EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DAVE DAVIDSON OF GARGOYL !!
‘For Me a Band Like Alice In Chains Does Have Progressive Edge To Them Even Though They’re Considered Grunge. They Definitely Weren’t Just Taking a Radio Rock Approach, They Always Had Something New To Say With Every Album.”
DISC REVIEW “GARGOYL”
「僕はこのプロジェクトを自分の中にある別の影響を吐き出す場所にしたかったんだ。普段、僕がかかわっている音楽から離れてね。そうすることで、アーティストとしての別の一面を表現することができるから。」
前身バンドも含め、ボストンの名状しがたきデスメタル REVOCATION で2000年から活動を続ける Dave Davidson は、究極に複雑なリフ、慄くようなスクリーム、そしてブラストの嵐の中で20年を過ごしてきました。つまり、自らの全てをエクストリームメタルへと捧げることで、シーン随一のギタープレイヤーという威名を得ることとなったのです。DEATH や CYNIC の正当後継者、魂の継承は彼にこそ相応しい。ただし、それは Dave という多面体の音楽家にとってほんの一面にしか過ぎませんでした。
「自分たちが影響を受けたものにオマージュを捧げたいという気持ちはあったと思うけど、それは自分たちのやり方でやる必要があったんだ。 俺たちは過去を振り返るバンドになろうとしているのではなく、影響を受けてそれを発展させることができるバンドになろうとしているからね。」
AYAHUASCA のギター/ボーカル Luke Roberts を巻き込み立ち上げた新たなプロジェクト GARGOYL で、Dave は自らが多感なスポンジだった90年代の音景を、培った20年の発展を注ぎながら再投影してみせました。グランジ、ゴス、オルタナティブ。具体的には、ALICE IN CHAINS や FAITH NO MORE の面影を、Dave らしいプログレッシブやジャズの設計図で匠のリフォームの施したとでも言えるでしょうか。ALICE IN CHAINS + OPETH, もしくは MARTYR という評価は的を得ているように思えますし、プログレッシブ・グランジという Dave が失笑したラベルにしても、少なくとも作成者の苦悩と意図は十分に伝わるはずです。
「間違いなく、僕たちは全員が ALICE IN CHAINS から大きな影響を受けていると言えるね。そうは言っても、Luke は間違いなく非常にユニークなアプローチを行なっているし、彼は本当に個性的になろうと努力しているんだよ。」
Luke を乗船させたのは明らかに大正解でした。ALICE IN CHAINS の神々しき暗闇が、Layne Staley の絶望を認めた絶唱とギタリスト Jerry Cantrell の朴訥な背声が織りなす、音楽理論を超越した不気味で不思議なハーモニーにより完成を見ていたことは間違いありません。そしてアルバム “Gargoyl” が荘厳極まる “Truth of a Tyrant” のアカペラハーモニーで幕を開けるように、Luke の声によって GARGOYL は、ALICE IN CHAINS の実験をさらに色濃く推し進めているのです。
「僕にとってクラシック音楽やジャズは超ヘヴィーなものなんだよ。不安や実存的な恐怖を呼び起こす緊張感、クライマックスでその緊張感を解消した時のカタルシスや爆発的な解放感など、曲の中にテンションを生み出すことで得られる攻撃性やアティテュードがね。」
実際、”Gargoyl” はブラストやグロウルに頼らなくとも重さの壁を超えられることの証明でもあります。不協和なドゥーム、不規則なアシッドトリップに潜みそそり立つ美麗なる聖堂。LEPROUS にも通じるそのコントラストこそ、真なるヘヴィー、真なるプログレッシブを導く鍵であり、メタルがグランジを捕食した気高き勲章なのかも知れませんね。
今回弊誌では、Dave Davidson にインタビューを行うことが出来ました。「僕にとって ALICE IN CHAINS のようなバンドは、グランジと言われていてもプログレッシブなエッジを持っているんだよ。Jerry Cantrell のソロは特に派手ではないし、夥しいわけではないんだけど、僕ははずっと愛してきた。彼はまた、ユニークなリフを生み出す優れた耳を持っていたしね。とにかく、彼らはただラジオ・ロック的なアプローチを取っていたわけでは全くない。どのアルバムでも常に新たな挑戦に挑んでいたんだ。」 二度目の登場。どうぞ!!
A LISTENER’S GUIDE TO KRALLICE’S COLIN MARSTON & NYC AVANT-METAL SCENE
“Undoubtedly NYC Avant-metal Scene Is One Of The Best, But That’s Almost a Technicality Because New York City Is The Densest, Most Diverse Blob Of Humans Probably On The Planet. So Everything That Benefits From a Lot Of People And a Lot Of Variety Is Going To Benefit.”
WARR GUITAR, MENEGROTH, AND NYC
ニューヨークの怪人という呼称は、Colin Marston にこそ相応しいでしょう。14弦まで豊富なバリエーションを持ち、ベースとギターの両義性を有する愛機 “Warr Guitar” は、Colin が語る NYC の個性と多様性を体現した楽器にも思えます。さらに、鍵盤からドラムス、ノーマルなギター、ベースを操るマルチな才能にまで恵まれた Colin の活躍はまさに八面六臂。
「僕が Warr Guitar を手に取ろうと思ったのは、1996年に Trey Gunn と Tony Levin が KING CRIMSON でプレイするのを見たからなんだ。」 前回のインタビュー で Colin はそう語ってくれました。高校のころ、バンドメイトの父親から KING CRIMSON を教わった Colin は、再結成した彼らのライブに赴き衝撃を受けました。当然、Colin は Trey と Tony がチャップマンスティックという10, 12弦の異質をタッチしベースとギターの狭間を演出することは知っていましたが、Trey はすでに Warr Guitar という怪物に乗り換えていたからです。
「この楽器の両義性も重要なポイントだよ。ベースであり、ギターであり、その両方かもしれないんだから。いつだってこのギターのような、しかし幅広いレンジを持つ楽器を楽しんでいるよ。ギターの領域では低音弦だけチューンダウンしているんだ。そしてベースは究極に低音とハイストリングスをプレイしているよ。Warr Guitar の魅力は何と言ってもこのレンジの広さなんだ。同じ音域だけで楽曲やアルバムを構成するのは本当に退屈だからね。」
チャップマンスティックが文字通りスティックであるのに対して、Warr Guitar はギターとベースをその体躯に宿すキメラ。幅広いオクターブレンジでギターとベース、リズムとリードを同時にフォロー可能、特徴的なボイシング。新進気鋭の若き Colin Marston にとって、この楽器は壮大な音楽的空想を実現する鍵でした。
実は、メタル、プログはもちろん、フォーク、スムースジャズ、アヴァンギャルドと Warr Guitar が織りなす世界は驚くほど広く多様です。ただし、完全にカスタマイズ可能な新品は50万円以上、さらに製作者は癌を患い現在新規のオーダーを受け付けていません。門戸は狭いながら、こういった奇妙な楽器によって既存の音楽が再構築されることは必要不可欠な新陳代謝でしょう。
カナダが産んだプログレッシブデスメタルの魔境 GORGUTS に所属しながら、盟友 Mick Barr と立ち上げた超個性的ブラックメタル集団 KRALLICE をはじめ、GORGUTS の Kevin Hufnagel と探索するリフ迷宮 DYSRHYTHMIA、インストカルト BEHOLD…THE ARCTOPUS, 実験的ソロプロジェクト INDRICOTHERE と数多の奇々怪界でニューヨークのアヴァンメタルを牽引する主役の顔もまた一つ。
「NEUROSIS のアルバムを1枚選ぶのはとても難しかったね。所謂プログレバンドではなく、真の意味でのプログレッシブなロックバンドだよ。重要な違いだね。僕の中で、”The Word as Law” は最も成功したハードコアとメタルの融合だと言えるね。ただ何よりも最高にユニークな音楽だよ。ベースはA+の仕事をしているし、シンプルなパンクと複雑でエピカルなメタルがこのレコードで最高の”和解”をしたと言えるかもしれないね。」
特に、前回のインタビューでこう言って崇拝を露わにしていた NEUROSIS の Dave Ed をアルバムに招待し、ブラックメタルだろうがなかろうが全員のクリエイティブな精神を集結しながらメタルを未知の領域へと導く KRALLICE の重要性はこれまで以上に語られるべきでしょう。
一方で、ARTIFICIAL BRAIN, LITRUGY, KAYO DOT, EAST OF THE WALL, WOE, DEFEATIST, CASTEVET, PYRRHON, IMPERIAL TRIUMPHANT といったメタルの先鋭を象徴する NYC の百鬼夜行も、Colin が所有する Menegroth スタジオから彼の手によって発進しているのです。
「疑いようもなく最高のシーンの一つ。それは当然なんだ。なぜならニューヨーク市はおそらく地球上で最も高密度で最も多様な人間の塊だから。だから、誰もが多くの人々と多くの多様性から受けるべくして恩恵を受けていると言えるね。大都市なら同じ状況になるだろうけど、NYC は特別多様で国際的だからね。」
様々な文化や発言に触れることこそ人類の強み。それは世界に蔓延る分断の嵐とはすっかり真逆の考え方で、音楽やストーリーに多様性を認めるモダンメタルのスピリットそのもの。だからこそ、Colin の元には仕事のオファーが舞い込み続けるのでしょう。
