニュートン (CONVERGE, OLD MAN GLOOM, DOOMRIDERS)
CALEB SCOFIELD
ケイラブ・スコフィールド (ZOZOBRA, OLD MAN GLOOM)
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH NICK LEE OF MOON TOOTH !!
“I Liked The Idea Of Putting Something Out In The World That Might Give People Some Release From Their Anxiety And Frustration Right Now Instead Of Just Mirroring It With More Anger And Existentialism.”
DISC REVIEW “PHOTOTROPH”
「僕たちは、ロックのヒーローたちと、彼らがそれを実現するために果たさなければならなかった道のりに敬意を表しながら、何か新しいことをしようとしているんだ。 レミーならどうしただろう?ってね」
ロングアイランド出身の MOON TOOTH による目まぐるしきサード・アルバムは、過去25年間にオルタナティブ・ロックが果たしてきた奇妙で先進的な音楽の扇動に対する解答のように感じられるかもしれません。
ALICE IN CHAINS や SOUNDGARDEN にはじまり、DEFTONES の絹のような感情表現、QUEEN OF THE STONE AGE の石器時代の鼓動、MASTODON の知的な砂漠、そして TOOL の複雑怪奇なグルーヴ。”Phototroph” には、たしかにこうした瞬間が散りばめられています。しかし、”次の METALLICA になりたい” と宣言する MOON TOOTH の特異性や野心は、彼らにとっての “始まりの地” からすでに “約束の地” へと舵を切っています。
「チャック・ベリーから MOON TOOTH まで、ロックのひとつのラインをたどれるようにしたいというのが本音なんだ。他のバンドが今何をやっているかなんて、どうでもいい。僕の頭の中と心の中では、真のロックンロール・バンドでありたいんだよ」
MOON TOOTH が次の METALLICA となるために必要だったのは、”ユニーク” を超えること。METALLICA のように、他の誰もやっていないことをやること。そのために彼らは、メタル以前の音楽をもモダン・メタルで再調理して、アルバムの中でロックの歴史を一つにつなげる荒唐無稽を実現しました。
ここには、オーティス・レディングの躍動も、ヘンドリクスのリフ革命も、QUEEN のハーモニーも、クリムゾンの難解なパズルでさえ存在し、再び命を得ています。
「ギターソロを早送りで聴く?ハァ?15秒~30秒のギターソロを聴くことができないほど忙しいの? ソロを早送りするのに、なぜバンドを聴いているんだ?!?!失礼ながら、君が言うような人たちは、おそらくギターソロそのものを聴くよりも、ギターソロに反応する人の YouTube ビデオを見る方が好きなんだろうな。冗談じゃないよ!」
重要なのは、この作品にロックの不純物がひとかけらも混入してはいないことです。あの RIOT V にも所属する Nick Lee の左腕にはスリルとエモーション、それにかつて誰もがギターに期待していたスペクタクルが存分に宿っていますし、自然保護施設でも働く John Carbone の表現力、感情を高めた歌声には人知を超えた野獣が降臨。ロックの王道が忘れ去られた世界で、ロックの王道を一人、むき出しの感情、むき出しのサウンドで歩んでいます。
さらに、タイトル・トラック “Phototroph” を聴けば、RUSH を思わせる千変万化なコンポジションに、FOO FIGHTERS もたじろぐほどのアリーナ・サイズのフックを刻み込んでいることが伝わるはず。”Nymphaeaceae” では、歪んだリフの曲がりくねった迷路に THE ALLMAN BROTHERS の遺志を込め、その奥深くにボーカル・フックを丁寧に埋め込んでいます。MOON TOOTH は実験とポップのシーソーを誰よりも巧みに乗りこなすのです。
「30のアイデアのうち、この11曲がとてもうまくまとまったんだ。楽観的で希望に満ちた感じがするから。今の時代の不安やフラストレーションを、怒りや実存主義に置き換えるのではなく、そこから解放されるようなものを世に送り出したいという思いがあったんだ」
パンデミック、戦争、政治の腐敗、独裁者の台頭。混乱と混沌の20年代においても、MOON TOOTH は人間の強さを信じています。”Phototroph” “光栄養生物” と訳されるアルバム・タイトルには、希望という光に向かって進んでいく私たちの姿が重ねられています。
たしかに今、誰にとっても、”聖域” は消え去りました。しかし逆に今こそ、Nick の言葉を借りれば、これまで自覚することのなかった、目を背けていた私たち自身の “不寛容” と向かい合うチャンスなのかもしれませんね。”Phototroph” はそんな私たちの “光合成” を促すような作品ではないでしょうか。
2012年に結成された MOON TOOTH は、初期にタグ付けされたプログ・メタルというタグをいまでは取り払ったように見えます。それは彼らの音楽が十分にプログレッシブでもなく、十分にメタルでもなかったからではなく、その二つ以上のものを兼ね備えていたから。今回弊誌では、Nick Lee にインタビューを行うことができました。「人間は時に、ポジティブなことに集中したり、目標を設定してそこに向かって進んだりすることを、自分で選択しなければならないことがある。それを伝えたかったんだ」 三度目の登場。スケール感が倍増しています。どうぞ!!