このコロナ禍の中でも Colin は粛々とリリース&プロデュースを続けています。その膨大なアーカイブから、近年の重要作10枚について自身の言葉で語ってくれました。
「ワーカホリックという言葉は完全に間違いというわけではないんだけど、僕は作曲やレコーディングを本当に楽しんでいるからね。ワーカホリックってネガティブな響きがあるんだけど、僕は音楽制作に全くそういった感情は抱いていないんだ。
時々はもっと音楽以外にも興味の対象が広がればいいのにとも思うんだけどね…だけど僕にとって音楽は未だに広大で無限の奥行を備えているんだ。だから今でも惹き込まれ続けているのさ。」
COLIN TALKS ABOUT HIS RECENT WORKS
1. KRALLICE “MASS CATHEXIS”
this is the album we worked on mostly between 2018 and spring 2020. it was originally supposed to include 4 other songs, but in the interest of the album not taking forever to finish and then being too long to digest, we cut 2 songs, and then 2 more (although those 4 songs will now just form the core of our next album). i think this album features the most variety of any Krallice release, and although it features only one song “written” by me (the title track), i had more of a hand in the arrangement and drum writing than ever before. McMaster also contributed the most material to this out of any Krallice record. it was awesome to have Dave Ed back (since he wasn’t on GBF or Wolf).
このアルバムは俺たちがほぼ、2018年から2020年の春までに製作した作品だ。もともとは、別の4曲を収録するはずだったんだけど、アルバムの完成に時間がかかりすぎたり、収録時間が長くなりすぎるといった理由で2曲をまずカットし、それからさらに2曲を削ったんだ。だけどその4曲は次のアルバムの核となるものだよ。
俺は “Mass Cathexis” は KRALLICE のアルバムでも最もバラエティーに富んでいると思っている。ただ、俺はこの作品ではタイトルトラック一曲しか書いていないんだけどね。今回はそれよりも、アレンジメントやドラムのパートを書くことに注力したんだよ。Nicholas McMaster がどの作品よりも多くのマテリアルで貢献してくれたね。”Go Be Forgotten”, “Wolf” にはいなかった Dave Edwardson (NEUROSIS) が帰ってきたのも良かったよね。
2. KRALLICE WITH DAVE EDWARDSON “LOUM”
Dave Ed is one of my favorite musicians, both as a bassist, and vocalist. i became obsessed with Neurosis in high school and they informed me as a creative person in so many ways over the years. a truly progressive band that does what they want in the way they want and fuck everyone else. so this record was really a dream come true for me (and mick who also has a long history with Neurosis) to work with Dave and to get him to be the lead singer on a full album! pretty sure it’s the only album where that’s the case in existence–so i also feel like we did the world a public service here, haha!
this is also the Krallice album that i contributed the most writing (20 minutes out of 32 i spearheaded), so it has more of that knotty, dissonant, fractured and uncomfortable feeling than our other work, which i thought would be a perfect bedrock for dave’s vocals.
Dave Ed はベーシストとしてもヴォーカリストとしても、俺の大好きなミュージシャンの一人だ。高校生の時に NEUROSIS に夢中になったんだけど、彼らは何年にもわたってクリエイティブな人間として多くのことを教えてくれたんだ。だから、このアルバムは俺にとって(そしてNeurosisとの長い付き合いがある Mick Barr にとっても)本当に夢のようなことだったんだ!Dave と仕事をして、フルアルバムのリードシンガーになってもらえたんだからね。
これは、アルバム全編で Dave が歌う唯一の作品だと思うんだ。だから俺たちは世界に公共のサービスをもたらしてあげたような気さえするんだ。(笑)
俺が最も多くの曲を書いた KRALLICE のレコードでもあるから(32分のうち20分は俺が率先して作った)、他の作品よりも複雑で、不協和音があって、分断されていて、居心地が悪い感じがして、Dave Edのヴォーカルに対する完璧な基盤になると思ったんだ。
3. BEHOLD…THE ARCTOPUS “HAPELEPTIC OVERTROVE”
so proud of this album! i had been wanting to have a record with a very different approach to the drumming for a long time, and i finally did it! having jason bauers join the band was a perfect fit since he had experience playing 20th century chamber music, and i wanted that to basically be the vibe of the new behold album. also as a recording engineer working on a lot of extreme metal, i was so tired of the “cshhhhhhhhhhhhhhh cshhhhhh shshhshhhhshsh” of washy crashy cymbals smashing around constantly. tech metal benefits from a more articulated sound, so why not built that into the instrumentation itself, rather than writing yourself into a corner with blast beats and double kick that aren;t even audible without triggering or extreme processing in the mix? i also gravitated to a more brutal death metal style of writing for the normal guitar on this album. i like the combination of bdm guitar and 20th century classical percussion! for me it’s a perfect match. for most people, i’m sure it’s going to sound like a big pile of shit! it would be Arctopus without that tension though!
our “thrash” album! it was really fun to change the dys lineup to 2-guitars and drums for 3 of the songs. having no bass at all on 3 songs, but lots of dual guitar seemed to fit the thrash vibe. i even got to do 2 guitar solos! the one in “Power Symmetry” is a written solo, and the one in “Twin Stalkers” is purely improvised. i’m also very proud of the song “Progressive Entrapment,” which i wrote on bass. i have a feeling that song is not going to resonate with many people, but it’s my favorite for many reasons which i think are impossible to explain. kevin and jeff’s playing and writing on this album are world-class. what a pleasure it is to record those guys!
俺たちの “スラッシュ” アルバムだ!DYSRHYTHMIA のラインナップを3曲でツインギターとツインドラムスに変えるのはとても楽しかったね。その3曲には全くベースが入っていないんだけど、沢山のツインギターがむしろこのスラッシュのヴァイブにフィットしたんだ。俺はギターソロまで弾いたんだよ!一つは構築されたソロの “Power Symmetry” で、もう一つは純粋なインプロヴァイズの “Twin Stalkers” だよ。
それに、”Progressive Entrapment” はとても誇りに思っているんだ。この曲で俺はベースを書いたんだけどね。多くの人にアピールする楽曲じゃないと感じていたんだけど、多くの理由から俺のフェイバリットなんだ。説明するのは難しいんだけど。アルバムにおける Kevin と Jeff の演奏はまさにワールドクラスだ。彼らとレコーディングが出来るのは本当に喜びだね。
5. PHONON “ALLOY”
so excited with how this album came out! it’s just one long improvisation which we cut into chunks and re-ordered. it came out so great! i really like listening to this. i have had other bands with Weasel, but never had improvised with him where i was playing bass. i found it really comfortable and exciting at the same time. i love weasel’s style and i found it easy to work with in this context. elliott and álvaro’s guitar work is the perfect textural companion to the rhythm section weasel and i created. elliott is a total legend and it was an absolute honor to make an album with him. Álvaro and i are newer friends, but just in the last couple years we’ve already collaborated on 5 releases! i like how heavy and metered this album came out even though it’s completely free improv.
i was hired to write all the guitar for an album of Pyramids. i was sent drum machine from Vindsval of Blut Aus Nord, who i’m a massive fan of. i wrote songs to the drum machine on guitar, added a bunch of keyboards, and then sent it to the Pyramids guys to add vocals and additional keys. so this is the version before i sent it to Pyramids, which just Vindsval’s drums and my guitar and keys. i got to really like the instrumental version, and it also included kind of a “lost ambient album” since i extended the end of every song into an ambient exploration. i never planned to release this, but when the pandemic hit, and i lost thousands and thousands of dollars in income from cancelled recording sessions, i released it as a small fundraiser for the studio.
it’s worth noting that i did actually make 2 new proper Indricothere albums during the lockdown: a 3.5-hour ambient record and a crushing sluggish brutal death metal record:
https://indricothere.bandcamp.com/album/xi-5
https://indricothere.bandcamp.com/album/tedium-torpor-stasis
俺は PYRAMIDS のアルバムのためにギターパートすべての作曲を依頼されたんだ。大ファンの BLUT AUS NORD の Vindsval からドラムマシンを送ってもらったんだ。そのドラムマシンに合わせてギターを書いて、たくさんキーボードを加えて彼らに送ったんだ。彼らはそれにボーカルやキーボードをさらに加えたんだよ。
これは PYRAMIDS に送る前のバージョンで、Vindsvalのドラムと僕のギターと鍵盤だけで作ったんだ。このインストバージョンが本当に気に入っていたし、全曲の終わりをアンビエントな探究に拡張した “失われたアンビエントアルバム” のようなものも含まれているんだ。
これをリリースするつもりはなかったんだけど、パンデミックが起きて、レコーディングのキャンセルで何千ドルもの収入を失った時に、スタジオのためささやかな資金集めのためにリリースしたんだ。特筆すべきは、ロックダウンの間に INDRICOTHERE で適切な2枚の新作を作ったことだよ。3.5時間のアンビエント・レコードと、破砕的で緩慢なブルータル・デスメタルのレコードだ。
7. COLIN MARSTON “SUBLIVE”
i was approached by Arun from Subcontinental Records to release a live album of my experimental/classical music.
tracks 1 and 2 are from a show at EMPAC in Troy NY from 2015. the first is in my Indricothere keyboard style. the 2nd is feedback controlled player piano. i later went back to EMPAC and recorded a full-album version of these type of pieces, with Eliane Gazzard collaborating on sustain pedal and piano called, “Parallels of Infinite Perspect” on Álvaro’s Illuso label.
the 3rd track is an improvised duet with Mario Diaz de Leon from Issue Project room in 2019. i hope to do a full album with him soon!
Subcontinental Records の Arun から、俺の実験的/クラシカル音楽のライブアルバムを出さないかってアプローチされてね。1曲目と2曲目は、2015年ニューヨーク EMPAC でのライブなんだ。1曲目はオレが INDRICOTHERE でやってるキーボードのスタイルだ。2曲目はフィードバックをコントロールしたピアノ。後から EMPAC に戻って、Eliane Gazzard とフルアルバムバージョンを録音したんだ。
3曲目は、Issue Project の Mario Diaz de Leon とインプロヴァイズのデュエット。彼とはすぐにフルアルバムを作りたいな!
PRODUCTION WORKS
8. IMPERIAL TRIUMPHANT “ALPHAVILLE”
i love working with Imperial. zach has taken the band on an awesome trajectory over the years and it’s a honor to be along for the ride and to get to collaborate and help him realize his vision. the band is so awesome now with kenny and steve–feels like a real BAND now, with everyone contributing. i love that they leave some looseness in the music and are much more interested in a compelling performance rather than things being 100% accurate. they recognize the value of leaving some dirt and some mystery in a mix too, rather than going for a squeaky clean procut with no rough edges. they are open to lots of experimentation but also value a more jazz-oriented mentality where the instruments sound like people playing together and kicking ass.
IMPERIAL TRIUMPHANT と仕事をするのは大好きだよ。Zack は何年にもわたってバンドを素晴らしい軌道に乗せてきたし、その道を一緒に歩むことができて、コラボレートして彼のビジョンを実現する手助けをすることができて光栄だよ。Kenny と Steve がいる今のバンドはとても素晴らしいよ。全員が貢献して、真の “バンド” になっているね。
彼らは音楽に多少の緩みを残していて、100%正確なものを作ることよりも、説得力のあるパフォーマンスに興味を持っているから好きなんだ。エッジのない、ラフさのないキレイなカットを目指すのではなく、多少の汚れやミステリーをミックスに残すことの価値を認識しているからね。彼らは多くの実験にオープンであると同時に、楽器が一緒に演奏しているように聞こえるようなジャズ指向のメンタリティも大切にしているんだ。
9. AFTERBIRTH “FOUR DIMENSIONAL FLESH”
yes! love this record and this band. i’m so happy they came to me for this recording. an honor. each musician has a totally unique voice on their instrument. i love the prog flair, but the tasteful tempering through quality songcraft. these guys really balance the traditional well with the experimental. it’s very accessible somehow, without being annoying in the way that “accessible” can be, at least for me. it’s also very exciting to me that these guys all value a good-quality more “straightforward” recording/mixing style, rather than wanting that sound-replaced/quantized/amp-simulated vibe that is so omnipresent in modern “professional” recordings.
pyrrhon are the best bros. i love hanging out and joking around with these guys. they are hilarious. also so honored and happy to have gotten to finally record/mix them for this and the previous album. alex cohen is undoubtedly a technical master, but i think the band started to become truly amazing when steve schweggler stepped in behind the drum kit. his style and aggressive playing fit with Dylan, Erik and Doug just perfectly. it’s great how masterful pyrrhons “tech metal” writing is, but even greater how they also have a purely improvised free-form side to their spirit that’s just as effective. these guys are unstoppable musicians and i love that they also have Seputus, which feature all 4 of them AGAIN! as well as many other bands. these guys get it: make a ton of shit and have it all be awesome. haha
undoubtedly one of the best, but that’s almost a technicality because New York city is the densest, most diverse blob of humans probably on the planet. so everything that benefits from a lot of people and a lot of variety is going to benefit. so many big cities can make similar claims, but NYC is exceptionally diverse and international. being shoved together with a ton of other people, some with similar goals, but a range of approaches and influences is only going to create a richer scene with maximum life and vibrance: what a strength there is in being exposed to a wide variety of approaches and statements!
i’m sorry, but people who believe in the value of segregation based on background are the reason humanity will most likely destroy itself. if having a diverse community isn’t totally obvious as a strength, then we have no hope and deserve to die.
i have been very lucky to still have some remote studio work, but i haven’t had an attended recording session since march! my friends who rely on the live music world for their income are totally fucked. what’s really sad isn’t that Corona happened. that’s actually just normal and natural. what’s so disappointing is how selfishly many are treating an issue (including the American government!!!!) that’s solely and directly about our collective survival as a species. people can’t get it through their heads that all the activities that they want to return to will be MADE POSSIBLE BY quarantine/distancing/masks/closing non-essential things, rather than seeing those things as an impediment to freedom. once again, if you see this as an issue of personal freedom, rather than ENSURING YOUR OWN HEALTH AND FUTURE, then humanity is fucked and we’re all going to die a horrible slow death together as the modern world crumbles. if your goal is to destroy all humans including yourself and your loved ones and me, then you’re doing great! keep going! thanks!
Other things panned include:
– the debut full length from Edenic Past
– Arelseum II
– a collaborative album with Mike Pride, Jamie Saft, and Mick Barr
– a collobarion with Andrew Hawkins from Bearing Teeth
– a full classical symphony, presented as a solo album
– 2 new krallice albums
and there will be a lot more i’m sure.
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JAN ZEHRFELD OF PANZERBALLETT !!
“Planet X Were The First Band I’ve Heard With This Special Blend Of Low-Tuned Heavy Guitar Riffs, Dark Atmospheres, Jazz Harmony, Precision And Virtuosity. “Planet Z” Could Be Understood As My Vision Of a Sequel To That.”
DISC REVIEW “PLANET Z”
「私の愛する2つの異なった音楽世界を融合させるつもりだった。このバンド名を見つけることが出来てラッキーだったよ。とても良くコンセプトを表現しているからね。ヘヴィーな鋼鉄とソフトなダンス。両方とも深く気を配る必要があるというのが共通点だね。戦車は精密なエンジニアリングを要求されるし、バレーは舞踏術をマスターした独創性に基づくからね。」
ドイツが誇る PANZERBALLETT は、ヘヴィーとソフト、精密と独創、複雑と明快を股にかけ、重音舞踏会を華麗に駆け抜ける高性能ジャズ式重戦車。その異様と壮観には5つの掟が定められています。
「音楽とテクニックでリスナーに感動を与える」「多面性を持って音楽的にフレッシュでいる」「音楽の予測性と非予測性をバランス良くミックス」「高い知的レベルを保ちながらアグレッションを持つ」「リスナーの期待に沿わないで挑発する」
実際、PANZERBALLETT はこれまで、新鮮なアイデアと予想外の行動でリスナーに驚きを与え続けてきました。
Frank Zappa, WEATHER REPORT, ABBA といった多様な泉から涌き出でるカバーの数々、”Take Five” や “ピンクパンサーのテーマ” を自らのセットリストに組み込むその貪欲、そしてサックスはもちろん、インドの伝統楽器にタイプライター、果ては Mattius Eklundh まで “使用” する大胆奇抜まで、常軌を逸した PANZERBALLETT の辞書に不可能の文字は存在しないのです。
「PLANET X は低音のヘヴィーなギターリフ、ダークな雰囲気、ジャズのハーモニー、正確さ、そして名人芸の特別なブレンドを持っていたね。こんなバンドは聴いたことがなかったよ。だから、”Planet Z”は、”Planet X” の続編のような作品を作ってみたいという願望のあらわれなんだ。」
テクニシャン・オブ・テクニシャンを結集した PANZERBALLETT ですが、それでも Jan Zehrfeld という大佐の乗り物であることは疑いの余地もありません。そして、最新作 “Planet Z” は、Zehrfeld の頭文字を頂くように以前よりさらにソロアルバムの性質が高まった作品と言えるのです。
The Brecker Brothers, TRIBAL TECH, MESHUGGAH といった異能に影響を受けてきた Jan ですが、そのヘヴィーメタルビバップな魂を最も喚起したのが PLANET X でした。
キーボードの VAN HALEN こと Derek Sherinian が名手 Virgil Donati と立ち上げたインストフュージョンプロジェクト。Tony MacAlpine, T.J. Helmerich, Brett Garsed, Alan Holdsworth, Billy Sheehan, Dave LaRue などなど奇跡的なメンバーを集めて、メタルとジャズの交差点を探った早すぎたバンドです。
異端は異端を知る。そんな宇宙人の魂を継ぐように、アルバムは Virgil Donati のドラムスをフィーチャーした格好のジャズメタル “Prime Time” でその幕を開けます。
「彼らは皆私に影響を与えていて、特に Virgil からは大きな影響を受けている。だからまず、彼に声をかけたんだ。でも素晴らしい出発点になったよ。なぜなら、彼が参加していることで他の一流のドラマーたちにも参加を了承してもらうことができたからね。」
今回のゲストを大勢招くそのやり方も、PLANET X を見習ったものかも知れませんね。Virgil, Marco Minnemann, Morgan Agren, Gergo Borlai, Hannes Grossmann, Andy Lind。OBSCURA で多忙な Sebastian Lanser の休養と共に自らが愛するドラマー6名を招くことで、アルバムはさらにソロ作品の色を濃くしていきます。
「クラッシック作曲家の中でワーグナーは、おそらく最も “メタル” な音楽性を持った一人だから。」
その言葉通り、鬼才ワグナーのワルキューレはメタルの五重奏へと堂々進化し、ウニとタコの壮絶な戦いを複雑怪奇な音楽で表現し、遂には SOS のモールス信号をそのまま楽曲へと組み込んでしまう。Jan の爆発する芸術は “Planet Z” という遠く離れた宇宙の星で目一杯花開いたのです。
今回弊誌では、Jan Zehrfeld にインタビューを行うことが出来ました。「この15年の間に、PANZERBALLETT は独自の音楽領域を作り上げてきたね。音楽を作る時は、その領域に飛び込んでいるんだけど、それって自分の “惑星” に引きこもっていると言えるかもしれないよね。」 前回のインタビューと合わせてどうぞ!!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH BEN SHARP A.K.A. CLOUDKICKER !!
“I Chose “What They Do Is Not Art” Because It Represents Feelings I Have About People Or Groups That Use Music In Grotesque Ways Like, Transparently Peddling Half-Witted And Divisive Political Fads For “Clout,” Or Something.”
DISC REVIEW “SOLITUDE”
「元々は人と一緒に音楽を作るのに疲れていたから、DIY でやり始めたんだ。リフを書いて、それを録音して、自分でMIDIでドラムを加えて、数分で多かれ少なかれ音楽が完成するという即効性が好きだったんだよね。狭い部屋の中でバンドと一緒に音楽を書いて、それを録音するために何ヶ月も何年も待たされるよりも、自分がやっていることの可能性をよりはっきりと見ることができたからね。」
2000年代後半から2010年代初頭にかけて、メタルの世界には明確な変化がありました。Misha Mansoor, Tosin Abasi, Angel Vivaldi, CHIMP SPANNER。ホームスタジオを活用し、制作から販売、プロモーションまですべてを1人でこなすベッドルームミュージシャンの登場は、アーティストになるためのハードルが才能の部分によりフォーカスされただけでなく、多様性と個性の時代の幕開けに様々な音楽活動のあり方を認めた画期的な出来事でした。
その中でも孤高の存在が CLOUDKICKER でした。雲を掴むようなその名前の背後には、Ben Sharp という絶対的な謎を湛えた男が存在し、インタビューを拒んでいた彼について判明しているのは Djent とポストメタルの狭間で真にプログレッシブな音の葉をプロデュース、レコーディングする能力を持っているという事実だけでした。
「”Woum” は2008年の “The Discovery” から始まった “本” の最終章だったんだ。2008年から2015年にかけて僕は多くの音楽的領域を探検し、CLOUDKICKER というプロジェクトが想像していた以上に大きなものになっていくのを見て、自分の愛するバンドの一つ (INTRONAUT) が自分のバンドとして演奏しているツアーにまで行くことができた。」
2008年の “The Discovery” 以来、感情と技術の衝撃的なマリアージュ “Beacons”, ポリリズミックリフをアコースティックな旋律に置き換えた “Let Yourself Be Huge”, シューゲイザー、ポストグランジ、エクスペリメンタルのメルティングポット “Fade”, “Subhume” と CLOUDKICKER はインテンス極まる音楽の多様な旅を続け、後続に計り知れない影響を及ぼし、そして一度は燃え尽きました。
「2016年に娘が生まれたことは、しばらくの間このマシンを一時停止するのに便利な口実だったと思う。だけど実際には、単純にアルバムを作り続けたくなかっただけなんだ。作り続けるっていう、自分自身や他の人からの期待が重くなりすぎたのかもしれないね。」
それでも一度、廻り続ける歯車を停止し、音楽制作のマシンではなく、意欲が湧いた時に創造するアーティスト本来のやり方に立ち返ることで、Ben Sharp は2019年に “Unending” で文字通り本の終幕を破り捨てることができたのです。ただし、その “Unending” は以前の CLOUDKICKER と未来の CLOUDKICKER をつなげる架け橋に過ぎませんでした。
「アメリカでは不安、怒り、恨み、不信感なんかが多く感じられるようになったね。多くの人が無視されたり、無効にされたりしていると感じているようなんだ。自分と道徳的にも哲学的にも敵対していると思う人に対して、コントロールできない感情をコントロールするための方法として怒りをぶつけているようだね。」
巨大な不安に押しつぶされるような “Ludendorffbrucke” の重厚、技術、圧力は “Solitude” という48分の孤独な狂気を無慈悲にも象徴します。互いを記号化し、ただその記号を無意味に追いかけ無意味に歪み合う2020年の暗黒は、Ben Sharp を飲み込み黒い激音として吐き出されました。
「音楽をグロテスクな方法で使っている人やグループに対しての僕の感情を表しているからこの言葉を選んだんだ。よくわからないけど、”権力” のために中途半端で見え透いていて、政治的に流行をあからさまに売り込んでいるアーティストやグループに対しての僕の感情を表しているんだろう。 」
彼らのやっていることは芸術じゃない。MESHUGGAH が映画のサウンドトラックを拵えたような、或いは SIGUR ROS が暗黒面に堕ちたような、感情溢れる闇のサウンドスケープ “What They Do is Not Art” は、人々が途方もない痛みをかかえる世界において、それでも権力に擦り寄り、芸術よりも金や名誉を模索するゾンビアーティストへの怒りと皮肉に満ちた Ben Sharp そのものでしょう。
CLOUDKICKER の冒険は完全に新章へと突入しました。もちろん、メタルの映画監督、盟友 INTRONAUT の Sacha Dunable が2曲に参加したことも、レコードのドラマ性と真実味を高めています。Djent を遠い過去へと置き去りにするポリリズムメタルの新たな到達点、”Code Language” はそうして記号化された思考や解釈、言語の在りようを皮肉にもインストゥルメンタルの迷宮で嘆いてみせるのです。
今回弊誌では、Ben Sharp a.k.a. CLOUDKICKER にインタビューを行うことができました。「MESHUGGAH の “Nothing” “Catch 33” は僕に変拍子を教え、SIGUR ROS の () と EXPLOSIONS IN THE SKY の “The Earth is Not a Cold Dead Place” は僕にインストがボーカルソングと同じくらいパワフルだと教えてくれた。」 どうぞ!!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH LUKA VEZZOSI OF WITHIN DESTRUCTION !!
“I Believe The Metal Scene Is Slovenia Is Quite Strong But There Are Practically No Bands That Break Through Internationally Cause Nobody Has The Guts To Do That Important Step Of Saying “Fuck My 9-5 Job, I Wanna Do This For My Living”. You Need a Different Mindset If You Want Your Band To Succeed Internationally.”
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JOHANNES ECKERSTROM OF AVATAR !!
“On One Hand It Is Obviously True We Do Things In a Very Theatrical And Bombastic Manner. On The Other The Most ipmportant Asset to Any Stage Performer Is His Eyes. We Never Want To Lose Focus On The Humanity On Stage And In The Interaction With The Audience.”
DISC REVIEW “HUNTER GATHERER”
「僕たちがやっていることにはある種の二面性があるということじゃないかな。一方では、非常に芝居がかっていて、大げさなやり方でやっている。それは明らかな事実だよ。 でもその一方で、舞台のパフォーマーにとって最も重要な財産は自分の目なんだ。舞台上においても、人間性にフォーカスすることや、観客との対話を決して失いたくはないからね。」
RAMMSTEIN からリック・フレアー、果てはスタンリー・キューブリックまで、芸術における “シアトリカル” を濃縮したメタルのライジングスター AVATAR は、そのエピックを敷き詰めたステージにおいても人間を見つめる “目” の価値を忘れることはありません。
70年代に Alice Cooper がロックと演劇を一体化させて以来、KING DIAMOND, MARILYN MANSON とそのシアトリカルな血脈は絶えることなく受け継がれ続けています。20年近くに及ぶキャリアの中で、ゆっくりと、しかし確実にメタル世界で最も創造的かつ興味深く、予測不可能な集団の一つに成長した5人のクラウンは、そのショックロックの遺伝子にジョーカーの狂気を継ぎ足して北欧からジャンルや境界線の予定調和を打ち破ってきました。
「”Mad Max” は、たしかに僕たちが今向かっている道の一つかもしれないね。だけど “スタートレック” のシナリオだって存在するはずなんだ。強い意志があって、一時的な犠牲を払う覚悟があれば、この問題を解決できる可能性はある。僕たちの歌に描かれる、世界全体を通して繰り返し起こる大きな問題は、僕たちの道に立ちふさがっている。でも最終的には、誰も僕たちの正しい行動を止めることはできないんだよ。」
確かな “目” を備えた AVATAR にとって、この呪われた2020年に “Black Waltz” のサーカスや、”Avatar Country” の幻想的な旅路を再現することは不可能でした。かつて完全に想像の産物であった世界の終末、ディストピアを肌で感じた現代のアバターは、そうして破滅のシナリオを回避するためのレコード “Hunter Gatherer” を世に送り出したのです。
たしかに、虹やドラゴン、聖剣の妄想で現実から逃れることは難しくありません。しかし、マッチの炎が消えた暗闇には冷徹な現実が残されます。AVATAR はそれよりも、闇に直面し、闇を受け入れ、世界をあるがままに受け入れる道を選びました。彼らのトレードマークでもある毒舌家で生意気なアティテュードも、ダークで怒りに満ちた人間性をシニカルに表現するレコードとピッタリ符号しました。
「この不確かな時は、僕たちが近年の自分たちよりも (闇や権力との) 対決姿勢を深めた理由にも繋がるんだよね。その対決姿勢は過去から現在までのメタルアルバムたちにも言えることだと思うんだ。僕たちメタルバンドはみんな、様々な方法で闇を探求し、闇に立ち向かう傾向があるから、暗い時代において僕たちの音楽は重要な役割を果たすわけさ。」
つまり、2020年の呪いはメタルが解くべきなのでしょう。Devin Townsend の “Deconstruction” の邪悪なグルーヴと THE HAUNTED の暴走がシンクロするオープナー “Silence in the Age of Apes” でテクノロジーの盲信に唾を吐き、GOJIRA のグルーヴにシンガロングを誘うビッグなコーラスを織り込んだ “Colossus” でディストピアの悪夢を描く “Hunter Gatherer” のワンツーパンチはいかにもシニカルです。
マカロニウエスタンな Corey Tayler の口笛からパンキッシュに疾走する “A Secret Door” はまさに AVATAR を象徴するような楽曲でしょう。ステージにおいてシアトリカルであることを指標する彼らにとって、物語りの豊かさは切っても切り離せない能力です。60年代のストーリーテラー Leonard Cohen, Willie Nelson のカントリーフォークとダイナミックなメタルはそうして AVATAR の胎内で出会いました。もちろん、インタビューに答えてくれた Johannes が敬愛する BLIND GUARDIAN にしても、ストーリーを大仰に伝える才能は群を抜いていましたね。
かつてデスメタルの本質は凶暴なリフやスピードよりもグルーヴと語った Johannes の本領が発揮された “God of Sick Dreams” はパワーメタルと結びついてバンドの新たなアンセムとなり、一方で “Justice” の叙情と哀愁は日本のファンにも大いにアピールするセレナーデでしょう。
極め付けはレコードで最も多様な “Child” で、マーチングバンドから激烈なメタル、求心的なコーラスにカオティックなジャムとアコースティックなアウトロそのすべては、ロボトミー手術が正当だと信じられていた時代の悲哀と愚かさを演じるためだけに存在します。時を経た2020年、常識と情報、そのすべては盲目に信じられるものなのでしょうか?
今回弊誌では、稀代の演者にしてボーカリスト Johannes Eckerström にインタビューを行うことが出来ました。「鳥山明から黒澤明、村上春樹からタイガーマスク、上原ひろみから tricot まで、日本からの多くの創造的な衝動が、僕の個人的でクリエイティブな旅を形作ってきたんだ。」Babymetal との US ツアーでも話題に。ギター隊の常軌を逸したハイテクニックも見逃せませんね。どうぞ!!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH STEVE BLANCO OF IMPERIAL TRIUMPHANT !!
“The Masks Are Very Connected To The Art Deco Movement That Grew Up In NYC In The First Part Of The Twentieth Century. That Movement Also Has Many Esoteric Connections That Harken Back Thousands Of Years And Goes Beyond Our Wildest Dreams Of How We May Imagine The Thing We’re Part Of Is Here.”
DISC REVIEW “ALPHAVILLE”
「あのマスクは20世紀前半のニューヨークで育まれたアールデコ運動と密接に関係しているんだ。そのムーブメントは数千年前にさかのぼり、過去と深遠で神秘的な多くのつながりを持っている。そしてそれは、かつて僕たちの一部であったものがここにあると悠久に想いを馳せる、時を超えた夢の形でもあるんだよ。つまり歴史的意義のある魅力的な美学なんだ。」
政治的な対立、忌まわしい暴力、世界恐慌と終末のムードが世界を覆った1920年代。アールヌーボーの華美な装飾は機能的なアールデコへと移り変わり、混沌に触発された前衛的なジャズや実験音楽の先駆けは遂に芽吹きました。
100年の後、現代ニューヨークの多様な喧騒をノイジーなジャズや20世紀の前衛クラシックで再構築したエクストリームメタルで体現する仮面の三銃士 IMPERIAL TRIUMPHANT は、奇しくも1世紀前と等しい創造的な大胆不敵を宿す空想都市 “Alphaville” を世に放ちます。
「”Alphaville” は現在のような状況になる前から構想・制作されていたんだ。だけど社会的な枠組みの中における文明文化や個人の葛藤といった大きなテーマや題材は、今も昔も、そして人類が存在する限り未来においても存在しているのではないだろうか?そうは思わないかい?僕たちはいつも NYC のサウンドを演奏しているんだ。文化的にも僕たちの音楽世界には現在のアメリカの状況が反映されていると思う。」
コロナ禍や気候変動、反知性主義と分断が渦巻く2020年に、IMPERIAL TRIUMPHANT が複雑怪奇なブラック/デスメタルの迷宮で1920年代の復活と再構築を告げたのは決して偶然ではないはずです。そんな非業の “再構築” を象徴するのが、VOIVOD と THE RESIDENTS のカバーでしょう。彼らの手にかかれば、80年代後半のプログスラッシュも、奇妙極まるシンセティックなループも、暴走するブラストビートと混沌としたリズムブレイク、そしてバンド生来の不協和音で現代の闇を生きる不可解な狂気へと引きずりこまれてしまうのです。
もちろん、そんな彼らの歴史を咀嚼した慣習の破壊とも言えるエクレクティックな機能美は、”制限のない作曲プロセス” としてアルバム全編を貫いています。例えば、ドローンから聖歌隊、オルガンまで入り乱れるオープナー “Rotted Futures” はカオスの花園ですし、”Excelcior” では黒の暴走やインダストリアルの嘆きを内包しながら、螺旋を描くベーススケール、エイリアンのコードボイシング、進化したリズムのタペストリーでその本質をジャズ/フュージョンへと設定しています。
「まあ確実に僕たちは、メタル、ロック、ヘヴィーミュージックの複数のカテゴリーに当てはまる多様な音楽的影響を持っているよね。いつかは他のカテゴリーに入るかもしれないね。それが何になるかは分からないけどね!」
つまり、Steve が “グローバルなインテグレーション (分け隔てのない) の時代には、多様な視点がより実りある言説やコミュニケーションを生み出す” と語ったように、IMPERIAL TRIUMPHANT が破壊するのは過去の慣習だけではなく、ジャンルの壁や偏見、凝り固まった思想そのものだったのです。
即興のジャミングと緻密なオーケストレーションを並置した “City Swine” は、そんな彼らのクリエイティブな自由が完全に謳歌された楽曲です。MESHUGGAH の Tomas Haake を従えて、和太鼓とピアノがスラッジの枠組みでジャムセッションを開始する無法の街並は、アヴァンギャルドを熟知する MR. BUNGLE の Trey Spruance, KRALLICE の Colin Marston という共同プロデューサーの手を借りてすべての柵を取り払っていくのです。
そうしてアルバムの後半には、Duke Ellington から Miles Davis のクロスオーバーまでジャズの歴史を横断します。
さて、それではなぜ IMPERIAL TRIUMPHANT はゴダールの SF ノワールをそのタイトルへと選んだのでしょうか。きっとそれは、ニューヨークの文化と歴史を映画のフィルターを通して伝え、”昔ながらの魅力” を容赦のない過激さで歪めるためなのかもしれません。このフランケンシュタインのようなダークジャズと狂気のメタルの下には、階級主義、ファシズム、工業化を中心とした批判的な物語が横たわり、タイトルの由来となった60年代の映画を再現しているのですから。
今回弊誌では、ベース/ピアノ/ボーカルを担当する Steve Blanco にインタビューを行うことができました。「ブルックリンにある道場を見つけて、和太鼓奏者でありオーナーでもある倉島ヒロ先生がレコーディングを許可してくれたんだよ。あの美しい音色は、このアルバムの目的にぴったりと合致していたね。」 どうぞ!!
“We Don’t Consider Record Labels To Be “Above The Band” Who Can Micro-Manage The Band Down To Artistic Choices, But Also On The Other Hand We Don’t Want To Put The Band’s Needs “Above The Record Labels” And Dictate Them How To Operate, Because They Already Operate The Way They Are.”
DISC REVIEW “QUANTUM RESOLUTION”
「インドネシアにはメタルやエクストリームな音楽に特化した多くのファンがいて、特に最近はメタルをやっているバンドが非常に多いんだよ。中には地元ではとても人気があるバンドもいて、メタル系の音楽を演奏するだけで “セレブ” の域に達しているバンドさえあるんだから。」
インドネシアの音楽に対する探究心はアジアでもトップクラスでしょう。MoonJune レーベルが提供するジャズやプログレッシブのレコードは須らく知性と冒険心に富んでいますし、ヘヴィーメタル大統領 Joko Widodo が象徴するメタルワールドも当然多彩で実力派を揃えています。デスメタルはもちろん、ブラックメタルに着目しても PURE WRATH のような奇跡を生み出す場所ですから、もはやメタルの第三世界と呼ぶには些か無理があるはずです。
KEKAL はインドネシアにおけるブラックメタルの先駆者ですが、もはやブラックメタルの一言でかたずけることは完全に不可能な、多様なモダンメタルの怪物へと進化しています。
エレクトロニカ、ポップス、ジャズ、トリップホップ、インダストリアル、アンビエント、サイケデリック。仮にエクストリームメタルをジャワ島だとすれば、APHEX TWIN, Miles Davis, PORTISHEAD, THE PRODIGY, MASSIVE ATTACK, ULVER といった島々で多文化多島美を形成するインドネシアのミニチュアこそ KEKAL の真の姿ではないでしょうか。特に、フィールドレコーディングまで敢行する電子音とノイズの実験は、フランスの IGORRR と並んでメタル世界の最先端に位置するはずです。
「2009年に全員がバンドを脱退しKEKAL は正式にインドネシアのバンドとして残ることになったんだ。つまり、僕たちは “メンバーレスバンド “という道を選ぶことにしたんだよ。その後、僕たちは “KEKAL として “ではなく、”KEKAL のために” 活動している。コントリビューターとして完全にボランティアベースで、スケジュールも締め切りもなく、いくつかのアルバムでは他のミュージシャンが参加するようなやり方でね。自由なアソシエーションを採用して、完全にアナーキストになったんだ。」
驚くべきことに、KEKAL にはオフィシャルメンバーが存在しません。レコーディングにおいても、より良い音楽のため楽器も歌も最も適した人物がこなすという徹底ぶり。バンドではなく自由結社と呼ぶべきでしょうか。その特殊極まる背景は、彼らの土台であり源泉であるアナキズムに起因しています。
「僕たちはレコード会社を “バンドの上に立つもの” だとは思っていないし、バンドの芸術的な選択まで細かく管理できるとは思っていないけど、一方でバンドのニーズも “レコード会社の上に立つもの” だとは思っていないし、バンドの運営方法をレコード会社に指示もしたくない。」
KEKAL の指標するアナキズムとは決して無責任であることではありません。非階層、反権威こそ彼らの魂。支配者のいない世界を実現するため、すべてにおいて責任を束ねる自己管理、自己統治のアプローチを研ぎ澄まし、突き詰めていくのです。
「それは2015年に僕が “スピリチュアルな目覚め “と呼ばれるものを体験し始めた時から始まったんだ。詳しく説明するのは難しんだけど、食生活、睡眠パターン、感情、他人に対する見方や感じ方、世界観などの劇的な変化があったんだ。何らかの形で僕自身、僕たちが住んでいる世界、宇宙に関する新しい知識を受信することで “導き” の奇妙な啓示を受けてきたんだ。 これは、人々が一般的にグノーシスや “明かされた知識” と呼ぶものだね。」
さらに、結社の首謀者 Jeff Arwadi は自らが受けた掲示、スピリチュアルな目覚めをレコードのコンセプトやリリックに反映することを新たな生き甲斐として見出しました。つまり、最新作 “Quantum Resolution” は Jeff の伝道師としての役割が花開いた作品でもあるのです。
ハモンドのプログメタルと軽快なダブステップ、そしてブラックメタルのメイルストロームが入り乱れる “Quite Eye” は “Schizo-metal” への入り口として完璧でしょう。インダストリアルな瞑想と JOY DIVISION の複合体 “Inward Journey” では、天使の声が鳴り響き内なる旅路を導きます。
アナーキーの申し子たる自由結社は、両極に振れることさえも絶対的に自由。”The Sleep System” で RUSH や KING CRIMSON への敬意をメロディーの彼方に見出せば、ダブとヒップホップで踊り狂うブラックメタルの THE PRODIGY “Testimony” ですぐさま混沌を呼び寄せます。
極め付けはタイトルトラック “Quantum Resolution” でしょう。グノーシス主義に傾倒した Jeff から生まれくるに相応しい量子の黙示録。DURAN DURAN とブラックメタルの許されざる婚姻を祝福する厳かな教会の聖歌。これはきっと伝道師が奏でる異端者の讃美歌です。
今回弊誌では、Jeff Arwadi にインタビューを行うことができました。「KEKAL はインドネシア出身のバンドとしてヨーロッパと北米で同時にアルバムを出した最初のバンドで、ヨーロッパツアーを行った最初のバンドでもある。そういう意味では、地元や母国だけでアピールしようとしない若いバンドのお手本にはなるかもしれないね。」 どうぞ!!
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH DYLAN DESMOND OF BELL WITCH & AERIAL RUIN !!
“Playing With a Guitar Was an Interesting Experience Because It Had Been So Long! Often Times I Try To Write Guitar And Bass Parts To Play At The Same Time On The Bass, But Having an Actual Guitar Allowed Room For Harmonies In The Upper Registers.”
EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ROHAN “RO HAN” STEVENSON OF I BUILT THE SKY !!
PHOTO BY Huang Jiale
“To Me It Expresses The Nature Of The Project, Being Free To Create Your Reality I Built The Sky = I Create My World/My Art.”
DISC REVIEW “THE ZENITH RISE”
「僕にとってこの名前は、プロジェクトの本質を表現しているんだ。現実から自由になって、”空を構築する”。つまり、それって自分の世界/芸術を創造するって意味なんだ。
このプロジェクトは、以前僕の考え方だった “努力して作る” よりも、純粋に創造するため始めたものなんだけど、皮肉なことに、今ではフルタイムで取り組んでいるよ。」
“空には限界がないでしょ?” 南半球オーストラリアの天つ空は Rohan “Ro Han” Stevenson の牙城です。そうして大気圏から成層圏、東西南北を所狭しと吹き抜けるギターの風は、流動の旋律を後方へと置き去りにしていきます。
「僕は、空がどれだけ芸術的であるかにもとても惹かれているんだ。様々な色合い、要素、バリエーションがあって、全く同じような空模様になることは2度とない。だからこそ、その一期一会な偶発性を心から楽しんでいるのさ。」
Tosin Abasi, Plini, David Maxim Micic, Misha Mansoor。ある者は衝撃のテクニックを、ある者はリズムの迷宮を、ある者は斬新なトーンを携えて登場したモダンギターの精鋭たちは、弦の誉を別次元へと誘っています。
そんなニッチなインストゥルメンタルワールドにおいて、Ro Han は空という蒼のキャンバスにカラフルな虹音を誰よりも美しく描いていきます。テクニックや複雑性よりもリスナーを惹きつける魔法とは、きっとストーリーを語り景色を投影する能力。彼にはそんな音の詩才や画力が備わっているのです。
「僕は Tosin や Misha と対照的に多くの部分でロックやパンクのヴァイブを保っていると思うんだ。間違いなく、彼らほどギターは上手くないんだけど、それはきっとユニークなセールスポイントだろう。」
BLINK 182, GREENDAY といったポップパンクの遺伝子を色濃く宿したハイテクニックの申し子。”Journey to Aurora” は象徴的ですが、確かに Ro Han の空にはいつだって明快なメロディーが映し出されています。そして、djent のリズミックアクセントを、さながら流れる雲のごとく疾走感へ巧みに結びつけていくのです。
100万回の視聴を記録した “Up Into The Ether” は Ro Han の決意をアップリフティングな旋律に込めた希望の轍。2019年の夏に仕事を辞して I BUILT THE SKY で生きていくと誓った Ro Han。成功しようと失敗しようと後悔を残して生きるよりはましだと訴えます。
一方で、KARNIVOOL, DEAD LETTER CIRCUS を手がけた名プロデューサー、Forrester Savell との共闘、オーストラリアンセンセーションはアルバムによりアトモスフェリックで感傷的な空模様ももたらしました。
ダークで激しい雷鳴のようなタイトルトラック “The Zenith Rise” が晴れ渡ると、レコードはクリーンギターとアコースティックのデリケートでメロウ、時に優しくチャーミングな鮮やかな3つの音風景を残してその幕を閉じます。実際、この偶発性、予想不可能性から生まれるダイナミズムこそ Ro Han の音楽がクラウドコア、天気予報のインストミュージックと例えられる由縁なのでしょう。
今回弊誌では、Rohan “Ro Han” Stevenson にインタビューを行うことができました。「僕は自分でやらなきゃ気が済まないタイプで(コントロールフリークと言う人もいるかもしれないけど)、これが他の人との共同作業から遠ざかっていた原因の一部なんだ。
それはたぶん、僕が強い芸術的なビジョンを持っているからだと思う。自分が何を達成したいのか分かっているような気がするし、外から他の要素を加えても結局最終的な目標から遠ざかるだけだろうから、主に一人で音楽を作っているんだ。」8/5には P-Vine から日本盤もリリース決定!どうぞ!